配合設計でパーコレーション転移を安定化させることができるのか。答えは「できる」である。酸化スズゾルを用いた感材の帯電防止と、複写機用中間転写ベルトでその実績がある。
前者は最適なバインダーの選択であり、後者はWパーコレーション転移である。後者のWパーコレ-ションはシミュレーションを用いて、実現可能性を見出している。
酸化スズゾルを用いた帯電防止層では、シミュレーションで求められたパーコレーションカーブを頼りにバインダーの選択を行っている。
この時用いたシミュレーションは、スタウファーの教科書に書かれた難しい数式で行っていない。直感で理解しやすい立方体充填モデルでシミュレーション実験を行っている。詳細は、今月と来月予定しているPythonのセミナーで解説予定。
弊社のPythonセミナーは、ソフトウェアー会社が開催しているような単なるコンピューター言語の解説ではない。実務で実績のある事例をもとにコードを公開し、プログラミングの勉強ができるように工夫している。
また、今回は一般のプログラミングの教科書であまり扱われていない乱数のアルゴリズムについても解説予定でいるので、材料系以外の方にも参考になります。
パーコレーション転移シミュレーションプログラムを作りながら学ぶPython入門PRセミナーの受講者を募集中です。
セミナーについてはこちら【有料】
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
高分子材料にフィラーを分散したり、海島構造に相分離する系ではパーコレーション転移が観察される。パーコレーションは、コロナウィルスでも話題になったクラスターが生成する現象である。
絶縁性高分子に真球の導電性粒子を混合してゆくと、体積分率(全体を1)で0.2を過ぎたところから電気抵抗が大きくばらつく現象が観察される。0.25を過ぎると抵抗は4桁以上ばらつくケースもある。
これが0.5を過ぎたあたりから安定な無限クラスターが生成するので導電性も安定化するのだが、0.2-0.5のあたりで急激に電気が湧き出てきたような導電性の変化が生じる。
これがパーコレーション転移である。このパーコレーション転移は、導電性の現象だけでなく力学物性にも観察されるが、導電性の現象に比較して変化が小さいのであまり問題とされていない。
線膨張率や弾性率で観察されるパーコレーション転移については、パーコレーションすなわち浸透理論で議論されず、1990年ごろまで混合則で議論されてきた。
パーコレーションでこのような変化が材料分野で議論されるようになったのはこの30年間のことである。数学的な扱いになると山火事をモデルにして1950年代に議論されて、数学の世界ではn次元の現象まで考察されている。また、その成果はこの2年間ウィルス感染者の予測などでも活かされている。
しかし、パーコレーションと言う現象の数学的理解は材料屋にとって障壁が高い。またその障壁を超えてみても、直接配合設計に活かせないから困る。このような悩みをゴム会社の新入社員時代にしている。
この欄で「花王のパソコン革命」という書籍が出版された時代の笑い話(注)として書いたが、今でいうところのパワハラ上司から業務に用いるマイコンを自分で買うように言われ、年収の手取りで半分近いお金をだしてシステムを揃えた。
それだけお金を出したので必死になってコンピュータでできる仕事を独身寮で模索しながら検討していた。その中の一つのテーマがパーコレーションの簡単なコンピューター実験だった。
(注)今世間でパワハラやセクハラなど様々なハラスメントや性差別の問題が取り上げられ、それらの排除が芸能人まで求められている。かつての職場ではこれらが日常的であり、またそれが家庭的環境と誤解されていた時代があった。当方がゴム会社に入社しその惨状に驚いただけでなく、悩み、その結果転職している。当時上司は絶対的存在であり、ある日、業務中に上司の気分が悪くなったという理由で、上司の車を代行運転し、自宅まで送り届けた出来事があった。当方は着替える余裕もなかったので作業着のスタイルであったが、タクシーを呼んでもらえずバスで会社に戻って仕事をするように命じられている。交通費の請求を先輩社員に相談しているが、会社に請求できないからバスを使うように上司が命じたことを理解できないのかと諭された。同期の友人に話したところ、この程度で憤りを感じるのは甘く、上司の引越しの手伝いでの一コマの話を聞いたが、ここで書いたならば信じてもらえないだけでなく逆にこの欄の信頼性を疑われるようなあまりの出来事であった。そんな時代であっても皆我慢して仕事に励んでいた。香川氏の問題が連日報じられている。皆が道徳的に他を尊重し誠実真摯に生きることが求められている時代なのかもしれない。良い時代である。当方がパソコンを購入しなければいけなくなったいきさつを「花王のパソコン革命」という本の出版で引き起こされた出来事として書いているが、問題として労働組合にでも相談すべきだったかもしれない。しかし身銭を切ったおかげで短期に成果を出すことができ、会社の予算でソード社のパソコンを導入することができた。当時としては珍しく2CPU構成で、漢字出力もできた。プリンターなど周辺機器も揃えて200万円前後と高価だった。しかし、当方のパソコンでは多変量解析やパーコレーションのシミュレーションができたが、このパソコンは薬品管理専用ということで基本OSとBASICだけであり、PIPSも走らなかった。
