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2016.02/25 企画を実現する(琴奨菊の語る勝利の秘密)

本日企画に盛り込む内容を書く予定でいたが、その前に、2月21日のデイリースポーツで、この10年間日本人力士がモンゴル勢に勝てなかった原因について、琴奨菊が面白い話を語っているのでそれを紹介したい。琴奨菊の言葉を記事からそのまま抜粋すると、次のようである。
 
「私たちは相撲道という道の部分で、変化をせず力と力の勝負とか、そういう固定観念がありすぎなのかなと思う。やはり勝負の世界は勝たないと意味がないし、そういうところにもっと貪欲さが足りないのかと。また、横綱でも、変化まではいきませんが、立ち合いで相手の間合いをずらしたりとか、そういうところを見習っていかないといけない」
 
確かにモンゴル勢は勝ちにこだわる。大横綱の白鵬でさえも、合口が悪い相手に変化した立ち合いをすることがある。例えば、昨年九州場所の栃煌山戦では奇手・猫だましを繰り出し、初場所の栃煌山戦でも、立ち合い直後に手のひらを相手の顔の前に突き出すような動きで白星を手にした(この部分一部記事より抜粋)。
 
 記事によると、琴奨菊は続けて、自分が優勝できた要因として、この白鵬らの勝負へのこだわりを学び、生かしたことを挙げている。
 
「今回、私は逆にそういうところを見習って、張り差しとか、相手の軸をずらすとか、ちょっと引いて相手の軸を前にずらしながら下から入るとか、そういうところも考えてやった結果なので、なぜ(白鵬らモンゴル勢が)強いか分かったような気がします」
 
相撲道を尊重するのか勝利を優先するのか。相撲道から外れる技は自粛すべきという考えは尊い。だが、違う価値観を持った相手が上位にいる現実を前にしたとき、琴奨菊のようにプラス面は取り入れて勝利への突破口を開く努力をするのか(すもう道からはずれる)、ドラッカー流に価値感が合わないから日本人は相撲をやめる(すもう道に適合)のか、といういずれかの選択になる。
 
あるいは、勝負に対する価値感の変化を受け入れるのか、昔からの価値感を守るべき、という価値感を尊ぶのか、という選択肢もある。しかし改めて何が問題か、とこれをとらえれば、国技に外国勢力士を認めたときに、相撲というものの再定義をしなかったことだろう。
 
 今からでも遅くないと思うので、相撲協会は新しい時代の相撲の定義と勝負のあり方に関し、再検討すべきではないか。力士が価値感で悩んでいる状態を放置したままではせっかく上昇してきた相撲人気がまたへこんでしまう。
 
 ドラッカーは、働く時に、強みと、仕事の仕方、価値感の問題をいつも考えなければいけないと指摘している。相撲は力士にとって大切な仕事である。時代の変化で、勝負の価値感の異なる力士が現れた大きな問題を放置して将来相撲の発展はない。
 
本日企画の話を書く予定だったが、企画を推進するときの参考として相撲の話題を出した。例えば、これを日本の技術開発の状況に当てはめてみる。ロジカルシンキングにこだわるビジネスプロセスを日本の大相撲とすると、弊社の研究開発必勝法で提案している、ロジックよりもまず成果にこだわる思考法はモンゴル人の勝ちにこだわる相撲として例えることができる。
 
実は、中間転写ベルトのコンパウンド企画を提案したプロセスとその内容にはロジックの正しさなど無く、そのためコンパウンドメーカーには提案をナンセンスとして却下された。その結果をうけて、提案した当方が現場の一担当者として活動し企画を実現する決心をした。きれいな画像の出る現物を見せたところで周囲もそれを許してくれた。ところが、現物の大切な技術成果であるPPSと6ナイロンの相溶がどのように達成されたのか、その論理的説明などは企画書に書かれていない。
 
このケースで正しいロジックの業務の仕方とは、当時実現されていないカオス混合の企画が専門家であるコンパウンドメーカーに否定されたのだから専門家に技術開発をゆだねよ、という判断かもしれない。
 
中古で調達した二軸混錬機を転用しカオス混合プロセスを完成できたところから書き始め、その設備構成と量産立ち上げのスケジュールを述べた企画は、常識的な日本企業の技術屋が見たならば大笑い(注)されるだろう。
 
