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2016.09/21 高分子の難燃化技術講演会

創業から5年たち、いろいろな仕事を経験することができました。その中で高分子の難燃化技術は、ゴム会社へ入社1年後から3年間担当した業務でした。担当業務の中で自ら企画したテーマ、ホスファゼン変性ポリウレタンやホウ酸エステル変性ポリウレタン、ケイ酸変性フェノール樹脂など燃焼時にリン酸ユニットを系内に保持する炭化促進型コンセプトで開発した技術は、40年ほど前では斬新な考え方で、学会の招待講演などでも高い評価を得ました。
 
その後、イントメッセント系難燃剤などが注目され、現在に至っておりますが、燃焼時にリン酸ユニットを固定し、炭化促進を行う難燃化手法は、三酸化アンチモンとハロゲンの組み合わせによる難燃化手法と同様現在でも主要な難燃化技術(イントメッセント系難燃剤も同様のコンセプトの発展形)として採用されております。
 
今回、この難燃化技術にさらに磨きをかけるため、新素材を開発いたしました。まだ特許出願中のため素材の詳細を開示できませんが、基本コンセプトについてわかりやすく解説する講演会を開催いたします。弊社へお申込みいただければ、新素材を開発した企業のご紹介等特典がございます。
 
なお、11月には科学にとらわれない思考法をベースにした問題解決法の講演会を予定しております。本講演会では、従来の科学的な問題解決法をおさらいし、そこに潜む問題点を明らかにし、新たな技術を創造するための誰でもできる発想法と当方がこれまで用いてきて有効だったノウハウを伝授いたします。
 
1.機能性高分子の難燃化技術とその応用
 
(1)日時 10月4日  10時30-17時30分まで
(2)場所:東京・西新宿
(3)参加費:48,600円
 
(注)難燃性と力学物性、さらに要求される機能性をどのようにバランスさせ品質として創り込むのか、という視点で解説致します。
 
https://www.j-techno.co.jp/seminar/ID57NLFEZ15/%E6%A9%9F%E8%83%BD%E6%80%A7%E9%AB%98%E5%88%86%E5%AD%90%E6%9D%90%E6%96%99%E3%81%AE%E9%9B%A3%E7%87%83%E5%8C%96%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%BF%9C%E7%94%A8/
 
2.高分子難燃化技術の実務
 
(1)日時 10月27日  10時30-16時30分まで
(2)場所:江東区産業会館第一会議室
(3)参加費:49,980円
 
(注)評価技術に力点を置き、高分子物性を創りこむノウハウもご説明致します。
 
https://www.rdsc.co.jp/seminar/161026
 
3.11月度開催予定の講演会は下記

https://www.rdsc.co.jp/seminar/161116

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2016.09/20 企画を成功させる(5)

ゴム会社で高純度SiCの研究開発が可能になったのは、無機材質研究所のI先生の功績が大きい。I先生がうまくマネジメントしてくださらなかったら、STAP細胞同様の混乱となりゴム会社とは異なる企業で事業化されていたのかもしれない。基本特許は無機材質研究所で出願され、この時の状況はどこでも研究開発が可能だったからだ。
 
無機材研で芽を出すことができた高純度SiCの技術は国の研究所の成果として計上され、そのように粛々と運営された。すなわち、文科省からの斡旋を受ける形でゴム会社は事業をスタートしている。そして毎年レポートが提出され、基本特許に対する報奨金もゴム会社から国に支払われている。
 
当方に対するヘッドハンティングの話など脇道はいろいろあったが、ゴム会社で事業として立ち上げる決断をし、数年の死の谷を歩き、住友金属工業とのJVとして半導体治工具の事業が立ち上がっていった。
 
ただしマーケットが無いのに高純度SiCの技術開発がゴム会社で続けられたのは、当時の研究開発本部長U氏の特徴あるマネジメントのおかげである。「まずモノをもってこい」という厳しいマネジメントに対して、忠実に研究成果としてのモノを出し、厳しい要求に応えてきた。
 
例えば、SiCセラミックスヒーターは、常圧焼結で製造されたバージョンとホットプレスで製造されたバージョンをすぐにモノにすることができた。これは無機材質研究所がSiCについて焼結理論も含め最先端の研究成果を有しており、その成果を応用すればよいだけだったからだ。
 
