ニューイヤーズ駅伝は、下馬評通り旭化成の優勝で、箱根駅伝は往路優勝を逃がした青山学園が復路で健闘し、総合優勝を獲得した。この3日間の駅伝で注目すべき点は、青学を抑えて往路優勝した東洋大学。
1年生選手の活躍が光っていた。それと明確に往路優勝を狙ってきたと思われるような布陣だった。このような戦略を立てることが可能かつその戦略で結果を出せたのは、チーム内の力を監督が十分に掌握できているからだ。
今年は残念な結果だったが、来年は青学の最強ライバルになることは必至だ。ことしも同様の噂がニュースで書かれていたが、青学の選手層を考慮すれば4連覇は妥当な結果で、むしろ完全優勝できなかったことに驚いている。
来年東洋大学が新一年生に有力な長距離選手を1名獲得することができたならば、おそらく青学に勝てるかもしれない。来年の箱根駅伝が楽しみになってきた。
昔実業団駅伝では、コニカミノルタの健闘が光っていたが、ここのところ元気が無い。転職してから、お正月の3日間は駅伝がもっとも面白いTV番組となった。毎年何かドラマを期待して見ている。
今年は、大会前に優勝候補に挙げられた神奈川大、8大会連続でシード権を獲得していた駒大、名門・中大が10位以内に入れず、来年の箱根駅伝のシード権を獲得できなかった。
これらは、それなりのドラマだが、箱根駅伝を毎年見てきた当方にとっては、30秒程度の僅差で東洋大学が往路優勝したことこそドラマである、と思っていたら、WEBニュースで「川内優輝、-17度で世界記録! 76度目の2時間20分切り 米仰天「極寒最速ランナー」」というのが流れてきた。
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昨年末30日にゴム会社の友人たちと新宿で忘年会をしたが、23時過ぎの新宿ゴールデン街は、ここが日本かと疑いたくなるような国際色豊かな光景だった。SNSの効果でこの地は一気に海外からの旅行客であふれる地域になったのだ。
製造業の工場が、安い労働力を求めASEANはじめアジア諸国へ出ていったために、新しい産業資源として観光資源が注目され、国を挙げて観光立国日本を目指し始めた。その結果、京都や奈良以外の観光資源が整備され、日本に外人の旅行客があふれ出した。
日本人の人口も減少し始め、何世紀先には日本人は絶滅危惧種になると言われているが、観光立国の副作用である国際結婚が進めば、新しい日本人がその心配を吹き飛ばしてくれるかもしれない。
ただ、このまま第二次産業が衰退し、第三次あるいは第四次産業へ移行するとは思えない。例えば、最近山の中の漁業が注目されたり、LEDを使った植物工場が稼働し始め、第一次産業が第二次産業の影響を受け新たな進歩を始めた。
40年ほど前にゴム会社創業50周年記念論文の募集があった。豚の繁殖力と牛肉のうまさを狙った「トン牛」や荒唐無稽な「マリン産業」など中身のないキーワードが躍る論文が首席となり、その著者だった友人が賞金10万円(当時学卒の初任給一か月分の手取り額に相当)を獲得した。ゴム会社の基盤技術から起業する高純度SiC事業を真摯に提案した当方の論文は入賞すらしなかった。
友人が賞金の10万円で二人だけの残念会を開いてくれたが、このおかげで高純度SiCの事業を新事業として必ず立ち上げる決意をすることになった。それが実ったピュアベータ事業がゴム会社で今も続いている。
トン牛は未だ世の中には登場していないが、無名の企業が始めた山中で海の魚を育てる事業は、味がよいとテレビで紹介された。審査員はトンでもない発想を重視して論文を審査したのかもしれないが、それが極端になると社員は白ける。
恐らく産業はその垣根や時代の想像を越えシナジーを活かして新たな発展をするのかもしれない。例えば二次電池では、その起電力が大きくエネルギー密度が高いLi二次電池に注目が集まっているが、資源の偏りと埋蔵量の少なさから価格が高い。
しかし、そのLiより少しだけ起電力が低いNaは、海に豊富に存在するのでNa二次電池は究極の安価な二次電池をLi二次電池技術の資産で容易に設計できる可能性が存在する。その時電池は海産資源を活かした電池になるのかもしれない。観光立国もよいが、第二次産業の新たな展開も日本には必要だ。技術と観光の日本をめざし頭を柔軟にして技術者はがんばろう。
