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2014.10/17 働く意味

 ドラッカーによれば、「貢献」と「自己実現」が知識労働者の働く意味である。

 

貢献とは、仕事を通じて会社に貢献すると、会社の社会貢献により間接的に社会に貢献していることになる。この理解は簡単なようで難しい。サラリーマン時代にどのように会社に貢献しているのか、時々自問自答していた。貢献が認められず写真会社で左遷された時も考えた。会社を辞めるべきか、従来通り成果を追究し貢献するべきか。

 

退職するつもりで業務を行ったら、カオス混合技術を実現できた。廃PETボトルを用いた射出成型用樹脂ができた。そして、最終出勤日3月11日は東日本大震災で、最終講演も送別会も吹っ飛び帰宅難民となり忘れられない記念日になった。

 

目標管理を行っている会社は多い。全社方針からブレークダウンされた個人目標を達成すれば会社に貢献していることになる。しかし自分が頑張って目標を実現しても会社の利益が上がらない時など、研究開発を担当しているとそのような矛盾に遭遇する。

 

研究開発は明日の飯の種を担当しているのだから時間差はできる、というのは一つの回答だが、素直に納得できない時もある。

 

自己実現は貢献よりもわかりやすいが、意欲を持ち続け実践するのは難しい。自己実現の目標が努力しても遠のいてゆく場合である。若い人の悩みの種になったりもする。

 

若い人の自己実現を支援するマネジメントは、若い人の意欲を上げ組織目標を達成するために重要であるが、それを実践するのは難しい。管理職の仕事として見えにくい会社もあるからだ。しかし、メーカーでは技術者をまず専門家として育成すべきである。その後管理者として育成しても遅くはない。

 

ゴム会社では最初高分子の専門家として育成された。その後1980年代のセラミックスフィーバーとCIの導入でセラミックスの専門家として学位を目指すことになった。しかし、学位を取得したのは写真会社へ転職してからである。一度遠のいた目標を達成できたのは、ゴム会社で知り合った諸先輩や先生方の後押しがあったからである。

 

風土の異なる環境で経済的な面も含め大変だったが、目標を実現してみてゴム会社の人材に対する哲学の伝統を知ることができた。このような風土の会社は強い。

 

www.miragiken.com  は、若い技術者へサービスとしてはじめました。未来技術を取り上げそれをわかりやすく伝えるためにアニメにしました。何かご希望がございましたらお問い合わせください。

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2014.10/16 諦めない技術開発(7)

 

一人で大きなテーマを抱えている、ということは大変なことだった。しかし夢があった。ゴム会社で半導体事業を立ち上げ事業を行う、という夢は、先行投資を決めた方々の共通したゴールだった。

 

社外にも同様の夢を共有化していた先生方がいた。その方々のことを考えると事業として立ち上げるまでギブアップするわけにいかなかった。運よくS社から半導体治工具のJVのお話をいただけたのは、旧無機材質研究所の先生のおかげだった。

 

ギブアップしなかったのでJVの話が来た、ともいってくださる方もいるが、研究シーズを無機材質研究所で育てたプロセスが重要だったと思っている。

 

リスクの高い研究シーズを公的研究機関で育てる産学連携研究は、いつの時代でも有意義な戦術である。事業化が長引き、社内の風向きが悪くなった時に社外の援軍として機能させることができる。

 

産学連携の有効性に疑問を持たれる方もいるかもしれない。しかし仮に社内で何とかできる研究テーマでも事業化期間が長期になりそうな場合に、シーズの段階から思い切って公的研究機関を巻き込み産学連携体制で研究開発を進めるのは賢明な方法だと思っている。

 

www.miragiken.com   では、学会や官公庁の講演の情報をもとに、未来技術をわかりやすくアニメでまとめています。詳細情報をご希望の方はお問い合わせください。産学連携のお手伝いもいたします。

 

 

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2014.10/15 諦めない技術開発(6)

 30年ほど前の高分子プリカーサーを用いた高純度SiCの研究開発は、2憶4千万円の先行投資でスタートしたが、世界ランク5位のゴム会社が世界ランク3位の会社を買収したことでテーマの位置づけが大きく変動した。

 

自分以外に誰もいない、1階がパイロットプラントで二階が実験室の広い建屋に独身寮から歩いて数分の距離を通う毎日になった。FC棟と呼ばれたその建物は、社内のメール便の区域からも外され、誰も来ない日が多くなった。精神衛生上良くなかったので結婚して都心から通う習慣に変えた。

 

