試行錯誤という方法は、腕の良い職人も行う。職人で技能の差が生まれるのは、この試行錯誤ができるかどうか、という点ではないか、と思っている。もしそうならば、腕の良い職人は技術者でもある。
また、当方が32年間の会社生活で大卒以上の学力を有しながら、科学的方法を使わず、腕の良い職人のような技術開発を行っている人たちを写真会社で多数見てきた。
この試行錯誤を少しかっこよくしたのはタグチメソッドである、と思っている。タグチメソッドが嫌われる背景は、その方法にあるのではなく、その手法を指導している先生方が科学者然としている点である。科学として指導しているから基本機能の説明が難しくなる。
技術者の心眼で見える基本機能としてしまえば、初学者でも容易に理解できる。これをエネルギーと関係づけたり、妙な似非科学的因果関係から考えさせようとするから初学者には難解にうつる。
タグチメソッドは試行錯誤を効率よくやる方法だと思えば、日々の仕事に取り込みたくなるはずだ。計画性のない試行錯誤では、制御可能な因子を行き当たりばったり変化させて、ある日偶然に良い制御因子の組を見つけて、ゴールへ到達する。
会社では、行き当たりばったりではなく、それを計画的に行うことが求められる。そして計画的に行うだけでなく、科学的な香りをつけて行えば上司も納得する。企業の研究開発は科学的に行われているように見えるが、科学の真理を厳密に追及する進め方をしているところは少ない。
行き当たりばったりを工夫する方法として、ラテン方格に制御因子を、またSN比をその外に割り付け実験計画法のように実験を進めるやり方がある。このタグチメソッドでは、科学的に説明できない因子が選ばれたとしてもそれでよしとする。
そして、だれでも効率よく機能のロバストをあげることができる。タグチメソッドを指導している先生には叱られるかもしれないが、感度最高の制御因子を選べば、最高の性能を出せる技術を容易に創造できる。
タグチメソッドは今の時代において常識のように技術者は身につけておかなければいけない能力の一つだろう。ただし科学的な方法ととらえるとそれが難しくなる。タグチメソッドは科学的な香りのついた説明がなされたりするが、妙な制御因子の組み合わせが選ばれたとしてもそれで技術ができあがってしまう、技術的手法の一つである。
もし必要であれば弊社に依頼して欲しい。一般に指導されている考え方と異なる科学ではないタグチメソッドを進化させた方法を伝授いたします。それも教条主義にならず楽しく使いたくなるようにご指導いたします。ただしタグチメソッドはトレードマークなので仮にケンシューメソッドと呼ばせていただきますが—。
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しかし、技術開発に使える問題解決法は、人類の歴史をたどってみると科学だけではないことに気がつく。確かに科学は技術開発のスピードを速めたが、人類の過去の歴史を見てみると、少し極論かもしれないが、科学は教育という手段で普及するために便利な問題解決法だったにすぎないことが分かる。
科学が生まれる前の時代は天才的な技術者が、試行錯誤や風が吹けば方式の論理展開で技術を発明し、人類の生活を便利にしてきた。そして獲得された新技術が伝承され、それにさらに磨きがかかり、より生産性の高い便利な道具を生み出すとともに技術を高度化してきた。
科学で明らかな現象から導き出される機能だけを使って技術開発を行うのであれば、科学的方法が最も良いと思われるが、科学で解明されていない現象から新たな技術を生み出さなければいけないときに、科学の無い時代の人類が行っていた方法は、技術開発のスピードを上げる。
例えば電気粘性流体の耐久性が問題になった時に、科学的方法でアプローチした人たちは、界面活性剤で耐久性の問題を解くことができない、という否定証明を見事に行っていた。当方は、その結果を見て、科学的方法ではこの問題を解けないことを知り、科学の無い時代の天才が行っていた方法で問題解決を行った。
当方は試行錯誤で電気粘性流体の耐久性を向上できる界面活性剤を見つけただけだが、試行錯誤と言っては馬鹿にされると思い、「15世紀の天才が行った方法で見いだした。」と冗談半分に答えただけだった。電気粘性流体の耐久性の問題の解は、界面活性剤以外の方法ではゴムから添加材を抜いてゆくというナンセンスな手段になる。界面活性剤以外の良い解が無いならば、界面活性剤で何とかして解決するのが技術の問題解決法である。
