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2018.03/14 ドラッカーの遺言(11)

9日、佐川宣寿国税庁長官が辞任した。森友問題に関連した国会対応に丁寧さを欠き審議の混乱を招いた点や、行政文書の管理状況について様々な指摘、さらには今回取りざたされている文書の提出時の担当局長だったことの3つの責任を感じて辞職を申し出たという。

 

さて、この問題は、森友側へ破格の安値で土地売却を行ったことから始まっている。その後「忖度の連鎖」で、最後はこの改ざんという不正、担当者の自殺まで起きた。

 

現在のところ、まだわからないことが多いが、ドラッカーの組織論の観点で、これまでニュースで報じられた事実をもとに、財務省という組織を眺めると、腐った組織と言わざるを得ない。

 

まず、「組織の優劣は、平凡な人間をして非凡なことをなさしめるか否かにある」、とドラッカーは述べている。

 

しかし、財務省には高偏差値の優秀な人材が集まっているにもかかわらず、森友問題では、「安倍」を「安部」と書類に書いていたりする凡ミスをはじめとして、常識では考えられない業務状況である。

 

また、「組織の目的は、均衡と調和ではなく、人のエネルギーの解放と動員にある」とドラッカーの著書には書かれているが、エネルギーの解放どころか、「忖度」という束縛が働く内向きの高エネルギー状態で、とても国民のために成果の出る仕事をしているとは思えない。

 

はたして、財務省は現在のままの組織でよいのだろうか。そのマネジメントも含め、国民は森友問題の推移を見ながら検証しなければいけないと思う。

 

佐川長官の辞任がやや早すぎるのではないか。もし彼が本当に責任を感じているならば、自らの処遇を国民にゆだねるべきだろう。公務員のリーダーとはそのような覚悟があってこそ高給が保証されているのだ。

 

 

 

カテゴリー : 一般 連載

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2018.03/11 誠実さが求められる時代

貴乃花親方が9日、部屋の担当弁護士を通じて内閣府に対して告発状を提出した、とニュースで報じられた。これまでの一連の成り行きから、ほぼ予想された行動である。貴乃花親方を批判しているのではなく、日本女子レスリング協会でも起きていることだからとりあげた。

 

やや異なるカテゴリーに思われるかもしれないが、昨年報じられた燃費計測における不正や材料の品質データ改ざんが明るみに出た問題も同じような時代背景があるととらえている。すなわち、一昔前ならばいずれの問題においても、大人の対応なり、長いものに巻かれろ的発想が重宝され、何か問題が発生した時に事を荒立てないことが良しとされた。

 

あるいは、裸の王様のごとく真実を指摘すると子ども扱いにしたり、その場あるいはその組織から摘まみだされたりした。それは社会全体が誠実さを大切にしながらも誠実さでは現実を生きてゆけない、とあたかも誠実さを時には忘れることが大人の社会では大切という誤解をしていた時代だから許された。

 

しかし、振る舞いも含めた組織の価値が重視されるようになり意識は変わりつつある。企業はコンプライアンスを重視し、組織活動そのものがドラッカーが指摘したように誠実さを求められる時代になった。

 

また、情報化時代になり、過去には躊躇された匿名の告発が容易になった。その結果、大人の対応を求めていたのでは組織の不誠実さを社会にさらけ出すことになり、企業価値を損ねるリスクが大きくなった。

 

燃費のごまかしや、品質データの改ざんでは、インターネットの世界に内部告発の情報が出るや否や経営者による謝罪の記者会見が迅速に開かれるようになった。そして1社だけでなく組織内にその疑いのある会社は競って謝罪会見を開くという、不謹慎かもしれないがやや滑稽な光景がTVに映し出された。

 

相撲協会は、隠ぺい工作をしていたことが社会に明らかにされていてもそれを無かったことのように解決をはかる大きなミスを犯した。さらに第三者機関が間の抜けた対応をした結果今日の事態に至っている。

 

レスリング協会にしても被害者は伊調選手であるにもかかわらず、その事情聴取も行わないで、告発されるや否やそのような事実は無い、と否定するミスをした。パワハラなどの問題では、従来の対応では誠実さを欠くので誤解を招くことを知るべきである。

 

誠実さが無ければ解決できないセクハラやパワハラなどの撲滅が社会で真剣に取り組まれている時代である。組織で何か問題が起きたときに、昔の様な対応をしていたのでは、社会から組織そのものが罰せられる。

