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2012.10/13 未来予測

アルビントフラーの第3の波は、衝撃的でありました。日本でセラミックスフィーバーが始まる頃に情報技術による産業革命が起きる、という内容の本を読みびっくりしました。あれから30年以上経ち、改めて彼の著書を読んでみると、大枠は外れていませんが細部にはいくつか当たっていないところがあります。しかし、未来予測の大切なことは文明がどちらに向かうのか予測し、現状の体制で問題があるならば、それを是正し、人類の明るい未来を迎えられるように啓蒙することでしょう。おそらく彼の著書で外れている部分は、好意的に解釈をすれば人類が第3の産業革命への対応が遅れたため、と捉えることもできます。

 

人類の進化のスピードは早まっていますので、そろそろ第4の波が始まる頃ですが、第4の波について、エネルギー革命というキーワードを外せないように思います。昨年の3.11の大地震は、世界中に原子力発電の問題を提起いたしました。おそらくチェルノブイリの衝撃よりも大きかったのではないでしょうか。人為的ミスが重なったとはいえ、自然災害が引き金となっています。これまでの原子力事故の原因との大きな違いです。科学的予測が自然の力の前に無力だったわけです。太陽のエネルギーを人類は手に入れた、と小学生の時に習いましたが、傲慢でした。人類は自然と調和できるエネルギーを手に入れたときに幸せになる、というご託宣を3.11の時に受けたように感じています。

 

科学技術の進化にも面白い動きがあります。石油リファイナリーからバイオリファイナリーへの動きです。石油は中東などの一部の地域に局在しています。その石油を巡り、人類は様々な闘争を繰り返してきました。バイオリファイナリーの動きは、その力関係を変えるインパクトがあります。ジャトロワ以外にも石油代替となる植物がいくつか提案され始めました。コストの問題が指摘されていますが、石油は確実に値段が上がってゆきます。現在提案されているバイオリファイナリーのコストは、それが実現したときに石油同等になる可能性も見えてきました。

 

再生可能な自然エネルギーを直接電気に変換する技術も普及し始めましたが、自然エネルギーを直接電気に変えた場合には、人類がコントロールしやすいように一度蓄電する必要があります。エネルギー変換と蓄電を各家庭で行えばエネルギー効率はあがりますので、創電家電というカテゴリーも生まれようとしています。このような動きと第3の波の成果をさらに発展させてスマートグリッドがこれから開発が進み普及するものと思われます。

 

今後30年このようなエネルギー革命が中心となり、文明が進化してゆくであろうと思いますが、この進化の方向を技術開発で制御すれば、日本がエネルギー産出国になる可能性が見えてきます。すなわち第4の波は、日本がエネルギー産出国となるチャンスの産業革命で、弊社ではこれらの変化に対応するために技術から芸術まで提案できるよう準備を進めております。弊社の電脳書店の活動に注目してください。

カテゴリー : 一般 宣伝

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2012.10/11 技術開発とアイデア

商品を技術開発するときに、商品に搭載される技術に関しすべてに精通していることが望ましい。しかし、実際には商品の主要機能が関係する技術分野は広いので、一つの商品を開発するときに必要な技術分野の人材でチームを形成し、商品開発を行う。ほとんどの商品には、高分子材料が使用されているので、メンバーにはたとえ専門家ではなくても高分子に詳しい人材が加わると思います。その方に受講して頂きたいのが「高分子材料のツボ」セミナーです。

 

転職前セラミックス開発を担当していた講師が、転職後の会社で高分子分野のリーダーを勤めることになりましたので、アカデミアの諸先生方の指導を受けながら研究開発を行いながら作成したメモを基に企画しましたのが、本セミナーです。転職前の会社がゴム会社でしたので高分子に関する知識を持っていましたが、実際に技術開発を担当する場合には力不足を感じていました。関係学会や高分子自由討論会に参加しながら勉強し、技術開発に必要な先端知識も含め、頭の中に入れているとアイデアの基になる知識を中心にメモを作成しました。わざわざ教科書の抜き書きのようなメモを作成した理由は、教科書の内容が間違いではないが、アイデアを出すには不適切な解説の場合が多く、目の前の現象についてアカデミアの先生から直接指導を受けました考え方でメモを作成する必要を痛感したからです。

