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2022.03/23 成形体の均一性(5)

昨日は成形体の電気特性がコンパウンドの電気特性に影響を受ける話を書いた。力学特性も同様である。ただし力学特性は、電気特性に比較して物性評価時におけるばらつきが大きいのでコンパウンドの影響を議論しにくい問題がある。


引張強度の測定を事例に物性評価のばらつきについて説明する。まず、物性評価時にサンプルを評価装置へ取り付けるときのばらつきが存在する。これは5人ほどに同じサンプルについて引張強度測定を実施してもらうと明らかに有意差として観察される。


測定時の注意点を細かく指導し、測定時に監視しながら実施するとそれが小さくなるか無くなるので、こうした物性評価に不向きな人がいることにも配慮する必要がある。


高偏差値の大学を出ていても精度の良い力学特性評価をできない人がいることも知っておいた方が良い。力学特性評価は、個人のスキルが出やすい項目である。


次にサンプルの形状の影響である。射出成型時の歪が形状に現れることもあれば、サンプル保管時に形状ばらつきが生じることもある。新入社員の時に当時最先端の樹脂補強ゴムを開発していた。


その時、引張強度サンプルについては測定本数よりも1本多く作成することを指導された。さらに、シートサンプルから切り出した後2日ほど静置して評価サンプルを選び出すように、とも指導された。


たいていの場合に予備の1本は無駄だったが、まれに変形していることがあった。このような場合に1本だけでなく2-3本ダメになることもあったので、予備の本数を増やした記憶が残っている。


力学特性について電気特性よりも測定技術上の問題の影響を受けることが意外と知られていない。測定技術上の問題を解決してから成形体の不均一性を評価すると成形ロットや位置の影響などを検出できる場合がある。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2022.03/22 成形体の均一性(4)

成形体の均一性にペレットの均一性が影響を及ぼすことが意外と知られていない。高分子の混練技術の目的に成形体の均一性を実現できるコンパウンドの提供という項目があることをご存知ないコンパウンドメーカーも存在する。


これは絶縁体である高分子にカーボンなどの導電体をブレンドし半導体シートあるいは半導体ベルトを製造して平面の表面比抵抗を数点計測して確認できる。


コンパウンド段階で電気特性が均一であると、押出成形あるいはインフレーション成形を行ったときにシートなりベルトの面内の電気特性が均一となる場合が多い。


ここで、コンパウンドの電気特性が均一ならば確実に成形体で均一になるとは限らないことに注意する必要がある。パーコレーション転移という現象が起きるためだ。


すなわち、コンパウンドの電気特性を均一にしただけでは不十分で、パーコレーションが安定化されていることも要求される。


パーコレーション転移については後日説明するが、混練技術の重要性を示す現象の一つが半導体高分子の成形プロセスで起きる。半導体シートや半導体ベルトを製造するときに、コンパウンドの電気特性が不均一であると電気特性を均一化できないことを知っておいてほしい。


ただし、コンパウンドの電気特性についてどこまで均一性とパーコレーションの安定性を実現すべきかは、求められる成形体の電気特性により変化する。


コンパウンド段階で10%程度のばらつきがあっても成形体で5%程度のばらつきに抑えることも可能である。このあたりはコンパウンドの配合設計にも依存する難しい問題である。ただ、成形体の均一性に混練技術が影響することを知っておいてほしい。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2022.03/21 成形体の均一性(3)

PETやPENフィルム、PPSベルトの開発で正体不明のボツや目玉故障を経験している。いずれも1mm以下の大きさなので満足な分析ができず、正体不明となる。


そこで、粘弾性測定ができるほどの量を採取する努力を行い、正体不明部分の粘弾性を測定した経験がある。馬鹿げた作業という人もいたが、それなりの結果が得られた。


高分子材料の高次構造について研究がかなり進んだが、実務におけるすべての故障について科学的にこたえられるレベルにまだ到達していない。


例えば1種類の結晶性高分子について、構造は結晶部分と非晶部分が必ずできる。高分子の静置場でできる結晶は球晶だが、これはラメラと非晶部分で出来上がっている。


非晶部分には大きさが不確かな自由体積部分が存在し、無機ガラスのように均一性が高くない。すなわち高分子の非晶部分はかなり不均一な構造である。


この非晶部分の科学的研究が十分に進んでいない。球晶の構造については研究がかなり進んだが、非晶部分については不明確なところが多い。


多くの高分子の成形プロセスでは、高分子を高温にして溶融するプロセスが使用される。この時溶融温度付近の高い温度で溶融させて流動性を得るのだが、この高分子融体についての研究が不十分である。


PPSで実験を行っても、実験条件を機能に着眼して設定すると理解に苦しむ結果が得られる。ただ、ある仮説を設定し思考実験を行うと説明可能だが、これは科学的ではない。

カテゴリー : 一般

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2022.03/20 遺された声

朝寝坊をして6時に目が覚めた。支度を整えて本欄を書こうとしたら、NHKで表題の番組を放送していた。1972年2月にグアムから帰還した横井庄一氏の話である。


彼が雑誌社に頼まれて一人テープに吹き込んだ声を中心に番組が構成されていたが、当方の文章では表現できないほどの壮絶な体験がそこに記されていた。そして彼が語り部としての使命感だけで生き延びていたこともそのテープから理解できた。


