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2021.04/01 ホスファゼンによる難燃化機構(1)

高分子材料を難燃化するときにホスファゼンを用いる方法として、添加型と反応型の2種類の方法がある。前者はただホスファゼンを高分子マトリックスに分散する方法である。後者はホスファゼンを官能基で修飾し、高分子マトリックスに反応させて組み込む方法である。

反応率が100%を前提にすると後者では、分子レベルで分散していることが保証される、という理由で最も分散状態が良い方法となる。

ポリウレタンの難燃化でこの仮説を確認し、その成果は欧米の学会誌に掲載されている。すなわち、ホスファゼンを反応型で用いてポリウレタンを難燃化した時に、ホスファゼンの分散状態を分子レベルで実現した難燃化効果が得られ、それは添加型でポリウレタンを難燃化するよりも少ない添加量でポリウレタンを難燃化できる、というのは形式知である。

この形式知から、ポリウレタンを難燃化するとき(例えばLOIが21以上という条件)に必要なリン原子の最低量を求めることができる。この値は、他の樹脂をリン系難燃剤で難燃化した時に、一つの基準となる。

すなわち、分子レベルで分散されたホスファゼンの難燃化効果は、ポリウレタンを難燃化するのに(例えばLOIを21以上にするために)最低限必要なリン原子濃度(A%)という見方ができる。

例えば他の樹脂にリン系化合物を添加してLOI>21を実現したいときに必要なリン系化合物の量は、A%を基準に考える事ができる。二軸混練機で分散する場合には、L/Dが小さい場合に反応型で100%の反応率を得ることが難しい。

ゆえに、大抵はAから予想される添加量よりも多く必要になる。これ以上の議論は相談していただきたいが、高分子の難燃化技術では、難燃剤の添加量をどこまで減らすことができるのかどうかは、コストと物性の観点で重要な問題となる。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2021.03/31 厚労省送別会

非常事態宣言が解除されて、厚労省幹部の送別会が深夜まで行われたという。そして課長が更迭された。状況を考えれば、ニュースの扱いやその後の処分は当然の結果と思われたが、ネット上には賛否両論出ている。

おそらくこれが、「現代日本」の特徴なのだろう。厚労省職員23人の深夜までの会食を擁護する意見として、誰にも迷惑をかけていない的視点がある。すなわち、23人が会食して全員がクラスターを形成した事実など無いので問題なし、とする見解である。

このような見解について論じるときに、かつて教師は聖職かどうか議論された時代を思い出す。結局今の時代は、教師も単なる労働者という社会的価値観に至り、現代の教育界の状況がある。

細かい議論はさておき、「働く」意味についてドラッカーは、「貢献」と「自己実現」にあるとした。これを認めたときに、あるいはこの視点に立ったときに、どのような職業でも一律労働者と捉えて画一的行動規範を当てはめることは難しくなる。

すなわち、職業あるいは職種により社会が求める貢献の中身及びその方向が異なるからである。そのために職業選択の自由が存在する。ある職業を選んだときに、貢献と自己実現、特に貢献の意味において、職業や職種に応じて「社会」に対して責任が生じるのである。

「働く」という意味についても多様だから、そのような責任など関係ない、という視点も出てきそうな時代であるが、もしドラッカーが定義づけた概念を否定したならば、どのような社会を人は目指せばよいのであろうか。それさえも個人の自由だ、と言い出したなら、社会という概念そのものも崩壊してゆく。

多様な価値観を認めることと社会活動にルールを決めることの両立は難しい。しかし、ルールなり社会共通の考え方を何も認めない社会では、個人の基本的人権が侵される事態が生まれても放置されることになる。

厚労省は感染拡大を防止しようとリーダーシップを発揮すべき組織であり、そのメンバーはその自覚を持つべきではないか。また、今の社会はそれを期待し早くコロナ禍を終わらせたいと願っているのである。

厚労省の職員が自覚を持ったとしてもこのコロナ禍を終わらせることはできない、という人もいるかもしれないが、何も信じることができなくなったとき、希望は消え恐怖は最大になる。なまじ知識を獲得したために人間は弱い動物となった。

だからお互いを支えあう社会を多くの人が望むのである。そのために組織が社会に作られるのだ。社会に対して責任を負う組織の存在を認めたときに、今回のニュースに否定的な見解を述べる人の考え方を理解できないのは頭が老化してきてきたためか?