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2018.03/10 カオス混合装置の発明(6)

ロール混練を行っていると、あたかも高分子の混練の進行が目に見えるような錯覚に陥る。オープンロールはその名の通り、丸裸の状態でゴムを混練しているのだが、微妙なしわの入り方や表面の光沢感でそのような錯覚を起こすのだ。

 

この錯覚が生々しく脳裏に残っている状態で、リアクティブブレンドによるポリウレタン発泡体の開発を担当できたのは幸運だった。すなわち高分子を混ぜるという高分子のプロセシング技術で重要な経験知を整理することができた。

 

経験知は、乱雑に身に着けていても「思いつき」という形で役立つかもしれないが、形式知と経験知とを関係づけ、さらに形式知で明らかにされていないところをモザイクの消去を行うような感覚で経験知で埋める作業を行うと、見えていないところが見えてくるから不思議だ。

 

とかく見えないところをリベールする作業は怪しい作業に見られがちだが、このような自然現象のリベールは、十分な好奇心を満たしても他人に後ろ指をさされることはない。ただ、その結果を形式知のように話してしまうと軽蔑される。

 

高純度SiCの前駆体合成をリアクティブブレンドで行うアイデアは、単なる思いつきではなく、フローリーハギンズ理論で相溶が否定される材料を安定に相溶させる手段がそれしかないこと、と頭の中に整理されていた結果生まれているが、最初に研究所の先輩社員にアイデアを話したらバカにされた。

 

高純度SiCの前駆体合成技術は、高純度SiCの新生産プロセスを開発できただけでなく、カオス混合でどのような結果が得られるのかを検証した成果でもある。この成功で高分子を相溶させるには、フローリーハギンズの理論よりも、高分子を「混ぜて」(ΔSの変化)「安定化」(ΔGの減少)させるイメージが重要であることに気がついた。

 

このイメージを実践し成功したのが、光学用ポリオレフィン樹脂にポリスチレンを相溶させた実験である。この実験では、錠と鍵の関係(ΔSの偶然による制御とΔGの減少)にあるようなイメージを持ってバンバリーで高剪断をかけながら混錬したところ、アペルと新たに合成したPSとが相溶し、透明になった。

 

これは高剪断と分子の一次構造の組み合わせ効果で相溶に至った事例である。この成功で高分子を相溶させる方法がリアクティブブレンドだけでなくプロセスを工夫すれば可能であることが見えてきた。そしてカオス混合における伸長流動は高分子の引き伸ばしにより相溶を促進するかもしれない、という妄想を持つに至った。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.03/09 カオス混合装置の発明(5)

ロール混練ほど不思議な混練装置は無いだろう。二本のロールが回っているだけで混練が進行してゆく。ロールの表面はつるつるであり、ロールの回転速度差とロール間隙により、混練で必要な剪断流動と伸長流動が制御されている。

 

もし二軸混練で不満があれば一度ロール混練で材料を処理してみることをお勧めする。55%もパルプを含有した樹脂パルプ複合材料を開発した時には、ロール混練でPS並みの射出成型性を有した材料を開発している。

 

ロール混練は生産性は悪いが、二軸混練機などの連続式混練機では得られない混練レベルのコンパウンドを製造可能である。ゆえに指導社員はカオス混合の発明は混練の世界に革新をもたらす、と説明されたのだった。

 

指導社員は、ロール混練について形式知の観点から指導してくださったが、技能指導をしてくださった年配の方は経験知をいろいろと教えてくださった。二人の指導内容を比較すると科学の知識が無ければ技術が出来上がらない、という考え方が誤解であることに気がつく。

 

科学的ではない思考方法でも技術が創りだされ、技術によって生み出された人工物に含まれる知識は科学がもたらした物である、というのは科学の時代の俗説というファーガソンの言葉を理解できる。

 

当方の発明したカオス混合装置はロール混練の機能をそのまま実現しただけの非科学的装置だが、中間転写ベルトの開発や樹脂の難燃化技術などで十分な成果を生み出した。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.03/07 高分子材料の難解さ

高分子材料技術に関し門外漢が勉強しようとしたときにまず困るのは適当な教科書が無いことだ。絵解きの初心者用の書物も存在するが、それを読んでもすぐに実務では役立たないだろう。

 