 

すなわち高分子科学は、市販されている高分子の種類を見ていると進歩が無いように感じますが、この30年大きく進歩しました。特に高分子物理に関しては分子1本のレオロジーを論じることができるくらいの進歩です。教科書も少しずつ書き換えられてはいますが、教科書という性格から大幅な書き換えは行われていないようです。

 

また、このような科学の進歩の側面以外に教科書では絶対に説明していない材料の寿命と靱性の結びつきも、実用商品では重要な考え方なのであえて取り上げています。すなわち「高分子材料のツボ」セミナーは、技術の観点でまとめたメモを基にした内容ですので、受講後すぐに実務に生かすことができます。また受講時間も2時間前後ですので、高分子材料の専門家の方も短時間に材料からプロセシングまで知識の整理ができます。是非ご利用ください。

 

このセミナーへの橋渡し役の本も先日出版しました。「誰でもわかる高分子」というタイトルで、「成長する絵本」というコンセプトで企画しました。すなわち読者からの質問を基に今後この本を成長させてゆく予定ですので、是非ご一読後質問をお寄せください。

 

 

 

本書は高分子に関する知識を持っていない人の為に、写真と絵を中心に分かり易くまとめました。項目毎に穴埋め式の復習問題もあるので、学習内容の確認もできます。

また、電子書籍ならではの特徴として、購読者様からの質問を受け付けその回答が毎月反映されていきます。是非ご活用ください。

 

高分子材料のツボセミナー

実務で高分子材料科学を活用する視点でまとめました。
高分子科学の全体像について学べますので、専門外の技術者にも学生にも役立ちます。

 

カテゴリー : 一般 宣伝 高分子

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2012.10/10 「誰でもわかる高分子」出版しました。

高分子材料のツボ」という電子セミナーを販売していますが、お客様から、初心者用でもう少し説明の易しい本はできないか、というリクエストを頂きました。「高分子材料のツボ」につきましては、専門外の方の購入を考慮していなかった点を反省し、今回「成長する絵本」というコンセプトで「誰でもわかる高分子」という書籍を出版いたしました。

 

誰でもわかる高分子」というタイトルに偽りはありません。材料の破壊という現象を軸に高分子についてやさしく説明しています。さらに、読者の疑問に答えられるように質問も受け付けております。読者からの質問につきましては、定期的にまとめ、「誰でもわかる高分子」に追加してゆきます。この読者からの質問に答えることで、「誰でもわかる」という目標を達成しようと考えています。本書はストリーミング配信の特徴を生かした「成長する絵本」になっています。

 

今回「誰でもわかる高分子」の出版を記念しまして、「高分子材料のツボ」セミナー廉価版も質問を受けつけることにいたしました。これにより、質問券付きを廃止しました。まだ「高分子材料のツボ」セミナーをご利用になっていないお客様は、この機会に是非ご利用ください。本書は、自分のペースで学ぶことが可能で、セミナー修了後はテキストをアイデアノートとして活用して頂けます。高分子材料について問題が発生したときに、分厚い教科書と格闘する前に本書でアイデアの整理をして頂き、問題解決にあたると解決の見通しを容易に得ることができます。難しい問題につきましては弊社へご相談ください。

 

 

本書は高分子に関する知識を持っていない人の為に、写真と絵を中心に分かり易くまとめました。項目毎に穴埋め式の復習問題もあるので、学習内容の確認もできます。

また、電子書籍ならではの特徴として、購読者様からの質問を受け付けその回答が毎月反映されていきます。是非ご活用ください。

 

高分子材料のツボセミナー

実務で高分子材料科学を活用する視点でまとめました。
高分子科学の全体像について学べますので、専門外の技術者にも学生にも役立ちます。

カテゴリー : 宣伝

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2012.10/02 電子セミナー「高分子材料のツボ」のご案内

㈱ケンシューでは、デジタルコンテンツならではの、他にはない新しい形として、購読者参加型の電子セミナーを販売中です。

 

弊社の提供している電子セミナーは、直感的に理解しやすいよう項目毎に1ページを当て、そこへアイデアを出すために必要な重要事項をまとめ、音声による解説もつけております。また電子書籍の形式なので、空いた時間に購読者側のペースで受講し、途中で中断・再開する事も、受講終了後も自由に閲覧することもできます。今回はその一つ、弊社電脳書店で販売中の電子セミナー「高分子材料のツボ」についてご紹介させて頂きます。

 

「高分子材料のツボ」では、高分子の身近な歴史や高分子構造をどのように理解すればよいのか、から始まり、その評価技術、結晶化は何故起きるのか、古典的なレオロジーの位置づけ、そしてプロセッシングについても、実際に実務を経験してきた技術者ならではの視点で解説しております。

 

本コンテンツの特徴は、購読者の質問を受け付けている事です。質問につきまして、質問者へ直接回答はできませんが、一定期間(およそ1か月前後)届きました質問を分類し、その回答を定期的に追加していきます。質問回数に制限はなく、セミナー内に記載された期限内であれば何度でも質問する事が可能です。

 

本コンテンツの対象は学生、専門外の技術者、そして専門技術者の知識整理目的となっております。
興味を持たれた方は是非ご購入を検討してください。

 

 

クリックすると説明とサンプル閲覧ができます。

(¥1000)

サンプルはこちら(Adobe Flash Player最新版がプラグインされている必要があります)

 

弊社では同時に顧問契約によるコンサルティングも行っていますので、高分子材料の分野でお困りの方はご相談ください。

 

倉地育夫

Mail

Info@kensyu323.com

カテゴリー : 宣伝 電子出版 高分子

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2012.09/29 高純度SiC前駆体の発明

硼酸エステル変性ウレタンフォーム(1)は、燃焼時にアモルファスボロンホスフェートを生成し、高分子の難燃化を行うコンセプトで開発しましたが、合成された高分子は、高純度ボロンホスフェートの前駆体高分子とみなすこともできます。

 

1980年頃通産省主導でセラミックスガスタービンを開発目標にしたムーンライト計画というプロジェクトがスタートし、セラミックスフィーバーが始まりました。ファインセラミックスの製造プロセスとして、金属アルコキシドを用いるゾルゲル法は注目を集めておりました。セラミックスは高温でも安定なので、高純度のファインセラミックスを得るためにセラミックスを合成してから高純度化するよりも、原料段階で高純度化できるゾルゲル法が有利だからです。しかし、アルコキシドの安定性や反応バランスから、合成できるセラミックスが制限されておりました。高分子マトリックス中にセラミックスの成分を固定化したゾルゲル法であれば、原料のアルコキシドの制約が無くなります。

 

硼酸エステル変性ウレタンフォームの開発が完了した時に、フェノール樹脂発泡体開発プロジェクトが社内にできました。フェノール樹脂は耐熱性が高い樹脂ですが、当時のフェノール樹脂で発泡体を製造すると難燃性が低下する問題がありました。しかしフェノール樹脂は、燃焼時に炭化物を多く生成する樹脂ですので、リン酸エステル系難燃剤が無くとも難燃性向上ができるのではないかと推定し、硼酸エステル変性ポリウレタンフォームのコンセプトを見直し、シリカゾルだけで難燃性向上を狙ってみました。見事的中し、LOIの向上とJIS規格準不燃レベルも低密度フェノール樹脂発泡体で合格することができました(2)。このフェノール樹脂とシリカゾルの複合材料は、窒素中800℃で炭化(蒸し焼き)しますと、高純度のシリカ(SiO2)と炭素(C)の均一に混合された材料になり、さらに1600℃以上の高温度で反応させますと、高純度SiCが合成されます。すなわち、シリカゾルで難燃性を向上させましたフェノール樹脂発泡体は、高純度SiCの前駆体高分子でもあるのです。

 

1990年代に有機無機ハイブリッドの研究報告が活発化しますが、1980年代に高分子前駆体からセラミックスを合成する研究は、ノーベル賞が噂された故矢島先生のポリジメチルシランのご研究が存在したぐらいで、2種以上の高分子を均一混合し、セラミックス前駆体に用いる研究報告はありませんでした。ホームランを狙い、フェノール樹脂とシリカゾルのハイブリッドポリマーの研究をフェノール樹脂発泡体開発の傍ら続けました。

 

難燃性を向上させたフェノール樹脂発泡体は某大手建築会社の天井材に採用されますが、この天井材開発は成功しても、いろいろなマネジメント上の障害が多数発生し、開発プロジェクトの活動は精神的苦労が大きかったので、良い思い出になっていません。ただ、プロジェクト活動中はストレスの多い毎日でしたので、時間外のテニスを有機無機ハイブリッドポリマーの研究に切り替えて、気分転換し楽しんでおりました。

 

天井材用に開発されたフェノール樹脂とシリカゾルのハイブリッドポリマーでもナノレベルの複合化を達成していました。さらに難易度が高い分子レベルの複合化をめざして、シリカゾルのかわりに、水ガラス(ケイ酸ソーダ)から抽出したケイ酸ポリマーとフェノール樹脂のリアクティブブレンドを研究していましたが、中間処理にジオキサンやTHFを用いますので作業環境の問題を抱えておりました。この研究は、フェノール樹脂とポリエチルシリケート(TEOSなど)とのリアクティブブレンド及びそれを用いた高純度SiCの発明(3)(4)へ発展しますが、難燃剤の研究が、ファインセラミックスフィーバーの影響を受け、ゴム会社の事業とは無関係の新しいアイデアを生み出す原動力になっておりました。

 

この時の思考過程は、コンセプト重視の考え方に思考実験を組み合わせたプロセスでしたが、ソフトウェアー工学のオブジェクト指向やエージェント指向の勉強もしておりましたので逆向きの推論の有効性に着目し始めておりました。「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や「問題は「結論」から考えろ!セミナー」では、若い時にどのようにアイデアが浮かびそれを実現してきたのか、その方法をまとめています。是非ご一読ください。

 

 

 

<参考文献>

1.特開昭58-1366158

2.特開昭59-100144

3.特開昭60-226406

4.特開昭61-132509(特公平6-2565)

 

カテゴリー : 宣伝 電気/電子材料

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2012.09/18 技術屋の心眼

「技術によって生み出された人工物に含まれている知識は、どんなものであれ科学がもたらしたものにちがいない-科学の時代と言われる今日、こうしたあまりにも安直な考えが一般的となっている。これは現代の俗説の一つであり、そうした俗説は、技術に携わる人々がわれわれの住んでいる世界を形づくるに際して、科学的とはいえない多くの決定ー大きなものも小さなものもーをしていることを無視している。日常使用している多くの物体が科学の影響を受けていることはたしかである。しかし、それらの形状、寸法、外観は、技術に携わる人々ー職人、技術者、発明家ーによって、科学的ではない思考法を用いて決定されてきたのである。」

 

以上はE.S.ファーガソン著「技術屋の心眼」(平凡社)の序文であります。この本はバブルがはじけた1995年に、翻訳の初版が発行されました。ちょうどコニカ(現在コニカミノルタ)へ転職して4年目の時で、酸化スズゾルの帯電防止技術を製品に搭載することに成功し、新たな製品化テーマを担当したときです。通勤電車の往復で一気に読んでしまいました。(「問題は「結論」から考えろ!」でも紹介しています。)

 

科学と技術は車の両輪、とよくいわれます。しかし、科学につきましては学校教育という学ぶ場がありますが、技術につきましては、就職するまで真剣に学ぶ機会がありません。また、学校教育は、教育基本法など社会標準などが決まっており、皆同じ水準の教科書で勉強しますが、技術教育は企業ごとに様々です。日本の社会の常として、転職してよかったことはあまりありませんが、技術者教育について企業に差がある、ということを学びましたのは大きな収穫、と思いました。メーカーでトップになる企業は、やはり技術者教育に力を入れている、あるいはOJTで技術者を育成できる企業である、と痛感しました。技術者を大切に育てながら、営業活動も含め均等に力を入れることのできる企業が、世界のトップ企業になれるのでしょう。

 

