フェノール樹脂とポリエチルシリケートの反応を観察しながら廃棄物処理をするのは楽しかった。この作業のゴールは、フェノール樹脂をすべて廃棄することであり、他の制約は何も無かった。ゆえに様々な合成条件を思いつくままに試していた。
目の前の反応を観察していると不思議なことに必要な触媒量が見えてくるようになった。また、様々な酸触媒を試したが、酸触媒の構造と反応の関係も見えてきたような気がした。
何となくベスト条件が分かったような気がしたところでフェノール樹脂が無くなった。1ケ月後には無機材研留学という少し忙しい時であったが、天井材の開発が無事計画通り完了していたので、気楽であった。
留学して半年後、人事部から無機材研に電話がかかってきた(注)。この電話がきっかけで、1週間無機材研で自由な研究ができる時間を頂けた。そしてその自由な時間に、高純度SiCの新合成法の技術を完成させた。
現在ゴム会社でSiCの前駆体合成に使われている酸触媒がこの時見いだされた酸触媒と異なる点以外は、ほとんど同じプロセスが30年間採用されている。
高純度SiC製造技術に関して基本的なプロセスが無機材研でできあがるまでに、仮説設定などしていない。試行錯誤の実験をたった1日行っただけである。すべて過去の経験と電気炉の前におけるお祈りという非科学的なプロセスだった。しかし、30年も事業として続く技術ができたのである。
(注)自由記述の昇進試験の結果が不合格という連絡だった。「あなたが考えている新事業について書いてください。」というのが試験問題であり、今でも問題と解答を記憶している。そしてこの時の解答が間違いでなかったことは、ゴム会社で30年間解答通りの事業が続いていることで明らかである。無機材研の総合研究官へ電話がかかり、当方が呼び出された。I総合研究官の横で取り乱すつもりは無かったが、ショックでしばらく沈黙したのを記憶している。I総合研究官は、当方のモラールアップのために試験問題の解答に書いたアイデアを実験してみなさいと、優しくいってくださった。そして、一週間後は、実験が途中でも従来通り元気に仕事をしてください、と。この日から5日後には、真っ黄色の高純度SiC微粉が世界で初めて合成された。この出来事でサラリーマン生活が180度変化するのだが、ゴム会社の研究所へ戻ってからは大変なことばかりでやがて転職するような出来事が起きた。経営幹部の方々の激励があり、何とかS社とのJVという形で事業を立ち上げ、悩んだが誠実真摯な行動という視点でセラミックスと無関係の業務を担当する会社へ転職した。学位までとった科学者としてのキャリアをすべて捨てたのである。
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フェノール樹脂とポリエチルシリケートを酸触媒存在下で均一混合し、高純度SiCの前駆体に用いる、というアイデアは非科学的なアイデアである。しかしそれが成功すると確信していたのは、ポリウレタン発泡体やフェノール樹脂発泡体などのリアクティブブレンドを経験していたからだ。
例えばフェノール樹脂と水溶性ナイロンは均一に混合できないはずであるが、条件を選択すれば、均一に混合でき、しなやかなナイロン変性フェノール樹脂が合成される。
この実験に成功していたので、フェノール樹脂とポリエチルシリケートのリアクティブブレンドは成功すると確信していた。しかし、数回の実験では、科学の理論を証明するような結果しか得られなかった。そこで、フェノール樹脂の廃棄業務を良い機会と捉えて、試行錯誤で反応条件を決めようと考えた。
朝からフェノール樹脂とポリエチルシリケートを混合しながらその様子を観察した。昼近くなっても均一にならなかった。昼食など食べる気がしなかったので、ただひたすら均一なリアクティブブレンド技術ができないか、試行錯誤で実験を繰り返しながら観察を続けた。
午後になると、目視で分かるような相分離状態が起きなくなった。15時頃には、シリカの沈殿も分からなくなった。夕方近くになって、フェノール樹脂とポリエチルシリケートが均一になった透明液体が得られた。後はゲル化させるだけである。ちょうどフェノール樹脂の廃棄作業は完了した。
