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2012.10/24 iPS細胞発明における考えるプロセス

2012年10月21日の夜、たまたまテレビのスイッチをいれたところ、NHKの番組で、山中博士がiPS細胞を発明したプロセスについて、実験結果をまとめた資料とともに解説をしていました。この話題をもう一度取り上げてみます。

 

マウスやヒトの遺伝子の数は全部で約2万あるそうですが、研究を開始するときに、理化学研究所が2001年から無料提供を始めたマウスの遺伝子データベースを使い、そのうち、万能細胞の中でだけ働いているとみられる遺伝子を24個まで絞り込む作業を行ったそうです。興味深かったのは、この24個の遺伝子を候補として選び、まず1つ1つ遺伝子の機能を確認する実験を行い、何の変化も起きなかったが、選ばれた24個の遺伝子すべてをまとめて細胞に入れた思いつき実験を1水準同時に行い、その実験で変化が起きたので候補として選ばれた24個の遺伝子は正しかった、と判断されたそうです。

 

この実験結果の成功をヒントに、1個ずつ減らし、万能細胞ができなかったらそれが必須の遺伝子のはず、と狙いを定め、1ケ月ほど確認の実験を行い、4個の遺伝子を選ぶことに成功したとのこと。

 

この成功に至るプロセスで大切なことは、24個の遺伝子をまとめて細胞に入れた実験を行ったことである。この実験をこの段階で行うプロセスが科学的に正当性を持つためには、組み合わせた遺伝子の交互作用に負の作用が無く、いつでも特定の組み合わせで万能細胞ができる、という事実が科学的に証明されているときだけです。しかしこの実験を行った時に、iPS細胞が発明されていなかったわけですから、そのような事実が存在するはずもなく、それゆえ最初に注意深く1つ1つの遺伝子の機能を確認する実験を優先させたのです。

 

注意深く行った実験からは有益な情報が得られず、24個の遺伝子すべてを細胞に入れた大胆な実験で万能細胞の兆候が得られたのは、運が良かったからだと思います。もし遺伝子の交互作用に負の働きを示す組み合わせがあったなら、大胆な実験も失敗に終わったと思います。

 

この実験は科学的ではなく非科学的ですが、この成功の後のプロセスも非科学的プロセスで進められます。24個から1個ずつ取り除き、万能細胞ができなかったら、取り除いた1個は必須の遺伝子と判断する取り決めで実験を進めますが、この判断プロセスでは、取り除いた1個の遺伝子が独立に機能している場合と、交互作用が存在する時で、正の場合と負の場合を検討しなければいけないプロセスを省略しています。

 

実は24個の遺伝子から4個の組み合わせを選ぶ、という実験では、科学的に行った場合に10,626通りの実験を行う必要があります。10,626通りの実験で一つ一つ確認し、初めて科学的に検証された結果といえるはずです。それを不要な遺伝子を探すという科学的に証明されていない単純化された非科学的プロセスで効率をあげ成功に至っております。

 

さらに組み合わせが4個の遺伝子である、という事実も彼らの発明の前には無く、個数もわかっていなかったはずですが、非科学的なプロセスのおかげで、必須の遺伝子4個の組み合わせが簡単に選ばれてしまいます。

 

生化学分野は専門外なので邪推になりますが、科学的に追及していったならば、iPS細胞を作り出す遺伝子の組み合わせは、順列組合せの観点から他にもある可能性が残っているように思われます。24個の遺伝子を山中博士が選ばれた時点で遺伝子の働きを予測されていた、と考えると非科学的なプロセスでiPS細胞の発明を完成できたことを納得できます。彼らの考えるプロセスは、非科学的と言われるニュートンの行った思考実験により発明や発見の効率を上げる方法と同一だからです。

 

先日のテレビ番組を途中から見て一部不明点がありましたので調べてみましたら、あらためて非科学的考えるプロセスが、発明や発見を行うために重要なプロセスであると思いました。弊社の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や「問題は「結論」から考えろセミナー」では、ヒューマンプロセスに着目した問題解決法を公開しております。科学的に当たり前のことしか導かれないTRIZやUSITよりも易しい方法です。

 

問題は「結論」から考えろ!