パーコレーション転移シミュレーションプログラムを作りながら学ぶPython入門PRセミナーの受講者を募集中です。
セミナーについてはこちら【有料】
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
技術開発の担当者でデータサイエンスに疎い技術者は、この情報化時代に時代に合った迅速な仕事ができない。
現象を把握するために実験を行いデータを収集する。科学ならば実験は仮説を立案してから、その仮説の真偽を問う実験が計画される。ところが技術開発では何となくまず実験をやってみよう的な実験が許されている。
これを悪い方法として決めつけてすべて実験は仮説を立ててからやれ、と言われたリーダーが科学の時代ゆえに多かったが、これも極端である。
技術開発では新たな機能発見、すなわち現象から機能を取り出すことが求められているので何となく思い着き実験を行うことは悪いことではない。
ただし、そこから有益な結果の得られる効率は、科学に基づく実験に比較して悪い。科学ならば仮説に基づく実験となり、必ず真偽の結果が得られるので無駄な作業にならない。ただし、否定証明という別の問題が発生するが、本日はその点について述べない。
効率の悪い機能を探索する実験をいつも行っているようでは技術者としての成長が無い。ここはデータサイエンスを導入して、何となく思いついた実験でも効率よく成果に結びつけられるようにしたい。
どのように行ったらよいかは、セミナー会社で事例を基にしたセミナーが開催されているので問い合わせていただきたい。また、今週末には、一例としてパーコレーション転移の実験をコンピューターで行った事例の紹介をする。
土曜日は3時間の無料セミナーとしているので、関心のあるかたは申し込んでいただきたい。無料セミナーを受講されてから有料セミナーを検討される方も歓迎します。
パーコレーション転移シミュレーションプログラムを作りながら学ぶPython入門PRセミナーの受講者を募集中です。
PRセミナーについてはこちら【無料】
本セミナーについてはこちら【有料】
カテゴリー : 一般 宣伝 電気/電子材料 高分子
pagetop
高分子材料に他の成分を分散して現れる現象を30年以上前まで経験則である混合則で議論されてきた。当方が帯電防止層で観察された現象をパーコレーションで説明した時にも、他のセッションで混合則による考察がなされていたのでパーコレーションが日本で一般化しはじめたのは1990年ごろのことと思っている。
ポリジメチルシランを用いて世界で初めてSiCを合成されたのは矢島先生だが、ポリマーアロイを前駆体にしてSiCを世界で初めて合成したのは当方であることは、無機材質研究所の先生方がご存知で特許もそこから出願されている。
高分子材料の難燃化技術でイントメッセント系の耐熱層が話題となったのは1990年前後だが、当方は燃焼時の熱でガラスを生成し難燃化する技術を1981年に工場試作している。
汎用二軸混練機に伸長流動装置を取り付けたのはウトラッキーであるが、それを改良しカオス混合による効率的な混練でポリマーアロイの製造に世界で初めて成功したのは当方である。
電気粘性流体について、傾斜組成粉体や微粒子分散型粒子などの特殊構造の半導体粒子が高い電気粘性効果を示すことを世界で初めて実証したのは当方で、その耐久問題も解決している。ただ、パーコレーションについては、世界初であるかどうか自信がない。
何故なら、1950年代に数学者が議論をはじめ、それから40年近く経っていたからだ。そして、シミュレーションプログラムについて論文を書こうと調査したところ、調査の2か月前に学会誌「炭素」に類似のシミュレーションについて論文が投稿されていた。
すなわち、日本化学会で混合則でまだその現象を議論していた時代に、炭素学会でパーコレーションが議論されていた可能性が高い。スタウファーによる浸透理論の教科書が登場したのは1980年代で、当方が初めて指導社員から説明を受けたのは1979年である。
