トヨタ自動車は、神戸製鋼の不正報道以後、納入された材料で製造された製品に問題なしと発表している。金属材料も、材料合成と成形プロセスが異なったメーカーで行われるので、成形プロセスメーカーに技術力があれば、多少の材料ばらつきを成形プロセスで補うことが可能だ。
高分子材料の射出成型を研究されているある高名な先生に、射出成型技術の研究目標は、と尋ねたら、どのようなコンパウンドが提供されても安定な射出成型ができる技術開発だと申された。
「その実現は無理です」とあっさり返したら、究極のターゲットに対してチャレンジしてゆくのがアカデミアの研究だ、と威勢のいいことを言われた。ぜひ頑張ってほしい、と思ったが、このような考え方が実務では誤解を生む原因となる。
だめなコンパウンドからは良好な成形体を作れないのだ。10年以上前に押出成形でPPS中間転写ベルトを開発したが、外部のコンパウンダーから提供されたダメコンパウンドをあきらめ自分でコンパウンド工場を建ててゴールを実現している。
外部コンパウンダーは、成形技術がダメだ、と主張し続けていた。前任者が6年間開発してきて、満足な歩留まりの得られなかったコンパウンドに見切りをつけたのはコンパウンダーの「素人は黙っとれ」という一言だった。
半年後に製品としなければセンター長の首が飛ぶかもしれない状況で信頼性の低い外部コンパウンドと心中する気持ちにはなれなくて、センター長に「素人ですが投資をしていただけますか」とお願いした。
「その正直に投資をしよう」ということで得られたお金が8000万円。ゼネコンから頂いていた建設費見積もりが2億5000万円。中古の機械を集めて自力で立ち上げるしかなかった。従業員10名ほどの根津にある中小企業には大変お世話になった。
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日馬富士問題では、様々な報道が飛び出している。引き金が夏巡業における貴ノ岩の暴力とか貴ノ岩の二枚目の診断書を書いた医師による大したケガではなかったとか、ビール瓶殴打は間違いで、殴るときに持ち上げたビール瓶は手が滑って落ちた、とか枝葉末節の情報も含めると様々である。
貴乃花の母親の証言を読んだときには、この問題の本質とは関係がありそうでなさそうな適当な記事にびっくりした。どうして「何が問題か」を真摯に取り上げた記事がここにきて消えてしまったのか不思議である。日馬富士が引退するというニュースがなかなか出てこない。
酒席における横綱の暴力について、それがビール瓶によるものであったかどうかはともかく、格下力士への暴力という事実は存在し、横綱の責任の大きさは引退以外にない。それが過去の相撲界の暴力事件から生まれた掟のはずだ。
横綱日馬富士もそれを知っているはずで、「もう少し相撲をとりたい」と言って甘えている立場ではないのだ。「行司が差し違えたときにその場で腹を切るために短刀を携えているのに、一度も腹を切ったことが無いので横綱を辞める必要はない」といった白鳳の寝ぼけた発言も報じられている。
横綱という相撲界の役職は、プレーヤーの単なるトップという役割ではなく、社会的規範となるべき重責もあるのだ。それを認識しているのなら、事件が発生して間をおかず自ら引責の決断を申し出るべきである。
事件発生から過ぎた時間を思うと、それだけでも日馬富士に横綱の資格は無い。相撲協会ももし過去の反省があるならば、まず日馬富士から引退の言葉が出るように指導すべきだろう。そして何かさらに問題があるならば調査を進めるのが「あるべき姿」だろう。
もしこののまま日馬富士の責任が問われないならばせっかく盛り上がってきた相撲ブームに水を差すことになる。相撲が国技としてその地位がある意味を協会関係者は考えてほしい。
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神戸製鋼で新たに不正が見つかった、との報道があった。品質検査の数値の改竄以外のようだが、これだけ不正が続いても市場で供給された材料の品質問題が現れていない。
金属材料のロバストの高さ故のことだが、おそらくそれを肌身で知っているので軽い気持ちで不正を行った、というのが実体ではなかろうか。
もちろん軽い気持ちの不正だからそれが社会的に許されるというわけではなく、軽い気持ちで品質検査を行っても市場で問題が起きないのが金属材料、と表現したいだけだ。
これが樹脂になってくると大変だ。いい加減にコンパウンドプロセスを管理していると市場で必ず問題が発生する。
高分子材料は、金属材料に比較してロバストが極めて低いのだ。ゴム会社における当方のキャリアはセラミックス技術者で、金属材料も扱ってきた。写真会社のキャリアは高分子技術者である。
高分子材料からセラミックス、金属材料まで扱ってみると、金属材料のロバストの高さが光る。セラミックスや高分子材料と比べて100倍から1000倍高いような感覚である。