本セミナーは受講者のペースに合わせて進めることが可能です。
ナレーションが無くても資料だけで内容を理解できるように一般のプレゼン資料とは異なる表現を行っています。
弊社ではこのセミナーをエンジンとして用いた研修プログラムを販売しております。

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2012.10/22 非科学的方法の重要性

昨日NHKでiPS細胞の発明に至るプロセスを解説していました。興味深かったのは、最初に20数個の遺伝子を候補として選び、1つ1つ遺伝子の機能を確認する実験を行ったが、何の変化も起きなかった。しかし、選ばれた20数個の遺伝子すべてを使った試料で変化が起きたので候補として選ばれた20数個の遺伝子は正しかった、と判断した。それから1ケ月ほど確認の実験を行い、4個の遺伝子を選んだ、というものである。

 

ここで大切なことは、20数個の遺伝子をすべて使った試料の実験を行ったことである。この実験を行う科学的論理があるとするならば複数の組み合わせで機能することがわかっている科学的事実が既にあった時である。しかし、この科学的事実が無かったからこそ、新発見として今回のノーベル賞受賞につながっているのです。ゆえに、少なくともはじめてこの実験が行われたことについては、非科学的論理に基づく実験という評価なります。

 

NHKの解説ではこのあたりの詳細な説明を行わなかったが、実はこの非科学的論理に基づく実験こそが新発見に重要なプロセスです。

 

冷静に考えていただければご理解いただけると思いますが、科学的論理に基づく実験では当たり前のことしか出てきません。科学的に考えて当たり前の実験結果が得られなかったなら、それは科学的に正しくないか、単なる実験の失敗である。この前提があるから、仮説を設定して、その仮説の正しさを確認するために科学者は実験を行うことができるのです。

 

実はこの科学的プロセスは、論文を書く時に重要であるが、何か新発見をしようとするときに、あるいはブレークスルーを行う時には不向きなプロセスです。新発見された現象について科学的な説明が与えられるので、我々は、新発見が得られるプロセスまで科学的に行われている、と錯覚しますが、有名なアインシュタインの相対性理論でさえ、思考実験という非科学的方法で生まれ、その後科学的な説明が与えられる、という手順です。高校で学ぶニュートン力学に至りましては、科学の無い時代の産物を、科学的に学んでいるのです。

 

多くの新発見は非科学的論理を適用したところで生まれている事実に注目すべきです。

 

不確実性の時代が発表されてから30年以上たち、ますます不確実な先の読めない時代になってきました。このような時に、既存のビジネスプロセスや科学的な方法論で問題解決しましても、隘路に入り込みました時のブレークスルーができません。

 

この点に着目した問題解決法が弊社のコンサルティングのエンジンであり、弊社販売の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や電子セミナー「問題は「結論」から考えろ」で公開しております。ぜひご利用ください。また、出張講演もいたしますので弊社へ気軽にご相談ください。

 

問題は「結論」から考えろ!

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2012.10/21 1980年前後の状況

1990年代にバブルがはじけてから、失われた10年とか失われた20年とか表現されていますが、実は1980年前後からこの状況は始まっていましたが、ただ10年間はバブル景気に隠され気がつかなかっただけではないでしょうか。

 

1980年前後第一次および第二次オイルショックで就職状況は最悪となっています。しかし、「Japan as No.1」という著書が発表され、バブル景気が10年続きます。同時期には「不確実性の時代」という著書も出版されていますが、産業界はバブル景気に沸きました。

 

