二次電池の市場で現在成長しているのは自動車用途である。ハイブリッド車の普及がそれを牽引しています。ホンダは主にLiイオン二次電池を使用していますが、トヨタはニッケル水素二次電池を使用しています。トヨタは公知のようにコスト重視で車を設計します。スペース効率を求められる場合には、リチウム二次電池を使用していますので、そのあたりの設計思想が垣間見えます。
6年前の情報(L.T.Lam,R.Louey,J.Power Sources,158(2006)1140-1148)で恐縮ですが、鉛蓄電池を基にハイブリッド用に開発されたウルトラバッテリーについて。このバッテリーのどこがウルトラかと言いますと、価格の安さとLiイオン電池並みに1kWhの出力ができるという点です。それでいて、500Wh12Vバッテリーと組み合わせても価格が220US$です。ただし重量は55kg。これに対して1kWhLiイオン二次電池は、500Wh12Vバッテリーと組み合わせて価格は1020US$で重量は34kg。およそ20kg軽くなります。
ニッケル水素二次電池でこれらと同様の性能を達成しようとすると500WhSLIバッテリーと12Vスターターバッテリーを組み合わせる必要があり、重量はウルトラバッテリーと同様の55kgで価格は660US$となるそうです。ただしこの比較は、アイドリングストップ程度のハイブリッド機構における比較で、トヨタやホンダのフルハイブリッド機構で必要となる二次電池の容量レベルの比較ではありません。
しかしこの比較から現在のLiイオン二次電池の価格イメージを把握することができます。すなわちモバイル用途よりも安価になっている、ということです。ニッケル水素二次電池との価格差がモバイル用途では2倍以上(エネルギー密度を考慮すると4倍以上)ありますが、自動車用途ではおよそ1.6倍程度です。また、鉛蓄電池は、ニッケル水素二次電池の1/3程度というイメージになります。驚くのは鉛蓄電池の安さで、これは電解質が水であることが寄与している、と思っています。
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政府系の投資ファンドである産業革新機構がソニーのLiイオン二次電池事業を核とした業界再編に乗り出したという(読売新聞。2013年1月25日)。内容はソニーの子会社「ソニーエナジーデバイス」とNEC・日産自動車の合弁会社「オートモーティブエナジーサプライ」との経営統合である。
Liイオン二次電池は、1980年代にブリヂストンがポリマー電池として実用化(日本化学会賞受賞)して以来日本が先行してきた分野である。しかし、現在そのシェアーは、サムスンがトップになり、日本のバッテリーメーカーはトップを守りきることができなかった。しかし、Li二次電池の部材に関しては、サムスンは日本企業から購入しており、部材の売り上げ規模でみると日本がいまだトップで、日本の電池メーカーが戦略を間違えなければ、まだ挽回ができる状況である。
公知のようにサムスンには多くの日本人技術者が引き抜かれ活躍している。Li二次電池事業のトップはホンダから流出した技術者と聞いている。グローバルに事業が展開されている状況だから、とやかく言うつもりは無いが、日本企業で育てられた優秀な技術者が、国外へ流出している現状は手を打つべきと思っています。
さて電池という商品は組み立て型商品で、部材を外部から購入すればどこでも事業を始められる。今部材メーカーは電池まで特許に権利範囲を記載しているので、Liイオン電池の基本特許が切れた状態では、組み合わせ特許さえ回避できればどこでも生産できる商品である。
一方今でも性能開発競争が続いており、CPUに似た商品でもある。すでに2020年ころまでのロードマップができており、インテル商法さながらである。CPUもハイkやローk材料が話題になったように、部材を外部から購入し組み立てている商品です。すなわち、二次電池とCPUはよく似た商品であり、CPUのこれまでの歴史が二次電池でも起きるということであります。
