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2012.12/16 Liイオン二次電池

Liイオン二次電池は、1992年にソニーが実用化し、つい最近まで日本が世界のシェアーの大半を占めていた商品と言われ、国のグリーン戦略で二次電池のシェアー50%以上と設定されている。そしてLiイオン二次電池はエネルギー密度が高いので二次電池の本命とまで言われています。しかし、この世間で言われているLiイオン二次電池に対する考え方には誤解があります。近々人数限定のクローズドセミナーを開催しようと考えていますがいくつかの誤解についてここで簡単に説明します。

 

Liイオン二次電池を初めて世の中に出したのは、ブリヂストンで、ブリヂストンとそれを生産していたセイコー電子工業は1988年に日本化学会から化学技術賞を受賞している。白川先生が導電性ポリマーの発明でノーベル賞を受賞し、ブリヂストンは導電性ポリマーの実用化対象としてポリマー二次電池を企画した。用いたポリマーはポリアニリンで、この材料を正極に用い、カーボンを負極に用いた電池を発明した。電解質の不燃化のためにイオン導電性ホスファゼンまで開発している。しかし、エネルギー密度が低かったのでやがてソニーの新電池に市場を奪われた短命の商品である。何故か電池を研究されている方々は、ソニーのLiイオン二次電池を元祖と位置づけられる方ばかりですが、ブリヂストンが最初です。

 

6年ほど前からLiイオン電池の負極の熾烈な合金化競争が行われ、昨年末負極の活物質をカーボンから合金に変えた電池が登場し、エネルギー密度の低いカーボン負極のLiイオン電池に置き換わりつつある。この合金化競争は、現在はSn系であるがSiOが本命とまで言われこの方面ではサムスンが挽回してきて日本のシェアーは今年は50%を切るとも言われている。特許を調べてみるとサムスンは確かに良い発明を出願し、日本危うし、という状況です。

 

ただLiイオン二次電池が高エネルギー密度電池の本命と考える限り、サムスンの快進撃は続きますが、現状のLiイオン電池レベルならば、それを置き換えることが可能な二次電池の研究はすでに完了している。また現状のLiイオン二次電池よりも高エネルギー密度の二次電池もすでに研究が進み始めています。来年弊社の電脳書店では、世間で言われている誤解に挑戦し新技術開発に挑戦する未来展望企画をスタートします。Liイオン二次電池の問題もそこでとりあげ、日本がこれから立ち上がる新市場、スマートグリッドあるいはホームバッテリー分野の二次電池市場でシェアー50%以上をとるシナリオを提示したい、と考えています。人数限定で開催するクローズドセミナーでもそのあたりの最前線も大胆に講演します。

 

弊社では本記事の内容やコンサルティング業務を含め、電子メールでのご相談を無料で承っております。

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2012.12/12 インピーダンスの周波数依存性シミュレーション

酸化第二スズゾルをゼラチン水溶液に分散し塗布膜をTACフィルムに工程条件で形成するとパーコレーション転移を生じないが、分散条件や塗布液、塗布条件を制御するとパーコレーション転移が観察されるようになる。その転移の閾値検出には、20Hzにおけるインピーダンス変化を利用すると容易である。これは、インピーダンスの周波数分散が、導電性微粒子分散系では低周波数領域で大きく変化する性質を利用している。

 

この低周波数領域で生じるインピーダンスの異常変化について数値シミュレーションをおこなった。すなわち絶縁性のバインダーをコンデンサー、導電性粒子を抵抗に置き換えたモデルを作り、その数学的表現を検討し、モデルに合致する数式を導き出した。このモデルを表現した数式についてゼラチンの静電容量、酸化第二スズゾル粒子の直流抵抗の値で計算を行うと、酸化第二スズゾルの量が増加するに従い、インピーダンスの値が低周波数領域で異常分散を示す。

 

