トランスサイエンスとは何か。それは、「科学で問うことはできるが、科学で解けない問題」である。事例として、環境問題のように科学だけでなく国際社会の動向や国民の意識が解答に影響を与えるような問題がすぐに浮かぶだろう。
このような、「科学だけでなく他の分野の影響を受ける問題」だけでなく、否定証明となるような問題の一部は、科学で解けない問題の一つとなる。
否定証明として証明されたのだから、科学で解けたと認めるべき、という人は科学ボケを疑った方が良い。哲学者イムレラカトシュは、「方法の擁護」の中で、科学で完璧な証明となるのは否定証明だけ、と述べている。
否定証明により得られた真理が唯一の厳密な方法によりなされた科学的証明と言っているのだが、否定証明されては困るような問題が技術開発では出てくる。
例えば、問題解決するために唯一の方法しか知られていない、あるいはその方法が唯一の解である場合だ。ゴムからの抽出物で増粘する電気粘性流体の耐久性問題は界面活性剤で解決できない、という問題を科学的に完璧に解いた研究グループがある。
そのグループは、その科学的に完璧で優れた証明をもとに、「加硫剤も添加剤も何も入っていないゴムを開発せよ」と当方に命じてきた。ゴム会社でこのようなテーマが生まれたことを不思議に思われるかもしれないが、これは実話(当方はこの出来事が原因で命を守るために転職している壮絶な実話だ。当方が転職後も二人の若者が転職し、さらに数年後には新聞に掲載されたが自殺者も出ている時代だった。)である。
当方は、すぐにそれを否定しては角が立つ、と配慮し、一晩徹夜してデータサイエンスにより、ゴムからの抽出物が存在しても増粘しない電気粘性流体の技術を完成させている。
どのように科学的に完璧な否定証明の結果をひっくり返したのかは、弊社のセミナーで解説します。3月13日「科学で解けない問題を解く」セミナーへ是非ご参加ください。日曜日にもこのセミナー受講は可能であり常時受け付けておりますのでリスキリングを考えておられる方はご利用ください。
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トランスサイエンスという言葉が登場して40年近く経つが、未だにこの意味をご存知ない方が多い。日本では同じ時期にセレンディピティーという言葉が伝来し、こちらは多くの人がご存知である。
トランスサイエンスとは、科学で問うことができても科学で答えられない問題、という意味である。日本では科学で何でも答えられると誤解されている人が多いが、アメリカ人は40年近く前から科学の方法で解けない問題があることを知っていた。
また、推論の進め方には二種類あることも知られており、刑事コロンボが推論の向きに成果の出た第一次AIブームの時に登場している。日本ではこのようなイノベーションは起きにくく、21世紀になってようやくプログラミング教育が義務教育にとり入れられるようになった。
すなわち、アメリカよりも40年遅れて科学だけでは、「だめだ」、と気がつき始めたのである。それでは、科学で解けない問題をどのように解いたらよいのか。
「科学で解けない問題を解く問題解決法」というWEBセミナーを行いますので問題解決に悩まれている方は、ぜひご参加ください。また、日曜日は当方の予定を設定しておりませんので、日曜日ご希望の方は申し出てください。
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2月末及び3月上旬に下記WEBセミナーを開催します。開催時間は10時から16時で12時から13時はお昼休みとなります。なおテキストは電子ブック形式で配布いたします。
1.高分子の劣化と寿命予測、トラブル対策
開催日:2月28日(水)、3月6日(水)、3月15日(金)(3日間同一内容です)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
なお、3月にはゴムタイムズ社で、4月には技術情報協会で類似セミナーが開催されます。
高分子の破壊に関しGriffithの理論から体系的に説明します。セラミックスの破壊研究の経験を活かした説明で、高分子の破壊について分かりやすく説明します。また、アーレニウスプロットで推定された寿命よりも短時間で量産試作段階に壊れた部品を事例に、信頼性工学や品質工学さらにはフロントローディングの手法など解説する実践的内容です。
2.高分子の難燃化技術
開催日:2月26日(月)、3月1日(金)、3月11日(月)(3日間同一内容です)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
ゴム会社に入社した時が開発競争が始まった時代で、それ以来セミナー講師を40年以上やってきました定番のサービスセミナーです。歴史と体系を学ぶことに注力しています。詳細はこちらをご覧ください。
3.Pythonで学ぶタグチメソッド(プログラムサービス)
