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2023.05/13 久しぶりの電車

昨日は日本ゴム協会からの招待講演のため赤坂見附まで電車で出張いたしました。これまでコロナ感染予防のため車移動で出張していたのですが、5類に移行したということで公共交通機関の利用となりました。


まず東上線に乗る時にSUICAが使えなくなっており、びっくりしました。池袋JR窓口で処理をしていただき、丸ノ内線ではSUISUIと改札口を通過できました。


1年以上の利用が無いとSUICAが使えなくなるというルールを知らず大変焦りました。赤坂見附では人の流れができており、とりあえずその流れに乗りましたら目的の出口につくことができましたので、人通りはかなり多かったと思います。


驚いたのは5類に移行してもマスク無しの人が少ないことです。やはり皆感染を恐れての対応をされている。講演もマスクをかけたままでしたが、違和感が無くまだコロナ対策の必要性を強く感じている人が多いことに安心しました。


ニュースでは病原性の低下が伝えられておりますが、2020年の騒動の記憶があり、年寄りが感染したら死ぬ、といった恐怖感は容易に消えません。

カテゴリー : 一般

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2023.05/12 リスキリングに重要なこと

リスキリングで重要になってくるのは、「技術の方法」に対する理解である。すなわち、技術というものをどのように認識するのか、ということだ。


これが日本の経営者あるいは企業幹部の多くは科学を中心に捉えており、技術は職人のものと勘違いしている。ゴム会社で当方の上司となった人の大半はこのような考え方だった。


科学と非科学の境界は時代により変わると言ったのは哲学者イムレラカトシュであるが、科学で体系づけられた形式知の中に、科学で厳密に証明ができない経験知が紛れ込んでいるためである。


ゆえに科学技術の中に、経験知だけで組み上げられた技術も数多く存在するはずである。このような技術は、残念ながら非科学的な技術となるが、暗黙のうちにこれも科学として認めている、あるいは誤解している人が多い。


すなわち、新技術を生み出しているのは科学者ばかりではない。日本で新技術を生み出せない人を職人と呼んだりして、「大学を卒業しても職人にしかなれない人がいる」と職人を馬鹿にした発言を平然とする経営者もいる。


このような経営者を認めた場合に、非科学の技術を生み出すような人材をどのように呼べばよいのだろうか。日本では、技術者とも科学者とも呼べないのである(注)。


リスキリングの狙いは、職人の養成ではない。職人の養成には職業訓練学校が存在する。日本で新たに進めなければいけないのは、新技術を生み出せる人材を養成するためのリスキリングでなければいけない。そのためには、技術に対する正しい理解が必要だ。


(注)弊社では、技術者にも科学者にも学んで役立つ問題解決法を低コストで提供しています。リスキリングのために弊社の問題解決法を導入するとリスキリングを円滑に進められます。

カテゴリー : 一般

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2023.05/11 実務におけるデータサイエンスの役割

実務における問題解決法のセミナーの類としてロジカルシンキングは今でもニーズがあるロングセラーのテーマである。一方今時当たり前の回答しか出せないTRIZやUSITは人気が無い。このようにセミナーのテーマには時代により流行り廃りがある。


データサイエンスについてはこれから人気が出るセミナーのテーマではないかと予想しているが、データサイエンスという表題はある意味抽象的でわかりにくいのではないかと心配している。


また、最近はビッグデータが話題になり、その処理を機械学習で行う方法に注目が集まっている。AI人気もその類である。


しかし、実務の現場で5個以上100個未満のデータに対して機械学習で処理を行うというのは、期待値に対して得られる結果の寄与率は低い。


このような小規模のデータ群に対しては多変量解析による処理が最適である。但し、重回帰分析や主成分分析にも限界があり、非線形データに対する対応にはひと工夫が必要になる。


ただ、機械学習と異なる点は、弊社でも重回帰分析と主成分分析の処理プログラムを公開しているように、すぐに解析ができる無料で動作するプログラムが解放されていることだ。


ちなみにこのホームページのプログラムでは、エクセルデータを張り付けるだけで解析できる。機械学習でもデータ処理の目的は、分類か回帰、あるいは予測であり、その目的であれば、まず何も考えずデータを処理できる点で多変量解析は機械学習よりも簡便だ。


また、実務でデータサイエンスを使うとよいシーンを整理してみても、とりあえず手元のデータから何がわかるのか、を知りたいときが多い。ただその時に機械学習のプログラムを作成し解析を進めたい、というケースは少ないのではないか。


