カオス混合機の見積もりのため、昔福井大学客員教授を務めた時期に、大学院で学んでいた中国人学生の勤務する金型メーカーにお願いしてみた。
詳細見積もりを見て驚いたのは、日本と変わらない加工費となっている部品と日本よりも安い価格に見積もられている部品とが存在したことだ。
いろいろ調べてみると、旋盤ですべて加工できる製品は、日本と同じ価格のレベルか、あるいは構造が単純な場合に若干日本が安い。
NC工作機械を使用する製品では、日本よりもかなり安い。カオス混合機は設計形状を工夫し旋盤で全て加工できる場合には価格差は出ないが、特殊なカオス混合機はNC工作機械でなければ加工できないので、その価格差から金型加工における中国と日本の事情を知ることができた。
中国のこの金型メーカーは、日本の某電機メーカーも活用している中国でもトップの金型メーカーで、作業者は皆若く、NC工作機械も先端設備が入っている。
知人の説明では、弊社の紹介であれば、成形加工用樹脂金型も特別安価に提供できるという。
もし、射出成形メーカーで金型のコストダウンを考えられている方は一度お問い合わせください。この中国の金型メーカーをご紹介させていただきます。
カテゴリー : 一般 宣伝 電気/電子材料 高分子
pagetop
現象の概念化、そしてそこから機能を浮かび上がらせる方法は、その習慣化で容易にできるようになる。連想ゲームのように円滑にできるようになるとアイデアを考える時にも役立つ。なぜならアイデアを出す方法の一つにこの概念化がある。
故矢島先生のポリジメチルシランを用いたSiC繊維は、炭素繊維と同様の方法で繊維化が行われている。
これは、炭素繊維の製造プロセスを概念化し、そこで働いている機能、すなわち不活性雰囲気におけるポリマーの炭化機能、不融化処理の機能などを抽出する。その理解の後ポリマ-前駆体をポリアクリロニトリルからポリジメチルシランに置き換えて生まれたアイデアだ。
矢島先生のご研究を改めて概念化すると、セラミックスの組成を含んだポリマーを熱処理して高純度のセラミックスを製造するプロセスを思いつく。
ポリマーの高純度化技術は、1000℃以上の高温度で行わなければいけないセラミックスの高純度化技術よりも経済的にできる。
問題はポリマーを用いることの経済性であるが、これは低価格のポリマーを選択することで経済性を上げることが可能となる。
すなわち概念化して考えているときに、SiCだのポリジメチルシランなど具体的な組成は必要ではない。
概念化せず、ポリジメチルシランからSiC化する製造プロセスを眺めながら経済性を論じると、前駆体ポリマーの低コスト合成のアイデアを必死で考えることになる。
これに対して概念化した場合には、すべてのポリマーが対象になるので、アイデアをたくさん出すことができる。例えば安価なポリマーとしてフェノール樹脂は代表的ですぐにその高純度化のアイデアまで出てくる。
ケイ素原は、シリカゾルやポリエチルシリケートが高純度低価格な材料として候補アイデアになる。
このようにして故矢島先生の技術を概念化して捉え、セラミックスの前駆体ポリマーをポリマーアロイで実現するアイデアが生まれた。
ただし、非相溶系ポリマーアロイでは、大きなサイズのドメインで相分離する問題が生じる。この問題解決の手段としてリアクティブブレンド技術まで考えた。
概念化しない場合には、ここまで考えを発展できないが、概念化し、その後具体的にアイデアを展開した結果問題点が見つかり、新たなアイデアの展開を強いられることになりリアクティブブレンドに至った。
これを概念化によるアイデア抽出法の欠点とみるのか、新たなチャレンジの機会を生み出す方法と捉えるのかは、技術者の資質に依存する。
カテゴリー : 一般 高分子
pagetop
ゴム会社に入社した時に指導社員から混練の教科書を読まないようにと言われた。そして毎朝午前中その指導社員から経験知をいろいろ教えていただいたのだが、これは今でも感謝している。