この数値シミュレーションは福井大学客員教授をしていた時に、青木幸一先生に教えていただいて行ったのだが、専門が異なると現象を前にした時の発想が異なる面白さを味わいました。当方は、有限要素法に類似の方法でパーコレーション転移をシミュレートするソフトウェアーを完成していたが、それは直流を前提にしていた。交流で計算するには、モデルを組み直し再度プログラミングをしなければならない。しかし数学モデルに持ち込んで数式化し、数値シミュレーションを行えば、エクセルで計算できてしまうのである。このような世界を真剣に勉強したことが無かったので感動しました。

 

さて、シミュレーション結果は何を意味しているのか。これはモデルと数式を見て考察するわけであるが、数式が複雑なので計算値の変化からモデルの動きを推定した。面白いことに静電容量が異常に大きく変化するところがある。そしてその影響でインピーダンスも大きく変化している。すなわち微粒子のクラスターが多くなることは、微粒子どおしの接触点が増えることを意味し、それは導電性粒子の距離が短くなり静電容量が大きくなる変化と等価で、数値シミュレーションの異常分散が生じていることが分かった。すなわちパーコレーション転移とインピーダンスの低周波数領域における異常分散とは密接な関係があったのである。

 

一連の成果については15年前に公開済みで、来年販売する帯電防止技術電子セミナーにおいて説明する予定です。

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カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2012.12/06 SiCパワートランジスター

3.11以降経済状況以上にエネルギーに対する考え方が大きく変わりました。いろいろな変化がありますが、大きく目立った動きとしてLED電球の普及とSiCパワートランジスターの開発スピードが上がったことです。前者は今年度の電球の売り上げは200億円を軽く突破し、1個のの値段が20W球が300円前後までに下がりました。60W球相当品も600円代を狙って推移しています。後者は2005年頃にSiC-MOSFETが上市され、特許がそのころより大幅に増加して今日に至っております。すでに民生用のエアコンやステレオアンプに搭載され始め、一部ハイブリッド車にも搭載されています。

 

SiCの半導体分野への応用はブリヂストンが先行したが今はウェハーについてはクリー社が王者で新日鉄や日本インターなどと契約し、日本市場へ攻勢をかけています。新日鉄はブリヂストンと同時期にプラズマ法による高純度SiCの開発に成功したメーカーです。当時はエンジニアリング分野を中心としたセラミックスフィーバーが吹き荒れており、新日鉄は開発に成功した高純度SiCの常圧焼結技術開発に苦しんでいました。彼らが開発しました高純度SiCは超微粒子の為、グリーン成形体密度を上げられないのと表面が活性で酸化されやすいため常圧で焼結ができませんでした。ホットプレスでは、カーボン助剤だけで98%以上の密度まで上がりました。

 

特許動向を見ますとデンソーがクリー社よりも現実的な出願戦略で出願しており、おそらく実用化で先を走っている三菱電機やロームよりも先行しているのではないか、と思われます。デンソーは石油を作る藻の研究開発を進めている会社でもあり、同社の特許動向を見ますとCTOのセンスの良さが見え隠れします。今という時代に要求される技術のトレンドやツボを押さえた技術開発を行っています。おそらく技術開発マネジメントがうまくいっている日本では数少ない会社で、5年後が楽しみです。

 

SiCパワートランジスターは、Siパワートランジスターの限界から開発が始められ、先行したGaNパワートランジスターを抜く勢いで開発が進められている。GaNが先行しながらもSiCが伸びている理由には資源リスクの問題もあり、クラーク数の大きなSiを原料とするSiCの方が環境面でもコスト面でも将来有利とみられている。ウェハーの性能としてはGaNの方が優れていても、である。ただ放熱性の尺度である熱伝導率は、この分野の材料の中でSiCが一番高い。

 

SiCウェハー分野ではクリー社一人勝ちの状況ですが、新日鉄や住友金属、ブリヂストンはじめ国内勢の追い上げに期待したい。まだこれからが勝負の分野です。なお豊田中研はこの分野で隠れた技術集団ですが、特許出願状況を見ますとデンソーとの契約があるようです。この分野もknow  who が重要で、クリー社を追い上げるためにはコラボレーションを考えなければいけないのかもしれません。クリー社は特許戦略を重視し巧みに共同開発契約を進めています。新日鉄とは技術面というよりも特許対策の要素が大きいように思われる。