少なくとも当方が32年間サラリーマンとして勤務していた時に多変量解析とタグチメソッドがあれば十分だった。機械学習に取り組んだのは退職直前の時間ができた時である。


(注)多変量解析を機械学習に含めている記述が成されている論文や教科書が存在するが、それは一つの考え方に過ぎない。多変量解析には機械学習のような専用のプログラムを組む必要は無く、汎用の多変量解析でデータ処理し、人間の頭でデータマイニングを行うのが基本である。多変量解析は1960年代から知られており、1970年代にはいると心理学分野で大型コンピューターによる解析がおこなわれるようになった。また新QC7つ道具として紹介されたのも1970年代であり、ディープラーニングよりも古くから親しまれている方法だ。

カテゴリー : 一般

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2023.05/10 例題3(3)

高純度酸化スズゾルを用いた透明導電薄膜の技術が科学的に否定された背景には、パーコレーションという現象が1990年頃材料技術者に知られていなかった問題がある。


パーコレションという現象は数学者により1950年代から議論されてきたが、それが材料の混合技術において分散現象と関わる重要な議論と広く材料技術者に知られるようになったのは、1990年以降である。


その原因は、材料の混合分散について混合則(あるいは複合則)で議論されてきたからである。また、スタウファーにより体系化された浸透理論をそのまま材料技術者が理解するには難しすぎた。


また、数式により表現されてもそれをそのまま現象理解に結び付けられるかどうかは、データサイエンスで材料技術のアイデアを練る手法理解で要求される「苦痛」を我慢できるかどうか、という問題と似ているところがあった。


ここで「苦痛」と表現したのは、科学の方法こそ技術開発で許される唯一の方法と信じている人には、データサイエンスで示された答えを受け入れるだけでも耐えがたい感覚になる人がいるからである。


当方はそのような人が引き起こした事件のために新事業をゴム会社で起業しながらも転職しなければいけない状態に追い込まれている。


データサイエンスの研究は科学であっても、それを材料技術に応用する、あるいは問題解決法として利用するときに非科学的という感覚になる人がいる。


また、タグチメソッドは1990年代に普及が始まったが、30年以上経った今でもその手法をご存知ない方が多い。これは、指導側の問題もあると思い、弊社ではデータサイエンスの視点で学びやすくした教材を用意している。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.05/09 例題3(2)

高純度酸化スズゾルを用いた透明帯電防止層の製造は科学的に不可能、と否定証明が展開された論文により、写真フィルムの透明帯電防止層の材料として高純度酸化スズゾルが否定されたので、イオン導電性高分子が写真会社で使用されていた。


ATOやITOなどの材料が研究対象として選ばれなかったのは、ライバル会社から多数の特許出願が成されていたからである。ライバル会社からは組み合わせ特許も含め3000件近い発明が公開されていた。


この多数の発明を整理してみようと思い、特許を取り寄せ読み込んでいったところ、1980年代の中ごろから戦略出願されていることに気がついた。


すなわち、それらより以前に出願された特許には、特公昭35-6616が登場するのだが、戦略出願されるようになってからは、その存在が隠されるような表現になっていた。


今となっては笑い話にもできるが、当時小西六工業時代の特許を詳しく知っている技術者が一人もいなかったのだ。特許庁まで出向き、その周辺も含め特許を調べたところ、その特許1件だけがぽつんと出願された状態だったことに驚いた。


また、出願企業を見て衝撃を受けている。転職先の図書室で過去の研究報告書を調べたところ、ホコリをかぶっていた廃棄予定の段ボール箱の中から、写真業界における帯電防止技術と書かれた冊子を見つけた。


その冊子には番号が付けられ、限定された数だけ社内に配布されたとあった。しかし、その限定版が廃棄予定の箱の中から出てきたのだ。これ以上は書かないが、帯電防止の基盤技術が社名の変更とともに無くなったことを知った。


さて、このような状態で否定証明された酸化スズゾル技術を再度企画として提案するにはどうしたらよいのか。この答えは日本化学工業協会から技術特別賞を受賞した年に日本化学会春季年会で「温故知新の技術」として問題解決法も含め講演している。


否定証明された企画を再度復活するには、プレゼンテーション能力だけで解決できない問題が発生する。この酸化スズゾル技術の復活企画をしているときに、自費で会社で使用するノートPCを購入しなければいけない状態(注)になっている。


