AIの教師データは、形式知で構成されるはずだ。曖昧さと誤動作をさせないためには不確かなデータをAIに搭載するわけにはゆかない。
仮に経験知を教えるにしても科学的に確かな形式知を教えてその後経験知を教えなければ、おかしなAIになってしまう。人間なら職人で済むが、AIの職人というのが成立するのかどうかは疑問である。
次にAIが思考するときには科学的論理で厳密に行う。曖昧さがあればそれも指摘する。AIは賢いかわりに論理とその判定に厳格であることを忘れてはいけない。
人間のようにテキトーな考え方ができないのがAIである。例えば中間転写ベルトの押出成形を担当し、カオス混合を発明しているが、このような発明はAIに絶対にできない、と断言できる自信がある。
まず形式知で否定されるPPSと6ナイロンの相溶を実現している点である。これを狙ってカオス混合装置を発明する、という思考はAIには絶対にできないのだ。
単身赴任し、もしかしたらできるんじゃないかと思い、押出成形の押出機をそのままだが但し常識はずれな使い方をして最初のカオス混合の実験に成功している。
このような実験は、AIに絶対に思いつかない。だいた人間にも否定された実験である。部下の課長に「お好きなように」と言われてお好きなように実験を行っている。
その結果を日本の一流メーカーの技術者に話してコンパウンドの製造実験をお願いしたら、「素人は黙っとれ」と言われた。そのような実験をAIが提案してくれるとは到底想像がつかない。
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ERFの増粘問題(ゴムからブリードアウトした化合物によりERFの耐久性が無くなる問題)が界面活性剤で解決できない、という結論は、形式知で論理的に展開され完璧だった。
さすがに高偏差値の大学出身者のスタッフで工学博士がそろったメンバー構成だったので、その論理もAIのように緻密だった。本部長も学者だったのでそのまま信じている。
恐らく前の本部長ならば「まず報告書よりもモノを持ってこい、大バカ者」となったかもしれないが、この研究開発テーマの途中で本部長が交代したために緻密な否定証明の研究論文が評価されるような事態になった。
科学の証明で完璧にできるのは否定証明だけだ、と言ったのはイムレラカトシュだが、その否定証明でできないことが証明されたとしても、一度でもできたという現象の再現を肯定するような一つの実験結果が出てきたならば、否定証明もひっくり返るのが科学の世界である。
だから学者のI本部長の前任者浦川本部長は研究者に嫌われながらも「新しい企画提案には、まずモノをもってこい」と言い続けてきたのだ。
高純度SiCのセラミックヒーターはこの本部長のおかげでできたようなものだ。研究棟の竣工式の日にリーダーが病死され、本部長から呼ばれた当方は、「粉ではなく何か形のある製品を大至急作れ」と命じられた。
高純度SiCでできたピンセット、高純度SiCヒーター、高純度SiCるつぼ、高純度SiC板、高純度SiC切削工具など思いつくものですぐにできそうなものを作った。
ピンセットはタダの二本の棒だったが、何に使うのだ、と言いつつも半導体分野は高純度製品が必要という説明で企画として認めてくれた。モノができておれば信用してくれたので、報告書を書くよりも製品を製作する毎日だった。
この浦川本部長時代には、いろいろな先端製品を手作りしている。フレキシブル常温超伝導体は傑作のひとつで、液体窒素で超伝導体であることを示し、それをドライヤーで温めてフレキシブルであることをみせて、「常温で本当に超電導となるように開発する」とプレゼンし納得していただいた。
完成しなかったが、自分でギブアップを報告している。当時の超伝導体は酸素が抜けると超電導性が消失したので空気が抜けないようゴムで覆う発明を特許として出願している。
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AIが企業の研究開発に導入されたらどうなるか。その事例は30年ほど前のゴム会社の研究所の出来事と同じことが起きる。
当時ウィンズローとかいう人が発明した電気粘性流体がゴム会社で研究されていた。常温超伝導体やスタップ細胞と同じくキワモノ的発明だが、電場のONとOFFで物質のレオロジー特性を制御できるということでゴム会社は飛びついた。
おそらく当時最先端の研究レベルではなかったろうか。すでに防振ゴムや車の足回りの部品について実用に近いものができており、自動車会社との共同研究もスタートしていた。