しかし、その論理性を欠いた企画で大真面目にデザインレビューを行い、審議(注2)を受けて量産立ち上げに成功している。ロジックでは到底説明できない内容だが、ISO9001に則り粛々と各ステージをすり抜けていった。そして量産では10年近く大きな品質問題もおきていない。
 
企画者の心がけるべきポイントは、誠実真摯に組織へ働きかけ、正しい成果を共有することであり、正しいロジックよりも現物が重要である。ノーベル賞を受賞したiPS細胞でもTVで紹介されたように同様のプロセスが行われている。ロジックにもとづくビジネスプロセスがすべてではない。最近軽視されがちな現物現場主義も見直されてもよい。
 
(注)科学の影響でビジネスプロセスにもロジックの厳密さが求められている。弊社の研究開発必勝法では、ロジカルシンキングは一つのプロセスとして扱っている。しかし、弊社のプログラムの大きな特徴は、琴奨菊の説明にあるように、ロジックよりも勝ちにこだわったヒューマンプロセスを重視する点にある。そしてロジカルシンキングほどではないが少しそのためのルールがでてくる。それは難しいルールではなく、自然な考え方である。ロジックは重要である。しかし一番重要なことは、組織に貢献する直接の成果を出すことである。ロジックが正しくても成果が出なければ、それはロジックで成果が出ない言い訳をしているに過ぎない。
(注2)高級複合プリンターの中間転写ベルトという部品は、有害な有機溶媒を用いる溶媒キャスト法で製造されている。環境負荷低減のためにこれを押出成型で製造する技術は、審議に参加していた人たちの夢でもあった。基盤技術のない会社でコンパウンドから開発するという発想やそのような企画を組み立てるロジックは、考えられなかった。そのため外部のコンパウンドメーカーを信じ開発に苦戦していたのだが、目の前に突然現れたコンパウンドを用いたら簡単に品質目標を実現したベルトができてしまったのである。だれもが、工場を早く立ち上げたいと考えた。ロジックではなく汗というヒューマンプロセスで流れを変えたのである。(汗とは、日々の習慣の象徴)

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2016.02/24 企画を実現する(6)

企画には企画書がつきもので、弊社の研究開発必勝法プログラムでは、わかりやすい企画書の作成方法も指導している。企画書は会社の書類の中でもとりわけ重要な書類の一つで、その取り扱いは機密書類として位置づけられる。また、企画のオーソライズは企画書で行われ、意思決定される。
 
どんなに優れたシナリオやアイデアが頭の中にあっても、それを企画書としてうまくまとめることができなければ、まず、直属の上司すらその内容を評価してくれない。上司は、企画書で企画を評価する立場だが、部下の提案なのでわかりにくくても理解してくれ、という甘えは禁物である。もしそのような甘えがあると、まず直属の上司とのコミュニケーションに失敗する。
 
会社によっては企画書の形式が決まっているところもあるかもしれない。例えばSTAGE-GATE法などを取り入れているところは、審議を円滑に行うために企画書に盛り込む項目を決めている。中間転写ベルトのコンパウンド企画で困ったのは、この企画書のフォームが、研究段階を終えているところから始まっていたことである(注1)。
 
おかげでカオス混合技術は完成品という前提で企画書を書くことになった。これはこれでその後を考えると都合が良かったが、カオス混合技術の検討期間を企画に盛り込むことができず、当方の休日のサービス業務となってしまった。しかし、これすらも貢献を軸に据えて、受け入れたが、私生活は大変だった(注2)。
 
幸いなことに外部で協力してくれる会社もあり、その会社の敷地を借り中古の二軸混練機を設置して、手作りでカオス混合装置を創り上げていった。金も時間も無く、さらに企画書に記入する欄も無い技術でありながら、混練にイノベーションを起こす技術を創造することができた。
 
自慢話はこのくらいで、企画書に盛り込むべきおおよその必要事項は決まっている。これを審議しやすくするために細分化する過程で、その必要事項が落ちたりするので注意しなければいけない。明日必要な記載事項について説明する。(続く)
 