まだ二十歳前の当方にとって横井庄一氏の帰国シーンは衝撃的だった。当方だけでなく日本全国が彼の帰国に沸いた。彼のグアム生活の展示会では長蛇の列ができたことからも、その関心の高さを理解できる。


帰国してから彼はその体験を語り始めたが、ある日突然語るのを辞めてしまった。これは今の時代でも想像できるように、彼の語った内容に対する批判からである。


この放送で紹介されたテープは公開しない条件で録音されたものであるが、一人の人間がジャングルで戦争が終わっても苦労して生きてきた体験談は、戦争というものを知ることだけでなく、人が生きるとは何かを知る意味でも重要である。


記録を見る限り、彼と小野田氏以外戦後のジャングルで壮絶な人生を生きた人はいないのである。彼らの人生を学ぶ意味は、まさに「戦争」と「命」を学ぶことかもしれない。


敗戦が濃厚ならば投降すればよい、あるいは兵士でなければ逃げ出せばよい、という意見が今起きているロシアとウクライナの戦争において安易に語る人がいるが、彼の声を聴くとそれでは命をつなげない甘い意見であると理解できる。


ひとたび戦争状態になれば人道など保証されないのだ。それだけではなく、グアムでは部下を見捨てて戦争が終わっていないのに投降した上官の話などが彼の語りから飛び出した。

カテゴリー : 一般

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2022.03/19 成形体の均一性(2)

高分子材料の成形体を製造するときにペレット状のコンパウンドが用いられる場合が多い。この時ペレット一粒一粒の組成が均一であっても成形体で品質故障が現れることがある。


射出成形体では目立たないが、押出成形やインフレーション成形で発生する。そこで故障部位をケミカル分析してみると組成が均一なので分析結果に現れず、原因不明となる。


ところが故障部位のレオロジーを測定してやると故障部位が他の部分と異なる特性であることを発見できる。


あるいは、結晶性樹脂ならば故障部位の結晶化度を測定することにより他の部位との差異を見出せるかもしれない。


このように組成が均一な原料を用いても、成形体を製造するときに原料を一度溶融させる必要があるので溶融が不均一だったと思われる品質故障が発生する。


溶融の不均一性であれば、成形時にダイに至るまでのシリンダーの中を均一にする努力をすれば解消できる、と考えて努力すると、努力が報われて、品質故障の発生頻度が下がる。


しかし、発生頻度が下がってもなかなかゼロにできない。このじれったさは、実際に経験してみないと分からない。


成膜されたPETフィルムを体育館に広げて15名ほどの研究者で品質故障部位をマジックで印をつけてみた。ゼロにできたと思ってもどこかに数10個は品質故障部位が見つかっただけでなく、ラインの検出器をすり抜けた部分も存在した。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/18 成形体の均一性(1)

高分子材料の成形体を大別すると、射出成形に代表される材料へ圧力をかけて金型に押し出して注入し、さらに圧力をかけて固めて製造された成形体とフィルムのように金型から押出し、高い圧力をかけることなく成形された成形体に分かれる。


PETボトルはブロー成型と呼ばれる方法で、材料を膨らませて金型に押し付けるように成形して製造されるので、成形時に圧力がかかる成形法である。


すなわち、高分子材料の成形体には、押し出されて製造されただけの成形体と高い圧力がかけられて成形された成形体とがある。


押出成形でも一方向に延伸したり、縦と横に延伸(二軸延伸)されたり、して応力がかけられるので成形時に何らかの力が材料にかかっており、まったく材料に力をかけずに一定の形状で製造された成形体は無い。


このように高分子材料の成形体では、大なり小なり応力がかけられて成形されるので、その応力分布を均一にできない限り、どこかに歪が残る。


このような成形時の応力分布の不均一性以外に組成の不均一性が高分子材料の成形体には存在する。ゆえに品質管理技術が重要となるが、研究開発段階でこれを忘れている企業が多いのではないか。故田口玄一先生は、川下における品質のロバスト確保のために研究開発段階からタグチメソッドの使用を勧めていた。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/17 混練技術の難しさ

高分子の混練技術の難しさは、混練されたコンパウンドがどのような状態になれば完成したと言えるのか不明確だからである。そして不明確であることを理解していない技術者が多いのも問題である。


高性能加硫ゴムの混練では、バンバリーとロールが未だに用いられているが、この理由を理解している技術者も少ない。


そもそも二軸混練機があれば高分子の混練ができると安直に考えている人が多い。顔料の分散程度ならば、一軸混練機でもなんとかなるが、高性能のコンパウンドを混練したいならば、プロセシングの設計から始めなければいけない。


この時、そもそもプロセシングの設計とは何ぞや、と質問していては駄目である。ゴールである成形体の高次構造設計から始まり、それを実現するためのプロセスを設計することなのだが、このやり方は科学的に一つと決まっていない。