ドラッカーは、異なる見解に耳を傾けよと指摘している。今回の異なる見解に耳を傾けると頭まで傾いてそのままになるのは、首の運動不足かもしれない。

カテゴリー : 一般

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2021.03/30 ホスファゼンの難燃化効果

ホスファゼンは、リン系難燃剤の中で比較すると添加重量当たりで高い難燃効果を示す。当方の経験知では、赤燐よりも添加効果は高くトップに位置づけられると思っている。

ホスファゼンの高い難燃効果は、他のリン系化合物よりもリンの含有率が高いこととその分子構造にある、と推測している。間接的にそれを証明するデータを当方のセミナーでは開示し説明している。

リンの難燃化作用機構についてはその炭化促進触媒効果が有名であるが、ホスファゼンには、その作用機構だけでは説明できない効果も存在する。

燃焼時の現象を見てもそれが顕著に現れる。40年以上前に硬質ポリウレタン発泡体で実験を行っているが、燃焼時の発煙が極めて少ないのだ。

これは、赤燐も含めリン系難燃剤は、燃焼時にオルソリン酸を発生する。オルソリン酸は240-250℃に沸点が存在するので、高分子材料の燃焼後の灰を分析してもほとんどリンは検出されない。

ところが、ホスファゼンで難燃化した高分子材料では、燃焼後の灰の中に添加したホスファゼンの90%以上に相当するリン原子が残っている。

これは熱重量分析を空気中と窒素中で行って観察しても確認することができる。600℃前後の重量残存率が、ホスファゼン添加系ではホスファゼンの添加量と相関するのだ。

すなわち、ホスファゼンを難燃剤として用いたときに他のリン系難燃剤と大きく異なるのは、燃焼時に揮発することなく燃焼しているその場にとどまり炭化促進触媒として機能していることだ。

ただし、これは科学的に完璧に証明されたことではないが、当方は燃焼時のガス分析や燃焼後の残渣分析などを行い、経験知として結論を出している。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2021.03/29 難燃剤としてのホスファゼン

高分子の難燃化技術は、1980年代に大きく進歩し、臭素系難燃剤などの経済的で万能薬的な処方も開発された。

 

 

三酸化アンチモンと臭素系難燃剤は経済的でどのような材料にも効果がある、という研究者まで現れたが、環境保護の機運と燃焼時に有害な煙が多量に出るという理由で2000年ごろから赤燐が注目された。

 

 

しかし、その赤燐についてハードディスクの暴走問題が発生したために、ホスファゼンが再度見直されるに至っている。これは特許動向にも現れており、近年臭素系難燃剤の特許はほとんど出願されていない。

 

 

ホスファゼンについては、耐熱性ポリマーとして注目を集め、ファイアーストーン社で耐熱ゴムとして実用化されたのが1970年代で、宇宙船に使用されている。

 

難燃剤としての用途開拓が進められたのも1970年代であり、難燃化しにくい繊維の難燃剤として市場に登場している。

 

 

しかし、価格が高い、と言う理由で難燃剤としてのシェアーは伸びていない。ところが、環境対応の難燃性樹脂を開発しようとしたときにホスファゼンは欠かせない。

 

 

もし、ホスファゼンを使用したい、検討したいと考えておられる方は、弊社へお問い合わせください。

カテゴリー : 一般

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2021.03/28 水素による製鉄業

鉄の生産では大量の二酸化炭素が発生するということで水素による製鉄業が研究されている。これは科学的に考えれば、当たり前の王道研究である。

 

 

科学的にはナンセンスかもしれないが、発生する二酸化炭素を全量回収して有機物に変換するプロセスができれば、水素による製鉄の研究は不要である。

 

 

二酸化炭素を有機物に変換するプロセスは、光合成として植物が行っており、かつて人工光合成の研究が国プロで進められた経緯がある。

 

 

変換効率が悪く実用化には至ってないが、変換効率については工夫のしようで改善できる可能性が高い。なぜそれでもこれを研究しないのかというと、経済性を用いて否定証明している。

 

 

しかし、鉄生産では二酸化炭素が豊富に出るのだ。これを有効活用する方法が人工光合成しかないのであれば、若い人の中にライフワークとして取り組む人が現れてほしい。

 