開催日:2月27日(火)、3月5日(火)、3月8日(金)、3月12日(火)(4日間同一内容ですが、参加者の希望により内容を変更可能)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
Pythonの簡単な説明も行いますが、受講者の希望により、説明時間を増減可能です。タグチメソッドにつきましては、SN比計算プログラムを配布しますので面倒な計算の理解に必要な負担を軽減できます。メソッドとその思想を理解することに注力したセミナーです。
4.パーコレーションで学ぶPython(プログラムサービス)
開催日:2月29日(木)、3月7日(木)、3月14日(木)(3日間同一内容)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
シミュレーションをどのように開発業務に活用したのか、実際の開発事例で説明します。すなわち単なるPython入門ではなく、Pythonを身に着ける動機づけも目指しています。開発事例は2例あり、いずれもトランスサイエンスの事例。一つは否定証明をシミュレーションでひっくり返し、日本化学工業協会から賞を頂いた事例で、他の一つはフローリーハギンズ理論をひっくり返す技術をシミュレーションで確認した事例です。手軽にプログラミングできるPythonのマルチパラダイムの世界を実感していただきます。詳細はこちらをご覧ください。
5.科学で解決できない問題を解くトランスサイエンス時代の問題解決法
開催日:3月13日(水)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
日曜日を希望されますと、本セミナーに関しては特別サービスがございます。お問い合わせください。
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卓球の伊藤選手がパリ五輪補欠を辞退したい、という発言で批判の記事が出ていた。一方、他の卓球選手からは、同情する意見が出て、補欠の役割の解説まで飛び出した。
卓球ファンならご存知かもしれないが、伊藤選手は張本選手よりも劣るとして今回選手に選ばれなかったのである。潜在能力はともかく現在の伊藤選手よりも良い状態の選手は多い、と卓球協会は判断しているのだ。
彼女はその選手たちに補欠の機会を譲っただけである。補欠に自分が向いていないこと、過去に早田選手に助けられたことなど語っており、決して補欠がいやだ、とは言っていないのだ。
小学生の時に通学していた小学校で野球チームを作るというので、各クラスから2名ほど運動能力の優れた男子が選ばれ、希望者も含め30名以上集められた。
そして、2週間ほど毎日2時間の楽しい練習があったある日、指導顧問の先生からこのクラブをやめたい人はいるか、と質問があった。
当方は野球観戦は好きであったが、それよりも化学実験や植物観察が趣味で、自宅に顕微鏡や実験器具を揃えていた。料理などもたまに趣味でやっていた。当方にとって料理も立派な化学実験の一つであり、それで放課後の野球練習は負担になっていた。
ゆえに、やめたい人と聞かれ、辞めるチャンス到来とばかりに勢いよく手を挙げたのだが、当方一人だった。選ばれた時に辞退の申し出をしていたこともあり、勢いがつきすぎていた。
やや顧問の先生の表情が強張ったので少し怖くなったが、何故辞めたいのか、とみんなの前で聴かれた時に、夕飯の支度をしなければいけない、と答えている。
毎日やっていたわけではないが、先生の顔を見たときに、その答えしかなかった。結局その時辞めたのは当方一人だけだった。クラブ参加を自分から希望したわけではなかったので勢いよく手を挙げたのだが、辞める理由が自分の趣味のためと言うのにかなりの勇気が必要だった。
ましてや、母親が専業主婦であり、夕飯の支度を当方がしなくても良いことを家庭訪問で先生方も御存じだった。その母親からは辞退を申し出たことや、毎日やっていたわけではない夕飯の準備を理由にしたことできつく叱られた。
さらに、辞退の申し出を撤回するように言われたので、とうとう泣き出している。当方は、放課後の野球練習を嫌ではなかったので、特別に辞めたいと強く思っていたわけではない。
また、顧問の先生からも期待される言葉をかけられて、毎日楽しかったのだが、自分の中で優先順位を考えたときに、放課後の野球練習よりも植物採集や化学実験がしたかっただけである。
おまけに野球練習が始まった季節は、植物採集に忙しい時だった。夕飯の準備を口実にしていたが、本当は植物採集や実験をしたかっただけである。
この時のことを思い出すと伊藤選手の気持ちを理解できる。今の伊藤選手よりも補欠として優れた選手は他にたくさんいるのだ。さらに彼女としてはパリ五輪どころではなかったはずだ。それゆえ彼女は辞退を申し出ただけである。
補欠としてパリ五輪に帯同する役割も大切だが、パリ五輪に選ばれた選手たちよりも強くなる努力も日本チームとして中国に勝つためには重要である。是非復活できるようパリに行く時間も惜しんで練習してほしい。