ところが、難しい問題について、できない、という証明はいつでも科学で簡単にできてしまう。異なるHLB値の界面活性剤をいくつか添加して解決できないことを示せばよいのである。報告書を読むと多くの種類の市販されている界面活性剤を検討し、界面化学では問題を解くことができない、と結論が出されていた。しかし、界面活性剤で問題解決できたのである。それも非科学的アプローチによってである。(続く)
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E.S.ファーガソンは、「技術屋の心眼」で技術が科学とは異なる行為であることを述べている。ただこの書で残念なのは、科学偏重の大学教育に対する批判で終わっていることだ。大学の使命を考えたときに、そこで行われる教育が科学偏重になるのは仕方のないことである。
もし、大学のあるべき姿をたずねたら、科学を追究することだと多くの人は答えるだろうし、当方もそのように思っている。もし大学で技術を扱うならば、工学部で技術なるものを科学的に研究することになるであろう。
最近大学でも面白い試みが行われており、例えば京都工芸繊維大学では漆という伝統工芸を科学の視点で研究している(注1)。そしてその研究のアプローチの方法として職人の動きまでに着目し美が生まれる仕組みについて迫ろうとしている。工学部でも技術に対してこのような取り組みが必要に思っている。当方が学んだ工学部は理学部との境界が無い状態だった。
この欄で当方の科学に対する考え方を何度も書いているが、科学は一つの哲学である。それも真理を追究する方法として、それだけで技術開発できる領域は極めて狭いが(注2)人類が考案した現在最良の問題解決法とみることもできる。論理展開についても技術では許される風が吹けば方式の論理は、科学では許されない。その厳密さから必ず誰がその知識を用いても一つの真理に到達することが可能である。
厳密に定義されているから、だれでもその定義を身につけ学んでいけば、科学の知識を身につけることができる。習得にかかる時間の問題を除けば科学は誰でも身につけることが可能な知識の体系である。だから科学で記述された技術の伝承は確実となり、容易なので、技術を科学的に開発することが20世紀の大ブームとなった。(続く)
(注1)濱田先生が工芸を科学で研究するというアプローチで進めており、大学で理系を選択していない職人が学位取得まで行っているユニークな研究だ。この大学は、一度見学されると面白いと思う。
(注2)科学以外の体系だった問題解決法が重要な理由である。
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科学における問題解決の手法は、小学校から学ぶので誰もが身につけている。だから、風が吹けば桶屋が儲かる話を笑うことができる。逆に技術の問題解決プロセスについては、メーカーに勤めない限りは学ぶ機会も無いのが日本の現状である。弊社はこれを研究開発必勝法プログラムとして販売している。
科学が存在しない時代にも技術開発が行われていたことはマッハ力学史に書かれているが、意外にもこの重要性が知られていない。ヒューマンプロセスによるその方法は、どんどん今の時代の問題解決法にも活用すべきである。科学的問題解決法だけが優れた方法ではないのである。
科学的問題解決法の利点は、真理が一つ、という大前提を使うことができる点で、これを技術開発に安直に持ち込むと痛い目に遭う。技術開発では、機能を実現する方法はいくらでもあるからである。ゆえに特許がたくさん出願される背景になっている。特許を読むと技術が科学だけではないことをすぐに理解できる。
32年間の技術開発成果において世間に自慢したい技術が二つある。自慢したい理由は、科学的に問題解決しなかった成果だからである。その他の技術開発成果には、どこか科学的問題解決法が使われている。詳細な問題解決方法については弊社へ問い合わせていただきたい。また一部は未来技術研究所(http://www.miragiken.com)でも公開しているのでそちらもご覧頂きたい。