(注1)中間転写ベルトのコンパウンド製造技術(カオス混合技術)の開発企画を最初に提出した部署は、研究部門ではなく、生産技術部門である。だから、開発の終盤ですでに製品化予定などのスケジュールが厳密に決まっているテーマとなった。これは、カオス混合技術の開発というテーマではフェーズが合わないので、提案すらできない状態だったからである。すでにコンパウンド生産技術ができており、生産ライン建設から開発を始めなければならなかった。
(注2)教師の部活顧問のように、ブラック業務と騒ぐことができるのは、まだ幸せである。騒ぐ時間もなければ、精神的ゆとりすらない。必ず成功させる以外にない、道のない一方通行を進まなければいけないのである。高純度SiCの事業化の経験が役立ったが、貢献とは成果に焦点を合わせて行うことである。

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2016.02/23 教師の部活顧問について

国会議員のイクメン不倫騒動もおかしな話だったが、昨日の教師の部活顧問に関するニュースもクビをかしげたくなる。すなわち、教師の部活顧問がブラック業務だというニュースである。
 
教育問題をこの欄で議論するつもりはないが、この10年ほど社会全体がおかしな方向に流れているのではないかと感じていたら、学校の先生がおかしな人ばかりになったようだ。バブル崩壊後失われた10年だの20年だの言われたが、そこから立ち直るのかと思っていたら、日本人の考え方が多様化するだけでなく表現のしようがない状態まで落ちてきたようだ。
 
哲学という高尚な言葉を持ち出すつもりはないが、国会議員のイクメン不倫騒動については、W大学卒の議員の考え方は明らかにおかしく稚拙である。この問題について何がおかしいかは説明する必要はないと思っていたら、教師の部活顧問の問題がニュースで報じられた。これについては、知識労働者が働く意味の点において、少し説明が必要かもしれないと思ったのでこの欄で取り上げてみた。
 
まず、部活顧問の業務がブラックと言い出す前に、教師たちの業務改善をしようという試みが報じられていない点は「労働者の職場問題」として奇妙である。民間企業では、知識労働者について、この30年間に総労働時間1800時間を目標に様々な改善努力を行ってきたが、学校の先生は何もやってきていないのではないか。
 
戦後、教師達の自らの努力でその仕事が聖職ではなくなったが、その次に行う必要があったのは意識と業務改善である。少なくとも当方がPTAとして見てきた義務教育の先生方の業務は、当方が実践してきた労働に比較すると遙かに楽で無駄が多かった。部活の大変さを考慮しても、一般のサラリーマンよりもゆとりがありブラックからほど遠いと感じている。
 
さらに一般企業の労働賃金が減少する中で、教師の賃金はそれほど下がっていない。おそらく部活の顧問の時間を含めても時間給に直した場合に一般労働者の時給よりも高いのではないか。
 
教職の抱える問題は、部活顧問とか教師の雑務それぞれを取り上げても解決がつかないと思っている。聖職から単なる労働者の職業になった教職で考えなくてはいけない問題は、意識革命を含む教職現場の改善である。もし教職に就かれている方がこの文を読まれたら、是非弊社に問い合わせていただきたい。教職の改善方法の指南を致します。
 
教育は、人材を育成することに特化した特殊な職業である。企業でも業務の一環として人材育成が行われているが、その仕事について教師から見れば部活の顧問のような仕事である。写真会社で過ごした20年間は、現在報じられている部活の顧問以上のブラックの状態で人材育成に努力してきた。しかし、アンケートにでてくるような感覚を持ったことがない。
 
組織への貢献として当然の仕事として行ってきたのである。聖職ではない教師を教育する必要がある時代になってきたのかもしれない。教職の教育プログラムに関し、特別価格で請け負いますのでお問い合わせください。教職の問題は、自ら仕事の価値を落としながら意識だけは高い価値の仕事を行っている、と感じている矛盾から大半が生じている。

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2016.02/21 企画を実現する(5)

繰り返しになるが、企画を実現するコツは、貢献を軸に物事を考える習慣をつけることである。すると、人間関係に気を配ることの重要性を理解できる。また、企画段階から周囲にヒアリングするアクションは組織への働きかけのアクションであり、組織への貢献として重要であることに気がつくはずだ。
 
これまで書いたことだけでも実行すると、どんなへぼ企画でも実現できる。実際に写真会社でそのようなへぼ企画(注0)が推進され、コストが下がらずに困っている風景を見てきたし、当方の非科学的で企画として通過しないようなコンパウンド工場も実現している。後者はエセ科学者のへぼ企画とは大きく異なり、十分に事業に貢献している企画であるが、その内容はエセ科学者でも見れば猛反対したくなる企画だった。
 
