余談だが、PPS/6ナイロン/カーボンの配合で、Wパーコレーションを制御するときに、既存の混練プロセスでそれを実現できるかどうかは、大問題である。
当方の著書以外の混練プロセスに関する教科書を読む限り、分配混合を行えばできることになる。分散混合を抑制し分配混合を行えばよいという答えが教科書から出てくるのだが、これを一流メーカーの技術者に話したら、「素人は黙っとれ」と叱られた。
この技術者は、分配混合と分散混合の説明による科学的な混練の教科書が実務で無力であることを知っていたのだ。
当方は、豊川単身赴任が決まった時に、たまたま無機材研副所長からゴム会社が無機材研に支払った特許料を当方に下さるという手紙を頂いた。当方はこれを軍資金として、10万円前後の混練に関する本を何冊か買い込んだ。
ゴム会社は当方がゴム会社で出願し公告となった特許について特許報償を支払っていない。当方はFD問題の隠蔽化で転職するときにその問題を役員に指摘しているが無しのつぶてである。
20年前の約束を果たしてくださった副所長には頭が下がるだけでなく、タイミングの良さに感謝している。この誠実さに応えるために、大半を混練の形式知獲得のために投資した。
しかし、購入したどの本にも分配混合と分散混合の考え方で混練の説明しかなされていなかった。当方が新入社員の時に混練技術の神様のような指導社員から伝授された混練の知識とは、コンセプトが大きく異なっていた。
混練プロセスについて普遍化し科学的に研究することは大変困難である。まず、これを実感することが大切であり、非平衡下の現象をレオロジーの視点でよく観察する姿勢が大切だ、さらにそのレオロジーは21世紀になると今と全く異なるコンセプトの学問となっている可能性が高いので注意が必要だ、と習った。
ここで、当時の高分子レオロジーはダッシュポットとバネのモデルで議論するのがお決まりとなっていた。今の時代に、レオロジーの研究をこのようなモデルで学会発表していては時代遅れである。
指導社員から伝授されたのは、最先端の混練技術に関する知識だったのだが、100万円近く私費を投入して購入した何冊かの高価な混練の教科書には、実務の立場からは皆役に立たない知識しか載っていなかった。
セラミックス粉の分散技術について学んだ知識の一部もその教科書には反映されていなかった。理由はわからないが、教科書のコンセプトは分配混合と分散混合で皆統一されており、形式知と呼べる内容だったにもかかわらず、セラミックス粉のプロセシングについて触れられていなかった。
この問題について、今年当方の執筆した混練の本で一つの解を示した。当方の混練の本は、混練の神様から伝授された経験知を基に執筆している。
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Wパーコレーション転移による抵抗の安定化が、このときのヒューリスティックな解であり、コンセプトであった。しかし、これは科学的に証明された解ではなかったし、それを証明するためには数値解析も必要となるので、科学的な解について退職後の楽しみに残しておくことにした。
余談だが、2011年3月11日に早期退職して最初に着手したのが、会社設立とこのWパーコレーションの数値シミュレーションによる研究である。ソフト開発も含めほぼ一年かかっている。
Wパーコレーション転移を制御できれば、ベルトの周方向の抵抗偏差を小さくできることは、日本化学工業協会から賞を頂いた酸化スズゾルのパーコレーション転移の研究から容易に想像できた。
この経験があったので、ヒューリスティックな解を簡単に得ることができ、その解がほぼ正しいこともすぐに確信した。
すなわち、カーボンの導電性が高いために、カーボンが分散している樹脂でパーコレーション転移が発生すると、樹脂の抵抗変動は大きくなる。
もしカーボンの導電性を悪くすることができれば、パーコレーション転移が発生してもカーボンが分散している樹脂の抵抗変動を小さくできる。
カーボン材料を変更することができないので、どのように樹脂に分散している粒子の導電性を悪くするのかが難しい問題となるが、これもヒューリスティックな解を材料開発のプロであれば簡単に見つけることが可能だ。
逆にこの解をすぐに見出せない材料技術者は、もっと勉強する必要がある。勉強の必要な技術者は弊社へご相談ください。特訓をしてこのような問題のヒューリスティックな解を容易に見出すコツを指南します。