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ゴム会社で30年以上経った今でも続いている高純度SiCの事業は、非科学的なプロセスで研究シーズが誕生し、科学技術庁無機材質研究所(以下無機材研、現在の物質材料研究機構)における一発芸で技術ができあがっている。
この技術は、フェノール樹脂天井材の開発が完了し、余った液体のフェノール樹脂を処分するために一日かけて固体化(反応させてゲル化)した作業で研究シーズが見つかっている。
廃棄すべきフェノール樹脂をポリエチルシリケートと混合しながらゲル化させて捨てやすいように固体化していった。フローリー・ハギンズ理論をご存じの方ならば、これでは捨てやすいゴミの状態にならないことに気がつかれるだろう。
フェノール樹脂とポリエチルシリケートは、科学理論に基づくと絶対に均一にならない組み合わせで、固体化させようと酸触媒を加えると、フェノール樹脂だけで固まり、ポリエチルシリケートはフェノール樹脂の反応で生成する水と酸触媒の効果で加水分解しシリカを沈殿させる。
すなわちこの二種類のポリマーを均一に混合し、SiCの前駆体に用いる、という発想は科学に精通していると出てこない。だから、当時公開されていた特許もフェノール樹脂とシリカの組み合わせか、ポリエチルシリケートとカーボンの組み合わせのいずれかをSiCの前駆体に用いる技術だけが出願されていた。そしてこの新技術の企画をゴム会社で提案したときには、覚悟はしていたが周囲から馬鹿にされた。
馬鹿にされてもその技術に拘ることができたのは、科学的な仕事の進め方は、時に未知の自然現象を排除する、と指導社員が教えてくださったからだ。すなわち科学ですべての自然現象を説明できるならば、もう科学の研究を大学で行う必要が無いはずであるが、未だに大学では研究が続けられている。
そして永遠に人類は自然現象をすべて科学で説明できないかもしれない、という言葉を指導社員は言われた。当方はこの言葉を初めて聞いたときに、そうかもしれない、と素直に納得した。担当していたゴム材料の実験データについて、教科書通りではなくその理解に苦労していたからだ。
目の前の実験データと論文とどちらが信頼できるのか?そのような問いをし続ける濃厚な3ケ月間だった。カオス混合という言葉を初めて聞いたときでもある。新入社員時代に出会った指導社員は、非科学的方法を真剣に考えるきっかけを幾つかくださった。
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東京都知事選で小池百合子元防衛相が当選し、自民党などが推薦した増田寛也元総務相が敗れたことについて、同党の下村博文総裁特別補佐は1日午前の民放番組で「予想以上の大敗だ。謙虚に受け止める必要がある」と述べ、小池氏出馬の経緯に関しては「反党行為だったことは事実だ」として、党紀委員会で処分を検討すべきだとの考えを示した。
都知事選開始時には自民党員で小池氏を応援した場合には除名処分もありうるという締め付けを自民党は出している。これに対し、小泉氏は何が自由だ、何が民主だ、と批判していたが、まさにその通りだと思う。小池氏は、都知事に立候補すると最初に手を挙げた人だからである。
なぜ自民党が小池氏の立候補を認めなかったのか知らないが、新聞報道によれば自民党都議連の反対があったという。ニュースの一部では小池陣営が対立構図を作るために仕掛けた、という解説もあったが、立候補に至る実際の流れを見る限り、仕掛けと言うよりも党都連の反対が主原因だろう。
選挙民から見れば、なぜ都知事にふさわしい人が立候補しようとしているのに自民党がそれを認めないのか不思議に写った。それを小池陣営はうまく選挙運動に利用した、というのが真相だと思う。
これは会社組織の中でも起きる力学だが、本来ふさわしい人が手を挙げても、その人を嫌っている有力者が組織を動かし、ふさわしい人をつぶしにかかる時に見られる。このときつぶされることを避けて、組織に従うのか、あるいは正論を通し組織を飛び出す選択をするのかは難しい。
組織の健全化のためには後者が正しいが、個人の人生を考慮すると前者が無難な選択となる(注)。そもそもふさわしい人材を引っ込めて、わざわざ他の人を持ってこようとする組織の動きが不自然で、そのようなことは少し知識があれば気がつく。
