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2019.12/27 ポリマー混練り活用ハンドブック(2)

半年後に製品化を控え、外部の一流コンパウンドメーカーから購入していたコンパウンドでは歩留まりが悪く製品化立ち上げが困難と判断して参加した打ち合わせにおいて、「素人は黙っとれ」と言われた話は以前書きました。

 

一流コンパウンダーの技術者やPPSを供給していた一流メーカーの技術者の意見と当方の見解が全く異なり、打ち合わせの途中で当方が追い出されるような事態になりましたのが、高価な本を数冊購入した動機でした。

 

混練りの神様から指導された内容が間違っていたのか、世間の混練に対する見解が間違っているのかは、形式知が書かれた書籍を読むのが一番確かです。

 

しかし、高い金を払って購入した書籍には、どれも混練の神様から伝授された考え方が書かれていませんでした。ひいき目で表現すれば、混練機を設計する人には役に立つかもしれないような本でした。

 

ただ、それにしても混練の形式知と呼ぶには貧弱で、混練機構をモデル化しやすいように考え出された形式知のようにも見えました。

 

そこでゴム会社時代の手帳を引っ張り出し、混練の神様から受けた授業のメモを頼りに自分で勉強しなおし、カオス混合のプラントを設計して、たった3ケ月でそれを立ち上げることに成功しました。

 

そこから製造されたコンパウンドで、中間転写ベルトの歩留まりを90%以上と飛躍的に向上させることができました。そのラインは現在でも国内で稼働しております。

 

この学んでから20年以上経過したゴム会社の基盤技術(注)を写真会社で復刻させた体験は書籍にも少し書かれています。

 

(注)ゴム会社でのキャリアは、高純度SiC事業化を業務としていたのでセラミックスである。ただ新入社員時代に3ケ月間樹脂補強ゴムをテーマにゴム技術を指導社員から伝承されている。毎朝座学で午後は実習だった。定時後は指導社員が管理されていた設備について自由に使用してよいと言われていた。スペクトロメーターにロール、バンバリーの3機種を自由に使えたのは知を学ぶために有効だった。

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2019.12/26 ポリマー混練り活用ハンドブック

先ほど表題の書籍について、2020年1月下旬発刊との連絡が出版元のゴムタイムズ社から正式に入りました。価格は1冊4800円とのこと。

 

昨日、本欄で書きましたように年内は割引価格送料込み4600円で頑張りたいと考えております。

 

さて、この本は2005年にPPSと6ナイロン、カーボンの配合によるレーザーカラープリンターの部品である中間転写ベルトの押出成形を前任者から引き継ぎました時に、読みたかった内容の本です。

 

当時8万円以上する専門技術書を自腹で5冊ほど購入しました。資金源は以前この欄で書きましたが、高純度SiCの基本特許に対してゴム会社が旧無機材質研究所に支払った使用料です。

 

このお金の出所につきましてはドラマがあるのですが、ケンシューを退職するときに公開したいと考えています。

 

怪しいお金ではありません。人情噺に近いかもしれない美しい話です。誠実真摯に生きておればよいことがある、という事例の様な実話です。

 

さて、高額な専門書を購入して勉強したところ、驚いたことにゴム会社に入社して樹脂補強ゴムの開発を担当した時にご指導いただいた混練の神様と呼んでも良いような指導社員から毎朝座学で習った内容と異なっていたのです。(明日に続く)

 

 

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2019.12/25 混練りの本

昨日書籍購入を申し込まれた方にはお礼申し上げます。予想外の申込数ため、4000円のサービス価格は昨日だけですが、年内は送料込みで4600円で申し込みを受け付けたいと思っています。

 

おそらく来年には値段も確定し、1月下旬には全国の書店に並ぶかと思いますが、昨今の書店の倒産などの状況を考慮し、弊社のホームページでもt年明けしばらくは販売前のサービス価格でがんばろうと思っています。

 

発刊後は諸事情あり定価販売送料サービスとします。著者割引価格も決まっていない状況ですが、とりあえず年内は送料込み4600円として申し込みを受け付けることにいたしました。

 

1月下旬ころ出版され次第申し込まれた方には郵送にて発送いたします。本日は昨日申し込まれました方の整理の最中です。

 

