故ウトラッキーが20世紀末にEFM(The extensional flow mixer)を発明したが、あまり普及していないようだ。この装置は、細く鋭利なスリットで伸張流動を発生させ、高分子のナノオーダーレベルのブレンドを可能にする。欠点は流動抵抗が大きく生産性が悪い点である。
彼は伸張流動に着目したが、カオス混合のような急速に長く引き延ばす特殊な伸張流動までには思いが至らなかったようだ。科学者と技術者の違いかもしれない。この装置の面白い点は二軸混練機の先に取り付けて使用するパッシブな装置であることだ。
EFMでは無数のスリットのため吐出量を増やそうとすると大型設計しなければいけない。しかし、二軸混練機の先に取り付けるアイデアは秀逸で、このアイデアのマネをした装置を作ってみることにした。
但し、スリットを平行平面にして急速な引き延ばしの流動が発生するようにした。もしカオス混合というものが指導社員の言われたように効率の良いものであれば、三段程度でも混練は進行するはずである。
科学的に設計されたEFMを参考に30年前の妄想技術を作ってみたら驚くような結果が出た。PPSと6ナイロンを二軸混練し、この装置に流してみたら透明になって吐出されたのだ。それもPPS単独よりも透明度が高いので驚いた。
フローリーハギンズの理論では相容しないはずのPPSと6ナイロンが相容したのである。科学を技術が追い越した瞬間である。この技術には科学で証明されていない新しい現象が起きているはずで、それがなんであるのか科学的に説明しようと、今、努力している。
科学の良いところは、科学の成果を集めてきて、それらと比較しながら検証できる点である。科学論文の捏造が厳しく弾劾されるのは、成果の再利用が不可能になるからである。
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急速に引き延ばされた流れが瞬時に折りたたまれて、カオス混合は進行する。ロール混練ではこれが起きている、と指導社員は教えてくれた。当時この指導社員の話を妄想という人が多かったが、当方は30年間信じていた。
この指導社員は、ダッシュポットとバネのレオロジーモデルを電卓で計算している人だった。ばりばりの理論肌の人で、時々妄想のような話をする面白い人だった。ただその妄想は技術の話で、科学の話ではなかった。しかし妄想よりもすごかったのは、ダッシュポットとバネのモデルは無くなるだろうという予測であった。
そしてこの予測は21世紀の現在当たっているが、少なくとも当時科学と思われていたその手法が廃れることを指導社員以外から聞いたことはなかった。ゴム会社の顧問を務めていた狸に似た京都大学の大教授は、ゴムの架橋モデルをその手法で説明し悦に入っていたし、学会でもその手法開発がレオロジーという学問の重要な研究対象であった。
指導社員をよく知らない人ならば彼を変な人ぐらいにしか見えなかったかもしれないが、身近で見ていた弟子の立場では、妄想は未来予測に聞こえた。だからカオス混合の技術アイデアも30年後に実用化することができた。
技術に問題があるとするならば、科学のようにうまく伝承できないことだろう。科学でまとめられた事柄ならば、たとえ次の時代にそれが真実でなかったことがわかっても、その時代にうまく伝承される。
そして伝承された後、もし真実でないことがわかったならば、但し書きがつけられて次の世代に伝承される。科学では常にその真実が検証されながら進歩している点が重要である。そして技術について、いつの時代でも科学で説明するように努力しなければいけない。
技術の説明者はその技術を開発した人でなくてもよいから科学で記述し、次の世代へ伝承しなければいけない。科学で記述されなかった技術は、伝承されないだけでなく、緻密な特許戦略を立案することが難しいので、他社に権利を侵害されるかもしれない。写真会社でその現実を目の当たりにした。科学の重要性が力説されなければいけないのは、この点であり、問題解決のプロセスでは、科学にとらわれず自由にヒューマンプロセスを実践するのが良いのではないか。
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PPSとナイロンの相容については、東工大の扇澤教授が面白い研究をされていた。この先生のご研究は多岐にわたっているが実務に直結したテーマをうまく選ばれており、助手の時代からその研究内容に注目してきた。
