実務では融体からの結晶化に遭遇する場面が多いと思う。そこで見られるのは球晶が大半でラメラ晶は特別な場合である。しかし、結晶成長の初期にはラメラ晶が現れるので球晶との関係がつかみにくい。
ラメラ晶が球晶へ成長するモデルとして
1.ラメラ晶が円板状に成長し、上下方向へ積層して球晶へ成長。
2.ラメラ晶が円錐状に積層化
(1)傾きは一定
(2)円錐の頂点が球晶の中心
などが考えられ、異なる速度式になりそうだ、と想像される。
一方高分子の結晶成長機構が無機材料のそれと大きく異なるのは、このラメラから球晶へ成長する機構以外に、結晶核の形成機構がある。
無機材料では、観察することもできない核の存在を仮定しているが、高分子では分子1本が折れ曲がり塊になっている構造を核として想定している。それはすでにラメラ晶まで成長しているかもしれないが、その段階の核生成について無機材料では極めて速くその後の結晶成長機構が速度式に反映されることになるが、高分子結晶成長モデルではそれなりの速度でこの段階が観察されるようだ。
ようだ、と書いたのは、自分で解析したことがないからだ。実はこの結晶成長モデルについて結晶核の形成機構と結晶成長の二段階に分けて考えるが速度論を議論するときにはあたかも区別しないように扱う当たりが、当方には気持ち悪く感じる部分である。
無機では、結晶の核の存在は仮定するが、それを見ることはできないとし、核が発生するや否や結晶成長が始まるとしているが、高分子では結晶の核の成長過程までも相変化現象としてモニターするような前提となっている。そしてこの段階を一次核形成(primary nucleation)と呼ぶ。
そしてこの一次核上に二次核が形成されてさらに結晶成長が進行するが、一次核については、均一核形成と不均一核形成過程がある。
しかるにアブラミの指数を求める時には、二次核形成過程も含めて全結晶化速度として扱い、その相変化量は、球晶が占める体積の割合に基づく結晶化量Xで近似している。
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無機材料の結晶成長過程は比較的イメージしやすいが、高分子の結晶化過程はいささか不気味である。真夏の夜それをイメージすると少し涼しくなるくらいである。今は値段が高くなってしまい、あまり見ることができないが、昔魚屋の店頭にバケツに入った多数のウナギがこの時期並べてあった。
ウナギはアジなどと同じ扱いだった。3年前中国の海辺町シャントウでも同様の光景を見ることができ、子供の頃を懐かしく思い出した。しかし中国のウナギは頭の形が少し異なっていたので、不気味さは子供の頃よりも増した。
狭いバケツの中に十匹以上のウナギがうごめいている様子は、さながら高分子の融体からの核生成の様子に似ている、といってもこれは当方の勝手な妄想である。教科書にはもう少し美しい物語が描かれている。
すなわち折りたたまれた1本の高分子鎖の塊が核となり、そこへさらに高分子が折りたたまれながら集まり、ラメラへ成長する様子が描かれている。その時ねじれが生じると球晶に成長してゆく。静置された融体からの結晶では球晶ができる。
ポリエチレンの結晶成長はかなりよく研究されており、まさにこのような機構で進んでいるような解析結果を論文で読むことができる。すなわち溶融状態で高分子鎖は自らが運動して折れ曲がることにより自由エネルギーを下げているのだ。たいへんわかりやすい説明である。
しかし、レピュテーションモデルの話を聞くと実際の結晶化は教科書に書いてあるような美しい話ではないだろうと思う。まさにウナギの塊が蠢いて集団の中の自分の居場所を探しているような動きの中で、自分自身で体を折り曲げたほうが安定と思いながら固まってゆく。想像すると不気味で気持ち悪い。
ウナギでは少し短いのでは、と思われる人は大蛇が100匹ほど塊になって蠢いている様子を思い描くと、体の模様の効果もありさらに涼しくなる。マクスウェルの悪魔になって、側鎖基の運動の様子を加えると恐怖になるかもしれない。
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無機材料における結晶成長の速度論的解析は、原子やイオンの拡散など具体的にその様子を頭に描きやすい。それでも、核の発生については観察することはできない、という前提がある。すなわち核は仮想だが、確かにそこから結晶成長が起きていると考えるのだ。
慣れれば、これが自然のことだと理解できる。そしてアブラミの式以外に多数の結晶成長に関する速度式が提案されている。無機材料でアブラミの式は、数多くある速度式の一部に過ぎない。しかし高分子では結晶成長をほとんどアブラミの式で取り扱う。
