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2016.03/09 女子サッカーの敗退

女子サッカーのリオ五輪出場の可能性が、アジア予選の最中に消えた。東京五輪に向けてすでに体制作りが動き出した。これまでの反省と批判がWEBの話題になっている。澤選手の話題は当然その中心になってくる。
 
一人のスーパーヒーローの寄与がこれだけ明確に出るのは、その選手の能力が総合的に極めて高いときである。単にサッカーのスキルの高さだけでは今回のような落差は生まれない。サッカーの様なチームワークが重要となる競技では、スーパーヒーローに集団をまとめるカリスマ性が求められる。
 
今回の女子サッカーを見ていると、特にひとりひとりのスキルが低下したようには見えなかった。正確なパスワークも要所で決まっていたが、チームとして攻撃する気迫がTVの画面から伝わってこなかった。
 
試合後、まとまりのない集団でありがちな、選手の中から個人攻撃の声が聞こえてくるのは当然である。そもそも今回のチームは集団としてまとまっていたのか、という疑問を当方は感じている。集団としてまとまるとは、チームプレーだけでなく、日々の練習における信頼関係も含めてである。
 
このような集団をうまくまとめる作業は、監督の重要な仕事の一つで、チームの中にスーパーヒーローがいるときには、比較的易しいこの仕事が、どんぐりの背比べの集団では途端に難しくなる。個々のスキルが高くてもチームプレーが求められるサッカーでは、集団としてまとまっていないチームの場合、接戦で力を出すことができない。
 
スーパーヒーローのいないチームをどのようにまとめ、集団としての能力を高めてゆくのか。ビジネスの世界では、ドラッカーの意思決定の考えかたが参考になる。彼は成果を出すためには並みの能力で十分と言っている。むしろ頭の良い人物がなかなか成果を出せない現実を指摘している。
 
まず、問題の多くは基本にかかわるものであり、原則や手順についての決定を通してのみ解決できる。二つ目は決定が満たすべき必要条件を明確にする。第三に決定が受け入れられるために妥協ではなく正しい答えについて徹底的に検討することである。第四に決定に基づく行動を決定のプロセスの中に組み込むことである。第五に決定の適切さを結果によって検証するためにフィードバックを行うことである。
 
おもしろいことに今回のなでしこJapanの相手ゴール前におけるプレーを見ていたら、ゴールすべきところでしかゴールをしていなかったことである。これで点が入れば勝てるのだが、はたしてサッカーというゲームを考えたときに、それは正しい意思決定なのか?世界一になった時のゴール前における澤選手のつま先の残像が今でも頭に残っている。
 

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2016.03/08 企画を実現する(12)

中間転写ベルトの開発では、コンパウンドを外部から購入し、押出成形技術の開発で製品を立ち上げるシナリオがグループリーダーに赴任する当方が説明を受けた企画の根幹だった。コンパウンドを内製化する考え方は、その企画から排除されていた。
 
すなわち、コンパウンド技術が0の状態でコンパウンドから開発するのはリスクが大きい、という考え方である。高分子材料技術に詳しい人であれば、これは間違った考え方であることに気がつくはずだ。
 
特に押出成形技術に詳しい人であれば、押出成形で得られる成形体は、コンパウンドの性質を80%以上(人によっては100%)引きずっていることを知っている。すなわち、コンパウンドの改良をしないかぎり解決がつかない問題が必ず押出成形体に存在する。
 
ただし、技術が分かっていない人たちにこれを理解させることは至難の技である。なぜなら、射出成形では、コンパウンド技術よりも射出成形技術が重要で、という伝統的な考え方が存在しているからである。
 
このような状態でコンパウンド内製化という企画をまともに提案し、合理的調整を行うのは、至難の技である。徳のあるセンター長が子会社でコンパウンド工場を立ち上げるアイデアを出した理由も、コンパウンドの内製化という企画では通らないという判断が即座にできたからである。
 
また、この判断をさせたのも企画の調整作業の一つである。当方の戦略では、外部のコンパウンダーで新しいカオス混合技術を立ち上げても良かったことになっているが、これは早い段階でコンパウンダーから否定された。そのため内製化の道しか無くなり、そこでセンター長の判断を仰いだのである。
 
