混練技術に関しては、ノウハウとなる部分が多い。樹脂を融点以下で混練すると、分子量低下が起きるから好ましくない、とステレオタイプ的にいう人がいる。高分子の混練技術をよく知らない人だ。
例えばゴムはゴムのTg以上でロールに十分なトルクがあればロール混練が可能である。但しものすごい音がするので慣れていないとびっくりする。
初めて混練実技を教えていただいたときに、温まっていないロールに天然ゴムを絡ませて指導社員が混練を始めた。ロールをクリーニングしているという。見るからにきれいなロールだが、コンタミで実験データがダメになるのは避けなければいけない、と、つねに道具を実験前に洗浄する習慣の大切さを教えられた。しかし、指導していただいている間にものすごい音がしていてハラハラしていたが、そのうちロールの温度が上がり、静かになった。
この本にはこのようなことは書いていないが、幾つか実務で重要なノウハウを体験したまま書いている。ご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。
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ウトラッキーにより20世紀末伸長流動装置が開発された。二軸混練機の先に取り付けて使用する仕様になっていたが、生産用として普及していない。
原因はその装置の構造にあり、押出量を増やそうとすると装置が大きくなり、実用的ではなくなるからだ。
この装置はその名前の如く、コンパウンドの伸長流動を促し、ナノオーダーレベルで高次構造の設計が可能だ。
伸長流動装置の発明から10年ほどしてカオス混合装置が開発された。これもウトラッキーの装置同様に二軸混練機の先に取り付ける仕様となっている。
ウトラッキーの装置と異なるのは、伸長流動と剪断流動を発生させる仕組みの段数が2-3段しかないので量産用の装置を設計しても伸長流動装置ほど巨大化しない。
この装置は当方が2005年に発明し、それから15年間半導体ベルト用コンパウンドの量産に使用されているが、パッシブな構造のため故障0の生産用として優れた装置だ。
中国ではこのコピー品が勝手に普及し始めたが、国内の生産用はまだ2社だけである。
テスト機用も当初高価だったため、見積書を提出しても販売に結びつかなかったが、加工賃の安い中国の金型メーカーを見つけたので一気に見積価格を下げることができた。
条件は付くが、仕様さえ合えばテスト機用のTダイよりも安価である。ご興味のあるかたは弊社へお問い合わせください。
もし中国のコンパウンドメーカーに市場を奪われた国内のコンパウンドメーカーがあれば、サービスしたいと思っている。
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混練技術についてシミュレーションが可能と誤解されてる人は多い。また、そのためのソフトウェアーも市販されているために、その成果に期待し購入後失望するケースもある。
当方も2005年の時に混練技術のシミュレーションを試みたが、シミュレーション結果は役立たなかった。おそらく今でも同様の状況だと思う。
結局混練の経験を積まない限りこの分野の技術を理解することができない。そんな状況を少しでも改善したいと思いまとめたのがこの著書である。アマゾンでは消費税込みで5000円以上の価格がついているが、弊社へお申し込みいただければ、ただいまサービス価格でご提供中です。
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ポアソン比とは、1800年代に活躍した、シメオン・ドニ・ポアソンという物理学者が見出した物性値である。
一般に材料は、引っ張ると荷重方向(歪a)と荷重に垂直方向(歪b)で変形が生じる。この時b/aをポアソン比と言い、0から0.5の範囲となる。
ポアソン比が0に近い物質とは、応力と垂直方向において伸び縮みしない物質で、例えばコルクのような多孔質の物質である。
一般の材料は、0.2から0.4の範囲に収まり、多くは0.3前後であるが、体積一定の変形が可能なゴムの場合には、0.4から0.5となる。
金曜日夜あるいは、土曜日朝放送された「チコちゃんに叱られる」では、アカデミアの先生がビーカーとメスシリンダーに水を入れて見せて、ゴムの体積一定の変化をうまく説明していた。
昨日朝も同じ番組を見ていて、アカデミアの先生が実験して見せてくれた部分に触れないのも失礼かと忖度し、本日取り上げてみた。
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昨日本欄でゴムのことを少し書いたら、NHK夜の番組で、ゴムを引っ張ると縮むのは何故、という質問が出た。
