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2013.03/13 国内の射出成形会社

製造業が中国やベトナム、タイへ出て行く中、日本で頑張っている製造業もある。例えば射出成形メーカーは国内に50社前後ある。百円ショップの製品を見てもメイドインジャパンの印字がされている商品がある。説明文が日本語なので、表記は日本製で良いと思うが、多くは「made in JAPAN」と書いてある。

 

日本に製造業が皆無くなってしまうのか、とも感じたことがあったが、自動化が進んでいる製造業は、日本でも充分やっていける。日本製と書かずにあえて「made in JAPAN」と書いているようにも見える。

 

日本だけで射出成形事業を行っている会社は、30社あまりあり多くは金型技術も社内に持っている。100円ショップの製品重量を測定してみると100g以下の製品が多い。材料費は高々20円だろう。国内の射出成形メーカーの多くは単に成形機の自動化だけで無く、何か特徴を持っている。例えば迅速、衛生、複雑、精密などの熟語が会社案内に書かれている。

 

100円ショップに並んでいる日本製の商品からこれらの熟語は感じられないが、おそらく売れ筋商品の場合、100円ショップではQCDのバランスから日本製になっている事情もあると思われる。

 

国内の製造業に何を残すか、という議論は今も聞くが、経済原理により議論の結論が出る前に淘汰されてゆく。半導体メモリーは射出成形よりも高度な技術なので、云々という意見を聞くとモノ創りの本質を知らない意見だと思う。射出成形技術でも半導体メモリーの製造技術以上に高度な要素があることを知らない人が多い。

 

射出成形に関連した難解な物理現象として、例えばフローリーハギンズ理論という高分子の相溶理論があるが、まだ理論として完璧では無い。20世紀に半導体分野の理論のほとんどが確立されたが、高分子物理は、試験の成績で表現するとまだ55点。そのような状態でも製造技術として国内で成立している射出成形メーカーは、残りの45点分のノウハウを持っていることになる。

 

教科書に書かれている技術レベルと教科書には書かれていない技術レベルが存在することに気がつくと、国内に残っている射出成形会社の凄さが見えてくる。多くは中小企業だが、今回の補正予算では、この中小企業に活力を与える施策が盛り込まれている。ようやく日本の政治に製造業を大切にする動きが見えてきた。二番でも良い、という見識では日本に製造業は残らない。

カテゴリー : 高分子

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2013.03/12 難燃剤のブリードアウト

樹脂を難燃化するために難燃剤を添加する。難燃剤が無機フィラーであれば脆性の低下が、液状であれば可塑剤として働くために弾性率の低下が問題になる。樹脂を難燃化する時に力学物性の低下は避けられない問題である。力学物性のバランスをとるためにポリマーアロイという手段がある。

 

しかし、液状もしくはTgが低い難燃剤で力学物性の低下よりも問題が大きいのはブリードアウトという現象である。ブリードアウトという現象は身近な製品で誰でも経験しているはずです。例えば皮状のケミカルバッグやケミカルシューズ、電化製品例えばPCのマウスに使用されているゴム状の部分。長年使用していてべたべたしてきたことはありませんか。

 

これは、樹脂を柔らかくするために添加していた可塑剤が外に滲み出てきた現象です。構造が異なる分子を混ぜると相分離という現象が生じます。例えば水にヘキサンという有機液体を分散し激しく撹拌し静置しますと2層に分離します。これが相分離という現象で、構造が異なる分子どおしを混合しますと必ず生じる現象です。

 

樹脂に何か有機物を分散しても構造が異なれば相分離し、表面に浮き出てきます。これがブリードアウトという現象で樹脂製品の外観品質を悪化させます。ブリードアウトという現象は、物質の拡散で生じており、温度が高くなると早く発生するようになります。その時間スケールは物質の組み合わせで様々で有り、製品寿命の間に発生しないように材料設計することは可能で、樹脂製品の多くはそのように設計されています。

 

難燃剤のブリードアウトで見落としがちなのは、表面で難燃剤の濃度が高くなり、金属が接触していた場合には錆を引き起こしたり、電気製品であれば絶縁性を低下させたりする原因になる故障です。ゆえに難燃性樹脂の促進試験では、市場環境あるいは市場における使用方法を想定した促進試験が重要になってきます。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2013.03/11 半導体領域の材料設計

