フィルム成形には押出機が使用される。一般に押出機といえば単軸押出機を意味するが、二軸押出機も使用される。混練機にしろ押出機にしろ単なる装置と考え、単純に教科書に書かれた一般の仕様で満足している人が多いが、専門技術者により技術に対する見解が異なる。すなわち教科書に書かれているのは一例であって、実際の現場では様々な問題が発生しその解決に当たった結果、特殊な押出機も考案されている。
これは最近中国で建設されたPET工場を見学したときにドイツ人技術者に聞いた話であるが、PETの成膜においてL/Dが40程度の押出機を使うのは常識だそうな。日本で見かけるのはL/Dが25から30程度が多い。PET以外でもPPやPSでもその程度の押出機が使用されている。L/Dが40の押出機を使うといったら日本では笑われるかもしれない。
しかしそのドイツ人が言うには、L/Dが小さい単軸押出機では樹脂の溶融が十分にできないという。通訳を介して聞いた話なので正確性に欠けるが、若干のドイツ語の知識もあったので通訳の言葉に間違いの無いことを理解できた。PETは樹脂の中でも溶融しやすく未溶融ゲルのできにくい樹脂である。当初ばかでかい単軸押出機を見つけたときに中国人がドイツ人に騙された、と思ったが、ドイツ人技術者は理由を真顔で応えていたのでウソではないと思われる。
また、当方の経験もドイツ人の回答を信じたくなる。かつてPET成膜を担当したことがあるが、押出機は、日本の標準的な大きさであった。すでに生産が安定し研究開発も終わっていたが、輝点異物の問題は残っていた。もっともこの問題は無いことになっていたのだが、基巻き一本を体育館に広げて調べてみたら結構見つかったのである。
品質上問題が無ければ0としても良いのだが、技術報告書には正しく実態を残しておかなければ、その後の担当者が0を前提に考えることになり、問題解決できなくなる。表面処理工程で問題が発生したので、その解決策を考えるときに輝点異物を疑ったのである。転職者であったから内部事情などお構いなしの仕事のやり方で原因を見つけることができた。
この時の経験から押出機については少し疑問に思い、フィルム成膜について、コンパウンド段階の処理の重要性を考えてきた。たまたま20年ほど経ち、中国でその回答を見つけた。
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燃料電池の電極には白金系の触媒が用いられる。これがこの電池の泣き所で白金の使用量を少なくする技術開発も重要課題であると同時に白金以外の触媒探索は今でも行われている。
すでに固体高分子型燃料電池は実用化されているがリサイクルシステムが重要となっている。リサイクルシステムがうまく機能すれば、貴金属を使用していてもコストダウンが可能になる。例えば銀塩を使用していた写真感材では、銀回収システムがうまく機能しかつて100円以上したプリント1枚が10円プリントなどという安価なレベルまで下がった。
ところで白金の代替になりそうな触媒であるが、東工大を最近退官されたS先生のクラスター触媒が面白い。S先生のコンセプトの説明では、二核錯体で酵素反応をまねすることだとおっしゃっていたが、酸化還元もこのクラスター触媒で起こすことが可能である。残念なのはご研究半ばで退官されたことで、現在開発されている触媒は有機溶媒中の反応が確認されているだけである。
これまで固体触媒の研究は、触媒を専門とする研究者により推進されてきた。自動車用廃ガス触媒システムも彼らの成果であり、燃料電池の触媒探しも彼らにより行われている。しかし30年以上探索が行われてきても触媒量を減らすことはできたが、代替触媒は見つかっていない。
かつてディーゼルエンジンが発生するススをセラミックスフォームで、トラップレストラップ方式により取り除く開発のお手伝いをしたことがある。そのときススの酸化触媒には銅が用いられた。面白かったのは触媒研究の専門家は表面科学に強いが有機化学反応機構という分野に詳しくなかったことだ。ディーゼルエンジンに含まれるススには芳香族系の様々な化合物が含まれている。乱暴な表現で叱られるかもしれないが、彼らは十把一絡げにそれらを捉え考察していた。
このような研究の進め方ではS先生のコンセプトは生まれないと思う。S先生のコンセプトは、有機電子論に基づき論理的に発想された美しいアイデアに基づいている。最終講義を聴いていてその美しい論理展開に夢心地になり燃料電池の電極でS先生の触媒が作用している光景が見えた。
学生時代に有機金属合成の講座で一年間研究したが、固体触媒の研究文化と明らかに違っていた。燃料電池の電極反応の研究に異分野の研究者によるチャレンジが必要ではないのか。
カテゴリー : 連載 電気/電子材料