そもそも高分子の結晶には階層性があり、高分子稀薄溶液から結晶成長するとできるのはラメラ晶である。また融体から生成する結晶は球晶であるが、球晶はラメラの集合体のようなものである。
融体を延伸し繊維化したときにはラメラの積層になる。一方高分子稀薄溶液を攪拌しながら結晶化させると、シシカバブと呼ばれるラメラ晶を串刺しにしたような独特な結晶が現れる。
すなわち高分子の結晶は、分子が折れ曲がり結晶化したラメラ晶が基本であるが通常目にすることが多いのは球晶である。障子の張替ではPVA系のノリを使うことが多く、張替の時に桟にPVAの大きな球晶が観察されることがある。
そして、このラメラ晶なり球晶がどのように成長するのかにより、結晶成長の機構が変化する。この時、結晶の核は高分子の折れ曲がりでできたナノオーダーの結晶の種で、この核生成速度も不均一核生成の場合と均一性核生成の場合で様々である。
高分子の結晶に関する論文でよくわからなくなるのは、アブラミの式を結晶成長のどのあたりまでのデータで処理したのかというところである。高分子の球晶には目視でもわかるぐらいの大きさになるものもあるが、速度論の解析に使えるのはせいぜい20%ぐらいまで結晶が成長したところのデータではないだろうか。
結晶成長の速度論を展開するときに、結晶成長をモニターしたときの経過時間の設定は重要で、長くとりすぎるとアブラミの係数の誤差は大きくなる。速度論の解析では反応をモニターしたときにどれだけ精度の高いデータを集めるかが重要で、SiCの結晶成長の速度論を研究したときにわざわざ2000℃まで瞬時に精度よく昇温可能な超高温熱天秤を開発した背景でもある。
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フェノール樹脂とポリエチルシリケートのリアクティブブレンドから製造された前駆体高分子を炭化すると、シリカとカーボンが分子レベルで均一に混合された前駆体ができる。これを非酸化性雰囲気1600℃以上で熱処理すれば、SiCを合成できる(シリカ還元法)が、ここでシリカとカーボンとの均一素反応の取り扱いができる原料となっている点が学術的に重要である。
シリカ還元法について、その反応機構すなわちシリカが還元されてSiC結晶に成長して行く過程について、1980年当時諸説が乱立していた。
これはSiC化の反応に用いる原料が不均一なために、中間生成物と思われるSiOが揮発して様々な反応挙動を示しているためだ。また、シリカ還元法で生成されるSiCは立方晶系の結晶のはずだが、2Hタイプのウィスカーが副生成物として得られる問題が実用的にも学術的にも話題になっていた。
早い話が、技術的にも科学的にもシリカ還元法のあるべき姿が見えていなかった、という言い方ができる。ちなみにシリカ還元法のあるべき姿は、シリカとカーボンが反応し立方晶のSiCを100%生成できるプロセスであり、これを実現するためには、シリカとカーボンが分子レベルで均一に分散している原料が必要だった。
すなわち、不純物となるウィスカーや未反応のカーボンをを含まないSiCを製造するためにも、SiCの生成機構の真理を追究するためにも,フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンド技術の開発は必要だった。
このあるべき姿を実現した原料と超高温熱重量天秤を用いて1500℃以上で恒温測定を行うと、SiOの揮発によるノイズが極めて小さくCOの発生だけを重量減としてモニターできる。
1500℃以上の様々な温度で得られた、時間を横軸にした重量減少曲線を反応速度論に基づき考察すると、その曲線には明確な反応開始の核発生誘導期間が存在する。
これは反応初期に反応速度が最大になるシリカ粉末と炭素粉末との不均一反応の場合と大きく異なる。また不均一反応では、シリカあるいは炭素粉末の表面で反応が進行すると言われている。
すなわち、得られた実験結果は均一固相反応のアブラミの式で解析可能な結果であることを想像でき、実際にデータを速度論の手順で処理するとnは1.5と見積もられた。
また、得られた粉末はβSiC単相の結晶粉末なのでSiCの核が立体的に成長したことが理解され、核成長の次元λは3で反応ステップ数βは0と求められる。
すなわち、拡散律速成長であり、SiCの結晶成長が、瞬間的に核生成するや否や拡散律速で3次元的に成長している機構であることがわかった。
シリカ還元法で様々な反応機構が提案されているのは、副反応であるSiOガスが発生し、このシリカとカーボンの理想的に進行した機構からはずれるためであることも想像できた。
