単一組成のフィルムのインピーダンスを計測している限りにおいては面白い計測ではない。しかし、表面処理されたフィルムや成膜に失敗したフィルムなどを計測すると途端に面白いデータが得られ始める。
主に低周波領域で周波数分散に異常が観察されるようになる。ここでは書きたくないような面白い現象も観測されるが、その中でパーコレーションとの関係を示すデータについて経験談を書く。
酸化第二スズゾル(以下スズゾル)をPETフィルムにバインダーとともに塗布すると、パーコレーション転移の閾値以上の添加量で帯電防止層ができる。
面白いのは、厚みが1μmもない帯電防止層の表面比抵抗が10の10乗から11乗程度の高抵抗であってもタバコの灰付着テストに合格する。このとき、スズゾルの体積分率とインピーダンスの変化の関係を整理すると面白い。ここであまり書きたくないが、すでに国際会議等で発表した内容もあるのでそれについて説明する。
インピーダンスの絶対値の周波数依存性データで低周波領域に異常分散が現れ、それがスズゾルの体積分率と相関する動きをするのだ。すなわち、インピーダンスの絶対値を用いるとパーコレーション転移の閾値を容易に検出できる。
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負の誘電率の材料が透明ならば負の屈折率となるはずだ。また、中間転写ベルトの開発で見つけた現象から、高分子の変性で負の屈折率という機能を実現できる可能性がある。
今から30年ほど前の写真会社へ転職したての頃に福井大学工学部で客員教授を拝命したが、そのときパーコレーション転移とインピーダンスの低周波数領域における異常分散について研究している。
その時に評価したサンプルにも負の誘電率を示すものが見つかったが、研究対象から外している。研究の目的がたばこの廃付着テストに関する研究だったためである。
さかのぼること40年前の1980年代にSiCウィスカーを2000℃以上に加熱しカーボンナノチューブを合成している。ただこの時はカーボンナノチューブを合成するのが目的ではなくSiCウィスカーの線膨張率を測定するためだった。
研究目的とはずれた珍現象や新現象はこのように研究目的と異なる場合に除外される。ノーベル賞でも取る目的ならば鵜の目鷹の目で新現象を追い求めるが、技術者が欲しいのは新しい機能である。
今ある目的のためにこの負の誘電率という機能に着目し趣味の研究を開始したが、つまらない結果しか出ていない。いざその目的で制御して現象を起こそうとすると難しい。久しぶりに眠れない日が続くが、年齢を考えると無理もできない。
若い時ならば過重労働を厭わず、無茶な仕事を行っていたが、今は眠くなったら寝る、という生活である。これが老いだと自覚したのだが、昔でもつまらない会議の時には居眠りをしていたので、あながち老いのせいにはできないかもしれない、と若い時の業務姿勢を反省している。
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今年はトヨタのベア非公開が話題になり、自動車産業は100年に1度の大変革期と言われている。衆知のように自動車エンジンがモーターに切り替わる未来が具体的に見えてきたからだ。そこで昨日書いたようにトヨタはHV特許無償提供という思い切った戦略をとった。
EVでは、複雑なエンジンを組み上げる技術力が無くても自動車を製造できるので、多くの異種産業からの参入が今後予想される。それだけではない。
ガソリンスタンドも今の様な大規模のスタンドは不要になる可能性があり、それこそセブンイレブンなどのコンビニの駐車場でも充電スタンドを設置可能で、自動車会社よりもガソリン業界はもっと深刻である。
この10年ソーラーパネルを設置する家庭が増えたが、休耕田を利用した発電事業が再度見直される可能性もあり、自動車産業以外の周辺のビジネスチャンスが広がっている。
当方が生きている間にガソリンエンジンの車が無くなる可能性も出てきて、今誰も気がついていない新規事業ネタを考えるのは楽しいことである。
最近のモーターショーでは、自動車がインターネットとつながることがテーマとなり、自動運転までその中に取り込まれていった。これらの動きは、ガソリンのいらない車でも状況は変わらないが、充電ステーションの問題は、充電規格にとどまらず、考えなければいけない課題が多い。