さてその二つの技術とは、ゴム会社が日本化学会技術賞を受賞している技術の主要部分を占める高純度SiCの合成技術と昨年高分子学会から招待講演を依頼されたカオス混合技術である。この二つの技術では、思考実験と試行錯誤というヒューマンプロセスをほとんどの開発プロセスで用いた。いずれも科学の成果であるフローリー・ハギンズ理論を使えなかったからである。
高純度SiCの合成技術では、前駆体高分子の合成についてはカプセル化し、それが炭化された部分について科学的に扱い学位を取得している。カオス混合技術では、なぜそこに至ったかは講演で一部を説明したが、やはり大半をカプセル化し、その混合技術で製造されたPPSとナイロンの相容について科学的に説明している。
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20世紀に科学は飛躍的な進歩をとげたように見えるが、未だ解明されていない現象は多い。そのため昨年のSTAP細胞の騒動に見られるように科学で未解明の現象を扱うときにはとんでもないことが起きる。この事件では、未熟な科学者の責任が問われたり、世界的な科学者が自殺したりと散々な騒動になった。
さらに学位論文のコピペの問題が大きく取り上げられたりもしたが、40年近く前、大学の生協で購入した無機材料の教科書に、10ページ近くアメリカの学者の総説をそのまま日本語に翻訳した部分があったことを見つけた経験があったので、あまり驚かなかった。
教科書は複数の教授の共著であり、全体をとりまとめていた大御所の先生が気がつかれていなかったいい加減さに当時びっくりした。当時の当方を指導してくださっていた先生は当方の勉強熱心さを褒めてくださったが、本来は大御所の先生を批判すべきところではないかと思ったりもして、アカデミアでも大人の対応が必要なことを学んだ。
今日のこの欄では、昨日の補足の補足を書いてみたいと思い書き出したが、高分子ではなくSTAP細胞の話で書き出してしまい、改めて昨年の科学分野における騒動が当方のトラウマになっていることに気がついた。
今年は、投稿された論文に使われたマウスにES細胞が見つかった謎を解明する目的で警察へ訴える人まで出てきたが、そもそもあの騒動は技術と科学を同じまな板の上で処理しようとしたことが原因で発生しており、警察へ訴えるような問題ではなく、山中先生の巧みな問題解決法を多くの研究者や技術者が見直す機会としてとらえるべきだと思う。
STAP細胞のように、科学者が科学の研究と技術開発を同時に行わなければいけない状況になったときに、科学の姿勢と技術開発の姿勢を明確に区別すべきである。山中先生はそれをうまく行いノーベル賞受賞に至った。すなわち技術の部分をうまくカプセル化し一つの完成したオブジェクトとして扱い、そのオブジェクトの振る舞いを科学的に研究されたのである。技術開発では、この逆で科学の未解明な真理をカプセル化した機能をオブジェクトとして扱う方法となり、これがヒューマンプロセスによる技術開発となる。
もしSTAP細胞もそのように進めていたらあのような騒動にならなかった、と思っている。研究で真理が見つかるまでカプセル化すべき部分を早い段階ですべてさらけ出し、オブジェクトとしてその振る舞いを明確にすべきSTAP細胞について、研究を怠り、ES細胞でお茶を濁したのが例のマウスの実体ではないか。警察へ訴えるまでもない一部の研究者が想像しているとおりである。
高分子自由討論会の最初に行われた名大の先生の発表は科学者としての姿勢で研究が進められていた。自然界の現象には科学で未解明な事柄が多すぎるので、あのような真摯な研究は重要である。もしこの真理が30年以上前に分かっていたら、ひしゃくを5回使用するプロセスを考案した技術者は、処方を見直したかもしれない。
なぜなら当方は4元系のラテックスの処方を考えた20年近く前にある方法で必ず4成分がコポリマーとして反応するようにデザインしたのである。必ずしも今回の発表の真理に近い内容ではなかったが、科学で未解明の事柄としてカプセル化したヒューマンプロセスで問題解決を行ったのである。
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エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車が大手自動車各社から販売されている。このハイブリッド車の技術は燃費を改善するための機能を実現したものと思っていたが、燃費の改善を最重要視しているタイプと車の運転の楽しさを重視したタイプの2種類があることを最近知った。前者の代表はトヨタで後者はスバルである。