豊川へ赴任して1ケ月ほどのことである。他のカンパニーから人事異動で単身赴任してきたグループリーダーがすぐにこのテーマは失敗します、と言い出したら、その上司はどうするか。当方の相談に対する回答となるセンター長の判断は、一つしか無かったのである。このような調整の仕方もある。
 
すぐに中古の混練機を購入し、これは工場建設を依頼することになる外部業者の工場敷地に設置された。そして、コンパウンド内製化の企画を作り始め、子会社との調整と品質保証部の調整を真っ先に行った。企画が完成する前に、品質保証部門で専従の担当者が指名され、子会社では、開発体制が整えられた。
 
最初のデザインレビューでは、子会社からコンパウンドを購入する企画として説明し、全社の承認も得られた。但し、コンパウンドの開発から子会社の生産まではブラックボックスのままで、これは子会社に技術があるという説明になっていた。一世一代の博打企画だった。それでも実現した。風土と調整の重要さを示す例である。

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2016.03/05 宇都宮市議会の熊本和夫議長の欠席問題

宇都宮市議会の熊本和夫議長が、出産立ち合いのため市議会本会議を欠席するだけでなく、議長職を辞めるという。また、出産立ち合いのための欠席が現在認められていないので「事故」扱いで欠席と説明している。
 
まず、最初に今という時代は、仕事よりイクメンを優先すべき価値感が多い時代だから、仕事を休んで出産に立ち会うことについて、どうこう批判するつもりはない。
 
民間の会社員であれば、個人の働く意味における価値感の問題であり許されるが、選挙で選ばれた議員であり、さらにその選ばれた方の中ら選ばれた議長である点については、その判断と行動に問題がある、と感じているのは当方だけだろうか。
    
つい先日国会でイクメン議員の登場が話題になったが、あちらは国会を休んでできた暇な時間を不倫に使うつもりだったようで、誰もがおかしい、という見解の一致となった。しかし、熊本議長の場合には意見が分かれるかもしれない。
 
ただ、ここは民主主義のシステムを厳格に守るというのはどういうことか、すなわちそれは会社がコンプライアンスを重視して活動する、という当たり前の視点で考えてみたい。
 
出産立ち合いのための欠席を、まだ認められていないので「事故」扱いで欠席した、というニュースの下りをイクメン支持派は、勇気ある行動として称賛するかもしれないが、勇気ある行動ではなく、まだ市民のコンセンサスが得られていない身勝手な行動だと当方は感じた。
 
もし、出産立ち合いのための欠席についてすでに合意が得られており、議員の欠席に関する規定に認められていたならば、今回の行動は問題にならないが、「事故」扱いで欠席しなければいけないように、まだそれが認められていないのである。さらに、虚偽の理由を書いて欠席しているのである。市民に選ばれた議員の行動として問題は無いか?
 
最近、社会において自分の立場を忘れた行動や発言が目立つようになった。昔から一部の不謹慎な人もいたが、少なくとも社会全体がそのような人を戒めた。しかし、社会全体がユルクなったのか、国民の公僕たる人物がその役職や立場を忘れた発言や行動をしていても見過ごしているケースが目立つ。
   

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2016.03/04 企画を実現する(11)

日常の業務では、調整作業は事態収拾的な色合いが強く、業務の遅い時点で行う行為と勘違いされているが、昨日述べたように調整とは企画も含め仕事の計画段階から行うとうまく行く。調整におけるタイミングの問題は重要で、早めに開始することを心がけるのは、企画を実現するためのツボの一つである。
 
調整作業のもう一つの問題として、調整の内容に関する問題がある。この調整の内容についても、昨日述べたように、合理的調整と政治的調整で問題解決に当たることになる。若いときは、政治的調整スキルが乏しいので苦労するが、そのような場合に虎の威を借りるのも一つの方法である。
 
ただ政治的調整を多用すると、周囲から嫌われることを知っておく必要がある。その意味で、合理的調整が最もオーソドックスで健全である。この合理的調整では、調整作業の対象を計画的に攻めることが重要で、年配者に計画について相談しておくのが賢明である。調整作業中に内容が漏れ、聞いていない症候群の人物を騒がせないようにしなければいけない。
 
