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2020.12/09 アイデアの出し方(1)

アイデアには、単なる思い付きのアイデアから、現象から機能を取り出す活動から生まれるアイデアまで玉石混交である。新技術を生み出せるアイデアは、やはり、それなりの手順を踏まなければ生み出すことはできない。

 

当方はアイデアマンと言われたりするが、それは当方の隠れた努力を見せていないためである。例えば、中間転写ベルトの開発を成功に導いたカオス混合のアイデアを見出すために30年以上の月日がかかっている。

 

カオス混合のアイデアが生まれるきっかけは「観察」であり、「特定の現象を観るための観察眼」を養うために30年以上かかったのである。

 

「観察」の仕方については、小学校で習う。また、シートン動物記などを夏休みの宿題として読まされたりする。

 

「観察」によるアイデア創出法は、だれでもできる方法であるが、独創的アイデアのためには「観察眼」を養わなければいけない。

 

すなわち「観察眼」が無ければ、現象からうまく機能を取り出すアイデアさえも浮かばない時がある。科学の形式知だけでは、現象から新しい機能を取り出すことは難しい。

 

科学で取り出せるのは、誰でも知っている当たり前の機能だけである。小学校で行う「観察」ならばそれで良いが、技術開発では、それなりの「観察眼」を養う必要がある。

 

 

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2020.12/08 技術者の解放(23)

電気粘性流体用に開発した傾斜構造の粒子は、C-SiC繊維製造技術をそのまま転用しただけである。

 

すなわち、繊維の代わりにフェノール樹脂球へポリエチルシリケートを含侵させて焼成し、シリカがカーボン内部に傾斜組成として分散している粒子を製造するのは瞬間芸的技術で可能だった。さらにSiC化する必要はないので容易だった。

 

すなわち、技術開発された成果に潜むブラックボックスを科学という道具で解明しておくと、他の技術開発にそれを活かすことができるので開発効率が上がる。

 

科学という道具で得られるのはたった一つの真理である。ゆえに他の現象においてもその真理はひっくり返ることは無いので安心して形式知として活用できる。それゆえ開発効率が上がるのである。

 

なぜ科学の研究が企業で重要なのかという理由は、ここにある、と思っている。企業において真理それだけを追求するような研究は重要ではないのだ。企業で最も重要なのは、他社に先駆け新しい機能を市場に付加価値として提供することである。

 

ただし、企業の強固な基盤技術を造るために他社よりも迅速に形式知を獲得できれば、独自技術の伝承あるいは組織内の共有化を容易にし、迅速に波及するので他の技術開発の効率を上げる。

 

そしてノウハウと形式知との整理された体系は、アジャイル開発をも可能にする。アジャイル開発では、体系化された知が不可欠である。

 

形式知の体系の中で、間違った真理が存在していたなら、その体系は見直され修正されなければいけない。そこに迅速に気がつくためにも研究が必要となってくる。企業で基礎研究を行うためにもアジャイル開発は普及してゆくのではないかと思っている。

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2020.12/07 技術者の解放(22)

難燃性天井材開発テーマが完了したので行ったごみ捨て作業で、高純度SiC製造用の前駆体合成条件を見つけることができた。

 

科学の視点では多数のブラックボックスが存在したが、高純度SiCを合成する目的を達成するために、それらの解明は必ずしも必要ではない。

 

ただ、品質管理の問題が残る。ポリエチルシリケートとフェノール樹脂をただ混ぜただけでは、フローリー・ハギンズ理論に従い、相分離する。このような系へ触媒を添加しても不均一な混合物しか得られない。

 

均一な前駆体が合成されたかどうかについて確認するために、シリカ還元法の反応速度論結果を用いると品質管理可能だが、原料のスペックをどうするのかという問題が残った。

 

詳細は未公開のノウハウになるので省略するが、フェノール樹脂とポリエチルシリケートが混ざる現象、例えばフェノール樹脂へポリエチルシリケートが拡散してゆく現象については、アカデミアの先生と研究を行っている。

 

この研究で、フェノール樹脂繊維にポリエチルシリケートを含侵させた後、焼成し、SiC化させて、表面がSiCで内部がSiCとカーボンが傾斜組成となった繊維を開発することができた。

 

そしてこの繊維とアルミニウムを複合化させて、C-SiC繊維複合アルミニウムを製造したところ、炭素繊維で強化したアルミニウムよりも高強度の材料を製造することに成功している。

