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2014.10/15 諦めない技術開発(6)

 30年ほど前の高分子プリカーサーを用いた高純度SiCの研究開発は、2憶4千万円の先行投資でスタートしたが、世界ランク5位のゴム会社が世界ランク3位の会社を買収したことでテーマの位置づけが大きく変動した。

 

自分以外に誰もいない、1階がパイロットプラントで二階が実験室の広い建屋に独身寮から歩いて数分の距離を通う毎日になった。FC棟と呼ばれたその建物は、社内のメール便の区域からも外され、誰も来ない日が多くなった。精神衛生上良くなかったので結婚して都心から通う習慣に変えた。

 

この結婚という習慣の変更は大成功でS社からJVの話が舞い込んだ。JV立ち上げで困ったのは2人で動かしていた特殊横型プッシャー炉の運転である。工夫して一人で動かし、5kg生産し、試作用にS社へ供給した。

 

共同開発契約も締結され、高純度半導体治工具生産に関する事業に必要な特許について共同出願を行った。その後紆余曲折あって現在のゴム会社で継続されている半導体用高純度SiCの事業となっているのだが、このJV立ち上げまでは一人で大変だった。

 

しかしそれを支えてくださったのは経営陣である。誰も訪問しないFC棟を時々どなたかが覗きに来てくださった。社長まで来られた時にはびっくりした。がんばれよ、の一言だけだったが、それで十分だった。また、この事業が30年近く続いている感激を言葉では表現できない。さらに転職したことで偶然この技術の某学会賞を2回も当方が審査することになった。この裏話は機会があれば公開したい。

 

一連のエピソードは www.miragike.com  のサイトでもアニメで今後展開してゆく予定である。

 

 

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2014.10/14 諦めない技術開発(5)

 研究開発テーマには、社内の状況から方針変更したり、中断したりしなければいけない場合がある。あるいは企画段階では重要テーマだったのだが研究開発中に市場のポジションなどがかわりテーマの重要性が見かけ上極端に下がった場合にはテーマは中断される場合が多い。

 

このとき管理者の視点とテーマ担当者の視点がずれていると、テーマの見直し過程で担当者と意見が合わず、作業がうまくゆかない。しかし、この時の対処方法はそれほど難儀なことではないのである。コーチングで担当者の視点を是正すればなんとかなる。

 

難しいのは、視点が一致しており、さらに今後のため、あるレベルまでテーマを続けたほうが良い、と感じている場合である。このような場合、テーマ担当者とその管理者には中断した時の損失と継続した時の利益が感覚として見えているが、部外者にはそれが見えていないために、中断を躊躇していることに対して周囲の理解が得られない。

 

この場合にはテーマを辞めざるをえない状況だが、会社のために継続することが本当に重要だと「誰かが」感じているのならば、重要性を共有化できる若手にアンダーグラウンド(いわゆる闇研究)で担当させると良い。この時大切なのは、具体的なゴールの姿を関係者で共有化しておくことと若手の了解が得られていることである。

 

もし若手が働く意味を理解し、誠実で真摯な社会人であれば、見事に闇のミッションを実現し、会社にイノベーションをもたらすに違いない。ワークライフバランスなど労働者の働き方が話題になり、さらに人件費の高騰から、残業の概念を無くす方向で議論が進められているなかで、このような見解は批判を受けるかもしれないが、凡庸な知識労働者がイノベーションを起こす機会はこのような場合である。

 

 

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2014.10/13 諦めない技術開発(4)

 

高分子の難燃化技術を担当していた時の上司はマネジメントがうまかったのか下手だったのかよくわからないが、この管理者がいなかったならば、高純度SiCの事業がゴム会社で生まれていなかった可能性が高い。

 

なぜなら、始末書騒動とならず、樹脂補強ゴムを担当した時のようにテーマが中断され人事異動していたなら、新しい技術シーズが生まれるための土壌ができなかったからである。ホスファゼン変性ポリウレタンフォームを研究したために始末書を書くことになったのだが、始末書を書きあげるまで管理者とのコミュニケーションの時間が大幅に増えたのである。

