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2019.07/09 研究とは(2)

研究とは、新しい知を発見するために行う、恐らく故小竹先生はそのように伝えたかったのだろう。ただし当方は、伊藤先生から冊子を頂いただけであり、故小竹先生とは直接お会いしていない。

 

伊藤先生も故石井先生も恐らく故小竹先生とは仲が良かったのかもしれない。そうでなければ、講演録を渡すのではなく、ただ学生であった当方にそのままの言葉を自分の言葉として伝えていたかもしれないからだ。

 

この冊子を渡された当方は読み始めたときに、言葉で伝えてくれてもよいように感じていた。むしろ、文章を読む面倒な作業を疎んだ。

 

しかし、古い冊子を読み終えた後、それをわざわざ渡された先生方の気持ちも伝わってきた。わかりやすい言葉で書かれた冊子そのものをこの先生方は尊重されていたのだ。

 

それが、この冊子を余計に重くしていた。この冊子を読んでから実験に対する姿勢も変わった。研究者として実験に向かうようになり、シクラメンの香りが完成した。

 

 

 

 

ジケテンを不飽和カルボン酸のシントンとして用いたテルペン類の合成、という論文をまとめ、アメリカ化学会誌に投稿した。

 

 

 

残念ながらショートコミュニケーションとして学会誌に採用されることになったが、短時間に研究をまとめ上げた喜びを今でも覚えている。

新しい知を見出すのが研究であるが、その知の価値が厳しくジャッジされる世界があることも同時に学んだ。

技術者は機能を製品にまとめ上げる能力が要求され、製品が多数のユーザーに支持されるかどうかが勝負である。

エディターによる論文の厳しいジャッジとユーザーのジャッジでは厳しさのベクトルが異なる。その結果、研究のベクトルも、科学者と技術者で異なる。

残念ながら学校で教えてくれるのは科学者の研究で、技術者の研究については、技術の伝承で学ぶ以外に方法は無い。

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2019.07/08 研究とは(1)

研究とは何か、という問いに、故小竹無二雄大阪大学教授の講演録が的確に答えている。大学4年生の卒論を指導してくださった伊藤健児先生が故石井義郎先生から頂いたので読んでおくように、といわれた冊子である。

 

学部で卒業する予定で第二外国語も受講せず卒研を遂行していた当方にとっては無用の冊子だったが、それを読んでから時間を惜しんで実験をするようになったことを記憶している。

 

研究とは、という問いに対して難解な哲学ではなく、「何か新しいことを見つけるために」研究をする、と簡単で分かりやすく説明していた。

 

この冊子では、化学者が研究する意味を、そしてその時化学実験が重要な役割をなしていることなどわかりやすく説明していた。おそらく阪大の学生向けに語られた内容なのかもしれないけれど、感動したことを覚えている。

 

化学実験が面白くて小学生の頃から遊びの一環で実験をしていた。近所に実験器具の問屋があったのも影響していた。試験管やらビーカーをお小遣いで買っていたので、今から思い出すとこの問屋の社長が不用品を当方にくれていたのかもしれない。

 

実験と言っても難しいことはしていない。当時「子供の科学」という本に連載されていた実験をトレースしていただけだった。それでも十分に面白かった。

カテゴリー : 一般

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2019.07/07 高分子のプロセシング技術(16)

炭素と炭素とが共有結合でつながっている高分子では、昨日の考え方を少しイメージしにくいかもしれない。

 

しかし、原子の独立した球が結晶を構成している無機材料でこの概念を導入すると形式知を体系化するうえで都合が良い。

 

セラミックスの研究では、このような相関を意識して進められ、主に焼結体の構造と機能との関係、そして焼結体の構造と原料粉末の物性との関係などが20世紀に体系化された。

 

高分子科学が、主に高分子の重合研究、すなわちまず原料を製造するところから研究が始まり、合成された新規高分子についてその用途開発へ進んだ流れとは少し異なっている。

 

21世紀になるやいなや、「精密制御高分子プロジェクト」が5年間推進され、そのプロジェクトでは、強相関ソフトマテリアルという言葉が使われている。

 

これは、20世紀末に主に高分子材料あるいはその成形体で事業を営んでいるメーカーで、従来の高分子(ポリマー)設計手法を見直し、商品性能をターゲットにした材料設計手法を行うようになってきた技術の進歩を表現している。

 