 

すなわち、フェノール樹脂相へポリエチルシリケートが拡散する現象の研究とその結果を利用した応用研究を同時進行に行い、研究効率をあげている。

 

ちなみに、フェノール樹脂相へポリエチルシリケートが拡散する現象について触媒の存在が重要であることを見出している。触媒が無ければポリエチルシリケートはフェノール樹脂相内部まで拡散してゆかない。

 

企業の研究開発において、すべてのブラックボックスを科学的に解明しなければいけない、と誤解している人が多い。科学的研究が無くても新規技術の開発は可能なのでこのようなコンカレント開発が可能である。

 

また、科学的研究を行う時に、純粋にかつ厳密に研究を進める拘りは、時には重要である。ただし、それはその研究成果の次の一手が企業に利益をもたらすような時の研究である。科学と技術について理解していると開発効率を高めることが可能で、産学連携の重要性も見えてくる。

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2020.12/06 技術者の解放(21)

シリカとカーボンが均一に分散された前駆体は、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂とのリアクティブブレンドで合成された。

 

これを科学で開発しようとすると、それぞれのポリマーについて触媒による反応速度を求め、さらに原料が混合された時の条件その他について細かい因子について前向きの推論を進めた研究を行う必要がある。

 

ポリウレタンRIMがそうであったように、まじめに科学的研究を行い前駆体合成条件を求めていたら、いつ完成するのか不明となるので、どこかで科学に対して技術で妥協しなければいけない。

 

ゆえに、シリカとカーボンの均一な混合物を得る製造プロセスについては、最初から科学的に行わず、ポリウレタン合成における経験知を用いた技術で行っている。

 

たまたまフェノール樹脂天井材の開発に成功し、プロジェクト解散の日に、開発に用いた原材料の後かたずけの役目を担当できた。

 

液体のフェノール樹脂をすべて硬化させて廃棄する必要があった。また、フェノール樹脂の改質用にポリエチルシリケートを100Lほど購入していた。またフェノール樹脂硬化触媒も市販されている材料についてすべてそろっていた。

 

このごみ当番の仕事はフェノール樹脂とポリエチルシリケートの反応を研究するには大変好都合であった。

 

科学の研究として行う場合には細かいデータを取る必要があった。しかし、技術開発だけならば、フェノール樹脂とポリエチルシリケートが混合されて均一で透明な液体になる現象さえ見つければよかった。

 

ただひたすら液体のポリエチルシリケートとフェノール樹脂を触媒と混合させて目標の現象を探す作業が始まった。失敗したならば、硬化触媒を追加し、加熱すれば硬化したのでごみ当番の使命も達成できた。

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2020.12/05 技術者の解放(20)

傾斜構造の粒子は高純度SiC製造技術が基盤である。高純度SiC製造技術を開発後、その技術に秘められたブラックボックスについて科学による研究を行っている。

 

 

シリカとカーボンが原子レベルで均一に混合された前駆体を用いたなら、シリカ還元法によるSiC化の反応は、均一固相反応で進行する、という仮説を設定した。

 

 

そして、それを証明するために、2000℃まで1分以下で昇温可能な熱天秤を開発し、それを用いて反応速度論の研究を1984年に行っている。研究企画から熱天秤の設計、そして結論を導くまでたった一人の研究である(注)。

 

 

但し、熱天秤については真空理工(株)に依頼し、製造していただいた。1600℃までが限界だったその熱天秤を1週間で希望していたスペックまで実現できるように改良した。

 

 

この熱天秤を用いて1450℃以上の温度で数点保持し、恒温熱重量分析を行っている。そして反応機構の解析から活性化エネルギーまで求めた。等速昇温実験により、他の視点で解析を進め、これらの結果の妥当性を検証している。

 

 

これらの科学に基づく研究で、シリカ還元法においてシリカとカーボンが原子レベルで均一に混合されているならば、均一固相反応で反応の進行することが証明された。

 

 

この研究結果が出るまで、シリカ還元法の反応機構について諸説あったが、それらはシリカとカーボンが不均一に混合された結果であることも説明できた。

 

 

科学の真理が確定されると、それまで議論されてきた不確かな現象について明確にされるのは、科学の良いところである。

 