10年以上前に豊川へ単身赴任し中間転写ベルトの開発を担当しなければいけなかった時に、何冊か混練の教科書を買い込んだ。無機材研の先生が高純度SiCの発明に対してゴム会社が無機材研に支払った特許料を小生にくださったので、専門の高価な本を購入することができた。
しかし、それらを読んでみて現実に起きている現象を眺めてみて、昔指導社員から指導されたことが正しかったことに気がついた。教科書の記述がおかしいのだ。また、混練分野の論文にはおかしな研究が存在する。
例えば伸長粘度が剪断粘度の3倍になるという理論は、まず実用的にはあてにならない。また、この理論を支えに実験を行っている論文があり、その考察では、剪断粘度はうまくシミュレーションにあってくるが、伸長粘度がシミュレーションからずれる、と述べている。
このようなことは昔からゴムの混練経験のある技術者には常識なことだが、それが21世紀に公開されている論文に改めて書かれると、一言突っ込みたくなる。伸長粘度には弾性項が含まれるが剪断粘度は粘度の項だけで議論できることを知っているとこのことを理解できる。
ゴーンも含めた日産の役員報酬の総額が30億円と株主総会で認められたのに、実際に役員へ支払われた総額が20億円という話よりも簡単である。剪断粘度には弾性項が含まれていないのにそれを弾性項の含まれる伸長粘度と比較しようというのだ。複素数になるから30-20=10という簡単な計算ではないが、Trouton則は正しいのか?教科書にも疑惑の目を向ける必要がある。
カテゴリー : 一般 高分子
pagetop
世の中すべてが科学的に説明できるわけではない。科学的に研究が行われていると思われている高分子の世界でも非科学的な実験が行われていることに研究者は気がついていない。
昔ものすごい光景を見た。ある部長がレオロジーで理論的に導き出したグラフに合うように部下にサンプルを作らせていた。
部下は、ロール混練条件をいろいろ変えて、なんとかグラフ上の点にあうようなサンプルを創り出した。すなわち配合が同じでも、プロセスが異なると物性が変化する高分子の特性をうまく利用し、上司の指示にうまく合うサンプルを創り出していたのだ。
これはサンプルの物性を測定すると測定値が再現するので捏造ではない。またロール混練条件を変えたと言っても、ナイフ作業や返しのテクニックでそれをやっていたのだから論文に掲載されない部分である。
グラフ上にプロットされたサンプルについて、すべて同じ条件で作った時にどうなるかとかいったことをその部長は問題にしなかった。ただご自分の理論に適合したサンプルができたことに満足されていた。
しかし、理論に合うサンプルを配合を変えることなく、プロセスの工夫で創り出そうと苦労していた部下の悩みなど無視していた。新入社員であった当方は、先輩社員のその悩みやボヤキを聞くことで、高分子材料におけるプロセスの役割を学ぶことになった。
高分子材料の物性は、主に配合とプロセシングで決定されるが、このワンマン部長は、プロセシングの寄与やそれを工夫する難しさには目をつぶり、自分の理論に合うように部下にサンプルを作らせ、その科学の成果を椅子に座ったまま吸い上げていた。この科学の成果が事業にどのように寄与しているのか不透明であったが、科学がやがて盤石な基盤技術を作り上げると信じられていた時代である。
これは「ゴーン=日産」という構図と似ていなくもない。ブランドへの寄与という名目で高い報酬がどんどん高くなるだけでなく、海外にゴーンの豪邸が作られていった状況は今後解明されると思われるが、事業に対して本当の寄与がわかりにくい「こじつけ」ともいえるような成果なり経費は不誠実なリーダーにより生み出される。
ドラッカーは、その多くの著書で誠実なリーダーを選ぶことの重要性をいつも述べていた。日産の事例は長期独裁政権は必ず腐敗するというよりも、事業において、不誠実なリーダーを選ぶな、という事例だろう。
カテゴリー : 一般 高分子
pagetop
自然界の現象から機能を取り出し、その機能の繰り返し再現性を確認してロバストを高める効率的方法の一つがタグチメソッドである。タグチメソッドではシステムの基本機能のロバストを改善できる制御因子を見出し、その基本機能の制御因子を最適化してシステムのロバストを改善する。