恐らく技術者の数だけその方法はあるのだろう。問題はそれが分からない、あるいは意識していない技術者が多いことだ。15年以上前にPPS無端半導体ベルトを担当した時に頭ごなしに当方の見解を否定されたことがある。


科学的に何が正しい、と一義に決められない分野では、他の技術者の見解を大切にするのが正しい技術者の姿勢である、という理由で、その方は技術者ではなかった可能性が高い。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/16 日本は大丈夫か

今回のロシアとウクライナとの戦争がいつ終結するかわからないが、台湾有事の問題だけでなく、日本が中国とロシアに攻められたら、という意見が目立つようになってきた。


ウクライナのケースと異なるから、それは考えなくても良い、という意見もあるが、説得力が乏しい。まだ、ウクライナで戦争が継続されていることに納得できないからだ。


そもそもウクライナの戦争は、プーチン大統領のNATOに対する脅威から始まっている、と言われている。そして戦争が始まる前から、ロシアのウクライナ侵攻がささやかれて、それが現実となった。


連日放送される戦場の様子を見る限り、ロシアが仮にこの戦争に一時的に勝たとしってもクリミア併合のようにはうまく進まないように思われる。なぜなら国民の大半が高い士気を持った状態では占領政策がうまくゆかないことは過去の歴史から自明である。


それよりも、ロシアが勝った状態を連日のニュースから想像できない点も心配だ。ロシアの国営放送では戦争反対の映像が流され、主犯の女性は罰金刑となった。もうすぐロシア国内で何らかの変化が起きるのかもしれない。


さて、多くの期待通りに、日本においてウクライナのような他国による侵略の心配はないと思いたいが、北方領土以外にもすでに他国の侵略を受けている。竹島は未だに韓国に占領されたままだし、尖閣諸島も風前の灯火状態だ。


沖縄に米軍基地があっても北方領土や竹島問題に米国は何もしてくれない。これで尖閣諸島も中国に占領されたなら、さすがに危険だと思わなければいけないが、橋下氏のようにそうなったら逃げ出せばよい、などという考え方では国家や民族は成り立たない。


もっとも震災同様に自分の命を守ることがまず大切、という自己責任論を理解できないわけではないが、そのような視点に立ったときに国家や民族をどのように次の世代に説明してゆけばよいのか。ちなみに世界史の視点で眺めたときに日本民族のように永く国家を維持している民族の例は少ない。

カテゴリー : 一般

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2022.03/15 今月セミナーご案内

各セミナー会社からご案内が出ておりますが、弊社へお問い合わせいただけますと特典がござます。弊社へ詳細をお問い合わせください。


1.高分子の環境問題の関するWEBセミナー

(1)タイトル:カーボンニュートラルに対応するためのプラスチックとゴムの環境問題とその解決策

(2)日時:3月25日10時30分ー16時30分

*R&D支援センター主催、講師1名のセミナーです。



2.高分子の混練に関するWEBセミナー

(1)タイトル:プラスチック、フィルム分野における「伸長流動」に対する考え方とその応用

(2)日時:3月30日10時30分ー16時30分

*技術情報協会主催、講師3名のセミナーです。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報

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2022.03/14 e-Power

表題は日産自動車で開発されたハイブリッド機構の商標だが、トヨタ自動車のようなエンジンとモーターを協調動作させる複雑な機構ではなく、単純にエンジンを発電機として使い、動力はモーターだけで走る車である。


20世紀に、エンジンで発電し、その電力を使ってモーターで走行する車はエネルギー効率が悪いという理由で、トヨタ自動車のようなハイブリッド車が開発された。


これはエネルギー保存則を考慮すると正しく、e-Powerは、科学的な視点から燃費の観点で不利な仕組みとなる。しかし、自動車が等速で走る時の現象の説明としては正しいのだが、自動車はいつも等速で走っているわけではなく、時には赤信号で停車する。


その時ブレーキを踏む代わりに、発電する負荷を利用してスピードダウンし停車する技術が開発された。すなわちエネルギー回生システムである。さらに、内燃機関を発電機として利用するときには、エネルギー効率の高いところだけで運転できる。


これらの技術を合わせると、トヨタのような複雑なハイブリッド形式ではなく、単純な機構のe-Powerでも遜色のない燃費となる。


実は、1か月ほど前に日産自動車オーラ4駆を購入してその燃費の良さに驚いている。今までジューク4駆に乗っていたのだが、ターボ車だったために1lあたり10kmを切る燃費だった。


ところがオーラをスポーツモードで乗っていても15km以上の燃費で、遠出をすれば20kmまで伸びる。少なくとも1.5倍以上の燃費で加速感、特に発進時はターボ車よりも刺激的である。しかも静かだ。


科学的に考えると実用化アイデアとして20世紀に否定された技術だが、e-Powerは、100%電気自動車としての味わいもあり、自動車用動力として面白い仕組みである。燃料をバイオディーゼルあるいは水素とすればそのまま環境対応動力となる将来性を感じさせる技術だ。

カテゴリー : 一般

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