指導社員は、混合則を説明しながら本当はパーコレーションで説明するのが好ましいが、材料屋は信じていない、とぼやいていた。おそらくアカデミックな研究所でパーコレーションが議論された可能性があり指導社員はその議論で周囲から叩かれた可能性が高い。
その後無機材研へ留学する直前にゴムへカーボンを分散し半導体ロールを開発企画していた主任研究員が当方に物性バラツキについて相談してきた。その時にパーコレーションの説明をしたら鼻で笑われた。
ちょうどCの勉強を始めた頃で、Cを用いてシミュレーションプログラムを作ってみようと考えていた頃である。1990年前後まで材料屋には混合則が一般的であったことは確かである。パーコレーションの概念が材料屋にどのように浸透していったのか定かではない。
パーコレーション転移シミュレーションプログラムを作りながら学ぶPython入門PRセミナーの受講者を募集中です。
PRセミナーについてはこちら【無料】
本セミナーについてはこちら【有料】
カテゴリー : 一般 学会講習会情報 電気/電子材料 高分子
pagetop
高分子材料にしてもセラミックスや金属材料にしてもそれを形にして利用するときには、どこかの段階で配合設計技術が必要になる。
道具だけでなく料理も配合設計が必要になってくるが、料理の配合設計と道具の配合設計との違いは、味見を舌でするかどうかという大きな違いがある。
刀鍛冶が出てくる番組で、刀鍛冶が刀をなめながら研いでいたシーンを見たことがあるが、これは例外として、一般に道具の配合設計では道具の機能について評価しながら最適化を行ってゆく。
材料設計に携わる人は、化学系の学問を修めた人が多いが、この評価をする行為に着目すると物理や数学のスキルも要求されるのが配合設計技術である。
化学系の人は物理や数学が不得意であることに大学へ入学して驚いた。理系を志すにあたり物理や数学が不得意だから化学を目指した、という友人もいた。
しかし、配合設計技術では化学同様に物理や数学のスキルが重要である。最近ではマテリアルインフォマティクスも取り入れなければいけないので情報工学のスキルも要求されるようになった。
もっとも、当方が学生時代に情報工学などという学問は無かった。情報工学を理系の文学部と表現している人がいるが、このような感覚では情報工学は進歩しない。
確かに文学部的ではあるが、科学のあらゆる分野に精通していることが要求される学問である。すなわち、化学や物理学、数学について配合設計ができるぐらいの知識があってはじめてマテリアルインフォマティクスの研究ができる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
例えばヘキサフェノキシホスファゼンのような疎水性物質を水に分散したい場合にどうしたらよいか。昔からこのような場合にはオイル分散技術が使用されてきた。
オイル分散技術とは疎水性物質をオイルに溶解し、その状態でコロイドとする技術である。必要に応じてオイルをオートクレーブ中で取り除くのだが、100%取り除くことはできない。
ゆえに環境問題について厳しくなった時代に、このオイル分散技術では、残った微量のオイルの処理が問題となる。疎水性の高分子もこの方法でコロイドを製造することができるので便利な技術であるが、今の時代に合ったオイルを用いない技術が求められている。
分子の一部に親水基を持っていると、低分子でも高分子でも何とかO/W型コロイドにできるが、全く親水基を持たない物質の場合には、これまで技術手段は無かったが、5年前皮革の難燃化技術開発でホスファゼンの水分散コロイドが必要になり技術開発した。
この技術を用いると、水系コーティング液の開発も可能となる。また、皮革の難燃化技術開発で気がついたのだが、疎水性繊維の内部に物質輸送する技術の開発も可能となる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
機能性セラミックスを設計する技法と機能性高分子を設計する技法は異なる。機能性セラミックスでは科学的に美しい体系ができているが、機能性高分子では、科学的というよりも技術的方法論となる。
また、理論的な設計値を実現し品質管理を行う場合でも機能性セラミックスの方が容易である。高分子材料では、およそセラミックスの設計値のばらつきの10倍以上ばらつく場合が多い。
もちろん機能性高分子でも、機能性セラミックスと同様にばらつきの小さい材料設計が可能な場合があるが、それは少数派である。
具体的に導電性という性質を取り上げた場合に、機能性セラミックスでは、酸化物系セラミックスから選択し材料設計を行う。透明導電性と限定すると酸化スズ系か酸化チタン、酸化バナジウム、酸化亜鉛と絞られてくる。