 

水素を用いた製鉄業は科学的に実現可能性が最も高い技術だが、従来の製鉄プロセスに二酸化炭素回収技術を取り付ける方法も人工光合成を実用化できればその有効性は高いと思っている。

 

カテゴリー : 一般

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2021.03/27 配合設計技術

昨日SiCを事例に当方の体験を書いたが、機能を追求した材料の配合設計技術について開発の余地がある。

 

 

今この技術について当方の体験を公開しようと企画準備を進めているが、マテリアルインフォマティクスの提案がアカデミアからある。

 

 

ただしこれはAIを活用したデータマイニングであり、どうしても大規模化する。当方の体験談は、科学的ではないが科学のツールを活用してヒューリスティックな解を得る方法である。

 

 

同様の手法は、山中博士も用いられノーベル賞を受賞されている。当方の仕事では、せいぜい日本化学会賞どまりであるが、それでも手法の成果は事業に有益な情報をもたらした。

 

 

例えば電気粘性流体の耐久性問題では一晩でその解決法を提示している。また、3種の粒子は、電気粘性流体の性能を飛躍的に向上し、実用化への道を開いた。

 

 

昨日のSiC切削チップは残念ながら実用化できなかったが、同様の手法で写真会社退職前に行ったリサイクルPETを電子写真機の内装部品応用した技術では、再度その有効性を確認できた。

 

 

その他、中間転写ベルトや帯電防止技術、高分子の難燃化技術など人間の脳を活用したデータマイニングで得られたヒューリスティックな解が事業に貢献している。

 

 

人間の脳は品質ばらつきが大きいが、科学的ツールを用いるので、多少品質の悪い脳でも同じ結果が得られる。

 

 

そもそもQC7つ道具という手法は中卒レベルが獲得している形式知を基準にしているので、当方の手法も同レベルの形式知があれば十分な成果を出すことが可能である。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2021.03/26 部材コンセプト

バブル崩壊後素材から部材への掛け声のもと素材産業が川下を目指した。有機ELをはじめ熱伝導樹脂や半導体樹脂、高機能フィルムなどが部材の代表格である。

 

 

特許を見てみるとほぼアイデアは出尽くしたようだが、メタマテリアルについては今ようやく産業界も注目し始めた段階で、2件ほど弊社へ問い合わせがあった。

 

 

このメタマテリアルについては製造してみなければその電気特性等よくわからない部分がある。

 

 

かつて半導体材料を設計している段階でメタマテリアルに遭遇したことがあるが、商品スペックを満たさない材料だったので詳しく研究していない。

 

 

当時測定した結果では、インピーダンスの周波数依存性等が反転したような物性だったが、完全な反転ではない。

 

 

たとえば通常の高分子材料では、多かれ少なかれ低周波数領域でインピーダンスの異常分散が生じる。

 

 

周波数0に向かってインピーダンスが上昇する現象であるが、メタマテリアルでは周波数無限大に向かって上昇する傾向や、ある周波数でピークとなり減少に転じる現象などわけのわからない変化だった。

 

 

電気粘性流体では、インピーダンスがある周波数でピークを持っている場合に応答性がよく性能が高い材料となった。この体験から材料の構造など思考実験を進めているが、実際に製造したくてもコロナ禍で実験場所を失い困っている。

 

カテゴリー : 一般

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2021.03/25 SiC基多成分セラミックス

高純度SiCの事業化を進めているときに、SiCの分野で世界初の材料はできないか、という極めて難解な問題を上司から出された。

 

このようなわけのわからない指示を受けたときに、新入社員時代にはいろいろ質問をしたりしていたのだが、上司がよく理解していないのでこのような指示になる、と悟ってからは、部下を鍛えるありがたい仕事と思うようになった。

 

さて、どこがありがたいのかというと、問題そのものが抽象的なので回答の自由度が高い点である。すなわち、これは、SiCが入っておれば世界初である限り何でもよい、という問題だ。

 

そこで、切削時に発生する高温度で鉄と反応するのでSiCでは鋳鉄を削ることができない、と言われていたことを思い出し、鋳鉄を削ることができるSiCならば世界初になると考えた。

 

