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2020.02/20 サーキュラーエコノミー(CE)

昨晩高分子同友会月例会で物質材料研究機構名誉研究員原田幸明氏の講演があった。タイトルは「ISO化されるサーキュラー・エコノミーの動向と資源効率・物質循環」である。

要点は以下である。

 

1.世界は資源効率を考慮した循環型社会へ向かっている。

2.1の流れの中でサーキュラーエコノミー(CE)の動きが欧州から

提案され国際標準化として進められようとしている。

3.CEは欧州で始まり、資源効率を高めることが可能とわかってきたので

Paas(Product as a Service)やシェアリングなどの「モノ」から「コト」

への転換とそれを支えるプラットフォームの形成の方向が見えてくるに

つれ、新しいビジネス形態としてグローバル展開され始めた。

4.日本では、「モノ」つくりの国であり、CEをどのようにとりこんでい

くのかが課題。

 

すなわち、リサイクルや天然資源の活用は過去の概念となり、欧州ではサーキュラーエコノミーという新たなパラダイムが動き始めている、そしてすでにISO化の動きまでも出始めた、ということだ。

 

講演者は金属材料関係の専門家で高分子材料の問題についてはそのような視点から考察されていたが、CEを考慮するとこれまでの材料技術についてその設計方針にも影響を受ける。

 

例えば混練プロセスに対する考え方である。カオス混合技術について高分子学会技術賞の推薦を受けたときに分子量低下とか材料の焼けなどと知ったかぶりの質問が飛び、結局技術賞を逃がしたが、このようなプロセシングにおける高分子材料の変化に対する研究テーマがアカデミアの重要テーマになるのではないか。

 

高分子の劣化に関して、アカデミアの出した結論は一次構造の変化だけである。実際のプロセスの中で劣化が起きない条件や、あるいは耐久試験において試験片の内部の高分子の酸化度合いなどに議論が至っていない。

 

力のある企業ではそのような実験をしているが、データは公開されず、結果として適当な知ったかぶり意見が技術賞の審査で通ったりする。迷惑なことだ。

 

高分子材料の成形体については金属材料と異なり、ダイレクトリユースやリマニュファクチュアリングは難しい。練り直し程度の作業がどうしても必要になる。その時に機能維持をしたまま混練ができるかどうかは重要である。

 

さらには、射出成型機を改良し、そこに簡単な混練機能を付加することも考えられる。例えばカオス混合装置と射出成型機との組み合わせだ。このようなアイデアを練り上げるためにもポリマーの混練り活用ハンドブックはためになるので弊社へ問い合わせていただきたい。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報 高分子

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2020.02/19 MIの事例1

界面活性剤について教科書を読むとHLB値という値でその機能及び効果が決定されると書いてある。

 

HLB値とは、親水基と疎水基の比率を数値化したものであり、界面活性剤の界面効果を科学的に考察するときによく用いられる。

 

これは間違いではないが、等しいHLB値であっても界面活性効果の異なっている場合があることについて教科書には書いてない。

 

例えばポリウレタン発泡体の製造に界面活性剤が使用されるが、HLB値が等しくても代替できないケースが多い。すなわち、発泡反応における界面活性剤の機能がHLB値だけで決まらないことを示している。

 

今界面活性剤のカタログが手元にあるならば、カタログに書かれた界面活性剤の物性値を見ていただきたい。HLB値以外に曇点とか様々な物性値が書かれている。

 

このカタログデータについて主成分分析を行ってやると、第3主成分までで80%以上説明できるような結果が得られ、第一主成分の寄与率は60%を超える。

 

この時第一主成分はHLB値と大きく相関しており、第二主成分は曇点などと相関している。

 

この第一主成分と第二主成分の象限に主成分得点をプロットしてやると、第一主成分近くに分布するサンプル群以外にいくつか第一主成分の軸から外れた群が観察される。

 

これは界面活性剤の等しいHLB値の対であっても、同じ界面活性効果を示すとは限らないことを表している。詳しくは3月31日のセミナーで解説する。

カテゴリー : 一般 高分子

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2020.02/18 マテリアルズ・インフォマティクス(MI)

産業革命以降の技術開発を支えたのは科学であることを否定する人はいない。ただし、科学の方法が登場する以前から技術開発は行われており、それゆえ論理学をベースにしたパラダイムでその開発スピードが加速された、と科学の役割を捉えることができる。

 

このパラダイムについては、名探偵ホームズが愛読された時代が示すようにすぐに一般にも受け入れられ現代は科学全盛の時代である。

 

一方40年前に登場した刑事コロンボでは事件解決にホームズとは異なるパラダイムが存在することを示しただけでなく、物語の最初に犯人と事件の情報を視聴者にすべて示すという手法で、ホームズとは異なる事件解決のプロセスを楽しませてくれた。

 

実は、マテリアルズインフォマティクスは、この刑事コロンボの登場と同様に捉えると理解しやすい。

 

すなわちホームズはベーカー街221Bで仮説を設定して事件に臨むスタイルを特徴としたが、コロンボは泥臭く情報を集めて事件を解決した。

 