(注)MS-DOSの時代に、職場のPCは1台を数人で共同使用する状態だったので、データを職場のPCのハードディスクに保存することができなかった。しかし、企画途中のデータがFD数枚になったのでハードディスクなしに作業ができなかった。これ以上は書かないが、否定証明された企画を復活するときには、それなりのリスクが存在することは知っておいてほしい。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.05/08 例題3(1)

金属酸化物は酸素欠陥を生成しやすいので、その電気物性を科学的に議論するときには単結晶の測定データが用いられる。しかし、公開されているデータの中には、単結晶の合成が難しい、という理由で多結晶体の測定結果があるので注意する必要がある。


酸化スズの電気物性について科学的に正確なデータが測定されたのは1980年代である。無機材質研究所で構造欠陥の無い単結晶が製造されて、高純度酸化スズが絶縁体であることが確認された。


ゆえにITOやATOに導電性があるのは、不純物の添加により酸素欠陥が生成するためであり、それにより半導体領域から導電体領域までの電気特性が発現する。


1980年代に初めてこれが証明されたのだが、透明導電体は1960年代から蒸着法で製造されたITOが実用化されていた。また、このころ世界で初めて非晶質高純度酸化スズゾルの導電性が今は存在しない小西六工業(株)の研究者により発見されている。


小西六工業(株)からは特公昭35ー6616という特許が公開されるやいなや、写真界の巨人イースタマンコダックや当時セルロース製造会社から生まれたばかりの会社から技術に追いつこうと特許が多数出願されている。


小西六工業(株)は静電気の研究でトップを走っており、当時今でも通用する帯電防止に関する技術体系が生まれている。ゼロックスから複写機が発表されてすぐにユービックスを商品化できたのはその基盤技術が存在したからである。


日本が帯電防止の研究で世界トップレベルだったことを知ったのは、ゴム会社から転職し、酸化スズゾルの導電性について否定証明が成された社内研究論文を読んだことがきっかけである。


無機材研の研究成果を知っていたにもかかわらず、その社内研究報告書に疑問を感じたのは、当方の転職の原因が電気粘性流体耐久性問題に関する否定証明をひっくり返し、その結果当時推進していた住友金属工業とのJVの業務妨害を受けるようになったトラウマからである。


すなわち、「また、否定証明か」というデジャブのような気持ち悪さからである。酸化スズ透明導電薄膜の研究に初めて接したにもかかわらず、その否定証明の論理展開に恐怖さえ感じている。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2023.05/07 ビッグデータは不要

データサイエンスでアイデアを練ったり、新材料を創造するために、ビッグデータは不要である。高純度SiCでは、フェノール樹脂を1t以上廃棄処理する必要もあって、廃棄作業をやりながらたくさんデータを収集できた。


また、PPSベルトでは、実験を行わずシミュレーションで多数のデータを出してデータサイエンスしている。そして、配合を変更しなくても高次構造の制御で目標を実現できることを見出した。


しかし、最低3個程度でも大丈夫な分野がある。興味のあるかたは弊社のセミナーを受講していただきたいが、データサイエンスを用いて材料開発を行ったり、製品開発を行ったりする方法は、20世紀の視点では非科学的方法である。


どうせ非科学的方法ならば、と割りきれば、データの数など気にせず、データサイエンスによりヒューリスティックに結論を迅速に導き出せるメリットを享受したくなる。


その時、データサイエンス活用方法のコツを知っているかどうかは重要である。例えば、重回帰分析でp値やt値が問題にされたりする。これらの値は、データ量が多くなれば小さくなる傾向にあり、ビッグデータではt検定に容易に合格する。


ところがt検定に合格したからといって寄与率が高くなっていない場合もあるから注意する必要がある。逆に、重回帰分析では寄与率の高い式が得られたならp値など気にしなくてよい。寄与率の高さからアイデアを迅速にまとめることがコツである。


データサイエンスを実務に用いる場合、科学としての厳密性にこだわるよりも、技術として有益な成果が得られるかどうかの視点で活用するのがコツである。

カテゴリー : 一般

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2023.05/06 渋滞の実況中継

このゴールデンウィークにおける高速道路の渋滞について、ワイドショーの「ひるおび」で実況中継を展開し、批判の意見が出ている。


実際には賛否両論あるのだろうが、昔は批判意見など出なかった。ところが今回は渋滞予測の検証と謳っていた点が批判されたらしい。


これも当方は興味深く思った。かつてはたとえ渋滞予測の検証のための中継でも誰も批判しなかったのだ。むしろ科学の視点では実況中継は重要な位置づけになり、国民全員それを理解していた。