特許にはうまく再現できない事例が多いが、科学の世界の論文は真理を追究しているので再現性を期待できる。この理由で、彼の科学論文に書かれた実験も信頼でき、その中の一つの実験、4,6ナイロンとPPSの相溶現象をその場観察する実験から得られる考察は正しいはずである。
さっそく先生にこのご研究の話を伺いに行ったら、χが小さいんでこの実験を行った、と言われた。そして4,6ナイロンではうまくいくが、χの大きい6ナイロンではうまくいかない、とも言われた。
すなわちPPSと6ナイロンは科学の世界では相溶しないことになっていることを確信し、これを相溶させる技術を退職前に実現しようと決心した。もしこれが成功すれば、技術が科学を追い越した事例になる。
ゴム会社の新入社員時代に指導社員が教えてくれた究極のカオス混合技術を開発することにした。また、これは指導社員が当方に出してくれた宿題でもある。指導社員の話が正しければ、そもそも究極の混練は高分子の分子レベルまで作用し進行するので、χが大きくても相溶現象は生じるはずである。
中間転写ベルトの開発を始めた頃、指導社員の母校である京大からカオス混合のシミュレーション結果が発表された。偏芯二重円筒でモデル的に生成するカオス混合をシミュレーションしたものだが、それが大きなヒントになった。
科学の成果は真理であり、その真理を基に思い描いて生まれた技術は、例え科学的な証明が難しくても実現できるはずだ。また、そこに科学の重要性があるとともに新しい技術の科学的ではない生み出し方がある。(www.miragiken.com をご覧ください。)
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広島ー阪神戦で一触即発の大乱闘になるところだったらしい。ゲームを見ていないので状況は不明だが、黒田投手の対応に賛否両論がある。11-3で広島が勝ったこのゲームで何があったのかは、新聞記事を読んでいただきたい。
大切な点は、ベテランがその現場で19歳の若者を叱っている点である。掛布氏は、これを大人げない、と表現し、他の評論家は指導と評価しているところだ。プロ野球のようなショーで大人げない怒りは、面白さでもある。但しそれも頻繁になれば面白くなくなるが、ニュースを読む限り、黒田投手の行動には冷静さが残っていたようなので、掛布氏の評論は、阪神びいきに思われる。
ところで、ベテランが現場で若者を真剣に指導していた時に危険作業に遭遇したらどうするか。やはり黒田投手のように真剣に叱るのが正しい、と思ってきたが、今はパワーハラスメントとして捉えられる時代である。
優しく穏やかに指導しなくてはいけない。しかし、危険という二文字を指導する時に、そのような指導でうまく伝わるのだろうか。30年以上前の新入社員時代に、ロール作業はじめいくつかの危険作業が業務で必要だった。いわゆる3K職場で働いていたのだが、厳しい諸先輩のおかげでけがひとつ無く実験ができた。
職場の安全は保たれるべきである。しかし、プロ野球に限らず人間の生活する空間には、暗黙の了解による安全対策をとらなければならない環境は多い。パワハラという言葉にひるむことなく、先輩が厳しく注意するのが正しいのではないか。黒田投手は、ピッチャーが、打者となったピッチャーに危険球を投げることが禁じられている暗黙のルールを指導したかった、と思われる。
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PPSを用いた中間転写ベルトの設計は、酸化スズゾルのパーコレーション転移を制御した帯電防止技術開発で得られた次の成果を用いた。
1.導電性粒子と絶縁性バインダーの組み合わせにおいて、両者に相互作用が無ければ、パーコレーション転移は確率的に生じる。
2.パーコレーション転移後に生成する材料の導電性は、微粒子とバインダーの関係で決まる抵抗が安定に生成する(カーボン粒子を用いた場合には、カーボン粒子の抵抗で変わるが、ほぼ100から10000Ωcmの体積固有抵抗となる。)。
3.導電性粒子間の導電機構はホッピング伝導であり、固く凝集させた場合には、導電性粒子そのものの体積固有抵抗の10倍の状態まで実現できるが凝集力が弱まると100倍前後までその値は変動する。
この科学的成果を確認するために、6ナイロンにカーボンを分散させた後それをPPSへ分散し、カーボンが分散しているナイロンのドメインがパーコレーション転移を生じる現象について観察した。