この結婚という習慣の変更は大成功でS社からJVの話が舞い込んだ。JV立ち上げで困ったのは2人で動かしていた特殊横型プッシャー炉の運転である。工夫して一人で動かし、5kg生産し、試作用にS社へ供給した。

 

共同開発契約も締結され、高純度半導体治工具生産に関する事業に必要な特許について共同出願を行った。その後紆余曲折あって現在のゴム会社で継続されている半導体用高純度SiCの事業となっているのだが、このJV立ち上げまでは一人で大変だった。

 

しかしそれを支えてくださったのは経営陣である。誰も訪問しないFC棟を時々どなたかが覗きに来てくださった。社長まで来られた時にはびっくりした。がんばれよ、の一言だけだったが、それで十分だった。また、この事業が30年近く続いている感激を言葉では表現できない。さらに転職したことで偶然この技術の某学会賞を2回も当方が審査することになった。この裏話は機会があれば公開したい。

 

一連のエピソードは www.miragike.com  のサイトでもアニメで今後展開してゆく予定である。

 

 

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2014.10/14 諦めない技術開発(5)

 研究開発テーマには、社内の状況から方針変更したり、中断したりしなければいけない場合がある。あるいは企画段階では重要テーマだったのだが研究開発中に市場のポジションなどがかわりテーマの重要性が見かけ上極端に下がった場合にはテーマは中断される場合が多い。

 

このとき管理者の視点とテーマ担当者の視点がずれていると、テーマの見直し過程で担当者と意見が合わず、作業がうまくゆかない。しかし、この時の対処方法はそれほど難儀なことではないのである。コーチングで担当者の視点を是正すればなんとかなる。

 

難しいのは、視点が一致しており、さらに今後のため、あるレベルまでテーマを続けたほうが良い、と感じている場合である。このような場合、テーマ担当者とその管理者には中断した時の損失と継続した時の利益が感覚として見えているが、部外者にはそれが見えていないために、中断を躊躇していることに対して周囲の理解が得られない。

 

この場合にはテーマを辞めざるをえない状況だが、会社のために継続することが本当に重要だと「誰かが」感じているのならば、重要性を共有化できる若手にアンダーグラウンド(いわゆる闇研究)で担当させると良い。この時大切なのは、具体的なゴールの姿を関係者で共有化しておくことと若手の了解が得られていることである。

 

もし若手が働く意味を理解し、誠実で真摯な社会人であれば、見事に闇のミッションを実現し、会社にイノベーションをもたらすに違いない。ワークライフバランスなど労働者の働き方が話題になり、さらに人件費の高騰から、残業の概念を無くす方向で議論が進められているなかで、このような見解は批判を受けるかもしれないが、凡庸な知識労働者がイノベーションを起こす機会はこのような場合である。

 

 

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2014.10/13 諦めない技術開発(4)

 

高分子の難燃化技術を担当していた時の上司はマネジメントがうまかったのか下手だったのかよくわからないが、この管理者がいなかったならば、高純度SiCの事業がゴム会社で生まれていなかった可能性が高い。

 

なぜなら、始末書騒動とならず、樹脂補強ゴムを担当した時のようにテーマが中断され人事異動していたなら、新しい技術シーズが生まれるための土壌ができなかったからである。ホスファゼン変性ポリウレタンフォームを研究したために始末書を書くことになったのだが、始末書を書きあげるまで管理者とのコミュニケーションの時間が大幅に増えたのである。

 

もっとも当方が、「人に聞けない書類の書き方」にあるように、素直に謝罪して(謝罪する理由は不明だったが)始末書を簡単にかたずけていたならば、コミュニケーションの時間はとられなかったかもしれない。

 

しかし、何事も円満に解決したい、という管理者のおかげで、始末書をもとに炭化促進型難燃化技術の企画は練り上げられた。そして、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームという技術が生まれた。

 

悪く言えば問題が起きないようにその場をつくろうようなマネジメントが、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームを偶然生み出した、ともいえる。データも十分に無い段階で、燃焼した時の高温度でホウ酸エステルとリン酸エステルが反応してボロンホスフェートが生成するファンタスティックなテーマという少し恥ずかしいフレーズまで言わされた。

 

こっそりと夜遅くまで実験をやっていたのは大変悪いことだ、と遠回しな表現でくチクリチクリと釘を刺すように責められ、まだアイデア段階で狙っているゴールの姿まで話さなければいけない状況になった。

 

全て話したところ、すぐに始末書とボロンホスフェートが本当にできているというデータを持ってこい、と言われた。

 

