活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2021.09/11 自動車にはエンジン

ホンダはAll電池の電気自動車へシフトする戦略を発表しているが、当方はSDGsの観点からこれを誤った判断のように思っている。おそらく技術が進展すれば、電池のエネルギーだけで動く車が、必ずしも環境負荷軽減に役立たないことに気がつくかもしれない。


日本に限れば、今でもそのような結論になるはずだ。燃料電池或いはエンジンを水素燃料で稼働させて走る車が環境負荷を最も低減できるとLCAのシナリオを作れるような時代が来るような気がする。


水素を燃料として用いるときの問題は、水素の調達の問題とガソリンエンジンと異なり燃料タンクが大きくなる問題である。ゆえに小型車には現在のところ水素燃料(注)の車の商品企画は難しい。


セラミックスフィーバーのさなか、水素で走る車が未来の車として本命視された時がある。その時の理由は、電池の充電時間と重量の問題が一番に挙げられていた。水素を燃料とすればこの問題はすぐにかたずく。


同じころにハイブリッド車の本命は、エンジンとモーターの協調動作とされた。すなわち現在日産が盛んに宣伝しているe-Powerは、エネルギー保存則の観点から効率が悪いとされた。しかし、日産の技術者の努力により、トヨタのハイブリッド車に肉薄する技術が開発された。


科学的に考えると効率が不利に見えた方式でも、技術開発の結果、エンジンのエネルギー効率の良い回転数だけを使って電池を充電しながら走れば、トヨタ方式に肉薄できる技術になるとは40年前想像できなかった。


実は日産の方式であれば、ガソリンから水素へ燃料を変換することも容易である。おそらく日産の技術者も考えているのだろう。そのような特許が日産から出願されている。


未来の車の姿が電気自動車であるらしいことは変わらないかもしれないが、その電気をどのように調達して走るのかは、まだ結論を出せない状態だ。あせって、電池だけで動く車に絞り込む愚だけは、避けてほしい。


(注)電気自動車は、電気をどのように生み出すのか、というシナリオによりLCAの結果は異なる。また原子力が環境負荷の極めて大きいエネルギー源であることは福島原子力発電所で証明された。原子力研究者たちに騙されていただけである。科学の問題はこのような嘘を提示されたときにそれが暴かれるまでに時間がかかることである。電気以外の自動車の燃料として水素が科学的に好ましいと言われているが、ダークホースとしてアンモニアがある。アンモニアであれば液化して貯蔵可能なので水素よりも燃料タンクの大きさを小さくできる。

カテゴリー : 一般

pagetop

2021.09/10 高分子の熱膨張制御

一般の高分子材料の熱膨張率は、金属やセラミックスに比較して10倍以上である。しかし、昔から高分子材料成形体の寸法精度についてニーズは高く、低熱膨張材料の研究が行われてきた。


しかし、光学部品で高い寸法精度が要求されるようなところには、金属やセラミックス以外の材料では設計が難しかった。そこで、20世紀末から低熱膨張率高分子複合材料や液晶ポリマーが開発されてきた。また負の熱膨張率材料との複合化も検討されたりしている。


ところが、熱膨張率の制御で古くから研究されてきたガラスでは、10倍以上の低熱膨張率化技術に成功して割れにくくなったガラスや、高密度化したHDの円盤が金属からガラスに置き換えられたり、半導体分野にも用途が広がり20世紀末に実績が増加したが、高分子材料では今一つである。


これは、それなりに理由があるのだが、現状の高分子の低熱膨張化技術と何が問題となっているのかにつて技術情報協会主催のWEBセミナーが1週間後開催されます。そこで、当方の学位論文のデータも含めた資料で講演します。詳細は弊社へ問い合わせてください。


講師割引を主催者と調整しますので、弊社へ申し込まれますと10%程度安くなります。また、弊社へお申し込みの方に限り、事前と事後に弊社へ直接質問できる特典があります。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2021.09/09 材料の科学と技術(3)

機能は材料の構造因子を媒介変数として発現している、とイメージして現象を眺めるのが材料開発のツボである。これ以上は、弊社に問い合わせていただきたいが、機能から組成を直接想像しようとしたり、その逆に組成と機能を直接結びつけるような体系を創ろうとするのは、怪しい科学の姿勢である。