その時のアカデミアの先生の説明では、水のようだから、というのが解になっていたが、もう一言「お手々つないだ」水のようだから、としてほしかった。
なぜなら、未加硫ゴムを引っ張れば、ズルズルと伸びて変形したままになるからだ。昨日書いたように、ゴムは加硫することで一般に感じているゴム弾性を示すようになる。
もちろん未加硫ゴムでも微小変形において弾性を示すが、昨日の質問は大変形時の弾性について答えるべきだったと思う。
ゴムはアカデミアの先生が説明されたように室温では各原子が自由に振動し動いているが、引っ張られると各原子がつながっているためにその自由度が小さくなる。
この時の気持ちを考えれば自由に戻りたい、と考えるだろう。だから縮む方向へ戻ろうとするので、昨日のアカデミアの先生が茶目っ気たっぷりに引っ張られたときのゴムの気持ちを考えて、と言われたのは、番組へのサービス精神だ。
当方なら恥ずかしくて言えない。なお、このような自由度が束縛される、あるいは場合の数が減少するような変化は、エントロピーで表現されるので、ゴム弾性のことをエントロピー弾性と呼んだりする。
但し、このような説明では昨日の番組で却下されただろう。物事をわかりやすく説明するということは、易しいようで大変難しい。難しいことを難しく説明するのは易しいことである。チコちゃんを見ていると、この年でも気づきに巡り合える。
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大学入試問題はじめ、試験というものは唯一の答えが導かれる問題が採用される。それにより、試験担当官の意思が入って選別が不公平となるのを防ぐことができる。
唯一の答えが導かれる問題を作成できるのは、知識が科学的体系で構築されているからだ。換言すれば科学的体系で構築された知識、すなわち形式知の有無を試すのが試験問題である。
しかし、日常発生する問題では、必ずしも唯一の答えだけで解決できるとは限らない。例えば今回のコロナ禍では、日本の死亡者数変化が世界のどの国とも異なるグラフとなっている。
これは日本のウィルスバスターが、世界と異なる戦略をとり、都市封鎖をすることなく医療崩壊を防ぎ、感染者数の増大を防いだためだ。
この科学に時代に答えが二つ以上あるような大問題が起きたのだ。これは、また感染症の科学が他の科学分野に比較して遅れていたことにより生じている。
実は、感染症はじめ医学の世界は、未だ職人が活躍できる世界なのだ。包丁一本晒しにまいて料理人が活躍できるように、メスをうまく活用できればブラックジャックのような名医となれる時代である。
このような分野では入試問題のような科学的問題よりも非科学的問題に遭遇する事態が多い。そして今回のコロナ禍で明らかになったことは、我々の日常はこの科学の時代であっても非科学的問題の方が圧倒的に多いことだ。
そして一たび非科学的な大問題が発生すると認識の違いから様々な解が提案されることになり、混乱が引き起こされる。そして正しい問題すら見えなくなるのだ。ドラッカーは、「正しい問題は何か」を考えることが重要と半世紀以上前に指摘している。
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ゴムや樹脂を混合する技術は、粉末を混合する技術に比較し難しい。粉末の場合でも凝集粒子の問題があるが、高分子では分子の絡まり具合もそのプロセスで制御しなければいけない。
分子レベルのそのような制御が二軸混練機で可能かどうか、という議論があるが、仮に精密制御が不可能であっても、品質を安定にするためには管理できる程度の制御技術が必要になってくる。
本書では従来の書に書かれた分配混合や分散混合の考え方も取り上げているが、従来の書に不足していた高分子を練るという視点に立って経験知を取り入れて混練プロセスについて解説している。
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混練技術を高分子の混合技術として単純なとらえ方をしていると、そのプロセスで発生している現象を理解できず、その結果得られた混練物(コンパウンド)の正しい問題を見出すことができなくなる。
例えば、導電性カーボンを高分子に分散するとパーコレーション転移が生じるが、これはカーボンクラスターの構造がばらつくことにより、コンパウンドの電気特性に大きな影響を与える。
電気抵抗は、導電性カーボンのある添加量の領域において大きくばらついたりする。また、インピーダンスも同様に変動するが、電気抵抗よりも添加量に対して感度が高いような変化をする。