「SiC基切削チップの開発」というのが当時提案した企画であるが、この企画の内容を科学の常識に反するので世界初、などと説明したらつぶれることが分かっていたので、「世界初のマルチコンポーネントセラミックス」というコンセプトをでっち上げた。

 

2-3種類のカーバイドからなるセラミックスについては相図から予想がつくが、4成分以上になると研究事例がない大変難しい配合設計作業となる。

 

今ならば、ビッグデータをコンピューターに放り込み、AIに考えさせてデータマイニングする手抜きができるが、当時は、まだMS-DOSの時代である。

 

詳細にご興味のあるかたは問い合わせていただきたいが、計画的な試行錯誤法、いわゆるデータ駆動による配合設計で鋳鉄を削ることができるSiC基多成分セラミックスを開発し成功した。そして、この材料を切削チップの形状に加工した。

 

これを当時の東京工業試験所に持ち込みご評価いただいたところ、既存のサーメット切削チップよりも鋳鉄を長時間切削加工できたのでびっくりした。

 

抽象的な問題から実用的な切削チップとの評価を頂くまで、4カ月程度だった。タグチメソッドも効率よく実験を進めることができるが、当方の編み出したデータ駆動配合設計手法は、さらに効率が良い。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2021.03/24 材料技術は完成したか

1980年と1990年に書かれた10年後の技術に関する本には、必ず材料技術に関する記述がメインテーマとして存在した。

 

1980年代にはセラミックスフィーバーが起き、1990年にはアメリカからナノテクノロジーが押し寄せた。

 

2000年には高分子精密制御プロジェクトが国研として進められたが、意外にもこのプロジェクトは酷評された。

 

しかし、このプロジェクトでは地味ではあるが、アカデミアは数多くの種を生み出していた。このプロジェクトの少し前には土井教授のOCTAプロジェクトが成功をおさめ、高分子シミュレーターOCTAが誕生している。

 

このOCTAの優れている点は、当時のペンティアムⅢ程度の非力なPCでも動作したことである。土井先生はOCTAの最終完成形は30年後ではないかと当時予測されたが、間もなくその30年後が来る。

 

金属材料やセラミックスのように結晶が機能を支配している材料について20世紀にほぼ形式知が完成した。しかし、アモルファスが機能を左右する高分子材料技術については、それが未完成である。

 

このことが一般に知られていないことに驚くが、高分子材料メーカーが未来シナリオを描いていないことには落胆する。当方の有料セミナーにぜひ参加していただきたい。

 

必ず未来材料のヒントを述べている。シナリオを知りたい方は、弊社へご相談ください。高分子材料技術については、まだ未知の領域が多数あるが、それは科学の視点では見えない世界である。

カテゴリー : 一般

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2021.03/23 2030年の社会と技術

緊急事態宣言が解除されたので久しぶりに車で書店に出かけた。実は徒歩の距離で行ける書店には月刊ステレオはじめオーディオ関係の雑誌が置いてないからである。

 

以前、書店が減少し続けている話を書いたが、とうとう近所には、駅にある1店舗だけとなってしまった。その1店舗も書籍だけではやっていけないので、扱う書籍の種類を減らして文具コーナーを作った。

 

この一店舗の経営努力による売れ筋以外の書籍は、車を走らせなければ手に入らなくなった。書店を窮地に追いやったアマゾンで書籍を購入する、という気持ちにはなかなかなれない。ところがせっかく遠方の書店まで出かけてきたのに雑誌が売り切れだった。

 

この店員の話によると売れない雑誌は1-2冊しか置かないので発刊日にほとんどが売り切れるという。仕方がないので久しぶりに書店で油を売ることにした。

 

決算などもあり、油売りの時間など無いのだが、せっかく来たので1時間制限という条件を設定し無差別に本を見て歩いたが、2030年の社会、すなわち10年後を扱った本が目についた。

 

これは切りのいい年の一つの特徴なのだろう。若いころはこの手の本に飛びついたが、3回ほど購入してみると、自分の予測の方がよく当たると悟った。

 

当方が考えている未来予測は後日少し書くとして、販売されている本には何がかかれているかネタばらしをすると、情報と生命科学の開花で大した話ではない。

 

このような内容でお茶を濁すことと比べると、オリンピック実施直後の日本を予測することの方が難しいと思う。どのような人がこの本を買うのだろうというのが正直な感想である。

カテゴリー : 一般

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