ドラッカーは高校卒業後すぐに大学へ進学せず実務の道を選んでいる。この時両親に大反対にあった話も含めその著書で述べているが、面白いのは彼もサービス残業をしているのだ。
彼は働く意味として「貢献」と「自己実現」を言い出した人物であるが、それは高卒後初めての仕事でそれが実現されている。彼は編集長の部下として職業人のスタートを切る。日々の仕事は秘書のような仕事だったらしい。彼はそれ以外に自分が会社へ直接貢献できるような仕事を日々探していた。
ある日、経理から領収書を探してくれと言う依頼を電話で受けた。そこでゴミ箱から探し出した領収書を経理に持ってゆくと、編集長から細々とした領収書も含め、提出されないことがあることを聞かされる。
彼は編集長を観察し、ポケットの中の掃除をする癖を見つけた。編集長の机の横にはゴミ箱があり、そのゴミ箱は毎朝掃除のおばさんが始業前に回収に来ることを知っていた。そこで彼は掃除のおばさんよりも早く出社し、編集長の机の横のゴミ箱の中を整理する仕事をはじめた。
この仕事を始めてから、経理から編集長が提出し忘れた領収書を探すようにと言う依頼が無くなったという。ただし、早朝のゴミ箱掃除の仕事についてドラッカーはやりがいの無い仕事とは述べず、自分が担当した仕事の中で会社に一番貢献した仕事であると体験談を終えている。
この彼の体験談には仕事のやり方のヒントが隠されているが、それよりも早朝出勤の仕事がサービスである点を今の時代は問題としなければいけない、と本田教授ならば言うのかもしれない。
ちなみに彼は現代の労働者を知識労働者とし、肉体労働者と区別している。ドラッカー少年は高卒であり、最初に与えられた仕事は時間勤務の肉体労働であり、その対価をお金で換算するという考え方も出てくるのかもしれない。しかし、ドラッカー少年は、組織における知識労働者として自分の仕事を捉えていた。
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東京大学本田教授のやりがい詐欺と言う言葉が引っかかっている。サラリーマン時代当方は、どんな仕事でも自分で自分を鼓舞しながらやる気を出して仕事をしてきたが、それ以外に上司はじめ周囲の激励にはそれよりも高いモラールアップ効果を感じてきた。
一方どこの会社でもあるかもしれないが、モラールアップした当方に冷水をかける人もいた。このような逆風(注)に対して,例えば高純度SiCの事業化では、意地でも立ち上げる思いで推進し続けた。ただ、いずれの成果の出た仕事でも仕事の対価にふさわしい賃金を頂いたことは無い。
ところが、当方の成果で恩恵にあやかった人たちは多い。日本化学会技術賞では、ゴム会社で全く無関係の事業を創り出したのだから最も貢献したのだろうと思っていたが、そこに名前は無い。代わりに電気粘性流体を担当していた人物の名前が入っている(公開情報からだけでもそれがわかる。またメンバーに入っていなかったから、当方に審査の依頼が来ている。このとき、おもしろいドラマがあった。)。電気粘性流体は大きなプロジェクトだったのでそれがつぶれたときに高純度SiC事業は助け舟になったことが理解できる。
このようなことを書くのは、いろいろとサラリーマ時代に痛い目にあったとしても、仕事を行うときに対価としての賃金以外にやりがいが無ければ人生の思い出として残るような仕事(人生の一番良い時間帯で仕事をしている時間と睡眠時間が大半を占めている。この事実を知るとお金だけで仕事を見つめる考え方が如何に人生にとってマイナスかが理解できるかもしれない)はできない。やる気もおこらず、嫌だった仕事も人生にはあったが、それらはすっかり記憶から無くなっている。
電気粘性流体の仕事では、増粘問題の解決や電気粘性効果に重要な3種のモデル粒子合成、難燃性油の業務の記憶はあるが、これらは極めて短時間で行われた業務である。それ以外のお手伝いとしてやらされた多数のつまらない仕事は忘れた。
Li二次電池のお手伝いについても、同様にすっかり忘れていたが、二次電池に関するセミナー依頼をされて、かつて福井大学電気化学講座の客員教授を依頼された背景とともに少し思い出した。ブルーレイ用レンズ開発もポリオレフィンにポリスチレンを相溶させた実験の思い出はあるが、主担当者に、このままでは失敗するからガラスでやったほうが良いと言い続けて迷惑がられたことも含めその他は忘れた。