例えば10台の車へ一度にガソリンを給油するときにガソリンスタンド外への影響は無いが、一か所で10台同時に充電した場合には、どのようになるのか。また、確実に今よりも必要な電力は増える。現在の発電設備で間に合うのかどうか深刻な問題である。
一方で、電気自動車の普及は、ニュースになっているほど早く進まない、という見方も存在する。また、トヨタのように進んでほしくない、とあからさまに表明しているメーカーも存在する。
ゆえに、当方はどちらかと言えば、一般に言われている電気自動車の普及スピードに対して懐疑的な見方をしている。
確かに化石燃料の消費は抑制しなければいけないが、火力発電が未だ主流の時代であれば、HV車が現実的である。だからと言ってHVが主流になるとは考えにくい。
燃料電池という可能性も考えられ、中国では燃料電池車に対する関心が急速に高まっている。恐らく今世紀は自動車のエネルギーが多様化する時代となるのではないか。
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連続体モデルの理論解析からプラス電荷とマイナス電荷のズレ(分極)が単一方向にそろっている状態であれば負の誘電率が出現するといわれているが、この場合に分極ドメイン構造のほうが安定なので負の誘電率発現が抑制されるという。
ところがこの解析結果で分極ドメイン構造が生じなければ、あるいは何らかの理由で分極ドメインが不安定になったなら、負の誘電率が現れることになる。
例えば、導電体や半導体のドメインが生じた場合には電子の拡散速度というものは早いので負の誘電率が現れる可能性がある。
実用化されているPPS製中間転写ベルトの誘電率を測定すると正であったが、実用化過程で得られたベルトの中には負の誘電率を示すものが存在した。
用いている導電性カーボンはすべて同じロットの製品であり、異なるのはマトリックスの配合だけである。すなわちPPSへ添加されたポリマーの種類や混練条件で負の誘電率を示すベルトが得られたことを示している。
誘電率が正のパラメーターであることは電磁気学の教科書に書かれているが、計測でこのような負の誘電率が現れる現象については、現代のホットな話題の一つだ。
負の誘電率が存在すれば、負の屈折率も可能性があり、世間では光学分野の関心が高いようだ。永らく屈折率を正として扱い、光学の体系が作られてきたが、その再構築を迫る現象のためだからだ。
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昨日この話題を書こうとカレンダーを見たらエイプリルフールなのでやめた。新元号の発表はエイプリルフールと関係なく行われているが、誰もエイプリルフールだと騒がない。
すでにスーパーコンピュータにより強誘電体薄膜が負の誘電率を示すことが、最近シミュレートされている。
誘電率は正のパラメーターとなるのが普通であるが、30年ほど前に電気粘性流体の開発を担当した時に負の誘電率が測定されてびっくりした経験がある。
導電性微粒子にシリカの超微粒子を傾斜組成で分布させて表面から内部にかけて10の11乗Ωから10の4乗Ωまで体積固有抵抗の値を変位させた粒子や、
超微粒子の粘土鉱物の層間にグラファイトを挿入し、それを分散した微粒子、すなわちあたかもナノオーダーのコンデンサーが分散したような微粒子を合成して測定した時である。
誘電率は正だから測定法がおかしいのだろう、と周囲の研究者に笑われたのでそのままにしていた。しかし、転職した会社で中間転写ベルトの開発を行っていた時に、また負の誘電率と遭遇することになった。
世間でもメタマテリアルで誘電率が負になる、ということで2000年以降指数関数的にそのような論文が増加しているのでおどろかず、じっくりと頭の中で温めてきた。
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高分子の混練は、混練機で発生するエネルギーを高分子が受け取り発生する剪断流動と伸長流動により進行する。
ここでよく知られた伸長粘度は剪断粘度の3倍と言う法則(Trouton則)があるが、実際の高分子の混練ではこの法則が成立しない。
その原因は伸長流動に弾性項も含まれるためだが、これはゴムひもを引っ張ってみれば簡単に体感できる。
ゴムひもは加硫されている高分子だから、それは違うだろう、などという細かいことは考えず、少し引っ張るだけでも伸長流動が単純に粘度だけでは説明がつかないことに気がつく。