合理的調整が、不合理な人物のへそを曲げたためにできなくなり、政治的調整で事態を収拾しなければいけないのは、調整が下手だ。合理的調整では、細かいところに配慮した計画を立てて行う必要がある。また、情報の共有化の観点から、コンセプトを説明するために企画テーマから方針との整合性の概略までをまとめた資料を携帯して進めるのは賢明な方法である。
 
企画をめぐって利害の対立ができたときには、政治的調整に頼りたくなるが、その問題解決に丁寧に当たることは、やはり企画を実現するための大切なツボである。すなわち問題解決的調整をスキルとして身につけておく必要がある。
 
このスキルのポイントは、全社的な立場に立って問題解決に当たるということだ。たいていは部門間の利害が企画を推進しようとするときに生じるので、この解決に当たり、全社的な視点で意見を求めてゆけば、たいていは適当な落としどころにすとんと落ちる。多くの期待している落としどころに落ちてゆかないときには、「怖い、怖い戦略」が有効で、これは弊社のプログラムにその方法を説明している。
    

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2016.03/03 企画を実現する(10)

企画書は先日までの方法で書くことが可能だが、本シリーズの最初に書いたように、企画の成功を左右するのは、人間関係の要因が最も大きい。この点を強調しているのが、弊社の企画立案方法指導の特徴である。真の企画マンとは、利害の相反する問題を上手に収拾し、コンセンサス造りに努める人である。また、それは企画調整のツボである。
 
例えば、人間関係を気にするあまり譲歩ばかりしていては、企画は実現しない。「xxについてはおっしゃるとおりです」「しかし、○○だけは譲れません」と問題点を限定し、自分の主張をはっきり伝えることも必要である。
 
時には、「この点は、きちんとスジを通しておきたいと思います。」とか、「目標、方針に照らして判断するなら、この案にたどりつきます」とか合理性や全社的立場の話し方で、自分の主張を通す方法も良いかもしれない。
 
ニッチもさっちもならないときには、「私とあなたの仲じゃないですか」とか、「たまには僕の顔を立ててよ」とか寝技に持ち込む政治的調整技術も有効だが、相手が女性の場合には、今の時代ではセクハラと勘違いされないように言葉を選ぶ必要がある。
 
まだ企画書を作り始める前の段階ならば、情報収集あるいは意見聴取などの機会を利用してちゃっかりと調整も進めるやり方が有効である。
 
例えば、「白紙の立場で率直、忌憚のないご意見を頂きたい」といって、相手の本音を早めに聞いておき、企画途中に相談と称してアイデアを求めながら、以前聞いた本音と異なるアイデアが出たところで、「そのアイデアは是非企画に盛り込みたい」と言って、調整するやり方もある。若干だまし討ちに近いが、企画に反対しそうなキーマンの協力を得るためには有効な方法である。
 
企画を実現するためには人間関係が重要である点を改めて強調しておきたい。そのために、企画内容のコンセプトが決まったなら、調整作業をすぐに始めるとよい。そのとき合理的調整以外に政治的調整もあることを知っておく必要がある。
   

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2016.03/01 企画を実現する(9)

問題形成や目標設定などの手法については、問題解決法の指南書が多数出版されているので、得意な人も多いかもしれないが、弊社では逆向きの推論を活用した独自の方法論を販売している。
 
ゆえにこの部分についてここでの公開は控えるが、良い企画書を書くための注意点を箇条書きにまとめておくので参考にして欲しい。みな当たり前のことなので少し恐縮するが、高純度SiCの企画をゴム会社のA部長の指導を受け作成したときに習ったことである。
 
1.企画書の作成に先立ち、十分に情報を収集する。その後情報を分類しておく。
 
2.1で分類された情報を、企画書に盛り込む情報と参考情報に分けながら、自分の考えを固めてゆく。
 
3.企画書に盛り込む事項(昨日までこの欄で説明した)を1枚1項目として付箋紙に書き込み、漏れの無いことを確認し、集めた情報に張ってゆく。(クリアケースを活用しても良い。(注))
 