実際に車を走らせなくても観測データの取れる時代に、なぜわざわざ渋滞に加担するような中継をやるのか、という疑問が批判として出てきているのはデータがどこからでも溢れてくるとみなす時代を感じる。


さて渋滞の実況中継が良いのか悪いのか当方はあまり深く考えていないが、「観測データがどこにでもある」という情報化時代の感覚には少し心配をしている。


いくら情報化時代でもひと手間かければデータが取れるならば、自分でデータをとるのが技術者の心構えとして重要だからである。


世の中にあふれているデータでヒューリスティックに結論を見出し、自己のデータでそれを検証する作業は、いつの時代でも求められることだ。


検証しなくてもモノができてしまえば、出来上がったモノでデータを検証できる。これはアジャイル開発で行う検証である。データサイエンスによりアジャイル開発を行う時に、出来上がったモノの品質確認を行うことはいつの時代でも常識である。

カテゴリー : 一般

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2023.05/05 高純度SiC合成プロセス

SiCの合成法については、エジソンがダイヤモンドを作ろうとして石英るつぼでカーボンを蒸し焼きにしたところSiCを製造できた話は有名である。弟子のアチソンがそれを実験してダイヤモンドに次ぐ硬さの材料を発明したので、アチソン法と呼ばれている。


また、その材料はカーボランダムと呼ばれたのだが、今も昔もこの方法が主流である。但し、アチソン法はαSiCを製造する方法で、βSiCを製造する方法はシリカ還元法だと主張する人もいる。アチソン法もシリカ還元法とみなせるので話がややこしい。


ただ、高純度SiCの製造法になると、1980年代まで経済的な方法は存在しなかった。SiCの高純度化はレイリー法で実験的に行われていた。当方が発明した前駆体を無機材質研究所で処理し高純度SiCを製造したのが世界初であり、基本特許が出願されている。


その後、けい素源となるけい素の低分子化合物とアセチレンを気相で反応させる研究が盛んに行われ、一部新日鉄で実用化されたが、コストは当方の方法よりも高かった。


ポリエチルシリケートは、大量に購入すればkgあたり1000円以下であり、高純度フェノール樹脂も低価格なので、高純度SiCは、kgあたり5000円前後で合成可能となった。大量に合成すれば価格は下がる。


この前駆体法の優れているところは、この欄で書きにくいが、ひと手間かけるとSiCウェハーの原料となることだ。ご興味のあるかたはお問い合わせください。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2023.05/04 データサイエンスの力

例題2において、5年以上の開発期間におけるデータを多変量解析で整理すると、典型的なもぐらたたき状態が見えてきて、開発開始時点からコンパウンドについて何も改良がなされていないことに気がついた。


開発開始前からコンパウンドメーカーより特許出願されていたPPSの靭性改良のためにナイロンを添加した程度の進歩が成果として認められてはいたが、その結果、パーコレーションの問題を複雑にしていた。


また、ナイロンを添加しなくても、PPSを非晶質で押し出せば、ナイロンの添加されたPPSと同程度のMIT値が得られたので、この仕事を引き受けたときにはコンパウンドメーカーの特許を大した発明に思わなかった。


ちなみに、当方が担当して半年後には、PPSとナイロンを相溶させて押し出すことに成功しMIT値が10倍になるベルトが完成している。靭性が10倍まで上昇すれば、それだけで大発明である。


パーコレーションの問題をデータサイエンスで解き、その目標を実現するためには、PPSとナイロンを相溶させなければいけない、と結論が出たので、それを実行しただけだが。


その結果、力学物性と電気物性の二律背反問題を一度に高いレベルで解決できた。ただしこれは科学の方法で考えていては出せない成果だった。


コンパウンドメーカーの技術サービス部長から素人は黙っとれ、と言われたので、黙ってデータサイエンスで解析し、コンパウンドメーカーも了解した工場を建てて、歩留まりが100%となるコンパウンドを原材料や配合を変更せずに実現したのである。


あれからもう20年近く経過した。今でも生産が続いている、と風の便りに聞いているが、データサイエンスで発明した高純度SiCと、このベルトのコンパウンドの発明は、データサイエンスの力なくして得られなかった成果である。高純度SiCの事業は、その発明から40年以上続いている。


データサイエンスによる問題解決法は非科学的であるが、科学の方法では当たり前の結論しか得られなくて問題解決に苦しんでいる人は、一度試してみることをお勧めする。当たり前の方法で集めたデータにとんでもないイノベーションを引き起こすアイデアが潜んでいるかもしれないのだ。

カテゴリー : 一般

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