企画を実現するために、良い企画内容を作り上げることを優先して書いてある指南書があるが、これは現場を知らない書物だと思う。企画によりイノベーションが少なからず起こされるわけであるから、企画実現で一番重要となるのは会社内の人間関係論だろう。
 
しかし、難しい専門の人間関係論は不要で、上司や部下、協力会社の人々に謙虚に接する努力こそが日々の活動で必要である。そのためには「聞く力」を養うことである。企画段階から周囲にヒアリングを行うことで企画内容の情報が流れるので、企画をあげたときに通りやすくなる。もし会社の風土に不適切な企画内容であれば、ヒアリングの時にアドバイスしてくれる人も出てくる。
 
例えば、立案しようとしている企画が大きすぎるときや、企画内容を受け入れる部署が存在しないか、あってもその部署が企画反対の立場を取りそうなときに、会社の風土に詳しい人にヒアリングすれば指導してくれる。
 
ゴム会社に勤務していたときに超伝導フィーバーがあり、ある若手Aが常温超伝導を活用した企画を立てていた。その企画書が経営会議にかけられる前に上司から当方に回覧されてきた(注1)。企画内容を見ると、あまりにも大きな夢のような企画で実現できそうにない内容だが、研究企画として書き直したら面白い内容だった。
 
しかし、上司から当方に言われたのは、若手Aが相談に来るまで動くな、という指示だった。残念ながら若手Aは、当方の上司にも相談に来なかっただけでなく、年齢の近かった当方にも電話一本かけてこなかった。もし、研究企画に書き直せば採用されたかもしれない企画だったが、投資額と事業規模の観点から検討されて企画は却下された。
 
この時の上司は、自分の部署が企画が通ったときに受け入れ先となり、若手Aも人事異動することになる問題を挙げていた。ちょうど高純度SiCの事業プロジェクトが縮小されたばかりで、上司は開発負荷につながる企画を避けたかったのである。ただ、世間の超伝導フィーバーとこの若手Aの企画の影響もあり、常温超伝導材料に関する特許を2ヶ月以内に数件書くように役員から指示が出た(注2)。
 
このように企画提案は、仮にボツになったとしても関係部署に少なからず影響が出る場合があるので、事前の根回しが企画実現のために重要となってくる。この点が、企画段階における広範なヒアリングが必要な理由でもある。ちなみに当時マイスナー効果の特許や超伝導体の酸素欠陥ができやすい問題を回避する技術、フレキシブル常温超伝導体など怪しげな特許を出願し、2件ほど成立している。
 
若手Aの企画が研究企画として提案されていたならば採用されていたかもしれない。恐らく経営陣の中にもそのように感じた人がいて、特許出願の指示が下りてきたのではないかと推定した。また、上司はその後異動となった。後味が悪い企画騒動だった。
 