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Avramiをアブラミと書くと、脂身を連想し、お腹のあたりを気にする人もいるかもしれないが、結晶成長の速度論の話である。このアブラミの指数については、無機材料の場合と高分子では、その意味が少し異なっているが、高分子のアブラミの指数は少し怪しい、と感じている。
そもそも速度論なる学問を大学で初めて学んだときにその体系をたいへん怪しく感じた。ゆえに教養部の速度論の授業では疑問だらけであった。しかし、学位ではSiCの結晶成長の速度論に半分割いている。そこで展開しているのはアブラミの指数から考察した結晶成長機構である。
過去の速度式との関係を示すために多くの文献にあたりまとめたが、2000万円かけて手作りした超高温熱重量分析装置で収集したデータの精度が高く、きれいにアブラミの指数が求まった。速度論の解析は過去の結果を参考にするのでコピペをしたくなるが、学位論文を日本語で書くように言われたのでコピペができなかった。
余談になるが、この時論文は英語で書いたほうが書きやすいとつくづく感じた。日本語の難しさは、文章を推敲しなければいけない点にある。英語でも推敲が必要だが、英語の場合には躊躇なく英借分となるので楽である。稚拙な英文となっても恥ずかしさはあまりないが、日本語は自分で自分の書いた文を読みながら赤面することになる。
学位論文でコピペが横行するのも、おそらくこのような背景があるかもしれない。英文ならコピペをしても、日本人に気づかれないので後ろめたさは少ないが、日本語はすぐにばれそうだ。
さて、アブラミの指数だが、無機材料では、界面律速成長と拡散律速成長に分けて扱う。そして結晶成長の次元ごとに過去の知見からそれぞれの指数が求められている。
換言すると、結晶成長過程をモニターして集められたデータを速度論で解析し、アブラミの指数が求まると、結晶成長機構が明らかになる。
アブラミの指数の意義は過去の既知となった無機結晶の成長機構との対比で未知の結晶の成長機構を帰納的に示すことができる点にある。そして注意しなければいけないのは、指数から未知の結晶の成長機構が求められたからといって、それが真とは限らないことである。
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ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術は、用いた界面活性剤をその体系の中で考えている限り、完成できない技術である。あるいは勉強不足のK大の先生のように当たり前の現象の技術と誤解する。
すなわち、ゾル粒子へ高分子が吸着する現象として捉え、高分子の吸着した粒子が安定なミセルを形成していると考えない限り実用化できない,界面活性剤の体系から少し離れた高分子の吸着現象の技術である。
これは界面活性剤の科学の体系の特別な現象という説明もできなくもないが、界面活性剤の教科書を読んでいては簡単に見出すことができない技術と考えたほうがよい。界面活性剤の科学知識を一瞬忘れて現象を眺めてみて初めて発見できる技術で、実際にそのようなプロセスで誕生している。
この例以外に、界面活性剤の科学と樹脂やゴムのブレンドにおけるコンパチビライザーの考え方について比較をしてみると面白い。例えばAという樹脂とBという樹脂を安定にブレンドしたければ、コポリマーABをコンパチビライザーとして用いる。
このあたりは、水と油を混ぜるときに用いる界面活性剤の構造の考え方と似てくる。しかし、混練ではミセルという考え方を用いていない。ゆえに全く異なる体系のように思われるが、混練で用いるコンパチビライザーを界面活性剤のような考え方で捉えてもよいし、逆に水と油の混合を混練と同じように考えることも技術開発において現象を眺めるときに必要となってくる。
このとき、よく勉強をしている人は、このような人を「科学を知らない人だ」と決めつけたりするが、技術開発で重要なのは現象からロバストの高い技術を取り出すことであって、真理を極めることではないのだ。科学に囚われるあまり、現象の多様な把握がうまくできずアイデアを出せない状態は技術開発の現場で排除すべきである。
科学は現象を理解する一つの方法に過ぎない。とんでもない妄想が自然界の現象から機能を取り出すヒントになるかもしれない。ノーベル賞学者でも妄想で成功している人がいる。科学は無用ではなく科学があるおかげで目に見えない世界の妄想を描くことができていることも付け加えておきたい。
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昨日8人が科学の妄想のため当方の意図を軽蔑し、たった一人当方の意図した解決策を実行してくれた話の続きになるが、すでに一年以上前の活動報告で紹介している技術なのでいきなり結論を書く。