これが、カーボンの添加量だけでなく混練プロセスにも左右されるのだが、そのことに触れた混練の教科書を見たことが無い。下記にはパーコレーション転移だけでなく、混練プロセスに関わるコンパウンドの問題を考えるために必要な知識を筆者の経験知も含め整理して記述している。
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新型コロナウィルスが話題になっているが、ウィルスの大きさは、概略数10nmで赤血球は概略7μm前後(6から8μmと書いてある書物もある)である。細胞の大きさの1/10が細菌の大きさであり、ウィルスは細菌の1/10の大きさと捉えられる。
高分子が水中にコロイドとして分散しているラテックスの粒子径は、一般に0.1から大きくても0.5μmである。SBRラテックスの電子顕微鏡写真から求めた粒径は、平均粒径が120nm程度(0.12μm)の場合に60nm(0.06μm)から150nm(0.15μm)程度である。
すなわち、小さいラテックス粒子にはウィルス程度の大きさの場合もあるが、大抵はウィルスの2-3倍程度の平均粒径となっている。
すなわちラテックス粒子は、ウィルスより少し大きい。このラテックス粒子を合成する時、水に界面活性剤を分散し、ミセルを形成させてからそのミセル内で重合する。それではこのミセルの大きさは、というとラテックス程度から数十ミクロン程度まで、安定であればどんどん大きくなる。
それでは、ラテックスもそれだけ大きな粒子が作れるのかというと、ミセルが大きくなると、ミセルそのものが不安定になってくるので技術の難易度が増す。大きなラテックスは、せいぜい0.5-0.8μ程度までの大きさしか安定に合成できない(当方の経験知)。
レーザープリンターに用いられるトナーは数μmの大きさであり、重合トナーと呼ばれている高品質トナーはラテックス合成後、粒径分布を制御しながらラテックスを凝集させて製造する。だから高度な技術が必要で、粉砕トナー(樹脂をジェットミルなどで粉砕した平均粒子径数十ミクロンの画像品質の悪いトナー。コニカミノルタのトナーはすべて高品質の重合トナーである)よりも高い。
ラテックスを塗布して薄膜を製造すると、薄膜の構造にはラテックス粒子の粒の形が残っていたりする。焼き付け温度を高くすると、この形状が見えにくくなるが、PETの表面処理では熱処理温度を高くできないので、うまく染色すると形状をくっきりとみることが可能だ。
シリカゾルや酸化スズゾル粒子の大きさは数nmであり、ウィルスやラテックスのサイズの1/10である。
20年以上前に、このゾルをミセルとして用いてラテックスを合成する技術を開発した経験があるが、それでもラテックス粒子の大きさは、有機物の界面活性剤を用いたときと変わらなかった。
ところが、二成分の非相溶系の高分子を混練で分散すると、コンパチビライザーを用いなければ、混合比率により、少ない方の高分子が数μmから数mmまで変化する。組み合わせにより0.1mm程度までの場合もあるが、とにかく半々程度では、巨大な構造になる。
非相溶系高分子ブレンドが白濁するのは、構造が光の波長よりも大きくなるためだが、ラテックスの場合には、可視光の波長よりも小さくできるので透明フィルムの表面処理にポリマーブレンド技術を用いることが可能だ。
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電気粘性流体の耐久性を界面活性剤を用いて改善できない、という科学的に完璧な報告書が提出されていたが、その存在を知らされなかった当方は、たった一晩の実験で、電気粘性流体の耐久性問題を界面活性剤で解決できるという結果を出してしまった。
この結果は特許出願されているが、否定証明で完璧な論理展開をして導かれた科学の結論でもひっくり返る可能性があるのはなぜか。
それは自然現象を実験室で行うときの限界があるからで、完璧な自然現象のモデル化が困難なことは、技術者ならば経験から理解している。
例えば平衡を実現することは至難な業である。ゆえに非平衡化で実験を行い結論を導くことになった場合に論理が完璧であっても実験結果に不完全性が残る。
換言すれば、科学の真実をひっくり返そうと試みたいならば、平衡条件と非平衡条件で現象が大きく異なり、準安定状態を平衡状態と勘違いしやすい現象を探せばよい。
混合や攪拌はその典型例であり、プロセスの途中で高分子を平衡条件にすることなど不可能である。ゆえに混合攪拌過程について語られる形式知に縛られる必要はない。
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