4.企画書の形式が決まっていなければ、企画書のレイアウトを情報のボリュームを参考に決める。
 
5.記入順序を決める。
 
6.見栄えに気をつけてまとめる。
 
7.企画のコンセプト、自分の判断や意見、企画の訴求点をわかりやすくまとめる。
 
8.内容が一目でわかる企画書にする。最初に企画書のコンセプトと結論を持ってくるとよい。
 
9.飾りも重要だが、飾りすぎない。
 
10.当然のことになるが、数字は厳密で無ければいけない。転記ミスや計算ミスを徹底的にチェックする。曖昧な数字を使用しなければいけない場合には、出典等の根拠を明確にする。特に事業性に影響のある数値は、事業推進時に判断のよりどころとされるので、正確を期す。
 
11.大きな企画の場合には、分割して作成するかどうか判断すること。企画書を出すタイミングも重要であり、大きな企画書の場合には、計画を示し分割して提出する知恵も使いたい。
  
(注)今はコンピューターがあるので、紙情報はすべてPDF化し、電子分類する手法もあるが、詳細は弊社の機密事項である。お問い合わせください。

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2016.02/29 企画を実現する(8)

企画で全社方針との整合性を重視している指南書は多いが、これは当たり前のことである。そもそも会社の方針にあっていない企画書など、方針管理が徹底しているこの時代に実行されるはずがない。
 
あるフィルム会社では、写真フィルムの市場が急速に縮小する時に新事業を垂直立ち上げするために、自社の技術で「できるもの」と「できそうなもの」にわけて新事業を提案するように社長方針が出されたという。ある意味で大変広い方針でありながら的確である。また、普遍性のある優れた方針だ。
 
全社方針との関係で重要になってくるのは、方針における企画の位置づけと役割を明確にすることである。換言すれば、方針に合っていない企画でも見かけ上方針に合っているように見せかけ立案可能であり、大切な点は、その企画でどのようなイノベーションを見込んでいるのか、方針に沿って具体化することである。
 
そもそも全社方針はイノベーションを期待して出される。ゆえに企画で具体化すべきイノベーションを方針との関係でどのような表現にするか、という問題になる。方針にとらわれすぎて企画を考えるとアイデアが浮かばなくても、日々の問題意識があれば自分の所属している組織で必要なイノベーションについて考えるのは容易なはずだ。
 
ゆえにその必要なイノベーションを方針に沿って具体化して、方針との整合性を取るように考えていった方が迫力のある内容になる。ただし、迫力を狙いすぎてこじつけになるとアウトである。方針管理の下で方針に整合しない企画は、まず通らない。
 
企画テーマから方針との整合性ができあがったら、一度上司に見てもらい、アドバイスをもらうと良い。この部分を後回しにして問題形成から企画立案を始めるとよい、と書いてある指南書を見かけることがある。QC関係の書籍に多いこの方法に当方は反対である。
 
企画のコンセプトが決まっておれば、企画テーマから会社方針との整合性は、すぐに作成可能で、最初にこの部分を上司とすりあわせておくことが大切である。その後、情報を集めて問題を具体化していったら、コンセプトそのものも見直しが必要になり、その結果企画テーマからすべて作成し直さなければいけない事態になってもよいのである。
 
もし情報収集後、当初考えていたコンセプトの間違いに気がついたなら、それも重要な情報の一つとなる。なぜ最初に誤った企画テーマを立案したのかは、新たに形成するコンセプトを練るときに参考とすべき最も重要な情報である。正しい問題を捉えられなかったのだから、そこの問題についても考えておく必要がある(問題解決力が足らないだけならば重視する必要はないが、それはそれで問題である)。

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2016.02/28 イノべーションと風俗、文化、経済

市場にイノベーションを起こす良い企画であるほど組織あるいは社会へ与える影響も大きくなる。古い話になるが、チャールズブロンソンをイメージキャラクターに用いた男性化粧品は、かっこいい男のイメージとして市場に大きなイノベーションを引き起こした。
 
化粧品のブランドは「マンダム」だが、会社名は古めかしい「丹頂」だった。大きなイノベーションが引き起こされブランド名が市場に深く浸透したために、会社名をブランド名に変えてしまった。当時「エロイカ」というブランドも登場していたが、チャールズブロンソンの男臭さにはかなわなかった(注)。
 
男の世界が高度経済成長を引き起こし、ジュリアナ東京のボディコン・イケイケ路線でバブルがはじけた、と歴史の流れを捉えると、風俗が経済に与える影響あるいは風俗と経済の相互作用の大きさに驚異を感じるのは当方だけだろうか。
 