そして、導電性の設計方法も異原子のドーピングにより、酸素欠陥を生み出すという方法が知られている。電子伝導性高分子については、白川博士のノーベル賞受賞で知られるように画期的な発見として知られている。
一次構造の設計において高分子のパイ軌道を活用する場合には、分子軌道法も活用でき科学的議論を展開しやすいが、高分子に導電性を付与する方法にはカーボンのような導電性フィラーを練りこむ方法が古くから知られており、この方法はかつて混合則で議論されていたように経験的となる。
また、半導体高分子を材料設計する場合に、一次構造で材料設計するよりもカーボンの添加について混合則で材料設計した方が経済的である。
ただし、導電性物質を高分子に練りこみ半導体を設計するときに、導電性のばらつきを半導体セラミックス並みに品質管理するためには、材料設計に少し工夫が必要になる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
物質には水に溶解する材料と水に溶けない、あるいは安定に分散しない材料が存在する。前者については、肉眼では溶けているように見えても微粒子として安定に水に分散しているだけの状態も含まれるが、この状態の水分散状態の物質をコロイドと呼ぶ。
また、前者のように水に溶解するか、微粒子状態で安定に分散できる物質を親水性物質と呼ぶ。一方後者のような物質は疎水性物質と呼ばれる。
疎水性の油を水に分散したい時には、界面活性剤を用いるが、界面活性剤の構造は、親水性部分と疎水性部分でできており、界面活性剤を水に分散すると、親水性部分を水側に、疎水性部分は特定の量で球状に凝集し、安定化する。
凝集した疎水性部分には水を含まない空間が形成されるが、それはミセルと呼ばれる。ミセルには疎水性物質を溶かし込む能力あるいは機能が存在する。
また、界面活性剤の親水性部分と疎水性部分の比率をHLB値とよび、これは界面活性剤の特徴を示す重要なパラメーターである。(続く)
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
昨日からの続きとなるが、コンパウンドの電気特性と成形体の電気特性を一致させると簡単に言うことができても、それを実行しようとすると大変高い技術が要求される。
絶縁体高分子を半導体に変性するために導電性物質を絶縁体高分子に分散する必要があるが、その時にパーコレーション転移という現象が発生する。
コロナウィルスの感染メカニズムでポピュラーになったが、連鎖状態であるクラスターを制御しなければパーコレーション転移を安定化できない。
ただし、詳細を省略するが、コンパウンド段階でパーコレーション転移を制御できても、成形段階でその再現ができなければ、コンパウンド段階の電気特性を成形段階で再現できない。
そのため、コンパウンド段階におけるパーコレーションを目的とした設計通りの値に制御できているかどうか、品質管理する必要がある。評価方法も含め、詳細は弊社に問い合わせていただきたい。ここでは書けない高度な技術が必要なのだ。
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop
摺動部材でなくても良いのだが、脆いPPSの意外な用途として、ベアリングとか中間転写ベルトのような動的部品がある。いずれも特許が出ており、脆い材料をどのように使用しているのか参考になる。
例えば中間転写ベルトでは、ナイロンとの複合化で高靭性を実現し動的部品に使用可能としている。また、トナーの清掃にブレードを用いても滑りやすく摺動部材としても使用可能な表面性である。
摺動部材としては、PPSを繊維化して用いる事例も特許出願されており、PPSが脆い、というイメージでアイデアを出そうとするとこのような技術は出てこない。
脆いPPSの靭性を高める技術開発は古くから行われているが、ナイロンの添加にしてもTgが下がる問題があった。この問題の解決にオリゴマーが有効であり、それを活用した特許出願を弊社は行っている。
この技術の優れているところは、PPSの結晶成長も抑制する効果があるようで、200℃の雰囲気に長時間放置しても強度低下がわずかである。未変性のPPSでは結晶成長のため、靭性が下がり強度低下する。
PPSの問題はTgが低い点だが、これはFRP化することによりTgよりも高い温度での使用が可能となる。炭素繊維との複合線材は実用化された。
PPSのFRPであれば、高温度まで耐久出来る摺動部材が可能となる。弊社の特許は現在審査請求中であるが、この技術を活用したいと考えておられるところに売却しても良いので問い合わせていただきたい。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop