サッカーには野球ほどの関心は無いが、ここのところセルジオ越後氏の発言でネットがくすぶっている。大きな炎上にはなっていないが、年寄りの関わる問題だから若い人は特に関心が薄いのだろう。
セルジオ越後氏も十分なお歳だ。さて、問題となっているのは横浜FCが50歳を過ぎた三浦知良選手をクラブ選手として雇っていることについて、「貢献しない選手は首にしないと」といった発言をしていること。
そのほかに、いろいろとセルジオ氏の発言には問題があったようだが、本欄では「貢献しない選手は首にしないと」といった発言について述べてみたい。
おそらく、この発言だけを切り取ったならば、プロの世界では当たり前の発言になるだろう。20代の選手が主力のスポーツにおいて50を過ぎた選手が大きな貢献をできるとは思えない。
ただし、横浜FCは貢献を認めているので彼を雇っているのだ。おそらくセルジオ氏はサッカーのプレーだけを貢献と思っているらしいが、サッカーに無関心な当方さえその名前を知っている三浦選手と契約しているのは十分な貢献だと思う。
例えば、当方は横浜FCと名古屋グランパス以外のサッカーチームを知らない。横浜FCについては三浦選手が所属しているチームという情報だけしか知らない。これだけでもものすごい貢献ではないだろうか。
三浦選手の契約金がいくらなのか知らないが、三浦選手は雇ってくれるところがあれば金額を問わないと発言しているので高くはないだろう。広告塔と考えたならば彼を雇用する価値は十分にあると思う。
さて、日本は高齢の労働者を雇用するのが下手である。亡父は、一人で歩ける間は郵便局でボランティアをしていた。垂れ幕書きがその仕事だったが、交通費程度の収入でも生きがいの一つとしてその仕事を引き受けていた。
三浦選手もプロ選手としてプレーすることが大きな生きがいなのだろうと思うし、その気持ちは彼よりも高齢であるという理由で当方はよく理解できる。
セルジオ氏は彼が最近シュートを決めていないだけでなく試合にも出ていない点をあげ、首にすべきだ、と述べているが、当方は、コロナ禍となる前まで中国ナノポリスで現役技術者として何本もシュートを決めている。
コロナ禍となって中国に行けなくなり、引き受けたペルチェ素子を応用した空調服ではシュートを打ったにもかかわらず、コロナ倒産ではないが依頼してきた会社の経営状態が悪くなり、シュートが無駄になった状態だ。
この空調服の仕事では、コンサル料はお客様のご希望金額で引き受けており赤字である。ゆえにせっかく技術が出来上がった空調服について事業を展開される方を募集している。詳細は問い合わせていただきたい。.
ペルチェ素子を用いた空調服は、世界で初めての実用化となる。それはペルチェ素子だけでは冷却効果が得られず、もう一つ技術が必要だったからだ。この技術は科学的に見出される技術ではない。
しかし、製品として出来上がった空調服について冷却機構を科学的に説明することが可能である。やってみなければ生まれない技術があり、その技術が生まれて初めて新たな科学が誕生するような仕事のやり方を若いころから続けている。
例えば、フェノール樹脂とポリエチルシリケートから高純度SiCを製造する技術は、高分子からセラミックスを製造する技術として世界初の実用化であり、日本化学会科学技術賞を受賞している。その他に、ガラスを生成してポリマーを難燃化する技術、転職の原因になった電気粘性流体実用化のための粒子設計はじめいくつかの技術などは当時科学では導き出せないアイデアだった。また写真会社退職直前のカオス混合装置に至っては創ってみて初めてそれがカオス混合装置として適した構造だということがわかった、ある意味不思議な発明である。その他に大小の成果があるが、やってみなければわからないことは多い。科学の推論だけがアイデアを出す唯一の方法ではないのだ。弊社はそのアイデアを出す方法もセミナーとして開催している。科学ではないアイデアを出す方法は、怪しい方法ではなくiPS細胞の発明でも使われている。iPS細胞の発明もやってみなければわからない、あるいはできなかった発明であることがあまり知られていない。そろそろなんでも科学の成果と信じる過ちから目覚めていただきたい。
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富士通が優勝旗を返還準備中に紛失していたことに気がついたという。これは「常識的な感覚から」全く信じられない出来事だ。優勝杯は残っているという。これも不思議なことだ。優勝旗と優勝杯を別々に保管していたことに驚いた(適当に扱っていた状況証拠でもある。普通の企業は名誉として皆の目のつくところに飾るので紛失や盗難にはすぐに気がつく。)。
ニュース記事を読むと廃棄した可能性もあるという。スポーツにおける優勝者の自覚と責任を発揮できないこのようなチームはニューイヤー駅伝から排除すべきだろう(厳しい表現だが、このような事件に対して社会全体が甘くなっている。実際には排除などできないので、富士通の責任者が誠実な対応として来年の出場を辞退するとか、今後の出場そのものをやめるとか言うべきだろう。)。
2m近くある棒に大きな旗がついた荷姿である。どこに置いてあっても目立つはずで、紛失の経緯を詳細に発表とあるが、どう説明しても誠実さの見えない出来事である。
記事にはさらに言い訳がいろいろ書いてあったが、このような事態は言い訳ですむ話ではない。優勝旗には初回からの歴代優勝企業の歴史が刻まれていた。
なぜこのような事件を本欄で取り上げたのか。それは現在問題になっている日大理事長の事件と共通する部分があるからだ。どちらも当事者の社会における役割とそこから生じる責任、義務を忘れてしまっているところに驚くのだ。
世の中には、なんでも謝罪で問題がかたずくと考えている組織人がいる。そのような人は組織の謝罪だけではかたずかない問題について配慮しない。優勝旗にただならぬ思いを寄せている個人もいるはずである(一方で、当方が憤りを感じ、本来ここで論じるような問題ではないので複雑ではあるが)。
今日のスポーツにおいて優勝者は優勝者の自覚を持つ暗黙の義務が大衆から求められている。少なくともスポーツにおける優勝者は戦いを盛り上げてくれた敗者に対して尊敬の気持ちを忘れてはいけない(そのような勝者を見たときにスポーツの感動を覚える。強者が率先して弱者を支える社会は、一つの理想の社会でもある。逆に強者がその力を自分のためにだけ発揮している社会はどのような社会であるかは説明の必要が無いだろう。そのために法律など明文化された規則が存在するが、暗黙の義務を強者が遂行できなかった時に社会は不安になる。優勝旗の紛失は単なるうっかり事件ではない。)。優勝旗にもそのような気持ちを持って管理してほしかった。
(注)本事件で心を痛めている人がいるはずであるが、ニュース記事の扱いでさえそのような人の存在が忘れられている。すなわちニュースの取り上げ方も問題なので本欄で事件の意味を書いている。例えば大会を主催する日本実業団陸上競技連合は紛失してもまた作り直すだけで特にペナルティーを与えない、という甘い回答を伝えていたニュースもある。当方は駅伝の選手でもなく、ニューイヤー駅伝とは無関係であるが、会社に飾られた優勝旗を見た経験があり、それを思い出しながら選手の気持ちを考えてみた。決して作り直せば済む話ではない(しかし、この事件の場合どのように問題を解決するのだろう。優勝旗はお飾りだからどうでもよい、という気持ちがニュースの報じ方から伝わってくるが、ニューイヤー駅伝はその程度の大会なのか。一年のスタートとしてそれにふさわしい大会と信じていたが関係者の発言や姿勢から、どうでもよいいい加減な大会であることを知った。過去に在職した会社も最近は頑張っていないようなのでそういう大会に変化したのかもしれない。新年の楽しみが一つ減った。観戦者の連れていた犬が飛び出して選手がこけそうになった事件があったが、それを負けた原因にしなかった素晴らしい企業のドラマが過去にあったが優勝旗を紛失しても役員が謝罪すればそれで済むという程度の大会に変わったとしたならば、残念である。大会の意味を社会に伝えるために、ここは富士通が自主的に参加を辞退すべきところかもしれない。そのくらいの大会と信じてきたが、またそのくらいの厳しさを発揮できる役員ならば半導体事業の復活も期待できるが期待しても無駄なのかもしれない。しかし、新年ぐらい引き締まった番組を見たいので富士通の今後の姿勢に期待したい。)。
(補足)ドラッカーは企業の盛衰に関わる因子の一つとして、誠実さと真摯さという抽象的な因子をあげていた。この事件は、まさに企業全体がその欠如を表現しているような出来事である。最近半導体事業の盛衰が話題になっているが、東芝の凋落を引き合いに出すまでもなく、経営陣の誠実さと真摯さの問題について取り上げなければいけないように感じている。ニューイヤー駅伝の優勝について経営陣が選手たちをねぎらい、会社としてその成果を誠実真摯にたたえていたならば、起きなかった事件でもある。GDPが上がらない原因がこのようなところにも表れているかもしれないと思い、本欄で取り上げた理由である。
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英国グラスゴーで10月31日に始まった国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が11月23日に終了した。今から2030年までの10年間の取り組みが重要と言う意味で「決定的な10年間」、その最初のCOPということで大変注目された。
ところで、 2016年に開かれた通称「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)では,「2050年には海の中のプラスチックの重量が魚の重量を越える」という衝撃の予測が提示され,プラスチックスとゴムの廃材で起きている環境問題が世界中でクローズアップされた。
最近では,3RにRefuseを加えた4Rが合言葉となった脱プラスチック運動が世界で起きている。国連が示したSDGsでも廃棄物の発生防止と削減が重点となっており,特に高分子材料についてこれまでの環境対策の見直しが急務である。
明日12月17日金曜日技術情報協会で開催されるWEBセミナーでは,これまでの環境問題の変遷についてわかりやすく解説するとともに,今求められている環境対応技術について,高分子材料に焦点を当てて解説する。
脱プラスチックスが世界の合言葉として叫ばれているが,この潮流の中でどのように環境問題解決に貢献し持続的な企業活動を実現したらよいのか事例とともに提案する。詳細は弊社へお問い合わせください。弊社へお申し込み頂けば割引もございます。
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インターネットで炎上しやすい話題として学歴フィルターがある。まず結論から書くが、「もし、企業が学歴により新卒受験者を差別していたなら、その企業の将来性は暗い」と思っているし、それなりの企業経営者及び企業幹部で同様の見解の人は多い。これから就活をされる学生に、ネットの無責任情報に惑わされるな、と伝えたい。
30年以上前になるが、当方が初めて採用面接を行ったときに人事部採用担当から学校名を受験者に問わないようにしていただきたい、と指導を受けている。そして手渡されたエントリーシートの学歴欄は黒く塗りつぶされていた。すなわちすでに学歴フィルターは廃止されていた。
もっとも当方の転職した写真会社は業界2位、別の事業でも3位以下の企業なので、例えば日本の偏差値トップ大学東京大学の優秀な学生はまず受験に来ない。他の高偏差値大学でも同様で、そのトップクラスは大抵は業界1位の企業を受験する。
だから学歴フィルターを設けると、良い人材を逃がすリスクが高くなる。どこの大学でもトップクラスの人材は、例えその大学の偏差値が低くても見どころのある人材がいる。
ゆえに偏差値の低い大学の受験者であっても見どころのある人材は採用試験を通過している。また、大学の偏差値と生涯年収の相関が無くなって久しいが、採用試験結果と大学の偏差値との相関が消失している企業も多いはずだ。しかし、後者は事情があって公開されない。
偏差値の低い大学出身でも見どころのある人材は採用後活躍し、事業に貢献している例が多い。逆に高偏差値大学出身でも企業で活躍できないだけでなく、逆にお荷物となる人は多い。
当方の経験でも、高偏差値大学大学院出身者で教授に頼まれたという理由で人事部に頭を下げて無理に無理を重ねて採用しても、長いサラリーマン生活では企業と人材のミスマッチのため、それなりの結果である。
おそらく日本の業界トップ一流企業でも、高偏差値大学出身者という理由より、その人物の能力あるいは企業と人材のマッチングが高いから採用しているのだろうと思う。高偏差値大学出身者だから企業へ多大な貢献をしてくれる、と盲目的に信じている経営者あるいは企業幹部はいないだろう。
故ドラッカーはその著書の中で「しばしば優秀な人が間違った問題を正しく解いて成果をあげられない」、と嘆いていたが、なまじ優秀な人よりも誠実真摯で素直な人材の方が正しい問題を周囲との協調により探し出してくれる。
経営者や企業幹部にとってはこのような人材の方がありがたいはずで、これは偏差値とは関係ないファクターである。もう同一世代の50%前後が高学歴化した日本において、学歴フィルターを論じることが時代遅れのように思われる。
もし、就職活動に不安な若い人がいたならば、弊社にご相談いただいても構わない。学歴フィルターなどと言う幻影に惑わされることなく、自分の強みを磨くことを若い人は心がけていただきたい。常に人間としての成長こそ大切であり、弊社はそれを応援したい。
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今年のフィギュアスケート選手権グランプリファイナルはコロナ禍のため中止となった。羽生選手は怪我のためグランプリシリーズに出られなかったので、グランプリファイナルにも出場はかなわなかったが、宇野選手が絶好調であり、フィギュアスケートファンは残念に感じているのかもしれない。
当方は渡部絵美選手の時代からフィギュアスケート観戦を楽しんできたが、理由はこの競技ほど才能と言うものを強く感じさせるスポーツ競技は無いと感じているからである。
もちろんどのようなスポーツ選手でも一流になるには才能や恵まれた肉体が必要であるが、フィギュアスケートでは運動能力以外に表現力と言う抽象的な感性の領域の能力が求められており、わずかながらでもそれが無ければ成立しないスポーツである。
例えば、難易度の高いジャンプをいくつも繰り出して点を稼ごうとしてもその組み合わせには制限がかけられており、表現力の力量が勝敗に影響するようになっている。
フィギュアスケートはスポーツ競技の中でもこの表現力という才能の有無に強く影響を受ける力量の差が勝敗を大きく左右する。本田真凛選手が順位を落としても注目され続けているのは、単にかわいいだけではなくこの表現力の才能を皆が認めているからだろう。
凡人が練習を繰り返して到達できるレベルを超えた能力を発揮できる人は、そこにそのレベルを越えさせる天賦の才能があるためだが、フィギュアスケートの表現力については凡人の誰もが才能が無ければレベルを高く保つのが難しい能力だと認めるだろう、
難易度の高い技を組み合わせた演技の中で、曲の世界を表現するためには、演技を失敗しないように技へ能力を集中していても自然にできるような天賦の才能が無ければ不可能である。
林芳正外相がG7の夕食会でビートルズ「イマジン」を演奏されたという。大臣はヒマジンだから、という駄洒落を言うつもりは無いが、練習する時間をとれるだけの仕事なのだと感じてしまうのは当方だけだろうか。
第三者に披露しようとなると楽器の演奏の場合、才能だけでは難しくそれなりの練習量が求められる。それが分かっているのでこのような要職にある方がプロ並みの演奏を披露した場合には心配になってくる。
まさか、大臣の能力は無いがピアノの才能は優れているとアピールしたかったわけではないだろう。ところが座興とは感じられない演奏だったという。
趣味を披露するときには注意を要する。第三者に下手なヨコ好きと思わせるレベルの表現が愛嬌となる。また、それを聞かされる方は我慢という表現で親密さをアピールできるので、多少下手な方がこのような場としてふさわしい。
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N社F100の裏蓋フックは、クリープ破壊で壊れた可能性が高い。それはフラクトグラフィーにより、明らかだった。フラクトグラフィーとは、御巣鷹山の飛行機事故の裁判でも墜落原因を特定するために使われた科学的方法である。
御巣鷹山の飛行機事故では、重要部品の圧力隔壁が壊れこれが飛行機の制御系を壊し、制御不能となった飛行機は御巣鷹山の峰に衝突した、という原因が解明されている。
圧力隔壁が壊れた原因について解明するためにフラクトグラフィーが使われ、墜落した飛行機がかつて羽田で尻もち事故を起こした時の修理方法が悪く、疲労破壊を速めた、というところまで明らかになっている。
フラクトグラフィーという手法では破壊した個所の観察が重要で、その破壊した個所に現れる材料特有の模様から、破壊に至る過程を明らかにしてゆく。
N社F100のフックの破断面をD2Hへマクロレンズをつけて接写して、拡大して得られた画像を見たところ、ゆっくりゆっくり破壊が進行したところと急速に破壊が進行したところが連続的につながっていた。
すなわち、最初に何らかの原因で、ピシッとヒビが入り(この時急速に破壊が進行した波面の状態となる)、樹脂はそれを何とか持ちこたえたが、その後クリープでゆっくりゆっくり破壊していった破壊の様子が一つ思い浮かぶ。
しかし、カメラは防湿庫に静置されていたので、最初の破壊原因としてピシッとヒビが入る情景を想像しにくい。それよりも、裏蓋フックには常時それを開けようとするスプリングの負荷がかけられている。この機構ゆえにフックが外れると裏蓋が勢いよく開く。
すなわち、フックに応力が常時かかっていたが樹脂密度が低いためフック全体のクリープ速度が速くなり、わずかに変形して応力集中が起きたところからゆっくりゆっくりとクリープ破壊が進行した。
その後、裏蓋を開けようとするスプリングの強度に持ちこたえられなくなったところで、ピシッと割れた、という破壊機構の方が波面の模様を説明するために妥当性がある。
すなわち、新たに購入したN社フラッグシップD2Hを使用するようになったため、1年以上防湿庫にF100は眠っている状態となった。この眠っていた間に裏蓋フックの樹脂の分子はバネの応力でクリープを起こし、破壊に至ったのである。
おそらくF100を使い続けていたら、もっと早くフックは破壊し、使用条件の悪い使い方か、製品の設計が悪いために破壊したのか原因不明となっていたかもしれない。しかし、1年以上使わずに放置していて壊れたのである。設計ミスか製造時の品質管理ミスかは明らかだった。
ラインに流れる裏蓋フックに関しフックの密度が低いことを見落としていたならば製造側の品質管理ミスである。もし、スペックで決められたバネの応力が強すぎた、あるいはフックの成形体密度について仕様が決められていなかったならば、これは製品設計におけるミスである。
いずれにせよ消費者の責任ではない。1年以上防湿庫に放置していて重要機能部品が勝手に壊れる様な製品を作っていてはだめだ。ますます製品の売れゆきは悪くなる可能性が高いのですぐに弊社に相談してほしい。設計段階からのロバストを高める手法を伝授します。
カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子
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ラテックスを塗布し形成された薄膜を観察すると、セラミックスのような粒界が観察されるときがある。そしてその構造のサイズは、ほぼラテックス粒子の大きさと同じである。
このような電子顕微鏡写真を得るためには観察用の良好な剥片が必要だ。さらに四酸化オスミウムなどの染色をしなければいけない。
ラテックスから形成される薄膜は、おそらく皆このような高次構造の薄膜になっているのだろう。面白いのはこの薄膜をさらに熱処理をしてやると粒界が無くなる場合と高次構造が変化しない場合とがある。
ところが薄膜物性を評価してやるとどちらも似ており、玉の性質は消えて紐で現象をとらえた方が説明しやすい場合がほとんどだ。
ならば、樹脂のラテックスとゴムのラテックスを混ぜたらどうなるか(樹脂成分は30wt%未満の配合である)実験してみた。アクリル系ラテックスであれば、このような実験が容易となる。
pHを揃えて合成できる樹脂とゴムのラテックスを別々に合成後、混ぜて塗布液を調整する。この塗布液で薄膜を形成すると、樹脂球がゴム球の中に分散している構造の薄膜となる。これを加熱処理しても観察される構造は変わらない。
おもしろいのはこのように製造された薄膜でも弾性率が上がる。ゴム会社の新入社員テーマで樹脂補強ゴムを製造した時のことを思い出した(この時は樹脂成分は20wt%未満の範囲で実験している)。
この時、目標としたゴールは樹脂の海にゴムの島ができている高次構造だったが、ゴムと樹脂の組み合わせが悪い場合には、ゴムの海の中に樹脂の島が分散している高次構造となった。面白いのはこの高次構造の差は弾性率で比較しても観察されなかったことだ。
弾性率に差は出なかったが、樹脂が島の場合には引張強度に大きな差が現れた。樹脂が海の高次構造の樹脂補強ゴムの方が引張強度はじめ多くの点で優れた物性を示した。
ところが、PETフィルムに樹脂ラテックスとゴムラテックスの混合物を塗布して薄膜を形成すると、樹脂が島構造となっていても、薄膜物性は良好だった。おそらく、樹脂補強ゴムにおける樹脂の島相のサイズが大きく機能していた可能性が高い。
このような現象を考えるときに、紐か玉かどちらが良いのか悩む。およそ妄想の世界でアイデアを練る限界かもしれないが、高分子材料の設計をする場合に科学的に考えているよりも、このようなモデルでイラストを頭に描いて考えた方がアイデアが豊富に出てくる。
こうしたアイデアの大半は科学的ではないが、実現できる場合がある。半導体無端ベルトの押出成形技術を完成させたときのアイデアはこうして生まれている。そしてカオス混合技術を開発することができた。
技術とは必ずしも科学的である必要は無い。それを伝承するためには科学的である方が容易ではあるが、機能を実現するためには非科学的技術であってもロバストさえあればよいのである。科学で固まった頭を少し柔らかくしていただきたい。
カテゴリー : 一般 高分子
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ラテックスとはゴムや樹脂のコロイド状水分散物である。コロイドとは微小な液滴あるいは粒子がある媒質中に分散している分散系で、粒子の大きさが、約1μmから1nmの範囲にある場合をいう。
コロイド分散系は、分子コロイド、ミセルコロイド、分散コロイドの3種が存在し、コロナウィルスは気相に分散している分散コロイドである。
高分子のツボでは、高分子を組み紐で表現し現象をとらえると分かり易い、と説明してきたが、同じ高分子でもラテックスの扱いは難しい。
それは、例えばラテックスが塗布されて薄膜を形成した場合には組み紐のイメージを想像して現象を考えても良くあてはまるが、塗布前の乳濁液では組み紐よりも玉の扱いで考えやすくなる。
ただ注意しなければいけないのは、親水性部分を持っているラテックスである。その挙動はよくわかっていない。ラテックスにおいて分かり易いのは球の扱いができる場合で、このモデルで説明がつく現象については、難しくても何とか問題解決できる。
しかし、親水性の部分を持ったゴムあるいは樹脂の場合に厄介なのは、組み紐状に広がって分散している場合もあるからである。これはいろいろなラテックスを合成し、このような分子コロイドができたと思われるときにその後のプロセス性が悪かった経験から述べている。
歯切れの悪い書き方になるが、水に分散している状態をうまく分析評価できないのでこのような表現になる。ただ、このような分子コロイドをスピンコーターにたらしてから顕微鏡観察すると球体が見つからないので水中で球状ではない可能性が高いと想像している。
このような場合、10%程度に希釈しても粘度が高いので塗布液として使いにくいが、コーティング液として使えないわけではない。ワイヤーバーを使って無理やりコートすることができ、薄膜の評価も可能である。
ネットで検索して得られるラテックスの説明にはゴムの分散液程度の説明しかないが、乳化重合により樹脂が水に分散したラテックスはじめ様々な高分子重合体のラテックスを頭の中では製造可能である。その中には実際に実用化されたラテックスも多い。
カテゴリー : 一般 高分子
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英国グラスゴーで10月31日に始まった国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が11月23日に終了した。今から2030年までの10年間の取り組みが重要と言う意味で「決定的な10年間」、その最初のCOPということで大変注目された。
ところで、 2016年に開かれた通称「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)では,「2050年には海の中のプラスチックの重量が魚の重量を越える」という衝撃の予測が提示され,プラスチックスとゴムの廃材で起きている環境問題が世界中でクローズアップされた。
最近では,3RにRefuseを加えた4Rが合言葉となった脱プラスチック運動が世界で起きている。国連が示したSDGsでも廃棄物の発生防止と削減が重点となっており,特に高分子材料についてこれまでの環境対策の見直しが急務である。
来週12月17日金曜日技術情報協会で開催されるWEBセミナーでは,これまでの環境問題の変遷についてわかりやすく解説するとともに,今求められている環境対応技術について,高分子材料に焦点を当てて解説する。
脱プラスチックスが世界の合言葉として叫ばれているが,この潮流の中でどのように環境問題解決に貢献し持続的な企業活動を実現したらよいのか事例とともに提案する。詳細は弊社へお問い合わせください。弊社へお申し込み頂けば割引もございます。
カテゴリー : 学会講習会情報
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フィルムカメラF100の裏蓋フックはプラスチック製だった。樹脂の材質は不明だが、壊れた断面は、典型的なクリープ破壊の破断面を示していた。
すなわち、その破断面を観察すれば、裏蓋を押し上げるためのスプリング強度が強すぎたためフックのクリープ速度が速くなり、フックが壊れたと理解できる。
ただし、これはフックが常に目標スペック通りにできていた前提の仮説である。
1970年代の低密度ポリエチレンのクリープ速度に関する研究では、密度が0.02大きくなると、クリープ耐性が2倍になるという報告がある。すなわち、密度が大きくなるとクリープ耐性が非常に大きくなるのだ。
これは逆に密度がたった0.02小さくなっただけでクリープ耐性が著しく弱くなることを意味している。スプリング強度が仕様通りだったとすると、F100の樹脂製裏蓋フックの成形体密度がばらつきで小さくなっていた可能性がある。
樹脂の成形体密度は0.02程度のばらつきを生じる場合があり、注意を要する。低密度ポリエチレンのクリープ速度と樹脂強度との関係を調べた研究の動機でもある。
ところで、このF100の裏蓋フックについて高分子材料のツボを読んでいた技術者ならばおそらく密度のばらつきに注意が向いたはずである。
そして組み紐のモデルを思い出し、密度が下がれば著しくクリープ速度が速くなる可能性があるとの想像ができて、品質問題を未然に防げた。
なぜなら密度が低いということは、自由体積の部分が多い樹脂成形体を意味しており、自由体積部分では高分子がぴくぴくと運動している。高分子の運動にレピュテーション運動というのがあるが、これは分子の鎖方向にウナギの如くくねくねと動く運動である。
自由体積が多くなり、レピュテーション運動も活発にでき、そして外力がかかったならどうなるか。紐がずるずるとほどけてゆく様子を頭に描くことができる。クリープ破壊とはこのように進行する。
ただしこれは当方の妄想であり、科学的ではないことを注記しておく。但し、高分子材料開発ではこのような妄想が重要な場面として役に立つケースが多い。品質問題という悪夢と思いたい現実に遭遇するよりも妄想を描きながら慎重に材料開発を進めた方が精神衛生上よい。
後日、中間転写ベルトでは頭に浮かんだ妄想からカオス混合装置を開発した実話を紹介する。科学的な知識では否定証明となってしまう場面でも妄想により掻き立てられた開発欲求により、科学を超越した発明が生まれる可能性が高いのは高分子分野である。
健全な妄想により、悪夢のような現実を起こさないように進むのが、大人の技術開発である。不健全な盲目的科学崇拝では現実否定ばかりしている場合にも、健全な妄想は希望の光を見つけ出す。健全な妄想は健全な精神と誠実で前向きな生き方により生まれる。健全な肉体は、ここぞという勝負時に必要である。
カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子
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