現代の組織は柔軟な動きが求められている。選挙前の出来事はさておき、今後を考えたときには、形式通りの処分をしない方が自民党という組織として健全である。本来党都連の動きがおかしかったのである。党都連を正しいと認めれば、小池氏の動きは反党行為になるのかもしれないが、党都連がおかしな動きをしたために今回の事態を招いたとしたならば、悪いのは党都連であり、党都連の改革を自民党はすべきである。
WEBには「党都連のドン」の存在や、その人物により自殺に追い込まれた自民党都議の話(走り書きの遺書まで公開されている)、東京オリンピックに関わるドンの周囲の怪しい話が報じられている。今回小池氏を応援した場合の締め付けもその人物名+石原氏で出されている。はたして小池氏および応援者を反党行為として機械的に処分するのが正しいのかどうか。
逆に「処分しない」、という判断の方は政治的に見えるかもしれないが、自民党という組織にとって正しい判断のように思われる。もし「処分無し」という判断を出して党都連の改革に乗り出したなら自民党は都民に見直されるかもしれない。石原氏は「小池さんはわがままだ」と表現したが、本当に厚化粧でわがままかどうかは今回都民が判断を出したのである。小池氏は党都連の改革を掲げていた。ゆえに処分ではなく党都連の改革という方針が自民党として自然な判断では?
(注)高純度SiCの事業を住友金属工業(当時)とのJVとして立ち上げながら、転職に至った経験を持つ身としては、大変辛い選択となることを覚悟して正論を通すべき、とアドバイスしたい。
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刑事コロンボの物語では、必ず最初に事件が描かれ、事件が警察に連絡されてその現場にコロンボが現れる形式である。これは倒叙探偵小説と呼ばれるカテゴリーの物語展開方法である。
最初に示された現場には、刑事コロンボが登場して観察を始めた場所が、必ずしも犯行現場ではなかったという事件もあった。また、事件の現場が犯人により偽装されていた事件もあった。しかし、観察しているコロンボの立場では、そのようなことは事件が解決してから分かる事実であり、この真相をあぶり出すコロンボの仕掛けが話を面白くしていた。
現場が真実であろうと偽装された現場であろうとコロンボは真摯に観察を繰り返す。時には自分が被害者になったつもりで何度も何度も倒れてみたりする。すなわちコロンボは実践主義者なのだ。ホームズのように仮説をたてながら事件を解決するのではなく、現場における体験をベースに事件を解決してゆく。
そのプロセスは一見科学的な推論をしているように見えるが、決して科学的ではない。彼の場合には、考えられることを自分で実行してみて矛盾を見つけ出してゆく非科学的な試行錯誤法である。ホームズのように仮説がはずれたら、ベーカー街にもどり再度ワトソンと仮説を練り直す、などということをしない。
犯人を見つけ出すまで、試行実験を幾度となく繰り返すのである。さらには、その試行実験の蜘蛛の巣に犯人が引っかかるときもある。コロンボでは、名探偵ホームズではおきまりとなっている推論を立てるシーンよりも犯人との駆け引きのシーンが多い。
すなわちコロンボの問題解決法は、科学が生まれた時代に同時に誕生したホームズと異なり、極めて非科学的な方法である。それも現場という結論の場を観察しながらよれよれのレインコートと人なつっこい笑顔で犯人(答え)に迫ってゆくヒューマンプロセスである。
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問題解決の方法において、観察をスタートにおくと、科学的ではない方法でも科学的方法と同等以上の解決成果を生み出すことが可能である。
観察結果から仮説を設定するのではなく、すべての可能性を書き出し問題解決に当たるのである。
このとき前向きの推論ですべての可能性について考えたときには、すべてを試さなければならず、仮説設定による科学的な方法よりも時間がかかるであろう。
しかし、結果あるいは結論、自分が望んでいる状態、あるべき姿などゴールイメージを設定して、それらと書き出されたすべての可能性についての比較検討により、幾つかの可能性に絞り込むことは可能で、それら絞り込まれた可能性について検討を進めれば、科学的方法に近いスピードで問題解決が可能となる。
この方法では、結論を想定していることが仮説設定と同じことではないか、という反論がでてくるが、結論を想定する行為はその結論に根拠を示せないため非科学的であり、仮説設定と同じではない。
