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2022.01/09 難燃化技術無料WEBセミナー

昨年末は少し忙しく、サービスの無料WEBセミナーを開催できなかったが、2月7日(基礎編)と8日(応用編)二回に分けて高分子の難燃化技術について無料WEBセミナーを実施したい。


基礎編と応用編各3時間を予定しており、午前午後どちらかを当てる予定だ。参加ご希望の方は、第一希望から第三希望まで次の要領で弊社(ホームの最新情報に申し込みコーナーを作りました。)へ参加申し込みしていただきたい。


希望順位の高い時間帯で実施予定です。なおテキストをご希望の方は、基礎編と応用編で合計5000円(分割販売無し)となります。お振込みを確認後小生の難燃化研究の論文とともににダウンロード方法をご連絡いたします。


<時間帯(7日と8日共通です)>

A.9時30分-12時30分

B.13時30分-16時30分

C.15時30分-18時30分

メールには、希望時間帯(例:第一希望B、第二希望C、第三希望A)とテキストの希望有無をご記入の上申し込んでいただきたく。なお1日コースの実施をご希望の場合には、第一希望として1日で実施、と書いていただければ、1日コースも検討させていただきます。

<注>ご希望の多かった時間帯で実施予定。例えば、Bの時間帯の希望が多かった場合には7日8日ともBの時間帯で実施いたします。


難燃化技術論文資料

カテゴリー : 一般 学会講習会情報 高分子

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2022.01/08 材料強度の劣化

昔漫才のような授業の光景に学生一同大笑いした。そしてその後しばらく気まずい空気となった。その授業では、部分安定化ジルコニア製の湯飲みを毎年教授が床に落とす光景が話題となっていた。


部分安定化ジルコニアが高靭性であることを放り投げた湯飲みが割れない現象により、生徒に見せていたのだ。ところが、その日は粉々に割れた。毎年割れない湯呑を生徒の前にかざしてどや顔をして授業を終える教授が噂になっていたので割れた瞬間に大笑いになった。


しかし、それは一瞬だった。皆教授のその後のアクションに同情したような空気になった。数十秒気まずい空気が流れチャイムが鳴って授業は終わった。


部分安定化ジルコニアは、衝撃で微小亀裂が発生するとその部分で結晶系が転移し破壊エネルギーを吸収して亀裂の伝播を止め高靭性化する機構である。湯呑は1度だけでなく数度放り投げた年もあるそうで、さらに教授は訪問するお客があると同じような光景を見せていた。


当時部分安定化ジルコニアの高靭性成形体は先端材料だったのだ。それで放り投げても割れない湯呑は珍しく教授は得意げに皆に見せていた。しかし、靭性向上機構から想像できるように繰り返しの衝撃により1/3以上の結晶が転移すると割れやすくなる。


これは部分安定化ジルコニアの疲労破壊として研究されている。以上はセラミックスの話だが、高分子材料では1980年代に酸化劣化の研究が活発に行われた。すなわち高分子の一次構造の酸化劣化により強度が劣化するという視点からこのような研究はなされている。


そして樹脂材料には酸化防止剤などが添加されるようになった。ゴムでは1979年に入社した時に老化防止剤はじめお決まりの添加剤を配合するように教わったが、樹脂ではそのような決まった添加剤が当時てんかされていなかった。一応紫外線防止剤や熱劣化防止剤など酸化以外の劣化防止剤が開発されているが、特許では様々な配合で添加されていた。


このような高分子の劣化を防止する添加剤が添加されても高分子材料強度は劣化する。詳細は弊社へ問い合わせていただきたいが、ゴムや樹脂の日常使用における化学劣化は、かつて研究で示されたような反応速度で進行していない可能性がある。むしろ他の因子が材料強度の劣化に寄与しているケースが多い。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.01/07 高分子の劣化

高分子材料の劣化問題は未だに科学的に未解明の領域である。しかし、企業ではアーレニウスプロットを活用して行っているのが実状ではないか。


1980年代に高分子の化学劣化については活発に研究された。1970年代に熱分析技術が進歩し、熱以外の因子による劣化機構について学会発表が多かった。


それらの成果を受けて、企業で材料開発を行う場合に市場環境における劣化因子を入れた環境条件において、温度を3点以上変化させてアーレニウスプロットを行って劣化予測する手法が定着している。


力学機能だけでなく、電子機能についてもそれに準じて行われているのが実状である。ゴム会社ではそのような劣化予測は否定されていたので、おそらく現在も実際の劣化状況を確認して品質設計を行っているかもしれない。