ここでいつも問題になるのがシステムの基本機能である。自動車であれば、その基本機能は、「止まるシステム」と「曲がるシステム」、「走るシステム」となる。今は乗り心地の悪い車は売れないから、ここに「乗り心地システム」も加わる。
自動車を商品として捉えたときに、そのほかの機能も考える必要があり、自動車というシステムが複数のサブシステムで組み立てられていることに気がつく。そして、このサブシステムを考えたり、それぞれのシステムについて基本機能が何かを考えるのが故田口先生が考えられた技術者の研究スタイルである。
転職してすぐに田口先生のご講演を直接拝聴する機会があった。そのときすでにタグチメソッドを導入されていた企業の方がしたり顔で基本機能を最適化したが、うまくゆかなかった、何故か、と質問された。このような質問に対して田口先生はひるむことなく一刀両断に、それは基本機能が間違っている、と応えられてそれ以上その質問を取りあおうとされなかった。
聴衆はその迫力に圧倒されたが、田口先生のこの迫力は一方で誤解を生んだ。システムにはたった一つの基本機能があり、その基本機能を最適化すればすべての商品品質項目のロバストが高くなる、とは田口先生がよく言われた言葉だが、これがタグチメソッドを難解なものとした。
設立初期に発行された品質工学フォーラムの雑誌に竹とんぼのシステムについて基本機能を考え、それを最適化してもうまくゆかなかった事例が載っており、その落ちが「だから基本機能は難しい」となっていた。タグチメソッドを推進されていた人たちも教条主義的にこのようなことを書いていたので難解さをますます加速した。
さてこの記事はどこがおかしいのか。小生は当時編集者に問い合わせたが、執筆者に問い合わせてくれ、となった。そこで執筆者に問い合わせたが、執筆者は複数の座談会のまとめだから、となり、あほらしいからそれ以上追及するのをやめた。
この裏話をいまここに書くのは、もう二十年以上前の話だから差支えが無いと判断し、正しい田口先生の考えを伝えたいからである。当時の教条主義的な、またこのメソッドについてある意味宗教のような指導をされた田口先生の取り巻きの功罪を指摘するためではない。
竹とんぼでもそのシステムは自動車同様に複数存在するのでたった一つのシステムで考えた基本機能の最適化で、とてもそれだけでよく飛ぶ竹とんぼになるとは思えない。竹とんぼは単純な形状であるが、自動車のように自力で動いているシステムだけでできているわけではないのだ。
飛び立つ瞬間に飛ぶ力を取得するシステムやそのエネルギーを元に回転して飛んでいるときに外力から受ける力をいなすシステム、そのエネルギーで自分自身を飛ばすシステムなど、プロペラ一枚の単純な竹トンボについて、まずそれを構成するサブシステムの解明が必要になる。そして解明されたそれぞれのシステムについて一つ一つ基本機能を考えなければいけない。
これが難しい作業なのであり、基本機能が決まってから、そのロバストを上げるためのタグチメソッドは難解ではないのだ。田口先生はこのあたりを、基本機能を考えるのは技術者の責任と明確に述べており、タグチメソッドと切り離されていた。
田口先生は多数の分野で活躍された経験から、当方がご指導いただいたときには、システムの具体的な話は技術者が考えた内容をそのまま受け入れるスタイルになっていた。そして基本機能を追求される問いを技術者に対してされていた。
当方は、この時、システムのとらえ方をサブシステムまで分解して考えなければいけないんではないかと質問したら、それは当たり前だ、と笑われた。先生は当方の無能を笑われたが、実はタグチメソッドの初学者が難しいのは、この「システム」という概念である。
QCではシステムをサブシステムに分解する方法を教えているが、田口先生はそれを知っている前提で話をされていたのだ。ここを理解できると基本機能が最適化されたときに商品品質のロバストが向上するという説明に納得できる。