ただ大きな問題は、二つあり、一つはゴムケースと組み合わせて用いるとゴムから配合剤が電気粘性流体(ERF)に溶出してきてドロドロとなり使えなくなるERFの耐久性問題と、電気粘性流体に使用していた粉末の品質ばらつきが大きかったことだ。
この二つの問題を解決したために当方は会社を辞めることになったが、その遠因は、聞くところによるとERFの耐久性問題を工学博士も含む優秀な人材が一年かけて「界面活性剤では絶対に解決できない」という結論を出したことによる。
この結論をもとにERFと組み合わせても配合剤が抜け出さないゴム、それは配合剤が添加されていないゴムを開発することだ、と工学博士を含む優秀なスタッフたちにより企画され、樹脂補強ゴムをたった3ケ月で開発できた当方ならばそれができるはずだと、なったらしい。
評価されたことはうれしかったが、配合剤が全く入っていない高分子など実用性の無いことは経験知から明らかだった。ただ形式知でその証明はできないだろう。実はAIが研究開発部門に導入されたらこのようなおかしなことが日常として起きるようになる懸念がある。
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東芝系の会社で追い出し部屋が問題になっている,という記事が出た。この手の問題は、過去の判例を見る限り、会社側は負ける。
しかし、考えなければいけないのは、労働者側である。組織にぶら下がって勤務し続けることが幸福かどうかである。
今AIの普及で無くなる職業が話題になっている。AIとは関係ないが、歯科医は過当競争で生活保護をもらいだした歯科医もいるという噂だ。
組織で不要といわれたのならさっさとその組織を捨て、別の組織で働くか、あるいは自分で新たな組織を作ればよい。
ドラッカーは定年後も生き続ける、すなわち定年後の人生の方が長くなった現代の問題を指摘している。
既存の組織に勤める方が楽ではある。しかし、自分が長く勤めることが可能な組織を作るという発想が今の時代は必要ではないか。
会社の経営は大変である。しかし、80歳まで雇ってくれる会社がない以上自分で作る以外に無いのだ。弊社は定年を設けない会社を目指している。
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たまたま検索した結果にゴム会社の後輩の記事が引っ掛かった。某大学の講義録で、学生との質疑応答まで載っていた。その中の学生の質問に、企業へ就職するために学位が必要か、と言うのがあり、後輩は給与面から始まり丁寧に答えていた。
ただその回答は、読みようによっては、後輩の会社では学位は評価されない、と言うように読みとれる間違った内容になっていたので補足する。
まず、ゴム会社では学位は評価されており、当方も上長から勧められて学位を取得している。ただ、ゴム会社では肩書と実力が一致していない場合には実力に応じた処遇になる。
すなわち、学位があるから給与がもらえるのではなく、実力があるから給与が上がるのである。当方は以前ここに書いたが、昇進試験に高純度SiCの事業シナリオを書き、一度目は問題と回答が一致していたのに落ちたが、二度目は問題と回答が異なっていたのに100点だった。そして、給与は一年の遅れを取り戻すに余るほど上がっている。
すでに高純度SiCの研究棟が立てられて研究開発がスタートしていたからだ。粋なはからいをする会社で、学位取得者が入社するときにその学位が事業に役立つならば給与は増える当たり前の会社だった。ゆえに上司は当方に学位取得を勧めてくれたのだ。
ただ、学位がその人の仕事に生かされていないならば給与は増えない。すなわち学位とその人の仕事の成果が不一致ならば給与は学位の無い人と同じたいへん公平な評価なのだ。
これは例えば文学博士の学位を持って技術開発を行っていたら、文学博士分の給与を会社が支払ってくれるかどうか、と説明をすれば分かりやすいと思う。ゴム会社はそのあたりは極めて明快な会社で、学位を業務に生かし成果を出せば高い評価をしてくれる会社である。
当方はゴム会社ぐらい成果主義の徹底した会社は無いと思っている。ゆえに学位が業務に生かされればタイトル分の評価ももらえる。繰り返すが、だから上司は当方に学位取得を勧めてくれたのだ。
会社に貢献し、その貢献した内容で学位を取るように勧めてくれる会社は素晴らしい会社である。この経験を写真会社で実行し一名工学博士を育てることができた。ゴム会社の文化を写真会社に持ち込んだのだ。