マテリアルズインフォマティクスによる材料設計では材料データベース(情報)が問題解決の最初に位置し、その後のデータ処理に雀の巣のような頭(コロンボは癖毛)ではなくコンピュータを用いるのだ。

 

その用い方も従来の仮説を検証するといったパラダイムと異なり、シミュレーションで機能を確認するというパラダイムとなっている。

 

3月31日開催のセミナーでは、マテリアルインフォマティクスを実務に導入するにあたり、簡便に利用できる多変量解析やタグチメソッドの概略を「わかりやすく」説明するとともに、それらを用いて材料設計を行ってきた演者の事例を中心にマテリアルズインフォマティクスにより開発効率が加速される実感を伝授する。

 

無機材料から有機材料まで実用化した経験から幾つかの事例を選び、材料技術者以外の方にも参考になるセミナーを目指す。詳しくはお問い合わせください。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報 電気/電子材料 高分子

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2020.02/17 高分子のプロセシング

材料について学ぼうとするときに、そのプロセシングから勉強する方法がある。また、この方法は材料について詳しく勉強しようと総花的教科書を購入するよりも材料の特徴を手っ取り早く理解できる。なぜならプロセシングは、材料の特徴を活かして組み立てられているからである。本書はこの点を意識して書き上げたので、高分子についてその特徴を短時間に学ぶことが可能である。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2020.02/13 リン系難燃剤

リン系難燃剤には、大別すると低分子リン酸エステル系とその他に分かれる。その他はさらにホスファゼン系とその他縮合リン酸エステル系に分けることが可能である。

 

以下はポリエーテル系軟質ポリウレタン発泡体で実験を行った結果であるが、硬質ポリウレタン発泡体でも同様の結果になることを確認している。ただ、硬質ポリウレタン発泡体では、残炭率とLOIとの相関は少し悪くなる。

 

さて、低分子リン酸エステル系難燃剤は、600℃まで難燃剤だけを加熱するとほとんど残らない。縮合リン酸エステル系難燃剤でもほとんど残らないが、一部構造により600℃における残存量が多くなる化合物も存在する。

 

ホスファゼンは、600℃までの加熱であれば、P=Nの構造に相当する重量が残ってくるから面白い。

 

この実験結果は、ポリウレタン発泡体に難燃剤として添加してもそのまま反映される。すなわち、極限酸素指数(LOI)と残炭素率との間の相関を調べると、リン系難燃剤の3タイプに分かれる結果が得られる。

 

すなわち、残炭素率とLOIとが相関しないグループと、残炭素率とLOIが相関するグループとに分かれ、後者はさらに残炭素率の違いで二つのグループ分けが可能である。

 

以前ここで書いたように、600℃までの加熱でリン酸エステル系難燃剤はオルソリン酸に熱分解して揮発しているのでこのような結果になる

 

そこで、ホウ酸エステルと一緒に混合して同様の実験を行うと、反応してボロンホスフェートとなるのでリン酸のユニットが600℃まで残っている。

 

これは40年前に発見した難燃剤システムで、高分子学会の崩壊と安定化研究会で発表したら反響が大きかった。無機材料を専攻した技術者にとっては大したアイデアではなかった。

 

新入社員時代に始末書を書かされたが、その始末書に新技術として提案した内容がこれである。

 

カテゴリー : 高分子

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2020.02/12 高分子を学びたい方へ(混練の本)

高分子について学びたいと思ったときにどのような本を読んだらよいのか。高分子について絵でわかりやすく解説した本が出版されている。しかし、そのような本で欠けているのは、プロセシングの視点である。高分子は、プロセシングで高分子らしさを見せる。だから最初に混練について何か1冊読んでおくのは参考になる。本書は高分子が初めての方にもそれなりの知識が得られるよう工夫しています。定価4800円。弊社にお申込みいただくことも可能です。お問い合わせください。

カテゴリー : 高分子

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2020.02/10 高分子の熱重量分析(6)

リン系の難燃剤では240℃を超えたあたりでオルソリン酸の揮発が観察されるときがある、と以前書いた。

 

ホスファゼンではこれが観察されない。また、実際にオルソリン酸が揮発する難燃剤でそれを補足できるかどうか実験を行ったところ、10℃/minの昇温速度で270℃を過ぎたあたりの温度領域で発生していることを40年前確認している。

 

この当時は、アカデミアよりもアカデミックな研究を行っていた部署に配属されていたので、丁寧な実験データを採取していた。

 

ゆえに熱重量天秤の校正なども真面目に行い、機種間の差異を評価したりして、真空理工の熱天秤以外使用しない方針にしたことを記憶している。

 

真空理工の熱天秤では、TGA計測中の発生ガスを補足する実験も行いやすかった。特製注射針を突っ込んでガスを取り出すだけであるが、他社の熱天秤ではこのような作業でもやりにくい構造だった。

 

真空理工の熱天秤はシンプルな構造で実験が容易だった。TGA測定中のサンプル状態の観察もやりやすかった。とにかく真空理工の前園社長がその道の専門家だったので研究者のことを配慮して設計していたのだろう。

 