 

 

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2012.11/27 ホスファゼン油

電気粘性流体は、特殊な半導体微粒子と絶縁油とからできている。ゴムの袋に入れる場合には、ゴムから抽出される成分を無害化するための添加剤を添加しなければいけない。それにしても3成分で高機能な油ができる。

 

20年以上前にブリヂストンで担当した最後の仕事で、高純度SiCの開発を一人で担当しながら片手間にやりました仕事です。片手間でやった仕事の割には成果をたくさん出すことができました。ゴムからの抽出物を無害化する成分の開発成果、特殊な半導体微粒子の開発成果は在職中に採用されました。絶縁油は、試作まで行いましたが、仕事の妨害を受けたFD破壊事件のためやむなく中断し転職したため最後まで仕上げることはできませんでした。

 

文字通りブリヂストンの最後の仕事になりました絶縁油ですが、これを完成させたら電気粘性流体の組成全部を開発したことになります。さらにこの絶縁油はライフワークの一つとして研究していたホスファゼンを応用した技術なので、できれば最後まで仕上げたかった、と思っています。

 

ホスファゼンは、PN結合を含む環状化合物の総称で、無機ベンゼンと呼ばれています。昇華性を示す化合物はベンゼンのように気持ちの良い匂いがします。側鎖基をいろいろ変化させると機能性材料になります。例えば、PN化合物なので難燃剤分野は最も利用されている分野です。電池の電解質にも使われています。イオン導電体にもなります。PN環の誘電率が高いので、電気粘性流体に使用すると、とんでもない性能が出ます。

 

ブリヂストンでホスファゼン変性ポリウレタンフォームの研究を行い、その後Li二次電池用に難燃性イオン導電体としての研究(学位論文の一部)、そして最後に電気粘性流体用の絶縁油開発を行いましたが、この絶縁油は少し面白い構造をしています。ホスファゼンは、3員環以上の多環状化合物を選択的に合成することが難しいですが、それでも8員環以上の化合物も見つかっています。7員環の化合物は融点が低くー10℃以下で、他の員数の化合物を溶かすと凝固点効果でさらに融点が下がります。誘電率も高いので電気粘性流体への応用を検討しました。

 

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2012.11/26 高純度SiCのホットプレス

フェノール樹脂とポリエチルシリケート、酸触媒から合成される半導体用高純度SiC紛体は、そのままでは常圧焼結でもホットプレスでも焼結できない。これは猪股先生の焼結理論から自明であり、共有結合性のあるセラミックス紛体は、皆同様の結果となる。ゆえに焼結するときには助剤が必要でせっかく高純度に合成できても成形体として用いるときに純度が下がることになる。高純度のまま使用する場合には昇華法によるウェハー作成が最も適した分野である。

 

SiCの焼結技術については1980年前後にプロチャスカの発明が発表され、一応の完成をみた。ホットプレスによる検討が1970年代に行われ、カーボンはじめいくつかの助剤系が見つかっていた。そしてボロンとカーボンを用いる常圧焼結技術がプロチャスカにより開発された、というのが概略の歴史であるが、1990年代までSiC製品の大半は反応焼結で製造されていた。ブリヂストンがS社とJVを立ち上げた時にも特許出願を行い反応焼結体で半導体治工具を作っていた。

 

高純度SiCは、フェノール樹脂とポリエチルシリケートの比率を変えることにより高純度カーボンを同時に製造することが可能である。ホットプレスに必要な助剤量1-6%前後も容易に制御できる。この高純度カーボンを残すメリットは他にもあり、カーボンが均一に分散した高純度紛体を製造できたり、SiC合成の時に粒子の大きさが均一になったりする。後者はカーボンが存在すると粒成長を阻害するからで、nmレベルの均一な超微粒子のSiCまで製造することが可能である。