 

もっとも当方が、「人に聞けない書類の書き方」にあるように、素直に謝罪して(謝罪する理由は不明だったが)始末書を簡単にかたずけていたならば、コミュニケーションの時間はとられなかったかもしれない。

 

しかし、何事も円満に解決したい、という管理者のおかげで、始末書をもとに炭化促進型難燃化技術の企画は練り上げられた。そして、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームという技術が生まれた。

 

悪く言えば問題が起きないようにその場をつくろうようなマネジメントが、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームを偶然生み出した、ともいえる。データも十分に無い段階で、燃焼した時の高温度でホウ酸エステルとリン酸エステルが反応してボロンホスフェートが生成するファンタスティックなテーマという少し恥ずかしいフレーズまで言わされた。

 

こっそりと夜遅くまで実験をやっていたのは大変悪いことだ、と遠回しな表現でくチクリチクリと釘を刺すように責められ、まだアイデア段階で狙っているゴールの姿まで話さなければいけない状況になった。

 

全て話したところ、すぐに始末書とボロンホスフェートが本当にできているというデータを持ってこい、と言われた。

 

周囲の評判では、マネジメントが下手で**だと悪いうわさばかりだったが、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームから高純度SiCの新合成法開発までの実験プロセスだけを書き出してみると、典型的な目標管理のプロセスで、歪んではいたがコーチングされていた状況が浮かんでくる。本当は優秀な管理職で、周囲がそれに気がついていなかっただけかもしれない。

 

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2014.10/12 諦めない技術開発(3)

上手くいっていない研究テーマに対して中止の判断をするのは、そのテーマをうまくゆくようにマネジメントするよりは簡単である。STAP細胞の騒動では理研所長は難しい道を選んだのである。理研所長は研究経験豊富な方なので、STAP細胞ができなかった時のリスク、特にご自分の晩節を汚すようなことになることを承知で今回の決断をされたのである。

 

この理研所長のような管理者により、多くのイノベーションが生まれてきた。そして、その所長の決断を促したのは、小保方さんの熱意であることは、新聞にも書かれているとおりである。小保方さんが誠実で真摯な研究者であることをただ祈るだけである。

 

企業の研究開発で理研所長のような決断をすることは難しい。しかし、うまくいっていないテーマでどうしても中止しなければならない状況になった時に、管理者はテーマ担当者とよく話し合っていただきたい。そしてテーマ担当者がどうしてもそのテーマを継続したい、という決断を変えないならば、経営に影響が出ない程度に大幅に縮小してテーマを継続できるようにマネジメントすべきである。

 

一方、テーマ担当者がそれではやりたくないといったなら、中止すべきである。決してここで担当者を激励してはいけない。担当者は責任を放棄しているのである。責任を放棄するような人物に重要なテーマを任せてもうまくゆくはずがないのである。

 

予算も0で、別のテーマを担当しながらアンダーグラウンドでもテーマを継続したいと担当者が述べたなら、管理者は担当者と心中するつもりで、とりあえずテーマを中止し、アンダーグラウンドでテーマを遂行することを経営陣と調整するのである。

 

このとき大切なことは全く調整しないで完全にアンダーグラウンドでテーマを継続してはいけない。管理者がいつ人事異動するかわからない時代に経営陣に隠して仕事を進めるのは人材の無駄遣いとなる。

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2014.10/11 諦めない技術開発(2)

 

企業の研究開発において、上手くいっていないテーマについて継続の判断を左右するのは、現場におけるそのテーマ担当者の考え方である。実際の実行責任は管理者が負っているが、管理者がテーマを継続すべきかどうか判断する場合に、テーマ担当者の考え方を重視するかどうかは、管理者が研究開発を理解しているかどうかに影響される。

 

例えば、STAP細胞の騒動では、学会会長が異例の研究中止宣言を出したにもかかわらず、理研所長は研究継続の判断を下したばかりでなく、小保方さんにも研究の機会を与えている。

 