おそらく自動車の大半は電気自動車に置き換わるだろうが、そのつなぎとしてハイブリッド車が位置づけられている、と思っていたら、そのトヨタがダウンサイジングターボ車を販売しだした。いろいろ調べてみると、ハイブリッド車が主流なのは日本だけで、欧米ではダウンサイジングターボやグリーンディーゼルと呼ばれる技術を採用した省燃費車が主流らしい。
これは化石資源を枯渇させないための技術を目指した過渡期の現象だが、ガソリンの置き換えが電気になるのかそれ以外かはユーザーが選択する時代に入ったようだ。デンソーはバイオディーゼルの開発を行っており、これが成功すればグリーンディーゼルも未来技術の視野に入ってくる。また、脱石油以外に地球温暖化対策として水素社会実現を目指した燃料電池車も未来の自動車として期待されている。
車の機能を実現するための動力として、ノーマルエンジン、ダウンサイジングターボ、グリーンディーゼル、ハイブリッド、燃料電池車やノーマル電池車が今市場に出てきており、ユーザーが未来の自動車を選択する、すなわち自動車メーカーと価値を共創する「実験の時代」なのだろう。
ノーマルエンジン以外のすべての省燃費車に試乗していないので動力源が車の価値へどのように影響するのか論じれる立場ではないが、一例としてハイブリッド車について市場評価を調べてみると、省燃費性が低いにもかかわらずスバルのハイブリッド車の評判が良い。ハイブリッド車としては出力が低いモーターとエンジンとを組み合わせており、大きなモーターと組み合わせているトヨタの技術の対極にある。
ホンダからハイブリッド車が初めて登場したときに用いられていたモーターと同じ出力で、トヨタが自社の車を腕力のある若者二人が自転車に乗っている姿で、ライバルをよぼよぼの老人二人が乗った自転車の姿で例えた比較広告を行っているが、1.5tもある車に用いるには小さな出力のモーターである。
しかし、スバルの場合に小さなモーターと組み合わせているのは、トヨタ86のエンジンの流れを組む2000ccの力強いボクサーエンジンである。エンジンの低回転域で不足するトルクを補うようにモーターは機能し、その結果レクサスのような高級感のある乗り心地になるという。すなわち、ハイブリッドの持っている機能を、省燃費ではなく自動車運転時の高級感という機能に転化した技術で、スバリストという独特のファンがいるのもうなづける。
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高熱伝導性高分子を微粒子分散系高分子として材料設計するときに、パーコレーション転移だけを考えているとうまく材料設計ができない。しかしその現象にはパーコレーションは関係している。複合材料の力学物性にもパーコレーションは関係しているが、その様子は電気抵抗測定の結果のように明確に観察されない。
微粒子分散系高分子において、微粒子の分散状態を科学的に論ずる場合には、クラスター生成を確率で取り扱うパーコレーションが科学の世界では一般的である。もう昔のような混合則で議論していては時代遅れである。
技術の世界では、現象をシミュレートするのにパーコレーションだろうが混合則だろうがかまわない。もし、ある微粒子分散系高分子にうまくフィットする混合則の式が見つかれば、それを用いて材料設計を行えば良い。現場の不良を考察するときには電卓を活用するが、そのようなときに混合則は便利である。
プロセスに異常があり、微粒子の添加量にエラーが生じているかどうか混合則で結論を出すことができる。技術では、機能が重要であり、微粒子のクラスター生成を議論することが目的ではない。このあたりを勘違いして大騒動になったのは、理研のSTAP細胞である。
STAP細胞を技術として扱っておれば、あのような結末にならなかった。もし技術として扱っていたならば、繰り返し再現性が上がるまで発表を控えただろうと思われる。STAP現象から再現性よく機能を取り出す手段が見つからなければ、STAP細胞ができないことは技術者ならばすぐに理解でき、実験をそのために計画する。