このままサムスンの独走を許せば、メインストリームはサムスンの一人勝ちになります。CPUのメインストリームをインテルが握り、なかなかその状態をAMDがひっくりかえせないのと同様の状態になります。おそらく2-3年で勝者が決まるでしょう。ただCPUと異なる一面があり、そこの特徴に気づき戦略を展開すれば日本の企業がトップに立てると考えています。詳しくはご相談ください。
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ハードディスクはコンピュータの部品の中で脆弱な部品の一つです。WINDOWSで使用していて突然ブルーの画面になり、わけの分からないメッセージが出たなら、ハードディスクのクラッシュが起きた可能性があります。
NT以降のWINDOWSでは、ハードディスクへ頻繁にWINDOWSがアクセスしています。何をしているのか知りませんが、95や98とは異なる動きをしていることは確かです。95や98ではハードディスクのエラーが起きると起動しなくなります。あるいは起動中にフリーズするだけでした。しかし、NTの系譜は親切にメッセージを出してくれます。
最初にメッセージが出た時に対応しますとほぼ完全に復旧できますが、そこをさぼりますとにっちもさっちもいかなくなります。おまけにデータファイルも失うことになります。30年マイクロソフトのソフトウェアーとお付き合いしてきますと、できの悪いOSでもあきらめがつきます。カンと度胸でOSの至らないところを補ってゆきます。
昨日5年間使用してきたPCが突然ブルー画面になり、「はじめてこの画面がーーー」というメッセージがでました。さっそくハードディスクのクラスタースキャンをかけ、ファイル修復など行い、無事復旧しました。すぐに新しいハードディスクと交換して安定に動くようになりました。
ブルーの画面になる前に、OS自らハードディスクのスキャンをかけて、修復もしくはハードディスクの寿命を知らせてくれるとありがたいです。CPUが4つもついているのでそのくらい仕事してもパフォーマンスの低下は小さいと思います。
今回円安になりましたのでHDの値段を心配していたのですが、1Tで5000円弱と信じられない値段でびっくりしました。今まで500G2台をストライピング(RAID0)で使用していたのですが、500Gの半値(5年前基準)で1Tを買うことができました。おまけにアクセスが早い。ストライピングで使用していた時と大きな差はありません。
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昨日ボーイング787のLi二次電池事故の記事が新聞に載っていました。今週同じ話題で書いたばかりです。ただ2回3回と事故が続きますと、福島原発と同じように技術者の良心を疑いたくなります。
35年前の新入社員研修発表会で軽量化タイヤの技術発表をした時の話です。数年前お亡くなりになり葬儀に参列させていただいた尊敬する技術者の一人、CTO(当時)から「君にとって軽量化タイヤとは何か」と問われました。すなおにスペックを応えましたら、叱られました。CTOの意図は、タイヤは命を乗せて走っている、ということを新入社員に教えたかったわけです。
すなわちスペックを満たしても、初めてのコンセプトの製品については商品にしてはいけない、とまで言われました。実地走行の安全試験を繰り返したデータが重要と、タイヤという製品の品質について厳しく教え込まれました。非科学的ではありますが、実験室で実際のノイズをすべて再現できるわけではないので安全性確保に実地試験が欠かせません。
当時オイルショックもあり、軽量化タイヤは時流に沿った製品で開発はかなり早い時期から行われていたのですが、製品化は「問題が無かったにもかかわらず」遅れます。安全試験にかなりの工数を割いたわけです。驚きました。石橋をたたいても渡らないその姿勢は、設計が全く新しい初物を製品化するときに重要であることを今更ながら思いだし、今回の事故で改めて身に染みました。軽量化タイヤの経験から、Li二次電池をジャンボ飛行機に載せるには、まだ数年必要ではないでしょうか?せめて小型機の搭載実績を積み重ねてからジャンボという手順を踏むべきではないでしょうか?