また、プロペラ一枚の単純な構造の竹とんぼでも複数のシステムに分解しそれぞれの基本機能を最適化しない限り、ロバストを上げることができない。基本機能が難しいということを伝えようとした品質工学フォーラムの記事は、それを書いた人たちが、技術というものをよく理解していなかったため、おかしな内容になったと思われる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
高分子の概念について未だに高分子の科学的に定説となった分類方法が無い、という理由で研究途上と言える。当方が学生時代に重合様式から行われた分類方法を学んだが、それは有機合成高分子だけに適用できる狭義の分類方法だと気がついたのは大学院で無機材料の講座に進学したときだ。
4年生の卒論では、布施明のヒット曲でもある「シクラメンの香り」の主成分の全合成をまとめ、アメリカ化学会誌のショートコミュニケーションにそれが掲載された。しかし、教授が定年退官ということでその研究室が閉鎖され、学部学生は他の研究室へ変わることを余儀なくされた。
そこで同じ研究室にいた友人と相談し、大学院の入学試験では希望先に入れていなかった無機材料の講座へ進学することにした。大学側は後ろめたい気持ちがあったのか、すんなりとそれを認めてくれたが、その結果として、本来その講座で進学予定だった学生が他の講座へはじき出される事態も起きている。大学院では成績順に学生をとる決まりになっていたからだ。
今から思えばはじき出された学生にかわいそうなことをしたという思い出として思い出されるが、当時は進学予定にしていた講座をつぶされた思いの方が強かった。教授の権力闘争の結果といううわさもあったので、アカデミアというものにうんざりするとともに大学に対して学びの場という敬愛の思い出も吹っ飛んだ。
おまけに進学した講座の教授が有機合成に関し優秀な学生が来てくれた、と過大な期待をされて、とんでもないテーマを出してくれたので大変だった。指導してくださった先生は、さっさと投げ出して他のテーマをやらないと修論がまとまらない、と本音で親身に指導してくださったので、これまた議論の毎日だった。周囲からは喧嘩をしているように見えたらしい。
この先生、テーマを辞めろと言いながら、一方で当方の主張を聞いていてくださったようで、図書室にケミアブの最新版が届くと、いつも調べに行っていたことをある日気がつき、その教育者としての「愛」に気がついた。本当はやってはいけないことだが、ケミアブの記事の横に鉛筆で当方が読むべき記事に〇をつけてくださっていた。
最初誰がそれをやっているのか分からなかったので「公文書に鉛筆で書き込みをしている人がいるようだ」とその先生に話したら、図書室の美人に報告したほうがよい、と言われたのでその美人に報告した。彼女は、犯人はわかっているけど、というだけだった。
当方はこの質問をしたことを反省したのだが、この落書きのおかげでとんでもない研究テーマについて2年間に3報研究報告として論文発表出来て、修士論文をまとめることができた。
その修士論文では、Holliday博士の著書アイオニックポリマーに掲載された高分子の論文を紹介し、無機高分子という概念をホスホリルトリアミドの縮重合やホルマリンとの共重合を事例に展開している。新素材であるホルマリンとの共重合体についてはPVAの難燃化研究としてその機能確認を研究している。
合成反応を元に有機高分子の分類を授業で説明された高分子担当の教授は学会で少々有名な先生だったが、未来を見据えた研究者としての視点を持っていなかったという理由で落第点をつけたいと、大学院を修了するときに思った。また大学院でご指導してくださった年配の助手の方は高分子学会で無機高分子研究会をその年に設立されている。
高分子の分類については未だに定説が無いと思っている。Holliday博士のゆるい分類法は未来の材料開発を指向したときに役立つ分類法である。最近では西先生による高分子の作り出す構造サイズに着目した二次元の分類法が発表され階層構造の研究の方向性を導き出している。概念が研究の方向を導いた事例だ。