 

高純度SiC合成時に高純度カーボンを微量同時に合成する条件でホットプレス用高純度SiCを合成できる。カーボンだけでSiCをホットプレスするときにカーボンの分散状態が緻密化に影響する。カーボンが拡散しにくいためであるが、このような観点からも高純度カーボンの同時合成条件は重要である。

 

高純度SiC合成時に高純度カーボンを残す合成条件は、ホットプレスに有利なだけでなく、超微粒子化できるので昇華法の原料としても長所となる。今から約30年前の発明である。

 

 

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2012.11/25 有機無機ハイブリッド材料

32年間の材料技術者生活で様々な商品開発に携わった。開発した新材料(部材)も多い。もっとも多く開発したカテゴリーは、有機無機ハイブリッド材料である。

 

ホスファゼン変性ポリウレタンフォームやホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームでは、難燃化システムとしての有機無機ハイブリッド材料の可能性を検討した。

 

半導体用高純度SiCでは、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂をリアクティブブレンドにより世界で初めて相溶化を達成した。TEOSを中心とした有機無機ハイブリッド材料の研究が活発になるのは1985年以降なのでこの技術は有機高分子と無機高分子を均一に混合した世界初の事例です。

 

ゾルをミセルに用いた有機無機ハイブリッドラテックス薄膜では、1996年に世界初のゾルをミセルに用いたラテックス重合技術を開発し、容易に有機無機ハイブリッド材料を合成できる道を開いた。コロイド関係を扱う学術雑誌(Langmuar)に世界初のゾルをミセルに用いたイギリス人の論文が登場したのは2000年でコニカの特許は4年早い。

 

酸化スズゾルのパーコレーション転移を制御した帯電防止膜では、プロセシングを駆使し体積分率15vol%でパーコレーション転移を達成している。酸化スズゾルの一次粒子は球状であるが、合成条件を工夫し金魚のウンコ状にした。ただ商品化では内製ではなく他社のゾルを用いたので20vol%前後で制御している。

 

その他中間転写ベルトや電気粘性流体など自分で企画しなかった技術もありますが、有機無機ハイブリッド材料は機能部材としての用途が広いキーテクノロジーと思います。

開発された有機無機ハイブリッド材料で汎用的なのは、ゾルをミセルに用いたラテックス技術とポリエチルシリケートとフェノール樹脂を相溶させたリアクティブブレンド技術です。この2つを使い分けて生み出される有機無機ハイブリッド材料の可能性は広い。

 

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カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2012.11/24 傾斜機能粒子

電気粘性流体の開発を担当した25年前、3種類の複合粒子を開発した。電気粘性流体に使用される粒子は帯電しやすく放電しやすい二律背反の性質を有する粒子が必要で、このような材料は単体粒子では材料設計が難しく、どうしても複合材料として設計しなくてはならない。

 

傾斜機能粒子は、表面は絶縁体で、中心部分が半導体の粒子です。すなわち最表面のすぐ内側から中心部にかけて半導体領域で抵抗が低下している粒子です。単純に均一な抵抗を示す半導体粒子の表面に絶縁体を被覆した粒子を合成し、電気粘性効果を比較すると電気粘性効果がきわめて小さい。粒子の製造条件によりましてはほとんど電気粘性効果を示さないこともあります。

 

単純に半導体粒子の表面にシリカを付着しただけでは電気粘性効果が表れなかったので、半導体粒子の表面から内部にかけてシリカの濃度が変化している傾斜機能粒子を合成したところ大きな電気粘性効果を示した。すなわちシリカの濃度で絶縁体領域から半導体領域まで抵抗を調整することにより、帯電しやすく放電しやすい粒子ができました。

 