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ハイブリッドカーの売れ行きが伸びている。またこの6月にはハイブリッドカーではないが、ダウンサイジングターボ(ブルーターボ)と銘打って、スバルから1000kmをドライブできるレボーグが登場する。いずれもガソリンの消費量を減らし、環境対応を謳った車だ。一方、未来の車として注目を集めている電気自動車の売れ行きが芳しくない。未だ電気充電スタンドが地方まで普及していないために長距離ドライブが難しいためだ。しかし、近距離ならば電気自動車は環境に優しいだけでなく、燃費も安い。
電気自動車の一番の問題は電池というエネルギー源である。電池容量を高めれば、航続距離も伸びるが、重量が重くなる問題がある。仮に電気充電スタンドが普及しても充電に時間がかかる問題がある。すなわちガソリンならばガソリンスタンドが混んでいなければ、ものの5分でガソリンタンクを満タンにでき、再びドライブに出発できる。しかし、電池は充電時間を短くしようとすると電池寿命まで短くなる。高速充電は電池を痛めるのだ。
この充電時間の問題解決のために注目を集めてきたのは、燃料電池車だ。昨年のモーターショーでは、トヨタ自動車が燃料電池車の新車を発表していた。発売時期は未定だが、コンセプトカーではなくすぐに販売できる車のようだった。
燃料電池は、水素を触媒燃焼させたときに発生する電子を電池に利用している。ゆえに燃料として水素やメタン、メタノールなどを利用可能だ。ゆえに、容量が低くなり機能しなくなったならばガソリンカーと同様にこれらの燃料を供給してやれば、また電池として機能するようになる。すなわち充電の代わりに燃料をガソリン自動車のように供給することで電気を発生する電池であり、自動車に適している。
この燃料電池の技術は、30年以上前から存在した。35年前の国研ムーンライト計画でもテーマとして取り上げられている。しかし、なぜ普及しないのか。問題は燃料電池の電極に白金を使用しているからだ。白金はクラーク数が小さい希少金属であり高価である。しかし触媒燃焼が可能な実用的金属触媒が未だ見つかっていない。(続く)
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フィルム成形で問題になる工程帯電について、帯電防止の実務書にその対策が書かれているが、良心的な対策書では、現場対応の技術である、と書かれている。すなわち、標準的な対策で全てを解決できる問題ではなく、現場の対策が重要になってくる。
写真用PETフィルムでは、帯電防止層をインラインコートで塗布すると工程帯電に効果があるが、延伸前のフィルムのコート層の設計に技術がいる。20年前にこの開発を少し担当したが、ノウハウが要求される技術である。
界面活性剤で帯電防止を行う場合は比較的簡単だが、乳剤への影響を考慮し使用できる界面活性剤の制限がある。また、帯電防止レベルも低く、従来通りの工程帯電防止が必要である。イオン導電性高分子は一般に脆性材料が多く、そのまま使用すると延伸時にクラックが入る。電子伝導性高分子も同様の事情でそのまま使用できない。
工程帯電を防止できるインラインコート層について導電性高分子を用いるならば、素材の脆性を改善しなければならない。可塑剤の添加や靱性の高いバインダーとの併用というお決まりの対策になってくるのだが、ここで問題になるのがパーコレーション転移である。
導電性の成分を60vol%以上用いている場合にはパーコレーション転移の問題をあまり意識する必要は無いが、それが40vol%前後になってくると影響が現れる。パーコレーション転移の閾値は、真球の場合に30vol%程度であり、延伸により導電性相のアスペクト比が大きくなることが予想されるので理解に苦しむ問題になる。ご興味のある方は問い合わせて頂きたい。
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フィルム成形では、高分子材料を溶融し、押し出す。このとき問題となるのが、運転開始時に発生するコールドスラッジである。コールドスラッジは、運転条件が悪い場合には押出機の運転が定常状態になるまで続くこともある。コールドスラッジが稀に発生する場合には、どこかにエラーが存在する場合である。前者の問題は、再現よく発生するので問題解決しやすいが、後者の場合はエラーの原因を見つけるのに苦労する場合がある。
コールドスラッジが、コンパウンドの状態に影響を受けて発生している場合に、原因を特定しにくい。コンパウンドのレオロジーデータを開発過程で多数収集し、コールドスラッジが発生したときの特徴を抑えておくことが重要である。