卓球連盟も伊藤選手が引退ではなく復活への意欲を示しているのだから、理解していただきたい。わがままではないのだ。日本チームとしても伊藤選手がトップに返り咲くことはプラスになるはずだ。
当方も参加者が9人しかいない状態だったなら、辞退の申し出などしなかった。恐らく伊藤選手も同様の判断をしての発言だろう。
どうしても伊藤選手を補欠にしたいならば、卓球連盟はそのような対応をしなければいけない。伊藤選手は補欠と世界一になることと天秤にかけているのだ。
補欠として帯同すれば旅費は卓球協会が支払うことになる。卓球協会に気配りしてパリに行くよりも世界一を選択した伊藤選手を応援したい。日本では彼女のような判断をすると村八分にされたりするが、卓球協会は、退路を断った伊藤選手の判断を尊重すべきだろう。
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先月から今月にかけて、ある女子アナの退職記事が多かった。日テレアナウンサー笹崎里菜氏の結婚記事が報道された後、彼女のアナウンサーから私生活におよぶ活動に関する記事が出ていた。
当方はここまで著名な女子アナとは知らなかったが、記事によれば当方が知らなくても当たり前だった。アナウンサーとしては残念な活動だったらしい。
もっとも7-8年前に銀座でホステスをしていたことがばれて、入社内定が取り消され、裁判により女子アナになったニュースを記憶していたが、それさえ、改めて記事で読まない限り思い出せなかった。
結婚の相手等についてはニュースでご存知の方が多いと思いますが、当方が興味を持ったのは、日テレに入社以来、自分がどうみられているかに徹底的に気を配っていた、という記事である。
これは彼女の私生活まで論じたニュースも含めすべてに共通していた。サラリーマン、誰でもそれができるわけではないのだ。当方のゴム会社12年間の生活は、自分がどうみられているか、よりも会社にどのように貢献するのかに一生懸命だった。
その結果、退職しなければいけないような事件に巻き込まれたのである。ただ、当方が起業した高純度SiC半導体治工具の事業は30年続き、今は(株)MARUWAでその事業が継承されているのでこの女子アナより、サラリーマンとして幸せだったような気がする。
耐久性が無くてひっくり返りかけていた電気粘性流体の問題をすべて短時間で解決したために退職しなければいけなくなったが、その後電気粘性流体も当方の技術で事業化できたにもかかわらず、高純度SiCの成果とともにゴム会社ではさっぱり評価されていない。
もっとも世界初の難燃性ホスファゼン変性ポリウレタンの工場試作を成功させたところ始末書を書かされているので、事業化まで行ったにもかかわらず、退職金召し上げになっていないだけ、ゴム会社の評価を受けた、とも解釈できるが。
写真会社では入社時に多面評価の人事制度の説明を受けていたが、それでも自分がどうみられているか、日々それを中心として生活することは無かった。やはり、会社への貢献が中心にあった。
日本企業では多面評価の人事制度を導入している企業は多い。それで他人の目を気にして会社への貢献をおろそかにするような生活になったとしたら、もったいない人生である。
退職前の5年間、早期退職を決意し、セラミックス技術者から高分子技術者へリスキリングできたかどうか試すために、転職者としての遠慮を捨て寝ている時間も夢で課題を考えるぐらいに思い切り仕事をしてみた。
その結果、周囲の理解も得られたこともあり、カオス混合プラントはじめ再生樹脂など十分に満足できる成果を出すことができた。
ただし、それで給与や退職金が増えたわけではないが、退職後元部下から再生樹脂の仕事が社長賞を受賞したとかで記念品のPETボトルを20本も送ってきた。楽しい思い出が残った。
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バブル崩壊後、コーチングスキルの研修ブームが起きている。当方は異なる会社の研修を3つほど受けている。それぞれ役職が異なり、それゆえ内容も違うのだが、コーチングスキルのカテゴリーで捉えられるものだ。
共通しているのは、「それで」と問うシーンが出てきたことだ。部下から意見や情報を引き出す言葉の一つとして例示されたのだが、当方は何か腑に落ちない気持ち悪さを感じている。
この言葉に限らず、コーチングがうまく行われなかった時の部下への影響を研修に参加しながら心配していた。ある講師にこの疑問をぶつけたところ、だから研修をやっているのです、頑張ってください、と当方の期待した答えになっていない。
スポーツにおけるコーチングと業務におけるコーチングの決定的違いは***であり、当方が受講したコーチングの研修では***について触れられていない。あるいは気がついていないのかもしれない。
もし、****に気がついていないとしたら、豊田自動織機やダイハツにおける不正問題は、誤ったコーチングスキルにより引き起こされた、と捉えることができる。