傾斜機能粒子が発明されたときにプロジェクトメンバーから驚きの声が上がった。当時このような材料は最先端の材料であり、それが企画から2日程度でできましたのでなおさらです。製造方法は極めて簡単で、フェノール樹脂粒子にエチルシリケートを含浸するとエチルシリケートがフェノール樹脂内部に加水分解しながら拡散するので、表面から内部にかけてシリカ濃度の変化したフェノール粒子ができる。このシリカ濃度が内部から中心部にかけて変化しているフェノール樹脂球を800℃以上で炭化すると、目的とする傾斜機能粒子ができる。傾斜組成についてはエチルシリケートの含浸時間を調節するだけで様々な粒子を合成できます。

 

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2012.11/23 SiCスタックシミュレーション

炭化ケイ素(SiC)は、大別するとαSiCとβSiCの2種類の結晶系が存在する。βSiCは立方晶で1種類であるが、αSiCには2H、6Hなど積層状態のわずかな違いで多数の種類が存在する。このような積層状態の違いで多数の結晶ができる現象を多形という。

 

約30年ほど前、無機材質研究所へ留学しました時に、井上善三郎先生のご指導でSiCの積層状態をシミュレーションするソフトウェアーを開発した。当時のコンピューターは16ビットが普及し始め、PC9801のシェアーが伸びてきた時代である。言語は当初BASICで作成したが、50層までの中間データを得るのに1ケ月かかった。これをCで組むと10日ほどで完了した。フロッピーへデータを書きだしていたので、CとBASICの差は入出力がボトルネックとなりそれほどの差が出なかった。おそらくオンメモリーで計算したならばCで1日だろうと思いました。

 

PC9801とBASICの組み合わせで3ケ月かかって50層まで計算した。面白いのは数千も多形が存在するのに2H、4H,6H、3Cを選択的に安定して合成できることです。6Hについては、温度条件が厳しく、4Hが出現したりするが、この安定に合成できる4つの結晶系以外は、不純物として観察できる程度であった。

 

昇華法でSiCウェハーなどを製造できるのも多数の多形があるにもかかわらず、特定の結晶系が安定に生成するためであるが、これら結晶系の自由エネルギー差はわずかであり、生成機構に関わっていると推定している。約30年前シミュレーションをしてこれまで時折眺めてはアイデアをためてきたので、スタックの形態に確率因子と結合因子を導入し、特定のスタックができるシミュレーションソフトの開発を目指したい。

 

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2012.11/21 電気粘性流体と微粒子

電気粘性流体は絶縁オイルと半導体微粒子からなる流体で、電場の強度で粘度を制御することができます。電場で粘度が制御されるメカニズムは、電場0の場合には流動性を示す懸濁オイルが、電場をかけることで粒子が帯電し電極間で整列した結果、粘度が上昇し、電界強度が上がるにつれて粒子の帯電量が変化するとともに粘度が急激に上昇してゆきます。しかし電界強度が0になると微粒子の帯電が無くなりもとの流体に戻ります。このようなメカニズムです。

 

この流体の機能を発現しているのは、粒子の帯電し分極やすく放電しやすい、すなわち電気を流しやすいが帯電した時の分極も大きいという二律背反の性質です。よく知られているように金属でも帯電しますが導電性が高いために帯電量はごくわずかです。絶縁体は導電性が無いために帯電量は多く容易に分極し誘電体としての性質を示します。ゆえにウィンズロウに発見された当時は絶縁体微粒子に水を吸着させ絶縁オイルに分散し電気粘性流体として使用されていました。

 

このような絶縁体に水を吸着させた粒子は40年ほど研究されましたが耐久性が無く実用化されませんでした。急速に実用化が検討されたのは、表面に有機残渣が残った生焼けの炭素が水を添加しなくとも高い電気粘性効果を示すことが分かったからです。B社で発見されこの材料を中心に研究開発が進められました。

 