科学の研究を行っているのか技術開発を行っているのか自分の行為を明確に認識して取り組まなければ良い結果が生まれないのは高熱伝導性高分子の開発の場合も同様である。技術開発をやっているつもりで、パーコレーション理論にうまく合わないから、といって研究に取り組んでみるのは「時間とお金」があるならば良いことかもしれない。
しかし、パーコレーション理論にうまく合わない現象としてあきらめ、技術として試行錯誤で取り組むのも技術者ならば間違いではない。もしSTAP細胞についてそのように技術として取り組み技術として完成してから発表していたなら、あのような大騒動にならなかったろう。
技術開発の現場で面白い現象に遭遇すると科学の世界に目を奪われたりするが、そこをぐっとこらえて技術開発ができるようになりたいと思っている。科学の世界は技術開発が終わってからの楽しみにするようなストイックな技術者でありたい、と努力してきた。
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ゴム会社で高純度SiCのJVを立ち上げ、写真会社に転職した。ヘッドハンティングのI社から転職を促されていた。頻繁にセラミックス関係の会社をいくつか紹介されていたが、転職するときに社内の規程にひっかかり躊躇していた。
騒動が起きて悩んでいることを伝えたら、すぐに専門と異なる高分子技術の開発センターマネージャーという役職を提示された。写真会社は高分子技術の開発センターを新規に立ち上げるため、高分子技術を事業としている会社から人材を集めていた。
そのセンター長は、フィルムや繊維で有名なT1社から10年ほど前に転職された定年間近の方で、次期センター長候補としてT1社のライバル関係にあるT2社から来られた方もいた。当方は、研究管理スタッフ主任研究員という肩書きで、専門は問わない、と言われたので転職を決意した。
お二人とも優しい方であった。また、センター長自ら担当者の研究ノートをご覧になられており、丁寧に一人ずつコメントを書かれていた。そのため、センターのモラールは高く、成果が出そうな雰囲気ではあった。ところがセンターの前身となる部署の時代も含め、3年ほど成果が出ていなかった。その結果、当方が転職した翌年には、センターの予算を組み立てることができない状態になった。
そのような状態でも上司は優しかったが、予算を立てられない状態では、その優しさは無意味であった。また、それでも研究ノートへコメントを書く作業を趣味のように続けられており、当方はあせってテーマを見直し組織の組み替え案や企画案を用意した。昭和35年に公開された酸化スズゾルの特許を見つけたのもこの頃である(注)。やがてセンターはつぶれ、他の不採算部門を集めた技術研究所へ改組された。センター長は退職され、次期センター長はスタッフ部長になられた。
P.F.ドラッカー「経営者の条件」(1966)には「仕事上の関係において成果が無ければ、温かな会話や感情も無意味である。貧しい関係のとりつくろいにすぎない。逆に関係者全員に成果をもたらす関係であれば、失礼な言葉があっても人間関係を壊すことはない。」とある。ゴム会社は厳しい会社であったが、今でも人脈はつながっており、このドラッカーの言葉は正しいと思っている。
*高純度SiCのJVを立ち上げるまで、大学の先輩に当たる本部長は大変厳しかった。今なら周囲から何か言われそうな「女学生よりも甘い」という迷言まで飛び出した。その一言で外部へ営業に出かけることになったが、大変勉強になったとともに成果も出た。人脈も広がった。
(注)金属酸化物微粒子をフィルムの帯電防止技術に用いた商品はライバル会社から販売されていた。100件以上の特許も出願されており、新たな技術開発は無理だという判断が転職先では出されていた。転職先ではやや性能が劣るイオン導電性高分子を用いた技術が帯電防止技術の中心であった。
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感材に用いるラテックスの製造現場で、合成後の物上げ直前にひしゃくを用いるという20年以上前に開発された技を発見し使わせてもらった。ところが最初に考案された時に5回使用していた点が気になった。当方の経験では、上手くやれば一回で良いプロセスであり、また現場の作業者も1回でも大丈夫と言っていた。