実は最近絵解きの初心者用モータ技術に関する本を購入したのだが、これがたいへんわかりやすかった。そして読んだ後、すぐに新しいアイデアが浮かんだ。残念ながら思いつきのアイデアに関して最近類似の特許が提出されていた。

 

残念な結果ではあったが、このきっかけで、分かりやすい本とは、と考えるととともに、なぜ高分子材料にこのような本が無いのかと考えてみた。

 

同じ材料に関しても、金属やセラミックスに関しては材料からそのプロセシングに至るまでの初心者用の適当な書物があるのに、なぜ高分子材料に関しては普遍的と呼んでもよいような初心者用教科書が存在しないのか。

 

一つの原因として、日常接している高分子材料でできた製品の特長について一応の理解をするために、形式知だけで説明できないことが考えられる。

 

金属やセラミックスについては、形式知だけで何とか分かったような感覚になる説明が可能だが、高分子では例外事項が出てきて説明する側も苦労する。原因は、高分子の一次構造がそのまま製品物性に現れている事例が少なく、高次構造を持ち出さないと説明しにくいからと思われる。

 

その高次構造について形式知がどのような状況かというと、最近は階層化構造という認識が一般的であるが、研究者により微妙にその階層化構造のイメージが異なっている。困ったことに階層化構造の形式知が固まっていないのにメソフェーズの研究が盛んに行われていることだ(階層が分かりにくいのでメソフェーズ構造の研究がなされている、が正しい認識かもしれないがーーー)。

 

すなわち高次構造認識は、まだ確定した形式知が存在しないために、高分子研究者それぞれの思いの認識で研究が進められている状態と言ってもよいかもしれない。

 

セラミックスでも40年ほど前は研究者により材料認識が異なっていた時代があった。すなわち結晶を研究している研究者の認識と古典的に混ぜ合わさった焼き物を研究している研究者とは、大きく異なっていた。

 

焼き物の研究者の説明を聞いても門外漢にはさっぱり理解できなかったが、結晶の研究者の話は論理的でわかりやすかった。セラミックスフィーバーはこのような状況を一変した。そのフィーバーのさなか、古典的な焼結理論に関する激論があった。

 

自由エネルギーをもとに展開された新説を速度論と勘違いされている大御所の先生がおられた。思わず自分が無知であっても新説を素直に理解できたので自信がついた。やはり、科学では、まず論理的に現象を説明できなければいけない。論理的な説明であれば、偏見が無い限りその理解について勉強すればだれでも可能になる。

 

形式知の良いところはこのような点だが、高分子材料の形式知に関しては一次構造以外についてうまく整理されていないように思われる。だから、高分子材料に関してもセラミックスで展開されたような激論がなされるべきかもしれない。力学物性については、かなり情報がそろってきたように思われる。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.03/06 カオス混合装置の発明(4)

当時の研究所は、8階建ての大きなビルの6階以上が職場となっていた。5階以下はタイヤ開発部隊が使用しており、夜7時過ぎは6階以上の電気が消え、5階以下は朝まで電気がついていた。

 

研究所に配属されたのは二人だったが、同期から雲の上の人だから早く帰れてよいなと、嫌味とも思われるようなことを言われたりしたが、今の時代だったらこのような言い方はしないだろう。

 

ゴム会社には、タイヤ事業の研究開発部隊と非タイヤ事業の研究開発部隊、それと基礎研究部隊の3組織があり、基礎研究部隊は、アカデミアよりも恵まれた研究環境でその風土はまるで大学の研究室のようだった。

 

おそらく当時の高分子関係の企業に設置された基礎研究部門の中ではトップクラスの人材が集まっていたのではないだろうか。この研究部門から東京大学をはじめとしてアカデミアの研究者になられる方もいた。

 

半年間の新入社員研修で2ケ月間タイヤ設計部で構造設計開発の研修を体験したが、およそその職場の風土と基礎研究部門の風土とは異なっていた。

 

一番びっくりしたのは、当方のロール混練の手際の悪さを見て、例えば、「フローリー・ハギンズ理論を説明してみろ」と聞いてくる先輩社員が職場にいたことだ。大学で使用された当時の高分子の教科書には、言葉が載っていただけなので、論文でも読んでいなければ答えられないこのような質問をして得意になっていたのだろう。

 