断っておくが、ヒューリスティックな解とど素人の山勘や第六感とは、その質において大きく異なる。後者でもヒューリスティックな解と言えなくもないが、正しい答えとなる確率は低い。
正しい確度の高い解を得る方法があり、それが弊社の研究開発必勝法である。弊社の問題解決必勝法は、確度の高いヒューリスティックな解を得る手法というAIの時代にAIではできないヒューリスティックな問題解決法である。
人間の人間による人間のための問題解決法である。感染症の専門家をこの手法で鍛えれば、コロナ禍の問題を即座に解決できる。
さて、導電性の高いカーボンについて、ふわふわな凝集状態で体積固有抵抗を測定すると10の6乗程度の半導体としての抵抗を示す。
このふわふわに凝集している状態へ均等に圧力をかけてゆくと、みかけ比重は0.9から1.6程度まで上がる。さらに静水圧加圧(CIP)を行うと1.95から2.0程度まで密度を上げることが可能だ。
横軸にカーボンのみかけ比重をとり、それぞれのみかけ比重の時の体積固有抵抗を測定するとほぼ1Ωcmまで下がる。すなわち、カーボンを凝集粒子とするとその凝集粒子の密度で体積固有抵抗を制御できることになる。
ここまで書くと勘のいい人ならば、Wパーコレーション転移の制御というコンセプトをすぐに理解できるかもしれない。
カーボンを凝集粒子としてPPSと6ナイロンで形成されるマトリックスに分散すればよいだけである。
凝集粒子の中で起きたパーコレーション転移とその凝集粒子が分散して生じるパーコレーション転移の二つのパーコレーション転移を制御すれば、ベルトの周方向で抵抗が安定したベルトを得ることが可能となる。
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写真があれば写実的な絵画は存在意味が無くなるのでは、と言っていた人がいた。それなりに理解できる意見ではある。
しかし、写真機が登場しても未だに写実的な絵を描こうとする人がいる。例えば富士山の絵にしても、天気の良い日にシャッター押せば、日曜画家の絵よりもきれいな富士山をプリントすることができる。
このように考えている人は、絵を描いている人の気持ちを理解していない。当方も十分に理解できているわけではないが、絵を描くことと写真を撮ることには、全く異なる目標があると思っている。
例え写実的な絵画は、その写実性において写真には勝てない、という人がいたとしても、別の意味で写真よりも写実的な絵画が存在する。
これは、科学と技術に少し似ているところがある。技術は科学登場以前から存在し、その技術を考えるための思考法も存在した。ヒューリスティックな解を得ようとする問題解決法は、まさしくそのような技術的思考法である。
科学では厳密なアルゴリズムで問題解決を行う。その結果、曖昧性は排除され、時間をかけながら唯一の解を求めることになる。
絵画はいくらオブジェクトの正確な写実性をそこに求めても写真には負けるだろうし、そこを追求しても絵画の意味は無い。
絵画には同一オブジェクトを描いたとしてもそこに作者の思いが写真よりも自然に反映される。絵を描くことはオブジェクトと対峙している自分の気持ちを映し出すことでもある。
写真も同様の目的があるが、写真では絵画に比較し、オブジェクトの写実性が高いゆえに多くの制約が生まれる。ゆえに写実性という観点で、写真と絵画に優劣をつけるときには、注意する必要がある。
オブジェクトを表現するという視点で、絵画は必ずしも写真より写実性が劣っているというわけではない。
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ベルト生産を終了し、押出機内に残っていたコンパウンドを清掃するために、クリーニング樹脂で押し出すのだが、早く作業を終えるために押出機のスクリュー回転速度を上げたのだ。
その結果、金型内では樹脂流動の剪断速度が上がる。PPSと4,6ナイロンのコンパウンドについて剪断速度が上がると4,6ナイロンがPPSに相溶し、透明になったという研究論文が東工大から発表されていた。
この研究論文によれば、フローリー・ハギンズ理論によるχが0より大きいPPSと4,6ナイロンが剪断流動状態でその速度が速い時には相溶することを意味している。すなわち、フローリー・ハギンズ理論では、χ>0では相溶しない、とされるが、特殊な条件下では、相溶が起きることが示された。
東工大と同様の視点、あるいはコンセプトを当方は、ポリオレフィンとポリスチレンの組み合わせで確認していた。この組み合わせもχ>0であるにもかかわらず、ある条件で相溶し、透明になるのだ。