科学はそのためにあり、技術が完成したならば、科学を道具として使い、可能な限りブラックボックスを無くす努力をしなければいけない。これは技術者の義務である。技術者はこの義務を果たすために科学者に研究委託を行っても良い。

 

(注)その4年後公開された論文では、なぜか当方がセカンドネームとなっている不思議なことが起きている。この論文も当方が知らない間に出ている。

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2020.12/04 技術者の解放(19)

傾斜構造の粒子をリーダーに話した時に頭で考えるだけならだれでも言える、と言われた。当方は、それを製造するプロセスも考えたうえで話したのだが、笑われた。

 

当方は住友金属工業とのJVを立ち上げる準備を一人で担当していたので、余分な仕事をするためには残業をしなくてはならなかった。

 

しかし、笑われた以上残業など認めてもらえないことは明らかだったので、サービス残業で傾斜構造の粒子を合成した。内部は10の6乗Ωcmで表面は10の11乗Ωcmであり、絶縁体ではなかったが、高い電気粘性効果がこの粒子で得られた。

 

合成には二晩かかったが、最初の実験として大成功だった。傾斜構造の粒子と比較するため、超微粒子分散型微粒子も2種類製造した。

 

1種類は絶縁体超微粒子が半導体内部に分散した粒子であり、他の1種類は半導体超微粒子が絶縁体に分散した粒子である。

 

これらの粒子を製造する技術は、高純度SiCを製造する技術について科学の視点で研究を進めた形式知から容易に実現できた。

 

科学の長所は、真理を応用した時に必ず真理として現象に現れる点にある。怪しい経験知では、それを展開した時に、再現しないというペナルティを味わうこともある。

 

ゆえに経験知を獲得したら、可能な限りそれを科学の視点で見直す習慣にしている。科学を道具として使うとは、このような意味である。

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2020.12/03 技術者の解放(18)

傾斜機能粒子や超微粒子分散型微粒子のアイデアは、論理集合の補集合を利用して生み出している。粒子には、均一構造の粒子と不均一構造の粒子があり、ウィンズローの成功から電気粘性流体で検討されてきたのは、均一構造の粒子だった。

 

 

この理由は簡単で、科学的に議論しやすいからである。不均一構造ではそれを一義的に定義することさえ科学的に難しい。

 

 

どのような実用的意味があるのか知らないが、ガラスについて未だに「その規則的構造」が、科学の世界で議論されている。しかし、技術者がまず関心を示さなければいけないのは、例えば「構造が引き起こす機能」である。

 

 

科学の世界では、議論のしやすさから、たびたび高機能を含む現象を排除し、機能が低い現象を取り上げたりする。この事実に気がついていない人は多い。

 

 

技術者は実用性のある高機能を含む現象を率先して選ばなければいけない。たとえそれが科学的に議論が難しい現象でも、高機能により引き起こされている現象ならば、それを研究対象にしなければいけない。

 

 

故田口先生と議論していた時にうまくこの点がかみ合い、先生の意図された基本機能というものを納得できた。タグチメソッドでは基本機能という概念を理解することが最初の一歩であるが、ここでつまずく科学者は多い。

 

 

電気粘性流体用に設計した各種粒子のアイデアは補集合に着目した結果ですが、このほかにアイデアの出し方は多数あります。今月当方の開発した事例を用いたアイデアの出し方について無料セミナーを行います。

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2020.12/02 技術者の解放(17)

科学の誕生は17世紀、と言われており、論理学の完成により科学が生み出された。しかし科学と非科学の間に明快な境界があるわけではない。イムレラカトシュによれは、科学の方法で完璧に証明できるのは否定証明だけだそうである。

 

技術者は、科学の誕生以前から活動しており、時には非科学的方法で人類に役立つ機能を自然界から取り出してきた。科学という道具により、その営みのスピードが加速された。そして、教育に科学が採用されていつの間にか技術者は科学に支配されるようになった。 

 

非科学的な方法でも科学的な発明が可能であるにもかかわらず、なぜか非科学的な方法による発明は、排除される場合も出てきた。

 

電気粘性流体用の傾斜機能粒子や微粒子分散型粒子は、それまで均一構造の微粒子が研究されてきたので、不均一構造の微粒子を用いたらどうなるのか、という素朴な疑問から生まれている。

 