昨日申し込まれた方にはお礼申し上げるとともに、発送が1月下旬になることをお許しください。なお、定価は5000円前後となりそう、と昨晩連絡が入りました。

カテゴリー : 一般 高分子

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2019.12/24 クリスマスプレゼント

今年内の出版を目指し準備を進めている本がある(先ほど出版社から発売が1月下旬になるとの連絡が入りました。申し訳ございません)。多くの方に読んでいただきたいので、可能な限り安く出版していただきたい、とお願いしているが、1冊4500円前後になりそうである。

 

本日弊社にお申し込みの方には、送料費込みで4000円で年明けに発送したいと思っています(注)。弊社としては赤字となりますが、皆さまへのクリスマスプレゼントです。

 

ところで、その本とは高分子の混練りについて経験知と形式知をまとめた内容で技術書です。当初その内容から一冊80、000円と言う意見もございましたが、社会への提案としたい気持ちもあり、可能な限り安くしてほしい、と出版社と交渉しました。

 

しかし、内容が技術書であり、巷の高価な書籍には書かれていない経験知が書かれているので読者が限られる、という理由でどうしても発行部数が少なくなり、価格を高くしなければ経営上難しい。

 

結局著者割引価格が決まらないまま現在に至り、弊社で赤字覚悟の本日限りの価格を公開した次第です。

 

内容は高分子の混練り技術ですが、専門外の方にもその香りを面白く読んでいただけるようセラミックスの話や、序文にはサイモンとガーファンクルやダスティンホフマンも登場する。

 

この本で目指したのは、高分子の混練り技術の教科書と同時にこの科学の時代に形式知ですべてを理解できない分野の存在を多くの人に知っていただきたい、という思いを伝えることです。

 

例えば2年前、大手で品質データの改ざん事件が相次いだのですが、なぜ気楽に現場で数値を捏造してしまうのかは、材料に詳しい人ならばすぐにわかると思います。

 

だから、材料に詳しい人が現場の管理者としていたならばあのような事件は起きなかったとも言えます。材料のことが分からず測定だけを行っておれば、捏造したくなる衝動が起きるのが高分子材料、という表現もできるかもしれません。

 

このような社会現象も懸念し、今回の高分子の混練りの本をまとめた次第ですが、内容が専門的になりすぎましたので価格を安くできないというパラドックスに陥りました。

(注)

弊社へ、住所氏名連絡先(Eメールアドレス)と混練りの本を4000円で購入したいと送ってくだされば、手続き方法を送付いたします。

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2019.12/20 言葉の難しさが技術を難しくする

混練の読みは、湯桶読みであれば「コンレン」であり、重箱読みであれば「コンネリ」である。

 

 

ただ物質を混ぜて分散するだけであれば、混合という言葉が存在する。混練は、混合と練りを行う操作であり、「コンネリ」のほうが読み易く意味も分かりやすい。

 

 

英語になると、MixingやKneading、Blendingなどの言葉が存在し、調べてみてみても明確な定義が無い。

 

 

Mixerが混練機という言葉として用いられ、押出機であるExtruderのカタログにTwin Screw Extruder が載っていた。二軸混練機が欲しいならば、そこから選ぶことになる。

 

 

中国Coperion社の技術者に、押出機ではなく混練機のカタログが欲しい、とホワイトボードに漢字で混練機と書いたら、同じ機械だと教えられた。

 

 

日本が中国から漢字を習ったときに押出機と混練機とは別だったのではないか、と質問したら、その時は機械が無かったはずだ、と真顔で答えられ、さらに通訳は笑っていたので、気にする必要のない差異なのだろう。

 

 

その他に、同じような形をしたバッチ式の機械でも、かたや加圧ニーダーと呼ぶが、バンバリー社の機械はバンバリーと呼ぶ。

 

 

しかし、ニーダーとバンバリーは動力の大きさで分けられる、という説もあるが、ロールと組み合わせて用いる装置をバンバリーと呼び、それ一台だけでゴムを練り上げられる装置をニーダーと呼ぶ技術者が多い。

 

 

あるニーダーメーカーの装置を借りたときに、バンバリー型ニーダーがあります、と言われた時には、少し頭が混乱した。

 

 

そのバンバリー型ニーダーは、紛れもなく全体の形はバンバリーであり、ロータの付け根の部分はドライシールで、加圧ニーダーと呼んでもよい装置でもあった。

 

このような言葉の氾濫もこの分野を難しく感じさせる。

 