そして、およそ企業と思えないような会話が始まるのである。知識を増やすには良い職場であったが、当方はむしろロール混練の実技を指導していただいたほうが嬉しかった。ちなみに、バンバリーやロールの扱いは指導社員から習ってはいたが、ナイフの返しのコツなどは一度聞いただけではうまくできない。

 

また、実験室でロール混練をしている人たちの手元を見ても、様々な流儀が存在した。幸いなことに、事故をおこすといけないので、と小生の指導を指導社員に申し出られた年配の方がいて、その方から混練の現場ノウハウをいろいろ教えていただいた。

 

指導社員も丁寧に混練について教えてくださったが、実技の細かい点になるとやりやすいように、と言われるだけだったのでこの方の指導はうれしかった。そもそも、やりやすい形にはやくたどり着くためには、それなりのコツがあった。

 

例えばナイフ作業の回数については、慣れないうちはマッチ棒で数える、とか、添加剤を添加するときにあらかじめ添加回数が少なくなるように添加剤を組み合わせて混ぜておくとか、経験知といえる内容である。

 

また指導社員による午前中の座学における小生の居眠りが噂になっていたようで、指導社員には叱られなかったが、この年配の方から「たるんだ新入社員と言われないように」と注意を受けた。たった3ケ月で一年間のゴールを達成したのだが、このような周囲の温かい指導もそのバカ力の源泉となっている。そしてカオス混合のアイデアも現場の雑談で少しずつ具体化されていった。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.03/05 カオス混合装置の発明(3)

樹脂補強ゴムの開発は、一年間の計画が立てられていた新入社員テーマだった。一方で、大衆車のエンジンマウント用に高性能かつコストダウン(CD)配合の防振ゴム開発が緊急課題として生産現場から研究所に求められていた。

 

この緊急性について同期が製造技術部門に配属されていたので知ることができた。生産現場からすぐに欲しいとの要望が出されていたが、研究所では基盤技術研究テーマとして樹脂補強ゴムを位置づけていたため、当方以外の戦力はあてられていなかった。

 

また、このテーマは、ニーズとは無関係で指導社員のアイデアとして企画され、半年間指導社員が一人で推進してきた。ゆえに一応当方がニーズに合わせた補強要員という役割だった。

 

ドラッカーの働く意味は、貢献と自己実現であり、当方が担当していた樹脂補強ゴムの成果でニーズに合わせてすぐにアウトプットを出すことは十分な社業への貢献に思われた。また、カオス混合装置について研究することは混練技術に興味を持ち始めた段階では、ゴム技術者を目指す自己実現手段として意味があった。

 

さらに新入社員である一年間は残業代が支給されない規則だったので、残業を死ぬほどやっても会社に迷惑をかけるわけではなかった。健康には自信があったので、仮に死ぬほど残業をしても死なないだろうと楽観的に考えたため、寝ている以外は仕事という毎日になった。

 

今の国会で議論されている働き方改革とは程遠い考え方ではあったが、働いていると何故か不思議な幸福感があった。指導社員から、計画が遅れない限り好きなように仕事を進めてよい、とあたかも裁量労働のように言われていたからである。

 

ただし、計画に遅れない、とは、新入社員発表会において発表できる程度の成果が出ておればよい、という意味だった。ありがたいことに指導社員は残業を全くしない定時退社の習慣だった。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.03/04 日本女子レスリングのパワハラ

日本女子レスリング栄コーチのパワハラがニュースになっている。この告発について日本レスリング協会は、その内容をすぐに否定した。当方はこのような問題でレスリング協会側の対応は正しくないのではないか、と思っている。

 

組織内のこのような告発に対して、仮にその事実が存在しないとしても、責任者がすぐに否定するのは、この問題の関係者の中で一番配慮されなければならない対象を軽視していることになる。

 

そもそもこのような組織における内部告発は、組織内の不誠実を正すために行われる。その告発行為に悪意の有無に関わらず「不誠実ではないが、立場が変わると何らかの不誠実と見えてしまう行為」のようなものでも少しでもあれば、告発される可能性が出てくる。

 

例えば、告発状の中身について、リオ五輪で栄氏が《選手団と一緒に行動することなく、自分が気に入っている選手(吉田沙保里、登坂絵莉)と共に、選手団の乗る飛行機とは別の飛行機のビジネスクラスに搭乗》したといい、伊調は《選手団の一員として、エコノミークラスでリオデジャネイロに向かった》とニュースで報じられている。