科学的成果から予想された体積固有抵抗の中間転写ベルトを押出成形で製造することができた。しかし、ナイロン相のドメインが大きいために、紙のような脆いベルトであり、実用性が無い。
6ナイロンの相をPPSに相容させればドメインを小さくできる可能性がある。しかし、6ナイロンとPPSの相容については、フローリーハギンズの理論から導かれる制約があり、このアイデアは科学的に否定される。
科学は重要であるが、科学だけに頼っていては、商品としての中間転写ベルトを完成させることができない。科学の成果を活用し、新たな現象を推論する作業は、大学で十分な訓練を受ける。
しかし、科学的ではない機能を活用できるようにするプロセスについては、社会に出るまで訓練の機会は無い。STAP細胞の騒動でもこの点の問題が露見したが、あまり注目されなかった。
それよりも大学で十分な訓練を受けなかった(されなかった?)未熟さが問題とされた。科学的で説明できない機能を実現するには、技術開発で用いられる問題解決プロセスしかないが、これを訓練する機関が無い。
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技術を技術のまま放置していてはその伝承は難しい。技術を科学としてまとめることができれば、時代が過ぎても科学という哲学がある限り、誰でも正しくその技術を実現できる。科学では不変の真理を基に知識を体系化できるからだ。科学の重要性はここにある。
特公昭35-6616の技術は、大変優れた透明フィルムの帯電防止技術だったが、科学としてまとめられていなかったので、平成の時代になるまで実用化されなかった。
酸化スズの導電性について科学的に解明されていなかったこともあり、結晶性酸化スズが高い導電性を持っている、という奇妙な特許も成立している。科学では真理がすべてであるが、技術では機能を実現できれば、真実がどうであれ許される。
透明フィルムの帯電防止技術開発では、高純度SiCの時と同様に可能な限り、科学的に解明することに努めた。パーコレーション転移とインピーダンスの関係についても、福井大学客員教授時代に青木先生のご指導を得て、数値シミュレーションで現象理解に努めた。
そしてこの成果は、退職5年前に担当した中間転写ベルトの開発に生かすことができた。中間転写ベルトでは、パーコレーション転移を起こしたドメインをPPSマトリックスに分散し、パーコレーション転移を起こさないようにする技術を開発した。
科学の重要性は、真理が体系化されたときに、新たな真理を生み出す効果がある点である。もし体系化された真理から論理的に導き出された仮説が間違いであったなら、科学の体系に間違いが潜んでいることになる。
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G’s Baseball PartyというトヨタのCMが話題になっているそうだ。いしたにまさき氏のニュースで知った。http://bylines.news.yahoo.co.jp/ishitanimasaki/20150422-00045030/
ニュースでは女性の神業的スイングが話題にされていたが、車のCMなのに車が最後に出てくるという演出に感心した。ただこのCMでは、G`sボタンが随所に出てくるので、単なる車のCMではなくG`sというブランドのCMであったことが、最後の車で理解できるという、なかなか手の込んだCMである(注)。
G`sというのはトヨタのスポーツカーのブランドで、プリウスなどの一般車をスポーツ車に改良して、そのブランドで販売している。販売戦略的に成功しているのかどうか知らないが、価格が若干高めなので付加価値として一定の利益はあがっているのだろう。
トヨタにはレクサスという高級車ブランドがあるが、G`sブランドはおそらく車好きの大衆を狙ったブランドに育てるつもりかもしれない。ところが車好きの大衆にはスバルというブランドがあり、スバリストという言葉もある。最近はマツダも車好きの注目を集めている。
しかし、G’s Baseball Partyを見ていると、スバリストとは異なる大衆を狙っているように思われる。初老のおじさんやおばさん(CMの中でけっこうかっこいい)も登場するのである。そして最後のシーンで「車って、スポーツだ」というメッセージが出る。スポーツカーではなく、車そのものがスポーツだと言い切っているのである。あらためてトヨタ車が売れる理由を確認した次第。