***は、弊社が提供する研究開発必勝法のノウハウであり、弊社の研修では当方が12年間体験したゴム会社の問題だけでなく、写真会社で体験した多面評価から生じる問題の対策を解説している。
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目の前の問題すべてで、データサイエンスを有効に使えるわけではない。ロバストの高い製品開発にはタグチメソッドが有効だが、そのほかの問題にデータサイエンスのスキルがいつも必要なわけではない。
しかし、データサイエンスのスキルがあれば、目の前の問題を眺める視点が増える。すなわち、科学の視点は小学校から科学教育を受けてきたので誰でも持っているだろうが、データサイエンス特有の視点は、そのスキルを身につけない限り、使えない。
ゆえに、早めにデータサイエンスのスキルを身につけた方が、活用する機会が多くなる。当方は、人生の半分の問題をデータサイエンスで解いている。しかも、迅速に。
ゴム会社を転職することになった電気粘性流体の耐久性問題では、科学的な視点であれば、HLB値で界面活性剤をとらえ、それで問題解決しようとする。
そしてすべてのHLB値で構造が明確な界面活性剤を揃えて、添加してみてその結果をまとめる実験を行う。この実験結果で耐久性問題を解決できなければ、否定証明へ向かうことになる。
データサイエンスの視点は異なる。電気粘性流体の耐久性問題は界面活性剤で解かなければならない。界面活性剤にはどのようなものがあるのか、まずそれを分類しようと試みる。HLB値は一つの方法だが、ほかにないか調べるためにデータサイエンスを用いる。
そして分類されたそれぞれの群の特性を調べ、少しでも耐久性を伸ばすことができる界面活性剤の群を探すのである。否定証明など考えないから、必ずモノができる。
科学の視点しか持てない人は、これを怪しい方法という。どうして分類が正しいと言えるのか、などと科学的に責めてくる。データがこの分類をサポートしている、と説明しても理解できないのだ。
何か論理的によって立つ仮説が無い限り、科学の視点しかない人は信じることができないらしい。昔、「それでも地球は動いている」と言った人がいたが、当方は、「データがそれを示している」と答えている。
これはデータサイエンスの極意である。その結果写真会社へ転職することになったのだが、それでも、科学とデータサイエンス、二つの視点が重要と思っている。
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データサイエンスのスキルは、早めに獲得したほうが良い。今の時代であれば、これは技術者だけでなく文系の知識労働者も皆に当てはまる。老人も趣味として遊ぶのも良いかもしれない。当方は時間があれば遊んでいる。
データサイエンスを何に活用するのか、思い浮かばない人は多いと思われる。それは、当方がゴム会社でデータサイエンスで問題解決していても遊んでいるようにしか見てもらえなかったことからも理解できる。
日々の研究で問題解決して成果を出しても、データサイエンスがいかなるものなのかわからない人は、それでどうなんだ、という質問が必ず出てくる。
人事部が力を入れていた統計手法の研修に1年通った。一人50万円の費用が掛かっており、修了賞をもらえなかった場合には、1年かけて受講料が給与天引きされるルールだった。だから、皆一生懸命学習していた。
ところが実験計画法をせっかく習っても、それを使った実験で最適条件がよく外れる。最適条件が外れると研究所のメンバーは大笑いする、という繰り返しの中で、相関係数を外側に配置すると最適条件を得やすいことに気がついた。
この手法を思いついてから、実験計画法で最適条件を外したことが無い。高純度SiCをカーボン助剤だけでHP焼結する条件もこれで求めている。これでどうしてうまく最適条件を求めることができるのかは、タグチメソッドと同じ原理である。Pythonで理解するタグチメソッドセミナーで説明します。
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1979年ゴム会社に入社したが、ゴム会社は二つの文化(二つの問題解決法)が共存する会社だった。タイヤ関係の部門は先進的で柔軟な考え方の優れた管理職が多かったが、研究所は科学の哲学で固まった管理職ばかりだった。
タイヤ関係の仕事はKKDだと研究所では馬鹿にしていたが、当方は、その研究所のメンバーがバカにしていた組織から大変多くのことを学んだだけでなく、今の時代を生きていて、本当に良かったと思える風土だった。来年就職活動をする学生に一推しできる企業であるが、タイヤ開発を希望するようにアドバイスしたい。
なぜなら、プレゼンテーションの内容も学会のような研究所に較べると多士済々生活感のあるプレゼンテーションで役に立ったからである。大学では習わない典型的なQC手法の発表が多かったが、研究所がKKDとバカにする理由がわかるような発表が役に立ったのである。