 

おそらくこれは事実だろう。海外出張で一部上場の社長であってもビジネスクラスを使わないケースがあるという。ビルゲイツでさえ、到着時間が同じならどうして高いビジネスクラスを使う必要があるのか、と発言している。このような視点に立てば明らかに不誠実と見えてしまう事実が一つ存在しており、協会がすぐに否定したのでは、さらにすごい問題があるような誤解が生まれる。

 

そもそも栄氏の過去の発言の中には、支配欲を感じさせる言葉が報じられており、これが伊調選手にどのように聞こえたのか、敏感な大人であれば想像がつく。本欄ではこれ以上書かないが、この問題で一番の被害者は伊調選手であり、東京オリンピックを控え彼女へ最大限配慮された問題解決が望まれている。

 

ところで、「政治の課題は、支配欲を社会的に最も建設的に発揮させることである。」とドラッカーは述べ、人間の支配欲を否定するのではなくそれを社会に役立つように機能する仕組みを作ることだと提案している。これが企業経営であれば、利潤動機である。レスリング協会であれば、伊調選手の5連覇をレスリング協会共通の目標とし責任とすることだ。

 

すなわち、東京オリンピックで伊調選手が5連覇できなかった場合には関係者の処分可能性を文部科学省は通達すればよい。先のオリンピックで吉田選手が銀に終わってもコーチ陣におとがめなしである。そして現在に至っているのだ。栄コーチの問題というよりも、それを放置してきた組織の問題である。

 

カテゴリー : 一般

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2018.03/03 流出NEMとハッカー

流出した仮想通過NEMについて、ハッカーの戦いが繰り広げられている。正義の成果を出しているハッカーをホワイトハッカーと呼ぶらしい。

 

その昔、白忍者と黒忍者が戦う漫画を読んだが、その漫画では、正義の味方であるはずの白忍者の衣装が次第に汚れて黒くなっていった。子供向けの漫画ではあったが、正義がやがて悪に変化する夢の無いストーリーだった。ホワイトハッカーという呼び名がよいかどうか、NEMが無事に本来の所有者に戻るかどうか興味深い。

 

コンピューターとそのネット網で機能するサイバー空間は科学の力で生み出された論理空間である。ゆえに100%科学で構築された世界でそこで発生する問題は論理で解決できるように思われる。さらに、そこには自然現象など存在しないと思われるが、そこで展開されているハッカーの戦いは、試行錯誤の戦いの様相である。

 

ニュースで報じられたこの手順を詳しくみてみると解析と試行錯誤の組み合わせで成り立っていることに気がつく。このNEMの問題は、解析結果から論理的に犯人を割り出してゆくか、あるいは論理的にNEMを犯人から取り返し持ち主に戻す手順を見出せばよいのだが、どのように解析するのかはハッカーの思いつきに頼っている。すなわち、科学で出来上がった空間の問題を、論理的に解決できない、という現象が起きているようだ。

 

だからNEMが今どのような状態になっているのか、犯人はどのようなルートを通っているのか、など結果の解析情報は紹介されているが、それでどのように解決されるのかという肝心な情報は全く見えてこない。おそらくNEMの持ち主は遊んでいないで早くNEMを戻して欲しい、という気持ちではないか。

 

科学の象徴のようなサイバー空間でありながら、そこで起きた問題を論理的に解いて結論である犯人逮捕ができないのだ。あるいは解決のための論理の道筋が見えてこないのだ。

 

この状況は、科学により生み出されたサイバー空間に、あたかも人間の欲望という自然が入り込んだかのようだ。ハッカーの戦いから科学の特徴とその限界を見ることができる。

カテゴリー : 一般

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2018.03/02 昨日の補足

裁量労働制の議論は、経営陣が個々の知識労働者の成果を正しく計測できるのか、というところを論点にしなければいけない。残業時間数など無関係だ。また、知識労働者には自己実現のための時間を今まで以上使う覚悟が求められている。経営陣は今以上に知識労働者の自己実現を支援しなければいけなくなるので、自然と働く時間は増えるのだ。今まで知識労働者の自己実現時間を労働として考えてこなかった問題に直面する。

 