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日馬富士問題について報道から見えてきたことは、相撲協会内部の過去と変わらない問題であり、恐らく貴乃花の不可解な行動もそこに起因しているのだろう。貴乃岩の怪我が、当初軽く診断されたことも今回の混乱を招いている。
地方巡業に貴の岩が参加していたのは、おそらく本人の意思であり、その後の経過でおかしなところに貴乃花が気がつき、再度診断書を取り直したように思われる。しかし、これもマスコミ報道からの情報で本人の説明ではない。
軽い怪我でも警察へ届け出た貴乃花の行動は正しいが、同時に協会幹部へ報告すべき所で報告を怠っている。これは明らかに貴乃花が協会幹部を信頼していないことからでてきた行動である。
この行動が組織人として誤っていると昨日指摘した。ただ、最初の診断書の内容では、協会幹部は警察に届けるのに反対したに違いない。もしそれを貴乃花が承知していたとすると貴乃花の行動は内部告発的な意味になってくる。
最初の診断書の段階で協会に警察への届け出て判断を求めたなら、おそらく反対された可能性は高い。貴乃花はそれを承知して自分の責任として今回の行動に至ったのかもしれない。
当方がゴム会社から写真会社へ転職したときの状況を思い出した。当時はまだ組織内の事件を隠蔽化する事がリスクとしてとらえない時代だった。しかし今の時代は事件の隠蔽化は組織の命運を左右する。このような視点にたって貴乃花の行動を眺めると十分に理解できる。
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この欄で書くようなことではないかもしれないが、貴乃花親方の行動がちぐはぐで、また相撲協会も当初隠蔽するような動きをしていたことが問題で、少し気になっている。
相撲は言うまでもなく国技で、これまで幾つかの不祥事があると、国をあげてその問題に取り組んできた。今回の問題は、酒席とはいえ文科省の管理下団体の暴力ざたと言う意味で社会に与える影響は大きい。
ニュース報道から想像すると、貴乃花親方は、当初被害者である貴の岩から正しい報告を聞いていなかったのではないか。そのため鳥取巡業などに貴の岩を出場させていたと思われる。しかし、貴の岩の様子がおかしいので問いただし、真相を知ってすぐに警察へ届けたのではないか。
ところが警察に被害届を出しながら相撲協会幹部への連絡が遅れている。貴乃花の公になっている性格から推測すると、隠蔽を懸念して警察から協会へ問い合わせが行くまで待っていた可能性がある。
これはあくまでも当方の想像だが、相撲協会には過去の不祥事の反省が十分でなく、まだ隠蔽体質が残っているのではないのだろうか。マスコミから報道された貴乃花親方の一連の行動は、組織への信頼よりも親方の義憤と捉えるとそれとなく理解できる。
ところが彼の行動を組織人さらには相撲協会の親方という重責から捉えると間違っていることになる。この問題に決着が付いたときにおそらくマスコミは貴乃花の気持ちとしてこの時の行動を解説するに違いない。
相撲部屋のトップとして今回の事件に対する怒りは当然であるが、一方で親方とは相撲協会の重い役職でもある。協会組織の一員としての行動が求められる立場だ。
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自動車の動力がエンジンからモーターへ変わるというので自動車部品メーカーは大変である。特にエンジン周りで事業展開をしてきた企業は、事業そのものが無くなる可能性がある。
新事業を自動車部品で立て直しを図ろうとするときに問題となるのは、未経験の材料を取り扱わなくてはいけない状況である。金属材料を扱ってきた感覚で高分子材料で部品設計を行うと大変なことになる。
1980年代のセラミックスフィーバーでは、耐熱合金をセラミックスで置き換えるにあたりセラミックス材料に関する信頼性工学が誕生している。
材料に関する信頼性工学は、セラミックスだろうが金属だろうがその基本は同じだが、セラミックスは金属に比較して極端に靭性が低い。この点が問題にされ、ワイブル統計で盛んに議論された。
しかし、高分子材料に関してはその歴史においてセラミックスのように真剣にその信頼性が議論されたことがない。その結果、新たに樹脂材料をエンジニアリング材料として扱わなければならない企業では、品質管理技術の開発が重要となってくる。
来年4月頃を目標にして、樹脂の信頼性に関する講演会を行いたいと思って準備をしている。先日行った講演会が好評だったが、体験を中心に伝えてどこまで受講者にその思いが伝わったか不明である。
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セラミックスフィーバーが起きた時、セラミックス関係学会でワイブル統計についていろいろと議論がなされていた。三点曲げ強度の測定データに関する議論では、一本の直線にならず、数本の直線でワイブル分布が構成されているところが考察された。