用語の難解さから難しいと感じるのは、レオロジーも同様である。ただし、難解に見えるが、高分子鎖の絡み合いとその運動あるいは分子量と粘度の関係などから、情報を整理してみると「何となく」見えてくるものがある。

 

レオロジーは、混練で起きている高分子の現象を理解する時に役立つので努力して使えるようにしたい。

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2019.12/18 混練と時間温度換算則

温度変化で高分子は固体から液体まで状態変化をするのだが、レオロジーの現象論的な目的に温度は入っていない。

 

しかし、反応時間について温度をあげると短くなることを経験的に知っているので、レオロジーでは、時間と温度を変換できるのではないかというルール、時間温度換算則を取り入れている。

 

これは、周波数と温度の両方を変化させて粘弾性測定をすると、何万年という時間が必要となるデータが、実験室で短時間に得られる便利な方法である。

 

ここで、各温度のエネルギーに相当する高分子鎖の運動が起きていることを忘れてはいけない。

 

そこでは、結晶化や溶融という相変化、ガラス化という分子運動性の凍結などもこのルールとは無関係に起きる。

 

すなわち、ミクロの高分子鎖の運動からマクロの粘弾性の挙動まで、幅広いスケールで起きる現象を技術者が安心してシームレスに扱える完成された方法は、まだ存在しないので、形式知と経験知とをあわせて注意しながら混練プロセスの考察にレオロジーを活用しなければいけない。

 

それは、ダッシュポットとバネのモデルを紙に描きながらも、頭の中では高分子鎖のレピュテーション運動や局部の回転運動などを思い描くような方法である。このようにして高分子鎖のダイナミックな運動を夢想しながら混練の現象を眺めていただきたい。

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2019.12/11 レオロジーと不易流行

科学成立以前の時代に、日々の営みの中で自然界から有用な機能を人類が取り出して技術を開発してきた。この自然界と対峙する姿勢について不易流行という思想がある。

ニュートン力学は物体の変形を伴う運動について取り扱う時の、いつまでも変わることのない「不易」の形式知である。

高分子のレオロジーに関しては、ソフトマターの物理学という分野が誕生しており、これは新しく変化を重ねてゆく「流行」である。

ソフトマターの物理学が永遠性を獲得し、不易と一体になろうとしているのが現代のレオロジーである。

さて、質点系の力学とは異なる連続体の力学では、弾性体と流体を扱う。これはニュートン力学の後に誕生した形式知である。

過去の高分子のレオロジーでは、この形式知を土台に築かれている。そこには、高分子鎖一本一本の運動が表現されていない。

高分子にレオロジーを適用した初期の研究では、ダッシュポットとバネのモデルを使っている。ただし、このモデルによる体系化が形式知として破綻したとはいえ、高分子材料のマクロ的な側面、弾性変形と粘性に基づく現象が無くなったわけではない。

この方法は、高分子のミクロブラウン運動や塑性変形を無視できるマクロな時間スケールの現象を扱う場合に問題があったとしても、経験知として使用可能である。また、このモデルを使った説明は直観的で単純であるという長所がある。

すなわち、目の前の現象について自由に頭の中で高分子鎖をイメージし、過去のレオロジーの道具を用いてコンパウンドのおさわりをしながら、高分子の運動を感じる、というつきあい方が賢明である。

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2019.12/09 レピュテーション運動

身の周りで観察される高分子材料は、何らかの運動をしている。例えば、手元で操作しているプラスチック製のマウスの自由体積部分では、体温に相当するエネルギーで紐状の分子の一部が運動している。

 

そして、その運動はセグメントのミクロブラウン運動であったり、紐の末端あるいは側鎖基の回転運動だったりする。

 

また、高分子は、その分子の一次構造の方向に垂直な円盤を仮定して分子がうまくすり抜けられる直径を基準に考えた管の中を、あたかも蛇のごとく、一定の分子の長さを保ちつつ運動している。

 

この動きをレピュテーション運動というが、蛇やウナギの動きを想像すると少し不気味である。

 

このレピュテーション運動について次のような経験がある。すなわち、非相溶系のPPSと6ナイロンをカオス混合で混練すると相溶し、透明な樹脂液が混練機から吐出されるが、それが10年近く経過したら白濁してきた。

 

これは、カオス混合(非平衡状態)で一旦は相溶した組成物をTg以下に強制冷却して相溶状態のままガラス化しても、レピュテーション運動でゆっくりと平衡状態になろうとスピノーダル分解が室温で進行し、相分離した結果である。