そのほか、燃料電池用電極、単結晶シリコン引き上げ用るつぼなど他社からの要望にも試作品として即座に対応した。もし当時マーケットが大きかったならば戦力補強もしていただけたが、無機材質研究所の紹介で住友金属工業からJVの申し出があるまでまとまったマーケットに出会えなかった。
 
例えばこのとき応用技術としてSiC基セラミックス切削チップを開発しているが、マーケット規模が一億円程度と小さくボツになっている。
 
U氏からは、高純度SiCのテーマ以外にLi二次電池や電気粘性流体の仕事を手伝うように指導された。これらのテーマでは、高純度高絶縁ホスファゼンや電気粘性流体の増粘防止技術、高性能粉体3種セットなどの成果をだし、おかげで開発予算だけは潤沢に確保できていた。
 
<ポイント>
最近では成果主義の評価を行う企業も増えてきた。研究開発部門の成果として一番わかりやすいのは、「事業となりうるネタ」である。すなわちメーカーであれば「モノ」となる。研究開発も行わずいきなりモノを作ることができるのか、と聞かれて「不可能」という人は甘い。今やそれなりの努力をすれば「先端技術でできあがったモノ」を作ることができるのだ。ただし、STAP細胞のような再現できない「モノ」では事業構築は不可能なので「再現性のあるモノ」を作る必要がある。もし先端技術を集めてみて「モノ」あるいはそれに近い「モノ」が全くできないならば、事業化は難しいだろう。企業において企画立案するときに、「モノ」を作れない企画をしてはいけない。
退職前に担当した中間転写ベルトでは、その「モノ」ができていないのに「商品化フェーズ」までテーマが進んでいた。原因は、「問題点はあるが製品立ち上げまでには改善できる」と周囲に説明されていたためだ。しかし、その問題点は、化学の教科書に書かれたフローリー・ハギンズ理論では解決できない内容だった。この仕事を引き継ぐ覚悟を決めた理由は、科学で解決ができない問題を技術で解くことができるか、という命題を考えていたからだった。そして科学では説明できない現象を利用した技術を完成し、プラントを立ち上げた。11月に予定している講演会では、科学の先を進む技術をどのように創り出すかについても説明する。
 

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2016.09/19 企画を成功させる(4)

2000℃以上まで結晶を固定できる技術を評価されて、計測実験もまかされるようになった。そして、2200℃までの結晶格子のデータが得られ、無事6H型SiC単結晶には異方性のあることを実証でき、論文が完成したときに、末席に当方の名前が載っていた。うれしかった。
 
しかし、幸福は永く続かない。投稿前の論文を見せられたときに、ゴム会社から電話がかかってきて昇進試験に落ちたことを知らされた。
 
ゴム会社では世間でいうところの係長職に相当する役職へ昇進するときに論文試験があった。当方が受験したときの問題は「あなたが考えている新事業について会社へ提案してください」という内容だった。当方にとって易しい問題で、高純度SiCの事業シナリオを書いた。しかし、その答案に0点がつけられたそうだ。そして0点は試験制度始まって以来の最低点と言うことも電話で告げられた。
 
会社からの連絡はI先生の机に置かれた電話にかかってきたので一部始終I先生に聞かれることになり、これが一瞬の地獄から幸運へ向かうきっかけとなった。I先生は1週間だけ無機材質研究所の設備を自由に使えるように研究所内の調整をしてくださること、そしてこの1週間の間に当方の夢を完成するとの条件付きで高純度SiC合成法研究のチャンスをくださった。
 
このチャンスを見事活かすことができて、真っ黄色の粉体を一週間で開発できた。この実験結果は無機材質研究所の中で噂になった。そのままであればSTAP細胞と同様の騒動になっていたかもしれない。しかしI先生はうまくマネジメントされ、騒動にならないように研究所に箝口令を敷いてくださった。
 
この時の体験があったのでSTAP細胞の騒動については組織マネジメントの問題が大きいのでは、と思っている。研究開発部門というのは活性が高ければ高いほど騒動が起きやすい。大きな成果が出たとしても冷静に対応できる、あるいは推進できるマネジメントが必要である。
 