すなわち、コアシェルラテックスの合成を行うのではなく、シリカゾルを凝集させない不思議なラテックス合成技術とゼラチンの3成分混合溶液を作る方針に変えた。
ここで問題となるのは妄想がいかがわしいかどうかの議論ではなく、電荷二重相の安定性である。界面科学を理解していると、ゼータ電位が異なるコロイド溶液の混合では、これが不安定になったとたんに凝集が生じる機構を思い浮かべることができる。3成分の混合では少なくとも2回そのような状況になる。
ここでシリカゾルをミセルにしてラテックスを重合できれば、凝集が生じるリスクを一回に減らすことが可能になる。また、この時のミセルが安定であれば、ゼラチンを添加したときにやはり安定となり、シリカもラテックスも凝集が生じない。
シリカゾルをこのような安定なミセルに変えるためにダイナフローと呼ばれる界面活性剤をシリカの超微粒子に吸着させたのだ。ゆえにシリカゾルをミセルにしたコロイド溶液のCMCは、ダイナフローのCMCではなく、ダイナフローが吸着したシリカのCMCとなる。
三重大学との産学連携でこのあたりの解析を進めたが、ラテックス重合に必要なダイナフローの添加量はダイナフローのCMCで決まらず、シリカの量で決まる。すなわち、ダイナフローを界面活性剤の科学の体系の中で捉えていては、この物質の機能を正しく評価できない。
技術が出来上がってから、妄想の結果を検証するとこのように科学的に説明できたのだが、これを高分子学会賞に推薦されて説明したら、KO大学の教授から当たり前の技術で誰でも考える対策と言われ落選した。
しかしこの先生、アカデミアにいて勉強不足だった。翌年界面科学の学術雑誌に米国研究者から世界で初めての技術として類似技術の論文が掲載された。その後アカデミアでもご存じない技術という一文と証拠として学術雑誌を添えて写真学会ゼラチン賞を受賞している。
STAP細胞におけるW大学の学位の問題も日本のアカデミアの現状を垣間見る事例だが、これも同様だろうと考えている。いずれも受験偏差値の高い大学だが、最近世界における日本の大学の水準が低い問題が議論されたりする。玉石混交が日本のアカデミアの現状ととらえ諦めるのか、それとも現状に厳しい対応をとるのかーーー。
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ラテックスを重合するときに界面活性剤が使用されるが、その添加量はCMCから推定される、と昨日書いた。これは、界面活性剤の科学の体系を学んでいると不思議なことではなく当たり前のことである。
ところが、CMCよりもはるかに多く界面活性剤を入れなければうまくラテックスを合成できない場合が存在する。別の表現をすれば、科学の体系で決まってくる界面活性剤の量では安定にラテックスを合成できないので、技術開発をあきらめてしまう場合が存在する。
シリカゾルをミセルに用いてラテックスを重合する技術を開発したときの出来事である。この技術は20年前の新技術で写真学会から賞を頂いている。すでにこの活動報告でこの技術の誕生の背景を紹介しているが、否定証明により危うく没になりかけた技術である。
この技術はコアシェルラテックスの開発過程で合成に失敗した技術から生まれたのだが、科学を忘れるように、という指示を信じてくれた担当者の力で生み出された成果である。まさに科学よりも当方の言葉を信じた者が救われた例の一つである。
コアシェルラテックスの開発では、ライバルの多数の特許群から逃れるために、特許に書かれていない素材を中心に検討していた。すなわち明らかに科学的に構築されたライバルの技術よりも不利な条件で技術を完成しようと担当者は努力していた。
このような状況で、科学的に開発を進めていては難しくなりゴールにたどり着けない場合もでてくる。いったん科学を忘れて素直に現象を眺めることが大切である。すると科学の体系とは異なる視点で新しい機能が見えてくるものだ。これは訓練で誰でもできるようになる。そしてむしろ高等教育を受けていない方が素直にこの行動をとることが可能だ。(続く)
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科学の世界観では、一つの真理は重要なことで、真理が一つゆえに科学の論理展開による推論が意味を持ってくる。しかし、現実の自然現象では、科学で明らかにされたはずの事象でも技術開発でそこで働く機能を用いるときには科学を疑う、あるいは科学の成果を忘れたほうがよい場合が存在する。
例えば、混合や分散の技術では、科学の体系通りには成立していない、あるいは科学のそれぞれの分野で微妙に体系が異なっている事象を扱う。