コンパウンド起因のコールドスラッジは、コールドスラッジとして観察される場合は幸運な方である。コールドスラッジとして観察されず、一様に発生するボツとして観察された場合には、問題解決が難しくなる。まずボツの原因がコンパウンドのレオロジーに影響を受けている、ということを理解するまでに時間がかかる。
コールドスラッジが発生する場合には、正体不明のボツがフィルムに発生している。フィルム成形で悩ましい問題は、ボツであり、異物が原因のボツはそれなりの対策を行えば解決できるが、正体不明のボツは、正体が分からないだけに対策が難しくなる。
正体不明のボツだけをあつめてレオロジーデータを収集するとその正体が浮き出てくる。「未溶融」物質である。すなわちゲルである。コンパウンドの成分にこのゲルが多数含まれているとボツ対策は困難になるのでコンパウンド段階で退治しなければならない。問題は混練工程の担当者がこのゲルの存在を理解できるかどうかである。混練工程の担当者が理解できない場合には解決は不可能になる。
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昨日WEBで表題のレシピを見つけて作ってみた。おいしかった。このレシピに着目したポイントは、おからハンバーグを工夫していたときに採用したおからを炒る工程。このレシピでは、コンソメスープを入れて炒めるプロセスになっている。ふっくらとした炊きあがりになり、マヨネーズ、キュウリその他とあえるとおいしいポテトサラダができあがる。
フライパンで炒る工程が少し難しい。おからハンバーグで一度失敗しているから今回はうまくいったが、レシピにはそのあたりについて書かれていない。どこが難しいのかというと、おからは多糖類なので焦げ始めると一気に焦げる。ゆえに火加減と炒めどころである。250gのおからを炒めるときに中火で10分以内に終わることである。また時間が短いとうまくおからに火が通らずホクホク感を出せない。このレシピにはそのあたりを詳しく説明していないが大事なプロセスである。タグチメソッドで最適化すべきかもしれない。
たかが料理であるが、ここは高分子の難燃化技術の知識を活用し、品質工学の煩雑な手続きをスルーする。かつて砂糖をチャー生成剤としてポリウレタンの難燃化に使用したことを思い出す。当時サンプルを保管していたところ、アリがたかってきたので建材への実用化が難しい、と判断したが、おからなら使えそうである。なぜ当時おからまでアイデアが展開されなかったのか残念である。
その後多糖類を難燃剤に用いる特許が他社から出された。半導体用高純度SiCの事業化を一人で担当していたときで、毎日だだっ広いパイロットプラントへ一人で出勤し、先の見えない状態で苦しんでいた。取締役からしばらく他部署のお手伝いをしたらどうだ、とアドバイスをうけ、一日の半分は現業に役立つ企画をしていた。たまたま取り寄せた特許にその技術があった。
二十代は視野が狭かった。これも未熟と言われる原因である。若い頃自分では広いつもりでいても、今から考えると恥ずかしくなるくらいに狭かった。今ならば砂糖からおからやミドリムシまでイメージが広がりこれでも満足していないが、当時はデンプンからご飯までしかすぐに頭に浮かばず、技術を諦めていた。多糖類については大学の教養部の化学で半年も学んでいたが、おからやミドリムシは出てこなかった。
若さの問題は興味を持たない限り深掘りをしない習慣にある。年を重ねある時期から興味とは無関係に技術をまとめる習慣になる。すなわちコンセプトを重視し、コンセプトを明確にするために興味の無い周辺技術まで深掘りをする。年寄りが若い人よりも物知りなのは興味だけで知識を獲得していないからだ。この感覚は30を過ぎないと理解できない。昔は30過ぎると「オッサン」「オバサン」と呼ばれた。今は30過ぎても未熟と呼ばれる。未熟と呼ばれるのは20代で卒業したい。
アリがたかったポリウレタン発泡体の技術は、未熟な技術者ゆえにそれ以上改良されることなくお蔵入りとなったが、燃焼試験で観察していたチャー生成現象は、おからを炒るときにおからを焦げさせない工夫として活かすことができた。
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高分子加工技術の一つにフィルム成形がある。初めてPETの成膜実験を行なったときに、その延伸される様を見てびっくりした。パイロットプラントは工場と異なり同一フロアに押出工程から巻取工程まであるのでその壮大さを実プラントよりも実感できる。
このフィルム成形加工では、高分子物理の大半の知識を動員しなければトラブルが発生したときに対応出来ない。特にレオロジーは重要である。そのほか延伸に伴うモルフォロジーの変化についての知識も必要だ。