日本ではファインセラミックスフィーバーが吹き荒れ、「第3の波」がもてはやされたり、と新規事業ブームや第3次ベンチャーブームに沸きます。モータリゼーションもピークになり、自動車は若者の大切な遊び道具と化し、テニスやスキーにマイカーで彼女を誘って出かけるのがブームとなりました。「私をスキーに連れてって」という映画もヒットしスキーブームになっています。セリカやプレリュードなどのスペシャリティーカーというジャンルの車が飛ぶように売れ、昨今の若者の車離れなど理解できない状況です。

 

当時と現代の状況は全く異なるように見えますが、異なるのはバブル景気の状況だけでその他はすでに当時時代が変わり始めていたのではないか、と最近思い始めました。そのような視点に立ちますと、政府の強いリーダーシップが今の時代大きく欠けている点が、今日最大の不幸のような気がしてきました。少なくとも1980年代は、バブル景気を誘導したという問題はありますが、ゆけゆけドンドンと政府のリーダーシップが機能していたように思います。

 

冷静な判断は大切です。何もしないのは賢い選択という賢者のアドバイスも正しいでしょう。しかし、就職状況も改善されず、何もしないならば不景気まっしぐらの状況が続くと思われますので、ここは一発お祭り騒ぎのような産業界のブームを政府主導で作っていただくと、1980年代の再来となるような気がします。バブルの時代は、現在の状況を作り出すような間違った施策ばかりではなかった、と思います。バブルとならないような1980年代の再来であれば、「Japan as No.1」を本当に目指せるように思います。

 

たとえば「エネルギー大国日本」というキャッチフレーズで技術開発ブームを起こすのはいかがでしょうか。2番はだめです。エネルギー大国として1番を目指す技術開発を国をあげて推進すればバブルとならない1980年代の再来になるように思います。技術シーズは芽生えていますのでそれを育てるだけです。

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2012.10/20 問題解決法について

意思決定と問題解決のシステムエンジニアリングにはビジネスプロセスとヒューマンプロセスの2つがある、と滝谷敬一郎著「行動する意思決定」にありました。不確実性の時代である今日には、ビジネスプロセスの問題解決法だけでは問題解決できず、ヒューマンプロセスの問題解決法と両立させる必要があるとのこと。

 

この本を読みますと、弊社の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や、「問題は「結論」から考えろ!」セミナーで展開しています問題解決法は、ヒューマンプロセスによる問題解決法になります。弊社の問題解決法では、非科学や非論理を問題解決法の中に取り入れることに成功し、その手順を公開しています。

 

閉塞感漂う今日の日本において、目の前の壁をブレークスルーするためには、斬新なアイデアが必要で、そのアイデアを導き出せるような問題解決法が求められております。ぜひ弊社の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や「問題は「結論」から考えろ!」セミナーをご活用ください。また出張講演も受け付けておりますので弊社企画部へお申込みください。

 

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2012.10/19 湘南台駅構内のバルーンアート

弊社は技術から芸術までを活動範囲にしておりますので、本日は芸術の話題を取り上げます。

小田急江ノ島線湘南台駅の地下通路に設置されたバルーンアートが、一部住民のクレームで撤去されることになったそうです。作品は、27、28日に開催される「藤沢市民まつり湘南台ファンタジア」を盛り上げようと実行委員会が、バルーンアートで実績のあるアーティストに制作を依頼した空間オブジェで、祭りの人気イベントで恒例のサンバパレードをイメージした作品に仕上げられていたようです。天井からつり下げられた直径数十センチ程度のバルーン50個には、女性の下着に見える手作りのサンバの衣装が着けられており、巨大な下半身型バルーンもセクシーな衣装をまとっている、と新聞記事には報じられておりました。

 

作者も合意されて撤去に至ったようですが、表現の自由には表現者の責任ならびにそれを許可した人の責任が伴うことを考えると、老若男女誰もが目にするところに、女性の下半身を見上げるような表現を許可した鉄道会社に問題があるように思います。明らかに女性の下半身を見上げるような表現は、その方面の趣味人以外の大半の日本民族にはそれを受け入れる精神構造にはなっていないことを考えるべきであった、と思います。

