シリコーンLIMSもポリウレタンRIMも各種添加剤が配合された液状物を混合後、モールドへ投入し、その中で反応を進行させてゴムにする。このプロセスは高分子量の配合物を混練してモールドへいれ架橋反応を行うゴムと似ているように見える。
しかし前者ではモールドの中で反応による分子鎖の成長も起きているが、後者では分子間の架橋反応のみで分子鎖の成長は起きていない。
また前者は比較的粘度が低いので高速撹拌が可能で効率の高い剪断力で均一に分散可能である。高速撹拌を行わなくてもスタティックミキサーを用いた混合だけでもゴムの用途によっては大丈夫な場合もある。
スタティックミキサーによる混合の問題は別の機会に述べるが、大切なことはシリコーンLIMSもポリウレタンRIMも混合だけでゴムを製造できる点である。しかし高分子量のゴムに架橋剤を分散するだけではシリコーンLIMSやポリウレタンRIMに匹敵するゴムを製造することができない。
高分子量のシリコーンに架橋剤を混練してミラブルタイプのシリコーンゴムを製造可能だが、本来はシリコーンLIMSよりも性能が高くならなければいけない。しかし、ミラブルタイプのシリコーンゴムがLIMSのシリコーンゴムよりも性能が低い場合もありびっくりする。
高分子量のゴムに低分子の架橋剤を分散するにも練りが必要なのである。練ることにより、高分子量のゴムはほぐされ、低分子量の架橋剤が分子鎖の中に取り込まれて行く。この様子は、混錬の機構が理解できると、ロール混錬で見えるような気分になってくるから不思議だ。
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練りを行わず混合だけでゴムを製造できるポリウレタンRIMは、シリコーンLIMSよりも早くから登場しよく研究されている。1970年代にはタイヤ用ゴムとしても検討され、その究極の性能予測も行われて、ポリウレタンRIMでタイヤを作れないという結論が出された。
このとき何が問題になったのか。それは信頼性である。このポリウレタンRIMでタイヤを作ろうとした試みの過程でタイヤ製造技術についても再確認が行われ、タイヤ事業を今後50年続けていてもだいじょうぶだと言われた。その直後自動車業界以外の他社からポリウレタンRIMを用いたタイヤがテスト販売されゴム会社で大騒ぎになった。
ただクレームが多発し、継続販売されなくなったが、遊園地の車のタイヤには今も使われている。このポリウレタンRIMの騒ぎは、既存事業に破壊的影響を与える技術に対してどのように取り組めばよいのか勉強になった。
ゴム会社に入社したばかりの頃の出来事であり、技術と事業のかかわりを学ぶ良い機会であった。信頼性の技術の重要性を知り、この10年後にタグチメソッドに出会いそれをいち早く学ぶ動機づけになった。
ポリウレタンRIMでは練りを行わないが、ポリウレタンの分子設計技術がその信頼性に影響を及ぼすことが知られている。タイヤと言う商品へ技術を応用しようとして分子設計技術だけで到達できない高分子技術の世界があることがわかった。
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タイヤに用いられるゴムは、今でもバンバリーとロール混練の組み合わせプロセスで製造されている。生産性の高い二軸混練機がなぜ用いられないのか。それは要求特性を満たす混錬が二軸混練機ではできないからである。低レベルの物性のゴムについては、すでに二軸混練機の導入が行われている。
最近食器などの耐熱性容器にシリコーンゴムやシリコーン樹脂が用いられているがこれらの大半はシリコーンLIMSで製造されており、混練プロセスは用いられていない。スタティックミキサーで混合された液状物質を反応させて作られている。
シリコーンLIMSではオリゴマーの反応で分子の鎖延長と架橋が同時進行して行われゴムとなるので原料の混合だけで練りは行われない。ゴム物性実現のためにはオリゴマーの設計が重要であるがこの分野は開発途上であり、現在はコストを安く低レベルの物性のゴムを作ってそれを活用できるマーケットを開発している段階である。
高性能のシリコーンゴムが必要な場合にはミラブルタイプが使われており、この場合には混練プロセスが重要になる。ゴムならば皆混練して作られているというわけではなく、混合プロセスだけで作られている場合もあるのだ。この知識は材料を眺める時に重要になってくる。
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二軸混練機として購入された設備でもへぼな設備であれば樹脂を混練できない、と説明しても、その設備の所有者はなかなか理解できないようだ。一応ストランドを轢くことができ、ペレットも作成できる。しかし射出成形体の力学物性が上がらないのは、処方の責任と言い出した。
KOBELCOの装置で混練した同じ処方だ、と説明しても、条件があっていないのでは、といろいろ言ってくる。ダメな設備ではだめである、と若いころ社会党の党首が言った言葉と同じようなことを言ってしまった。だめな二軸混練機でも樹脂を押し出すことが可能なので素人は問題がどこにあるのかを理解しにくい。
同様に現在の二軸混錬機による混練プロセスがバンバリーとロール混練のプロセスと比較して混練レベルが低いことを理解している人は少ない。現在のKOBELCOの技術をもってしてもバンバリーとロール混練を組み合わせたプロセスの技術を二軸混練機で実現することは困難である。