(注0)技術に関する企画をいつでも正しく判断できる、と勘違いしている人が多い。機能の目標を明確にしても、その目標に巧妙な嘘があった場合には、判断を誤る。例えばPETフィルムの表面処理技術に下引き処理があるが、この下引き処理は、PETに機能性薄膜を接着するための接着剤の役目や帯電防止の機能をPETフィルムに持たせるために廃止できない。この下引き処理を廃止できる画期的技術が出来たとして、何年も開発が続けられ結局実用化できなかった実例がある。ひどいのはこの開発過程で、下引きは使用しないが応力緩和層というものをつけると実用化できる、などという企画も登場した。この応力緩和層と下引き層と何が違うのか議論してもかみ合わない回答を巧妙にしてくる。そのうち反対している当方が悪者扱いにされ企画が通っていった。ただ、この体験はPPSと6ナイロンを相溶させるカオス混合技術を実用化する時に参考になった。すなわちPPSと6ナイロンを相溶させる技術はフローリーハギンズ理論から科学的にナンセンスな技術と否定されかねない際物技術であった。だから技術開発するときにこの問題を応力緩和層のようにカプセル化してごまかしたのである(この結果は「ごまかし」ではなく技術が科学を牽引するような成果が出た。ただ、結果が出る前は「ごまかし」なので、正直に「ごまかし」とここでは表現している)。ただ、応力緩和層の技術と当方の技術では提案時の姿勢に雲泥の差があり、後者は実用化され現在も稼働し事業に貢献している。科学者の中には周囲が理解できないのをよいことにして経済性も無視した技術企画を平気で推進しようとする人がいる。注意が必要である。
(注1)どのような経緯でこの企画書が上司の元に回覧されてきたのか不明である。企画書の回覧部署には、研究開発部門が入っていなかった。しかし、この企画書が他の管轄を行っている役員経由で研究開発部門へ回覧されてきたことは、回覧部署名から分かっていた。回覧部署名が書かれていなくても検討前の企画書が回覧されたならば、貢献を軸に考えてコーポレートの研究開発部門は何らかのアクションを取るべきだろう。上司はそれが分かっていたので、当方が動くといけないので釘を刺したのかもしれないが、間違った指示だったと思っている。
(注2)この時特許とは権利書である、ということを実務として身につけた。常温超伝導体など結局未だに実現されていないが、特許は実現された前提で作成しなければいけないところに、この時の特許を書く難しさがあった。科学者の良心というものは不要で、必要なのは技術というものをどのように捉え権利化するために何をしなければいけないか、真剣に考えることだった。科学者の良心とは異なる軸あるいは視点である。指導してくださった上司は恥ずかしながらの姿勢であったが、今から考えると、なぜもっと素直に機能を権利化するために特許を書くと言われなかったのかと不思議だ。大学ではないのである。常温超伝導体ができた、という特許は嘘となるが、できたとして、このような技術が必要になるのでそれを権利化する特許ならば、嘘ではない。実際に当方が書いた酸素不足にならないように超伝導体を被覆して用いる技術は、他社において銀で実用化されている。当時そのような着眼点は初めてだった。弊社の研究開発必勝法を用いればこのような全く情報が無い新材料の場合における特許対応が可能である。

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2016.02/20 企画を実現する(4)

30年間のサラリーマン生活で一番苦労したのは人間関係である。ゴム会社の人事部長は、当方のことをリトマス試験紙に例え、当方を悪く評価する人は悪い人で、良く評価する人は優れた人だ、と指導してくださった。この教えは、ゴム会社で高純度SiCの事業を推進するときに大変役だった。
 
ゴム会社の研究部門以外には、科学者ではなく技術者が多くいて、その方々から多くの助言を頂いた。技術者以外の方からもマーケティングの助言など助けて頂いた。しかし、写真会社では、苦労続きだった。企業風土により、適さない個性がある、と知ったのは、勤務して数年後でやや遅すぎた。
 
写真会社には悪い人ばかりだったのか、というと、そうではなく、風土という抽象的などうしようもない環境の企画に与える影響を当方が知らなかっただけである。この企画に与える抽象的な影響を理解したうえで臨んだ中間転写ベルトのコンパウンド工場建設では、短期間に企画を実現できている。
 
企画を実現するために一番大切なことは、社風とか職場環境とか企業風土という抽象的な事象をよく理解することである。これが抽象的で良く理解できない場合には、徹底的に謙虚な態度で人に接するべきである。
 
しかし、昨日まで傲慢なキャラで生活していて、企画を提案したとたんに謙虚になったのでは、逆に反感を買う。おそらく当方に対する人事部長のアドバイスはその点を読み込んだ上でのアドバイスだったのだろう。かなり遅すぎたが、写真会社で、それに気がついたときに結構落ち込んだ。
 
当方のこのような失敗経験から、企画実現のための大切な具体的なアクションを書くと、企画作成段階から社内の多くの人にヒアリングを行う、となる。自分で十分に理解している事柄でも教えを請えば、相手に好ましい印象を与える。このとき、そんなことも知らないのか、という人がいるかもしれない。それでも我慢して教えを請えば良い結果となる。
 
ある物事について分かっている人からみると、未熟にも関わらず物怖じしない人は傲慢に見えたりするものである。傲慢とか不遜な態度には、人生で未熟にも関わらず物事に対して怖いもの知らずで積極的な人物が受ける誤解も含まれる。一方で相手により傲慢な態度と謙虚な態度を使い分けている、本当に人格の良くない人もいる。組織活動においては、謙虚はプラスの効果があるが、傲慢な態度は誤解も含めマイナスの効果しか無い。
 