当方は、このゴム会社の姿勢は正しいと思っている。さすがに「最高の品質で社会に貢献」を社是としている会社だ。安直な科学の成果を使って技術開発された製品の品質評価を行っていない。あくまでも現物現場主義だ。


一方でこのような現物現場主義について科学を錦の御旗として掲げ否定する技術者も多い。当方はハイアマチュア向けの高価なカメラF100が防湿庫に保管された状態でフィルム蓋の壊れた姿を見て愕然とした経験を持っている。


高価なカメラではあったが、その破壊状態から手抜き開発されたかあるいは安直なアーレニウスプロットで設計されたのか不明だが、壊れ方は安物のカメラよりもひどかった。


サービスセンターに持ち込んでも1万円以上かかるというので、この壊れ方を材料の破壊セミナーで使わせていただくと了解をえて、修理をあきらめた。

カテゴリー : 一般 高分子

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2021.12/26 創造に科学は必要か(3)

住友金属工業(現在の日本製鉄)との高純度SiC半導体治工具のJVが計画されたころ、電気粘性流体開発プロジェクトのお手伝いを命じられた。命じられたが、電気粘性流体について業務説明も無ければ、研究論文の一切を読む必要は無い、という乱暴な扱いだった。


当時世間でいうところの係長職にあったのでそれなりの扱いをしてほしかったが、当時のゴム会社の研究所のスタッフにはそのような命令をする人が多かった。また、科学の研究者は、自説を押し通すためにそのような性格でなければリーダーが務まらないのかもしれない。


スタップ細胞の騒動をまとめた「あの日」を読んでも、そこに登場する人々は技術者から見ると不思議な人が多い。情報も何ももらえず、仕事を命じられる立場は、下僕と等しいのである。さて、そのような乱暴な扱いで命じられたテーマは「加硫剤も含め添加剤が何も入っていないゴム開発」だった。


当時すでに日本一になっていたゴム会社で非科学的なこのようなテーマを命じてきたのである。セラミッックスの研究を担当していた当方にこのようなテーマが巡ってきたのは、当時の研究所でゴム開発の経験があったのは当方だけだったからだ。


多少なりともゴムに詳しかった当方は1週間だけ時間をもらい、電気粘性流体の耐久性問題や電気粘性効果を安定にできる粉体などをアジャイル開発した。電気粘性流体がどのようなものかは詳しく知らなかったが、社内のプレゼンテーションで公開された情報程度は頭に残っていた。


その頭に残っていた情報程度で、ヒューリスティックな解を見出すことは簡単だった。換言すると情報が少なかったので材料合成のために考えなければいけない問題が絞られたのかもしれない。


驚くべきことに、データ駆動による一晩の実験で電気粘性流体の耐久性問題を解決できて、その後ほんの少しの実験で電気粘性効果を高める粉体を創造することができた。


この技術開発において、5年の歳月がかけられ研究所で蓄積された科学の成果を全く使っていない。セラミックスの研究で身に着けた経験知と暗黙知により創造された新技術を用いて、難問が解決され、世の中に存在しない傾斜機能粉体が生み出されている。


同僚に情報を出さない、という信じられない扱いのおかげで、電気粘性効果に関する科学の形式知が乏しい状況となったので、経験知と暗黙知をフル活用する必要が生じた。そこで使われたのは演繹論理である。


ただし欠落した知を補う必要から創造が行われる。そこでは非科学的あるいは未解明な科学的現象に潜む知などが混在し、推論が展開される。演繹論理では科学の一部であるが、その展開は非科学的だった。


マッハ力学史において、ニュートンの力学は非科学的成果に位置づけられている。その理由は、当方が電気粘性流体で展開したような推論だったからである。当方はマッハ力学史を読んでいたので、ニュートンの論理展開を学び電気粘性流体のアジャイル開発ができたのである。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2021.12/24 創造に科学は必要か(2)

バッハは平均律を発明している。ちょうど科学が誕生する直前である。ドレミファソラシドから和音が創られる過程において周波数解析を利用できる環境ではなかった。しかし、美しいハーモニーの曲がその時に創造されている。


今では、音楽理論が体系化され、周波数解析や心理学などが動員されて、気持ちよい音楽を科学的に創造することができるようになった。例えばコンピュータで作曲されたα波を出す曲集というCDも販売されている。