やりがい詐欺という言葉が引っかかるのは、やりがいを持って行った仕事の楽しい記憶はあるが、そうでない仕事は忘れている、という体験からだ。これはどうでもよいことだが、やりがいの起きなかった仕事はすべて事業になっていない。やりがいはどのような仕事でも重要、とはドラッカーの言葉だが、引っかかっていることについて文字数の関係で今日はここまで。
おそらく、本田教授はドラッカーの考え方にも否定的かもしれないが、ドラッカーの基本思想は脱資本主義にある。そこには知識労働者が重要な資本で社会の中心にあり、事業の成否を決めるという考え方だ。ゴム会社で半導体用高純度SiCの事業が生まれ、それが30年以上続いた事例は高校生の時から読み続けたドラッカーの思想を具現化したものである。
(注)Li二次電池のテーマがセイコー電子工業とのJVとして事業化されたときに、当方はそのグループのメンバーとされた。そして上司から、ファインセラミックス研究棟内の設備を廃棄し、電池事業のための場所を提供するように命じられている。しかし、このような命令に対して役員の方に相談したところ、高純度SiCの事業化テーマは生きていること、また当方の異動は電池事業化のための短期的措置とのことを聞き、上司の命令に対して不動を決め込んだところ、いつの間にかLi二次電池の上司から解放された。それ以外に、他部署に間借りしていた設備について、勝手に廃棄処分されたり、極めつけはFD問題であった。今職場のセクハラやパワハラが問題とされ、社会全体で職場問題を取り上げているが、当方のような辛く楽しい体験もある。設備を廃棄せよ、と言った上司やFD問題はいわゆるパワハラかもしれないが、そのパワーに対してやりがいパワーで抵抗している。もっとも会社方針テーマという錦の御旗があったので、誠実真摯に行動すれば、直属上司と言えどもその活動を止めることはできなかった。当方が転職の決断をするまで職場の問題の深刻さに気がつかなかった役員にも少し困ったが、これがなかなか見えないものであることは、見える化運動の遠藤先生から学んだ。
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昨日中間転写ベルトの開発実話を書いたが、そこで8000万円の投資をセンター長が約束してくれた、とコンパウンド工場の投資額を書いている。しかし、コンパウンド工場の建設費としては安すぎるので奇異に感じた方がおられるかもしれない。これはすべて中古の設備で、子会社の敷地に建設したから安くできた。
但し、それでも利益の出ない金額である。さらに工場建設ならば設置場所との調整も含め設計期間も含め通常短くても1年以上かかる。また、8000万円の投資約束には、もし、目標とする中間転写ベルトができたなら、という条件付きなので、もし失敗していたら投資はされなかった。
このあたりの詳細は書きにくいこともあるが、これは実話であり、この開発過程で法に触れることがあるとしたならば当方の過重労働とコンパウンド工場建設計画が社内で知れ渡り、次第に大きくなっていったパワハラもどきの叱咤激励だけである。センター長の決断力と人柄がすべてを成功させたとしておきたい。すなわちセンター長の投資約束と人柄が無ければ中間転写ベルトは完成しなかった、といえる。
ゴム会社の高純度SiCについては2億4000万円の投資を頂き、高純度SiC生産のパイロットプラントと研究所の建設を行っている。SiC生成の速度論を研究するための超高温熱天秤もこの投資のおかげで開発できた。当時2000℃まで1分未満で昇温可能な熱天秤が無かったので自分で開発する必要があった。
この投資は当方が無機材質研究所へ留学してから一年以内に決定されている。だからこの投資は先行投資となる。一方、中間転写ベルトの開発では、半年以内に研究開発ステップのすべてを消化してから投資を受けているので、開発期間とその価格には常識はずれな点はあるが、形式上は一般投資である。さらに、各ゲートごとのデザインレビューの審査書類はすべて残っている。
これらの書類には捏造データはなく、各審査過程の詳細や差戻も記録されている。但し、その記録に書かれた差戻理由は優しい言葉になっており、審査中の針の筵状態の香りは、残念ながら残っていない。すべての書類は当方と部下の課長とで作成しているが、寝る時間などほとんどなかった。単身赴任中のアパートは事務所となった。
