転職してびっくりしたことは多い。企業によりその風土の異なることは覚悟していたが、研究開発部門でありながら「企画をやりたい」と申し出る人が多かったことである。ゴム会社で受けた研修では、日々の仕事に革新の意欲をもって取り組んでほしい、と教えられた。
「かくしん」には「確信」もあるので聞き間違いだろう、と言われると困る。話の前後から、また研修内容から「革新」すなわちイノベーションであることは間違いない。当時イノベーションと言う横文字は今ほど使われていなかった。
そもそも、研究開発部門では、毎日の仕事にイノベーションの要素が必要なだけでなく、一つ実験を行う時にもそこには企画の要素が入ってくる。
そこが理解できておれば、企画部門に異動したい、などという不満が多くの人からでてこないはずだ。ところがいろいろ話を聞いてみると、日々の仕事は混ぜて塗っての繰り返し、と言うのである。大学院まで出てきた高学歴の社員が作業者のような感覚で仕事に取り組んでいたのだ。
確かに塗布技術において処方開発では、混ぜて塗っての繰り返し業務が増えるのは仕方がない。しかし、配合設計には、日々イノベーションが求められていることを理解していない。
そもそも配合設計という技術分野があることを転職した部門では、あまり意識されていなかった。タグチメソッドのブームの始まりの時期であり、イノベーションを起こすには転職者として良いタイミングだった。
ゴム会社で3か月防振ゴムの開発に取り組んだが、そこではダッシュポットとバネのモデルによるシミュレーション結果と配合設計技術とのつながりの悪さをつなげる工夫が必要だった。
すなわち科学的に研究開発を進めなければいけない環境において、技術開発をどのようにしてその香りにするのか、日々イノベーションが求められた。
今では素直に科学と技術では実験のやり方が、また現象の捉え方が異なる、と指導できる。しかし、20世紀の科学の時代には、猫も杓子も「科学、科学」と叫んでいた。大切なのは社会にイノベーションを起こしうる技術開発なのだ。科学は一つの哲学に過ぎない。
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実験計画法やタグチメソッドで用いるラテン方格は、試行錯誤を統計的に効率よく実施できるようになるので便利なツールである。当方は、高純度SiC前駆体の合成方法の開発や、電気粘性流体、SiC基切削チップの開発でラテン方格を用いた試行錯誤により、成果を出している。
試行錯誤というと科学的ではないという理由で軽蔑される人がいるが、科学的に業務を進めていては天文学的工数が必要となる仕事でも短期間に成果を出すことができる、侮れない方法である。
但し、そのためには少し頭を使う必要がある。頭の使い方として、ラテン方格はその一つである。ほかにもヘディングを含め頭を使う方法があるので、機会があればこの欄で紹介したいが、ラテン方格は、説明しやすく、また多くの人に納得いただけるツールである。
ここで、「多くの人」としたのは、世の中には「科学こそ命」と、科学的方法以外を排除する人がおられるので、少し気を遣った表現である。
ラテン方格の使い方は簡単であるが、試行錯誤でありながら実験の「計画」を立てる必要があるので少し面倒である。しかし、少しの手間暇かけただけの効果はある。
例えば、SiC基切削チップの開発では、開発成果を用いて旋盤で鋳鉄を削ることに成功している。昔日本化学会で発表しているが、ほとんど注目されていないので、発表する場を間違えたと思っている。
SiCチップで鋳鉄を削れないことをそもそもご存じない方が多い、鉄とシリコンの化学反応が起きてあっという間にチップが摩耗し、その表面は独特の形状になる。昔、東京工業技術試験場の先生にご指導されながら、切削チップの評価を行ったが、SiCでは、鉄系の鋼材をほとんど削れなかった。
しかし、試行錯誤で見出したSiC基多成分セラミックスアロイ切削チップでは、面白いように鉄系の鋼材を削ることが可能だった。当時は、高純度SiCを用いていたが、その辺の研磨剤クラスのSiCでも製造可能な切削チップなのでコストの安いセラミックスチップを提供可能である。
残念ながらこのテーマは、切削チップの事業を認められなかったので、試作までで終わっている。ご興味のあるかたは問い合わせていただきたいが、試行錯誤でもびっくりするような成果を出せる一例である。
この時、SiCに組み合わせるカーバイド系化合物をラテン方格に割り当てて組成を決定している。セラミックスの配合を決めるときに相図を使用するのが常識であるが、相図が不明な場合の科学的方法では時間がかかるので躊躇なくラテン方格を持ち出している。