この段階で、さらに細かい突っ込みを言いたくなる人は、この先を読んでいただく必要はない。
なぜなら科学の難しい話をするつもりはなく、現象をうまく捉えるコツをお話しするのが目的だから。
世の中にはいろいろな人がいる。教科書に書かれていることは絶対に正しくて、それに反したことをいう人を無知と決めつけるような人から、最初から教科書など信用せず、経験こそ命、といった職人肌の人までさまざまである。
これは、知識に対する認識の違いから来ていると当方は考えているが、ある現象に対峙したときにこの認識の違いが大きく影響するから技術開発において問題となる。
剪断流動と伸長流動について、前者の理解についてはそれほど認識の違いでばらつかないが、後者については弾性項の存在を意識するかどうかで混練で引き起こされる現象から機能を拾い上げる能力に差ができる。
すなわち、現代でも科学で十分に説明しきれていない分野について、過去の形式知の延長線上で現象をとらえようとする姿勢と、過去の形式知を批判的にとらえ、目の前の現象との比較に努力する姿勢では、発明や発見の機会に大きな差が出る。
手元のゴムを引っ張るという作業においてもそこに現れる現象に過去の形式知と異なる知を見出せるかどうかは、その作業に対する姿勢で決まる。
その姿勢に対して、過去の形式知を振り回して批判ばかりするような人には、遭遇した現象から新たな機能を拾い出せない。これについてはドラッカーも「頭の良い人ほど成果を出せない」とばっさり切り捨てている。
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本日は、高分子の難燃化セミナーを品川区大井町きゅりあんで行います。ところがセミナーの前にショッキングなニュースが飛び込んできまして、あせりました。このショッキングなニュースとは、大塚化学がホスファゼンの国内販売を中止する予定というメールである。
大塚化学は、ホスファゼンが無機高分子として注目されていた1980年代初めから事業を行ってきた企業である。おそらく会社のホームページでも詳細発表があると思われるので、この件はここまで。
高分子の難燃化技術においてホスファゼンは臭素系難燃剤よりも環境負荷が小さく重要な素材である。しかし、価格が高いので、1980年代に多くの会社が参入したにもかかわらず、現在国内で事業を展開しているのは3社だけである。
当方はホスファゼンについては、大塚化学が研究開発をスタートする以前から大学で研究をしていたその道の専門家の一人であるが、ゴム会社でこの化合物で変性した難燃性軟質ポリウレタンを開発して始末書を書いた実績がある。
始末書の原因は、試作がうまくいったために上司が川下部隊へ喜んで報告したためだ。当時ホスファゼンが市販されていなかったために、それが大問題となった。
市販されていなかったホスファゼンを当方は自分で合成し、上司もそれを見ていたはずであるが、企画提案から試作成功までが4ケ月という短期間だったために、当方が合成していたことなど忘れてしまったようだ。
もっとも当方はホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームという魅力的な発明のために昼夜実験を行い、ほとんど徹夜状態で工場試作まで持ち込んだのだが、工場試作を決定したのは上司である。
しかし、なぜか試作を行った責任が新入社員にある、ということで、当方は最初で最後の始末書を書くことになった。ただ、この始末書では普通に書いては面白くないので、ホウ酸エステル変性軟質ポリウレタンフォームの提案を始末書で行っている。
面白いのは、ホウ酸エステルも市販されていない化合物だったのだが、ただホウ酸とジエタノールアミンをかき混ぜているだけでできる、ということで企画が採用された。
矛盾を感じつつもこの仕事も一生懸命過重労働で半年もかけずに試作を成功させて、そして実用化された。ちょうどそのころ大塚化学よりホスファゼン開発のニュース発表があった。
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セラミックスや金属材料は、おおざっぱに言えば結晶でその物性が決まる。非晶質であるガラスについては、長い間研究されてきたが、結局非晶質体それぞれの組成に応じた研究が展開されている。そして非晶質体の組成が分かると、物性予測がほぼできるところまで科学のレベルは来ている。