高純度SiCについては、過去にこの欄で詳細を書いているが、留学して半年後に人事部長からかかってきた電話のおかげで一週間だけ所長からプレゼントされた研究期間の実施成果が基になって先行投資が決まっている。すなわちたった数十ミリグラムの黄色い粉を見て社長が決定している。
写真会社のセンター長とゴム会社の社長とどちらの勇気があるのかと言えば、ゴム会社の社長だろう。一応センター長には当方のアイデアにより実現した中間転写ベルトの実物があった。但しそれを成形するためのコンパウンドを製造するための、手元にあった設備は二軸混練機でもなければカオス混合機でもなかった。押出成形機だけである。しかし、常識外れの押出機の操作と言う力技で一応理想とすべきコンパウンドができていたのだ。
一方、ゴム会社の社長には数十ミリグラムの黄色い粉しか見せることができなかった。あとは無機材研の先生方のご指導や世間に溢れていた夢の情報をちりばめたプレゼンテーションの資料だけである。社長も夢を買ったつもりで投資する、と話されていた。しかし、この社長の決断で30年以上続いた事業の研究開発体制が整った。社長は故人となったが、事業は30年後も生き続け他社へ業務移管となった。
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写真会社を退職前に担当した、PPS・6ナイロン系材料を用いた中間転写ベルトの開発では、中途採用1名と退職前の技能職1名で、本来の企画には予定されていなかったコンパウンド工場建設を問題解決型企画として立案し推進している。
これでも過重労働が発生している。当方は豊川へ単身赴任中、土日のほとんどを東京へ戻り、根津の会社の協力を得ながら、カオス混合技術開発に費やしている。ちなみに当方は名古屋に実家があり両親からは、名古屋に戻ったほうが安い、と嫌味を言われるような親不孝をしたことが後悔として残っている。
しかし、科学に反する技術の開発であり、成功を確信していたのは当方と8000万円の投資を約束してくれたセンター長だけだった。単身赴任したばかりの当方を信じていただけたことと根津の中小企業の社長の心意気が無茶な仕事のエネルギーとなっていた。
そして、世の中には存在しなかったカオス混合技術と、さらにフローリー・ハギンズ理論すなわち科学では否定されるポリマーの組み合わせの相溶系材料の創出を過去の経験知と成功体験を頼りにして開発を進めた。おそらく実務における人との交流で得られる喜びと言う対価を東大本田教授には理解できないだろう。
部下の課長は、中間転写ベルトプロジェクトは従来方針で進めますから安心して頑張ってください、と当方の行動を黙認してくれた。やさしく訳も分からず応援してくれる人たちがいるだけでも幸せ(?)だが、小説でもないのに社外からも助っ人が得られる状況で失敗するわけにはいかない。自然とモラールは上がるが仕事の対価としての個人の金銭面は交通費も含め赤字となり、実質賃金は目減りする一方だった。
新規コンパウンド開発とコンパウンド工場立ち上げには、少なくとも6人工数で1年必要なところ3人で半年間という短時間企画なので異常なパワーを発揮しなければならないのは当然である。
この時の企画は、働き方改革が叫ばれている今ならばありえない仕事の進め方だった。しかし、健康には気をつけた。常に健康第一で過重労働を行っている。休むときには二人のメンバーとともに大いに休み、仕事の遅れはリーダーである当方がすべて請け負っている。
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研究開発部門の企画には、経営方針に基づく大きな企画と、その企画を推進してゆく過程で発生する予定外の問題を解決するための問題解決型企画が、必ず必要となる。
研究のための研究を進めてゆく限りにおいては、その必要は生じないが、事業化を考えたときには必ず問題解決型の企画が一つや二つは出てくると思う。換言すれば、それが出てこない場合には、当方の経験では事業について研究開発段階で十分に検討していないことになる。
酸化第二スズゾルの帯電防止技術では、知財部から指摘を受けて企画段階から問題解決型企画が飛び出した。ゆえに企画を練り直すことになったが、企画段階から常に「それがどのような事業になるのか」を問いながら進めることは、ドラッカーに言われなくても心掛けねばならない。