I先生はうまくマネジメントしてくださり、ゴム会社で高純度SiCの開発ができるように下地を整えてくださった。下地はできたが、ゴム会社はすぐに対応しなかった。このあたりのごたごたは省略するが、やがて故服部社長の前でプレゼンテーションを行いファインセラミックス専用の研究棟建設と2億4千万円の先行投資が決まり、企画実現のチャンスが訪れた。
 
 
 

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2016.09/18 企画を成功させる(3)

上司だった主任研究員と研究開発本部長(取締役)と当方の3人で、無機材質研究所長を訪問した。そこで所長が大阪工業試験所(大工試)で研究していた頃の話題が出て、ゴム会社の創業者が大変な額の寄付を大工試にしたこと、そして今その恩返しができるチャンスが訪れたとお話ししてくださった。
 
その結果、どのような仕事でもお手伝いをする、という条件で、SiCの研究部門、I先生のもとへ定員オーバーであったけれど留学の許可をしてくださった。
 
翌年の4月から無機材質研究所で研究のお手伝い生活が始まった。大学と異なり授業は無いので、毎日言われた仕事をこなすだけである。最初にお手伝いを頼まれたのは、SiCの熱膨張を四軸回折計を用いて直接計測する仕事だった。
 
計測そのものは無機材研の主任研究官の方が行うので、当方は実験室の掃除やサンプル準備その他の雑用だった。SiCの単結晶を石英ガラス管に封入し、それをYAGレーザーで加熱し、赤外線温度計で単結晶の温度を計測、結晶の格子定数をX線回折で求めるという実験である。
 
ガラス管への封入が難しく、ガラスくずがたくさん出ていた。それでガラスくずからサンプルを封入しやすいように工夫した電球状の細工をして主任研究官にお見せしたところ、ガラス管への封入作業も当方の仕事になった。学生時代の有機合成実験で鍛えたガラス細工の腕が役だった。
 
実験が進み、1000℃以上の温度で計測する段階になった。しかしこの温度領域では接着剤が溶けて計測ができない。市販の耐熱接着剤は1200℃まで耐久する仕様になっていたが、1000℃前後で軟化することがTMAの計測で判明し、主任研究官の方は頭を抱えていた。
 
当方に1週間ほど時間を頂ければ2000℃まで単結晶を固定できる方法を考えます、と申し出たところ、開発して欲しい、と言われた。また、耐熱接着剤が無ければ計測実験もできないので、当方の業務も無くなった。
 
耐熱接着技術は3日ほどでできあがった。さっそくその接着剤で単結晶を炭素ロッドに固定し石英管に封入して試験を行ったところ、2000℃以上の計測でもそれを使用可能なことが分かった。世の中でそのような接着剤の開発が進められていた時代だったので、大変な成果だと褒めていただくとともに3日でできたことに驚かれていた。そこで、ゴム会社ではこのくらいのスピードで仕事をしなければ企画を通していただけない、と説明した。
 
 
 

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2016.09/17 企画を成功させる(2)

50周年記念論文審査では散々の結果だったが、海外留学のチャンスが生まれた。アメリカの大学でセラミックスを勉強することになったのだが、当時セラミックス研究のトップを走っていたのは日本だった。
 
さらに、当方は半導体としての将来性とエンジニアリング材料としての将来性の両面を兼ね添えたSiCに興味があった。社内の留学経験者は、海外で3年間遊べるチャンスだからただ留学するだけでも良い、とアドバイスしてくださったが、ここは誠実真摯に捉え、SiCで世界のトップを走っていた無機材質研究所へ留学したい、と人事部長に相談した。
 
人事部長は海外留学の予算が取ってあるから、日本なら長期留学が可能だ、といってくださり、すべて自分で段取りを決める条件で許可が出た。すなわち海外留学ならば留学のお膳立てを会社でやるが、国内ならば、留学先との調整から住居まで全部自分で行えと言うことだった。
 
まず学生時代にお世話になった先生にお願いし、無機材質研究所の研究者の紹介をしていただき、無機材質研究所を訪問した。そこで、セラミックスフィーバーのため空席が無いことを伝えられた。また、専門外の人間では研究に邪魔なのでセラミックスメーカーの研究者が優先される、と言われた。これは、大変ショックだった。
 