ゆえに結晶を非晶質相でかためたセラミックスでも結晶と非晶質相の組成が分かるとほぼ電気物性ならば予測がつく。力学物性ならば、欠陥の有無や分布からおおよその予測がつく。
しかし、高分子材料では無機材料のようにはいかない。無機材料でも実際は先に述べたような簡単な問題ではない、と言われる研究者がおられるかもしれないが、高分子材料とセラミックスの両方を研究した経験から、予測の困難さでは、高分子材料がセラミックスよりもけた違いに困難である。
例えば高分子材料の結晶について知見が得られたからと言って、その電気物性まで予測できない。不純物の影響や、高分子非晶質相の影響がかなりあるからだ。無機材料にも不純物の影響はあるが、高分子材料では不純物の影響の規則性や再現性までない。
無機材料の結晶に不純物をドープして格子欠陥を造ることができて、その電気物性を計測し、格子欠陥から電気物性を論ずることは比較的容易だが、高分子では、静置場でできる結晶はすべて球晶であり、その球晶の構造は、ラメラと非晶質相の集合体で何が何だか分からなくなる。
結晶成長の速度論すら無機結晶のようにきれいにいかない場合が多い。エチルシリケートとフェノール樹脂で均一に混合されたシリカとカーボンの前駆体を製造し、それを用いてSiCの結晶成長の速度論を展開すると、反応の最後まできれいにアブラミ式に載る。
これは当方の学位論文の半分を占めている成果なので希望者には学位論文の要約を掲載した機能材料の別刷りをお渡しできる。この別刷りに書かれたグラフのきれいな直線を見てほしい。しかし、高分子の球晶についてアブラミ式で解析すると途中で直線がおかしくなってくる場合がほとんどだ。
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高分子の帯電防止技術同様に添加剤の配合技術が重要な分野として、高分子の難燃化技術がある。下記予定でセミナーを行いますので、お問い合わせください。
高分子の難燃化技術は、帯電防止技術と異なり、偶然なんとなく難燃性が付与されることはないので薬物依存状態にはなりにくいが、それだけに正しい知識が無いと対策が難しい。
<セミナーのご案内>
日時 2019年3月29日
場所 大井町きゅりあん
<内容>
高分子の難燃化を科学で体系化するのは難しいですが、アカデミアのチャレンジ結果も出そろい経験からおおよその体系が見えてきています。混練技術にまで遡及し、経験知による体系を提示します。
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高分子成形体の帯電防止は、数値でスペックを決めないと薬物依存状態になる。なぜなら、単なる離型剤でも帯電防止効果が出る場合があり、このようなケースでは、製品が市場に出回ってから帯電故障が発生したりすることがあるので大変だ。
すなわち、たまたま離型剤の帯電防止効果が原因で製品の帯電故障が隠れていた場合、市場で問題が発生すると、もぐらたたきで他の添加剤を添加して問題解決に当たったりする。
このような対応の仕方をしていると、そのうち二種類三種類と添加剤を足してゆくことになる。実際にそのような状態になって品質対応に追われている現場を見たことがある。
このような安直な問題解決のやり方をやってはいけない。帯電故障については市場で発生している問題について、現象を確認しながら製品品質として目標とすべき仕様について数値化をするべきである。
この時表面比抵抗がよく用いられたりしているが、この表面比抵抗について悩ましい問題が存在する。すなわち、電子伝導性の物質で帯電防止をしている場合には悩まない場合もあるが、イオン電導性物質を帯電防止剤として用いているときには誘電緩和により、表面比抵抗のデータをどのように収集するのか悩むことになる。
また、湿度依存性について知識があればよいが、無い場合には測定雰囲気によるばらつきに悩まされることになる。離型剤で偶然帯電防止効果が得られた場合など湿度を変えて表面比抵抗を計測することをお勧めする。
帯電防止についてスペックを数値化せずやたら添加剤の添加効果だけ追っかけていると薬物依存になりやすいのが帯電防止技術である。薬物依存はピエール瀧だけの問題ではない。科学的に現象を把握しようと努めず安直な姿勢の材料開発シーンでも起こりうる。注意が必要だ。
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