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AIの普及に負の効果があることを以前指摘している。その前にAIの普及で形式知に対する人類の負担が軽減されるようになる点を説明したい。
そのような説明は不要だと言われそうなので、形式知はAIの最も得意とする分野であること、そしてAIは科学の思考法で動作しているという特徴があることだけに留める。
AIのこのような特徴のため、企業が科学の形式知を備えたAIを導入したならば、研究開発では大幅な効率アップとなる。
社会的にはアカデミアの大リストラが必要になり、これはAI普及の負の側面である。おそらく今活動している科学者の半分以上は不要になる可能性がある。
一方そのような大リストラは社会の負債になるから、アカデミアで働く科学者の意識改革がその前に行われて、それに従う科学者と反対する科学者がふるいにかけられるだろう。
一昔前ならばこのようなときに同情する人が社会にいたが、これはAI対人間の戦いであり、同情する人はでてこないかもしれない。アカデミアには厳しい時代になる。
しかし、今アカデミアはある活動を行うことでAIの時代に生き残ることが可能となる。それは弊社に相談していただきたいが有料である。
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「AIの普及で無くなる仕事」というのが以前話題になっていた。30年以上前には、パソコンの普及で無くなる仕事が話題になっていたが。
まず、パソコンの普及で無くなる仕事が話題になっていた時に、独身男性が増える問題を指摘していた人がいた。
すなわち、パソコンが普及すると事務職の女性や実験補助の女性が不要になるので研究職の職場に女性がいなくなり、独身男性が増えるという予測である。
これは傾向としてパソコンの普及と無関係に増えているので、当たっていたと言い難い。しかし、当時感心したのは真顔で男性ばかりの職場の恐怖を語っていた人だ。
しかし時代は変わり、男女雇用機会均等法で、その心配は無くなった。今AIの普及で無くなる仕事を考えるよりも大切なことは、AIの普及による仕事への影響だろう。
パソコンによる事務の合理化の影響で真剣に独身男性の増加を心配したように、無くなると言われている今の仕事も含め、AIの普及による影響を真剣に心配しなくてはいけない。
直接利用したりその恩恵を受けたりする効果よりも、負の影響である。AIは確実にビジネスの現場に導入される。
それをどう扱うかはともかく負の影響を見つけ出し、AIを活用して良い効果をだせるような仕事のやり方を考えておかなければならない。
AIをどのように活用するのかはもう皆が考えているが、AI普及による負の側面をAIで解決しようとはまだ誰も考えていないような気がしている。
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企業活動において明らかなコンプライアンス違反ならば悪人と言われても仕方がないが、一生懸命仕事をしていても悪人になってしまう危険性があるのが企業と言う組織で活動するときの難しさである。
ゴム会社の新入社員時代に当方は悪人となったため始末書を書き、会社にお許しいただきフロッピー事件が起きるまで12年勤務した。
始末書を書くことになったのは、市販されていない難燃剤を用いて実験を進め、工場試作まで成功させたからである。
軟質ポリウレタン発泡体の新しい難燃化技術の企画を入社10ケ月目に命じられたので、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの企画をすぐに提出した。
当時ホスファゼンは先端材料でどこもまだ事業化していない材料と言うことで課長も新規性十分な企画であると絶賛され、いつできる、となった。
ホスファゼンを自分で合成することになるので、そのために1ケ月かかり2ケ月ごろには実験室レベルの発泡体ができている、と回答している。もちろんこれは新入社員ゆえの元気な回答である。
話半分に聞かれると思いきやすぐに実験をやれ、と命じられ、少し遅れたが4カ月過ぎたところで工場試作をしてみようということになった。そして工場試作をしたら大成功で、そのときは周囲から大絶賛で褒められた。
しかし、課長がそれを役員報告したところから運命が変わり、当方が始末書を書くことになった。