1万Ωcmから10が10個前後並んだ領域までの体積固有抵抗を持つ材料を半導体という。下限を1000とか10万Ωcmとしている教科書もある。上限も12個程度10が並んだ領域まで半導体領域とする教科書もある。半導体とは、適当に電気を流してくれる材料なので、その物性も適当に扱われているように見える。

 

しかし、実用化するときには、厳密なスペックの中に物性をおさめなければならない。これが難しい。例えば、導電体であるカーボンや金属粉を絶縁体である高分子に分散して抵抗を調整しようとすると偏差が4桁以上ばらつく場合も出てくる。

 

パーコレーション転移が起きるためである。たまたま実験室で安定にできても安心できない。確実にパーコレーション転移を制御できる材料設計を行わない限り、自然現象に任せていてはロバストの高い商品はできない。

 

絶縁体に導体を分散して半導体領域の材料を設計する場合以外に、金属酸化物半導体もその抵抗は大きくばらつく。難黒鉛化カーボンもロットにより2桁程度抵抗偏差が生じる。半導体領域の材料は、うまく設計しない限り2桁以上は抵抗がばらつく、という常識を持っていた方が良い。たまたま測定値が安定な材料が得られたときに、その原因や理由が明らかになっていなければ安心してはいけない。

 

コニカへ転職して間もないときに帯電防止材料の新規アイデアを相談してきた人がおり、アイデアを話したところ、その後なしのつぶて。たまたま相談者と廊下で出会ったときに、進捗を聞いたところ、「うまく進捗しているからほっといてくれ」という意味に近いことを言われたので、ばらつきの制御だけは注意するようにアドバイスしたが、その1年後帯電防止層の品質問題が起きて、仕事が自分のところへ回ってきた。量産が始まったところで導電性が2桁程度ばらつき、問題だ、とのこと。帯電防止層の処方を見たら、ただ材料を2種類混ぜているだけで材料設計されていない処方であった。技術を甘くみてはいけない。

 

実は材料物性において、導電性はその偏差の大小が材料および設計方法により大きく異なる。力学物性よりも測定値の偏差は小さいと思っているととんでもない失敗をする。導体である銅でも純度が管理されなければ1桁程度ばらつく。半導体領域になるとそのばらつきが目立つようになるだけと考えると気楽だが、商品の中には1桁以内に偏差を抑えることが要求される場合もあるので高度な技術が必要になってくる。

 

この材料設計では、複合材料で半導体を製造する場合と単一組成で半導体を製造する場合とでは戦略が異なる。ただし、プロセスの負荷が小さくなるように設計する方針で考える、あるいは、プロセスの負荷が大きくなる場合には既存のプロセスに改良を加え生産の安定化設計を行うなど、共通する部分もある。大切なことは、半導体領域の材料設計が、絶縁体や導電体よりも安定した物性を造り込むことが難しい点を認識することである。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2013.03/08 ポリカーボネート(PC)系ポリマーアロイ

かつてテレビや電化製品の外装材といえば、ABS樹脂が主流でした。しかし、最近はPCとABSをブレンドしたポリマーアロイがよく使われています。

 

PCはCDに使用されている光学特性に優れた樹脂です。しかし、耐衝撃特性(すなわち割れやすい)や流動性(射出成形時に複雑形状を作れない)が悪い、という欠点があります。高分子材料技術では、一成分のポリマーの物性を改良するためにブレンド技術がプロセスと処方の両面で開発されています。

 

PCとABSのポリマーアロイは、PCの物性を改良するために開発された、と教科書には書かれています。この説明はおそらく間違っていないでしょうが、その材料の射出成形体のきれいな外観を見ますと、ABSの安っぽい外観を改良するために考案されたような印象を持ちます。

 

最初にこの組み合わせを考えた人がどのようなコンセプトでポリマーアロイを設計したのか聞いてみたい気がしています。流動性を改良するためであれば、PCにナイロン樹脂をブレンドしても目的を達成できるからです。またPSをブレンドしても耐衝撃性や流動性をある程度改善できます。

 

確かにPCとABSのポリマーアロイPC/ABSの物性に及びませんが、コストはナイロン樹脂やPSをブレンドした方が安価です。コストや物性のバランスを見ているとPC/ABSの選ばれている理由が良好な外観にあるように思えてきます。