優れた研究者というものは新たなコンセプトで研究の方向性を指導できる研究者だと思うが、学生時代に授業を受けた先生のように研究者の肩書とその能力が必ずしも一致していない場合が時折あるのがいつの時代でも問題かもしれない。社会的に偉いと格付けされた先生による学生時代の授業を信じたまま卒業していたなら、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のポリマーアロイの開発など考えなかっただろう。
学内で無名の助手が教授よりも優れたコンセプトを持っているなどとは社会からは見えない。最近は整形美人が当たり前となり、男女もわかりにくくなった時代だから肩書などファッションと同じにとらえている人も多くなったのでそれほどの影響は無くなってきたのかもしれないが、昔は男と女が明確に線引きされていたように肩書は品質保証書のようなものだった。
カテゴリー : 一般 高分子
pagetop
高分子に微粒子を分散したときに微粒子のクラスター(凝集、つながり)が生成する。クラスターの生成確率は添加量により変化する。微粒子が真球であれば25vol%を過ぎたあたりから生成し、30vol%を過ぎるとクラスターの生成が激しく変化するようになる。
そして50vol%を過ぎたあたりから安定するようになる。これがパーコレーションという現象で、微粒子が導電性粒子であれば、30vol%を過ぎたあたりで急激に高分子材料の抵抗が下がる、すなわち電圧をかければ電気が流れるようになる。
電気が沁みだしてきたような現象なので、コーヒーを抽出する現象(コーヒー抽出機はパーコレーターと呼ばれている)と似ているのでパーコレーションと名付けられた。
このパーコレーション転移という現象は、粒子と高分子との相互作用が無ければ、例えばコンピューターでシミュレーションを行えば確率過程で進行する。すなわち真球の微粒子を高分子へ分散したときには30vol%前後から50vol%前後の領域で物性が大きくばらつくようになる。
数学者の間では1950年代にすでに議論されていた。この時はカリフォルニアの山火事の考察からだった、と言われている。すなわち山火事において木々のつながりがあるとそのつながりに沿って火が走るので、その現象解析にパーコレーションという概念が用いられその性質が議論された。
高分子材料の世界では、1990年前後までパーコレーションの概念は知られておらず、混合則で物性変化が議論されていた。パーコレーションを高分子材料の世界に持ち込んだのはゴム会社が初めての可能性がある。
事務機用の帯電ローラの開発でパーコレーション転移の概念が混合則に代わって用いられるようになった。また電気粘性流体ではまさにクラスター生成でレオロジーが大きく変化する機能を用いていた。
現在パーコレーション転移シミュレーションプログラムを作りながら学ぶPython入門PRセミナーの受講者を募集中です。
PRセミナーについてはこちら【無料】
本セミナーについてはこちら【有料】
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop
カラーレーザープリンターやカラー複写機の高級機には、中間転写ベルトという部品が使われている。中間転写ベルトを使わず直接紙に転写する直接転写方式もあるが少し画質が落ちるので高級機には使用されていない。このベルトは帯電しやすく放電しやすいように10の10乗から10の9乗Ωcmの体積固有抵抗となるように設計されている。
ベルトはこの抵抗の範囲で均一に製造できないと画質が悪くなるので、ポリイミド(PI)にカーボンを分散し溶媒キャスト製膜されたベルトを使用している。面白いのはカーボンが球状のクラスターを形成し、それが島状に分散した高次構造となっていたことだ。
これを熱可塑性樹脂を用いて押出成形で製造するとPIの溶媒キャスト製膜のような構造を簡単に造ることができず、パーコレーション転移と格闘することになる。パーコレーション転移の性質をよく知っていると、なぜPIでうまくゆくのか考えるが、わからないとボーっと長期間格闘することになる。