この時代の流れの中で、オタク文化はひっそりと生まれており、バブル崩壊とともにオタク文化の爆発が起きている。すなわちAKB48も含め一連のオタク文化は、単一民族である日本独自の文化であるとともに事前に予測できた流れである可能性が高く、次なる風俗や文化の変化を探せば経済の変化も予測可能ではないか。
 
ドラッカーは、社会が経済に影響を及ぼす時代になった、と遺言を残したが、まさにこのドラッカーの遺言は正しく、文化や風俗などの社会変化が現在の経済を動かしている可能性がある。ゆえにイノベーションは市場経済だけでなく風俗、文化の分野でも考えなくてはならない。
 
最近AKB48を卒業するタレントが目立つようになった。AKB48のブームの終焉と捉える評論家もいるが、SMAP騒動が起き、グループブランドというものの大きさを痛感したばかりである。SMAPもAKB48もファンとの価値の共創で生まれた芸能グループであり、もしこれらのグループの人気が低下してゆくのならば、それは文化や風俗が大きな変化をおこす前兆で経済にも大きな影響が出るはずだ。
 
今文化や風俗がどのような変化をしてゆくのか考えることは有効なことで、AKB48の卒業ブームやSMAP騒動はイノベーションの好機を示す現象ともいえる。SMAPはアイドル氷河期に生まれたグループで、個性の異なるタレントを一束いくらで売りだす新しい方法の先鞭をつけた。すなわちアイドル育成方法にイノベーションを引き起こしたのだ。
 
この手法は、バナナのたたき売りへと変化して生まれたのがAKB48である。すると卒業が頻繁に行われるようになった現象は、賞味期限が切れそうなバナナを取り除く、すなわちバナナに対する品質要求が高くなった、とみることもできる。もしこのように考えると卒業だけではオタクを満足させられなくなる可能性がある。
 
何かイノベーションのアイデアが必要で、その新しいアイデアは経済成長のヒントになるかもしれない。今の経済は、そのまま放置すればアメリカも含め悪くなる一方である。アメリカではトランプの登場が、その歯止めを期待されている。日本では、風俗や文化にイノベーションを引き起こし経済に刺激を与える必要がある。
(注)化粧品も臭かった。そのにおいは強烈で、1階上の階段ルームの死角にいる男性の気配を感じることができた、という都市伝説がある。加齢臭など吹っ飛ぶような臭いが歓迎されていた時代もあったのだ。今は消臭がブームで人間が感じない臭いの化粧品が好まれている。加齢臭グッズは必ずヒット商品になる。

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2016.02/26 企画を実現する(7)

企画書に盛り込むべき事項は、企画の題名、企画テーマ(主題)、企画の狙い、全社方針あるいは会社目標との関係、現状把握、将来予測、問題形成、目標、企画実現方法、代替案、企画が実現したときの効果、おおよそのスケジュールなどである。
 
まず、企画の題名は、分かりやすいものにすること。そして企画テーマが、その題名から誰でも想起できるようであるとよい。ゴム会社で募集された50周年記念論文の審査では、当方の企画「有機高分子から高純度セラミックスを創る」は佳作にもならなかったが、「トン牛」というタイトルの企画は主席となった。バイオテクノロジーにより豚と牛の掛け合わせで繁殖力があり、味もうまい肉牛を研究するという内容であった(記憶違いかもしれないが、このような荒唐無稽の話だった)。
 
あのW大学の先生が審査委員だったが、企画タイトルの重要性を思い知った出来事である。もちろんこんな企画は研究所でまともに取り上げるわけもなく、この論文募集は単なるお祭り騒ぎで終わったが、外部有識者と言われる人のいい加減さに呆れた出来事でもあった。
 
ちなみに佳作にも入らなかった当方の企画は、その後紆余曲折もあり研究開発企画として社長決裁が下りて2億4千万円の先行投資を受け事業として現在まで続いている。50周年記念論文の審査に落ちた(注)ことで燃えたことも、わずかながら企画推進に影響している。
 
話が脱線したが、この例のようにタイトルは極めて重要である。次に企画テーマは、主題を的確かつ簡潔に表現できていなければならない。しかも誰が読んでもわかりやすく書かれていなければいけないので難しい。この部分と企画の狙いで企画書の価値が決まると言ってもいい。
 