ただしそれを聞いても本当にα波は出ているのか不明だが、何故か味気ない。お気に入りの渡辺貞夫のCDをかけた方が気持ちよく仕事に集中できるし、リー・リトナーのスリリングな響きはCD一枚聞けば心地よい疲労感からよく眠れる。


また、MIDIが発明されてW95が登場しデスクトップミュージック(DTM)なるジャンルが生まれ、多くの人に作曲の機会が普及しているが、それでもヒット曲のすべてがDTMの成果となるような時代になっていない。


コロナ禍となり、仕事が減ったので音楽理論を真剣に勉強してみた。それで作曲ができるようになっても、作ってみた曲がヒットするとは思えない。すなわち、音楽理論を用いて、体裁の整った曲を作ることはできるが、その結果生まれた曲は、どこかで聞いたような曲である。


形式知を活用して、とりあえず何か作り出すことができても、形式知に従い出来上がった創造物は当たり前のつまらないものになるのかもしれない。また、創造物とは呼べないような作品になる可能性がある。ひどい場合には明らかな盗作を作り出す恐れがある。


最近購入したジャズの教則本には形式知に基づく説明が詳細に記述されている。そこには、これにとらわれる必要は無い、という著者の注釈がよく出てくる。例えばテンションという技法があるが、ルールにとらわれず自分で良い響きと思ったらそれを使え、と書いてある。


すなわち、形式知に従って演奏していてもつまらない、と行間に書かれているようなものだ。音楽と技術は異なる、と言われると当方の1年以上の努力が無駄だったような気分になる。当方が音楽理論に取り組んだ背景は、経験知や暗黙知が乏しい分野における形式知による創造とは何かを考えてみたかったのである。


ちなみに、当方は自信をもって音楽の才は無い、と胸を張れる。その実力レベルを理解しているので、国内のカラオケにおいて人前で歌った経験は無い。このように音楽の才能が無くても、形式知を身につければ、とりあえず作曲ができるようになる。


本に書かれているコード進行のルールに従いコードを配置し、リズムに合わせておたまじゃくしを並べてゆくと一応それなりの曲ができる。ゆえにそのためのプログラムが搭載されたコンピュータによる自動作曲が可能となっているわけだが、出来上がった曲のどこかで聞いたような味気無さをどうしたらよいのか。


この経験から、形式知があれば、とりあえずやりたいことを実現できる便利な知であることを理解できた。ただし、形式知から生み出された曲は、どこかで聞いたような不満が残る。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2021.12/23 創造に科学は必要か(1)

新技術を生み出したり、イノベーションを引き起こしたりするのに科学が必須と誤解している人が多い。これは産業革命が科学の成立とともに引き起こされたイノベーションとして理解されているために生じている誤解である。


産業革命における科学の役割は大きかったが、それゆえイノベーションが科学の進歩だけで引き起こされる、という考え方では、今日起きているイノベーションに追従さえできない(バブル崩壊後30年日本のGDPが上がらない原因かもしれない)。


ここで、今起きているイノベーションとは、「第三の波」(アルビントフラーが名付けた情報革命)で始まったデジタルトランスフォーメーション(DX)で進行しているイノベーションである。


このイノベーションの30年の過程を振り返っていただきたい。従来の科学の方法とは異なる方法により、新しい技術が生み出されている。しかし、その方法の正体について日本では誰も声高に言わない。言わないのではなく、言えないのかもしれない。


科学の方法以外を信じることができない技術者が日本では多い。このような技術者にはアジャイル開発など理解ができない許しがたい方法となる。実際にそのような見識の人物に、アジャイル開発により新素材を生み出した時、当方はFDを壊されるなど嫌がらせを受けている。


新しいことを生み出すために科学の方法が唯一の方法であるのか今一度考えなおしていただきたい。演繹論理により仮説を設定し、それを証明するために実験を行い、帰納法的に仕事を進める。このような手法で完璧さを求めた場合に、仮説を否定する実験結果が得られた時に否定証明となるイムレラカトシュが指摘した問題に気がついていない。


また、科学の進歩は、古い技術開発手法に影響を与え、心ある技術者はその手法を改良してきた。タグチメソッドはその一つの成果である。ただしタグチメソッドでは基本機能について技術者の責任としている。すなわち新しい基本機能を見つけ出すのは技術者の責任なのだ。