この心がけで立てた企画に対しては、スタート当初に十分な経営資源を確保してから進められるが、企画推進過程で突発的に発生した問題の解決のために、どうしても他の企画を推進しているメンバーを動員しなければいけない事態になる。
その時、「経営資源が乏しい大企画を推進しているメンバーを動員」することは避けるべきである。かならず過重労働を強いることになるからだ。
とりわけ、一人で事業化推進を行っているいる人は責任感が強いので、そのような人物を動員するからには、法令違反も含めそれなりの決意が必要となる。しかし研究部門では、このようなことを軽く考える人が多い。人材がいない場合には、頭脳だけを借りる、という方法もあるが、これも注意して行わなければ過重労働を生み出す。
このような場合に弊社を活用するのが、今の働き方が問題とされる時代に賢明な手段である。多数の会社に一度に来られると困るが、そのような場合には弊社から予定を提案させていただいている。弊社でどのように仕事を進めるかはこの活動報告に書いているような仕事ぶりである。今年の仕事始めは中国で現場仕事からスタートしている。
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働く意味は貢献と自己実現にあると信じている。しかし、最近の働き方に関する議論を聞いていると、この働く意味も間違っているかのような錯覚に陥る。素直に与えられた仕事を自分のためと社会のためになるようにかたずけるという発想が無い。
学業を終え一定の年齢になれば、働かなくてはならない。今この前提を否定することを考えないならば、対価がもらえる仕事が必要である。このとき対価をお金だけと考えるのか、お金以外の対価を期待するのかによって、労働に対する考え方が変わるのではないか。
最近の働き方改革で出てくる意見を聞いていると、仕事の対価をお金だけと捉えているように聞こえてくる。実はどのような仕事でも、その仕事を行う人の心がけ一つでお金以外の対価が生み出されることを言いにくい時代でもある。
例えば東大本田由紀教授が唱えた概念だそうだが、経営者が社員に対して、「夢」や「やりがい」を強く意識させることで労働力を不当に利用する「やりがい搾取」という言葉がある。
当方の過去の活動報告を読んでいただけばわかるが、この言葉に従えば、当方はゴム会社の経営者に「やりがい搾取」にあって、高純度SiC半導体治工具事業を立ち上げたことになる。
本田由紀教授がどのような方か存じ上げないが、「やりがい搾取」は、働き手の仕事に対する視点を極めて歪めた概念である。確かにゴム会社の役員は当方のモラールを上げるように動かれた。一方で管理職の一部の方からは、理由は不明だが冷や水をかけられた。
当方は高純度SiC半導体治工具の事業を担当しながら、事業の立ち上げ方を勉強させていただいた。またそれを学ぶつもりで一生懸命過重労働にサービス残業、およそブラック企業で働いているような状態で仕事をしていたのである。おかげで、会社の組織の長所や弊害はじめ組織社会で豹変する人間の姿など、学びたくないことまで学ぶことになった。
だからFD事件を隠蔽化する動きに対して転職の決意をしたのだ。当方が転職を言い出した時、周囲の方々は信じられない顔をされていた。これ以上はここで書かないが、仕事に対する働き手の視点が異なると、転職理由さえも理解できなくなる。
どのような「仕事」にも、働き手の視点でお金では表せない大きな対価があることを働き方改革の議論でも取り上げる必要があるように思っている。「やりがい搾取」は、実務経験のない人が考えた視野の狭い概念である。
仕事を片付けることを労働と表現するならば、その労働をお金だけで捉えていては、前時代的なマルクス主義的価値観からぬけだすことができない。昨年さっそうと登場したスーパーボランティアの幼児救出劇を本田由紀教授ならばどのような解説をするのだろうか。
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電気粘性流体企画も高純度SiC企画もCI導入時にLi二次電池企画と同様にゴム会社の新事業3本の柱としてスタートしている。この3種類の企画で、高純度SiCの事業だけ残り、ゴム会社で30年続き昨年末他社へ事業譲渡された。