そして高分子の高次構造だけでなくメソフェーズ領域も注目され、高分子材料を階層化してとらえて、物性との相関を調べてゆこうという動きが出てきた。

カテゴリー : 高分子

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2019.07/06 高分子のプロセシング技術(15)

セラミックスの粉砕技術を参考に粒子の混合と分散について説明したが、無機材料科学の進歩の過程で、強相関物質という以下の概念が生まれている。

 

 固体や液体は凝縮系(condensed matter)と呼ばれる原子の集合体と捉えられる。

 

この凝縮系の物性を測定した時に最も対照的な値を示すのは、金属(導体)と絶縁体である。

 

今、典型的な金属を考え、仮想的に原子間の距離を広げてゆくと、孤立した原子の集合体となる。

 

この時孤立した原子の集合体ゆえに電気は流れないはずで、さらにこの系の変化は原子間距離の関数として表現でき、その連続関数の途中で金属から絶縁体へ相転移を起こすはずである。

 

この仮想物質で変化している物性について理解を進めるには、金属側から考えるアプローチと絶縁体側から考えるアプローチがある。

 

両方のアプローチを統合し、すべての物質を統一的に記述することが物性物理の究極の目標という考え方が、無機材料の形式知にある。

 

カテゴリー : 高分子

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2019.07/05 高分子のプロセシング技術(14)

セラミックスでは造粒と呼ばれるプロセシングノウハウが開発されている。

 

これは粉砕技術(ブレークダウン)の進歩や、ビルドアップにより超微粒子化したために取り扱いにくくなった微粒子を取り扱いやすいように、形状制御された凝集粒子を製造するプロセシングノウハウである。

 

このプロセシングノウハウを応用して、混練前に高分子とその他の添加剤とを用いて造粒することが可能である。

 

この前処理により、多成分を配合して製造されるコンパウンドを1台のフィーダーで生産する時に発生する組成ばらつきを抑えることに成功している。

カテゴリー : 高分子

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2019.07/04 高分子のプロセシング技術(13)

例えば、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の有機無機複合ポリマーアロイを前駆体に用いると、焼成条件を制御して1nmの超微粉から取り扱いやすい0.3μmまでの高純度SiC粉末を製造することが可能である。

 

このような粒子を製造するための前駆体(前駆物質や前駆プロセスを総称)を用いて超微粒子を製造する手法をビルドアップと呼び、逆に大粒な粒子から粉砕技術により超微粒子を製造しようとする手法をブレークダウンと呼んでいる。

 

超微粒子というターゲットに対して、このような両方向のプロセスからアプローチする手法は、加工される物質にプロセシングの視点を置くことから生まれている。混練についてもこのような視点の置き方は重要である。

 

前駆体を工夫し超微粉を製造しようというセラミックス粉体のプロセシングアイデアを高分子のプロセシングに取り込んだ事例がある。

 

例えば、粘土鉱物を前処理してから高分子と混練し、高分子にナノオーダーの粘土鉱物が分散した有機無機複合高分子を製造するプロセシング技術が開発されている。

カテゴリー : 高分子

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2019.07/03 高分子のプロセシング技術(12)

 コンパウンディングで使用するフィラーは、その供給メーカーにより粒度調整がすでに行われている。

 

しかし、カーボンのようなストラクチャーを形成している粒子を添加する場合には、混練中にそのストラクチャーが破砕されて分散する場合もある。

 

このような粒子の粉砕理論については、1800年代にRittinger (1867年)とKick(1885年)により法則が発表されて以来研究されてきて、Bond(1952年)の仕事により形式知が完成したと言われている。

 

すなわち、固体の粉砕に必要なエネルギーとその粒径、あるいは生成比表面積との間には一定の関係がある。

 

ちなみに、粉砕による微粒子化の限界は、1987年頃0.5μmと予想されていた。しかし、現在では10-30nmの粒子を簡単に生成できるようになった。

 

ただし、一次粒子を小さくできても高分子にフィラーとして添加されるときには数μのアグリゲートとなっている。

 

粉砕による微粒子化には形式知から限界が見えていたので、化学合成や蒸発、晶析などを活用し、一次粒子の超微粒子化の努力がセラミックス分野で1980年代になされている。

 

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2019.07/02 高分子のプロセシング技術(11)

科学的ではない経験知から生まれたアイデアでも、形式知に基づく一流コンパウンドメーカーの技術レベルを越える技術に結びつけることができる。

 