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昨日のあさイチで廃プラ問題を扱っていた。日本人一人当たり年間30kg以上のプラごみを廃棄しているらしい。このプラごみは、海洋投棄されると50年以上たっても分解されず、そのまま海をさまよっているとのこと。
さて、そこでプラごみを少なくする生活とは、ということで、各国の取り組みなどが紹介されたが、全体の印象として当方の小学生(低学年)の経験と重なることが多いのにびっくりした。
昔、豆腐や生魚などは近所の豆腐屋なり魚屋へ鍋を持って買いに行った思い出がある。あるいは、近所の八百屋は、古新聞で作成した袋を持ってゆくと、10枚1円で購入してくれた。アンパン1個15円の時代であり、50枚袋を持ってゆけば、アンパンが10円で購入できることになる。10円は当時の子供の1日の平均的お小遣いの額だった。
古新聞半ページで袋を一つ作成する作業は子供でも簡単にできる作業であり、少し頑張れば、100枚ぐらいは1時間もあればできてしまった。包装容器にプラスチックなど高価なものは使われていなかった。名古屋市立科学館では射出成型機が見世物になっていた時代である。
振り返れば、当方の子供時代はプラ容器とは無縁の時代を過ごしていた。醤油や食酢などは一升瓶を持っていって購入する量り売りだった。また、洗剤の類は皆固形だった。容器は紙かブリキ、陶器、ガラスなどで作られていた。
さらに夏になれば殺虫剤が町内で配布されたが、それは町内会長のお宅へ何か空瓶を持って行って詰めてもらっていた記憶がある。それをブリキ製の噴霧器に水で希釈して入れて庭に噴霧していた。
サプライチェーンもこの時代は町内会が機能しており、容器が無ければ町内の誰かが適当な余った容器を使いまわすといった生活だった。環境問題とりわけプラごみ問題は昭和時代を振り返ると面白いアイデアが出てくるかもしれない。温故知新戦略で環境問題を解決できる!
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コロナ禍でマスクをつけるのが常識となり、新しいマスクの提案や、マスクの機能比較、さらには富岳によるシミュレーションなどマスクに関する話題が多い。
ここで日ごろ疑問に思っているポリウレタン製マスクは60%程度の飛沫を通過するだの、防御性能がマスクの中で一番低いなどという富岳のシミュレーション結果を基にしたコメントが多い。
あの富岳のシミュレーションがどのように行われたのか存じ上げないが、昔ディーゼルエンジンの煤を取り除く触媒開発を少し手伝った経験からシミュレーション結果に驚いている。
その時には、マスクに使われているポリウレタン発泡体よりも大きな開孔サイズでありながら100%近くナノオーダーの煤を取り除くというシミュレーション結果が出ている。そして実際に実証データも示されていたのでシミュレーション結果が正しいことが確認され開発が進められた。
この技術はトラップレストラップと名ずけられ、圧力損失の少ない触媒システムだった。富岳のシミュレーションに疑問を持ったのはこの時の経験知からである。科学的シミュレーションとNHKなどでも紹介されたが、実証データを未だに見たことが無い。
ポリウレタンマスクは他の一般的マスクに比較してカラフルであり、ファッション性が高い。また装着感も悪くない。ウィルスを取り除くためには、開孔率を下げなければだめだ、とか開孔面積を小さくするとかいろいろ書かれているが、これに従うと通気性が高く快適でありながらウィルスを透過しないマスクを開発できないことになる。
最近東工大名誉教授が発明した、と宣伝しているナノファイバーマスクは、装着してみると快適である。これで99.9%以上の微粒子をトラップするという。
富岳のシミュレーション結果ではポリウレタン発泡体マスクの性能が悪い結果であったが、実はポリウレタン発泡体製でも正しい実験を行えば富岳のシミュレーション結果よりも良い値が出るのではないか、と思っている。世の中には科学的なようで科学的ではない情報が溢れている。
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高分子材料技術において混練機は、技術者にとって何かと悩ましい装置の一つである。さらにこの装置について正しくわかりやすく説明できる技術者は少ないと思う。教科書さえも視点を変えると嘘が書かれていると言いたくなるような記述がある。
簡単そうに見える色材の分散でもばらつきを抑制するにはそれなりの技術が必要で、ポリマーブレンドあるいはポリマーアロイになると混練機の選択の段階から物性に影響する。
樹脂材料は二軸混練機で混練するのが当たり前、と思っている人が多いが、ロール混練やバンバリーあるいはニーダーで混練してもよい。ただこれらの混練機では生産性が悪くなる。