とにかくTGAの計測で難燃性ポリウレタンに用いるリン系難燃剤には2タイプ、細かく分類すると3タイプ存在することがわかった。

 

また、大八化学工業が頑張っていた時であり、この研究を行っている時にも協力してくれて、難燃剤の細かい分析情報を提供してくれた。

 

最近はあまり細かい分析データを質問しても教えてくれない材料メーカーが多いが、昔はどこも丁寧に分析データを教えてくれた。

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2020.02/07 混練の本について

今回ゴムタイムズ社から発刊された混練の本は学術書ではない。当方が2005年にPPS無端ベルトの開発を担当したときに、たった半年でコンパウンディングプラントを立ち上げた。その時に活用した知識で構成した内容である。

当時一流コンパウンドメーカーからコンパウンドを購入し、押出成形で半導体無端ベルトの開発が進められていた。

しかし、一流メーカーの混練技術者が開発したコンパウンドでは歩留まりが上がらず事業に失敗すると思われたので、コンパウンドの改良を一流技術者にお願いした。

その時に一流混練技者から「素人は黙っとれ」と言われたので、しかたなく、ド素人の当方が10万円前後の混練の本を数冊買い込んでコンパウンド工場を建てるために勉強した。

しかし、せっかく買い込んだ高価な本から得られた知識では、改良されたコンパウンドを生産できる工場を生産できないという問題に遭遇したのである。

高価な混練の本に書かれた形式知を駆使して技術サービスしているのだから、一流コンパウンドメーカーの技術者は優秀だ。しかし、残念なことにお客の問題解決ができない。

ドラッカー流にいえば、「困ったことに優秀な人がしばしば成果を出せない」状態だった。すなわちコンパウンドの何が問題であるのかさえも高価な混練の本は教えてくれなかったのだ。

具体的には、分配混合と分散混合で混練について論理展開する従来のパラダイムでは、パーコレーション転移を安定化するために何をしなければいけないのか、という問題について明らかにできなかった。

そもそも混練とは、高分子を混合し練り上げるプロセスである。そこで問題となるのは、高分子のレオロジーであり、相溶現象であり、諸々の高分子ゆえに生じる現象である。

これはゴム会社で初めて混練を学んだときの指導社員の言葉だ。分配混合や分散混合によるパラダイムとは異なる世界である。

高価な本を読み、巷に常識となっている混練技術の問題に気がついた。すなわち、そもそも高分子のプロセシングとして考察するためのパラダイムがおかしい。

そこで、とりあえず当方が学んだ混練のパラダイムを公開するために本を書いてみた。混練技術者だけでなく、広く高分子の実務に関わる方にも読んでいただきたい。

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2020.02/06 高分子の熱重量分析(4)

高分子の熱重量分析を材料の評価ルーチンとして行い、データ観察を行っていると面白いことに気がつく。

 

例えば、窒素中と空気中の評価結果では、空気中の重量減少速度の方が早いと思いがちだが、これがある温度領域では逆転する現象が観察されたりする。

 

そのような場合に雰囲気ガスの流入速度を変えてやると、窒素中では浮力による誤差が観察されるだけだが、空気中では重量減少速度が変化する。

 

これは高分子の熱分解に酸素が関わっているためで、リン系の難燃剤が添加されていると表れる。

 

何が面白いのかと言うと、単純に右から左へ受け流されるような変化とならない場合がある。このような現象に出会うと、ムーディー勝山の歌について別の側面の面白さが見えてくる。

 

ムーディー勝山の持ち歌には、上から下へ落ちてゆくものを見る男というのがあるそうだ。聞いたことは無いが、右から左にしても上から下にしても、このような取るに足らない点を笑いとする発想に感心する。

 

エントロピーは、自然現象においてただ増加するだけである。これが減少するようなことは、自然現象で起きない。自然界でエントロピーはただひたすら増加する。

 

しかし、化学反応では、触媒が存在すると反応機構が変わり、見かけの活性化エネルギーが下がり、左から右へ変化を促す場合が出てくる。

 

これが不触媒になると、左から右に進行していた反応を止めたりする。リン系の難燃剤は、270℃から350℃の範囲の温度領域で、高分子の脱水反応を促し、二重結合を生成しその後のチャー生成を促進するように働く。

 

しかし、リン系難燃剤の中には、簡単にオルソリン酸を生成して、低温度から活発にこの反応に関与する化合物からそうでない構造の化合物まで存在する。

 

問題となるのは、オルソリン酸が240℃前後に沸点を持っていることだ。すなわち反応に関与しているオルソリン酸は240℃前後で揮発してゆかないが反応に関与していないオルソリン酸は揮発するので、重量減少カーブに影響する。

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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2020.02/02 販売好調混練の本

弊社担当分を売り切ることができました。サービス期間にお申し込みされた方に感謝いたします。来週から書店に並ぶかと思われますが、本体4800円です。ゆえにご購入時には5280円となります。弊社でも購入可能ですのでお問い合わせください。但し郵送料180円必要ですの5460円となります。

180円必要となりますが、おそらく書店に注文するよりも弊社に発注をかけられた方が速いかと思います。

カテゴリー : 一般 宣伝 高分子

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