10年以上前にある人から仕事を引き継いだ時に、6年検討してきたのでよろしく頼む、と言われたが製品化まで半年しかない状態だった。酸化スズゾルを用いた帯電防止層の開発でパーコレーション転移について十分に研究していたので、前任者の仕事の進め方、すなわち外部から購入していたコンパウンドではゴールにたどり着けないことはすぐにわかった。
コンパウンドの段階でPIと同じ高次構造になっていなければ、押出成形でPIと同じ高次構造のベルトを製造することは不可能だが、某R社のコンパウンドは無茶苦茶な構造になっていた。およそ構造制御されたコンパウンドとは言えない状態だった。それでもコンパウンドメーカーの技術者は、最良だという。いろいろ議論して分かったことは、彼が混練の教科書でよく勉強していたことだった。
当時の(今でもそうだが)混練の教科書にパーコレーションの問題など全然扱っていない。高分子に粉末を分散した場合にはそのクラスター形成は必ず問題になるはずだが、分配混合と分散混合でお茶を濁しているような状態だ。このような教科書をいくら読んでもカーボンを分散した半導体高分子をロバスト高く設計できない。
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop
高分子の熱分析について連載で書いている。あるパーティーで分析機器メーカーの営業担当から熱分析装置が売れなくなった話を聞いたり、10年以上前にTMAを購入しようと、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂から生成された炭素材料をもちいて高純度SiCが生成する速度論解析のため超高速熱天秤の開発を依頼したメーカーに電話したところ、熱分析機器は取り扱っていないと言われてショックをうけたりした体験からである。
また、ある成形メーカーのご相談を伺ったときに熱分析装置を一台も持っていないと聞いたのでDSCぐらい持っていたほうが良い、とアドバイスし、一番安い装置を導入していただいた。ご相談内容に応えるためにも必要だったからである。成形問題の原因がコンパウンドにあるときにDSC一台あればそれを検出できる。
すなわちコンパウンドの品質管理にDSCを用いるのである。10℃/minの昇温速度で溶融温度(Tm)以上まで測定したデータがあればとりあえず、そのデータに関わるエラーを検出できる。Tm以上まで昇温しそこから降温したデータがあれば検出できるエラーも増える。さらに降温時にTcの直前で温度をホールドし結晶化ピークの現れる時間変化を追跡すれば結晶化速度に影響を与えている因子のエラーが分かる。
このエラーは、大きい時には昇温時のデータだけでも日々検査として行っておれば見出すことができる。例えば某R社から納入されたPPSと6ナイロン、カーボンのコンパウンドではTcのエンタルピーの変化がロットごとにあった。
またピーク位置が変わったりしたこともあった。Tgは6ナイロンとPPSのそれぞれが観察され、大きな変化が無かったが稀にPPSのTgのエンタルピーが小さくなることも観察された。
これらのことから、高温度におけるPPSと6ナイロンの相溶の可能性を疑った。実際にはR社の二軸混練機の温度がPPSのTm近辺に設定されて運転されており、これがばらつくことから生じていた現象である。
当方からカオス混合の提案をする前に過去に納入されたコンパウンドについてDSC測定を行い、コンパウンドの品質管理の問題を指摘している。しかしD社同様にR社もコンパウンドの品質問題について指摘された事項を受け入れてくれず、結局現場監査を行うことになった。
案の定、二軸混練機の温度はPPSのTmに設定されており10℃前後でばらついていた(注)。非相溶系でUCSTの相図になる系ではTm以上で相溶する場合がある。PPSと6ナイロンの相溶現象がばらつきとして起きていた可能性があり、それが過去ロットのDSC測定におけるTgやTcのエンタルピー変化となって表れたのである。