どこのメーカーでも技術者教育のシステムを大なり小なり備えているかと思います。しかし、技術者を育てていこうという風土まで企業文化の中に根づかせるには、企業トップの努力が必要です。ブリヂストンの12年間は、それを体感できた貴重な人生経験として宝の期間です。

 

「この会社には技術が無い」と、入社半年で退職した同期もいましたが、その彼がイメージしていた技術とは科学の世界観の科学技術でした。「カンと経験と度胸(KKD)」を豪語する先輩社員も多く、現場現物主義の徹底した風土で、科学教育を受けてきた新入社員の目に「科学技術が無い」、と写っても仕方がない会社でした。企画書を持って行くと、一読もせず、「まず、物を持ってこい」と叱る研究部門のトップがいる会社でした。軽量化タイヤのスペックを科学的に求める新入社員の実習テーマに対して、「君が考える軽量化タイヤとは、何か」、と真剣に熱く質問するCTOのいる会社でした。

 

一方で、充実した大学への留学制度や、学会活動、学位取得など学術を極めようとする社員に理解がある会社でした。大学への寄付など学術方面への貢献も企業活動の中で積極的に推進している会社でした。学術の限界を語り、実技の神秘性や奥深さを学術の視点と技術屋の心眼で指導できるメンターがいる会社でした。

 

ブリヂストンには、科学と技術が車の両輪としてうまく動いているイメージがありました。少なくとも技術とは何か、を真剣に追求する風土だったと記憶しています。科学は、学校教育も含め十分すぎるぐらい学ぶ機会がありますが、技術については学べる機会や環境が少ないように思います。メーカーが唯一の環境かもしれません。その環境は企業により大きな差があります。各企業がこれまで培った経験知をうまく伝承し、企業に貢献できる技術者を育てることができるかどうかが、今後の日本の再生を左右すると感じています。

 

技術者教育に関し、社会標準は無いように思われます。技術というオブジェクトが、属人的であったとしても企業のノウハウまで含んでいるのなら、標準化は難しいかもしれません。E.S.ファーガソンの著書は、技術とはどういうものか、をわかりやすく表現しています。訳者あとがきでは、核エネルギーの開発の成功は科学的思考の産物で工学的な現場感覚を軽視していることを指摘しています。このあとがきは福島原発の事故よりも前に書かれたものです。3.11以降の状態から「技術」というものを今一度真剣に考えなくてはならないと感じました。弊社は、少しでもそのお役に立てるような活動をしたいと考えています。

カテゴリー : 一般 宣伝

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2012.09/17 高分子材料技術と高分子材料のツボ

「高分子材料のツボ」セミナー(以下高分子のツボ)の内容は、高分子材料技術を担当するときに覚えておくべきこと、少なくともこれだけは最低限記憶しておきたいことをまとめたものです。高分子の一次構造や、重合反応についてほとんど扱っていません。理由は、高分子の重合反応については、かなりのところまで科学的に理解されてきたからです。

 

実際に重合反応を100%制御できないにしても、重合様式については、ほぼ明らかになったと思っています。しかし、高分子のレオロジーはじめ実際の高分子材料の機能発現機構については、推定の域に留まっています。

 

2005年から2011年までの6年間、樹脂技術開発に専念することができました。社会人になって30年間疑問に思ってきた科学的成果にフローリーハギンズの理論(以下FH理論)があります。2002年にチャンスがあり、ポリオレフィンとポリスチレンを混合し、透明になる系を発見して以来、FH理論への疑問は強くなり、どんな高分子の組み合わせでも相溶できるプロセシング開発に対する思いがよみがえりました。

 

2005年にPPSと6ナイロンの系に出会いました。OCTAでシミュレーションしましてもきれいに相分離する系です。もし高温度でPPSと6ナイロンを相溶させて、急冷したならば非相溶系を相溶状態にできるのではないか、と考え、カオス混合にトライしました。仮説は的中し、非相溶系を室温で相溶した状態にできました。混練機の吐出部から透明の樹脂が出てきたときには感動しました。科学で説明できない現象に遭遇できる可能性があるので、技術開発という仕事は、刺激的で病みつきになります。しかし、この刺激による興奮を味わうためには、素人スポーツなどの遊びと同じく、ルールを十分に理解していなければなりません。