 

このPC/ABSのポリマーアロイにも泣き所が有り、少し高度な射出成形技術が要求されると言うことです。すなわち多成分系のブレンドなので、金型温度などの射出成形条件をうまく管理しなければ、テープ剥離というような外観の品質問題が起きやすい。この品質問題はこれまで射出成形技術の問題とされていましたが、コンパウンドの混練に先端技術を用いますと皆無にできます。すなわちコンパウンドの寄与が大きい故障です。もしご興味がございましたら弊社へお問い合わせください。

カテゴリー : 高分子

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2013.03/01 ポリオレフィン系ポリマーの難燃性について

ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系ポリマーは難燃性が低く、LOIが18.5前後である。ポリスチレン(PS)もこのカテゴリーに入れる場合も多い。難燃性の観点から、PSをポリオレフィンに分類するのは妥当と思います。

 

すなわち、ポリオレフィン系ポリマーが燃焼するとポリマーの骨格を構成している主鎖が熱分解し、低分子量化するだけでなく、ラジカルと呼ばれる反応性の高い状態の物質を生成するため、急激に熱分解が進行することになる。そこへ空気が入れば急激な酸化反応、すなわち燃焼となります。

 

ポリオレフィン系のポリマーについて自己消火性の難燃性を付与する技術は難燃剤を添加する方法以外に存在しないようだ。「ようだ」としたのは、実験をしたことはないが、LOIが低い他の材料で難燃剤を用いずに溶融型でUL-94V2を達成し、商品化したことがあるからです。同様の方法で自己消火性レベルの材料ならば設計できる可能性が高いと思っています。

 

難燃性のポリオレフィンのコンパウンドには難燃剤が少なくとも5%以上含まれています。難燃性のポリオレフィンという商品には100%単一ポリマーで構成されているコンパウンドが存在しないことを示しています。耐光性や滑り性その他何か機能性を付与された場合には、ポリマーの成分は90%以下になります。

 

ゆえに力学物性の良好な難燃性ポリオレフィンを設計する場合には、難燃剤の使用量を低減できるポリマーアロイで材料設計した方がマトリックスを構成するポリマー成分が多くなるので射出成形時の外観などの他の品質の安定化のためにもよいと思っています。

カテゴリー : 高分子

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2013.02/28 ポリスチレンの難燃化

ポリスチレン(PS)は、側鎖にベンゼン環がぶら下がった形の分子構造を持っている高分子です。ベンゼン環が入っていますと、一般にLOIは高くなりますが、側鎖基にぶら下がったPSでは、ベンゼン環を含まない高分子と大差はなく、18.5前後です。

 

ゆえにPSを難燃化して空気中で自己消火性にするためには、リン酸エステル系難燃剤が用いられる。しかし、リン酸エステル系難燃剤を添加した場合には、可塑剤として働くので、弾性率等の物性が低下する。アンチモン系の難燃剤も過去に検討されたが、環境への配慮から最近ではリン酸エステル系難燃剤を使用するケースが多い。

 

高い難燃性を得たい場合には、難燃剤を大量に添加することになり、弾性率だけで無く靱性なども低下する。線形破壊力学によれば弾性率の低下とともに靱性は向上するが、添加剤が入ったときには、その添加剤が形成するドメインの大きさで靱性が影響を受け、このように靱性が低下する場合がある。

 

物性低下を最小限にして、高い難燃性を得るためにはどうするか。このような問題解決には、ポリマーアロイの技術が使用される。すなわち難燃性の高い高分子を添加してマトリックスの難燃性レベルを持ち上げてから、難燃剤の検討を行うのである。このとき難燃剤の分散状態も変化しているので、その効果の検討には注意を要する。すなわちプロセス因子の寄与も大きくなるのである。

 

PSの場合には、ポリフェニレンエーテル(PPE)がよく使用される。これはPSとPEがうまく相溶系のポリマーアロイを形成し、どのような比率でもほどよい物性が得られるからである。面白いのは、PS/PPE/難燃剤の3元系の検討であるが、難燃剤の構造とPS/PPEの比率で難燃剤の添加量と難燃性が変化することである。PPEはPSよりも価格が高いので、コストパフォーマンスを狙うときには、弊社にご相談ください。