某会社の研究者に当方のコンセプトを信頼していただき、様々なポリスチレンをそこから供給していただいた。
データ駆動型開発を進め16番目に提供していただいたポリスチレンで透明になった時には、まっ黄色な高純度SiCが得られた時ほどではないが、うれしかった。
これらの実験データから、低周波数の雑音を発生したベルトについて分析し、PPSと6ナイロンが相溶しているかどうか確認することがアクションとして重要となる。
そのアクションで相溶していることが確認されたら、押出成形プロセスを使って、PPSと6ナイロンが相溶したコンパウンドを製造し、それでベルトを生産したら面白いことが起きるかもしれない。
ただし、これをすぐに実行してはいけない。面白いことが起きなかった場合の対策が必要で、その対策のシナリオが確実に遂行できるように根回しが次のアクションとして必要となる。
そのために、面白いことが起きた場合と起きなかった場合を包含可能なコンセプトを練り上げる必要があった。
本来なら、研究開発期間を半年程度とり、人材を投入して十分なデータを集め研究として完成させてからテーマとして行うべきところだが、製品化までに残された時間がたった半年である。ヒューリスティックな解によるコンセプトを練り上げない限り、間に合わない。どうするか。
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国民民主党が党首の分党構想発表で揺れている。発端は立憲民主党が仕掛けた国民民主党との合流案だが、それがうまくゆかず、合流後の党名については、合流後に決めると立憲民主側が譲歩したところで玉木党首は覚悟を決めたのだろう。
おそらく国民民主党の中には、立憲民主党に合流したいという人が相当数いるのだろう。そこを当て込んでの党名にこだわらない戦術が出てきたのかもしれない。
立憲民主党にしても国民民主党にしても今中国で起きているコロナ禍以外の変化、それを受けた世界の動きを十分に理解されていないのではないか。少なくともそれらを理解しているように感じさせないのは、何故か。
さらには、現在の日本人が目指している、あるいは望んでいる日本の政治を具現化できるだけの政治家としての能力を備えた人材が立憲民主党にはいないのではないか(申し訳ないが、政治家としての能力を採点してみると国民民主党のほうが平均偏差値が高いように思われる。但しこれは表に現れた政治家個人の発言とか行動から当方が採点した結果で、国民民主党が地味な政治家が多いためかもしれないので、間違っていたらお許し願いたい。両党とも大した人材がいないとも思っていない。とにかくこの合流騒動で、政治家の能力が試される事態になった。国民は、その行方を注視している。)。
今求められている政党の機能はイデオロギー集団ではなく、政治機能組織集団である。イデオロギーで統一された共産党が、存続すれど永遠に政権が取れないと国民に思わせるのは、その人材の薄さである。すなわち、イデオロギーで統一化しようとしても国民の多くの支持は得られず、一国の政治を担える人材を揃えるように政党は活動しなければならない。
また、政治家は、一国の政治を担うための知識と誠実さを身に着けた人物が投票で選ばれるべき時代である。不倫に対して国民が厳しい判断を下すのは、誠実さを求めるためである。
文春砲がさく裂し不倫騒動で騒がれた山尾議員は、文春砲の威力が小さかったのか、年齢差から有権者がそれを信じなかったのか不明だが、不誠実にもかかわらず、政治家に求められる知識についてそのレベルの高さと活動実績から選ばれ、禊を行った。
その後、立憲民主党に愛想をつかして、国民民主党に移っている。この異動は、党の雰囲気を考慮すると理解できる。
田中角栄氏がいるので、この発言も正しいと言えないが、安倍政権が誕生した時に、亀井静香氏は「東大卒以外が首相になる時代」と、政治家に求められる資質の変化を表現している。
自民党は、すでにイデオロギー集団ではなく政治機能集団へと生まれ変わっている。野党にも自民党に対抗しうる政治機能集団の登場を渇望するのだが、以前民主党時代にshadow内閣を発表し、失敗したような愚行は辞めた方が良い。
およそ政治のわかっていない人でそれを構成されても国民は投票しないのである。情報化時代となり、国民は政治家一人一人の資質を知ろうと思えばその情報を入手できる時代になった。本物の政治という実務を理解した野党勢力が登場することを渇望する。
