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2020.02/01 高分子の熱重量分析(3)

TGAで得られたデータには、測定雰囲気等のある測定条件における熱分解速度に関する情報が含まれている。

 

これは等速昇温データでも恒温測定データでも同様であるが、恒温測定データでより精度が高いことをすでに説明した。

 

40年以上前には、Doyl-小沢法とかFreeman-Carol法とかTGAを用いた反応速度論解析法がいろいろな高分子で検証されたが、最近このような方法による実験データを見かけない。

 

いずれの方法も解析に用いた仮説に対応した値が得られたので訳が分からなくなった可能性が高い。

 

このような科学の発展過程を見ると、科学のかかえる問題点を知ることになる。イムレラカトシュが言っていたように肯定証明でいつでも永遠の真理を見出せるとは限らないのだ。

 

そもそも高分子の熱分解機構は、高分子の高次構造の影響を受ける。例えばフェノール樹脂とポリエチルシリケートとの相溶化された前駆体炭化物と相溶化していない前駆体炭化物では、SiC化の反応機構が異なり、その結果が恒温測定データに現れる。

 

すなわち、相溶化された前駆体炭化物ではSiOガス生成がなく、核生成の誘導期間を恒温測定データの曲線に観察できるが、相溶化されていない前駆体炭化物から得られたデータでは、いきなりSiOガス揮発による重量減少曲線となる。

 

これは高次構造のわずかな差でSiC化の反応機構が異なるからで、高分解能の電子顕微鏡観察をしない限り、このわずかな高次構造の違いを観察できない。

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40年以上前にはこのような高分解能な電子顕微鏡が無かったから、科学的に無駄な研究が多数なされた、といえるが、そのような時代を経験しても、科学100%のパラダイムによる開発の効率の悪さに気がつかない。

カテゴリー : 連載 高分子

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2020.01/29 高分子の熱重量分析(2)

TGAには二種の測定モードがある。一つは等速昇温測定であり、もう一つは恒温測定である。

 

前者よりも後者の方が詳細で精度の高いデータが得られる。ゆえにTGAの使い方として、等速昇温測定を行ってから、緻密なデータが必要な時に、特定温度で恒温測定を行う、という手順となる。

 

ちなみに、この両者で測定精度の違いがどのくらいあるか、評価をした経験がある。例えばSiC生成の速度論的解析を行ったときに、活性化エネルギーが等速昇温測定では恒温測定よりも10%から20%高めに得られた。

 

恒温測定で得られた活性化エネルギーの値がSiC中のカーボンの拡散における活性化エネルギーに近かったので、等速昇温測定では誤差が大きくなったと推定している。

 

この時、2000万円かけて室温から2000℃まで1分以内に昇温可能な超高速昇温熱天秤を開発して測定している。それゆえ恒温測定モードの値には自信がある。

 

しかも、反応が起きない1000℃まであらかじめ加温しておいてから恒温測定を行っているので測定データには誘導期間の情報まで現れていた。

 

等速昇温測定では昇温速度が問題となるが、昇温速度を早くすると誤差が大きくなるだけでなく、失われる情報も出てくる。また昇温速度を早くすると測定データは高温度側へシフトする。

 

ゆえに、TGAでは10℃/minよりも遅い昇温速度で測定すべきで、DSCや粘弾性測定もTGAの昇温速度に合わせて測定すると比較できて便利である。

 

また、実務では10℃/minで測定すると600℃まで一時間でできるので都合がよい。

 

注意しなければいけないのは、15℃/minの昇温速度で600℃まで精度よく測定できない製品を使用する時である。

 

TGAは少なくとも昇温速度30℃/minで600℃まで精度よく昇温できる製品を選びたい。

 

その理由は、サンプルの昇温速度がガス流量の影響を受けるからで、ガス流量を多くすると温度が上がりにくくなる。

 

酸素濃度の影響を調べたいときに、酸素濃度の異なるガスを同一ガス流量で測定するのがよいが、実務ではガスの混合比を変えるよりもガス流量を変化させた方が簡便である。

 

補足だが天秤部分の構造により、ガス流量を変化させたときの浮力の影響に違いが現れる機種も存在する点にも注意するように。

 

昔真空理工が浮力の影響を受けにくく昇温速度が速くても精度よく測定可能な赤外線イメージ炉の製品を供給していたが、最近見かけない。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2020.01/28 混練の本

1月末までに料金をお振込み及びお申込みいただきましたお客様には、サービス価格送料及び消費税込み4600円で提供させていただいております。

1月末に出版されましたなら本サービス含めクリスマスサービス等すべて終了させていただきます。

2月以降は本体価格4800円となりますので消費税480円および弊社へお申し込みの場合には送料180円が必要となります。合計5460円となります。

是非今月中のサービス価格をご利用ください。

本書は実務における高分子について勉強したい方にも役立つ内容になっています。

カテゴリー : 一般 宣伝 電子出版 高分子

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2020.01/27 高分子の熱重量分析(1)