とりあえず、SiCの研究部門の責任者の紹介だけでも、とお願いし、何とか面会できたが、聖人と呼びたくなるような考え方の先生だった。しかし、それでも専門外の研究者では留学は難しい、と言われた。ただ、そのI先生の講演が1ケ月後にあるから一度勉強してみてください、とアドバイスしてくださった。
 
その1ケ月後に行われたI先生の講演後に1時間お話できる時間を作っていただけた。その場で、前駆体法による高純度SiCの合成技術について説明(注)したところ、大変すばらしい、と称賛されゴム会社の役員の方と無機材質研究所へ訪問し、所長に面会するようにアドバイスされた。佳作にも入らなかった50周年記念論文の内容が天才的な構想だと評価をうけたのでうれしかった。
 
(注)50周年記念論文に応募した内容を社外の研究者にお話しする許可を上司から得ていた。審査に通らないような内容だったので簡単に許可が下りた。「社外研究発表許可書」というのがあり、それを提出している。
 
 
 
 

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2016.09/16 企画を成功させる(1)

新企画を事業の成功に結びつけるためには、膨大なエネルギーが必要である。そのときマネジメントの役割が大きい。さらに確かな真実を指摘すれば、企画者の職位に関係なく、知識労働者は全員がエグゼクティブである、という意識を持たない限り、成功は保証されない。
 
この、知識労働者は皆エグゼクティブ、という言葉は、故ドラッカーの幾つかの著書に出てくる知識労働者の時代である現代をうまく表現した言葉だ。企画担当者は当然企業の中でエグゼクティブなのである。
 
高純度SiCの企画をゴム会社で立案したときには、ドラッカーを愛読していたので、このような気持ちだった。さらにゴム会社の創業者の精神を新入社員時代に研修で教育されていたのでドラッカーの精神を実践するのも容易だった。
 
高純度SiCの企画は、ワンショット法(リアクティブブレンドプロセス)による発泡体技術開発を担当したことがきっかけで生まれている。すなわちリアクティブブレンドを用いれば、当時先端技術として登場したゾルゲル法の適用領域を無機成分だけの混合から無機高分子と有機高分子という異なる成分の混合技術まで拡張できるメリットがあった。
 
たまたま、会社の50周年記念論文の募集があったので、この技術を核にしてゴム会社がセラミックス分野へ進出するシナリオを書いて応募した。世間ではセラミックスフィーバーが始まり、社長方針として、1.電池、2.メカトロニクス、3.ファインセラミックスの3本の柱で新事業へ、というスローガンも出されていた。
 
だから、自分の書いたシナリオには自信があったが、その審査では佳作にも入らなかった。但し、当時一席になったのは、豚と牛を掛け合わせたトンギューなる生物を産みだすバイオ技術など当時とすれば荒唐無稽の話題を扱った論文だった。誠実真摯に書かれた現実的な内容のシナリオは箸にも棒にもかからなかったわけだ。
   

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2016.09/15 高分子の難燃化技術(10月に2件講演をします)

高分子の難燃化技術はアカデミアで取り扱いにくいテーマである。燃焼は酸化反応の急激に進行する現象だが、急激に不均一に進行するので再現性のあるモデルをどのように立案し、それを解くのかという難しい問題がある。
 
この問題は、難燃性の評価技術についても同様で、結局高分子の用途に応じていろいろな規格が生まれてくる背景になっている。今となっては昔の話だが、建築研究所が科学的に研究して得られた結論を用いて制定した建築用高分子発泡体の難燃化規格があった。ところがこの規格に合格した材料が原因で大火になった事件が起き問題となったが、これは火災と言う現象において科学が万能では無かったことを示した事件である。
 
まず、
 
10月に豊富な実務経験に基づく難燃化技術について、2件講演会を企画しています。
 
ご興味のある方は、弊社へお問い合わせ、並びにお申込みいただければ、特典がございます。
 
特典その1:考案されたばかりの高分子の難燃化システムの情報が得られます。
 
特典その2:電子ブック「高分子のツボ」を進呈します。
 
という宣伝をさせていただきましたが、このたび、難燃助剤として高い効果のある新規化合物を開発しました。この化合物の特徴として、難燃剤の添加で問題になる樹脂の変色が軽減される実験結果が見つかっています。まだ開発されたばかりで、今後応用事例を増やしながらこの新難燃化システムの第一の特徴と言えるように開発を進めたいと思っています。
 