(注)記念論文の審査には論文捏造問題や盗用問題で有名になった大学のタレント教授を中心に行われた。論文審査員の知性のレベルで、選ばれる論文の質は変化する、と事前にうわさされていた。ちなみにゴム会社の次世代新事業提案が論文募集の趣旨だった。ゴム会社の基盤技術に新規コンセプトのゾルゲル法を展開した実現可能な提案は趣旨に沿っており没になるはずがないと思っていた。例え無念な結果になったとしても、歴史は真摯な努力に報いてくれる。ドラッカーが組織に対する貢献で誠実と真摯さが重要とその著書で述べている所以である。一時の挫折で腐ってはいけない。
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電気自動車の時代が現実となってきて問題になるのが電池である。Li二次電池を初めて商品として世の中に出したのは、ソニーではない。ブリヂストンである。ただその電池の性能が低く、またポリマーが正極に用いられていたので、この事実は、あまり注目されていない。
Li二次電池については、全固体型電池が研究開発の中心になっているが、この全固体型電池というのは、40年以上前からコンセプトとして存在した。もっとも当時は固体電解質としてプロトン導電体が研究されていたのだが、このプロトンをLiに変更すれば、当時検討された材料の中には使えそうなものもありそうだ。
ただし、40年以上前の材料はセラミックスがほとんどであり、大半が室温では動作しない。しかし、当方の学位論文の一章には室温で動作するセラミックスではない無機高分子材料について導電性が論じられている。さらに、ゴム会社に入社後に他のタイプの固体電解質を開発している。
ところがこれらは、特許庁が公開しているデータベースで検索しても出てこない。古すぎるからだ。10年ひと昔と言われるが、30年以上前ともなると今の時代では大昔となってしまう。しかし、情報が電子データベース化されていない場合には、ケミカルアブストラクトでも調べない限り見つからない。
当方は写真会社に転職し、昭和35年に公告となった小西六工業の帯電防止特許を見つけ、特許が出願されていた時代には形式知として知られていなかったパーコレーション転移という現象の新しい評価技術とその現象を制御する技術を開発し、日本化学工業協会から賞を頂いた。
30年以上前の経験知で開発された技術を進歩した形式知で再構成しなおして全く新しい技術を生み出したわけだが、難しいのはその成果に対する周囲の評価だ。商品開発に成功したにもかかわらず社内では評価されなかった(だから学会発表などを積極的に行っている。当時の部下は日本化学会から講演賞を受賞した。)。
この経験から、温故知新により開発された技術ではプレゼンテーションが極めて重要になることを知った。ただ、これは見方を変えると温故知新によるイノベーションは、誰かが努力しない限り起きにくいことを意味する。
しかし、固体電解質については、その歴史が古く豊富な形式知や経験知が存在するので、これを放置しておくのはもったいない。もし技術開発の隘路に迷い込んだなら、古い技術をみなおすのも悪くない。電池の歴史は古いのだ。
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欧米の電気自動車シフトにより、国内自動車メーカーも電気自動車開発を加速し始めた。数年前まで、電気自動車については、燃料電池車も注目され、モーターショーでもそれがテーマとして扱われた。
ところが一気に充電池をエネルギー源とする電気自動車へベクトルは揃えられた。トヨタ自動車は、ハイブリッド車の技術を株主にアピールし電気自動車に遅れをとっていないと発表したが、やはり電気自動車はハイブリッド車と少し異なる。
例えば日産自動車の電気自動車は1ペダルで加速から減速、停止までできる。これは試乗してみると従来の車とは全く異なる運転感覚であると気がつく。
エンジン周りの部品メーカーは、大変である。電気自動車ではモーターが駆動力であり、ガソリンエンジンとは部品点数が大きく異なる。うまくイノベーションについて行けない場合には、倒産する企業も出てくるのかもしれない。
日本の自動車産業はこのイノベーションの大波にうまくのり、新たな成長の時代を迎えることができるのだろうか。特許を見ると電気自動車に必要とされる要素技術の発明はほぼ出そろっている。