実際の製品の中で問題を抽出する手段も技術開発では時として行われます。しかし、飛行機という地に足がついていない商品でそれを行うのは、あまりにも危険です。一部の報道で低燃費飛行機として初めての技術がいくつか使われているので初期故障が起きているだけ、という説明がありましたが、事故が起きた場合には人命に直接影響するという特殊な乗り物では、その説明は間違っていると思います。飛行機という乗り物は初期故障さえ許されない乗り物である、という安全哲学こそ重要と思います。
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事故が相次ぐボーイング787ですが、Liイオン二次電池が発火するトラブルもあったそうです。ニュースで知って驚いたのは事故の事実よりも航空機にLiイオン二次電池が採用されていたこと。航空機には各種厳しい規格があり、その規格を通過できるLiイオン二次電池ができたことにびっくりしました。
エネルギー貯蔵デバイスは基本的に使用法を誤ると爆発する可能性があると言われています。エネルギー密度が高いLiイオン二次電池ならばその可能性が高くなるわけですが、航空機の規格を通過できる電池の登場は、経済性さえ改善されれば、一気に二次電池の市場がLiイオン二次電池に置き換わる可能性が出てきたわけです。
すなわちLiイオン二次電池の現在の一番の問題は経済性ということになります。Liイオン二次電池に関係する冗談で、材料メーカーの幹部が海外出張に行くときに、電解質メーカーの幹部はファーストクラスに乗るが、あとはエコノミークラスに乗る、というのがあります。これは電解質メーカーが一番儲かっていることを揶揄した冗談ですが、電解質の安全性と経済性は非水系電池で相反する関係になります。
30年ほど前にセミソリッド電解質を研究したことがありますが、溶媒で膨潤させたゲルを用いたとしても溶媒の蒸気圧はそれほど変化しません。全く溶媒を用いないときには電池の内部抵抗が高くなるので放電容量へ影響が出ます。イオン導電性を上げるためにどうしても可燃性低分子溶媒で膨潤させる必要がありました。最近は難燃性あるいは低蒸気圧のイオン性液体も登場しましたので30年前と異なる電解質の設計が可能となりました。安全性と経済性の高い電解質はLiイオン二次電池の重要なテーマの一つでしょう。
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ホスファゼンは、P=N骨格を有する化合物の総称で、Pに結合する塩素原子を求核置換して様々な側鎖基で修飾することができます。6員環化合物ではP上にハロゲン原子が結合しているときにだけ、開環重合します。ゆえに環状のまま修飾した化合物や、鎖状に高分子量化したポリマーを修飾した化合物など用途に応じて自由に設計できます。
PN骨格はC=Cと少し異なった結合挙動をとり、環状化合物の場合でも鎖状化合物の場合でも、誘電率が4以上の物質を作り出すことができます。すなわちホスファゼン誘導体は高誘電率の化合物となります。骨格そのものの誘電率が高いことを利用できる用途にイオン導電体があります。30年ほど前にLiイオン導電体を合成しましたが、CーC骨格では、やや高抵抗の半導体しか得られませんでしたが、ホスファゼン導電体では、誘電率の効果が効き、導電体と呼べるレベルまでの化合物を作ることができました。
ホスファゼンの誘電率が高いという性質は、絶縁体としての応用以外に導電体としての分野にも有益で、電池の電解質添加剤にも有望です。特にLiイオン電池のような非水系の電池では難燃化が重要なカギとなりますので、ホスファゼンイオン導電体の重要な用途になります。
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Liイオン二次電池のエネルギー密度は、Li金属を負極に用いた時に最も大きくなるが、Liの針状結晶(デンドライト)が負極にでき電池内部でショートを起すので使用することができない。そのため様々な負極が検討され現在に至っている。
Liイオン二次電池が初めて上市されたのは1991年ソニーとされているが、1985年にブリヂストンがセイコー電子工業とともに共同開発し上市したのが世界初で日本化学会化学技術賞を受賞している。このあたりの状況を電池開発をやっている人に尋ねると、ブリヂストンの二次電池はコンデンサーに毛の生えた程度のデバイスだから現在の二次電池と異なる、という説明がされます。
しかし、これは間違っている。正極にポリアニリン、負極にカーボンを用いたこの電池は、れっきとしたLiイオン二次電池であり、コンデンサーのように大容量の電流を短時間に取り出すことができない。コンデンサーとしての動作ができないのでコンデンサーに毛が生えた程度という喩は間違っている。確かに400Wh/kg前後の世界初と皆が認める電池のエネルギー密度には及ばないが、動作は二次電池である。ブリヂストンの電池の負極はカーボンでインタカレーションで動作していたがエネルギー密度が低かった。これは正極の影響が大きいと推定しているが、2年ほどで二次電池事業から撤退している。
おそらくエネルギー密度は400Wh/kg前後が無ければLiイオン電池として認められないのでしょう。昨年上市された合金系負極の二次電池では1000Wh/kg前後のエネルギー密度であり20年前の2倍になっている。ニッケル水素二次電池のおよそ3倍以上である。現在このエネルギー密度がさらに倍の二次電池を目標に開発競争が激化しているのが二次電池の市場の状況です。