そして、このきっかけになったのは、過去に経験したセラミックス粉体処理プロセスで学んだ伝統的形式知である。

 

これを参考にして、高分子中におけるカーボンの分散状態をパーコレーション転移の概念により考察した。すなわち温故知新の姿勢である。

 

セラミックス成形体製造プロセスにおいて、粉体処理プロセスは重要な技術であり、混合と分散に関する形式知についてセラミックス分野では古くから整理されている。

 

例えば、スラリーを製造するときに、「だま」の生成は注意しなければいけない、とセラミックスのプロセシング技術では指摘されている。

 

混練におけるフィラーの分散でも同様であるが、原料投入前に存在する「だま」の生成とそれがコンパウンドに及ぼす影響を見落としがちである。

 

カテゴリー : 高分子

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2019.07/01 5Gと高分子材料

セミナー会社からの依頼で、来月8月末に5Gに関するセミナーを都内で開催いたします。参加ご希望の方は、弊社へお申し込みください。参加費用は5万円です。

 

このセミナーでは5G用材料につきまして、すでにナノポリスで弊社指導により開発を始めました材料についてもご紹介させていただきます。

 

また、今月中旬から下旬にかけて、セミナー参加申し込みをされた方で希望者には事前相談会(1時間、弊社事務所にて)も開催させていただきます。

 

別途ご契約が必要になりますが、セミナー開催までに特許の出願お手伝いもさせてさせていただきます。ただし、特許出願サービスにつきましては、ご希望により、先着順とさせていただきます。

 

すなわち、出願内容が同一の場合には、先に申し込まれた方を優先させていただきます。

 

また、ご契約内容によりましては、セミナーでの内容に影響が出る場合もございます。弊社セミナーでは、毎回新しいアイデアをご紹介しておりますが、今回は公知情報の整理になるかもしれません。

 

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2019.06/30 高分子のプロセシング技術(10)

例えば、カーボンのような超微粉の凝集体では、高分子中でアグロメレートからフロキュレーションまで進みにくい場合がある。

 

するとアグロメレートした状態で表面からアグリゲートが高分子中へ分散してゆくことになる。その結果高分子中のカーボンの分散状態はふた山の分布を持つ可能性も出てくる。

 

ちなみに、体積粉砕は粉砕が衝撃力や圧縮力により行われるが、表面粉砕では、摩擦力や剪断力(ずり応力)により粉砕が進行する。

 

セラミックスを超微粉砕するときに、セラミックス粉体へ機械エネルギーを与える時間を十分長くとることが可能であり、表面粉砕で進行しても超微粉砕を行うことができる。

 

しかし、二軸混練機によるコンパウンディングでは、混練時間が短いために高分子に添加されたフィラーの表面粉砕が進行したときにふた山の粒度分布ができる。

 

先日の経験談で紹介した一流コンパウンドメーカーの中間転写ベルト用コンパウンドでは、見かけでは分散混合が進んでいたが、電子顕微鏡観察を進めるとアグロメレートとディスパージョンの共存した状態だった。

 

ベルトの押出成形で用いた押出機内で混練が進みディスパージョンしたカーボンの分散状態を変化させたため、ベルトの表面比抵抗の面内ばらつきを大きくしていた。

 

このように、セラミックスのプロセシング開発で習得した経験知を活用して、コンパウンド中のカーボンの分散状態について押出成形前後の変化を評価した。

 

この評価結果に対する一流コンパウンドメーカーの言い分は、押出成形が未熟のためカーボンの分散が変化している、と説明していた。

 

しかし、混練が不十分なコンパウンドでは、押出機のスクリューにより発生する剪断流動でも混練が進み、安定な分散状態に変わろうとする。これは形式知から明らかである。

 

これを確認するために、押出成形されたベルトを粉砕し、再度それを押出成形したところ、抵抗の安定したベルトができた。

 

このような体験からカオス混合のアイデアが生まれているが、このアイデアを否定した一流コンパウンドメーカーの混練技術では絶対に中間転写ベルト開発のゴールを達成できないと判断した。

 

ちなみに、二軸混練機にダミーの金型をつけてコンパウンディングする方法を一流コンパウンドメーカーへ提案している。

 

このメーカーの技術者からこの提案を否定されたために、自ら中古機の二軸混練機を購入し、ダミー金型の工夫を試行錯誤で行ってカオス混合装置を3カ月で完成している。

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