最近は分析機器が進歩し、高分子の構造分析も昔より便利になった。しかし、便利な装置は皆高価であり1000万円以上する。

 

熱重量分析(TGA)は、600万円もだせば解析ソフトウェアーまで揃った立派な装置を買えるが、最近企業の実験室に見かけないことがある。

 

1970年前後には、TGAを用いた研究が盛んに行われており、高分子材料の研究には欠かせない分析装置の一つで、実験室に何台もあった。

 

TGAやDSCの問題の一つとして、分析結果に機種の差異が現れる。ゆえに科学的解析装置として敬遠される研究者もいる。

 

また、熱分析結果をもとに論理を展開すると時代遅れとばかりに論理全体を否定する科学バカな研究者もいる。このような研究者は熱分析装置が経済的に迅速なデータが得られる評価解析装置と言う側面を忘れている。

 

粘弾性測定装置まで熱分析装置とみなせば、この装置と、DSC、TGAの3種を揃えることにより、高分子を階層的に評価解析できる。

 

この3種の装置において、TGAは、高分子の一次構造や側鎖の情報など最下層の情報を測定できる。

カテゴリー : 高分子

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2020.01/17 混練の本

本書は学術書ではない。混練について考えるときに必要な知識を整理してまとめた本である。2005年に混練の基盤技術も無い会社で、半年以内に混練プラントを建設しなければいけなくなったときに当方が読みたかった内容である。

当時8万円前後の混練に関する本や高価なシミュレーションソフトを購入したがいずれも役に立たなかった。本については自分の金で購入したので問題ないが、シミュレーションソフトは会社の経費で購入したので何らかの成果を出さなくてはいけないと思い、とりあえず結果を出したが、混練工場が稼働後だった。

驚いたことにゴム会社新入社員時代の手帳に書かれていた内容で今でも安定生産の行われているプラントができてしまったのである。そしてその手帳の内容は、8万円前後の本に書かれていたパラダイムと大きく異なる。

たまたま、ゴムタイムズ社から講演依頼があり、混練の講演をしたら、それを出版しようという話になった。これが、この本の背景である。40年前の知識に最新の高分子の知識を加えた体系として構成している。混練という技術のプロパティーを考慮し形式知だけでなく経験知も躊躇なく盛り込んでいる。

混練のプロからハンバーグや餃子をおいしく作りたいと考えている主婦まで一読の価値がある、と思っている。

また、高分子について勉強しようという方にも、役立つと思っている。

出版前のサービス価格を設定していますので弊社へお問い合わせください。

カテゴリー : 一般 宣伝 電子出版 電気/電子材料 高分子

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2020.01/10 iPS細胞の異常

「再生医療用のiPS細胞を備蓄する京都大iPS細胞研究所のストック事業で、出荷したiPS細胞の一部を目的の細胞に分化させた際、がん化に関連する遺伝子異常や、染色体の異常が起きていた。」

 

これは昨日WEBニュースで見つけた記事だが、書かれた内容から深刻な問題と思っている。

 

すなわち、京大の関係する研究者たちが、QCの実務について知らない可能性があり、さらには「米スタンフォード大医学部の遺伝学部長を務めるマイケル・スナイダー教授は「臨床用の細胞でのがん関連遺伝子の変異は極めて重大だと考えられる。事実を公表し、オープンな場で評価する必要がある」と指摘する。」

 

いくら研究段階とはいえ、事実の公表だけではだめである。すべての作業の標準書を作成し、それらをオープンにして議論する覚悟が必要だ。

 

おそらく研究者の中には、研究作業におけるノウハウを言いたくない場合も出てくる。あるいは、作業についてダミーの作業を書く研究者も出てくるかもしれない。

 

研究者を信じていないわけではなく、研究者が勝手な判断をする危険があるということだ。

 

メーカーでQCの実務を担当した人なら理解できるかもしれないが、作業標準書とは愚直なまでに細かく記載する。それがiPS細胞の場合に、研究者全員ができるかどうかである。

 

STAP細胞の時の騒動を思い出していただきたい。いい加減な手順書に対してだれも注意していなかったばかりか、作業記録も取られていなかった事実が存在する。

 

実務経験者ならば異常と感じる状態が、研究者集団の中では異常と感じない事例をSTAP細胞の騒動で学んだはずである。

 

この問題では、単にエラーの事実を公表するだけでなく、すべての作業標準書を作成し、それをオープンにする必要がある。それができなければiPS細胞事業化はうまくゆかない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2020.01/07 混練の本

今年3月に混練ハンドブックが4800円で発売され、書店に並びますが、1月中はサービス価格消費税送料込み4600円で予約受付中です。

1月25日までにお申し込みの方に限り、1月末に弊社から発送いたします。お問い合わせください。

カテゴリー : 一般 宣伝 電子出版 高分子

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2019.12/30 粉砕で微粒子はどうなる?