もし小保方さんが誠実で真摯な研究者であれば、理研所長の判断が正しく必ずSTAP細胞はできるだろう。また、所長はじめ理研のメンバーも、性善説に従いそこにかけている。しかし、もし小保方さんが、20年以上前当方のFDを壊した犯人のように、誠実さのかけらもないような研究者だったなら、STAP細胞はできない。

 

学会会長が研究中止宣言を出した段階であれば、理研所長が研究中止を決断しその決断が仮に間違っていたとしても歴史は理研所長を許しただろう。しかし、理研所長は研究継続の決断を下した。

 

世間は理研のメンツのためにテーマを進めている、と見たかもしれないが、当方は、所長が研究開発と言うものを知り過ぎていたためにあのような判断をしたのだろうと思った。所長は小保方さんを信じたのである。そして、所長自らSTAP細胞の研究に夢を賭けたのである。

 

経営の視点では極めてリスクの高い選択であり、通常このような決断は下されない。しかし、りーダーが現場担当者と夢を共有化した時に常識とは異なる決断がなされ、イノベーションが起きる。ただし、それは現場担当者が誠実で真摯な人物の場合だけである。

 

 

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2014.10/10 諦めない技術開発(1)

 30年ほど前に担当した高分子の難燃化技術というテーマでは、新入社員でありながら企画が採用され商品を市場に出すことができた。しかし、最初に手がけたホスファゼン変性ポリウレタンフォームでは、市販されていないホスファゼンを使用したという理由で始末書を書くことになり、炭化促進型難燃化技術(今でいうところのイントメッセント系である)の開発はそこで中断となる危機に遭遇した。

 

この段階で、始末書という処分にショックを受け、上司に言われたまま企画を中断していたら、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームや高防火性フェノール樹脂天井材は生まれなかった。さらに、このフェノール樹脂の技術開発を担当しなかったならば、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドの条件を探索することができず、高純度SiCの技術開発企画など提案できなかった。

 

研究開発も人生と同様、万事塞翁が馬のごとく、身に降りかかった災難にどのように対処するかで展開が変わる。始末書の処分では、噂が広まり、同期からは激励を受け、諸先輩から様々なアドバイスを頂く機会となったので、これを幸運と捉えてみた。そして周囲の期待に応えようと始末書の内容に起死回生の一発のアイデアを書き込み、反省ではなくテーマ提案する勇気を発揮することができた。

 

この時の勇気は、ゴム会社でタイヤ以外の事業が30%程度の売り上げであり、技術開発もその比率で戦力配分されていたことからくる責任感から湧いてきた。新企画の成功により戦力が少なくても発泡体の業界でトップの技術力を獲得できることが技術調査結果から見えていた。発泡プラスチック業界は当時群雄割拠の状態で、タイヤで国内ダントツトップでも、3、4位に甘んじている状態だった。

 

発泡体の難燃化技術は他社から導入した技術が主流で、評価試験中に着火しないように変形して火から逃げ難燃化を達成するという独自開発技術に業界から疑問の声が上がり始めていた時だった。火災時にも安全なようにハロゲンを含まない高分子の炭化促進型難燃化技術は、まだどこも実現できていない技術なので始末書ぐらいで諦めることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー : 一般

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2014.10/09 高純度SiCの技術開発

高分子の難燃化技術から半導体にも用いることが可能な高純度SiCを合成できる技術シーズが生まれた話は、、ゴム会社の50周年記念論文への投稿がきっかけである。

 

この50周年記念論文の募集は、高分子の難燃化技術のテーマを遂行していた時の行事である。担当業務との関係から記念論文に書く内容は、ゴム会社の売り上げの3割弱しかなかった化工品事業と決めていた。

 

また社長方針にはファインセラミックス事業を起業する、という内容が含まれていたので、半導体用高純度SiCの事業は社長方針にも沿っており、50周年記念論文のテーマとして適切である、と思った。

 

しかし、審査員は社外の大学の先生だったので、同期の友人が指摘したとおり社長方針とは無関係の視点で記念論文は選ばれ、高純度SiCの論文はボツになった。記念論文がボツになっただけでなく、無機材質研究所留学中に行われた昇進試験でも、新規事業について述べよ、という作文テーマでも0点がつけられた。