カテゴリー : 高分子

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2013.02/26 高分子とセラミックス

高分子材料とセラミックスは、物質としてかけ離れた材料に見えますが、力学物性の発現機構に似ているところがあります。特に結晶化度の高い樹脂の脆さなどはセラミックスとよく似た挙動をとります。

 

力学物性を専門にやっておられる研究者には叱られるかもしれませんが、商品に構造材料を組み込むときには、セラミックスも高分子材料も同様に扱った方が安全です。即ち金属材料に比較して品質管理が充分に行われなかったときのペナルティーは大きいです。

 

金属材料には錆びとか外観上の問題でセラミックスや高分子よりも品質問題を引き起こすリスクが高い因子もありますが、少なくとも構造材料として用いたときの力学的信頼性は、セラミックスや高分子よりも高い。

 

学生時代には、セラミックス<<高分子<金属の順序で構造材料としての信頼性を学びましたが、1980年代のセラミックスフィーバーでかなりセラミックスの技術革新が進みました。高分子材料につきまして信頼性を向上できるような革新的技術は、複合材料以外ありません。ポリマーアロイを革新的な技術にあげても良い面はありますが、実務の観点では合金の信頼性に及びません。実務で射出成形や押出成形を経験し、高分子材料のコンパウンドから成形プロセスに至る品質管理の重要性を痛感しています。

カテゴリー : 高分子

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2013.02/25 高分子発泡体の難燃化

高分子発泡体の難燃化は、バルクに比較し密度が低く燃えやすいので難燃化は難しい。バルクと発泡体では、LOIはほぼ一致するが燃焼速度が異なるので、燃焼規格では異なる評価結果になる場合が多い。

 

あまりにも低密度であるとLOIもうまく評価できない場合が存在するが、23以上であればバルクも発泡体も評価結果が良い一致を示す。炭化型でLOIを24以上にする材料設計が可能であれば、発泡体でもうまく自己消火性にできる。21-24程度であると、炭化型でもうまく火が消えず、バルクでは自己消火性になるのに発泡体では自己消火性に材料設計するのに苦労する場合がある。

 

もしドリップが許されるならば、炭化促進型の設計をあきらめ、溶融型で設計した方が容易に自己消火性にできる。溶融型材料設計の場合には、バルクよりも発泡体の方が簡単である。

 

もし炭化型で燃焼速度も抑え自己消火性にしたい場合には、LOIは、少なくとも23以上にしなければならない。24以上であれば、かなり低密度の高分子でも自己消火性にできる。材料によっては21でも多くの難燃性規格で自己消火性になる場合もあるが、発泡体ではLOIと燃焼規格の自己消火性と一致しない場合が多いので苦労します。

カテゴリー : 高分子

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2013.02/20 高分子材料の成形技術

高分子材料の最も多い用途は、賦形して用いる用途でしょう。おそらく薄膜も形状の一つとして考えますと7割以上は何らかの形状で用いられていると思います。残りはオイルなどの液体やコロイドとして用いる用途です。薄膜形成方法は多種多様ですが、円柱とかブロックとかバルク形状を形成する場合には金型を用います。この時、金型へ押し出す場合と金型から押し出す場合、またただ高分子材料だけを押し出す場合と空気などその他の物質と一緒に押し出す場合との4通りに分かれます。

 

技術書により表現は異なりますが、金型へ押し出すのか金型から押し出すのかの違いは重要です。ここで前者にはプレス加工やキャスト製法も含めて考えます。すなわち、製品として出来上がる時に金型の中で形ができるのか、金型から出て形ができるのかの違いは、技術上大きい。また難易度はケースにより異なるが、材料技術の視点で見ると後者が難しいと感じています。すなわち前者は金型表面で製品の外観が規制されますが、後者はいってこいの世界で金型から出た後のレオロジー挙動で外観が決まります。

 

前者も後者も金型技術のカテゴリーでとらえられ、材料の研究があまり進んでいません。むしろ現場のノウハウとして蓄積されているのではないでしょうか。外観の問題は薄膜をコーティングで形成するときにも問題になります。塗布液の調製が十分できていない場合に規則正しい波状の欠陥が出たり、はじきなどで目玉状の欠陥ができたりと悩まされます。塗布の場合は材料の工夫へすぐに視点がゆきますが、押出成形では金型技術として扱われる場合が多いようです。

 

