将棋の世界で異変が起きているという。プロ棋士がコンピュータ相手に将棋で負け続けているそうだ。その様な状況で、将棋がコンピュータにより完全に解明されたらどうするのか、と羽生プロに尋ねたら「その時は桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えれば良い」と答えたそうだ。
終盤力が勝負の分かれ目といわれていた将棋は、やがて中盤力の研究が中心になり、現在は序盤が勝負になっているという。将棋の世界は弊社が運営する未来技術研究部のホームページ(www.miragiken.com)で紹介したような逆向きの推論のように解明が進んでいる。押出成形も結論に当たるフィルム材料に着目したならば、押出機や金型だけでなくコンパウンドまで研究を遡る必要がある。
フィルム成形では、溶融しやすいPETやPP、PEなどのフィルム成形は、押出機で何とかなった。しかし、PPSなどのエンプラのフィルム成形やカーボンを分散した半導体フィルムの成形など次第にその成形技術が難しくなってくると、将棋と同じように序盤、すなわち分子設計やコンパウンディングが重要となってくる。
しかし、昔書かれた押出成形の教科書にはコンパウンディングとフィルム成形の関係については書かれていない。押出機で話が始まっている。しかし、押出機だけではフィルムで発生するトラブルを解決できないケースがある。押出機の工夫だけでは解決できず、混練機から金型まで一連のシステムとして捉えなければ、良好の品質のフィルムを成形できないケースが出てきた。
しかし押出成形技術の解明はまだ完璧にされていない。射出成形は金型で樹脂の表面は制御される。ところが押出成形では、金型のリップを樹脂が出た後も樹脂の表面は冷却されながら変化している。表面だけでなくフィルムの中心部も変化しているが温度測定可能な表面に比較し、中心部の変化は複雑で解明が難しい。
カーボンを分散した樹脂でフィルムを押出成形すると、表面と中心部で体積固有抵抗が異なることから冷却過程の高次構造変化が複雑になることを予想できる。コンピューターでシミュレーションをおこなうとすれば、パーコレーションの概念をどのようにプログラミングするのかが問題となる。押出成形は簡単に見えるが将棋の世界よりも難しく、いまだノウハウが要求される分野である。
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押出機については樹脂を押し出す機能だけを考えた方がシステムを組みやすい。すなわちコンパウンディングは混練機で行い、押出機では、それを均一に再溶融して押し出す機能だけ考える。混練機の練りが浅いから、という理由で押出機に混練の機能を持たせる考え方とは異なる。
もし押出機に混練の機能を持たせたいのなら、単軸押出機を二軸押出機に交換し、徹底して混練を行うようにするが、単軸押出機で二軸混練機のコンパウンディングで不足した練りを補うことを考えない方が良い。単軸押出機を使用する場合には、樹脂温度の均一化に配慮することが大切で、高分子にさらに練りを加えるプロセスを考えない。
前工程で混練が完了していることが重要である。もし押出成形の段階でコンパウンドの練りが浅いという問題が発生したならば、混練工程でその問題を解決する。理由は単軸押出機で仮に問題解決できたとしてもロバストの低いシステムになる可能性があるからだ。
高分子の中にはフィルム成形で混練工程が不要と思われている材料も存在する。あるいはフィルムに機能性や高い品質を望まない場合には押出機に樹脂を投入する前に混練する必要はないかもしれない。その様な場合に押出機の中で混練もやってしまおう、という考え方は当然出てくる。この場合には押出機の中で混練が完結していることを確認しなければいけない。中途半端な混練状態で押出機のシステムを立ち上げた時にはフィルム品質はばらつく。
例えばカーボンを高分子に分散し、10の9乗レベルの半導体フィルムを製造するときに、十分に混練されていない場合には抵抗のばらつきが発生する。混練工程で十分に混練し、安定した抵抗となる状態のコンパウンドを用いたほうが良い。
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フィルム成形の単軸押出機で、L/Dの小さな押出機が使われたときの問題は、ミキシングゾーンが短いために高分子融体の均一性が上がらないことである。この問題は設備導入前にすぐに確認できる場合は良いが、多くは導入後の後悔となる。後悔しても、設備は高価なのでL/Dの大きな押出機に交換することができず、それで何とかしようとする。