当方は、個人差と誤差を考慮し3回と決めたが、5回とした理由を知りたかった。しかし、製造現場の手順書は存在したが、開発部門の報告書は廃棄されていたのでそれを知るための手段は無かった。
ひしゃくで表面を5回すくい廃棄しているのだから、物上げを工夫して表面付近のラテックスを廃棄すればよい、と考えたが、それならば、実験室でも再現できそうな現象である。しかしこの現象は実験室で再現できないことがわかった。
そもそもこの二十年以上前に開発されたラテックスと同じ物性のラテックスを実験室で合成できないのだ。工場で生産されたラテックスと実験室のそれを用いて単膜を作り、粘弾性評価を行うと一致しない。両者ともに品質規格内のラテックスができるのだが、粘弾性データを比較すると明らかに異なる材料である。
あれこれ実験を行い、ひしゃく5回の謎を探っていたら、面白いアイデアに気がついた。ノウハウに関する技術であり、公開を差し控えたいが、その技術を用いると工場で生産されているラテックスをコストダウンできることに気がつくとともに、ひしゃく5回を考えた技術者の気持ちを理解できたようなひらめきがあった。
科学的なひらめきではないので間違っているかもしれないが、5回とした技術者はただ者ではない、と想像するとともに、20年前の技術は現場で最適化された可能性が高いと推定した。この推定から当時の勤務体制と現在の体制との違いも知った。勤務体制が変わったので、ひしゃくの回数を減らすことができた可能性が高い。
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(昨日からの続き)5回を2回に減らして手柄を立てた作業者にコツを尋ねたら、油のようなものが浮いているのを見つけてひしゃくですくう作業だが、うまくやれば1回で済む。しかし5回やれと指示されていたので心配だから、ややてかりのある部分を2回目にすくって終わってみた。その時、特にエラーが発生しなかったので、なぜ5回もやっていたのかと疑問に思った、と怪しい説明が返ってきた。
そして、ある日こっそりと作業そのものをやめたところ規格外になったので、2回に減らす提案をした、とのこと。製造手順書を守らない作業者の問題が気がかりに思えたが、最初にひしゃくですくわれる油のようなものを分析したのか、と係長に尋ねてみた。すると、技術センターに技術が無いので分析してもそれが何だったのかわからなかった、仕方がないので製造部で意志決定しデータを揃え社内の品質会議に提案した、と係長は胸をはって回答していた。
昔開発されたラテックスの製造現場で何が起きているのか興味があったので、その時1回目にひしゃくですくわれた、てかりの多い材料を持ち帰り解析を行ったところ原因がわかった(この部分は当方のノウハウであり、ご興味ある方は問い合わせて欲しい)。単純に組成分析をしても答えは出ないが、ひしゃく作業に意味があるならばそれなりの解析を行うと答えが見つかるのである。ただ解析手法については非科学的発想から出た手法である。
この場合科学的に考える人は、まず組成分析を行う。これは科学的に正しいかもしれない。しかし、当方は技術的発想で考えだした科学的な解析手法をとってみた。そしたら現象をそれなりに説明できる妥当な答えが見つかったのである。この経験から、当方の担当しているラテックスも同じことが起きているのでは、と考え、ひしゃく作業を製造手順書に加えることにした。
但し、2回では不安だった。しかし5回にしても製造現場で昔のラテックス同様に2回にされたら大変である。昔開発されたラテックスが、なぜ2回のひしゃく作業で生産が安定になっているのか不思議ではあるが、2回で問題が起きないならば3回と決めて、この重要な作業の回数を変更前には必ず開発部門の担当者に相談のこと、と付け加えることにした。
3回という数値に科学的根拠など無かった。しかし昔開発されたラテックスと同様の現象が起きているならば、技術的な視点で最低2回はひしゃく作業が必要と考え、安全圏の3回とした。このひしゃく作業を加えた製造手順書で現場の係長から同意が得られたので、コストダウンを現場の成果にして良いことを伝え、開発部門へ提案されたテーマを取り下げてもらった。
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