(注)CM全体ものすごく丁寧に作られている。これだけ手の込んだCMを久しぶりに見た。CGや撮影技法でこりにこったCMではなく、演出で勝負してくるCMはドラマよりも面白い。
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超高温熱天秤は、熱源として赤外線イメージ炉とYAGレーザーを用いている。一般のヒーターを用いなかった理由は、サンプルのみを加熱したかったからだ。2000℃まで耐熱性のある材料は限られ、全体を加熱する構造では、安価なアルミナやシリカを用いることができない。ゆえに、試料だけを加熱する構造に設計できれば、アルミナなどを使用できるようになるだけでなく、急速加熱や急速冷却も可能になる。
製造された超高温熱天秤の熱源設計は、赤外線イメージ炉で1200℃まで予熱し、その後YAGレーザー光で熱を与える、という構造だった。このような構造で、1秒以内に1800℃まで確実に昇温可能となった。この性能の熱天秤で高純度SiC前駆体炭化物の恒温測定を行ったところ、核生成の律速段階がくっきりと重量減少曲線に現れた。
すなわち、高分子前駆体から製造された炭化物では、シリカとカーボンが分子レベルで均一に接触しており、その界面で反応開始の核が発生している。ところが、シリカとカーボンを粉体状態で混合し、同様にこの熱天秤で重量減少曲線を書かせると、この核生成の段階が観察されず、いきなり重量減少が開始し、そのプロファイルは大きく異なったものになる。
すなわちシリカとカーボンを粉体で混合した場合には、反応温度において部分的にシリカがカーボンにより還元されてSiOガスがシリカ表面から発生し、この反応が極めて速いために核生成段階が重量減少曲線に現れない。すなわち、高分子前駆体を用いた場合のシリカ還元法は、それまで知られていたシリカ還元法の反応機構と大きく異なることが分かった。
これは、昨年起きたSTAP細胞の騒動と同様の驚くべき現象で、シリカ還元法では、中間体にSiOガスの発生があるので、ウィスカーの混入は避けられないと言われていたのが、直接SiC化する反応が現象として発見され、高純度の3C単結晶の粉体を工業的に製造できる可能性が見つかったのである。
すぐに論文発表したかったが、会社の許可が当時下りなかった。すなわち、この見つかった現象を機能として実現し、工業生産できるようになってから、と言うことになった。その後、これも特許出願した成果であるが、異形プッシャー炉が納入された。パイロットプラントが稼働し1日10kg超高純度SiCを量産できるようになった。上司から国立T大の先生を紹介され学位論文をまとめ始めた(注)。
技術を技術のまま放置していてはその伝承は難しい。技術を科学としてまとめることができれば、時代が過ぎても科学という哲学がある限り、誰でも正しくその技術を実現できる。科学では不変の真実を基に知識を体系化できるからだ。科学の重要性はここにある。
(注)奨学金を支払い学位の指導を受けたが、学位論文がまとまった頃、写真会社へ転職したために、以前ここで書いたような科学の世界であるまじき経緯になった。
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超高温熱天秤は、高純度SiCを品質管理するための重要な設備だった。フェノール樹脂とポリエチルシリケートを酸触媒存在下でリアクティブブレンドにより高分子前駆体を合成するのだが、反応条件により透明度が変化する。
すなわち、非相容系のポリマーブレンドを強引に反応させて均一にしようとしているので一部で相分離が起きているのだ。このような前駆体を用いた場合には、副生成物としてSiCウィスカーが生成したり、シリカとカーボンが残存したり、と通常のシリカ還元法と一緒の結果が得られる。
良好な前駆体合成条件で製造された炭化物からのみ、当時知られていなかった反応機構で反応が進行し、高純度SiCが得られる。だから、量産技術を開発するためには、前駆体の品質管理技術が必要で、どこまでの管理基準を設ければよいか決める必要があった。
今ならばタグチメソッドという手法が存在するが、当時タグチメソッドもどきのクラチメソッドしかなかった。クラチメソッドは機会があれば説明したいが、タグチメソッドとよく似ており、タグチメソッドの感度を頼りに開発する手法だった。