R社の技術者は優秀だったが、高分子の相溶現象における相図の知識は乏しかった。フローリーハギンズ理論やLCST、UCSTという言葉を知っていてもそれらが日々の現象としてどのように表れるのか考えた経験がないからだ。
これは大学における高分子の授業にも問題がある。高分子物理について完成された学問のごとく教えている現状ではこのような技術者になってしまう。高分子物理について理解されていない形式知の多いことを教えていただきたい。また高分子技術者はボーっと生きていてはいけない。最近は複雑なポリマーアロイを扱わなければいけない時代である。
(注)実際には設定された温度を中心にPID制御され5℃以内の変動におさえられるのだが、吸熱あるいは発熱の相変化が起きている場合には、PID制御で追いつかない場合がある。そうすると設定温度よりも10℃以上外れることがある。DSCデータでエラーが検出された場合にコンパウンダーの現場監査は重要だ。その時のコツは混練機の設定温度や樹脂圧のチェックである。特に設定温度はシリンダーごとに設定されているので、指示温度の変動を15分ほど見ておればどのくらいの温度変動があるのかわかる。PID制御が正しく設定されておればまったく指示温度が変動しない場合もある。これが5℃以上変動していたらアウトだ。しかしこのような場合でもコンパウンダーは素人は黙っとれ、というかもしれない。10℃程度の変動はタマにあるとしたり顔でいうのだ。ここで議論してはいけない。したり顔の相手をおだててどのような場合か、とか日々それがどのゾーンで起きるのかなどの情報を聞き出すのだ。日々問題があっても本人がエラーとして気がついていない情報をいくつか教えてくれる。
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop
DSCで測定される高分子のTgやTc、Tmは、その高分子がどのような履歴を得てきたのかに影響を受ける。ゆえにエラー発見に有効なデータとなる。配合のミスはTGAの計測で発見できるが、DSCのデータからは、コンパウンディングから成形に至る過程で、特に熱的にエラーが無かったかどうかをDSC測定で知ることができる。
開発段階で10℃/minでよいからDSC測定をしておくように勧めているのはこのためである。それぞれのパラメータの現れた温度やエンタルピーを管理するだけでも意味がある。大きな熱履歴のエラーがあれば必ずどこかに日々の結果と異なる異常が観察される。
また、DSCの測定ではベースラインにも配慮したい。これがまっすぐ水平であれば何も熱的な変化をしていないが、曲線的な変化をしていたならば、何か変化がある。それが熱分解によるのか相変化によるのかは、TGAで確認できる。
曲線的な変化をしている温度領域についてDSCと同じ測定雰囲気でTGAを行う。その時、その領域で重量変化が観察され無ければ、相変化その他の変化を疑う。難燃剤が添加されている場合に、それが一部分解しているとポリリン酸を形成する場合があり、これは240℃以下では重量減少を示さずDSCでだらだらした吸熱カーブが得られる。
DSCで得られた異常な曲線(吸熱または発熱)で何が起きているかは、他の分析手法で解析しなければいけないが、技術開発過程では異常の発見ができることが重要である。
以前この欄で、生産ラインの異常があってもそれを認めずあくまでも成形工程に問題があると主張していたコンパウンドメーカがあったことを紹介している。データの捏造で社長が謝罪する時代なのでこのようなメーカーの名前を公開したいが、カオス混合装置のお客様になるかもしれないので名前の公開は控える。
面白かったのは、このメーカーのCTOが、議論の最中に苦し紛れに自分たちのDSCで以前のコンパウンドを計測すればベースラインはまっすぐになる、と答えたことだ。半年以上待っていてもそのようなDSCチャートを提出してもらえなかった。誠意のない会社と言ってしまえばそれまでだが、DSCをよく知らなかった可能性が高い。
カテゴリー : 高分子
pagetop