 

高分子の相溶について、高分子のツボでも扱っていますが、通常の高分子の教科書と少し表現を変えています。教科書を否定すると売れなくなるので、否定はしていませんが、FH理論に対する疑問がわくように表現しています。

 

高分子のツボの他の部分もそうですが、高分子材料技術に関わっている人が、まず頭の中に整理して入れておいて頂きたい内容と、疑問に思って頂きたい内容をとりあげまとめております。すなわち、高分子のツボをよく理解して頂ければ、技術開発で遭遇する現象を前に楽しむことやアイデアを出すことができるのではないかという思いで編集しております。

 

サンプルはこちら(Adobe Flash Player最新版がプラグインされている必要があります)

カテゴリー : 一般 宣伝 高分子

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2012.09/16 中国語の文法、会話

豊川へ単身赴任した時に、高分子材料分野で頼りにできる部下が、上海の大学院を卒業し日本に来たばかりの中国人であった。現地の人事部の情報では日本語と英語が話せる、との説明があったので、引き受けたが、日本語は読める程度で会話は英語か中国語で話さなければならない状態であった。たまたま部下に中国語が堪能でモラールが高く頼りになる部下がいたので彼をメンターにした。そして、日本語学校へ中国人をすぐに入学させた。

 

中国語が堪能な部下は、がんばって中国人を指導してくれた。機械系が専門なので高分子材料が分からなくて苦労していたが、丁寧に業務指導ができているのは、現場での人間関係から理解できた。早く日本語をマスターさせるために、中国人には日本語で話しかけるよう部下全員に徹底したが、業務を理解しているかどうか確認するためには英会話もしくは中国語を併用してのコミュニケーションになった。

 

私は中国語など全く分からなかったが、この際勉強しようと中国語会話の本を買い込んだ。数冊中国語文法や中国語会話の本を購入したが、四声でつまずいた。CD付きの書籍で勉強したにもかかわらず、部下の中国人に通じなかったのだ。録音して聞き比べて見たところ、文になったときに音程を正しく取っていないことが分かった。中国語は単文で覚えることが重要と気がついた。中国語基本5文型を開発しようと考えたのはこの時の体験からです。

 

優秀な中国人であったので、メンターはじめ周囲の配慮も有り、半年程度で日本語によるコミュニケーションができるようになった。ただ、日本語学校に入れたはずなのに、彼の日本語は三河弁であった。

カテゴリー : 一般 宣伝

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2012.08/25 高分子のツボセミナーについて

高分子のツボセミナーは、教科書ではありません。高分子材料を扱うときに、最低限これだけは知識として身につけていて欲しい項目だけをまとめました。高分子物理を重視し、その結果高分子重合の単元を省略しております。

 

40年前の大学における高分子の授業は、高分子合成化学が中心で、高分子物性については分析技術の一分野として扱われていたように記憶しています。しかし、実務で高分子を扱うときに、高分子重合に関する知識が重要となるシーンは少なくなりました。20年前にブリヂストンからコニカへ転職しましたときに、ラテックス重合を担当しましたが、商品開発を指向した研究開発現場では重合の知識よりも単膜の評価技術の方が重要でした。しかし、商品の品質と高分子材料の関係で問題が発生したときに、高分子物理を実務の視点でご指導してくださる先生の少なさに悩みました。物性評価技術は企業のノウハウ、と言ってしまえばそれまでですが、知識の整理の仕方だけでも実務寄りにして頂けると初心者にはありがたかった。実務2-3年の若い技術者を大学の先生のところへ質問に行かせても、問題解決につながるアイデアを持ち帰った確率は低く、さらに部下の力不足のせいにするにはかわいそうなこともしばしばありましたが、この問題は、大学の先生に責任があるのか、というと、大学の先生の使命を考えた場合に”?”である。むしろ技術情報を商売とするセミナー会社が生まれた背景となるのでしょうが、企業で20年研究開発マネジメントを行ってきて、大学とセミナー会社の隙間を埋めるサービスが必要と感じるようになりました。電脳書店設立の動機ですが、その思いから高分子のツボセミナーを販売しています。

 

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