例えば、パワー半導体に用いられるSiCは、今後大きく技術革新されその市場は伸びると予想されるが、面白いことに20年以上前の技術以上の要素技術は登場していない。すなわち、ウェハー事業は新た参入できる余地がある。
そのほかの要素技術についても似たり寄ったりで、この新しい市場に異業種から多くの参入が見込まれ、従来の部品メーカーにとって戦国時代になるだろう。規模が小さくなったとはいえ当分東京「モーター」ショーから目が離せない。
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今年感動したのは日馬富士問題における貴乃花親方の姿勢である。組織人として必ずしも褒められた態度ではなかったが、理事解任を告げられてもぶれなかった。言葉は悪いが、あたかも相撲協会に喧嘩を仕掛けているようなその姿勢は、異様な迫力があった。
組織に反旗を翻せば、組織から追い出されるのは自明のことであり、貴乃花親方も十分に承知していたはずだ。それゆえすべての処罰を受け入れ、それに対して申し開きや言い訳すらしなかった。この潔い親方の姿勢のおかげで日本中が大相撲や相撲協会に注目した。その結果、現在の相撲協会の在り方に多くの人が疑問を持ったに違いない。
相撲協会の隠蔽体質はそのままで、モンゴル勢による八百長相撲の疑惑すら持たれている。さらには横綱白鵬の横綱らしからぬ取り口や負けてもそれを認めないみっともない相撲を取る下品さ。勝だけでは横綱は務まらないのだ。貴乃花親方が身を挺して訴えている理由が相撲に興味の無かった当方にもよくわかる。
相撲協会は山積する問題を隠蔽しようと必死だが、貴乃花親方のおかげで丸見えである。相撲は国技であり国民の財産であるはずだ。誰かが現在の大相撲を改革しなければ大相撲は単なるスポーツの見世物に堕落する。貴乃花親方は危機感から、今回の日馬富士問題で今回のような姿勢を示したのかもしれない。
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見た目の悪いペレットの高次構造に対して、R社担当者から形式知でいろいろと説明してもらったが、へりくつにしか聞こえなかった。ただ、へりくつにしか聞こえない説明でもゴムの混練と樹脂の混練という技術について、その考え方が大きく異なることが見えてきた。
経験知によれば、ゴムの混練では、「高分子を練り上げる」である。しかし、へりくつから見えてきた樹脂の混練では、「高分子をうまく混ぜる」作業だ。すなわち、樹脂では高分子が練れている必要はない、ということだ。
同じ高分子というカテゴリーの材料のプロセシングでも樹脂とゴムの混練に対する考え方の違いは、面白かった。しかし、混練の形式知をまとめた教科書には、このあたりについて詳しく書かれていない。
ゴムの経験知から、樹脂の経験知不足を不安に感じ、徹底的に調査した。その結果分かってきたのは、混練について高分子材料の視点から見て当方の知的欲望を満たしてくれる教科書が無い、と言うことだ。高価な混練に関する教科書を3冊ほど買い込んだが、どれも欲求不満となる内容だった。もちろんそれらの教科書には、当方の発明したカオス混合装置のことなど触れていない。
技術開発では、形式知と経験知の整理ができていることは大切である。技術開発の過程で様々な現象に遭遇することになる。それらの現象の中には、科学で解明されていない現象も多く存在する。
科学で解明されていない現象に遭遇したときに、形式知ではなく経験知で処理をすることになる。この時、うまく行くかどうか保証されていない。さらには、目の前で起きている現象が、過去の経験知と異なる経験知を要求してくる場合がある。
形式知は、教科書で簡単に補うことが可能だが、迅速に経験知不足を補うことは難しい。ゆえに技術開発を行うときに、この経験知不足の問題をどのように克服するのか、いつも考えておかなければいけない。経験知でも短時間で補う方法があるのだ。これは技術開発のノウハウだ。
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昨日貴乃花親方の処分が日本相撲協会の全会一致で下された。「理事解任」という厳しい処分で、被害者の親方と加害者の親方が同じ処分という奇妙な処分であるが、処分理由は組織の論理に則ったものだった。