新しい基本機能を見つけ出すために科学の成果を活用できるが、知識労働者が多くなった現代では誰でもそれを行うので世の中に科学的に当たり前の製品が溢れてくる。しかし、今求められているのは新たな科学を生み出す新技術である。


(注)30年前に実用化された電気粘性流体の開発過程では、当時科学的に未知の現象を引き起こした3種の粒子がその開発を促進している。また劣化問題では、今話題となっているデータサイエンスを応用した手法で発見された界面科学の未知の領域で技術が誕生している。また、高純度SiCの製造技術では、高分子科学で否定される現象を活用したセラミックス前駆体が使われている。この開発にはラテン方格を用いた試行錯誤法が寄与しているが、これもデータサイエンスと呼べる方法である。データサイエンスというと科学的に聞こえるが大量のデータから新機能を見出す、ある意味「なんちゃって」技術である。今これを科学的に研究しようという学部の新設ラッシュである。当方はマイコンの登場した時代に計算機科学の未来を信じ、いわゆるデータサイエンスの手法を科学的手法と併用して材料開発を進めてきた。来年それらを事例として用いたセミナーを企画しています。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2021.12/21 マテリアルインフォマティクス

1980年代に日本で始まったセラミックスフィーバーは瞬く間に世界に広がり、驚いたクリントン政権はナノテクノロジーを国策に打ち出した。さらにバイオテクノロジーまでも始めている。


これが、ポリ乳酸などのバイオポリマーが普及し始めたきっかけだが、普及まで20年以上かかっている。すなわち材料技術が社会に普及し一般化するためには、長時間かかる。


80年代に起きたセラミックスフィーバーは2度目のフィーバーであり、この二十年前にはペロブスカイトを中心にしたプチセラミックスフィーバーが起きている。当方が小学生の頃だったので村田製作所の名前を基に記憶している。


今世間では表題の怪しげなブームが起きている。また、大学ではデータサイエンスに関わる学部の新設ラッシュらしい。すなわちマテリアルインフォマティクスとは世間にあふれている大量のデータについてAIを使ったデータマイニングにより新しい現象なり機能なりを探ろうというものだ。


これは科学と言うよりも技術である。当方はAIを使用していないが、データマイニングにより電気粘性流体の実用化を成功させ、その結果担当者からFDを壊されるなどの嫌がらせを受けて転職している。


電気粘性流体について科学的な情報が無く、研究開発競争が行われていたところで、データマイニングでモノを作り上げてしまったのである。真面目にコツコツ数年間アカデミア以上の研究所で研究をしてきた連中が腹を立てたのは理解できる。


このデータマイニングと言う手法は、早い話が、たくさんデータを出してからそれらのデータを俯瞰して考えましょう、というような手法と捉えることもできる。もっと下賤な言い方をすれば、とりあえず実験をやってみてから考えましょう、という体育会系のノリである。


もともと体を動かしたくない頭でっかちな研究者は、仮説を立案し、その仮説が正しいか必要最小限の実験をコツコツ行いながら考えてモノを開発しようとする。この科学の方法を完璧に行うと否定証明を行うことになる危険性を哲学者イムレラカトシュは指摘している。


実際に電気粘性流体を数年研究開発してきたスタッフは否定証明でモノができないことを証明していた。当方はそれを一晩300個ほどの実験を体力に任せ行い多変量解析してモノを作り上げただけである。30年前の出来事だ。


当方は自分の手を動かしてデータを集めたが、今のマテリアルインフォマティクスは頭を動かしているだけらしい。それも自分の頭を動かし過ぎると疲れるのでAIに大半を任せて椅子に座って研究している。


これで良い研究成果が出たならやはり立腹する人が世間に出てくるだろう。しかし、当方は拍手を送りたい。なぜなら、材料開発について温故知新をAIにやらせ、もう人間は体力勝負の新素材開発業務から解放されるからである。


当方の材料開発成果はすべて過重労働の成果である。今の時代、過重労働を隠蔽化していると社会問題となる。昔は、何もかも隠蔽化されても許された時代のように感じている。ゆえに転職以外に身を守る手段が無かった。


肉体派のデータサイエンスには暗い思い出しかないが、それでもこの手法を30数年のサラリーマン時代使い続けてきたのは、コンピューターの進歩に未来を感じていたからである。


高純度SiC製造プロセス開発は、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂をひたすら朝から晩まで混合し続けた成果であるが、この時はラテン方格を用いて効率をあげている。


成功すると信じることができたのは体力に自信があったからである。わずかな知力と鍛えられた体力でマテリアルインフォマティクスを推進すると必ず成果が出る、と確信している。