企画の狙いでは、何故この企画が必要なのか書くことになるが、長く書いてはいけない。企画が必要な理由を箇条書きで、簡潔に表現する必要がある。タイトル、テーマ、狙いの3つで企画の詳細をどれだけ真剣に読んでもらえるのかが決まるので、この部分は企画を作成しているときに、毎日読み返しながら、よく練る必要がある。
 
関係者にヒアリングするときに書き上げた内容を吟味してもらうのも良い方法である。但し、この時気をつけないと同じ会社内でも他人に企画をとられることもある。そのために会社の風土をよく知っておくことが重要で、最初のヒアリングでは、本当に信頼できる人にとどめるのが良い。
 
企画はコンセプトが重要であるが、同じコンセプトで表現を変えた企画をいくつでも作ることが特許同様に可能である。新しいコンセプトの企画は少なからずインパクトがあり、イノベーションの機会を伺う研究者が多く活性の高い職場では類似のコンセプトで新たな企画を考案する人は出てくる。
 
(注)係長職昇進のための筆記試験問題で、「あなたが推進したい新事業について書いてください」という出題があり、高純度SiCの企画について書いたら、やはり落ちた。採点した試験官は、研究所の課長だったが、その1ケ月後社長によばれ、企画のプレゼンテーションを行ったら2億四千万円の決済が決まり、開発がスタートしている。翌年の試験でも同じ内容を書いたら昇進試験に合格したが、当方の企画に対して研究所で強い反対があったことを知った出来事である。30年以上前の古い出来事だが、企画を実現するには、自己責任と強い意志が必要である。また、ゴム会社における高純度SiCの事業のように、企画段階で反対者が多くても30年以上(社長決済を受けたのは29歳の時である)続いている企画もある。科学者の評価と経営者の評価では視点が異なるのでこのようなことが生じる。21世紀の企業では、このようなことがあってはだめ、と願いつつこの欄を書いている。企業の研究開発に携わる人は、科学者ではなく科学の時代の技術者であるべきである。また、ゴム会社は創業経営者ではなかったが、夢とロマンを共有でき素早い意思決定のできる優れた経営者だった。
 

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2016.02/25 企画を実現する(琴奨菊の語る勝利の秘密)

本日企画に盛り込む内容を書く予定でいたが、その前に、2月21日のデイリースポーツで、この10年間日本人力士がモンゴル勢に勝てなかった原因について、琴奨菊が面白い話を語っているのでそれを紹介したい。琴奨菊の言葉を記事からそのまま抜粋すると、次のようである。
 
「私たちは相撲道という道の部分で、変化をせず力と力の勝負とか、そういう固定観念がありすぎなのかなと思う。やはり勝負の世界は勝たないと意味がないし、そういうところにもっと貪欲さが足りないのかと。また、横綱でも、変化まではいきませんが、立ち合いで相手の間合いをずらしたりとか、そういうところを見習っていかないといけない」
 
確かにモンゴル勢は勝ちにこだわる。大横綱の白鵬でさえも、合口が悪い相手に変化した立ち合いをすることがある。例えば、昨年九州場所の栃煌山戦では奇手・猫だましを繰り出し、初場所の栃煌山戦でも、立ち合い直後に手のひらを相手の顔の前に突き出すような動きで白星を手にした(この部分一部記事より抜粋)。
 
 記事によると、琴奨菊は続けて、自分が優勝できた要因として、この白鵬らの勝負へのこだわりを学び、生かしたことを挙げている。
 
「今回、私は逆にそういうところを見習って、張り差しとか、相手の軸をずらすとか、ちょっと引いて相手の軸を前にずらしながら下から入るとか、そういうところも考えてやった結果なので、なぜ(白鵬らモンゴル勢が)強いか分かったような気がします」
 
相撲道を尊重するのか勝利を優先するのか。相撲道から外れる技は自粛すべきという考えは尊い。だが、違う価値観を持った相手が上位にいる現実を前にしたとき、琴奨菊のようにプラス面は取り入れて勝利への突破口を開く努力をするのか(すもう道からはずれる)、ドラッカー流に価値感が合わないから日本人は相撲をやめる(すもう道に適合)のか、といういずれかの選択になる。
 