生産性は悪くなるが、二軸混練機では絶対に得られない物性の材料ができることがある。PPS中間転写ベルト用コンパウンド開発を担当した時に、バンバリーでコンパウンディングし、電気抵抗の面内ばらつきが極めて低い半導体ベルトを製造することに成功した。
この時のデータを見た関係者は、コンパウンドの問題の大きさに驚いた。すぐに何故今までその混練方法を検討しなかったのか、という議論になった。カオス混合装置の開発を提案しやすい雰囲気となった。
混練技術とは、ただ高分子を混ぜる技術ではないのだ。要求される機能を作りこむために高分子を混練するのだ。原料の高分子と混練されたコンパウンドとは主成分の高分子一次構造は同じでもその成形体の機能は変化している。
また、機能を向上するために混練をするのである。だから混練機の選定は重要な作業である。もっとも中国での経験だが、性能の低い混練機にカオス混合装置を取り付けたところ、性能が向上してびっくりした。びっくりした理由はここでは書けない。
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科学的に開発を進めるのは当たり前であるが、科学的に進めていたら長時間かかるような場合にどうするのか。すなわち科学的に進めておれば、目の前の開発テーマについてどれくらい時間がかかるのか、科学的に見積もることが可能である。そのために新QC7つ道具があり、アローダイアグラムでボトルネックとなる部分を検討したりする。
仮に科学的に研究開発を進めたときに3年かかると見通した時に、残された時間が半年ならばどうするか。一つの方法は、時間を短縮するために人や物、金を投入して3年と言う時間を半年にする方法を科学的に考える。
これは優等生がこれまでやってきた方法で、ヒトモノカネの経営資源を湯水のように投入して、可視化経営が叫ばれているのにコミュニケーション能力により、それを見えにくくして出世された方もいるかもしれない。
また、大企業の研究所では、経営資源をあらかじめ大量に使用する企画でなければチャレンジの価値が無い、と評価するところもあった。ただし、これは過去の高度成長時代ゆえに許された方法である。
今のような低成長時代には、経営資源の節約を研究開発部隊に求めているところが多いという。そうすると、ノーベル賞の山中博士がやられたようなもう一つの方法が、今の時代開発手法として重要になってくる。
すなわち、まず開発で成果を出しておいてから、科学的に研究を行う方法である。そんなことができるのか、と言うと小生はそのような方法で研究開発を行ってきて、学位も取得している。
この方法のコツはヒューリスティックな方法で解を求めるスキルを磨くことである。例えば多変量解析はそのスキルの一つで、小生はゴム会社に入社してからそのスキルを身に着けた。今弊社のサイトでは、よく利用される主成分分析と重回帰分析についてツールを無料公開している。
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科学と技術、芸術それぞれを比較した時に、科学の異質性が浮き彫りになる。やはり、科学は哲学であって、技術や芸術のように人間の営みの中に組み込まれ、連綿と伝承されている活動とは異なる。
技術や芸術では、形式知だけでなく経験知や暗黙知も重要視される。科学では形式知を如何に正確に論理展開できるのかが能力として重要になってくる。芸術では形式知など知らなくても、例えばジャズギターを弾こうと思ったならば、カルカッシギター教則本を読まなくても名演奏家になれる。
しかし、コードやリズムなど音楽の形式知と思われるものを知っていると、理知的なアドリブを展開でき、聴衆に理解されやすい。ただしその時でも科学のように厳密な形式知の展開が求められているわけではない。
ニュートンと同時代を生きたバッハが平均律を考案したように音楽も科学の影響を少なからず受けながら発展してきたように思われる。しかし、技術が科学の影響を受けるだけでなく科学に支配され急激な進歩をするような悲劇の時代を経たが、音楽はじめとした芸術は独自にゆっくりと発展している。
科学技術として技術が科学の支配を受けて急激な進歩を遂げたのは良いが、経験知と暗黙知を活用した自由な開発方法論を犠牲にした。科学の限界が見え始めた21世紀は改めて技術開発の方法論を考えなければいけない時代かもしれない。
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PPSと6ナイロンを相溶させたカオス混合技術は、ゴム会社で担当した時の「防振ゴム用樹脂補強ゴム」開発で仕込んでいたリックを展開したものだ。
このゴム開発では、樹脂とゴムが一度相溶したと仮定しない限り実現できない高次構造の材料が得られている。指導社員に厳しく言われたSP値の測定で得られた情報をもとに研究開発した結果、たった3か月で全く新しい配合処方と材料を見出すことができた。