周囲の評判では、マネジメントが下手で**だと悪いうわさばかりだったが、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームから高純度SiCの新合成法開発までの実験プロセスだけを書き出してみると、典型的な目標管理のプロセスで、歪んではいたがコーチングされていた状況が浮かんでくる。本当は優秀な管理職で、周囲がそれに気がついていなかっただけかもしれない。

 

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2014.10/12 諦めない技術開発(3)

上手くいっていない研究テーマに対して中止の判断をするのは、そのテーマをうまくゆくようにマネジメントするよりは簡単である。STAP細胞の騒動では理研所長は難しい道を選んだのである。理研所長は研究経験豊富な方なので、STAP細胞ができなかった時のリスク、特にご自分の晩節を汚すようなことになることを承知で今回の決断をされたのである。

 

この理研所長のような管理者により、多くのイノベーションが生まれてきた。そして、その所長の決断を促したのは、小保方さんの熱意であることは、新聞にも書かれているとおりである。小保方さんが誠実で真摯な研究者であることをただ祈るだけである。

 

企業の研究開発で理研所長のような決断をすることは難しい。しかし、うまくいっていないテーマでどうしても中止しなければならない状況になった時に、管理者はテーマ担当者とよく話し合っていただきたい。そしてテーマ担当者がどうしてもそのテーマを継続したい、という決断を変えないならば、経営に影響が出ない程度に大幅に縮小してテーマを継続できるようにマネジメントすべきである。

 

一方、テーマ担当者がそれではやりたくないといったなら、中止すべきである。決してここで担当者を激励してはいけない。担当者は責任を放棄しているのである。責任を放棄するような人物に重要なテーマを任せてもうまくゆくはずがないのである。

 

予算も0で、別のテーマを担当しながらアンダーグラウンドでもテーマを継続したいと担当者が述べたなら、管理者は担当者と心中するつもりで、とりあえずテーマを中止し、アンダーグラウンドでテーマを遂行することを経営陣と調整するのである。

 

このとき大切なことは全く調整しないで完全にアンダーグラウンドでテーマを継続してはいけない。管理者がいつ人事異動するかわからない時代に経営陣に隠して仕事を進めるのは人材の無駄遣いとなる。

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2014.10/11 諦めない技術開発(2)

 

企業の研究開発において、上手くいっていないテーマについて継続の判断を左右するのは、現場におけるそのテーマ担当者の考え方である。実際の実行責任は管理者が負っているが、管理者がテーマを継続すべきかどうか判断する場合に、テーマ担当者の考え方を重視するかどうかは、管理者が研究開発を理解しているかどうかに影響される。

 

例えば、STAP細胞の騒動では、学会会長が異例の研究中止宣言を出したにもかかわらず、理研所長は研究継続の判断を下したばかりでなく、小保方さんにも研究の機会を与えている。

 

もし小保方さんが誠実で真摯な研究者であれば、理研所長の判断が正しく必ずSTAP細胞はできるだろう。また、所長はじめ理研のメンバーも、性善説に従いそこにかけている。しかし、もし小保方さんが、20年以上前当方のFDを壊した犯人のように、誠実さのかけらもないような研究者だったなら、STAP細胞はできない。

 

学会会長が研究中止宣言を出した段階であれば、理研所長が研究中止を決断しその決断が仮に間違っていたとしても歴史は理研所長を許しただろう。しかし、理研所長は研究継続の決断を下した。

 

世間は理研のメンツのためにテーマを進めている、と見たかもしれないが、当方は、所長が研究開発と言うものを知り過ぎていたためにあのような判断をしたのだろうと思った。所長は小保方さんを信じたのである。そして、所長自らSTAP細胞の研究に夢を賭けたのである。

 

経営の視点では極めてリスクの高い選択であり、通常このような決断は下されない。しかし、りーダーが現場担当者と夢を共有化した時に常識とは異なる決断がなされ、イノベーションが起きる。ただし、それは現場担当者が誠実で真摯な人物の場合だけである。

 

 

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2014.10/10 諦めない技術開発(1)

 30年ほど前に担当した高分子の難燃化技術というテーマでは、新入社員でありながら企画が採用され商品を市場に出すことができた。しかし、最初に手がけたホスファゼン変性ポリウレタンフォームでは、市販されていないホスファゼンを使用したという理由で始末書を書くことになり、炭化促進型難燃化技術(今でいうところのイントメッセント系である)の開発はそこで中断となる危機に遭遇した。

 

この段階で、始末書という処分にショックを受け、上司に言われたまま企画を中断していたら、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームや高防火性フェノール樹脂天井材は生まれなかった。さらに、このフェノール樹脂の技術開発を担当しなかったならば、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドの条件を探索することができず、高純度SiCの技術開発企画など提案できなかった。