すなわちワイブル統計におけるmの値に関する議論である。セラミックスの強度を支配する因子として、欠陥の個数と大きさの分布がある。これが一因子に支配されているのではなく多数の因子の影響を受ける。
さらにセラミックスの弾性率は高分子に比較するとはるかに大きいので、その靱性値に影響を及ぼす欠陥サイズは高分子の80μm前後よりもはるかに小さい。
ところでセラミックスの製造プロセスは、粉体と助剤の混合に始まり、造粒、成形、焼結といくつもプロセスをえて成形体が製造される。
ここで明らかに欠陥の入る可能性のあるプロセスは、造粒と予備成型、焼結プロセスの3つだ。それぞれで入る欠陥がワイブル分布で異なって現れる、という考察もあり、この統計解析は故障解析に使える、とその時に感じた。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
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グーグル検索を行うとワイブル統計に関するソフトウェアーがいくつか出てくる。どれも基本的な統計計算ができる仕様である。
実はこの程度であればエクセルで計算できる。今の表計算ソフトウェアーにはガンマ関数も実装されており、ワイブル確率紙を使わなくても一通りの計算が可能だ。
さらに複合ワイブル分布も一応処理できる。ただ、エクセルの標準仕様ではサポートされていない機能もあり、拡張使用をMSのサイトからダウンロードする必要がある。
これを知ったのは、高分子の破壊と信頼性、耐久試験に関する講演を依頼されたときだ。講演でワイブル統計の説明をするときにエクセルで可能だ、と言いたかったので、事例を作って計算しようとした。
ところが標準仕様のエクセルで計算できなかった。あわててヘルプの説明を見たら古いバージョンではサポートされていた機能の一部がMSのサイトからダウンロードするように、となっていた。
とりあえずはダウンロードし、例題を作成して講演に臨んだが、このダウンロードの説明をするのを忘れた。汎用ソフトウェアーの説明で困るのは、それぞれの設定された環境が不明なところだ。
世間には標準的なワイブル統計のプログラムしか公開されていないのですこし込み入ったことも計算可能なソフトウェアーでもお正月休みに炬燵にはいりながら作ろうかと思っている。
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商品の故障を解析するときにワイブル統計を用いる、とゴム会社に入社したときに習った。新入社員研修で学習し、ゴム会社では日常使用されていた。だから常識だと思っていた。
最初にこの常識が常識で無かったことに気がついたのは、セラミックスフィーバーの時である。セラミックスの関係学会に出席したときにワイブル統計に関する研究発表があった。
すなわちセラミックスエンジニアリング部品の故障解析にワイブル統計が使えるという内容なのだが、この内容が学会発表すべきものかどうか不思議に思っていたら、どんどん発表が出てきた。
転職し、主な出席学会が高分子関係になった。しかし高分子関係ではセラミックスの学会のようなことはなく、ワイブル統計による解析など学会発表は見かけない。
また転職した会社でも故障解析でワイブル統計が使われていなかった。ワイブル統計は最弱リングモデルから考えだされた故障を正規分布で捉え統計的に解析する手法で、解析結果は故障の実態と合わせやすい。
品質管理において故障解析を行うにはワイブル確率は欠かせない手法である。しかし実情はあまり使われていないようだ。
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一般的なシリコーンLIMSは、A液とB液の2液に分かれている。これを例えばスタティックミキサーで混合し、金型へ注入し、その後150℃前後で反応させ、最後は200℃に4時間程度放置して完成する。
注型後、短時間の反応で完成するシステムもあるが、高性能のゴムを得るためには二段階の熱処理プロセスを必要とする。
困ったことにこのLIMSを供給しているメーカーごとに特徴があり、それぞれ微妙に得意不得意な分野が存在する。それをメーカーはユーザーに明確に説明しない。
ユーザーはそれぞれのメーカーについてよく研究して材料選択を行うべきだが、これが難しい。10年以上前、定着加熱ローラーの仕事を担当した。その時、この3社の特許を整理してびっくりした。
必ずしもトップメーカーの製品がよいわけではなく、製造条件を工夫すると、トップメーカーでは実現できない性能が得られるあまり売れていない材料もあった。
登場して30年以上の歴史があるにもかかわらず、各社各様のシステムになっているのは、特許回避を行った結果高分子の教科書に書かれている常識を超えた進歩を遂げたためだ。材料科学の面白さである。
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