あるいは、勝負に対する価値感の変化を受け入れるのか、昔からの価値感を守るべき、という価値感を尊ぶのか、という選択肢もある。しかし改めて何が問題か、とこれをとらえれば、国技に外国勢力士を認めたときに、相撲というものの再定義をしなかったことだろう。
 
 今からでも遅くないと思うので、相撲協会は新しい時代の相撲の定義と勝負のあり方に関し、再検討すべきではないか。力士が価値感で悩んでいる状態を放置したままではせっかく上昇してきた相撲人気がまたへこんでしまう。
 
 ドラッカーは、働く時に、強みと、仕事の仕方、価値感の問題をいつも考えなければいけないと指摘している。相撲は力士にとって大切な仕事である。時代の変化で、勝負の価値感の異なる力士が現れた大きな問題を放置して将来相撲の発展はない。
 
本日企画の話を書く予定だったが、企画を推進するときの参考として相撲の話題を出した。例えば、これを日本の技術開発の状況に当てはめてみる。ロジカルシンキングにこだわるビジネスプロセスを日本の大相撲とすると、弊社の研究開発必勝法で提案している、ロジックよりもまず成果にこだわる思考法はモンゴル人の勝ちにこだわる相撲として例えることができる。
 
実は、中間転写ベルトのコンパウンド企画を提案したプロセスとその内容にはロジックの正しさなど無く、そのためコンパウンドメーカーには提案をナンセンスとして却下された。その結果をうけて、提案した当方が現場の一担当者として活動し企画を実現する決心をした。きれいな画像の出る現物を見せたところで周囲もそれを許してくれた。ところが、現物の大切な技術成果であるPPSと6ナイロンの相溶がどのように達成されたのか、その論理的説明などは企画書に書かれていない。
 
このケースで正しいロジックの業務の仕方とは、当時実現されていないカオス混合の企画が専門家であるコンパウンドメーカーに否定されたのだから専門家に技術開発をゆだねよ、という判断かもしれない。
 
中古で調達した二軸混錬機を転用しカオス混合プロセスを完成できたところから書き始め、その設備構成と量産立ち上げのスケジュールを述べた企画は、常識的な日本企業の技術屋が見たならば大笑い(注)されるだろう。
 
しかし、その論理性を欠いた企画で大真面目にデザインレビューを行い、審議(注2)を受けて量産立ち上げに成功している。ロジックでは到底説明できない内容だが、ISO9001に則り粛々と各ステージをすり抜けていった。そして量産では10年近く大きな品質問題もおきていない。
 
企画者の心がけるべきポイントは、誠実真摯に組織へ働きかけ、正しい成果を共有することであり、正しいロジックよりも現物が重要である。ノーベル賞を受賞したiPS細胞でもTVで紹介されたように同様のプロセスが行われている。ロジックにもとづくビジネスプロセスがすべてではない。最近軽視されがちな現物現場主義も見直されてもよい。
 
(注)科学の影響でビジネスプロセスにもロジックの厳密さが求められている。弊社の研究開発必勝法では、ロジカルシンキングは一つのプロセスとして扱っている。しかし、弊社のプログラムの大きな特徴は、琴奨菊の説明にあるように、ロジックよりも勝ちにこだわったヒューマンプロセスを重視する点にある。そしてロジカルシンキングほどではないが少しそのためのルールがでてくる。それは難しいルールではなく、自然な考え方である。ロジックは重要である。しかし一番重要なことは、組織に貢献する直接の成果を出すことである。ロジックが正しくても成果が出なければ、それはロジックで成果が出ない言い訳をしているに過ぎない。
(注2)高級複合プリンターの中間転写ベルトという部品は、有害な有機溶媒を用いる溶媒キャスト法で製造されている。環境負荷低減のためにこれを押出成型で製造する技術は、審議に参加していた人たちの夢でもあった。基盤技術のない会社でコンパウンドから開発するという発想やそのような企画を組み立てるロジックは、考えられなかった。そのため外部のコンパウンドメーカーを信じ開発に苦戦していたのだが、目の前に突然現れたコンパウンドを用いたら簡単に品質目標を実現したベルトができてしまったのである。だれもが、工場を早く立ち上げたいと考えた。ロジックではなく汗というヒューマンプロセスで流れを変えたのである。(汗とは、日々の習慣の象徴)

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