 

研究開発も人生と同様、万事塞翁が馬のごとく、身に降りかかった災難にどのように対処するかで展開が変わる。始末書の処分では、噂が広まり、同期からは激励を受け、諸先輩から様々なアドバイスを頂く機会となったので、これを幸運と捉えてみた。そして周囲の期待に応えようと始末書の内容に起死回生の一発のアイデアを書き込み、反省ではなくテーマ提案する勇気を発揮することができた。

 

この時の勇気は、ゴム会社でタイヤ以外の事業が30%程度の売り上げであり、技術開発もその比率で戦力配分されていたことからくる責任感から湧いてきた。新企画の成功により戦力が少なくても発泡体の業界でトップの技術力を獲得できることが技術調査結果から見えていた。発泡プラスチック業界は当時群雄割拠の状態で、タイヤで国内ダントツトップでも、3、4位に甘んじている状態だった。

 

発泡体の難燃化技術は他社から導入した技術が主流で、評価試験中に着火しないように変形して火から逃げ難燃化を達成するという独自開発技術に業界から疑問の声が上がり始めていた時だった。火災時にも安全なようにハロゲンを含まない高分子の炭化促進型難燃化技術は、まだどこも実現できていない技術なので始末書ぐらいで諦めることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー : 一般

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2014.10/09 高純度SiCの技術開発

高分子の難燃化技術から半導体にも用いることが可能な高純度SiCを合成できる技術シーズが生まれた話は、、ゴム会社の50周年記念論文への投稿がきっかけである。

 

この50周年記念論文の募集は、高分子の難燃化技術のテーマを遂行していた時の行事である。担当業務との関係から記念論文に書く内容は、ゴム会社の売り上げの3割弱しかなかった化工品事業と決めていた。

 

また社長方針にはファインセラミックス事業を起業する、という内容が含まれていたので、半導体用高純度SiCの事業は社長方針にも沿っており、50周年記念論文のテーマとして適切である、と思った。

 

しかし、審査員は社外の大学の先生だったので、同期の友人が指摘したとおり社長方針とは無関係の視点で記念論文は選ばれ、高純度SiCの論文はボツになった。記念論文がボツになっただけでなく、無機材質研究所留学中に行われた昇進試験でも、新規事業について述べよ、という作文テーマでも0点がつけられた。

 

この作文テーマでは、翌年同じ内容で100点となるのだが、このあたりの事情についてゴム会社の昇進試験の内容に関わるので詳しくかけないが、とにかく高純度SiCの研究テーマは、一度会社からダメだしを頂いていた状況である。

 

しかし、高分子難燃化技術の企画で始末書を経験していた当方にとって、大した事では無かった。また、技術内容については無機材質研究所のお墨付きもあった。STAP細胞のようなできるかどうか分からないような研究ではなく、誰がやっても再現可能な世界初の有機高分子と無機高分子の均一混合という画期的な技術という自信があった。

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2014.10/08 学位論文

昨日早稲田大学は、小保方さんの学位論文について、「学位を取り消す」という発表を行った。但し一定期間の猶予の間に大学側の指導を受け、適切に訂正された場合には学位を維持する、としている。

 

これまでの話でおかしいのは、かつて小保方氏は提出した学位論文は下書きが誤って受理された、と発言し、訂正版をすでに提出した、という発表を行っている点である。この小保方氏の発表と、今回の早稲田大学の発表は無関係だそうだが、無関係ならば小保方氏の発表は何だったのか、となる。

 

これ以上は書かないが、ドラッカーは誠実で真摯さこそ経営者の重要な資質、と述べているが、科学分野の研究者は、その分野の社長のような存在でもある、ととらえると、研究者でも誠実さと真摯さが求められる。

 

早稲田大学では小保方氏の論文について、それを審査した主査の教授を1ケ月の停職という処分にしたが、これは甘い処分のような気がする。これだけの騒動になっているのである。博士という学位の信頼度が揺れているのである。

 

日本の大学の世界における地位は低いと言われている。それでもノーベル賞を受賞するような優秀な研究者が生まれているが、世界における地位を高めるためには、アカデミアの研究者は自ら厳しく研究に向かい今以上に成果を出すべきだと感じている。研究室にこもっていることが研究ではない。

 

20年前に中部大学で学位を取得したが、その審査の厳しさと親身の指導が今でも思い出として残っている。大学入試の偏差値とその大学の教授陣の姿勢とは関係ないのである。大学を受験するときに偏差値は一つの指標とされるが、騒動が起きた大学の対応の仕方は、それ以上に大学選びの重要な情報である。

カテゴリー : 一般

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