 

この作文テーマでは、翌年同じ内容で100点となるのだが、このあたりの事情についてゴム会社の昇進試験の内容に関わるので詳しくかけないが、とにかく高純度SiCの研究テーマは、一度会社からダメだしを頂いていた状況である。

 

しかし、高分子難燃化技術の企画で始末書を経験していた当方にとって、大した事では無かった。また、技術内容については無機材質研究所のお墨付きもあった。STAP細胞のようなできるかどうか分からないような研究ではなく、誰がやっても再現可能な世界初の有機高分子と無機高分子の均一混合という画期的な技術という自信があった。

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2014.10/08 学位論文

昨日早稲田大学は、小保方さんの学位論文について、「学位を取り消す」という発表を行った。但し一定期間の猶予の間に大学側の指導を受け、適切に訂正された場合には学位を維持する、としている。

 

これまでの話でおかしいのは、かつて小保方氏は提出した学位論文は下書きが誤って受理された、と発言し、訂正版をすでに提出した、という発表を行っている点である。この小保方氏の発表と、今回の早稲田大学の発表は無関係だそうだが、無関係ならば小保方氏の発表は何だったのか、となる。

 

これ以上は書かないが、ドラッカーは誠実で真摯さこそ経営者の重要な資質、と述べているが、科学分野の研究者は、その分野の社長のような存在でもある、ととらえると、研究者でも誠実さと真摯さが求められる。

 

早稲田大学では小保方氏の論文について、それを審査した主査の教授を1ケ月の停職という処分にしたが、これは甘い処分のような気がする。これだけの騒動になっているのである。博士という学位の信頼度が揺れているのである。

 

日本の大学の世界における地位は低いと言われている。それでもノーベル賞を受賞するような優秀な研究者が生まれているが、世界における地位を高めるためには、アカデミアの研究者は自ら厳しく研究に向かい今以上に成果を出すべきだと感じている。研究室にこもっていることが研究ではない。

 

20年前に中部大学で学位を取得したが、その審査の厳しさと親身の指導が今でも思い出として残っている。大学入試の偏差値とその大学の教授陣の姿勢とは関係ないのである。大学を受験するときに偏差値は一つの指標とされるが、騒動が起きた大学の対応の仕方は、それ以上に大学選びの重要な情報である。

カテゴリー : 一般

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2014.10/07 科学では説明できないが、技術で実現できる現象

高分子プリカーサー法による半導体用高純度SiCの合成技術では、科学的に説明できない電気炉の暴走という現象が起きたため、たった一回の実験でベストのプロセスが見つかった。真摯に努力してきた結果神様が幸運を届けてくれた、と素直に信じている。

 

ドラッカーの言葉であるが、知識労働者が誠実で真摯に努力することの重要性を示す体験に、高分子分野でも遭遇した。それは定年退職前の5年間単身赴任して担当した中間転写ベルトの開発の時である。

 

PPSと6ナイロン、カーボンの3成分を混練したコンパウンドを外部のコンパウンドメーカーから購入し、押出成形で半導体ベルトを製造する技術を開発していたテーマを途中から引き継いだ。10の9乗Ωcmという高抵抗を導電性の高いカーボンで実現するという難易度の高い技術である。

 

パーコレーション転移という現象をどのように制御するのか、という大きな問題である。6ナイロンが邪魔であったが、処方はすでに決まっていたので、変更することができない。全体の方針も処方も決まっており、専門家の誰がみてもほとんどうまくいかないと思われるテーマを途中で引き継ぐ意味をサラリーマンならご理解頂けると思うが、その様な状況でも真摯に努力した。

 

その結果PPSと6ナイロンの相容を実現できるプロセシングを開発することができた。このプロセスで起きている現象は、フローリー・ハギンズ理論では説明できない。しかし、真摯に開発の努力をした結果、技術で実現できた。

 