フィルム成形に用いる押出機のL/Dは中国で会ったドイツ人が言っていたように余裕を持った仕様が良いと思われる。余裕があれば何か問題が生じたときに設定温度の工夫とスクリューの設計で乗りきることが可能だが、余裕の無い設備では、トラブル対策に限界が生じる。L/Dが25と35の設備では、若干35の方が高価だが、もし選択できるのであれば35あるいはそれ以上の設備を購入しておくのが賢明だろう。
L/Dに余裕があるとミキシングゾーンの工夫が可能である。ミキシングゾーンの考え方については定説は無いが、例えば、バリアミキシングと呼ばれる方式のミキシングヘッドを用いた場合には、比較的軟化しやすいポリマーに対して積極的に未溶融ポリマーを残す条件、すなわち高吐出条件をとってポリマーをミキシングヘッドに導き一気に溶融を完了させるとともに固体ポリマーの溶融熱を利用して低温の溶融体を作り出すノウハウがある。
ポリエチレンで低温の融体を得たい場合にはこの考え方は有効である。しかしポリエチレンで成功した手法が他のポリマーでも有効と限らないのが本技術の難しさである。また、問題が見えにくい場合には過去の事例にとらわれ、問題解決できなくなるケースも存在する。
例えばフィルムに散見されるブツの場合には、その原因の特定が難しい。ブツで正体不明の場合(注)には未溶融のポリマーを疑ってみるのは良い着眼点であるが、その対策になってくると考え方は多種多様である。当方は、溶融しやすいようにコンパウンディングで対策を取っておく、というのが正解と思っているが、混練工程を他社にゆだねている場合にはそれが難しく対策として取れない。
退職前に担当した業務では、コンパウンドメーカーにいろいろと要望を出していたら、技術営業から素人には分からないよ、と言われしかたなくコンパウンドを自分で開発することになった。中古の混練機を購入し考えていた方法で混練してみたら一発で問題解決できた。もしコンパウンドメーカーに協力してもらえないときには、問題解決のために混練工程を取り込む必要がある。短い押出機を用いる場合には、混練工程は重要である。
(注)フィルムのブツあるいはボツは様々な原因で発生する。ここで述べた未溶融ポリマーや気泡、フィラーがはいっていたならその凝集物など多種多様である。ブツ対策にはまずその分類が重要でブツの分類を行うと対策が見えてくる。面倒でもまずブツの分類が対策の第一歩である。
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押出成形の教科書を読むと押出機についてかなりのページが割かれている。PETやPPSの押出成形を経験して、押出機にはコンパウンドを溶融し押し出す能力があれば十分と思うようになった。押出成形に用いるコンパウンドは事前に十分な処理を混練機で行っておくのがコツである。しかしこれは少し教科書とは異なる見解である。教科書には押出機で混練する話まで書かれている。
混練機の機能と押出機の役割を明確に分担して考えるのは、射出成形の設計と同様である。射出成形では金型に樹脂を押し流すので、成形後の表面は金型の精度に支配される。ゆえに射出成形では押出成形ほど押出機について深く考えられた歴史はなく、L/Dの短い押出機になっている。そしてそれで不都合は生じていない。しかし、押出成形では、金型のリップ部の仕上げの影響も大きいが、大半はコンパウンドの素性でその表面の性能が支配される。
昔ゴムの押出成形を担当している職人から、「押出成形は行ってこいの世界だ」と教えられた。即ち、プレス金型でゴムを成形する場合には、金型の仕上げでゴムの成形精度は左右されるが、押出成形では、ゴムのコンパウンドの「でき」が成型精度を左右している。「行ってこい」とは、押出成形ではそのコンパウンドを丁寧に送り出すだけだ、という意味である。
この職人の言葉は押出成形技術をうまく表現している、と感心したので30年以上経った今でも覚えている。すなわちフィルム成形に用いる押出機では、コンパウンドを金型に押し出すこと以外を求めてはいけないのである。コンパウンドはその前に十分造り込んでおくのが押出成形の鉄則である。しかし30年の間に出会った押出成形の技術者からこの職人の言葉を聞いたことがないし、教科書にも書かれていない。
PPSの押出成形を担当してさらに理解を深めたのだが、コンパウンドを溶融し押し出すだけでも大変である。温度を上げれば樹脂を溶融できるのではないか、という人もいるがそれは押出成形をご存じない方である。確かに温度をあげればコンパウンドを溶融させることはできる。しかし、その温度を上げた影響がフィルムに現れるのだ。すなわち押出成形では押出機の中ですなおに溶融してくれるようにコンパウンドを造り込んでおかなければ、成形体の表面をうまく制御することはできない。