確かに押出成型ではサイジングダイも含め金型の工夫で多くの問題を解決できますが、材料で対応しなければ改善できない技術が多いのも事実です。材料の原因を金型で対応しているケースを見ますと感動します。

 

ある問題が発生してその解決手段が何通りもある場合に何を選択するかは問題解決する人のスキルで決まるようですが、本来はコストやロバストの観点から決めてゆくべき問題でしょう。

カテゴリー : 高分子

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2013.02/18 未来技術

3.11で世の中は大きく変わりました。とりわけ原子力エネルギーに対する考え方は、180度の変化です。国民のだれもが未完成の技術で商用運転を行っていた実態を知ってしまいました。福島原発の事故は、天災で始まっていますが、事故の状況について報じられた内容を見る限り、商用運転してはいけない技術でした。

 

現在販売されている家電製品のマニュアルを見ていただけばわかりますが、注意書きには起こりえないことまで想定された注意が書かれています。しかし、原発の事故対策は発生確率で低い場合には対策を行わない、という考え方で設計されていたのです。また事故後の対応においても、電源車との接続において、コネクターが合わず電源供給できなかった、とか、ベントにフィルターがついていなかった、とか、およそ商用運転されている商品として怪しい状況が報じられています。さらに、いまだに使用後の燃料棒の処分方法が決まっていない、というありさまです。家電のように家電リサイクル法で商品そのもののリサイクルが義務づけられている時代に、原料の処分法すら決まっていないのです。原発を商品として見た場合に、再稼働を議論するときには、実験運転を行うという前提で議論する必要があります。

 

原発がこのような調子ですから、未来技術としてエネルギー関連技術が花形産業を生み出す、と考えました。すでに太陽光発電や風力発電が立ち上がっていますが、ごみ発電技術は経済的に可能性が無いのでしょうか。かつて名古屋市長がゴミの分別回収で政府に苦言を呈したことがありました。細かい分別回収をしてきたのにそれが無駄になったからで、さっそく名古屋で有識者が集められてゴミのリサイクルではどの方法が良いのか議論されました。その結果サーマルリサイクルが最も良い、との結論でした。熱エネルギーとして取り出せるならば発電は容易です。

 

ごみ以外の燃料では、ジャトロワや藻、チップなどのバイオエネルギーの経済的生産技術が立ち上がる可能性が見えています。藻の場合には、ガスタービンを工夫して藻をそのまま燃焼できる技術を開発すれば最も経済的に発電ができます。光合成で藻を育てるのは琵琶湖のような湖を使うことができます。藻の繁殖力と藻の回収速度をバランスさせればよいわけです。藻と水の分離では、熱エネルギーを使うのではなくフィルターワークで十分です。

 

集中発電の方法以外に分散発電技術も出てきました。エネファームなどの燃料電池で、ガスの供給ラインを使って発電するシステムです。電気代が高騰していますから、経済的に十分釣り合うようになってきました。また、スマートグリッドへの移行も可能です。太陽光発電や風力発電、水力発電、地熱発電など様々な発電技術に可能性が出てきました。このような分散発電では蓄電池が重要になってきます。また高電圧を制御する必要から、パワートランジスタのニーズが高まります。

 

電気自動車のような移動体に電気を供給するシステムの開発も重要です。わざわざコネクターをつないで電気供給する方法では利便性が悪いです。また高速充電システムも必要になってきます。電気の供給であれば無人化も可能で、ちょっとしたスペースがあれば電気を供給できるような、それこそ駐車場のどこでも駐車中に電気供給できるようなインフラにすれば一気に電気自動車が普及するように思います。新しい電気電子デバイス以外に膜技術も重要です。従来の熱エネルギーを用いた分離方法から膜分離へ移行する可能性があります。膜分離技術は省エネ技術です。

 

家庭内の創エネ技術も太陽光発電以外に登場する可能性があります。家庭内には発熱製品や振動製品がたくさんあります。そのような発熱媒体や振動媒体から電気を回収するシステムです。コストが問題になりますが、材料技術が進歩すればぺロブスカイト系の材料で経済的な熱電変換素子ができるように思います。

 

こうしたエネルギー関連の未来技術はまだまだたくさんあり、具体的なアイデアもあります。これらを公開する企画を考えていますが、事前に情報を入手したい方はご連絡ください。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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