新素材開発は、やってみなければわからない世界である。これを科学的に行うと否定証明を行うような愚行となる場合もある。だからマテリアルインフォマティクスが重要となってくる。


ただし、それは新しい視点により集められたデータに対して使われた時に新しい材料の未来が見えてくる。過去のデータを使うならば温故知新である。この時不易流行の精神を理解できる経験知が重要となってくる。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2021.12/13 高分子材料の密度(4)

N社F100の裏蓋フックは、クリープ破壊で壊れた可能性が高い。それはフラクトグラフィーにより、明らかだった。フラクトグラフィーとは、御巣鷹山の飛行機事故の裁判でも墜落原因を特定するために使われた科学的方法である。


御巣鷹山の飛行機事故では、重要部品の圧力隔壁が壊れこれが飛行機の制御系を壊し、制御不能となった飛行機は御巣鷹山の峰に衝突した、という原因が解明されている。


圧力隔壁が壊れた原因について解明するためにフラクトグラフィーが使われ、墜落した飛行機がかつて羽田で尻もち事故を起こした時の修理方法が悪く、疲労破壊を速めた、というところまで明らかになっている。


フラクトグラフィーという手法では破壊した個所の観察が重要で、その破壊した個所に現れる材料特有の模様から、破壊に至る過程を明らかにしてゆく。


N社F100のフックの破断面をD2Hへマクロレンズをつけて接写して、拡大して得られた画像を見たところ、ゆっくりゆっくり破壊が進行したところと急速に破壊が進行したところが連続的につながっていた。


すなわち、最初に何らかの原因で、ピシッとヒビが入り(この時急速に破壊が進行した波面の状態となる)、樹脂はそれを何とか持ちこたえたが、その後クリープでゆっくりゆっくり破壊していった破壊の様子が一つ思い浮かぶ。


しかし、カメラは防湿庫に静置されていたので、最初の破壊原因としてピシッとヒビが入る情景を想像しにくい。それよりも、裏蓋フックには常時それを開けようとするスプリングの負荷がかけられている。この機構ゆえにフックが外れると裏蓋が勢いよく開く。


すなわち、フックに応力が常時かかっていたが樹脂密度が低いためフック全体のクリープ速度が速くなり、わずかに変形して応力集中が起きたところからゆっくりゆっくりとクリープ破壊が進行した。


その後、裏蓋を開けようとするスプリングの強度に持ちこたえられなくなったところで、ピシッと割れた、という破壊機構の方が波面の模様を説明するために妥当性がある。


すなわち、新たに購入したN社フラッグシップD2Hを使用するようになったため、1年以上防湿庫にF100は眠っている状態となった。この眠っていた間に裏蓋フックの樹脂の分子はバネの応力でクリープを起こし、破壊に至ったのである。


おそらくF100を使い続けていたら、もっと早くフックは破壊し、使用条件の悪い使い方か、製品の設計が悪いために破壊したのか原因不明となっていたかもしれない。しかし、1年以上使わずに放置していて壊れたのである。設計ミスか製造時の品質管理ミスかは明らかだった。


ラインに流れる裏蓋フックに関しフックの密度が低いことを見落としていたならば製造側の品質管理ミスである。もし、スペックで決められたバネの応力が強すぎた、あるいはフックの成形体密度について仕様が決められていなかったならば、これは製品設計におけるミスである。


いずれにせよ消費者の責任ではない。1年以上防湿庫に放置していて重要機能部品が勝手に壊れる様な製品を作っていてはだめだ。ますます製品の売れゆきは悪くなる可能性が高いのですぐに弊社に相談してほしい。設計段階からのロバストを高める手法を伝授します。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2021.12/12 玉か紐か

ラテックスを塗布し形成された薄膜を観察すると、セラミックスのような粒界が観察されるときがある。そしてその構造のサイズは、ほぼラテックス粒子の大きさと同じである。


このような電子顕微鏡写真を得るためには観察用の良好な剥片が必要だ。さらに四酸化オスミウムなどの染色をしなければいけない。


ラテックスから形成される薄膜は、おそらく皆このような高次構造の薄膜になっているのだろう。面白いのはこの薄膜をさらに熱処理をしてやると粒界が無くなる場合と高次構造が変化しない場合とがある。