しかしタグチメソッドを用いても高分子前駆体の品質管理基準を決めるのは難しく思われる。当時反応機構の解明と理想的な熱重量分析のプロファイルを基準に用いる品質管理手法が最適と考えた。すなわち、品質管理手法として科学的方法をそのまま使用することにした。
高純度SiCを合成するために理想的な反応機構を解明できれば、その反応機構で進行している理想的なTGA曲線を決めることができるはずで、この前駆体炭化物のTGA曲線を管理すれば、工程を安定に維持できると考えた。
超高温TGAを用いて高分子前駆体の品質管理を続けたところ、リアクティブブレンドが、かなりロバストの高い技術であることがわかった。
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SiCは、天然に存在しない化合物で、アチソン法やシリカ還元法で工業的に生産されている。いずれもシリカとカーボンの反応で作られているが、前者は高温度で合成するので6Hが主体のインゴットとして生産物が得られ、後者は3Cの粉体として得られる特徴がある。
合成される結晶相は異なるが、両者ともに合成時の反応はシリカと炭素で起きており、高純度SiCを発明した当時は2種類の反応機構が知られていた。しかし、その反応機構のいずれも中間体としてSiOガスを仮定しており、ガス相が存在するためにバイプロダクトとしてSiCウィスカーが生成する問題があった(注)。
すなわち、SiCにはダイヤモンドと同じ結晶構造の化合物以外に多数の結晶系の化合物が知られており(これを多形という)、SiC以外の不純物だけでなく異なる結晶が不純物となる問題があった。ちなみにSiCウィスカーは、2Hの結晶系だった。ゆえにシリカ還元法では、どれほど純度をあげても当時の生産方法によると3Cの結晶系に2Hの不純物が混ざって生産されることになる。
アチソン法では、高温度でSiC化を行うので、このSiCウィスカーはインゴットと同様の結晶系へ転移する。しかし、高温度で生成する他の結晶系が不純物として混ざってくる問題が発生していた。
超微粒子の高純度SiC合成法として、CVD法の一種であるレーザー法やプラズマ法も開発されていたが、工業生産には不向きであった。微粒子の工業生産にはシリカ還元法が適しているが、SiCウィスカーの不純物を除去しなければいけない、という問題を抱えていた。
当方の発明した高分子前駆体法では、最初から3C単相の微粒子が得られ、不純物は存在しなかった。これは当時ものすごく驚くべきことで、その目の前の黄色い粉体から従来知られていなかった反応機構で合成されたことは明らかだった。
ゆえに無機材質研究所で3日間の研究で得られた高純度SiCを見てから、反応機構の解明は科学的に重要な研究になる、と直感した。そしてすぐに熱天秤の調査を行ったのだが、そもそも2000℃まで加熱できる熱天秤そのものが無く、この研究の律速段階は熱天秤の開発になる、と考えて、すぐにその設計を始めた。
STAP細胞の騒動では、未熟な研究者が「できている」ということを歓喜し連呼していた。科学では「新しい現象」の発見は重要な活動の一つなので、現象が起きたことを喜ぶことは大切である。しかし、成熟した科学者は、新しい現象の発見で「なぜ」を解明したい衝動に駆られ、新しい現象を喜ぶと同時に新たな苦悩が始まる。一方、一流の技術者は、新しい現象を人類に役立てる使命に燃え、歓喜し動き出す。
科学者にも技術者にも科学の新しい現象は重要な意味を持つ。ゆえに現象の新しさを認識するために、科学者はもちろん技術者にも科学という哲学は重要であるが、新しい「こと」だけを喜んでいてはだめなのである。新しい現象を発見したら、科学者は真実を知るためにその科学的な解明が重要な仕事になり、技術者には新たな機能を抽出するための作業を効率よく行うための手順を科学的に考えることが大切となる。高分子前駆体法では、科学者にも技術者にも速度論的解析が重要となった。
(注)SiCウィスカーが生成しているのでガス相の存在が推定され、ガス相の存在を確認したところSiOガスだった、と論文には書かれていたが、当時の説明はそれが真実として認められた結果、SiOガスが生成するためにウィスカーがバイプロとしてできる、と言われた。
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