相撲協会が今回の暴力事件を隠蔽化しようとしていたのは、先場所における加害者である横綱が平然と相撲を取っていた事実から自明であり、これは今回の問題を考えるときに重要な事実であり相撲協会全体が猛省しなければいけない。
また品格の低い横綱を許しているのも、あるいは一部週刊誌が報じた新たな八百長問題も貴乃花親方の行動を隠れ蓑にうやむやにしようとしている姿が今回の処分から見えてくる。
原因と結果を見る限り何らかの処分は仕方が無いにしても、貴乃花親方の無言の訴えを取り上げようとしなかった相撲協会は、今後も闇を抱えたままになった。健全な組織ならば、この様な場合に大岡裁きのような結末にしただろう。
組織がその組織で決めたルールに則り、厳格に運用されるのは当然である。しかし、組織を動かしているのが人間である限り、その厳格さが組織の命取りとなる場合がある。すなわち、人間の誠実な行動を保証できる完璧なルールなど決めることができないからである。
逆に不誠実な人間がルールを悪用する場合すら起こりうる。今回の相撲協会の対応でそれがあからさまに出た。すなわち貴乃花親方が理事として組織に協力していないという情景がマスコミに幾度となく登場している。
FAXでも構わない一枚の書類を複数の協会の人間が親方の自宅にわざわざ届けるという滑稽なパフォーマンスまで相撲協会はやっている。大きな元関取が集団で親方の家に行けば、秘密の行動であったとしても衆目の注目を集めるのは避けられない。その目的が丸見えのパフォーマンスであり、それら協会の行動がなされたうえでの今回の処分であることを国民は理解しなければいけない。
危機管理委員会の存在には「?」がつく。国民はこのような判断を通して、それぞれの役割を演じている人たちの人格を学んでゆく。肩書が立派でも、どうしようもない人がいるのだ。
組織というものは哀れである。内部に潜む癌を正そうという動きがあったとしても組織を運営している人物が不誠実であれば、その組織は崩壊への道を歩んでしまう。かつてのオリンパスや今の東芝、そして相撲協会の状況は、ドラッカーがその著書で誠実な人間をリーダーに据える重要性を訴えていたことを改めて想起させる。来年1月4日の評議員会が健全な見解を述べるのか、その存在をお飾りとするような見解を述べるのか、どちらだろうか。委員長は池坊さんである。
(注)貴乃花親方の行動は、誠実ではあるが大人げない。このような人物を指導したり助ける役割の人物がいない組織の問題も考えなければいけない。ドラマ「半沢直樹」には、そのような人物が登場していたが、世の中の組織はそのような組織ばかりではない。また、ゴム会社のような優れた人材を輩出している組織でさえ、身の丈以上の会社を買収した異常事態ではおかしなことが起きてしまう。大人の誠実さが組織で生きてゆくには求められる。
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中間転写ベルトの処方は、PPSと6ナイロン、カーボン2種の単純な構成だった。これを、外部のR社が二軸混練機で混練してペレット形状で写真会社へ納入していた。
形式知に反せず、PPSと6ナイロンは相分離しており、その島相が巨大化しないように6ナイロンの添加量は設計されていた。また、カーボンを2種類使用していたのは、抵抗安定化のため、という説明だった。
業務を引き継ぐときには、この処方がすでに確定した処方であり、製品化に向けて処方変更は不可能なところまで開発ステージは進んでいた。
さらに、パーコレーション転移の制御を行なわなければいけないのに、6ナイロンの島相が活かされていないところが気にいらなかった。また、カーボンを2種類使用しているところは、当方の経験知から意味不明だった。
コンパウンド設計の視点で、当時のペレットの高次構造は、「適当な処方をただ混ぜてできた構造」であり、そこに工夫の痕跡は無かった。しかし、外部のコンパウンダーは、いろいろ工夫した結果だという。
形式知の観点からいろいろと説明してくれたが、ペレットの高次構造の見た目が悪ければ、設計されていないのと同じである。今、お見合いはあまり歓迎されていないが、いくら肩書きがよくても見てくれが悪ければ、その段階で躊躇するはずだ。