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妄想は、時としてヒューリスティックな問題解決法につながる。PPSと6ナイロン、カーボンの3成分からなるコンパウンドが、押出成形でベルトに変わる。
その瞬間、PPSは結晶化してベルトは金属音を放つ。フローリー・ハギンズ理論の正しさを示すかのように6ナイロンがPPSに相溶せず、溶融状態のPPS分子が折れ曲がり、ラメラを形成後それが集まり球晶となる。
その結果、6ナイロンは島相として、PPSの海に分散する。これは妄想ではなく高分子化学の教科書に書かれていても良い話である。
島状に分散した6ナイロンもパーコレーション転移を起こせば、カーボンもパーコレーション転移を生じる。だから、カーボンは6ナイロンの分散の影響を受け様々な分散状態となる。この辺りから妄想の領域に入ってゆく。
ベルトの押出金型には必ず中子が必要で、中子をどのように固定するのかで金型形状が異なるが、固定部分でウェルドが発生する問題がある。
固定部分があっても流動状態が均一であれば大きな問題にならないが、6ナイロンの油滴やカーボン粒子が流動を不均一にする。その結果ウェルド部分は他と異なるパーコレーション転移を起こす。
妄想が少しずつ膨らんで行くが、もし6ナイロンがPPSに相溶して流れていたらどうなるか、とか、相溶しない組み合わせだから、金型を出てサイジングダイに接触した瞬間にスピノーダル分解を起こす、とか、スピノーダル分解して6ナイロンが析出するときに6ナイロンと相性の良いカーボンは6ナイロン相の島に集まってくるとか、までたどり着くと、カーボンの分散状態を制御してベルト抵抗を均一に安定化するヒントも見えてくる。
ものすごい妄想であるが、白日夢を見ているかのようにボーとしていた瞬間、低周波数音が聞こえてきたのである。
6ナイロンがPPSに相溶したままならば、PPSは結晶化せず、ベルトは金属音とならない。また、相溶という現象は、非晶質相だけで起きる現象、というのは科学の世界の話である。
低周波数の音を発生しているベルトでは、PPSに6ナイロンが相溶するという信じられない現象が起きているかもしれない、と思っても、妄想は妄想として扱い、現実に取るべきアクションを冷静に考えなければいけない。
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研究開発における実験以外でも新たなコンセプトを考案できる瞬間は多い。これも俳句と同じである。
「古池や、買わず飛び込む、松坂屋」とは、古池君が松坂屋デパートへ入った瞬間に詠んだ句であるが、その後松坂屋美人店員と交際が始まったならば、単なるパクリの句ではない。
このような句を詠める能力と行動力があれば、りっぱな研究開発リーダーになれる。あるいはイノベーションを起こせる企画立案さえも可能だ。
カオス混合装置は、古池君と同じような心境で生み出されている。豊川へ単身赴任前に何か面白い情報はないか、一日PPS中間転写ベルトの生産工場に飛び込んでみた。
現場の改善を目的にしていないので、古池君と同じスケベ根性である。眺めていたのは、PPS材料だけであり、女性店員だけを眺めていた古池君と大差ない行動である。
納入されたPPSコンパウンドは、袋詰め状態もあれば、フィーダーに入っている状態などさまざまである。
一軸押出機の中に入れば見えなくなるが、制御盤には押出機の中で樹脂がどのようになっているのか、妄想は可能である。
また、頭に描いているのが妄想であることも十分に自覚しなければいけない。現実と交錯させるとよからぬことになる。妄想は妄想のまま妄想として楽しむストイックな姿勢はどのような場合でも重要である。
詳細は省くが、工場の中には、このような材料変化の妄想を描きたてる情報があふれている。湧き出た妄想の中で金属音から低周波数音に変化した瞬間は、絶世の美女と心が通った瞬間と等価であった。
しかし、これは妄想であることを忘れてはいけない。現実であることを確認するために、低周波数音に変わったサンプルを東京へ持ち帰った。
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温故知新の理解能力と情報があれば、あとは汗を流すだけで新しいコンセプトを考案することは誰でもできるのだが、「汗を流す」ところが難しいのだろう。
汗を流せば塩分が出てゆくので、塩分の補給が重要となってくる。この時知識の補給ができる人とできない人がいる。