実は、科学がこれだけ進歩した21世紀においても、不均一状態や非平衡状態を科学で取り扱おうとすると大変である。30年以上前ならば、さらに大変で、均一構造の粒子で解明できていないのに不均一な構造の粒子を持ち出してもわけがわからなくなる、と言われたりしている。

 

また、不均一構造の粒子をどのように制御して作るのか、というあげ足取りとも思われるような質問が出てきたりする。不均一構造を制御できなくても、電気粘性流体として品質管理できれば良い、という発想は、いいかげんな考え方ともいわれたりした。

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2020.12/01 無料セミナー(アイデアを出す)

11月に2日間問題解決法の無料セミナーを行いましたが、今月は18日13時30分から2時間の予定でアイデア創出法の無料セミナーを行います。

 

今回は問題解決法の全体像は省略しまして、当方の開発実績においてどのようにアイデアを生み出していたのか、実体験を解説します。

 

当方のアイデアは、例えばPPSと6ナイロンを相溶させるとか、非科学的アイデアが大半でありながらそれらが実現されています。

 

PPSと6ナイロンであれば、相溶したことをDSCのTgとTEM写真から科学的に検証を加えております。すなわちアイデアを非科学的発想で生みだし、その実現された姿について科学的に検証を加える手法を採用しています。

この手法は、アジャイル開発に通じる手法であり、市場変化スピードの速い現代に不可欠な方法で、その考え方は業務改革にも応用できます。

 

また、当方のアイデアは科学的に考えていては出てこないアイデアであり、科学者から見ればふざけたアイデア創出法とみなされ、転職の原因にもなっています。

30年前は、それを認めたくない人が多い極めて斬新な研究開発手法ではありましたが、現代はその手法でノーベル賞受賞者まで現れましたので、次第に認知されてゆくものと期待しています。

ただし、特許出願されたそれらのアイデアは科学的に新規性と進歩性が説明されており、完成した姿は科学技術となっています。

 

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2020.11/30 技術者の解放(16)

電気粘性流体は、絶縁オイルに微粒子が分散した液体で、電場をかけると、そのレオロジーが固体状態の物性まで変化する。

 

古くから現象は知られていたが、少量の水と絶縁体粒子とを組み合わせて、高い電気粘性効果をウィンズローが発表してから、注目を浴び1980年代に世界中で開発競争が行われた。

 

ゴム会社では粒子として生焼けの半導体カーボンを用いて研究が進められていた。生焼けの半導体カーボンを用いると科学的には説明がつかないが水を用いなくても電気粘性効果が得られた、と言われていた。

 

当方が電気粘性流体の増粘問題を解決して、某自動車会社におけるアクティブサスペンションの実用化研究に提供しうる耐久性レベルを実現しても性能が未達だった。

 

そこで当方は半導体微粒子の開発を提案している。「帯電しやすく」かつ「放電しやすい」物質は科学的に考えていても材料設計が困難である。

 

前者は誘電体の性質であり、後者は導体の性質で、均一な物質で設計できないことはヒューリスティックに解が得られる。

 

しかし、科学で頭が固まっているとこのような解は得られない。当方が設計案を提示したところ、リーダーは「言葉でいうのは簡単だ。実際に作ってみろ」と突然怒り出した。

 

科学的な説明以外受け付けない人に、非科学的なアイデアを言うと稀にこのような場面となる。非科学的なアイデアの発言者を小ばかにするかしかりつけるような科学者が稀にいる。

 

このような人は、非科学的アイデアでもそれが実現されてから科学的な説明を加えられる「技術者の仕事」の柔軟性に気がついていない。

 

もっとも21世紀になっても科学で自然現象をすべて説明できない状態なので、科学的にはブラックボックスとなる部分が生まれる。

 

例えばノーベル賞を受賞したヤマナカファクターは、科学的に見出されたものではないし、未だにブラックボックスは存在する。ただし、それを用いると細胞がリセットされる現象は科学的に証明されている。

 

すなわち非科学的に見出されても科学的に証明された現象あるいは機能は存在する。現代の技術者は自然界から機能を取り出す使命と、その機能を科学的に証明(注)することが求められているが、機能を取り出す段階は非科学的でも許される。12月には、このあたりに絞って2時間の無料セミナーを実施するので希望者は問い合わせていただきたい。

 

(注)繰り返し再現性について証明されている必要があるので、科学的品質管理手法で日常実現されている。

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