技術開発も同様で、形式知の観点からいくら妥当性があったとしても、高次構造の見た目が悪ければ、まず疑問を持たなければいけない。これは樹脂補強ゴムを開発したときの経験知である。
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科学的方法による技術開発は日本中で行われている。ここでは科学誕生以前から行われてきた”かもしれない”技術開発のやり方をPPS中間転写べルトの開発を事例に説明したい。
まず、開発目標(ゴール)を明確に具体化する。業務を引き継いだ時に言われたゴールは、「押出成形で問題になっているウェルド部の表面比抵抗の偏差を小さくすること」だった。
タグチメソッドをここで使用するならば、基本機能をベルトの抵抗にして、電圧と電流の動特性を用い開発を進めることになるのだが、残念なことに、業務を引き継いだ時のシステムに対して、タグチメソッドを使っても、せいぜい歩留まりを数%改善できる成果しか得られない状況だった。
一人前の技術者ならば、何が何でもすぐにタグチメソッドを使う、というような愚を行ってはいけない。
タグチメソッドは良い方法だが、使用するタイミングが悪いと、十分な成果を出せない場合がある。例えばシステムが悪い時である。システムに問題がある場合には、いくら最適化を行っても満足な結果は得られない。
ところが故田口先生は、システム選択は技術者の責任、と言い残されて他界している。目の前のシステムがよいシステムか悪いシステムかを判断する方法を遺言で残しておいてほしかった。3年ほど田口先生に直接ご指導いただいたが、システム選択は技術者の責任という姿勢を変えられなかった。
それでは、良いシステムをどのように選んだらよいのか、あるいはどのように組み上げたらよいのだろうか。当方が行っている方法は、自分の経験知で不足している部分をまず整理し、その不足部分を補う作業から始める。すなわち、自分の知識不足を補う情報調査が大切である。
前任者がすでに情報収集を行っていた場合でも、自分の経験知を基準に、情報調査をやり直すべきである。情報収集を専門に行っている会社があるのでそこに依頼する方法もあるのだが、これはお勧めしない。
すでに開発が進行している段階のテーマを引き継いだ時などでは、前任者の説明を鵜呑みにしてはいけない。その開発が、本当に成功するのかどうかの正しい判断を再度「自分で」下さなければいけない。
だから総花的な情報はあまり役立たない。自分の弱点を補強できる情報こそ必要である。仮に多くの情報が集められている状態でも、それらの情報を自分の知識の弱点を中心に再度整理しなおす努力を惜しんではいけない。特に形式知の視点よりも経験知の視点が優先される。
1年以上ある学術分野の業務を担当した経験があれば、その分野の形式知など身に着けているはずだが、経験知は、実際に経験しなければ身につかない。情報の大半は形式知であるが、経験知の視点でそれらを眺めると、仮に科学的に書かれた論文でさえも不思議な論文というものがある。
PPS中間転写ベルトの開発では、PPSに関する情報やそのコンパウンディングに関する情報(注)を収集整理した。また、不思議に感じた論文の著者である大学の先生2名にヒアリングも行っている。ただし、これらは、単身赴任前に実施している。(サラリーマン技術者の心得として、異動が決まったら移動先の仕事について、知識を整理しておくことは常識である。赴任してから勉強している人が多いが、「働く」という視点でみるとそれは間違っている。)
この時、樹脂の配合設計の考え方とゴムの配合設計の考え方に違いのあることが分かった。ゴムの配合設計では、必ずプロセス因子も取り込むが、樹脂で配合設計と言えば単に組成の設計のような考え方である。また、賦形プロセスに関する考え方もゴムと樹脂で微妙に異なっていた。
(注)樹脂のコンパウンディング技術は、この時が初体験であり、外部業者から「素人は黙っとれ」とまで言われたぐらいである。だから単身赴任してからも徹底して情報収集した。その道の専門家にもヒアリングしたり、自費でセミナーに参加したりしている。そして、コンパウンド工場を設計できるまで形式知や経験知の吸収とその整理に努めた。こうした活動ができたのも、単身赴任前に窓際族だったからである。50過ぎて、豊富な自由時間と給与をもらえる窓際は、ある意味で特権である。これを無駄にしてはいけない。給与を自分に投資するのである。成果は奪われたりするが、身につけた知識を誰も奪うことはできない。