 

表現者は、表現の社会へ与える影響も考慮しなければなりません。たとえそれが感覚から生まれたもので斬新な表現として伝えたくても人類の幸福を損なうような表現(今回は不快感ですが)であればその時代の人類の許容できる芸術表現とはならないからです。表現者の責任とはそこまで考えた上で、自分の作品をどのように公開するのか決めなければなりません。表現の自由は大切な概念ですが、それは鑑賞者の存在を考えた時に表現を公開する場所に制約が加わるケースが出てくることを前提にしなければなりません。鑑賞者の幸福を奪う権利を表現者には与えられていないからです。その判断を表現者に求めることが難しい場合には、作品展示を許可する立場の責任は大きくなります。何の制限もない公共施設に展示される芸術作品については、作品展示を許可する立場の方が事前に厳格なチェックをすべきで、それは表現の自由をどのように考えるのかと言う議論とは異なる問題だと思います。

 

現場で作品を見ていないのに批判ばかり書いてしまい作者には申し訳ないですが、新聞に掲載された写真を見る限り、天井ではなく、床展示だったなら撤去までに至らなかったのではないか、と感じました。床では表現の意味が変わるので、あくまで見上げる位置の展示を希望と言うのであれば、鑑賞者の制限を加えられる場所に展示すべき作品と感じました。おそらく事前にデザインの打ち合わせがあったはずで、そこで誰も今回の事態を想定できなかったとしたならば、表現の自由よりも公共事業者として大きな問題があるように思います。

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2012.10/17 町の本屋の減少と「考える」習慣

朝のテレビ放送で町の本屋減少の話題を取り上げておりました。1997年に約2万2千件あった本屋が2011年には約1万5千件に減少し、すでに一軒も本屋の無い町が20町村を越えたとのこと。インターネット等情報伝達手段が変わったことによる、との解説がなされていましたが、そもそも本屋の役割は単なる情報販売店だけではなかったはずです。本屋の減少は、日本人が立ち読みも含め読書をしなくなった、すなわち読書人口が減少したためでは、と思っています。弊社では、電子出版を開店するに当たり、単純に本を電子化するだけでは面白くないと思いまして、読書人口減少に歯止めをかけるため、読んで楽しくなる本、例えば声の出る本や読者の質問で成長する本、電子セミナー等提案してまいりました。さらに面白い試みが出来ないかさらに新しい企画を検討中です。

 

しかし、読書をしなくなった根本の原因が、考えることを敬遠する風潮にあるとするならば、新しい企画も意味のないものになってしまいます。朝の放送でコメンテータがこの意味に近い発言をされた時に、ドキリとしました。「人間は考えるアシである」とはパスカルの言葉ですが、もし考えることを辞めてしまいましたら人類の進歩は無くなります。3.11の大震災以降は問題山積みの状態で、考える作業を止めたならば進歩どころか復興もできません。

 

退職する前の数年間に気になりましたことがいくつかあり、その中の一つに若い人たちが現場で遭遇する現象について「深く考えない姿勢」というものがあります。研究開発の現場では、仮説で制御された実験あるいは改良するために有効に働く因子を見つけるための実験計画に基づく実験が行われているのですが、必ずしも期待通りの結果になるとは限りません。期待通りの実験結果が得られたとしても実験計画には入っていない不可解な現象が現れたりします。前者の場合には、業務上の義務でもあり問題設定をして一応考えますが、後者の場合に備考欄にメモだけでも書かれていれば良い方で、問題となる現象が無かったかのごとく報告をする人がいます。

 