フィルム加工には大別してフラット法延伸とチューブラー法延伸がある。チューブラー法延伸はブラウン法あるいはインフレーション法とも呼ばれる。設備費があまりかからない方法である。フラット法延伸には、一軸延伸と二軸延伸で製造される場合がある。
例えば、最近廃PET樹脂で製造される卵パックは、一軸延伸のみで製造されたシートをパック形状に加工している。X線フィルムなどの写真フィルムに使用されるPETフィルムは、二軸延伸まで行い、平滑性を向上している。一軸延伸に比較して二軸延伸はプラントも大きくなり、生産性も劣るが、フィルムの面内均一性は高いので光学フィルムに適している。
このほかにフィルム成形には、押し出したままに近い成形も行われている。例えば薄膜ベルトの生産では、ほとんど延伸を行わずサイジングダイで径を制御する方法がとられているが、この場合にはフィルムのわずかな収縮に伴うエラーが品質に影響を与えることがある。
写真会社に転職して何がよかったか、といえば全てのフィルム成形加工技術を体験できたことだ。転職により、学位を取得したセラミックス分野から各種受賞した高分子材料分野まで専門性が広がった。単に材料の知識以外に、高分子の成形加工技術について射出成形からフィルム成形まで、さらにフィルム成形では、無端ベルトの押出加工から二軸延伸によるフィルム加工、さらにその表面加工まで担当した。
32年間の技術者生活は忙しく過ぎたが、材料知識とその成形加工の知識、半導体から防振ゴムさらには材料評価技術の知識と豊富な現場での経験が財産として残った。今でも身につけた知識分野について調査研究を行い、未来技術を発信するサイト(www.miragiken.com)を立ち上げたり、学会発表も時間を見つけては行っている。また、今年の6月には高分子学会から招待講演者として招待されている。ご興味のある方は弊社をご活用ください。
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「非常に豊かな発想力がある反面、ある種のずさんさがあった。その両極端が一人の中にある」と笹井副センター長は、30過ぎの未熟な研究者の評価を述べた。しかし、データの扱いや実験ノートの書き方については、理系であれば最初の二年間の学生実験で学ぶ。また4年の卒業研究では、講座に配属され、厳しい指導の下に研究の掟を学ぶ、というのが普通の大学である。
40年近く前、学生の間でも評判の大変厳しい先生の指導を受けた。自分から進んでその様な先生を選んだが1年間その先生だけでなく、諸先輩にも叱られてばかりであった。器具の整理整頓だけでなく、洗浄後の状態の検査の仕方まで事細かく躾けられた。雑誌会ではレポートのまとめ方や説明の仕方まで厳しかった。おかげで打たれ強くなった。
大学院に進むことになったが、所属していた講座が廃止されることになり、大学院の2年間は別の講座に進学した。その時も学生に評判の悪い厳しい先生のところを選んだ。当初高校教師になるつもりであったが、技術者の夢を持ったのはその先生のところで学んだ2年間のおかげである。研究テーマではなく短い学生の期間の厳しい指導を求め講座を選んだが、教育費のコストパフォーマンスとして最高だったと思っている。
同じ授業料を支払うのである。一生懸命指導してくれる先生を選んだ方が得ではないか。未熟な研究者で問題になったのは、実験ノートにデータの取り扱いや論文の書き方である。これらは少なくとも大学4年間に当然躾けられていなければならない項目である。コピペをやってはいけない悪事であることは、初年度に学ぶ。なぜ論文に引用文献が書かれているのかも学生実験の時に参考文献とともに学ぶ。そして他人のレポートをコピペした場合には単位を出さない、ということも指導される。40年近く経った今でも、友人の「代返」をして叱られた記憶とともに残っている。
20歳前後というまだ感性の低下していない年頃の時に研究者や技術者になろうとする人は厳しい躾けを受けるべきである。特にデータの扱いや実験装置、器具の扱いについては徹底して躾けられるべきである。発想力や集中力は生まれながらの資質であるが、これらは指導されなければ身につかない事柄である。社会に出る前に早めに躾けられるのが良い。30歳でそれが躾けられていない、というのは異常なことなのである。今回のSTAP細胞の騒動は日本の高等教育の欠陥が原因で起きたのかもしれない。
30歳という年齢は、専門外(注)であっても半導体用高純度SiCのパイロットプラントをゴム会社で立ち上げた年齢である。普通の会社ならば未熟や専門外であることが許される年齢ではない。諸先輩のサポートを受けながら一人前の仕事が求められる年齢である。ちなみにゴム会社では現在でもこの事業は継続されている。