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フィルム成形には押出機が使用される。一般に押出機といえば単軸押出機を意味するが、二軸押出機も使用される。混練機にしろ押出機にしろ単なる装置と考え、単純に教科書に書かれた一般の仕様で満足している人が多いが、専門技術者により技術に対する見解が異なる。すなわち教科書に書かれているのは一例であって、実際の現場では様々な問題が発生しその解決に当たった結果、特殊な押出機も考案されている。
これは最近中国で建設されたPET工場を見学したときにドイツ人技術者に聞いた話であるが、PETの成膜においてL/Dが40程度の押出機を使うのは常識だそうな。日本で見かけるのはL/Dが25から30程度が多い。PET以外でもPPやPSでもその程度の押出機が使用されている。L/Dが40の押出機を使うといったら日本では笑われるかもしれない。
しかしそのドイツ人が言うには、L/Dが小さい単軸押出機では樹脂の溶融が十分にできないという。通訳を介して聞いた話なので正確性に欠けるが、若干のドイツ語の知識もあったので通訳の言葉に間違いの無いことを理解できた。PETは樹脂の中でも溶融しやすく未溶融ゲルのできにくい樹脂である。当初ばかでかい単軸押出機を見つけたときに中国人がドイツ人に騙された、と思ったが、ドイツ人技術者は理由を真顔で応えていたのでウソではないと思われる。
また、当方の経験もドイツ人の回答を信じたくなる。かつてPET成膜を担当したことがあるが、押出機は、日本の標準的な大きさであった。すでに生産が安定し研究開発も終わっていたが、輝点異物の問題は残っていた。もっともこの問題は無いことになっていたのだが、基巻き一本を体育館に広げて調べてみたら結構見つかったのである。
品質上問題が無ければ0としても良いのだが、技術報告書には正しく実態を残しておかなければ、その後の担当者が0を前提に考えることになり、問題解決できなくなる。表面処理工程で問題が発生したので、その解決策を考えるときに輝点異物を疑ったのである。転職者であったから内部事情などお構いなしの仕事のやり方で原因を見つけることができた。
この時の経験から押出機については少し疑問に思い、フィルム成膜について、コンパウンド段階の処理の重要性を考えてきた。たまたま20年ほど経ち、中国でその回答を見つけた。
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フィルム成形で問題になる工程帯電について、帯電防止の実務書にその対策が書かれているが、良心的な対策書では、現場対応の技術である、と書かれている。すなわち、標準的な対策で全てを解決できる問題ではなく、現場の対策が重要になってくる。
写真用PETフィルムでは、帯電防止層をインラインコートで塗布すると工程帯電に効果があるが、延伸前のフィルムのコート層の設計に技術がいる。20年前にこの開発を少し担当したが、ノウハウが要求される技術である。
界面活性剤で帯電防止を行う場合は比較的簡単だが、乳剤への影響を考慮し使用できる界面活性剤の制限がある。また、帯電防止レベルも低く、従来通りの工程帯電防止が必要である。イオン導電性高分子は一般に脆性材料が多く、そのまま使用すると延伸時にクラックが入る。電子伝導性高分子も同様の事情でそのまま使用できない。
工程帯電を防止できるインラインコート層について導電性高分子を用いるならば、素材の脆性を改善しなければならない。可塑剤の添加や靱性の高いバインダーとの併用というお決まりの対策になってくるのだが、ここで問題になるのがパーコレーション転移である。
導電性の成分を60vol%以上用いている場合にはパーコレーション転移の問題をあまり意識する必要は無いが、それが40vol%前後になってくると影響が現れる。パーコレーション転移の閾値は、真球の場合に30vol%程度であり、延伸により導電性相のアスペクト比が大きくなることが予想されるので理解に苦しむ問題になる。ご興味のある方は問い合わせて頂きたい。
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フィルム成形では、高分子材料を溶融し、押し出す。このとき問題となるのが、運転開始時に発生するコールドスラッジである。コールドスラッジは、運転条件が悪い場合には押出機の運転が定常状態になるまで続くこともある。コールドスラッジが稀に発生する場合には、どこかにエラーが存在する場合である。前者の問題は、再現よく発生するので問題解決しやすいが、後者の場合はエラーの原因を見つけるのに苦労する場合がある。