だから「君が推進していて大丈夫か」と面前で言われるのは悪いことではない。人生経験からそう言いつつも、そのような人は「あいつの企画を実現させてやろう」ともり立ててくれる人が多かった。多かった、という表現は、そうではなく本当に担当を外すように陰で動いていた人もいた、ということだ。社会とは、そういうものだ。しかし、人の意見や忠告には素直に耳を傾ける、すなわち聞く姿勢を取る限り、周囲には少なからず謙虚に写り、援助者が自然と増えてゆく、これは経験で学んだ真実だ。
 

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2016.02/19 ES細胞の盗難事件

JNNによると、小保方晴子氏の研究室から見つかったES細胞が別の研究室から盗まれたとする刑事告発を受け、兵庫県警が17日までに小保方氏から参考人として任意で事情を聴いていたとのこと。
 
本件は、彼女の著書「あの日」に、マウスへES細胞を混入させた事件について「私がES細胞を混入させたというストーリーに収束するように仕組まれているように感じた」と書かれている。
 
また、「実際に、これら一連の発表は、私の上司にあたる人たちによって、周到に準備され、張り巡らされた伏線によって仕掛けられた罠だったとも受け取れた」とまで表現されている。
 
この一連の内容が真実かどうかは法廷で争われることになったが、組織内の事件がこのように公にされ裁かれる状況を見るのは複雑な気持ちである。
 
ドラッカーの言葉によると、社会が経済を変える時代になったそうだが、もしこの言葉が正しいとすると、経済を安定に成長させるためには、まず社会を健全な状態にしなければいけない。小保方氏の事件がどのように裁かれるのか注視したい。
 
(注)ゴム会社のホームページを見ると、高純度SiCすなわちピュアβ開発の歴史には、住友金属工業とのJVを終了した後の歴史が書かれている。当方の無機材質研究所における発明(特許第1557100号、特許第15527295号)や、国から斡旋をうけて事業をスタートしていること、そして利益が上がり国に特許料を支払ってきたことなど産学連携の歴史が欠落している。学会賞の受賞の経緯も含め情報はやがて漏れるものである。世の中の面白さであり、オリンパスや東芝の例のように、やがて真実が明るみに出るものである。
 
 

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2016.02/18 企画を実現する(3)

貢献を軸にした思考では、自己責任の原則が重要である。会社で事業企画をする機会は誰でもある。企画部門に属していない担当者の企画でも、今の時代において新事業の企画を拒む経営者はいない。すべてが知識労働者と呼ばれる時代では、誰もが企画マンである。
 
そのとき、企画した人の責任は大きい。それは給与とか権限に依存しない。少なくとも企画を提案した時点でその責任は発生する。すなわち、企画は自己責任の原則で提案すべきである。権限とか給与にとらわれるとよい企画はできないし、視点も低くなる。少なくとも自分が社長になったつもりで企画内容は考えなければいけない。
 
社長になったつもりで、といわれても給与は低いし権限も無い、さらには花の窓際族だ、という考えがあるならば、企画をしない方が良い。さらには、その企画で給与が増えることや昇進することなど期待しない方が良い。会社によっては、他人の企画を横取りする人もいるのである。また、人事システムがそのようになっている場合もある。
 
企画する気が失せるような極端なことを書いている、と言われそうだが、本欄では巷にあふれている自己啓発書のたぐいのようなキャリアポルノを書くつもりはない。企業の実戦で役立つ弊社の販売しているプログラムの内容の紹介が目的である。
 
どこの企業でも様々な人が勤務しており、その人々は善人ばかりではない。また、最近発売された「あの日」を読めば、おぞましい人間関係がでてくる。そして、著者の視点で書かれた一方的な悪書ともいえないどこの研究所でもありそうなシーンも出てくる。
 
これらを特殊な問題として甘く考える人には企画をしようなどと考えない方が幸せと、とりあえず結論を書いておく。企画によりイノベーションの規模が大きくなるほど企画者に対するストレスは大きくなる。
 
しかし、企業ではイノベーションが常に求められており、質の高い企画は企業の成長のために重要である。ゆえに質の高い企画を提案すれば、それは採用され、提案者はそれなりの処遇なり報酬があるかもしれないが、企画者は、あくまでも企画した後のリスクを十分考慮し、すべて自己責任として捉える覚悟が重要である。
 