すこしモザイクをかけたような表現になっているが、これは当方のノウハウなので詳しく書いていない。詳しく知りたい方は問い合わせていただきたいが、この指導社員から厳しくしつけられた習慣から幾つかのリックが生まれている。
それらは科学的ではないので、指導社員は「誰にも言うな」と言われた。なぜなら研究所で科学的ではないことを話すと仕事の品質を疑われるからだと指導された。
ゆえに樹脂補強ゴムの成果を論じた報告書にはこの開発で見出されたリックも含め書かれていない。しかし、当方の経験知と暗黙知として整理された。
ちなみに研究報告書には何が書かれていたのかと言うと、当時レオロジーを語る時の定番だった、ダッシュポットとバネのモデルで材料評価を科学的に論じている。ご存知のように今レオロジーを科学的に語る時にダッシュポットとバネのモデルは過去の形式知との比較議論の時ぐらいである。
この報告書では材料の製造プロセスや出来上がった材料の高次構造について科学的に検証可能な情報は全て書かれていたが、経験知や暗黙知はすべて排除された。科学論文とはこのような成果論文である。
だから報告書として完成すると図書室に収められ二度と読まれることがなかった。当方は12年ゴム会社に勤めたが、過去の研究所の報告書を読んだのは、なぜFDを壊されたのか知るために、界面活性剤では電気粘性流体の耐久性問題を解決できない、と結論された報告書だけである。
その報告書を読み、執筆者の高度な形式知に感心したが、報告書に書かれた内容は当方の頭の中に形式知として整理されていた知識だけだった。報告書を読み終わって気づきも無ければ学びも無かった。おそらく少し界面活性剤について詳しい方にとって当たり前の内容だったかもしれない。しかし、当時研究所を管轄するI本部長はこの報告書を高く評価されていた。
このような科学的に完璧な報告書でも経験知と暗黙知により一晩で創出された技術によりひっくり返されることがあるのだ。形式知により否定される現象を前にしたときに、本当に形式知に基づく結論を信じてよいのかは、慎重に考える必要がある。
科学の否定証明の罠にかからないためには、科学を正しく理解し科学的に考えるべきシーンを明確にするとともに技術でモノを考える習慣が重要となる。例えば多数のデータからヒューリスティックな解をあらかじめ求めて、それから科学的に仕事を進める慎重さをもちたい。
電気粘性流体の耐久性問題では、プラスチック発泡体の開発で学んだ形式知から界面活性剤の適用が解として否定されることが分かっていたので、多数の界面活性剤の物性値を主成分分析することによりヒューリスティックな解を最初に求めている。
ドラッカーは、頭の良い人たちが成果を出せない問題を嘆いていた。その原因として「正しい問題」を解かないからだ、と諭している。
電気粘性流体の耐久性問題について、それが「界面活性剤で解決がつくかどうか」は問題ではない。「界面活性剤で解決しない限り実用化できない」問題であり、科学的な解として界面活性剤では解決できないとなっても、界面活性剤で何とかしなければいけない技術の問題である。
ところで、樹脂補強ゴムの報告書を書くときに排除された経験知や暗黙知が普遍的な形式知かどうかを確かめる機会が無く30年経った。自ら左遷を申し出て単身赴任し担当した中間転写ベルトの開発でその機会が生まれ、カオス混合装置を発明できた。
この発明は、それをしない限り中間転写ベルトの実用化が不可能な状況だったので、試行錯誤(タグチメソッドを用いている)により30年以上前の経験知で仕上げている。国内トップクラスのコンパウンドメーカーの技術者は科学者として優秀だったが、科学にとらわれ数年かけてもコンパウンドを完成させることができなかった。
当方はそれを非科学的と批判された方法を用いて3か月で仕上げている。フローリーハギンズ理論や分散混合と分配混合で考える混練の形式知からみれば非科学的かもしれないが、短期間にモノができたのである。
技術のニッサンが、倒産しそうでしなかったり、とんでもない社長でも消費者に感動与える様な車を生み出している。おそらくいつの時代でも「科学のニッサン」を目指さなかったためではないか。20世紀の日本は科学一色だったが21世紀の日本は、技術の日本を目指すべきではないか。
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ジャズのアドリブの方法論には、プレイヤーにより様々な考え方があるらしいが、共通しているのは、「無い袖は振れない」ということで、日ごろのリックの仕込みが無い限り、聴衆が興奮するようなスリリングなアドリブを瞬間芸的でありながらコンスタントにプレイすることは難しい。