セラミックスでは、粉体の粉砕技術は重要である。それゆえ40年近く前のセラミックスフィーバーでも様々な粉砕機が開発された。

 

また、粉砕により粒子が正規分布するだけでなく、多分散系となることも確認された。そしてサブミクロンの粉砕を行うためには時間をかけなければいけないことが分かってきた。

 

高分子の混練の教科書を読むと粉体が解砕されてゆく機構が書かれているが、その時粒子がどのような分布になるのか言及していない。

 

ゴムにカーボンを配合するケースは多いが、カーボンは一次粒子が金魚のうんこ状態でつながっている。困ったことにうんこの形態まで変化する。

 

ロール混練では時間をかけてうんこ状態をうまく分散できるが、二軸混練機では一定時間で混練物が吐出されるのでさまざまな分布となっていることを容易に想像できる。

 

力学物性では、マトリックスの弾性率に依存し80から800μmまで許容される凝集粒子の大きさが異なる。

 

すなわち最大粒子径がある一定値を超えると靭性に影響が現れるので、引張強度が低下する。

 

電気物性では、分散状態の影響が力学物性よりも大きく現れる。パーコレーションの問題は力学物性にも存在するが、電気物性で大きな問題となるのは、パーコレーション転移前後でその物性が大きく変化するためだ。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2019.12/28 ポリマー混練り活用ハンドブック(3)

この本は、2005年に中間転写ベルト開発を担当した時に読みたかった本である。それが世の中になかったので今回自分でまとめてみた。

 

とりあえず、混練の本として盛り込むべき内容を盛り込んだつもりである。そして表題に「混練り」とつけたのは、既存の混練に関する書籍の大半が混合分散に終始していることにあてつけたものだ。

 

ポリマーの混練は、フィラーやポリマーをただ分散しているだけのプロセスではない。そこのところにこだわって「り」をあえてつけている。

 

また、この本では最先端のマテリアルインフォマティックに関しても一つデータを提示している。ただしこの研究テーマがどのように流れてゆくのか不明なのでマテリアルインフォマティックとは述べていない。

 

すなわち測定データ駆動型新材料開発を試みた実験結果を掲載しているだけだが、これは今東大の先生方が提唱されているプロセスインフォマティックに含まれるかもしれない。

 

ただ当方は、この手のはやりものにかぶれて書いている、と思われたくないのでひっそりと一つデータを掲載しているだけだ。

 

そのデータとは、射出成形体の強度は弾性率と靭性の関数になるという混練の神様が教えてくれた経験知をもとに、新たな材料開発を行ったときのデータだ。このデータ群から難燃剤を添加しないでリサイクルPETの難燃化処理に成功している。

 

このハンドブックには、このように最先端の香りも盛り込んでいるが、学術書ではない。あくまで経験知と形式知をハンドブックとした書籍である。

カテゴリー : 一般 高分子

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2019.12/27 ポリマー混練り活用ハンドブック(2)

半年後に製品化を控え、外部の一流コンパウンドメーカーから購入していたコンパウンドでは歩留まりが悪く製品化立ち上げが困難と判断して参加した打ち合わせにおいて、「素人は黙っとれ」と言われた話は以前書きました。

 

一流コンパウンダーの技術者やPPSを供給していた一流メーカーの技術者の意見と当方の見解が全く異なり、打ち合わせの途中で当方が追い出されるような事態になりましたのが、高価な本を数冊購入した動機でした。

 

混練りの神様から指導された内容が間違っていたのか、世間の混練に対する見解が間違っているのかは、形式知が書かれた書籍を読むのが一番確かです。

 

しかし、高い金を払って購入した書籍には、どれも混練の神様から伝授された考え方が書かれていませんでした。ひいき目で表現すれば、混練機を設計する人には役に立つかもしれないような本でした。

 

ただ、それにしても混練の形式知と呼ぶには貧弱で、混練機構をモデル化しやすいように考え出された形式知のようにも見えました。

 

そこでゴム会社時代の手帳を引っ張り出し、混練の神様から受けた授業のメモを頼りに自分で勉強しなおし、カオス混合のプラントを設計して、たった3ケ月でそれを立ち上げることに成功しました。

 

そこから製造されたコンパウンドで、中間転写ベルトの歩留まりを90%以上と飛躍的に向上させることができました。そのラインは現在でも国内で稼働しております。

 

この学んでから20年以上経過したゴム会社の基盤技術(注)を写真会社で復刻させた体験は書籍にも少し書かれています。

 

(注)ゴム会社でのキャリアは、高純度SiC事業化を業務としていたのでセラミックスである。ただ新入社員時代に3ケ月間樹脂補強ゴムをテーマにゴム技術を指導社員から伝承されている。毎朝座学で午後は実習だった。定時後は指導社員が管理されていた設備について自由に使用してよいと言われていた。スペクトロメーターにロール、バンバリーの3機種を自由に使えたのは知を学ぶために有効だった。

カテゴリー : 一般 高分子

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