水に油を分散するときに、界面活性剤を用いることは常識である。そして界面活性剤は親水基と疎水基の構造を持ち、界面活性剤を水に分散すると水の中に疎水場を形成し、この中に油を包含することで安定に油を水中に分散することが可能となる。
界面活性剤の教科書を読むとこのような説明がなされている。さらに、親水基と疎水基を持つ分子でミセルを形成したり、臨界ミセル濃度(CMC)などの説明が続く。この臨界ミセル濃度については、その説明のためにグラフが使われ、ほぼ1%前後と理解できる。
実際にラテックスを合成するときには、このCMC近辺の量で界面活性剤が添加される。また、洗濯の時にはCMC以上の界面活性剤を添加しても汚れの落ち方は変わらない、という生活の知恵も存在する。
直感的に界面活性剤の体系は理解しやすいようにできている。しかし、この体系で考えていると新しい技術アイデアを見落としたりするから大変である。以前にも述べたが科学が新技術のアイデアが生まれるのを邪魔するのである。(続く)
(注)科学の体系に忠実に従い研究され否定証明された電気粘性流体の増粘問題を試行錯誤でたった一晩で解決した事例を以前紹介しているので、今回はダイナフローという特異な界面活性剤を用いて問題解決した事例を紹介する。
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夏の風物詩の一つにお化けがある。未だお岩さんのようなお化けには遭遇したことはないが、信じられないお化けのような現象には多数出くわした経験があり、それに何度も助けられた。
高純度SiCの開発では、無機材質研究所で納入されたばかりの新品の電気炉を使える幸運で必ず成功させようと意気込んだ。ところが研究所の先生にすべて運転条件を設定していただき実験を開始したところ、突然電気炉が暴走し瞬間的に温度が1800℃を超えた。慌てて緊急停止を押し、担当の先生に電話をかけた。
一方でサンプルがもったいないから手動で運転できないか考えた。プログラムコントローラーを見ると1600℃保持に入っていたので慌ててスイッチを入れたところ、うまくプログラム通り動き出した。
翌日サンプルを取り出したら、真っ黄色の高純度SiC微粉ができていて驚いた。電気炉の暴走原因は不明で単なるPIDの問題ではないか、とも言われたが現象を再現できない。一番不思議なのは、その時の温度パターンが微粉を作るためには一番良かったことだ。これは今でも不思議な現象と思っている。
もう一つ、電気粘性流体の開発を手伝っていた時に、傾斜組成の粉体を偶然開発できた話。詳細は省略するが、できたらいいね、と同僚と話していたら一回目の実験でベストの粉体ができた。電子顕微鏡で組織観察しても傾斜組成になっている。なによりも驚いたのは、その粉体を用いたら応答性がよく効果の大きい電気粘性流体ができたことだ。
その後、FDが壊れたのだが、こちらはお化けではなく明らかに人為的な出来事だった。お化けであってほしかった事件である。お化けはこの世に未練があって出てくるものだと教えられたが、人間の物事に対する執着心は、まったくないよりもあったほうが面白い人生になると思っている。ただし執着心を恨みに変えていてはみじめで、執着心を前向きに転化する努力が重要である。
当方は高純度SiC技術に対する執着心ゆえに写真会社で同様の一発を狙ってきた。しかし、その一発は全員から祝福されるような仕事を狙っていたが、これが結構難しい。すなわち組織で仕事を行うときに組織が必ずしもイノベーションを望んでいるとは限らないからだ。
しかし単身赴任して担当したPPS転写ベルトでは、少なくとも豊川周辺の事業所に勤務していた全員がその成功を願っていた。外部からコンパウンドを買って開発を進めていた仕事を商流の形式を維持したまま成功させたのだが、これは組織の都合で内製化できない状況だったからだ。
この仕事では子会社の敷地を借りてコンパウンド工場を立ち上げ、子会社からコンパウンドを購入する商流を作り上げた。おそらくそれまでコンパウンドを納入してきた会社にとって突然現れたお化けのようなライバルに見えたかもしれない。基盤技術があったとしてもコンパウンド工場が立ち上がるまでは一年以上かかる。ちなみに国内の大型の二軸混練機は発注から納入まで一年程度かかる。それが半年以下で工場がたちあがったのだ。
この仕事では、初期にお岩さんより凄いお化けが出た。統合したカメラ会社の倉庫にあった小型二軸混練機でコンパウンドを製造し、押出成形を行ったところ、ぶつぶつがいっぱいできたベルトが出てきた。実はこのお化けのようなベルトが最初に出てきてくれたおかげでコンパウンドが押出成形に与える影響を学ぶことができた。運がよかった。
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