このことを理解していると、樹脂の混錬で目標とすべき混練レベルを見極めたいときにバンバリーとロール混練のプロセスを検討しようという発想が出てくる。
15年ほど前にパルプとPEの混練を検討した時に躊躇せずバンバリーとロール混練プロセスで行い、異臭のしないポリスチレン同等の力学物性と成形性を有した複合材料を開発できた。
同じ時期にKCKと呼ばれる連続式混練機で製造されたパルプ樹脂の複合材料が存在したが衝撃強度と異臭の点でバンバリーとロール混錬による場合よりも物性が劣っていた。
混練プロセスは混ぜることと練ることを満足できるレベルで実現できるプロセスとして作り上げねばならないが、二軸混練機だけではそれが難しい場合がある、というのが現在の技術レベルである。混ぜることはできるようになったが練る技術について未完成であるのが二軸混練機である。
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二軸混練機の中で起きている現象を可視化することは困難である。上海の某大学の研究者が一部をガラス張りした混練機で混錬の説明をしてくれたが、シリンダー部分が柔らかいガラスに変化した効果を質問したところ誤差だと答えてきた。これはおかしい。二軸混練機ではシリンダーも重要な部品の一部である。その壁面の材質で混練現象は変化するはずだ。
バンバリータイプで軸に垂直な壁面の一部をガラス化した装置も見たことがある。この装置については壁面がガラスになっていることを誤差と称しても問題ない、と思うが、二軸混練機のスクリューに平行な壁面をガラスにした装置は単なる展示物の効果しかないと思う。
およそ押出機の性能しか発揮していない二軸混練機でPC/ABSを混練するとどうなるか。スクリューにはニーディングディスクもついている。出てくるストランドは一応まともにできていても成形体で力学物性を評価すると引張強度等は1-2割程度低くなる。
KOBELCOの二軸混練機と同様のスクリュー構成にしても強度は低い。シリンダーの壁面の影響が出ている、と考えている。ニーディングディスクやロータ形状のわずかな違いよりもスクリューと壁面の間隔の影響が大きいだろう。
ちなみにこのへぼな二軸混練機でTCPなどの難燃剤を10部以上添加すると混練できない。どのような温度条件を設定してもだめである。ただし見かけはうまく混練されているように見えるから大変だ。それではなぜ混練できない、と断定していうのか。
10時間ほど運転したらフィード口で難燃剤が滞留していることを発見したからだ。少しずつ時間とともに増えてくる。同一処方をKOBELCOの二軸混練機で混練してもそのような現象は起きない。
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WEBで公開されている料理のレシピにはどのように作ってみてもまずい料理がある。そもそもうまいかまずいかは個人の味覚に依存する部分もあるので、当方の味覚がおかしいのかもしれない、と落ち込んだこともある。どのように作ってもまずい料理はさておき、作成方法に書かれていない部分でおいしさが変わる料理もある。
例えばハンバーグ。混練方法で味が変わる。100g1000円程度の黒毛和牛をひき肉にして作ってみるとよくわかる。練り過ぎると安い牛肉で作ったハンバーグと味が変わらなくなる。この実験を行うと練の意味を感覚で、正しくは味覚で理解できる。
一方安い牛肉や豚肉との合いびき、あるいはチキンを用いた時には、よく混練した方がおいしくなる。おからとひき肉を混ぜて作るおからハンバーグも、混練条件で味だけでなく外観も変化する。
昨年一年かけておからハンバーグを研究したが、おからハンバーグはよく練ったほうがおいしい。カオス混合のノウハウがあるならば実験してみるとよくわかる。食感まで変化する。通常の練では、おから感が残っているが、カオス混合を行うと色味以外は満足できるハンバーグができる。
色味については八丁味噌で色つけし、牛すじで取っただし汁を加えると安い牛肉で作ったハンバーグに肉薄する味になる。機会があればレシピを公開したいと思っているが混練方法をどのように解説したらよいのか悩んでいる。技術の伝承の難しさである。
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回転している二本のロールに挟まれ練られているゴムにカーボンを少し添加しただけであっという間に黒くなる。但しその変化は水を高速撹拌しているところへ黒インクを垂らした変化と異なる。
混錬と混合の違いが短時間のゴムの黒変という現象で観察される。指導社員によく見ているように、と言われて目を凝らしてみていた実験を今でも覚えている。目の前で起きていた現象は分散混合と分配混合というモデル化ではしっくりこない。
科学的表現ではないにもかかわらず、技術のイメージを現場で指導者と共有化する作業は技術の伝承のために重要である。技術と芸術の境界が不明確になる原因もここにある。ダ・ビンチを科学者と言う人がいるが彼はすぐれた技術者だったと思っている。
科学では論理が重要で真理を基に新たな一つの真理を目標に展開される。ゆえに論文等の書物で記述された内容をどこでも容易に共有化できる。またそれができない場合には科学として失格の烙印を押される。例えば科学の実験手順であればだれでもそれが再現できることが重視される。