汗を流しているときに、多くの情報と接することになる。情報をただ眺めているだけではダメである。情報をまず分類することが必要になってくる。
既知の情報と実験により新たに生まれた情報とに分類する。この段階で知識が身に着くのだが、実験をどのように企画したのか、その実験をどのように観察したのか、その実験から得られたデータをどのように整理したのかにより、得られる知識の量が異なる。
せっかく英知を集めて企画された実験を行っても、情報を集めるだけで終わる人は多いが、そのことに気がついていない。もったいないことである。
実験の報告を聞くだけの立場になった時に、情報を集めるだけで終わる人の特徴を理解できた。今発達障害が話題になっているが、かつてアスペルガー症候群と分類されたような人は残念ながら実験で知識を身に着けることができない。
このような人には的確な指示を出さないと、実験結果の報告が単なる情報だけになっていたり、偏った情報で整理されていたりする。注意しなければいけないのは後者で、時として天才的な偏った情報整理がなされることがある。
それが正しい時には研究開発にイノベーションを引き起こすが、単なる偏見の時には研究開発を誤った方向に導く。
タグチメソッドはこのような問題を防いでくれるので助かるが、実験結果の報告が単なる情報だけになっている場合に、管理者が実験から知識獲得経験がない場合には、研究開発が無限ループに陥ったり、二律背反の壁に突き当たってもそれを超える実験を指示できなかったりする。
温故知新ができるかどうかは、研究開発の管理者あるいは担当者の自己評価に用いることが可能である。
松尾芭蕉は不易流行という良い言葉も残している。これは、どのような時代にも通用する古典的な考え方と時代の流れにより生まれる新しい価値観とを結びつけることにより、良い俳句を生み出せる、という意味だが、コンセプトを生み出すときにも言える。
実は、科学的に企画された実験において実験の場が異なれば、科学で解明されていない現象が現れることがある。ここでその現象に気がつくかどうかは、良い俳句を生み出すことと通じるところがある。
不易流行の理解ができれば、発達障害ではない普通の人であり、実験もうまくできるようになり、そこから新しい知識をどんどん獲得できるようになる。ただし、ほんの少しのコツが必要で、悩まれている方は弊社へご相談ください。
松尾芭蕉は、だれでもよい俳句を詠むことができると言っている。ただし温故知新や不易流行を正しく理解しなければいけない。俳句を詠むこととコンセプトを考案することは通じるものがある。
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今さら人間が社会的動物であることを説明する必要はないだろう。社会的動物ゆえに何らかの組織を形成したりするが、ドラッカーは組織の機能に着眼し、組織とは平凡な人間誰もに非凡な成果を出せるようにするのが良い組織だと説明している。
すなわち、企業の組織に限らず政府やNPO、さらには家庭(家庭の無い家族の時代とはなったが)の組織をどのように形成するのかにより、その機能の質は変わる。
コンセプトの重要性に開眼した体験を書いているが、当方がそこにたどり着けたのは組織の成果とも言える。また、この組織ではユニークな「燃焼時にガラスを生成して難燃化する手法」や「世界初の台所用フェノール樹脂断熱天井材」を生み出している。
当時のゴム会社の研究所組織は、アカデミア同様の基礎研究を推進するのに適した体制であり、その風土もゴム会社全体の風土と異なり、アカデミア顔負けの「科学こそ命」の組織風土となっていた。
1970年前後の研究所ブームで日本企業の多くは基礎研究所組織を内部に作っている 。しかし、時代の流れとともに企業内の基礎研究所の運営について疑問を持つ企業も出てきた。
高校生の時に読んだドラッカー著「断絶の時代」には、企業における知識労働者の台頭による社会との断絶や、間違った問題を解いていることに気がつかず正しい答えを出す頭の良い人が成果を出せない問題が指摘されていた。
ちなみに、間違った問題の正しい答えほど扱いが難しい。ゆえに経営者は答えを管理するよりも、正しい問題が設定されているのかを管理しなければいけないが、とかくアカデミア的風土のマネジメントでは、答えの正しさや、そこに至るアルゴリズムを管理したりする。この問題は後日事例を基にここに書く。
余談だが、ドラッカーといえば経済活動の研究者として知られているが、問題解決法の専門家でもある。早くからヒューリスティックな問題解決法を提案している。