退職するまで可能な限り現場に出ることを心がけていましたので、実験計画とは直接関係ない現象について報告しない理由を聞きましたときに、現象に気がつかなかった、という回答には、「よく観察するように」とアドバイスしてきましたが、現象に気がついたが考えるのが面倒だ(とまで、さすがに明確には言いませんが、それに近い無難な言い訳をします)という回答には、何度も絶句させられました。仮にその時の業務とは無関係の現象でも予期せぬ現象がなぜ発生したのか考えておくことは、他の機会にその考えた経験が生きる場合が多いので、それは技術者が成長するために大切な習慣だと思っています。

 

業務とは無関係という理由とモラールへの影響も考え、注意する程度に終わっていたのですが、朝のテレビ放送を見て、そのような管理者の姿勢を反省しなければいけなかったのでは、という思いに駆られました。32年間、技術者として磨いてきた問題解決のノウハウを「問題は「結論」から考えろ!」という電子セミナーで公開しましたのは、若い技術者の方々に「考える」という作業の参考になれば、という思いからです。本セミナーにつきまして、弊社へお申し込み頂ければ、貴社の風土に合わせたプログラムでご提供するサービスも用意しておりますのでお問い合わせください。

 

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2012.10/16 不易流行

芭蕉の俳句哲学の言葉で、いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと、とか不変的な事象と流行変化する事象は、見かけ上は相反するようでありながら、根本的には同質の、表裏一体の事象であるとか様々な解説がありますが、技術開発の戦略にもこの考え方は重要です。

 

例えば基盤技術を基に時代とともに変化するニーズに応える商品を生み出す活動は、不易流行と通じます。新規事業に進出する時にも基盤技術を基に進出すると成功確率が高くなると言われております。

 

ところで、基盤技術を活用できない既存事業と全く異なる市場へ参入する場合には、どうすればよいのか、となると意見が分かれるようです。古くからあるマーケットインという考え方で商品に着目して商品企画に力を入れるべきだ、という考え方と、基盤技術を作ってそれから新市場へ入ってゆくという考え方があります。

 

ファインセラミックスフィーバーが吹き荒れる中、セラミックス市場へ進出しようとしていたゴム会社の方針を決めたのは無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)長の、「高純度SiC合成プロセスが開発できたなら、エンジニアリングセラミックス市場にもエレクトロニクスセラミックス市場にも進出できる」という一言でした。すなわち、高純度SiC合成プロセスを基盤技術にすえて広大なセラミックス市場に進出する、という考え方です。この方針に従い、1984年に2億4千万円の先行投資を行い、高純度SiC合成プラントと研究施設を整え、ファインセラミックス市場へ進出しました。その成果はピュアベータという商品名で30年経過した現在でも事業が継続し、高純度SiCが必要なパワー半導体の市場が大きくなりつつあるので、今後も事業は成長してゆくと期待されています。無機材質研究所長の不易流行の考え方は正しかったわけです。

 

一方不易流行で気をつけなければならないのは、基盤技術を破壊する対抗技術が登場した時です。うまく不易の部分を再構築し、新技術を取り込むのか、不易の部分までも捨て去り事業を撤退するのか判断が難しいですが、デジタル技術の写真業界に与えた影響を見ますと、大胆な判断とスピードが重要と思います。また、技術者一人一人も急激な変化に耐えられるように、幅広い技術分野に耐えられる不易の能力を鍛えておくことが変化の激しい時代には大切だと思います。「高分子材料のツボ」セミナーは、あらゆる高分子技術の不易の部分を整理できるセミナーです。是非ご活用ください。

 

 

高分子材料のツボセミナー

実務で高分子材料科学を活用する視点でまとめました。 高分子科学の全体像について学べますので、専門外の技術者にも学生にも役立ちます。

本書は高分子に関する知識を持っていない人の為に、写真と絵を中心に分かり易くまとめました。項目毎に穴埋め式の復習問題もあるので、学習内容の確認もできます。

また、電子書籍ならではの特徴として、購読者様からの質問を受け付けその回答が毎月反映されていきます。是非ご活用ください。

 