ところが薄膜物性を評価してやるとどちらも似ており、玉の性質は消えて紐で現象をとらえた方が説明しやすい場合がほとんどだ。


ならば、樹脂のラテックスとゴムのラテックスを混ぜたらどうなるか(樹脂成分は30wt%未満の配合である)実験してみた。アクリル系ラテックスであれば、このような実験が容易となる。


pHを揃えて合成できる樹脂とゴムのラテックスを別々に合成後、混ぜて塗布液を調整する。この塗布液で薄膜を形成すると、樹脂球がゴム球の中に分散している構造の薄膜となる。これを加熱処理しても観察される構造は変わらない。


おもしろいのはこのように製造された薄膜でも弾性率が上がる。ゴム会社の新入社員テーマで樹脂補強ゴムを製造した時のことを思い出した(この時は樹脂成分は20wt%未満の範囲で実験している)。


この時、目標としたゴールは樹脂の海にゴムの島ができている高次構造だったが、ゴムと樹脂の組み合わせが悪い場合には、ゴムの海の中に樹脂の島が分散している高次構造となった。面白いのはこの高次構造の差は弾性率で比較しても観察されなかったことだ。


弾性率に差は出なかったが、樹脂が島の場合には引張強度に大きな差が現れた。樹脂が海の高次構造の樹脂補強ゴムの方が引張強度はじめ多くの点で優れた物性を示した。


ところが、PETフィルムに樹脂ラテックスとゴムラテックスの混合物を塗布して薄膜を形成すると、樹脂が島構造となっていても、薄膜物性は良好だった。おそらく、樹脂補強ゴムにおける樹脂の島相のサイズが大きく機能していた可能性が高い。


このような現象を考えるときに、紐か玉かどちらが良いのか悩む。およそ妄想の世界でアイデアを練る限界かもしれないが、高分子材料の設計をする場合に科学的に考えているよりも、このようなモデルでイラストを頭に描いて考えた方がアイデアが豊富に出てくる。


こうしたアイデアの大半は科学的ではないが、実現できる場合がある。半導体無端ベルトの押出成形技術を完成させたときのアイデアはこうして生まれている。そしてカオス混合技術を開発することができた。


技術とは必ずしも科学的である必要は無い。それを伝承するためには科学的である方が容易ではあるが、機能を実現するためには非科学的技術であってもロバストさえあればよいのである。科学で固まった頭を少し柔らかくしていただきたい。

カテゴリー : 一般 高分子

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2021.12/11 ラテックス

ラテックスとはゴムや樹脂のコロイド状水分散物である。コロイドとは微小な液滴あるいは粒子がある媒質中に分散している分散系で、粒子の大きさが、約1μmから1nmの範囲にある場合をいう。


コロイド分散系は、分子コロイド、ミセルコロイド、分散コロイドの3種が存在し、コロナウィルスは気相に分散している分散コロイドである。


高分子のツボでは、高分子を組み紐で表現し現象をとらえると分かり易い、と説明してきたが、同じ高分子でもラテックスの扱いは難しい。


それは、例えばラテックスが塗布されて薄膜を形成した場合には組み紐のイメージを想像して現象を考えても良くあてはまるが、塗布前の乳濁液では組み紐よりも玉の扱いで考えやすくなる。


ただ注意しなければいけないのは、親水性部分を持っているラテックスである。その挙動はよくわかっていない。ラテックスにおいて分かり易いのは球の扱いができる場合で、このモデルで説明がつく現象については、難しくても何とか問題解決できる。


しかし、親水性の部分を持ったゴムあるいは樹脂の場合に厄介なのは、組み紐状に広がって分散している場合もあるからである。これはいろいろなラテックスを合成し、このような分子コロイドができたと思われるときにその後のプロセス性が悪かった経験から述べている。


歯切れの悪い書き方になるが、水に分散している状態をうまく分析評価できないのでこのような表現になる。ただ、このような分子コロイドをスピンコーターにたらしてから顕微鏡観察すると球体が見つからないので水中で球状ではない可能性が高いと想像している。


このような場合、10%程度に希釈しても粘度が高いので塗布液として使いにくいが、コーティング液として使えないわけではない。ワイヤーバーを使って無理やりコートすることができ、薄膜の評価も可能である。


ネットで検索して得られるラテックスの説明にはゴムの分散液程度の説明しかないが、乳化重合により樹脂が水に分散したラテックスはじめ様々な高分子重合体のラテックスを頭の中では製造可能である。その中には実際に実用化されたラテックスも多い。

カテゴリー : 一般 高分子

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