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構造化プログラミングのパラダイムまでは、いくら教科書にプログラム設計が重要と説明されていたとしても、日曜プログラマーとして作成するA4で50枚程度の数値計算やシミュレーションのプログラムならば、わざわざ設計しているよりもプログラムを書いてしまった方が早い。
Cでコーディングされたパーコレーション転移のシミュレーションプログラムは、ヘッダーも含めてすべてをプリントアウトするとA4で40ページほどになるが、それを作るために、わざわざプログラミング設計などしていない。
頭の中で描かれたコンピューターへ送る命令を構造化して考えることは、それほど難しい作業ではなく、小説家が小説を書くよりも易しい作業である。不特定多数の読者に感動を与えるような表現にする必要はなく、自分で後から読みやすくする工夫だけでよい。
しかし、オブジェクト指向のパラダイムになってくると、コンピューターへの命令という視点ではなく、自分が解きたい問題(これが一つのオブジェクト)に着目し、その問題を解くための道具=部品のようなもの(これは他のオブジェクト)を考えて行く、というステップをとる。
オブジェクト指向とは、コンピューターへの命令など忘れて問題解決するのに容易な手順を考えてプログラミングするためのパラダイムなのだ。
換言すれば、問題解決に必要な各要素的課題をオブジェクトとして設計してゆき、その課題がどうふるまったら問題解決できるのか試行錯誤しながら、プログラムを組んで行くような手順となる。ゆえに問題解決を思索する部分、すなわちプログラム設計が重要になってくる。
残念ながら現在販売されているプログラミング関係の書籍で、オブジェクト指向というものをここまで明解に説明している教科書を見たことがない。
その教科書は、オブジェクト指向のパラダイムで必要とされる用語説明のオンパレードでプログラム設計が語られて行く。その結果、専門外にはちんぷんかんぷんとなる。
そのうえ、情報工学の立場からオブジェクト指向の考え出された背景が描かれる。すなわち、プログラム開発が多数の人間でプロジェクトを組んだ時に開発しやすくするために考え出された、と説明されている。
このパラダイムを考え出した人はそうだったかもしれないが、オブジェクト指向の言語の仕様を考察する過程で、その後に先に書いたような擬人化の思想や問題解決手法なども関係することに気がついたであろうと思われる。
このメリットに着眼した方がイノベーションの視点でわかりやすい。すなわち、オブジェクト指向とは、コンピューターの本来の使い方である問題解決の視点で考え出されたプログラミングパラダイムである。
前向きに行う科学的推論とは逆にオブジェクト(問題のゴールでもある)を追求するというパラダイムは効率的な問題解決の手法を提供している。そして、このパラダイムの発明により逆向きの推論を行うエージェント指向が考え出され、人工知能の飛躍的発展を生み出した、と当方はプログラミングパラダイムの変革を捉えている。
蛇足だが、難解な情報工学の教科書のおかげでオブジェクト指向と格闘しなければならなかった30数年前に新しい問題解決法を生み出した。この問題解決法のおかげで、有機合成化学が専門だった当方が高純度SiCの発明をおこなったり、その後セラミックスの専門家になってから転職先で高分子技術開発を担当しても多くの発明を行うことが可能となった。
会社の業務として研究開発を行うときには専門能力など不要であり、オブジェクト指向的な思考力こそ重要(注)である。何故なら、企業で行うべき研究開発とは市場でイノベーションという振る舞いをするオブジェクトの最適設計だからである。
(注)だからといって、USITが優れた問題解決法とは思わない。USITの手法説明は、まさに難解な情報工学の教科書そのものだ。おそらくUSITを考案した人もオブジェクト指向に感化された可能性がある。
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