材料において組成と同様にプロセシングは機能発現に重要な役割をする。プロセシングは重要であるが、何故かアカデミアであまり研究に積極的ではない。


材料科学の視点でプロセシングが重視されない理由として、科学として取扱いが難しいためと思われる。難しいから重視しないというのは、研究者の姿勢としていかがなものかと思うが、機能にとって組成は必要十分条件ではないから機能から組成を決めることはできないが組成が決まれば機能が決まる、という詭弁だけは使わないでいただきたい。


もしそのような詭弁を使っている科学者がいたなら、弊社が教育指導する必要があるかもしれない。弊社が教育指導している材料科学の内容と異なるからである。間違いを標準にされると弊社が困る。


特定の組成でどのようなプロセシングを経過しても特定の構造1種類しか形成しない場合に限り、組成から機能が決まる、と言えるが、それが保証されていない時には、組成が決まったからと言って特定の機能が決まるわけではない。


例えばジルコニアでは、組成が決まっても高靭性という機能が決まるわけではない。それなりのプロセシングを行わない限り、高靭性ジルコニアを製造することはできない。


PPS/6ナイロン/カーボンの組成をバンバリーで混練する場合には、さらに複雑で、バンバリーの操作方法で発現する機能は変化する。すなわち、プロセス機器を決めてもその操作手順が変われば構造が変化して機能が変わるのである。


具体的に説明すると、高性能な混練機を購入しても、そこで発生する剪断流動や伸長流動を理解していなければ、コンパウンドの構造制御などできない。剪断流動や伸長流動を制御しているのは、スクリューセグメントだけではない。


組成を決めて、ハードウェアーを揃えたのにそれでも目的とする機能のコンパウンドができないケースでは、弊社にご相談ください。科学ではアイデアを出せません。技術的手法でアイデアを見つけ、見つかったアイデアに対して科学的研究を行わなければいけません。


高分子材料では設備を購入してもプロセシングのソフトウェアーが無ければ、機能発現が難しいケースが存在する。セラミックスから高分子材料まで研究した経験があるのでそれを当方は、この欄でアドバイスしている。


弊社では技術指導をしているが、材料科学に潜むいくつかのこのような誤解も指摘している。その過程で困るのは、アカデミアで材料科学について詭弁を使われる先生がおられることだ。詭弁だけならよいが、当方の研究論文を勝手に当方の名前を末尾にして論文を書いてしまうような先生もいた。


これを科学者と技術者の人間性の違いと言いたくはないが、当方のFDを壊した人間は、企業の優秀な科学者だった。このような経験から研究分野にも誠実さは重要である、と言いたい。材料技術では誠実に開発を行わない時には、市場の顧客を失い持続的な開発が難しくなる。

カテゴリー : 連載 電気/電子材料 高分子

pagetop

2021.09/08 ギターの練習用アンプ

20年前、ギターの練習用環境に変革をもたらしたのは、LINE6のPODである。多数のエフェクターやアンプシミュレーターを一個のチップで行っていたPODは信号の遅延が指摘されていたが、練習用機器としてだけでなく音色コントロールが容易で、新しい音色を出すことも可能となったので、そのままステージで活用していたミュージシャンもいた。


このような商品が投入されたにもかかわらず、練習用アンプとして真空管アンプがいいとか、やはりスピーカーは10インチ以上欲しい、とか古くからのユーザーの議論があり、各社それを満たすための様々な機能の製品を市場に投入してきた。


PODの成功はDXの始まりであったが、この数年5インチ前後のスピーカーを2個搭載した練習用アンプが主流になりつつある。安いものでは3万円前後から購入でき、そのスペックに記載された機能の豊富さを見ると大変コストパフォーマンスが高い。


この安価で小さなスピーカーがどれだけすごいのかは、音だけでなく実際に使用してみると理解できる。すなわち20年前のPODとアンプ、スピーカーを合体した機能を越える製品だからである。当時PODは5万円前後していたので、道具をすべてそろえるのに10万円前後かかったのに、それが今では3万円程度で1式入手でき、さらにコンパクトだからヒットするのは当然である。


これを可能にしたのはデジタル技術である。すなわち、音の制御をすべてコンピューターで行い、増幅もデジタルアンプで低コスト(今50Wのデジタルアンプは2000円前後で手に入る)である。


音の制御をコンピューターで行っているから、ソフトウェアーのアップデートによりコストをそれほどかけなくても機能アップが可能である。最先端の機器ではスマホと接続しコントロール可能で、さらにお気に入りのプロのミュージシャンのアンプやエフェクターのセッティングをすぐに試すことができる。