この3つの企画の違いはどこにあるのか、興味のある方は弊社へ問い合わせていただきたいが、Li二次電池の企画は、スタートして間もなく日本化学会技術賞を受賞している。そして受賞後、すぐに事業をやめている。
高純度SiCの技術は、当方が転職後日本化学会技術賞を受賞しており、その受賞メンバーには電気粘性流体の主要メンバーが入っている。
これらは、いずれも公開情報であり、公開情報からでも研究開発部門の企画はどうあるべきかは推測できる。当方は、学術論文の発表や学会賞への応募をしなかったのだ。
すなわち、研究開発部門の企画は少なくとも技術として成功することを前提として立案されるべきで、アカデミアの様な研究企画を、今の時代企業で多人数のパワーをかけて推進すべきではない。アカデミアへ委託すればよい。
当方はそのような考え方で、高純度SiCの基礎研究を行うため無機材質研究所へ留学している。そして高純度SiCの事業の核となる研究を「プレゼントされた一週間」という期間でそれをまとめた(注)。学位論文にしても役員から勧められて取得しているが、この学位論文においては少しドラマがある。企業はアカデミアと連携し、学術研究はアカデミアに任せて企業は技術開発に専念すべきという考え方を若い時から持っていた。
技術として成功する企画が必ずしも事業として成功するとは限らないが、技術として成功しなければ事業のスタートを切れないのだ。それでは、技術として成功する企画をどのように立案するのかは、弊社へお問い合わせください。
(注)留学前に基礎研究のネタを仕込んでいた。SiC化の反応について動力学的解析は、ゴム会社で業務終了後に行っている。この研究のために残業代等頂いていない。またこの研究は高純度SiCの前駆体について品質管理するために当時必要だった技術でもある。すなわちどのような前駆体であればカーボンも残さずに高純度化できるのか等は当時SiC化の反応について満足な基礎データが無かったため、技術の方向が不明だった。試行錯誤よりも基礎研究を行った方が早道だった。世間の研究が遅れているときには、企業でもこのように研究を行わなければいけない。実は、論文調査をしてみてわかったのだが、超高温熱分析と言う分野においてアカデミアにも研究のできる人もいなければ装置もなかったのだ。この研究については、当方もいわゆる大人の対応として学位取得につられて事後承諾しているので書きにくい部分もある。ただ、当方の研究について勝手にアカデミアから論文として出された事実は論文の執筆者の順序として永遠に残っている。これは嫌な思い出だが、この出来事の後、中部大学の先生からいろいろとサポートしていただけたのはアカデミアのすばらしさの思い出として残っている。アカデミアという世界は良心的な先生ばかりではないのだ。
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電気粘性流体の増粘問題を界面活性剤で解決した技術について、平成10年12月25日に「特許2867343」として特許が成立している。報告書など過去の研究情報を見せていただけないなどその処遇に疑問のあったお手伝い業務に関わらず、この改良技術も含め電気粘性流体の性能を改良するそのほかの技術について多数の特許を出願している。
ところで、界面活性剤で問題解決するこの技術は科学的証明では否定されていたが、たった一晩でその技術シーズが生まれている。その後企画のタイトルが界面活性剤から第三成分と修正され、実用化されている。
各種添加剤が無添加のゴム開発というテーマは、誰も担当することなく消えている。すなわち、やらなくてもよいような企画が事業化テーマを止めてまでも推進されようとしていた。研究所における問題解決型テーマにはこのような企画が生まれる可能性がある。
ところで、科学で否定された技術について、なぜ、一晩で技術を作ろうとしたのか。新入社員時代に3ケ月だけ防振ゴム開発を担当し、その時に身に着けた知識でプロジェクトリーダーが提案してきた企画が、ただ研究として確認するための、すなわち研究のための研究的企画であり実用性のない企画と判断できたからである。
研究として真理を確認するための研究も時として必要かもしれないが、事業化テーマである高純度SiCの企画を中断してまでもそれを推進すべき企画とは思われなかった。