30年近い研究開発経験から、技術で実現できるかもしれない、という予感はしていた。最初は外部のコンパウンドメーカーにお願いしてその技術を開発して頂くつもりでいたが、技術サービスの方に素人は黙っとれ、と言われた。仕方がないので、休日一人で実験し、可能性を探った。

 

成功する感触を得たので中古の二軸混練機を購入し、プラントを立ち上げた。この時定年間際の職人と、転職してきたばかりの若い研究者の協力が得られ、短期間にプロセスを立ち上げることができた。科学では否定される現象を扱った技術であったが、実現できる自信があれば、真摯な努力を続けると成功できる。技術とはそういうものだ。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2014.10/06 科学では説明できない出来事

多くの犠牲者を出した御嶽山の噴火は予知できなかったという。今どき信じられない話だが、地球物理学の進歩がその程度なのだろう。一方今回の噴火については、なぜ休日に起きなければいけなかったのか、という疑問が残る。確率として2/7という低率である。

 

かつて無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)へ留学中に不思議な出来事があった。ゴム会社から留学して半年後に昇進試験があった。昇進試験は論文形式であり、新規事業について答える問題だった。

 

社長方針として、メカトロニクスと電池、ファインセラミックスを新事業の三本の柱として育てる戦略が出されていたので、半導体用高純度SiCの事業について、独自の新規製造方法を開発し、市場参入したいという解答を書いた。答案は0点だったそうだ(しかし、当時始めた事業は今でも続いている)。

 

当時留学先の上司にあたる総合研究官I先生がその結果を心配されて、1週間だけ無機材質研究所で自由に研究して良い、と許可をくださった。会社から推薦されて留学してきたエリートが昇進試験に落ちたのである。大変心配してくださったことに感謝し落ち込んでいた気分も少し晴れ、留学を終えたら研究しようと思っていた高分子プリカーサー法による高純度SiCの新合成法を1週間で完成させることにした。

 

この新合成法は、高分子プリカーサーの出来不出来により、生成するSiCの純度が変化する、と予想されていた。しかし、その後の研究でSiC化の条件の寄与も30%程度あることが分かったが、当時はそのような情報は、特許にも論文にも書かれておらず公知では無かった。

 

1週間という短い研究期間ではSiC化の条件まで検討する時間は無く、論文に書かれた典型的な条件で電気炉の温調器のプログラムを組んで運転した。実験中は、電気炉の前で八百万の神にお祈りをしていたら、突然電気炉が暴走した。あわてて安全スイッチを切ったところ温度が下がり始めたので、あわててメインスイッチを入れたがまた少し設定温度よりも上がったため切断し、実験を終えた。

 

独特な温度パターンでプリカーサーがSiC化されたわけだが、翌日電気炉の中を見て驚いた。真黄色のSiCが得られていたのである。慌ててI先生をお呼びしたところI先生も一発で高純度SiCができたことを驚かれ、プリカーサー法の威力に感心された。

 

プリカーサーには、化学量論比でシリカと炭素が含まれていたが、その後SiC化の反応条件を検討したところ、この時の条件がベストであった。この時得られた高純度SiCの粉末を社長にお見せし、2億4千万円の先行投資を頂いたのだが、何故電気炉が暴走したのか、科学的に説明できていない。

 

20世紀に科学は著しく進歩した。しかし、未だに科学では説明できない現象が存在する。その中で人類は生活している、という謙虚さを忘れてはいけないのだろう。かつて民主党時代にいつ起きるのか分からないことにお金を使うより、という発言(注)があったらしい。

 

しかし、その様な状態だからお金をかけて研究しなければいけない、という発想にはならないのだろうか。原子力発電の再開の方向でもあるので地球物理学の研究に力をいれても良いように思う。この問題は、www.miragiken.com でも取り上げてみたい。

 

(注)火山の観測に使われた予算が減らされたことについて、民主党時代の仕分けが話題になっている。発言の趣旨は異なる、という言い訳もされているようだが、有名な「二番ではダメですか」という科学技術行政に対する無知な発言もあったので、疑われても仕方がないだろう。政治家は官僚よりも勉強できる立場にあるのだから、科学についてもよく勉強して欲しい。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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