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スマートグリッドが提唱されてからすでに10年以上経過した。某ガス会社がオール電化の流れに危機感を持ち、各家庭でガス発電システムを構築するという提案を2000年ころ初めて聞いた。クローズドセミナーだったのであまり注目はされなかったが、燃料電池を使ったそのシステムは魅力的なアイデアだった。
各家庭に燃料電池を設置しガスラインに水素を混ぜるのだそうです。ガスはそのまま従来の都市ガス同様に使用できて、もし各家庭の発電量に余剰部分ができたならそれを工場に売電する構想までありました。もしこれが現在実現していたなら、原発0も夢ではなかった、と思われます。
当時の技術は、テレビで「エネ***」という商品名で販売されていますが、2000年ころ聞いた話とは少しシナリオが変わっているように見えます。ガス会社が発電事業に乗り出すためには、送電と発電の分離が必要、とも10年以上前の講演では申されていましたがまだ実現していません。
ガス会社のシナリオに登場したのは燃料電池でしたが、この電池は触媒燃焼するための白金が不可欠で、資源リスクの問題を抱えている電池です。燃料電池なので二次電池を使用しないシステムを構築できます。現在太陽光発電システムの普及が始まっていますが、このシステムには二次電池が必要です。
スマートグリッドは分散発電システムなので、必ず二次電池が必要になりますが、問題は安全性と価格です。昨年NaS電池の爆発事故があり一部で心配されましたが、基本的にエネルギーを貯めるデバイスなので万が一の事故があれば、爆発するのは当たり前です。家庭で使用している1.5Vの乾電池でも使い方を誤れば事故が起きます。原発に限らすエネルギーデバイスは100%安全という保障はできないのです。
それではスマートグリッドは社会インフラとして危険なのか、というと、自動車でも飛行機でもすでに危険と隣り合わせの道具を人類は生活の中に持ち込んでしまっています。すなわちどのような二次電池がスマートグリッドに適しているのか真剣に皆で考えなければいけません。危険を前提に生活へ取り込むわけですから、安全に運転できる二次電池システムをユーザーが考える時代ではないかと思います。過去のように、使いながら安全システムを完璧なものにしてゆく時代ではないように思います。すでに危険な道具を使い慣れたユーザーがどこまでの危険ならば許容できるのか、二次電池の危険に関するアセスメントを行う必要を感じています。
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Liイオン二次電池の開発競争が激化している。重量容量密度(mAh/g)が1000前後の合金系負極が実用化されたばかりだが、その2倍のエネルギー密度の二次電池の開発競争である。
昨年の電池討論会の予稿集を入手してお正月休みに読んでみたのだが、Naイオン二次電池でも現在の合金系のポテンシャルを達成できる技術シーズが揃いつつある。NaとLiの標準電極電位の差は高々0.3Vである。現在のLiイオン二次電池の出力を考慮すると、合金系負極のLiイオン二次電池レベルはNaイオン二次電池でできる可能性がありそうである。
もしエネルギー密度が合金系の2倍のLiイオン二次電池が登場したらどうなるか。価格が変わらなければ実質的にコストが半分になった場合と等価か?このような議論は実際には難しい。二次電池メーカーが価格競争をしてくれれば実質的に半分となるはずであるが、おそらく性能が上がった分だけ価格を上げる可能性がある。
Liイオン二次電池は現在高値で販売されている。例えばコイン型Liイオン一次電池は100円前後だが、電池容量等を換算してみると、5倍程度の値段がついている。明らかに付加価値がついているわけである。もしNaイオン二次電池で合金系負極と同等のエネルギー密度の電池を製造したら、1/5程度の価格でできるはずで、その価格でLiイオン二次電池の将来価格と比較してみると、充分に競争力のある電池と思われる。
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昨年話題になりましたNaイオン二次電池は下期あたりからさっぱり新聞記事に出なくなりました。起電力はじめエネルギー密度は現在最も普及しているLiイオン二次電池並みの性能が出る可能性があり期待しています。
現在のLiイオン電池は開発競争が激化し、エネルギー密度はブリヂストンが1980年代に実用化したポリアニリン正極のLiイオン電池の10倍近くになりそうな勢いです。しかし、Li金属を負極に用いることはできないので実際に騒がれているエネルギー密度まではLiイオン二次電池で到達できない。
Liイオン二次電池の起電力は4.2Vほど出てもよいはずですが実際の電池に組み上げた時に0.6V前後低くなります。Naイオン二次電池はすでに4V近くの起電力の電池が研究発表されています。
エネルギー密度や起電力はLiイオン電池に負けますが、経済性はNa資源が豊富にあるので優れています。また日本は四方を海で囲まれていますのでNaにつきましては無尽蔵にある、と言えます。すなわち経済性の優れた二次電池ができる可能性が高いのです。経済性も性能の一つと思っています。
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