さらにクラウドを活用したアップデートはアジャイル開発を可能とするので、新規参入も超スピードで可能となっている。これがDXの怖いところである。音楽用機器とホームオーディオ機器の垣根がなくなるかもしれない。


オーディオ市場は、20世紀型の市場は高級嗜好品に追いやられ、DXにより魅力的な商品が多種類登場している市場とみることができる。オーディオ市場はシュリンクしたのではなく、DXにより多種多様化したのではないか。安価なTVにオーディオ機能満載の商品が出てきても良いように思う。

 

カテゴリー : 一般

pagetop

2021.09/07 オーディオに学ぶ(10)

オンキョーはじめ今でもかろうじて生き残っているオーディオメーカーは、売り上げを落とし倒産の危機にある。また1970年代から成長した、アンプやスピーカーメーカーも同様で、ブランドを残すだけのメーカーも存在する。


しかし、市場をよく観察すると、音楽を楽しむユーザーは今でも多数存在しているが、そこで使用される道具が20世紀から大きく変わり、旧来のオーディオメーカーがそこに対応できなかっただけである。


昔ながらの道具は、富裕層の贅沢品あるいはいわゆるオーディオオタク族の興味の対象となり、今でもその市場は存在するが、オーディオ市場全体から見ればニッチ市場である。


このような市場の変化を、20世紀のマーケット研究家たちは、ユーザーのライフスタイルの変化にオーディオメーカーが対応できなかっただけ、と説明するかもしれないが、ユーザーの音楽の楽しみ方を変えた技術の流れに着目しなければ、この市場の新商品企画は難しいだけでなく、同じような危機にさらされている他の市場の参考にならない。


オーディオ市場における道具の変化は、まさにDXである。ソニーのウオークマンは20世紀のマーケット研究家たちの解説に適合する商品であるが、その後この市場は携帯電話からスマートフォンへの技術の流れに駆逐された。


ホームオーディオは、携帯電話からスマートフォンの技術の流れに無関係に位置づけられているが、スマートフォンとそれに対応したTVがあれば、デジタル化された高音質の音楽を楽しむことが可能である。不足するのは重低音の刺激ぐらいである。


恐らくオーディオ業界は、DXによりゆっくりと革新が起きた市場で、その解析を誤り、多数のメーカーが倒産した典型例ではないだろうか。


写真フィルム業界のように、デジタルカメラの登場で突然マーケットが縮小した事例と異なり、携帯電話の登場以来ゆっくりと進展し、オーディオ業界はその変化を見誤り、昔ながらの商品を作り続けていた多くのメーカーが倒産した。今他の市場でも同様の変化が起きている。DXにより難しくなった商品企画でお困りの方はご相談ください。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2021.09/06 材料の科学と技術(2)

配合なり組成から直接機能を導くことができる、という誤解があるので、配合なり組成を設計しても機能が発現しなかった時に否定証明を展開したりする。


もし、組成→機能を研究しています、という人がいたら、それは当方のFDを壊したような危ない人だから相手にしない方が良い。材料設計において組成からまず何が決まるのかというと物質の構造である。そしてその構造が唯一決まると安定動作する機能が得られるのだ。


低分子でも高分子でも、セラミックスでも金属でも組成からすぐに機能を結び付けてはいけない。組成から決まる構造を見極める必要がある。なぜなら、プロセシングが複数ある時には、組成とプロセシングの組み合わせで多数の構造が生まれるためである。プロセシング技術の重要性がここにあるが、後日説明する。


学生時代に研究し論文も書いたシクラメンの全合成の体験から低分子の例を説明する。この合成の最終段階でE体とZ体ができ、片方はシクラメンのいい香りとなるが、片方は思い出したくない香りである。この香りの機能は分子構造からきている。ちなみにこの研究は1977年頃JACSにショートコミュニケーションとして掲載された。


高分子やセラミックス、金属では説明の必要がないかもしれない。低分子の有機合成から無機高分子合成、セラミックス合成、繊維補強金属などいろいろな材料開発の経験をすると、組成から構造が唯一に決まるわけではなく、そこにおけるプロセシングの重要性が見えてくる。