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2012.10/15 ファインセラミックスフィーバー

ファインセラミックスフィーバーは、1980年代に旧通産省(現在の経産省)が中心になって推進した「ムーンライト計画」という国家プロジェクトがきっかけとなり起きた材料革命です。このイノベーションは世界中を巻き込みながら、やがて高分子材料も加わりナノテクノロジー開発の動きへとつながりました。1979年にエズラ・F・ヴォーゲル著「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が発表されていますから、このフィーバーは、まさに世界中の注目と期待を集めた日本発の材料技術イノベーションと思っています。

 

ムーンライト計画の目標は、セラミックス断熱エンジンの開発でしたが、1960年代の小ブームで技術開発されたセラミックス圧電素子やICパッケージの成功も加わり、セラミックスとは無関係の1000社以上のメーカーまでも巻き込み、まさにフィーバーと呼ぶにふさわしい状況となりました。このフィーバーの間にセラミックス断熱エンジンの事業化を見ることはありませんでしたが、ゴム会社で半導体用高純度SiCのプラントが稼働するなど、セラミックス事業とは無関係だった企業に新しい事業を育成する波及効果はありました。

 

無謀なプロジェクトであった、あるいは予算を削って2番をめざしていたら税金の無駄遣いにならなかった、という反省もあるでしょうが、このイノベーションが、目標未達にもかかわらず、長期的に見れば大きな成果をあげたことは、現在の材料科学や産業への影響、例えば自動車の技術一つ取り上げましても歴史的に検証できるのではないかと思っています。

 

セラミックス断熱エンジンという目標が無謀である、との意見は、プロジェクトの企画当初よりあったようです。そもそもお茶碗に使用される材料技術で過酷な動的部品を設計する発想自体が無茶苦茶、という意見も当時聞きました。しかし、いすゞ自動車の開発したセラミックス断熱エンジンは、アスカに搭載され公道を走ることに成功しております。トヨタ自動車はガスタービンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムをモーターショーで発表しています。このハイブリッドシステムは、ガソリン以外の燃料を使用でき、エネルギー効率を40%まで高めることが可能なので、実現しましたらバットマンカーのような車のイメージで電気自動車よりも面白い技術になるのではないかと思っています。

 

この小型ガスタービンの開発は、現在でも続けられており、20世末には、タービン入り口温度1350℃、熱効率は42.1%、1200℃1000時間以上の連続運転というレベルまで到達(1)しました。ムーンライト計画は失敗に終わりましたが、その目標は10年以上経って何とか21世紀になる直前に達成されています。1番をめざす技術者の執念の成果です。

 

バブルがはじけ、このような国家プロジェクトに対する批判も起き、さらに民主党政権になり、技術開発は2番に甘んじても予算を削減しようという思想も出てきて、未来が暗い時代になっています。ファインセラミックスフィーバーが単なるお祭り騒ぎでは無く、材料技術や産業界へ大きな影響を残した事実を冷静に評価しますと、今このフィーバーと同じようなお祭り騒ぎ、例えば創エネルギー大国日本を目標とするような夢のような企画を経済産業省が中心となり推進されたなら明るい未来が開けるのではないでしょうか。エネルギー大国をめざせる研究の芽は、すでに日本で幾つか生まれていますので一大フィーバーになるのではないでしょうか。ただし、めざすのは1番です。iPS細胞以外に地味ながら燻し銀のような研究が日本で育ちつつあります。

 

<参考文献>

(1)特集「300kw級セラミックガスタービンを支えた部材開発」、セラミックス(日本セラミックス協会誌),12月号,1999年

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2012.10/14 出版予定

㈱ケンシューを設立して1年半、中国企業を指導した経験から「技術者が欲しかった中国語入門」、中国語の文法書を解析して中国語の基本文型を整理し、その成果を公開した「中国語基本5文型シリーズ」、32年間の研究開発経験においてアイデアの重要性に着目し、アイデア創出を促す問題解決法について提案した「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」、またそのセミナー版「問題は「結論」から考えろ!」、その他アイデアの基本となる基礎知識を短時間に頭に入れるための、「高分子材料のツボ」や「電気化学の要点」、就職前の学生対象に「入社前のTryセミナー」や「就活前のTryセミナー」、「簿記経理入門セミナー」などを販売してきました。また「誰でもわかる高分子」のような一般向けの技術書も「成長する本」という新しいコンセプトで提案しております。