なお難燃剤セミナーは10月上旬と下旬に企画されており、難燃化技術の基本的な内容は共通ですが、それぞれの講義の趣旨は異なりますので両方を受けていただくと、難燃化技術のノウハウの全体像がご理解いただけます。もちろん片方だけでも他社の1日のセミナー同様以上の受講効果はございます。このようにセミナーを二種企画しました背景は、異なる視点でこの技術を眺めると見えてくるものがあるからです。二種受講される方には割引特典が付きます。ぜひご検討ください。

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2016.09/14 研究テーマ(2)

SiCの反応機構について、1982年ごろの状況はすでに解明されている、という意見と不明点がある、という見解にわかれていた。これに近い問題として焼結反応についても同様に二つの見解があった。
 
原因は、セラミックスの研究が結果として生じた現象を中心にした科学として発展してきたところにあり、有機合成科学で大きな成果をあげた遷移状態の考察にエネルギーが割かれていなかった。
 
もちろん、セラミックスでも遷移状態を扱った研究もあったが、それが少なかった時代である。当時学会誌上を賑わした焼結理論の議論を見ていてもその状況を理解できた。過去の焼結理論を擁護する優秀な研究者の見解に遷移状態の考察を単なる速度論の問題と切り捨てる考え方すらあった。
 
少なくとも当時は、過去に発表された論文だけを引用してすべてを説明できるような状況ではなく、むしろそのような状況を素直にカオス状態と認識し、新たなテーマを見出す、あるいは最低限でも問題意識を持たなければならない。のんきに過去の論文の解説をしていては終わっているのだ。
 
ここで原子の拡散に着目して大きなテーマ設定をできる人は、ノーベル賞を受賞できるぐらいの能力を有しており、そして並みの能力の研究者は、問題意識を持ち問題設定してその問題を解く。それ以下は何もしない人だ。すなわち、終わっている研究者だ。
 
当方は並みの能力だったので、それまで公開されていたSiCの反応機構に疑問を持ち、反応速度論による解析を企画し、問題設定し、それを解いて学位論文にしたのだ。
 
解いてみて、新たな疑問が生まれた。そして本来設定すべき研究テーマも見えてきたが、当方が目指していたのは技術者であり研究者ではなかったので、趣味として進めることとして、それ以上の研究を企業で行っていない。ゴム会社ではただひたすら事業化を目指した。
 
小生の出したデータを基に論文を書かれた某大学の先生は、ひどいことにそれっきりである。せっかくそのあとに面白い研究フィールドが開けているのに新たなテーマ設定をすることなく粛々と小生のデータで論文を書いておられた。このような研究者は終わっているのである。
 
 
 

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2016.09/13 築地市場移転問題における盛土疑惑

築地移転問題について、WEBでは賛否両論である。高額な費用が発生する恐れがあるのに、何故小池知事は延期を決断したのか。それは環境問題の本質を知事は分かっているからである。
 
環境問題は、現在の福島原発の事例を見れば分かるように、問題が露見したときに天文学的な費用が発生する性質がある。すなわち、ここで延期することにより費用が発生したとしても、問題を抱えたまま将来に負の遺産として残すことに比べれば経済的なのである。
 
そこへ盛土の問題が出てきた。すなわち、本来盛土がされているべき所に盛土がされていなかった。ものすごく大きな問題であるが、WEBには、下記説明を掲げ、小池都知事のヒステリーと説明している人がいる。
 
以下はその記事の一部をそのまま抜粋したものであるが、この「頭の良い有識者」の見当違いを書くことになるので名前は伏せる。さらにこの人は間違った問題設定に対する自分の答えに酔って舞い上がっていて、かなり恥ずかしい。ただし、正しい問題がわからない人には受けるのかもしれない。
 