(注)大学4年の卒業研究は、シクラメンの香りの全合成で、大学院2年間のテーマはリン系無機高分子の合成だった。無機材質研究所へ1年半留学し、SiCの結晶や焼結技術について学び、ゴム会社へ戻って速度論の研究を企画し学位を取得した。
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3時間以上の長い会見だった。意地悪な質問にも誠実に回答されていた。おそらく理研の将来の幹部になられてもおかしくない人物という印象である。大きなハプニングも無く、それだけに3時間半近く退屈であったが。とにかく「笹井副センター長」という人物を週刊紙や新聞で報じられた印象で理解していたのを少し恥じた。
質問でもあったが、小保方さんの将来に関しても小保方さんの自己責任で選択できるような配慮をされる方だろうと安心した。STAP細胞の問題は、彼がその存在を否定しなかったことから、理研だけの問題ではなく再生医療の将来に関わる大きな問題となった。是非検証を成功させて頂きたい。本音はどうであろうと現在進められている検証結果は重要である。言葉をかえて同じ内容の質問が繰り返されたが、彼の回答どおりそこに小保方さんが加わらなければいけない、という理由は無いのである。
その他特定研究法人の問題や山中博士と笹井副センター長の関係、STAP細胞の研究は誰の成果といったことはもう無意味である、と感じさせるクールな会見だった。理研の調査結果どおり彼の責任は重いが、昨日の会見で責任の一つを果たしたのではないか。
何か問題が起きたときにその問題にどのように対峙するか、で人物がわかる、と亡父によく言われた。当人の将来に関わる問題では、なかなか中立的な判断で問題に対応することは難しい。ゴム会社でFDを壊される事件が発生したときに判断を間違い、自分で犯人捜しをした後悔は今でも忘れない。
当時、S社とのJVの形式で高純度SiCの事業化が会社方針として決まり体制もできたので、犯人が分かっても仕方がないことだった。よりによってその犯人が犯人であってはいけない人物だったので解決の仕方が難しくなった。犯人探しを行わなければ、半導体用高純度SiCの研究開発をサラリーマン最後まで続けることができたかもしれない。SiCの速度論解析について論文発表し、結晶に関する研究のビジョンまで考えていただけに残念であった。自分が発明し企画から開発まで行い、6年間という死の谷を一人で歩き続けたという自負から、どこかに驕りがあったのだろう。
若い頃を思い出しながら会見を聞いていたが、笹井副センター長のようにクールに問題に対応できること、それが組織活動では大切とつくづく思った。彼は会見ではとりあえず過去の実績にこだわらず、丁寧にわかりやすく記者の質問に応えていたが、所員章をつけて臨んだ覚悟が伝わる会見だった。
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かつて「ガラ携」という言葉を聞いたときにすぐに意味が分からなかった。日本国内で独自進化した携帯電話のことだと息子に説明されて知ったが、写真会社の塗布液調整技術は「ガラ技」と呼んでもよいような状態だった。自己流で勉強してきたので正統派の塗布技術がどのようなものか分からないが、まるで料理を作るがごとくの担当者の手順はあざやかで手際よい。長年伝承され洗練された結果と思われる。
日常扱う素材であれば、この手順で何も問題が生じないが、新しい素材を処方するときに面白い行動となる。すなわち、早めにその素材の工程適正を判断し、工程適正無し、と結論を出すのである。これでは新技術を生み出すことはできない。
工程と同様の調整方法を実験室に持ち込んでいるので、その方法でうまくゆかなければ工程適正無し、と判断し、技術を棄却するのは確かに効率的である。工程の変更は処方の変更よりもお金がかかるのでコスト的にも有利な考え方である。イノベーションが不要であれば、これは良い方法かもしれない。
しかしその結果ライバル会社の技術に差をつけられていることに気がついていない。特許の実施例には塗布工程の詳細は書かれていないが、多数の塗布が難かしい素材で塗布経験をつんできたので、実用化経験は無かったが、実施例に書かれている塗布液が起こす現象のイメージをつかむことができた。
塗布液のレオロジーについても処方の組成で大きく変化する。界面活性剤などでレオロジーを調整できる粘度領域にも限界がある。しかしどうしてもその処方でなければ達成できない薄膜の機能であれば工程を変更する以外に技術手段は無い。その時将来どのような機能が要求されそれを実現するためにはどのような処方液を調製しなければならないのかシナリオを描き、工程をどのように改良してゆくと効率的なのかロードマップを作成した。
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