仮説を立てて実験を行い、現象に潜む謎に挑む姿は、確かに素晴らしいが、それが否定証明になったなら何をやっているのかわからない。当方にはKKDであってもモノができる発表の方が、企業では否定証明よりも優れていると思っている。経営者は、この点に配慮しMOTをしなければ、研究所の運営がおかしくなる。
世界一のタイヤ会社の技術を支える技術者集団をKKD集団とバカにしてはいけない。眼力によりヒューリスティックなアイデアを即実行できる決断力の優れた技術者集団なのだ。同期の技術者を見ていても優秀な人ばかりだった。
彼らの問題解決法は、科学のそれとは異なるところがあり、それを科学で体系化したのが弊社の問題解決法である。古くから、データ駆動の研究開発手法がタイヤ部門では行われていた。
その合理性に論理性を加え、当方は研究開発をゴム会社で行ってきた。それが鮮明に現れたのが、電気粘性流体の耐久性問題である。
電気粘性流体の耐久性問題では、ゴムのケースに封入して用いる限り、界面活性剤の添加で解決できない、とした否定証明を本部長は、「世界に先駆け、電気粘性流体の問題を明らかにした素晴らしい研究だ、添加剤も加硫剤も何も入っていないゴム開発を急げ」と檄を飛ばし、当方に白羽の矢が立った。
当方はコンピューターを使った問題解決法を長年自腹を切って研究してきたので、タイヤ部門で学んだ知と合わせて一晩で界面活性剤を用いて電気粘性流体の耐久性問題を解決し実用化レベルへ持ち上げた。これはタイヤ部門のプレゼンテーションから学んだ知のおかげである。
タイヤ部門ではコンピュータを早くから業務に取り入れていた。RCOTやTCOTの商品開発はコンピューターのなせる業である。研究所ではコンピューターを使っていると遊んでいると言われた時代である。
コンピューターの良いところは、人間よりも早くデータを処理できるところである。8bitコンピューターでも5000件以上のデータを1時間程度で処理できた。電気粘性流体の耐久性問題は、科学とは何か、そして科学の時代に生まれたコンピューターの威力を知る大変良い問題だった。
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第三次AIブームを支えているのはPythonの普及であり、その豊富なライブラリーを無料で利用できるというとんでもないプログラム環境にある。
MS-DOSの時代にLattice社のCを利用していたが、ライブラリー等はすべて有料だった。無料のライブラリーも秋葉原を歩くとCD媒体で入手可能だった。昔の秋葉原は今のようなアニメの聖地ではなく、ソフトからハードまで怪しげなパソコン部品の宝島状態だった。
このころ手に入れた珍品をここで披露しても良いが、Cの無料ライブラリーにもそれがあった。しかし、実用に耐えうるライブラリーは安くとも2万円以上したのである。
行列計算や数学関数、画面操作、ファイル操作ライブラリー等揃えると40万円ほどかかった。Lattice社のCはライフボートの扱いで20万円であった。すなわち、実務で活用しようと思うと60万円の出費が必要だった。
8bitパソコンを1セット揃えたときには80万円かかったが、16ビットパソコンにCの処理系を揃えたら100万円の時代になっていた。
研究所では材料開発担当であり、これらソフトウェアーは自腹で購入しなければいけなかった。仕事で必要でも上司が認めてくれなかったからである。当時の研究所はコンピューターで問題を解いていると遊んでいると評価された時代だった。だから、新入社員時代にローンの保証人の印を押してくれた上司には、不思議な感謝の気持ちになる。
30年続いた高純度SiCの事業テーマを認めてもらうのが精いっぱいだった。しかし、今やPythonなら無料で業務のDXを上司に気にすることなくできる。
「パーコレーションで学ぶPython」は、そのヒントのセミナーである。Pythonのマルチパラダイムの世界をプログラミング初心者にも分かり易く説明しているだけでなく、自分の業務にどのようにPythonを活かしたらよいのかも説明している(注)。
DXの流れに乗り遅れたら将来が無い若い技術者に是非受講してほしいセミナーです。リスキリング目的の場合にはご相談ください。受講は休日となりますが特別価格で提供いたします。
(注)プログラムは、コロナ禍初期に話題となった8割おじさんがやられていたような数値シミュレーションではない。コンピューターの中で実験を行うシミュレーションである。長年コンピュータを使ってどのように問題を解いたら良いのか考えてきた。バカとはさみは使いよう、と言われた言葉をもじって、コンピューターとバカは使いようだ、と言われたりした時代があったが、今は人類の生活必需品となっている。しかし、問題解決の世界でコンピューターをうまく使えているかどうかは、疑問符がつく。弊社のPython関係のセミナーは、問題解決でうまく使うためのヒントとなる内容で、単なる入門セミナーではない。
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