ちなみに高純度SiCのJVで推進していた半導体治工具開発企画(特開平5-24818、特許2565024)はその後30年近く事業として続き、2018年10月11日に株式会社MARUWAへ事業譲渡されている。一方電気粘性流体については、テストマーケティングされたようだが、当方が転職後数年でその事業は消えて無くなっている。
但し、当方は電気粘性流体のテーマに対して非協力的だったわけでなく、研究色の強かった企画内容に対して、事業に照準をむけるよう推進方針の変革を促す技術企画をいくつか提案している。
まず非現実的なオイルの改良技術として難燃製油(それまでは安全性の乏しい引火性のオイルが使用されていた)を提案し、特許出願(特開平4-149253、特開平4-198190:特許2896808)している。
また、技術内容の不明確だった問題、すなわちERFに添加されている微粒子の設計指針となる、傾斜機能粉体(特開平3-252498、特開平4-22796:特許2855354、3102054)や微粒子分散型微粒子(特開平4-227996、4-227996)、コンデンサー分散型微粒子(特開平6-279018)など高い電気粘性効果を示す粒子のあるべき姿を明らかにし、それを特許出願して電気粘性流体の実用化に十分な貢献をしている。
これらの企画は高純度SiCの事業化を一人で推進しながらサービス残業で立案されている。今働き方改革が叫ばれており、サービス残業など非常識かもしれないが、当時高純度SiC事業化を推進するためには、その手段しか残っていなかったのである。
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今年の箱根駅伝一区で転倒した選手A君のケガが心配である。昨日のニュースにもこの選手の話題が出ていた。実業団で活躍を期待されていた選手のようだ。今回のケガで選手生命を終えることのないように早く全快されることを祈っている。
この事故について、解説者による、美談にするな、という叫びが生放送中に飛び出した。ケガの程度は本人以外分からない状況で関係者から棄権の判断を出しにくいが、専門家には走り続ければ危険と思われたのだろう。本来監督が棄権を申し出るべきだったろう。
監督は、その場にいなかったので棄権の指示を出せなかった、と言っているが、これは100m競争ではないのだ。十分に選手のケガについて情報を得る時間もあり、適切な指示を出せる時間が十分にあった。
これは、正月早々寝ぼけた情けないコメントである。解説者の美談にするな、という判断が正しかった。できれば、監督は途中棄権を申し出るべきだ、と踏み込んだ解説をしても許される時代である。
「今」、と言う時代は、気がついた人がイエローカードを出すべき時代かもしれない。NHKの「あさイチ」はじめ多くの番組で発達障害を社会問題として取り上げているのだ。その責任のある役割の人が、もし発達障害の場合には正しい判断を出せないかもしれない。
駅伝のような競技で、ケガをした選手の立場で、棄権を申し出るにはかなりの勇気がいることである(恐らく責任感が強ければ多くの人は無理をして走り続ける判断をするものだ。だから、他の役割の人による正しい判断が求められる。経営においても監督役と執行役がある。今回のように選手のことを第一に考えない監督に指導を任せている大学に長距離を目指す若者を高校は送り込んではいけない。)。
特に今回は始まったばかりの一区で、とても棄権など本人は言い出しにくい。TV観戦をしていても選手がかなりの無理をしていることは理解できた。
当方は、サラリーマン時代過重労働に土日返上、サービス残業など無理な働き方をしてきた。しかし、年休の取れるときには申し出にくい雰囲気であっても成果を出していたので堂々と年休をとり(日本では評価されなくなる、とアドバイスをしてくださる上司もいたが)、資本である体力を消耗しないよう努めた。体力があっての知力である。コンピューターも電気が無くなればただの電子部品の塊である。
また、独身時代の冬場の3ケ月は、友人たちに冬眠期間と宣言し一切の遊びを裁ち、土日を勉強時間にあてている。さらに、FD事件が起きたときには、自己の専門領域を変更しなければいけなくても、転職の判断を下してきた(これはサラリーマン人生において最も精神的にきつい判断だった。)。