料理のレシピは科学論文ではないので仮にレシピ通り料理を作ってみて、まずくても社会問題にされない。STAP細胞で問題になったのは、科学論文に書かれた手順で実験結果が全く再現されなかったからだ。もしあれが料理のレシピとして公開されていたのだったら社会問題にはならなかった。
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混練プロセスでは高分子を練る機能が重要である。低分子どおしの混合と高分子の混錬は同じ現象ではない。高分子の混練機構における分配混合と分散混合という考え方は、そのモデル化の過程で間違いを犯しているように思う。
現象をシミュレーションするためにはそのモデル化が必要になってくる。モデル化の過程で現象を左右する要因のいくつかは誤差として扱われる。本来誤差ではなく現象を左右する重要な因子であったとしても誤差にする間違いを平気で行う。
それで現象をうまく説明できれば問題ないが、ある特定の事例でシミュレーションがうまくいくとすべてそのモデルでうまくいくような説明をする人がおり、問題が複雑化する。
シミュレーションが正しくないにも関わらず実験方法がおかしいと言い出す人もいる。高分子の混錬における分配混合と分散混合を用いた解説について、実務経験を積むとこのような印象を受ける。
どこがおかしいのか。それは練の考えが入っていないことによる。表面の平らな二本の回転しているロールにゴムを挟んでも混錬は進む。この不思議な現象を眺めていると練とは何か、ということが見えてくる。
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設計の悪い二軸混練機についてスクリューセグメントだけを最適化してどこまで性能が上がるのか実験する機会があった。好んで実験をしたわけではない。やや腹立たしい事情がある。
中国のローカル企業に頼まれて、ある難燃性樹脂の開発を昨年行った。そこが保有していた二軸混練機で試作したところとんでもない結果になった。混ぜることはできても練ることができないのだ。この混練機は使い物にならないから知人の会社の混練機を借りて開発をさせてほしい、と言ったら、とりあえず受け入れてくれた。
知人の会社の混練機で、ほぼ処方が固まりかけた時に、最初に使用した練ることのできない混練機で仕上げて欲しい、と訳の分からない注文が出てきた。二軸混練機の改良のための費用を出すと言われたのでロータを導入するなどスクリューセグメントの大幅変更を行った。
スクリューセグメントにロータが導入されるとモーターへの負荷が増す。だめな二軸混練機のモーターの能力いっぱいの負荷をかけて混練することになった。思い切った改良で若干は性能が向上し少し練ることが可能になったように思われた。
しかし最適混練条件を求めてみたところ、ピンポイントで条件が見つかったがコンパウンドの性能ばらつきが大きく処方の仕上げができなかった。性能の低い二軸混練機はスクリューセグメントを工夫してもその能力に限界がある。
ただそのような二軸混練機で樹脂を処理してもストランドを轢くことができ、ペレットのの作成までできてしまう。その結果どこがダメなのか素人にはよくわからない。二軸混練機でどこまでのことができるのか知るためには、信頼できるKOBELCO製品を使用してみることである。
そして設備の限界を知り、それから安い機械を購入すれば目的に合った設備を経済的に導入可能である。但しペレットを作るだけならばどのような押出機でも構わない。
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1970年代に二軸混練機メーカーは大小多数存在し、それぞれ特徴があった。そのいくつかは倒産し、今日本には大手メーカーが残っているだけである。KOBELCO以外にも大和の砲身を製造したメーカーはじめ優れたメーカーがあってもKOBELCOを昨日推薦したのはサービスが良いからである。
実は中間転写ベルト用コンパウンドはKOBELCOの二軸混練機の技術だけで混練できなかった。少々改良する必要があった。中古の機械を改良したのだが、またその改良を担当したのは根津にある中小企業であっても神戸製鋼の技術者は協力的であった。おかげで短期間に理想とした混練機が完成した。
この時の経験で面白かったのはスクリューセグメントの設計では分散混合と分配混合の言葉がその説明で使用されたことだ。KOBELCOの混練機で優れているのはロータの設計技術とシリンダーの設計である。
1970年代の二軸混練機ではロータが使用されていない。この頃のスクリューには技術者の思いこみで考案された面白い形状のスクリューも存在する。神戸製鋼ではいち早くロータの研究開発に取り組んだと聞いている。
ロータについてはその効果の説明が教科書により異なっている。ひどい教科書になるとロータはモーターに過大な負荷をかけるので好ましくない、という説明もあったりする。この説明では材料よりもハードウェア―が大切に扱われている。
材料を混練するために適切な装置を選択する、というのが本筋である。混練する材料を機械に合わせるという考え方は本末転倒である。
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