コールドスラッジが、コンパウンドの状態に影響を受けて発生している場合に、原因を特定しにくい。コンパウンドのレオロジーデータを開発過程で多数収集し、コールドスラッジが発生したときの特徴を抑えておくことが重要である。
コンパウンド起因のコールドスラッジは、コールドスラッジとして観察される場合は幸運な方である。コールドスラッジとして観察されず、一様に発生するボツとして観察された場合には、問題解決が難しくなる。まずボツの原因がコンパウンドのレオロジーに影響を受けている、ということを理解するまでに時間がかかる。
コールドスラッジが発生する場合には、正体不明のボツがフィルムに発生している。フィルム成形で悩ましい問題は、ボツであり、異物が原因のボツはそれなりの対策を行えば解決できるが、正体不明のボツは、正体が分からないだけに対策が難しくなる。
正体不明のボツだけをあつめてレオロジーデータを収集するとその正体が浮き出てくる。「未溶融」物質である。すなわちゲルである。コンパウンドの成分にこのゲルが多数含まれているとボツ対策は困難になるのでコンパウンド段階で退治しなければならない。問題は混練工程の担当者がこのゲルの存在を理解できるかどうかである。混練工程の担当者が理解できない場合には解決は不可能になる。
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昨日WEBで表題のレシピを見つけて作ってみた。おいしかった。このレシピに着目したポイントは、おからハンバーグを工夫していたときに採用したおからを炒る工程。このレシピでは、コンソメスープを入れて炒めるプロセスになっている。ふっくらとした炊きあがりになり、マヨネーズ、キュウリその他とあえるとおいしいポテトサラダができあがる。
フライパンで炒る工程が少し難しい。おからハンバーグで一度失敗しているから今回はうまくいったが、レシピにはそのあたりについて書かれていない。どこが難しいのかというと、おからは多糖類なので焦げ始めると一気に焦げる。ゆえに火加減と炒めどころである。250gのおからを炒めるときに中火で10分以内に終わることである。また時間が短いとうまくおからに火が通らずホクホク感を出せない。このレシピにはそのあたりを詳しく説明していないが大事なプロセスである。タグチメソッドで最適化すべきかもしれない。
たかが料理であるが、ここは高分子の難燃化技術の知識を活用し、品質工学の煩雑な手続きをスルーする。かつて砂糖をチャー生成剤としてポリウレタンの難燃化に使用したことを思い出す。当時サンプルを保管していたところ、アリがたかってきたので建材への実用化が難しい、と判断したが、おからなら使えそうである。なぜ当時おからまでアイデアが展開されなかったのか残念である。
その後多糖類を難燃剤に用いる特許が他社から出された。半導体用高純度SiCの事業化を一人で担当していたときで、毎日だだっ広いパイロットプラントへ一人で出勤し、先の見えない状態で苦しんでいた。取締役からしばらく他部署のお手伝いをしたらどうだ、とアドバイスをうけ、一日の半分は現業に役立つ企画をしていた。たまたま取り寄せた特許にその技術があった。
二十代は視野が狭かった。これも未熟と言われる原因である。若い頃自分では広いつもりでいても、今から考えると恥ずかしくなるくらいに狭かった。今ならば砂糖からおからやミドリムシまでイメージが広がりこれでも満足していないが、当時はデンプンからご飯までしかすぐに頭に浮かばず、技術を諦めていた。多糖類については大学の教養部の化学で半年も学んでいたが、おからやミドリムシは出てこなかった。
若さの問題は興味を持たない限り深掘りをしない習慣にある。年を重ねある時期から興味とは無関係に技術をまとめる習慣になる。すなわちコンセプトを重視し、コンセプトを明確にするために興味の無い周辺技術まで深掘りをする。年寄りが若い人よりも物知りなのは興味だけで知識を獲得していないからだ。この感覚は30を過ぎないと理解できない。昔は30過ぎると「オッサン」「オバサン」と呼ばれた。今は30過ぎても未熟と呼ばれる。未熟と呼ばれるのは20代で卒業したい。
アリがたかったポリウレタン発泡体の技術は、未熟な技術者ゆえにそれ以上改良されることなくお蔵入りとなったが、燃焼試験で観察していたチャー生成現象は、おからを炒るときにおからを焦げさせない工夫として活かすことができた。