このあたりは以前にもこの欄でどのような始末書を書いたのか述べているので割愛するが、会社のために一生懸命サービス残業までやって、成果を出して知らず知らずのうちに悪人になったのである。
企業と言う組織の中ではこのようなこともありうるのである。それでもその組織で働きたいと思うならば我慢というよりも前向きで状況を捉え、働くことである。
しかし、どう考えても後ろ向きにしかなれないならば、新しい組織をさがすより仕方がないのが今の社会システムである。
始末書まで書いて会社に残ろうとしたのは、新入社員の2年間は失敗をしても良いから思い切り仕事をやるようにと、石橋幹一郎氏が新入社員に向けて言われ、そのようにしたら本来ないはずの責任を認めてくれて始末書まで書かせてくれた、と解釈し納得している。楽しい思い出である。ちなみに、その時の始末書には、悔しかったので夢に見た燃焼時にガラスを生成して難燃化する技術の企画を書いており、これは半年後実用化された。
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長年写真をペンタックスカメラで撮ってきて、20年ほど前ニコンF100を購入して以来、ニコンとペンタックスの両方を使用するようになった。そして今回ニコンのミラーレス一眼Z6を購入し気がついたことがある。
ポートレートを撮影するときには、ペンタックスレンズのほうが自分の好みの絵柄が得られるということだ。
どこが異なるのか過去の写真を比較してみると、ペンタックスで撮影した写真の方が立体的であり、全体が柔らかいのだ。これはニコンZ6にペンタックスレンズを取り付けて撮影しても同じ傾向だった。
ニコンのレンズ85mmF1.4DをZ6に取り付けて人物を撮影すると、極めてクリアーに映る。ペンタックスリミテッドレンズ77mmを同様にZ6へ取り付けて撮影すると少しヌケが悪い。しかし、立体感はこちらのレンズが優れている。
写真は3次元の世界を二次元に展開して絵を描く技術だが、この観点ではペンタクスレンズの方が優れていることになる。
おそらくこれはレンズの諸収差をどのようにバランスさせるのか、という問題だと思われるが、ペンタックスリミテッドレンズは31mmも含め似たような絵作りになっている。
恐らく光学的評価を行ったら、クリアでヌケの良いニコンレンズの方が優れた数値になるのかもしれないが、得られる写真の比較では、ペンタックスレンズに分があるように思われる。
車のCMに、いつかはクラウンに、と言うのがあった。写真の世界でも20年以上前はいつかはニコンに、といわれていた。これはニコンカメラやレンズが他社に比較して高価だったことと、プロ写真家がニコンカメラを使う人が多かったからである。
しかし、今はキャノンがトップであり、ミラーレスに限ればニコンは3位でソニーがトップである。ソニーはカールツアイスレンズを使うことができて、こちらの描写はペンタックス同様に立体感が優れている。
最新レンズは解像感の高さが前面に出てきてそれが描写力のように言われているが、写真は3次元を二次元に展開する手段であり、ペンタックスやカールツアイスのレンズ設計思想が注目されてもいい。
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単身赴任する前に赴任先のセンター長に挨拶に行った。余った時間は、押出成形の現場で過ごした。現場に一人暇そうにしている職人風の男がいた。
サングラスをかけ、いかにも、という風貌である。休憩時間には休憩室に行かず、一人で灰皿のある戸外でパイプを吸っていた。その光景は、十分絵になっていた。
休憩時間が終わっても職場に戻ろうとしないので、話しかけてみた。すると、今日はもう仕事が終わったからヒマしてると答えてきた。仕事は前日に不合格となったベルト素管を粉砕する役目だった。
毎日毎日粉砕しているのか、と聞いたら、本当は一日の生産でよいところを歩留まりが悪いから、毎日生産するような事態になった、と聞いていると説明してくれた。そして、粉砕したくずを再度ペレットにして使っているとも話してくれた。
さらに、不思議なことに粉砕したくずの方が歩留まりが高い、と貴重な情報を教えてくれた。とにかく高価な材料だから再利用しなければいけないが、本生産では、再利用できない仕組みになっている、とも説明してくれた。
奇妙なことを言うのでさらに質問したら、QMSを御存じないのか、と言われた。
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