例えば刑事コロンボの問題解決法を思い出していただきたい。彼の方法は科学に毒された目には一見科学的に見えるかもしれないが、たいていの事件は非科学的に解決している。時には運や情も味方につけている。
名探偵ホームズと刑事コロンボでは、その生きた時代が異なる(注:小説の中)ので直接対決はできないが、コロンボの方法論が科学捜査を軸にした非科学的思考ゆえにそのアンバランスが現代的に見える。
名探偵ホームズは、科学のエンジンとなる論理学が完成した時代に生まれており、当時は斬新なスタイルだったかもしれないが、野暮ったいコロンボに比べるとあまりにも科学に忠実でスマートすぎて時代遅れな印象を当方はうける。
但し評価者によっては、名探偵ホームズを洗練された科学捜査で現代でもその物語は色あせていない、と言われたりする。しかし、科学の問題が見えてきた現代においては、むしろ非科学的なコロンボに、より魅力的ではないだろうか。
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少し驚いたのは、ソニーがリチウム二次電池事業を村田製作所へ売却したと28日のニュースで報じられたことだ。ただ、そのニュースで複雑な気持ちになったのは、ソニーがリチウム二次電池を世界で初めて開発した、と書かれていた点である。
リチウム二次電池の実用化であれば、ポリアニリンリチウム二次電池の開発として、昭和63年に日本化学会化学技術賞をブリヂストンは受賞している。すなわち、ブリヂストンが世界初である。
なぜ、ブリヂストンが世界初と報じられないのかご興味ある方は問い合わせていただきたいが、ブリヂストンではリチウム二次電池の火災の問題にも早くから取り組み、電解質の難燃剤であるホスファゼンを実用化している。この電解質に添加するホスファゼン化合物については、日本化学工業で事業が継承されている。
このようなことから、ソニーのニュースについて本欄で触れるかどうか悩んだが、リチウム二次電池事業の状況を示す重要なニュースとして書くことにした。
ハイブリッド車そして次世代の電気自動車に必要な軽量二次電池の開発競争は激しさを増している。また、その二次電池新製品の商品としてのライフサイクルは短い。次から次へと高性能の電池が登場している。このような状況では体力勝負となり、メーカーとして体力が落ちてきたソニーには少々きつい事業となったのだろう。
ブリヂストンでは、日本化学会から技術賞を受賞すると早々と事業を辞めてしまっている。社内では酸化物系セラミックスの正極開発も進められていたので当時は残念に思ったが、今回のニュースを読む限り、経営の判断として正しかったのだろう。
当時のブリヂストンでは、電池とメカトロニクス、ファインセラミックスを3本の柱として位置づけ、新事業開発に取り組んでいた。高純度SiC事業を提案した当方は、最初にテストマーケティングを始め、駄馬の先走りと言われたりしたが、おかげで大きな市場は無いが将来必ず成長するという確信を得ることができた。
そして、いわゆる開発の死の谷を一人で歩くことになるが、死の谷を歩きながら、他の二本柱の技術開発のお手伝いをしていた。どのような技術を開発したかは自慢話になるのでここで書かないが、電池や電気粘性流体の仕事でいくつか成果を出したために、住友金属工業と高純度SiCに関するJVを立ち上げながらも写真会社へ転職することになった。
ブリヂストンの三本の柱の方針は、半導体治工具用高純度SiC事業として化工品部門に移管され現在も続いている。また、リチウムイオン電池電解質の難燃剤は、日本化学工業で事業が続いている。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
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科学の無い時代でも観察という行為は行われていた。また、科学誕生以前の人類の遺産のほとんどは観察の成果ともいえる技術である。科学がもうすぐ生まれるかもしれない時代に活躍したニュートンも観察でニュートン力学を完成している。
科学では観察という行為は必ずしも必要ではないが、科学の無い時代の技術開発では、観察は最も重要な行為だったに違いない。また観察という手段が無ければ新しい技術を生み出すことができなかったのかもしれない。