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高分子加工技術の一つにフィルム成形がある。初めてPETの成膜実験を行なったときに、その延伸される様を見てびっくりした。パイロットプラントは工場と異なり同一フロアに押出工程から巻取工程まであるのでその壮大さを実プラントよりも実感できる。
このフィルム成形加工では、高分子物理の大半の知識を動員しなければトラブルが発生したときに対応出来ない。特にレオロジーは重要である。そのほか延伸に伴うモルフォロジーの変化についての知識も必要だ。
フィルム加工には大別してフラット法延伸とチューブラー法延伸がある。チューブラー法延伸はブラウン法あるいはインフレーション法とも呼ばれる。設備費があまりかからない方法である。フラット法延伸には、一軸延伸と二軸延伸で製造される場合がある。
例えば、最近廃PET樹脂で製造される卵パックは、一軸延伸のみで製造されたシートをパック形状に加工している。X線フィルムなどの写真フィルムに使用されるPETフィルムは、二軸延伸まで行い、平滑性を向上している。一軸延伸に比較して二軸延伸はプラントも大きくなり、生産性も劣るが、フィルムの面内均一性は高いので光学フィルムに適している。
このほかにフィルム成形には、押し出したままに近い成形も行われている。例えば薄膜ベルトの生産では、ほとんど延伸を行わずサイジングダイで径を制御する方法がとられているが、この場合にはフィルムのわずかな収縮に伴うエラーが品質に影響を与えることがある。
写真会社に転職して何がよかったか、といえば全てのフィルム成形加工技術を体験できたことだ。転職により、学位を取得したセラミックス分野から各種受賞した高分子材料分野まで専門性が広がった。単に材料の知識以外に、高分子の成形加工技術について射出成形からフィルム成形まで、さらにフィルム成形では、無端ベルトの押出加工から二軸延伸によるフィルム加工、さらにその表面加工まで担当した。
32年間の技術者生活は忙しく過ぎたが、材料知識とその成形加工の知識、半導体から防振ゴムさらには材料評価技術の知識と豊富な現場での経験が財産として残った。今でも身につけた知識分野について調査研究を行い、未来技術を発信するサイト(www.miragiken.com)を立ち上げたり、学会発表も時間を見つけては行っている。また、今年の6月には高分子学会から招待講演者として招待されている。ご興味のある方は弊社をご活用ください。
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かつて「ガラ携」という言葉を聞いたときにすぐに意味が分からなかった。日本国内で独自進化した携帯電話のことだと息子に説明されて知ったが、写真会社の塗布液調整技術は「ガラ技」と呼んでもよいような状態だった。自己流で勉強してきたので正統派の塗布技術がどのようなものか分からないが、まるで料理を作るがごとくの担当者の手順はあざやかで手際よい。長年伝承され洗練された結果と思われる。
日常扱う素材であれば、この手順で何も問題が生じないが、新しい素材を処方するときに面白い行動となる。すなわち、早めにその素材の工程適正を判断し、工程適正無し、と結論を出すのである。これでは新技術を生み出すことはできない。
工程と同様の調整方法を実験室に持ち込んでいるので、その方法でうまくゆかなければ工程適正無し、と判断し、技術を棄却するのは確かに効率的である。工程の変更は処方の変更よりもお金がかかるのでコスト的にも有利な考え方である。イノベーションが不要であれば、これは良い方法かもしれない。
しかしその結果ライバル会社の技術に差をつけられていることに気がついていない。特許の実施例には塗布工程の詳細は書かれていないが、多数の塗布が難かしい素材で塗布経験をつんできたので、実用化経験は無かったが、実施例に書かれている塗布液が起こす現象のイメージをつかむことができた。
塗布液のレオロジーについても処方の組成で大きく変化する。界面活性剤などでレオロジーを調整できる粘度領域にも限界がある。しかしどうしてもその処方でなければ達成できない薄膜の機能であれば工程を変更する以外に技術手段は無い。その時将来どのような機能が要求されそれを実現するためにはどのような処方液を調製しなければならないのかシナリオを描き、工程をどのように改良してゆくと効率的なのかロードマップを作成した。
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