困ったことに自分で手を汚して材料開発をした経験が乏しいと、このプロセシングの重要性を認識しないばかりか、組成から一義的に機能が決まるような間違いを主張したりする。組成とプロセシングの組み合わせから構造が決まり、構造が決まると機能が発現するのである。

カテゴリー : 一般

pagetop

2021.09/05 テレワークの功罪

コロナ禍で1年以上経過し、テレワークで生産性が上がっているのかどうか、という議論がなされている。さらに生産性だけでなく、テレワークによりパニック障害や不眠症になった事例までWEBニュースに散見される。


テレワークが本格的に行われるようになって日が浅いのでまだ慣れていない部分もあり、早急に結論を出すことが難しいが、多くのニュースで指摘されている公私の境界が無くなった点は注意する必要がある。


当方は、化学が好きで材料の専門家となりセラミックスから高分子材料まですべての材料開発を経験している。また、子供の頃は教師にあこがれ、先生でもなろうか、と思い教育実習も経験した。教育実習を経験してみて、あこがれと現実の難しさに気がついた。


教師は化学を教えているだけが仕事ではないのだ。恋愛相談にものらなければならない。実習中にラブレターをもらって実習の指導教官に相談したら、実習生でラブレターをもらえなかったら教職をあきらめた方が良い、と言う程度のものだった。


その後も数通ラブレターが届き、教職に向いていない自分に気がついた。この理由は、小学校の時の靴箱のラブレターほどの感動は無く、それにもかかわらず指導教官に相談した自分があまりにも軽く感じられたからである。大学で学んだ教育心理学など役に立たないと思った。


その結果材料技術者の道を歩むことになったのだが、ゴム会社で上司に趣味で仕事をやるなという類の注意を何度も受けている。ただ、楽しみながら仕事をやって成果を出していただけだが、それが上司に気に入らなかったのだろう。新入社員時代に工場試作を成功させて始末書を書く、意味不明の処遇まで受けた。


ただし、仕事と自己の嗜好の境界がほぼ無いような状態でサラリーマン時代の大半を過ごし、もったいないことをしたと反省している。


この時の経験から言えば、仕事と自分の生活との境界が無くなることは、確実に働き過ぎを招くと思う。実際に小生は自分の過重労働を特に苦痛と感じていなかっただけでなく、本給以上のサービス残業を行っていた時もある。


当方は仕事の内容において精神的な境界が無かった問題だが、一般にはこれが肉体的な境界となるのだろう。好きでやっているのではなく、自宅でやりたくもない仕事を生活の一部として取り込んでしまう苦痛は、当方の仕事ぶりを他人が見たときに趣味のように見えた問題よりも深刻かもしれない。

カテゴリー : 一般

pagetop

2021.09/04 オーディオに学ぶ(9)

オーディオの市場は音楽を楽しむ人で構成されていると思われる。昔はエジソンの発明による蓄音機が商品としてあった。当方が小学校に上がる前に手巻き式蓄音機を倉庫で見つけ遊んだ記憶がある。


小学生になった時にコロンビアのステレオを父親が購入してきた。高校生の時にはOTTOが勉強部屋に置かれた。義兄からのおさがりであるが深夜放送をそれで聴いていた。大学に進学後はサイモンとガーファンクルはじめフォーソングやブルース、ジャズのレコードを月に数枚購入し聞いていた。


ちょうどこのころがオーディオブームの始まりで、STEREO誌はじめオーディオ専門誌が多数登場するとともに、長岡鉄夫はじめオーディオ評論家が多数現れた。そして彼らがオーディオ業界をけん引していった。


オーディオ市場にはもう一つ、ビートルズの来日で火がついたエレキギター関連の市場が存在していた。オーディオ市場は大別すると演じる側と聴く側の市場が存在し、演じる側はプロ用機器として存在していた。聴く側の市場がホームオーディオ市場であり、これが急激に縮小化したのだが、演じる側の機器は昔ながらの規模で存在している。


聴く側の市場は、若者についていえば携帯電話に置き換わったように思われる。その他は高級オーディオである。ポータブルステレオも一部商品として存在しているが、家電店に行ってもそれを展示していない店舗も存在する。


今もステレオ誌が存在し、そこに紹介されている新製品を身近の家電店に行っても展示されていない。秋葉原にあるオーディオ専門店に行かなければ見つからない状態だ。


ところが驚くべきことに4-5000円程度の高性能デジタルアンプが秋葉原のオーディオ専門店以外で販売されている。これをネットで調べてみると、アマゾンでも扱っており、おそらく若い人はこの安価なデジタルアンプにスピーカーをつないでスマホで音楽を楽しむ生活をしている可能性がある。