そのような覚悟をして企画提案すれば、何が起きようとも企画実現のために邁進できる(注)。重要なことは、サラリーマン生活で一度は組織を動かすようなイノベーションを起こしたいと考えるかどうかである。今の日本では、プロジェクトに失敗しても首にならないし、チャレンジした醍醐味を味わえる会社は多い。そして、その気になればチャンスは誰にでもある。
 
(注)転職時に、子供二人がまだ小さく可愛い盛りだった。また、学位も国立T大を蹴っ飛ばしたばかりで、ここで書いているような社長の気持ちで企画を立てる勇気は無かった。せいぜい本部長あるいは部長の視点で、気軽にフィルムやフィルムの表面処理技術の企画を立てて推進していた。それでもドラッカーが言っているように、習慣としていくつか成果が出て、その中で3つほど外部の賞を頂ける仕事は出来た。
気持ちよく仕事をやっていたら、それまで倉庫として利用されていた部屋を区切り、日当たりの良い暇な席に異動になった。
そこで、一念発起早期退職をする覚悟をし、フローリー・ハギンズ理論では説明のつかない技術を企画した。科学では説明がつかないので高分子学会技術賞は逃がしたが、この企画は、基盤技術0からコンパウンド工場を産み出し、高純度SiCの企画同様にサラリーマン生活の良い思い出となっている。
その技術で生まれた押出成形によるベルトは、キャスト成膜によるPI樹脂ベルトを置き換えることに成功し、コストダウンと環境負荷軽減に貢献した。
また、ゴム会社で指導社員に頂いたカオス混合の実用化という宿題もまとめることができた。貢献と自己実現を行い、満足して退職しようとしたら、最終日2011年3月11日は会社に宿泊することになった。永遠に残る退職日の思い出を天からご褒美として頂いたが、サラリーマン誰でも褒めて持ち上げられる機会がつぶれてしまった。
やはり、死ぬ気の覚悟まではいらないが、本気度が足りないと満足の行く企画はできない。出世は運もあるのでコントロールできないが、少なくとも思い出に残るような企画は、それなりの本気度を出せば誰でも出来るはずだ。そのコツが弊社の研究開発必勝法である。

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2016.02/17 野球殿堂入り

今年の野球殿堂入りの候補が決まり、星野元中日監督が落選した。ネットで一部話題になっている。当方は、星野元中日監督が殿堂入りしていないことを今回の騒動で知り驚いている。
 
星野元中日監督は、中日、阪神、楽天の3球団を率いて優勝監督となっている。web情報によれば、3チームで優勝を果たしているのは故・三原脩氏、故・西本幸雄氏を含め、3人しかいないそうだ。
 
さらに、監督として勝利した数は通算1181勝であり、新聞記事によればこの数字は歴代10位という成績だそうだ。上位の9人全員と、通算勝利数では13位の故・仰木彬氏などがすでに殿堂入りしているので10位の成績ならば殿堂入りしていてもおかしくない順位と感じている。
 
低迷していた阪神、楽天という2チームを闘将と呼ばれるほどの熱血リーダーシップで優勝に導いた功績は倒産しかかった企業を再生したようなもので、それだけでも殿堂入りしていておかしくない経歴だと思う。恐らく殿堂入りの問題は、審査員の好き嫌いという低レベルな判断が影響しているのではないか。
 
審査員は殿堂入りしている選手から選ばれているそうだから、同業者の評判がそのまま結果として出る。星野元中日監督は、個性の明確な人物で球界に敵が多い、と噂されていたが、スポーツの世界でも実績より仲良しグループに入ることが求められるのだろう。
 
競技の勝ち負けは動かしようがないが、殿堂入りは通俗的で適当な評価の世界なのかもしれない。星野元中日監督の個性の問題と言ってしまえばそれまでだが、少し寂しい感じがする。おそらく審査員に選ばれている元選手は小物揃いなのだろう。星野元中日監督のファンとしてではなく、その業績に敬意を持つものには理解できない評価結果である。
 
イノベーションはいつの時代でも求められており、尖った人材がもてはやされたりした。しかし、組織は必ずしも実績だけで評価しない。星野元中日監督は、当方の時代のスター選手だったが、同僚あるいは同業者から好まれていなかった可能性が高い。
 
ただし、その際立った才能と個性に強い魅力を感じていたファンは多いはずだ。また、殿堂入りしている他の選手と比較しても、TVや週刊誌で見る人物像は悪くなく性格も良さそうである。殿堂入りしている人の中には、TVの発言を聞いていて常識を疑いたくなる人もいる。
 