だからガリレオ始め現代の科学者にも匹敵するような科学の無い時代の哲学者の遺作が、どのような手順で発明されたのか、観察と言う行為を手掛かりに思いを巡らすことができる。
彼らが観察したかもしれないオブジェクトを仮説により設定し、その仮説の正しさを遺作の中に求め、彼らの思索活動を研究して、といった物語は多い。
マッハ力学史はそのような名著の一つであるが、この名著を何度も読んでみると、科学的ではない方法でも科学と同等以上の成果を出せる事実が浮かび上がってくる。
そして、自然現象を観察し、そこから人類に有用な機能を取り出す現代の技術開発の活動に対して、科学は分析や解析の手段を進歩させているだけで、その方法論に有用な提案をしていないのではないか、という疑問がわいてくる。
すなわち科学は人類に必要な道具の改良スピードを速めることに多大な成果をあげたが、社会のイノベーションを起こしてきたのは技術者だと思う。
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科学を最初に学ぶ理科の授業では観察が中心である。また、ファーブル昆虫記は、小学校の夏休みの読書課題として定番の読み物である。だから観察は科学特有の行為と勘違いしている人がいる。
観察という行為が無くても科学論文を書くことが可能である。科学の研究を推進する一手段として観察という行為があるが、観察そのものが科学に必須ということではない。
例えば数値解析の論文を書くときに観察は不要である。また、実験が嫌いな科学者も増えており、その方たちは観察ではなく報告された現象を考察して仮説を立て、実験の指示を同僚スタッフに出す。
だから、自然現象の観察は科学に必須ではないのだ。科学論文を読み、その論文に触発されて研究を進め新たな真理を見いだす行為も立派な科学の方法として実践されている。中には学位取得の相談に来た企業研究者の研究成果からちゃっかり勝手に論文を出すような国立T大の先生もいた。
昔観察や実験の嫌いな学生は立派な科学者になれない、と言われたりもしたが、観察や実験をしないで論文を書くような立派な科学者もいるのだ。会議ばかりしている科学者だって今の時代は多い。
科学の仕事を進めるのに観察は不要とぐらい思える時代でもある。面白いのはファーブル昆虫記がノーベル賞候補に挙がったときにそれは文学賞として検討された。
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次世代の新幹線車両にはSiC半導体が使用されるという。その結果,デバイスを小型化できて車両下部に空間が生まれ、その活用を考えているというニュースが流れた。
今パワー半導体としてSiCがどんどん普及している。またSiCウェハーの大口径化の研究も進められている。現在のところ昇華法(レーリー法)が主体だが将来は気相法が主流になると言われている。
当方は、昇華法の改良が有望であり、その安定した結晶成長ゆえに将来も主流になると思っているが、多くの研究者は気相法に賭けて研究を行っている。しかし、まだ昇華法ほど大口径化には成功しておらず、その成長速度のみが騒がれている。
当方が昇華法に拘るわけは、かつて実験した経験があるからだ。20年以上前の話だが、昇華法は用いるSiCの原料によりその反応速度が変化する。しかし、このあたりの研究が未だに進んでいない。
当方の学位はSiCの反応速度論が半分をしめ、高純度SiCの結晶成長の研究については少しうるさい方であるが、ほとんどの研究者は当方のことを知らないだろう。SiCのスタックシミュレーションも30年以上前に実施し、ポリタイプの秘密について少し見えている。
FD事件さえ無ければ今頃ゴム会社でSiCウェハーの事業を行っていたかもしれない。人生とは面白いもので、今はセラミックス協会からお声はかからず高分子学会から講演依頼が来たりする状態である。もちろん両者の学会員である。
不思議なことに3年ほど前韓国企業の2社から問い合わせがあった。タイミングの悪いことに中国出張等が重なり、十分な対応ができなかった。その後韓国経済の状態が悪くなり、一社からは検討を中止したとの連絡が入った。これからまだ有望な分野である。
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