 

この現象は、カオス混合装置の発明で得られた発見であり、21世紀になっても高分子分野ではこのような新しい現象が見つかる。形式知が完成していない分野では、過去の知の遺産の活かし方次第で研究開発の効率は変わる。

カテゴリー : 高分子

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2019.12/04 レオロジーという学問(2)

(昨日からの続き)そして、高分子材料というものをいろいろな角度から眺め、計算をしてきた実績がある。

 

形式知として問題があるかもしれないが、優れた研究者達による豊富な考察を経験知として借用したくなる魅力がそこにある。

 

現在の形式知で歯が立たない混練分野では、このような経験知でも構わないから少しでも「知識」を身に着けていたほうが、目の前で起きる現象に対して理解しやすい。

ラテン方格を使用した実験を行う時にも、制御因子の取り上げ方に、このような経験知の有無が影響を受ける。

 

すなわち、高分子の科学的研究には役立たないかもしれないが、ダッシュポットとバネのモデルによる現象の捉え方は、その限界を知ったうえで活用すると、実務では便利なツールとなる。

 

もう一つ高分子の理解を難しくしている原因をあげるとしたならば、レオロジーの教科書に書かれた説明である。

 

高分子を粘弾性体として捉える考え方は、弾性変形について固体力学の形式知を、粘性については流体力学という形式知を利用している。

 

この両者の形式知を動員して高分子の変形を考えようとしたのが、過去のレオロジーである。

 

しかし、困ったことに高分子には塑性という変形様式が存在する。金属やセラミックスにも塑性は存在し変形を考えるときの形式知が完成しているが、高分子ではこの塑性が分子1本1本の絡み合いや運動で引き起こされ、大変複雑な現象となって現れる。

 

それを解明しようとソフトマターの物理学が新たに提案されている。おそらく10年後にはこの形式知が反映された今よりもわかりやすいレオロジーの教科書が出てくるかもしれない。

 

今月下旬に発売予定の書では、このようなレオロジーの現状を考慮したうえで、混練を考えやすいよう高分子の運動に力点を置き、その考え方を説明したい。

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2019.12/03 レオロジーという学問

高分子へ導電性微粒子を添加した時に生じる体積固有抵抗の急激な変化について混合則を用いて考察を進めていた時代があった。

 

その後、浸透理論による考察すなわちパーコレーション転移の閾値を評価してその現象を理解しようとした変化以上に、高分子のレオロジーに関する研究の内容は20世紀末に大きく変わった。

 

そもそもレオロジーとは、物質の変形及び流動一般に関する学問で、その現象論的目的は、応力(力/面積)と歪(変形量/元の寸法)と時間(周波数=1/振動数)の関係を調べることにある。

 

ところが、高分子の融体は、原子が共有結合でつながった紐状の分子、それも長い分子や短い分子、さらには枝分かれした分子など様々な構造の分子を含んでおり、それぞれの構造の制約を受けながらその場のエネルギー状態に応じてそれらが運動している複雑な物質である。

 

すなわち、一組成の高分子であっても分子一個一個に着目すれば多成分系であり、さらに、その運動を考慮すると分子量や分子の形態に基づく分散を考慮しなくてはいけない多分散系である。

 

そのような複雑な状態の物質が引き起こす現象をダッシュポットとバネのモデルを組み合わせて解析していたのだから、説明できない現象が出てきたとしても当然であるが、形式知としてこのような事態は許されない。

 

まず、高分子のレオロジーについては、今新たな研究が展開されている状況である、という認識を持つ必要がある。

 

すなわち、レオロジーの教科書を読むと粘弾性体についていろいろと難しい理論や計算式が並んでいるが、それらを無理に理解する必要はなく、とりあえず教科書全体を流し読みすればよい。

 

ダッシュポットとバネのモデルは、形式知として時代遅れのモデルであり忘れてしまってもかまわない。

 

ただし、かつて多くの研究者がこのモデルを使って高分子材料を理解しようとした知の遺産と認識し、経験知としてうまく生かして使おうという努力は無駄ではない。

 

このような表現をすると叱られるかもしれないが、そもそも、以前のレオロジー研究者は、ダッシュポットとバネのモデルをいろいろ組み合わせて現象を再現しようと試行錯誤していた。

 

すなわち、それは、あたかも手探りでモデルを探していたような「おさわり感覚」の学問である。

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