スポーツ界でもこのような状態である。もしサラリーマンとして成功したいならば、このような問題は軽く考えない方が良い。企画を実現しようとするときも同様で、いくら会社に貢献できそうな良い企画でも、組織が大きくなれば企画の品質だけでその採用は決まらないのである。30年以上前に高純度SiC事業の先行投資を決断した経営陣には感謝しているし、このような経営が業界トップになる会社を育てるのだと思う。
 

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2016.02/16 企画を実現する(2)

STAGE-GATE法に限らずどのような開発管理手法の会社であっても、企画を実現させるために最も重要なコツは、その風土なり土壌を活かすことだと思っている。これは企画の内容によらず、その土壌、特に中間管理職を含めた担当者すべてが企画を成功させたいという思いが、あるかどうかで企画の成功確率は左右される。どんな優れた企画であっても人間関係が崩れたならば失敗を覚悟しなければいけない。
 
ゴム会社である騒動が起きたときに当方の頭をよぎったのは、高純度SiC事業の失敗である。住友金属工業とJVとして立ち上がった仕事をすべて住友金属工業に移管する、という解決策も残っていた。また、実際に契約後そのような動きもあった。
 
これは経営陣の意思と異なり、中間管理職の間で聞かれた噂話である。本来イノベーションを担当すべきコーポレートの研究所でありながら、大学顔負けの研究を指向するような風土の研究所が流行した時代であり、そのような風土では新事業など育たない。
 
当時研究所で推進されていた二次電池事業や電気粘性流体の開発の進め方を見てきて、高純度SiC事業については、絶対に成功させようという意思は強かった。その思いが研究所の風土に合わず人間関係が知らず知らずのうちに崩れていたのだ。
 
会社の仕事では、一人だけの力で企画が実現することはまれで、多くの上司、同僚、取引先の方々のバックアップや協力があって成功に結びつく。企画を成功させるためには、いつでもこのことを忘れてはいけない。ドラッカーの「貢献を中心にした思考」とは、このような人間関係に気を配ることも含まれる。そしてそれを重要視することは、企画を成功させるために最も大切な思考方法である。
  

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2016.02/15 企画を実現する(1)

昨日は弊社へ混練に関して質問があったので、混練について当方の考えを書いてみた。中間転写ベルト用のコンパウンド工場建設は、当方のサラリーマン技術者として卒業試験のような位置づけになった。約30年間、経営者を目標にがんばってきたが、結局サラリーマン時代はそのチャンスがありながらも、不心得者に対する対応を誤ったので夢が叶わなかった。
 
しかし、当方が企画し推進した高純度SiCの事業はゴム会社で現在も続いている。恐らく企画としては大成功だろう。さらに学会賞まで受賞している(その審査資料が転職し学会賞の審査員をしていた当方に回ってきたときにはびっくりしたが。)
 
写真会社では、過去のトラウマから徹底的に既存事業の技術開発企画に徹したが、デジタル化の波に押し流されて、豊川へたどり着き、そこで写真会社とは無縁のコンパウンド工場建設を思い立ち、企画立案し成功させた。その工場は、現在神戸へ移転され稼働していると風の便りに聞いた。
 
このコンパウンド工場建設の企画は、高分子科学の教科書に書かれたフローリー・ハギンズ理論からはずれた科学的に実現不可能な、すなわち100%成功できないといわれた仕事だったが、その実現不可能だったポリマーアロイの生産工場が10年近く安定に稼働している。これも100%成功した新事業企画といっても許されるだろう。しかも科学で否定される技術企画の成功事例である。
 
21世紀の開発プロセスと題して書き続けてきたが、本日からは実際に企画を成功させるための方法論を書いてみたい。21世紀の開発プロセス同様に、キモの部分は少し隠しているが、関心のある方は弊社へご相談いただければ対応致します。あるいは昨日の混練の考え方のように、本欄で回答させていただく場合もあります。
 
なお、弊社では現在混練技術のコンサルティングのために二軸混練機の設備のセットを3000万円程度で販売できないか企画中です。本設備に関してご興味のある方はお問い合わせください。詳細が決まり次第公開致しますが、国内の協力メーカーの調整が完了し、現在は実際の手順を詰める段階まで来ましたので、早期に導入希望のお客様には公開前でも対応させていただきます。
    

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