 

2012年度下期からは、読者参加型の成長する本に力点を置き、「理系女子とめざす!未来技術」や芸術分野に力点をおいた出版を行ってゆきますのでご期待ください。専門分野の電子セミナーも順次新セミナーを公開してゆきますが、弊社の活動範囲「技術から芸術まで」の中で、これまで芸術分野に力を入れておりませんでしたので、下期は芸術を意識した活動を行ってゆきたいと考えています。

 

最後に(株)情報機構発刊専門書を中心に、専門領域の出版も現在企画中ですので是非弊社の活動にご注目ください。

 

 

 

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2012.10/13 未来予測

アルビントフラーの第3の波は、衝撃的でありました。日本でセラミックスフィーバーが始まる頃に情報技術による産業革命が起きる、という内容の本を読みびっくりしました。あれから30年以上経ち、改めて彼の著書を読んでみると、大枠は外れていませんが細部にはいくつか当たっていないところがあります。しかし、未来予測の大切なことは文明がどちらに向かうのか予測し、現状の体制で問題があるならば、それを是正し、人類の明るい未来を迎えられるように啓蒙することでしょう。おそらく彼の著書で外れている部分は、好意的に解釈をすれば人類が第3の産業革命への対応が遅れたため、と捉えることもできます。

 

人類の進化のスピードは早まっていますので、そろそろ第4の波が始まる頃ですが、第4の波について、エネルギー革命というキーワードを外せないように思います。昨年の3.11の大地震は、世界中に原子力発電の問題を提起いたしました。おそらくチェルノブイリの衝撃よりも大きかったのではないでしょうか。人為的ミスが重なったとはいえ、自然災害が引き金となっています。これまでの原子力事故の原因との大きな違いです。科学的予測が自然の力の前に無力だったわけです。太陽のエネルギーを人類は手に入れた、と小学生の時に習いましたが、傲慢でした。人類は自然と調和できるエネルギーを手に入れたときに幸せになる、というご託宣を3.11の時に受けたように感じています。

 

科学技術の進化にも面白い動きがあります。石油リファイナリーからバイオリファイナリーへの動きです。石油は中東などの一部の地域に局在しています。その石油を巡り、人類は様々な闘争を繰り返してきました。バイオリファイナリーの動きは、その力関係を変えるインパクトがあります。ジャトロワ以外にも石油代替となる植物がいくつか提案され始めました。コストの問題が指摘されていますが、石油は確実に値段が上がってゆきます。現在提案されているバイオリファイナリーのコストは、それが実現したときに石油同等になる可能性も見えてきました。

 

再生可能な自然エネルギーを直接電気に変換する技術も普及し始めましたが、自然エネルギーを直接電気に変えた場合には、人類がコントロールしやすいように一度蓄電する必要があります。エネルギー変換と蓄電を各家庭で行えばエネルギー効率はあがりますので、創電家電というカテゴリーも生まれようとしています。このような動きと第3の波の成果をさらに発展させてスマートグリッドがこれから開発が進み普及するものと思われます。

 

今後30年このようなエネルギー革命が中心となり、文明が進化してゆくであろうと思いますが、この進化の方向を技術開発で制御すれば、日本がエネルギー産出国になる可能性が見えてきます。すなわち第4の波は、日本がエネルギー産出国となるチャンスの産業革命で、弊社ではこれらの変化に対応するために技術から芸術まで提案できるよう準備を進めております。弊社の電脳書店の活動に注目してください。

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