すなわち、オーディオ機器の販売チャネルだけでなく機器そのものもDXの流れの影響を受け、市場が大きく変貌しているのにオーディオ業界がそこへ対応できていない可能性がある。


昔ながらの音楽を聴いて楽しむ層は今でも存在するが、高くなってしまったオーディオ製品など切り捨てて、安価に音楽を楽しむ手段を模索した結果、安価なデジタルアンプに安価な高性能自作スピーカーを接続して楽しむスタイルに変わったのかもしれない。



しかし、演じる側の機器については、少し大きな楽器店に行くと昔のように商品が展示され、お茶の水で数店ウィンドウショッピングをすれば売れ筋商品がわかる。すなわち、それなりの昔ながらの規模の市場が維持されているようだ。

カテゴリー : 一般

pagetop

2021.09/03 高分子のシミュレーション(1)

高分子材料のシミュレーションの有効性がどの程度あるのか、例えば組成から機能をシミュレートできるのか、という問いに対して、一般の人の期待に応えるのは現在のところ難しい、というのが正直な回答である。


まず、組成から機能を科学的に決められる、という考え方に問題があるにもかかわらず、それがシミュレートできて、特定の組成で少し実験するだけで機能性コンパウンドを実用化できたなら、それは素晴らしいことである。


今の科学でそこまでできるという人は、ほとんど詐欺師と捉えてよいが、ここでは、シミュレーションに費やされた時間について少し書いてみる。


シミュレーションに1年もかけて、そのシミュレーション結果を利用したところ、1か月程度の実験で新しいコンパウンドができました、ならまだ許される。しかし、シミュレーション結果を利用しても材料開発に1年かかったらどうだろうか。


当方は、79年10月1日にゴム会社の研究所へ配属されて、樹脂補強ゴムの開発を担当している。そして当時としては世界初の防振ゴム用の加硫ゴムと樹脂からなるTPEを開発(特開昭56-122846)しているが、そこに要した期間は3か月である。


これは、指導社員が防振ゴムのシミュレーションをダッシュポットとバネによる粘弾性モデルでシミュレーションを完成していたたおかげで、3か月程度の短期間に実用配合が見つかった事例だが、もし午前中の座学の時間と休日も実験に振り向けられたなら開発期間は1か月まで短縮できたと思う。


しかし、それでも当時の指導社員は、シミュレーションで現象の説明はできるが、配合まで見出すのは困難だ、と言われていた。さらに、ダッシュポットとバネのモデルによる粘弾性論自体が21世紀には無くなっているだろうとも予測されていた。


 

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

pagetop

2021.09/02 材料の科学と技術(1)

科学と技術では、その実験方法が異なることをこの欄で説明している。実験方法が異なるということは、現象との接し方や捉え方が異なることを意味している。


科学は義務教育で学ぶ、自然との接し方の標準である。驚くべきことに大学を卒業するまで科学だけを学ぶ。科学以外に人間がその誕生以前から行ってきた自然との接し方もある。


国語で学ぶ松尾芭蕉は技術者ではないが、自然との接し方は技術者そのものである。しかし、松尾芭蕉をとおして俳句の作り方を学ぶが、高純度SiCの作り方は学ばない。


このような書き方をすると松尾芭蕉に叱られるかもしれないが、松尾芭蕉に叱ってほしいのは、科学の姿勢による自然への接し方を唯一とする、科学こそ命より大事とする人たちである。


このような人たちがする大きな間違いの一つに組成から機能が唯一に決まるという現象の捉え方だ。すなわち材料設計するときに組成なり分子単位で機能が唯一に決まる体系を構築しようとしている人だ。


このような人たちが使う詭弁として、機能から組成を求めることができない、というのがある。機能を実現しようとする方法が唯一でない限り、機能から組成を決めれないのは当たり前である。


この当たり前を前にして、組成から機能を導き出す解なり、体系を作り上げようとしても科学的に完璧な体系ができず、否定証明を生み出すことになる。当方のFDを壊した人は、組成から機能はできない、という否定証明をしたが、小生は、その否定証明された組成から機能を導き出した。

カテゴリー : 一般

pagetop