1) 07年5月(準備会合は07年3月)から08年7月にかけて、親会議である平田座長による「土壌汚染対策専門家会議(以下、専門家会議)」で2mの土壌入れ替えを行い、2.5mの盛り土を行うことを公開で決めた。
2) この専門家会議の結論を実施する子会議の「技術会議」(実施・施工会議)において、08年8月から14年9月までの期間に設置されていたが、なぜか地下水のモニタリングや汚染物質の遮蔽のため建物の地下に約5mの空洞を置く工法を決めて施工した(もちろん汚染土壌は2mから2.4m除去)
3) この子会議の結論は、すでに親会議である専門家会議が08年7月で解散していたため、子会議の議事として満了し、親の専門家会議には報告されなかった(だって解散してるから)。
4) その専門家会議の資料を見た「外部有識者」が、建築終了後の図面を見て「建屋の下に盛り土があったはずだ! 安全性が問題だ!」と小池百合子女史に近しい某氏に焚き付ける。実際、概要の図面自体は盛り土の上に建屋があるように見える。
5) 話を聞いた小池百合子女史、無事ヒステリー発症。都職員に推移の確認をきちんとすることなく記者会見に突入し、カーニバル発生。
 
以上は、WEBに載っていた記事からそのままコピー&ペーストしたものである。批判ではなく「これは、頭の良い人が成果を出せない事例」として用いるので出典は伏せる。但し繰り返すが上記の部分は当方の見解ではない、頭の良い人が問題設定を間違えた恥ずかしい事例である。
 
この筆者は、以上の説明をして、盛土問題を大した問題ではないのに小池知事がヒステリーで騒ぎ、経済的損失を大きくしている、と述べているが、そもそも都職員が上記経緯はもちろん,盛土を行わず空洞にしていたことまで都民に説明していないことが大問題なのだ。
 
また、上記説明には環境問題の心配が無いという証拠についてどこにも書かれていない。上記説明は、盛土をせずに地下を空洞にして建設した経緯を述べているに過ぎず、小池知事が問題としている、「都民の食の安全安心」について疑問を払拭できる内容を何も語っていない。
 
「間違った問題を正しく解いてもそれは正しい解を導かない」とか「頭の良い人が成果を出せない」とか故ドラッカーはその著書で「頭の良い人の問題」を指摘している。ここは、愚直に正しい「環境へ影響を与える問題」を探すことが重要である。
 
「安全、安心」の問題は、「絶対的正解を出すことが難しい問題」である。福島原発の問題で国民がおとなしくしているのは、優秀な原子力科学者達に騙されてしまったからである。皆が納得して問題が起きた以上あきらめなければいけないので、黙っているだけである。頭の良い人が間違った問題に対して素晴らしい答えを導いたとしても、設定された問題が間違っておれば素晴らしい答えも役に立たない。11月の講演ではこの辺りも講義する。

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2016.09/12 研究テーマ(1)

先日研究論文を並べてSiCの反応機構を論じる先生を「終わっている研究者」と書いたことについて質問が来た。おそらく傲慢と誤解されたのかもしれないが、なぜ「終わっている研究者」と表現したのかその理由を述べる。
 
評論家の先生に反応速度論のペーパーでセカンドオーサーにされたこともあり、はっきり書くが、過去の論文についてただ解説するだけならば、研究者ではなく評論家である。すなわち研究の評論家は、研究者ではない。
 
研究者の能力として総説が書けることを重視しているアカデミアの先生がおられるが、総説が書けるのは当たり前で、そこから新たな研究の方向性を示し、従来にない斬新な研究テーマを企画立案できてこそ優秀な研究者なのだ。
 
大学の卒論研究では、大変優秀な先生に指導され、また周囲の先輩の学生も優秀だったので、優秀な研究者とはどのようなものか、さらにはSTAP細胞で問題になった研究者の倫理について自然と学べる環境だった。
 
「研究者の倫理」を自然に学べない環境は研究所としてレベルが低い。ましてや企業研究者が相談してきたデータで勝手に論文を出すようなアカデミアの研究者は最低である。このような研究者の指導では、社会で問題を起こす似非科学者を生み出すことになる。
 
さて、優秀な研究者とは、高い倫理観に基づき、社会に貢献しうる有益なテーマ設定ができる人のことである。公開された論文の評論をうまくする人のことではない。ましてや、研究データを科学知識に基づきうまくまとめる人でもない。
 
研究者の仕事として一番難しいのは、複雑怪奇な自然現象から人類に役立つ真理を導き出すような問題設定ができて、さらにそれら問題の集合体あるいは共通コンセプトをテーマとして設定する仕事である。
 
 
 
 
 

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