このテーマを担当するきっかけとなりましたのは、ゴムの容器に電気粘性流体を入れて用いると、ゴムに添加された材料が絶縁オイルに抽出されて電場0の時でも粘度が上がったままになるため、この問題を解決する応援技術者として駆り出されたからです。プロジェクトのメンバーに加えられたにも関わらずなぜか重要な論文や特許を少しづつ要求した時だけしか見せていただけず、同じ会社のメンバーであるにもかかわらず、奇妙な扱いを受けたことから嫌な予感がして早く問題解決しプロジェクトを離れたいとプロジェクトに加わった時に思いました。ただS社と半導体事業でJVを立ち上げる準備を進めていましたので我慢して真摯に仕事を簡単にいなし、担当して1週間程度で解決方法を提示し、1ケ月で実用化テストに入る状態まで仕上げました。弊社で販売している問題解決技術の成果です。

 

せっかく電気粘性流体のメンバーに加わりましたので、高純度SiCを開発した時に用いた問題解決法で問題を解き、傾斜機能粒子、微粒子分散微粒子、コンデンサー分散微粒子の3種類が電気粘性流体に最適という解答も出してみました。せっかく面白い解答が得られましたので傾斜機能粒子を高純度SiCの試作プラントで製造してみました。絶縁オイルに分散し電気粘性効果を測定しましたら生焼け炭素よりも高い電気粘性効果を示しました。電気粘性流体に構造制御した微粒子を用いた初めての技術でささやかなイノベーションを起すことができました。

 

このようなイノベーションを起すことができましたのは弊社電脳書店で販売している「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」で説明している問題解決法を用いたからですが、40年間誰も気が付かなかったのが不思議です。わかってしまえば当たり前のことだからです。40年間優秀な研究者がたくさんの論文を生産してきたわけですが、微粒子を能動的にデザインして電気粘性流体に用いたのは特許情報からB社が最初でした。

 

 

 

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2012.11/20 帯電防止技術と電気粘性流体

帯電防止技術は高抵抗の半導体領域の特性を示す材料設計技術ともとらえることができる。B社勤務時に電気粘性流体の技術開発に携わったが、この材料に用いる微粒子は「帯電はするが、放電が速い」という二律背反の性質を持つ必要があった。研究開発のプロジェクトに加わったことが転職しなければならない状況を生み出したのだが、今から思いおこせばデータディスクを壊されたのは帯電防止技術を研究開発するための運命だったのかもしれない。

 

二律背反の性質をもった粒子が要求されるので材料設計は高度な技術が必要です。当時カーボン材料がプロジェクトで検討されていたが、3種類の複合材料粒子をプロジェクトに提案した。弊社電脳書店で販売している問題解決法で見出した(1)体積固有抵抗が表面から粒子の中心部にかけて低くなった傾斜機能粒子、(2)導電性の異なる2種の素材からなる超微粒子分散型微粒子、(3)コンデンサー分散型微粒子の3種を提案したのだが、いずれもプロジェクトで検討していた単体カーボン粒子よりも高い性能を示した。

 

帯電しやすく放電しやすい材料は導電性を高める必要がある。電気粘性流体では10の9乗Ωcmよりも高くなければ応答性が悪くなるが、この導電性では電場をかけた時に電流が流れすぎて電気粘性流体として使い物にならない。電気粘性流体に使用できる粒子としては絶縁体が望ましいので材料設計方針として複合材料となる。提案した3種の材料の構造を微粒子で創り込むのは高度な技術が要求されたが、半導体用高純度SiC合成プラントの設備が稼働していたので容易に開発できた。

 

この電気粘性流体の研究で帯電防止層の体積固有抵抗として10の9乗から10の10乗Ωcmであればよい、という経験知を獲得したが、実際に帯電防止層の研究開発を担当し、パーコレーション転移が起きているならば体積固有抵抗の上限は10の11乗Ωcmとなる、という経験知に修正された。日々の実務で獲得される経験知は重要で、教科書に書かれていない知識であれば研究を行い確実なものとして身に着けるのが望ましい。必ずしも日常業務の時間内でできないというのであれば、産学連携テーマとして実行するとよい。それが難しいならばヤミ研という方法がある。

 

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