長い人生において、無理をどのように味わいその状況にどのように対峙するのか、そのツボを考えながら生きてきたが、ケガをした学生にはそのような思考力があったのかどうか。あったとしても「責任感」という重圧から、一つの答えしか選べない状況である。
すなわち、当方が選手であっても、自分が苦労して立ち上げた高純度SiCの事業や専門領域の仕事を捨てて写真会社へ転職したように、長距離ランナーの夢をあきらめて走り続けたかもしれない。A君もその覚悟で走り続けたに違いない(注)。
ここで心配なのは、A君に実業団の道が閉ざされないか、と言う問題である。ニュースによれば半年間は練習できないという。A君には今後人生の岐路になるような事態になっても、今回の自分の下した判断を後悔せず、新たな人生のための学びの機会として頂きたい。
監督は、その役割に誠実真摯であったかを反省して欲しい。そして応援していた人は、その時自分がそれぞれぞれの立場ならばどうするのか、真摯に考えるべき美しくない箱根駅伝だった。往路優勝、復路優勝、総合優勝がすべて異なる面白さはあったが。
(注)今働き方改革が議論されているのは、やや遅すぎたように思われる。むしろ、高度経済成長期にこのような議論がなされるべきだったろう。ゴム会社では、当方が高純度SiC事業を立ち上げたときに、同じ世代のメカトロニクスを担当した若者が突然死したり、これはFD事件が原因で転職後の出来事だが、週刊誌や新聞を賑わすような事件が起き自殺者が出ている。モーレツな時代には、今回の箱根駅伝における「その場にいなかった」監督のように、しかるべき役割の人たちは何もしなかったのである。働き方改革をどのように進めるのか、悩まれている方はご相談ください。また、パワハラ、セクハラ、過重労働など働く立場で無理をしなければいけない人もご相談ください。社会で問題になっている多くのサラリーマンの危機を実体験し学んだ知恵を伝授いたします。
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当方は写真会社へ転職前に、高純度SiCの事業化を一人で担当していた。ただし、この企画は、社外(住友金属工業)とのJVであり会社公認のテーマだった。
高純度SiCの企画は6年前に2.4億円の先行投資を社長から直接決裁を受けてスタートしている。しかし、ファインセラミックスと同様にCI導入時メカトロニクスの事業を目標としスタートしていた電気粘性流体(ERF)の企画が、ERFの耐久性問題でとん挫しかかっており、そのお手伝いを頼まれた。
高純度SiCのテーマを中断しERFのテーマに注力するといった判断は、転職するときにわかったことだが、中間管理職あたりから出されていたようだ。全社方針としてファインセラミックスのテーマは継続となっていた。
当方がFD問題解決のため転職を決意したとき、高純度SiCの企画を継続して推進するために数人のプロジェクトが作られたことから、それを理解できた。
高純度SiCのテーマは、その成り立ちの経緯から納得していたが、研究所の管理職が歓迎していなかったテーマであり、転職するまでにFD問題だけでなく、テーマ中止を求められる事件が起きていた。
そのたびに、当方はしかるべき人に相談しながら一人で担当していた事業企画を中断ではなく少しでも継続できるよう努力していた。だから、ERFの耐久問題が発生してその仕事を手伝う限りは、問題とその位置づけを明確にしてほしいとプロジェクトリーダーにお願いしている。
その時、プロジェクトリーダーは、電気粘性流体をゴムのケースに入れて使用していると増粘するので、電気粘性流体を増粘させないゴム開発を担当してほしい、具体的には配合剤が入っていなくてもゴムとして機能する材料を開発して欲しいと協力を求めてきた。
「問題解決」の依頼ではなく、プロジェクトリーダーが決定したテーマを押し付けてきたのである。当方は、それに対して「界面活性剤で問題解決をする企画」を提案した。すると彼は、それは1年研究して、その方法で問題解決できないという結論が出されている、と応えてきた。
その報告書の閲覧をお願いしたところ、重要機密であり見せられない、と言われた。これは、同じ部門にいながらおかしな回答である。この奇妙な回答の意味を察し、その日の夜に、当方はサービス残業によりこの増粘問題を界面活性剤の添加技術で解決した。
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