技術開発におけるアイデア創出についても同様で、形式知だけであれば、文献で調べるなり、アカデミアの先生に聞けば一応のアイデアを出すことが可能であるが、このような形式知に基づくアイデアは、誰もが同じアイデアとなりおもしろくない。
なぜなら、科学の形式知とは論理学的に必要十分な関係となっている知識の体系であり、その知識のつながりは1:1となっているからだ。この保証があるので科学的研究の意味があり、科学にサポートされて技術が急速に発展した。
しかし、未だに自然現象を100%完璧に科学的知識の体系で記述できているわけではない。科学的に未解明の現象は多い。例えば高分子の相容あるいは相溶現象に関する知識の体系は科学的に見えて実際には科学ではない。
おおよその現象はフローリー・ハギンズ理論で間違いないかのように見えるが、この理論は二次元の漫画から想定した式をベースに展開されているので、3次元ではどうなるかとか、異なる分子同士を並べる現象が自然現象ならばどのように起きているのかなど説明されていない。
また、この説明されていない部分は、技術者が勝手に想像しなければいけないことを教科書では断っていない。これはその昔、サンタフェという写真集がイノベーションを起こし、モザイクが消えたときの社会現象と似ている。
本来写っているべきものがうつっていない時にそれを真実だと信じていた男性が多く困った女優が、「あれはモザイクの代わりに写真を処理してもらった」と週刊誌で言い訳をしていた。わざわざ言い訳をしたものだからさらに写真集は売り上げを伸ばした。
例えがやや下品になったが、フローリー・ハギンズ理論でも二次元の仮説から式を導いている言い訳を教科書に載せたならば、高分子の相容あるいは相溶現象に関係する材料技術は、写真集が売り上げを伸ばしたようにさらに進化すると思っている。
これは当方の経験で申し上げている。当方が開発したカオス混合装置は、妄想の結果の発明品である。しかし、フローリー・ハギンズの理論では相溶しないとされるPPSと6ナイロンを相容させることができた。
これは妄想の中のたわごとではない。15年近く前にこの材料で商品の生産立ち上げをして、現在でも安定して生産が続けられている。すなわち、科学的には成立しない商品が品質としては安定だったので製品として販売され続けている。
もしこの商品をリバースエンジニアリングで科学的に解析した優秀な研究者がいるならば、びっくりしているかもしれない。高分子学会賞の審査会でも信じてもらえず落選しているが、高分子学会主催ポリマーフロンティアに招待講演者として招待され会社からも許可されたので、一連の技術について講演している。
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情報を得て、それを理解し頭の中に整理してゆく。情報を営みの中で利用できる形の知識にする作業は重要である。そのとき、ジャズのテンションコードのように手続きにルールがあると作業が容易になる。
情報がデータの集まりからなる場合に、データマイニングは誰でもできる経験知の獲得方法である。また、それを形式知のテンションとして活用できたなら、周囲の人から一目置かれる。
データマイニングの手法の一つに多変量解析がある。弊社のサイトでは、重回帰分析と主成分分析についてプログラムをこのためのツールとして公開している。タグチメソッドのマハラビノスSN比よりも素直に多変量解析を行った方が、その出てきた値の意味も含めて知識としやすい。
今このツールについて無償公開しているが、もしご希望があれば、企業内のシステムで活用していただくことも可能である。このツールについて当方のセミナーでも事例を紹介したりしているが、セミナー参加者から多変量解析のソフトウェアーをどこで入手したらよいのか、という質問が来たりしていたので公開に踏み切った。
すでに他のサイトでも同じようなプログラムが公開されているが、当方のサイトで公開しているツールは40年以上前のIBM3033という大型コンピュータで計算された結果に近い値を吐き出す。
多変量解析では固有値を計算するためにこの固有値で誤差が生じやすい。そのためソフトウェアーにより多少異なった結果となる。弊社では過去に計算された実績データから答えが同じような値となるようにアルゴリズムを工夫し固有値の計算を行っている。
電気粘性流体の耐久性問題の解決アイデアでは、IBM社の統計パッケージに用意されていた主成分分析が用いられた。また、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームでは同様のパッケージにあった段階式重回帰分析により、ホウ素とリンとの組み合わせ効果が説明された。弊社で公開しているソフトウェアーは、過去の結果を用いて検証している。
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