そもそも働いた時間と仕事の成果が相関しない時代になったのである。ドラッカーは50年ほど前に知識労働者の時代として現代を捉えていた。高校生の時に亡父から「断絶の時代」を渡されて現代の働く意味を理解した。そしてタイムカードのない会社を夢見た。ゴム会社には入社したときにタイムカードが無く、裁量労働に近いという幻想を描けるような会社だった。

 

また残業時間を申請すると出世が遅くなるという噂もあった。ゆえに当方はほとんど残業時間を申請したことが無く、上司から一定量つけるように促されたぐらいである。これは、会社に泊まり込んで働いているような状態でその仕事量が職場の噂になったからだ。どれだけ働いても黙認され、貢献と自己実現を十分にできたので当方は幸せだった。高分子とセラミックスの知識は、大学ではなくゴム会社でその基礎を身に着けた。

 

現在もゴム会社で事業として続いている高純度SiC製造技術シーズは、当方の自己実現の過程、俗にいうヤミ研から生みだされたものだ。このシーズは留学した無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)で花開いたが、当方の学位論文に書かれた方法で今も高純度SiCが生産されている。ただ、この成果に対してゴム会社から十分な対価を頂いていない。労働者が裁量労働と錯覚するような状態だったが、裁量労働制ではなかったからだ。

 

ゆえに今国会で議論すべきは、知識労働者の成果に対して正しく対価が支払われていない問題である。働く意味は貢献と自己実現なので、労働者が働きすぎる問題は裁量労働制の法整備が進んだら労働者の責任となる。しかし、その成果が正しく評価され対価が支払われたかどうかは、今の国会の議論を聞く限り労使問題として残る。

 

例えば高純度SiCの技術成果(注)について学位論文や出願した特許を根拠にそれを主張したとしても、また住友金属工業とのJVを立ち上げたときにたった一人でパイロットプラントを動かし過重労働をしていた事実にしても、第三者の証明が無ければせいぜい自画自賛と笑われるだけである。対価については今も保管している給与明細書がその証拠になるかもしれないが、同期よりもわずかに多い基本給の金額がその対価と言われたら、どのように反論できるのだろうか。

 

特許に対しては、その対価を頂いたあるいは会社が支払った痕跡は無いのでこの点は主張できるかもしれない。このように成果とその対価について労使でどのようにすべきか何も法的な取り決めが無い状態では労働者が永遠に悩むことになる。

 

知識労働を時間で計測すると矛盾が生じる。このような時間と仕事の成果が相関しない業務を裁量労働とすべきで、時間と仕事の成果が相関する仕事を裁量労働としない法律を定めることや、成果に対する対価の支払いをどのように行ったらよいか、国の指針をだすことである。

 

これは成果給で説明すると、GDPや会社の利益から最低基本単価を決めることが可能と思われる。また、一つの仕事に携わった年限に応じ最低年功賃金を決めれば派遣社員も昇給の可能性が生まれる。習熟度の測定を単純に年数で計測することの問題はあるが、多くの学習曲線が時間をパラメーターにしていることから大きな誤差は生まれないと思われる。知識労働者が生み出す成果について法的な整備が必要である。

 

(注)あくまでも技術発明の成果とJV立ち上げの成果である。経営陣の熱意と努力や、当方の転職後ゴム会社で業務を受け継いだ人々の事業貢献についてその成果が誰のものかは説明するまでも無い。ただし、転職後も支援のためのお手伝いや事業が立ち上がるまでの二年弱、たった一人でこの業務と他のテーマを担当し、パイロットプラント以外の実験室に置かれた研究設備を当方の許可なく廃棄されたり、その他の妨害と思われる出来事に耐えながら使命を全うした暗い思い出を今改めて検証するときに知識労働が知の戦いになる特性と裁量労働から生じる問題とが重なるのだ。他の企業でも当方のような苦労を体験している技術者がいるのではないかと懸念しているが、これは過重労働とは異なるカテゴリーの問題である。知識労働の現場は、労働時間云々以外の有象無象の問題が多い新しい形の労働問題の巣窟であり、失われた20年間と長期渡り企業の業績が上がらなかった遠因ととらえている。昨今パワハラやセクハラ、モラハラなどが突然噴出したように思われているが、これらはバブル景気の陰に隠れていたものが20年間にリベールされた結果である。裁量労働については、知識労働の特性をよく解析し正しく法整備をすべきである。丁寧に知識労働の現場の問題についての議論に時間をかけるべきである。

カテゴリー : 一般

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