ところが、ヒューリスティックな問題解決法は、アカデミア顔負けの科学重視の活動をしていたゴム会社の研究所では、水と油のような関係になりがちである。
基礎研究の組織であっても成果を上げるためには、ヒューリスティックな問題解決法は重要であるにもかかわらず、その手法が科学に要求される緻密な論理を満たしていないという理由で、敬遠される。
しかし、ノーベル賞を受賞したヤマナカファクターもその解決法で見つかっている、といえば、緻密な論理よりも社会に役立つ成果こそ重要であることを理解できると思う。必要があれば、成果について、厳密な科学的アルゴリズムで検証すればよい。
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始末書をまとめているときに、ホウ酸エステルを合成し、それをポリウレタンの変性材として使用する実験を行ってみた。
ホウ酸エステルを持ち出したのは「温故知新」という行動である。始末書でごたごたしているときに新しいアイデアを考えているゆとりなど無い。
当時は高分子技術において難燃化技術の関心が高まっていた時代であり、古代の難燃化技術について書かれたコラム記事が研究室の隅に放置されていた。
この状態は誰かがそれをすでに検討してダメだったことを示している。すぐに検討された人に尋ねたら、ホウ素系の化合物には高い難燃効果は無いという実験結果だったらしい。
幸運だった。ダメな実験結果から予見される、ダメな実験をやらなくても済んだからである。「温故知新」とは、過去を振り返りそのまま実行することではなく、「新しいコンセプトの下で過去の知見を見直すこと」なのだ。
古きをたずねて、古い技術をそのまま見ていても、古いだけである。新しきを知るためには、過去と異なる視点を持たなければならない。過去と異なる視点とは新しいコンセプトで見つめなおすことである。
すぐにホウ酸エステルが過去に難燃剤として検討されていないことに気がついた。ホウ酸エステルに着眼したのは、無機アルコキシドからガラスを合成する研究が当時の花形テーマだったからで、当方の独創というよりも、情報として周囲にあふれていたからである。
当時の先端の情報をもとに古い現象を見なおした。この段階で、まだ、新しいコンセプトは生まれていない。
自己評価するときに、無能かどうかという能力の捉え方の方が努力目標を設定した時に実現可能性が高くなる、と思っている。
とかく有能であらんとすると高い目標設定をしがちであるが、無能ではないかと自己を見つめるときに、無能にならないように努力する行動を起こすことができる。
ホウ酸エステルについて難燃剤としての検討が過去にされていなかったので、複雑に考えることなく、まずそれを合成することにした。ここで大学4年の時に有機金属合成化学の研究室で学んだ経験が生きた。
配位子という視点で、エステル化反応にジエタノールアミンを用いたのである。未経験者ならばホウ酸エステルの合成にグリセリンとかを選んでエステル化の研究として行うかもしれない。
有機金属化学を1年間学んだ経験があり、当時の研究室の諸先輩の顔を思い出し、無能と笑われないために、迷わずジエタノールアミンとホウ酸の組み合わせを実験している。
そして合成された化合物とリン酸エステルとを組み合わせて加熱する実験を行い、ボロンホスフェートを簡単に合成できることを見出している。
この実験結果は、ホウ酸エステルとリン酸エステルをポリウレタンに添加しておけば、燃焼時の熱で容易に反応してボロンホスフェートができることを示している。
あとはボロンホスフェートの難燃効果を調べれば、新しい難燃化システムの完成である。
たった2日間の実験で、「燃焼時の熱でガラスを生成し、高分子を難燃化する」というコンセプトが生まれた。
新しいコンセプトは、温故知新と学生時代に厳しいがレベルの高い研究室で学んだ知的財産と、実験という体力勝負をいとわない愚直さで生み出された。
学会で発表した時の懇親会で多くの先生が褒めてくださったが、能力というよりも始末書騒動から始まった業務に対する姿勢の変化が大きいと思った。
新しい発明を行うには、コンセプトが重要となるが、汗を流すことをいとわない心がけで、コンセプトを見出したならば、すぐにそれを具体化する行動を起こす必要がある。
カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子
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