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2015.02/09 花冠大学リニューアル

STAP細胞の騒動は理研の幕引きだけでは終わらず、小保方氏がES細胞の窃盗容疑で訴えられ、司法の場で、ES細胞を用いたマウスの謎の解明が行われる可能性が出てきた。但しその前に警察が告発状を受理するかどうか疑問ではあるが。

 

弊社はSTAP細胞の存在を前提に花冠大学のシナリオを作成していたので、今回の事件は弊社にとって大きな痛手となった。 シナリオを大幅に書き直さなければならなくなったからだ。植物の細胞では観察されるSTAP現象がなぜ動物の細胞で起きないのか、という長年の疑問をまた考えなければいけなくなった。

 

昔、地下鉄の電車をどこから地下に入れたのか考えていると夜も眠れない、という漫才師がいた。30年近く前に、ゴム会社でカルスの研究を見て、動物の細胞でSTAP現象が起きないのはなぜか、という疑問が生じた。但し、ぐっすり眠れたが、長年動物の細胞でもSTAP現象が起きるのではないかと思い続けてきた。

 

ややオカルト的で恐怖だが掻き毟って傷がついた皮膚に指が生えてくる夢を見たことがある。そんなことになっては大変だから動物では植物のようなSTAP現象がおきないんだ、と納得したが、科学的な説明ではなく恐怖からの逃避でしかない。植物と異なり細胞膜がないから刺激の伝達モードが異なるだけではないか、と想像したりしていた。

 

そんなこともあり小保方氏の発表には拍手喝采で、一気に花冠大学を立ち上げた。しかし流れがおかしくなり、シナリオを練り直すためにしばらく大学活動報告を休載してきた。今回新たに書き直したシナリオができたので、ホームページも一新した。ご興味のある方はwww.miragiken.com をご覧ください。

 

カテゴリー : 一般

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2015.02/08 コーチング

松坂大輔投手に対するソフトバンク佐藤投手コーチの指導方法が話題になっている。スポーツニュースで見たが、松坂投手はよく我慢している、あるいは謙虚なのかと感心していた。しかし、スポーツ誌の評価は全く異なる見方をしていた。

 

スポーツ誌では一流選手に対するコーチの指導方法に着眼していた。さらに、そもそもコーチングとはなんぞや、という問題提起をしている記事もあり面白い。

 

ある記事には松坂投手の談話が載せられており、周囲の佐藤コーチへの批判に比べて、松坂投手本人は特に気にしていない様子である。おそらく松坂投手ぐらいの一流になるとコーチと選手の関係に対する配慮も自然にできるのだろう。

 

新入社員の頃を思い出すが、最初の3ケ月は優れた指導社員が、それこそ佐藤コーチのように手取り足取り指導してくださった。またレオロジー解析についても座学の時間をわざわざ業務中に設定しみっちり指導してくださった。

 

その後2年間は艶やかな女性の指導社員の下で仕事をしたが、その時は全くの放任主義でやや戸惑った。周囲は美人の指導社員の下でぼけたのではないか、と噂していたようだが。

 

ぼけていたわけではなく、放任主義のおかげで、ホスファゼン変性ウレタンフォームの研究やホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの開発、さらに高純度SiCの企画を黙々と自由に練ることができた。

 

この約3年の経験から言えば、佐藤コーチと松坂投手の人間関係でコーチングスタイルの評価は変わるのではないかと思う。一流選手だからそのように指導せよ、という意見は、おそらく本当の一流選手にとっては迷惑な話だろう。

 

多くのスポーツ誌が指摘していた、松坂をさらし者にした、という同情も理解できるが、開幕までまだ時間があるこの時期は、一流選手ならば、死に物狂いで自分の欠点を改善して、さらに高度な技術を身に着けたいと思うのではないか。

 

美人の指導社員も楽しい思い出だが、3ケ月間の佐藤コーチ以上に密着指導してくださった指導社員に、少なくとも、もう半年間は指導していただきたかった、と思っている。

 

20年ほど前コーチング手法が話題になったが、昨今はあまりその手の話題を聞かない。技術の世界では、手法も大切だが、そもそも技術を伝承しようという意気込みと弟子に対する愛情が無ければ弟子は育たない。

 

松坂投手をもっと活躍できる投手にしようという意気込みからあのようなコーチングスタイルになったのなら、それは正しい指導法ではないか?この結果は開幕後の楽しみである。

 

カテゴリー : 一般

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2015.02/07 独学の勧め

混練プロセスは新入社員時代にたった3ケ月担当しただけの技術である。しかしその3ケ月は濃縮された期間であり、混練について独学でスキルを磨くコツを習得するに十分だった。高純度SiCの事業化を行っていた6年間は、積極的に社内の講演会や技術発表会、品質管理の大会などに参加していた。ゴム会社だったのでそれらの発表は大半が高分子関係である。大変勉強になった。

 

学会にも参加していたが、担当していた職務からセラミックス関係が多かった。当時研究者の数は、セラミックスブームもありセラミックス関係と高分子材料関係との比率は、1:4と言われていた。ゆえにセラミックスブームといっても高分子材料関係の学会の方が面白かった。時折、年休をとり高分子学会の発表も聞きに行ったりしていた。

 

今から思い出すと、高純度SiCの事業開発を担当していた30代は、死の谷ではなく天国だったのかもしれない。この時に結婚する時間も取ることができ、新婚時代は定時退社も実現した。独身時代は歩いて数分のところに独身寮があったので終日仕事をしているような気分だったが、結婚してみて仕事よりも勉強時間が長かったことに気がついた。学位論文のまとめも結婚により急速にはかどるようになった。独身という身分は何かと忙しいが、結婚をすると無駄な活動が無くなるものである。

 

この頃の勉強は、先端技術分野ということで教科書が無く、もっぱら学術文献や特許から知識を吸収していた。会社の端末で文献調査が可能だったので資料の入手には困らなかった。また、調査費用は研究管理部が持っていたので予算にも不自由しなかった。

 

定時退社をしていたが、家ではやはり学術文献を読むのが習慣になっていた。子供が生まれ、困ったのは読みかけの論文をいたずらされることだった。それを避けるために、机の周りを檻で囲み、自分がその中に入って論文を読んでいた。檻の外から父親を眺める息子が少しかわいそうだったが、学位を取るまでの辛抱と我慢した。

 

初めての分野については、簡単な教科書で勉強するのが手っ取り早いが、技術者として仕事を続けるためには自分の担当する分野の業務について学術文献や特許を取り寄せて読むべきである。現代は便利な時代で、特許については自宅でデータベースを簡単に利用できるようになった。また一部の文献についてもWEBで閲覧可能である。

 

勉強をしない技術者はスキルを磨いて職人を目指すべきである。職人にもなれない技術者はどうすればよいか、答は無限にある。技術者として道に迷ったら、まず勉強をする。そうすれば必ず道が見えてくる。道が見えないのは勉強不足である。食事は食べ過ぎると病気になるが、勉強はやり過ぎても死ぬことは無い。目標を定めやりきることである。

 

何を読んだらよいかわからない時は、学術書なども置いてある大きな本屋で1日過ごしてみると良い。自分の気に入った本を数冊購入し、読み切ってみると読みたい本が自然と見えてくる。当方は隘路に迷い込んだ時、キャッシュカードを持って本屋に行くことにしている。また、それなりの経験者に尋ねてみるのも一つの解決方法である。昨年わけあって本社の近くに事務所を借りたので、現在書斎も含め引っ越し中である。分室は広いので易者のようなよろず相談も面白いのではないか、という冗談も家族から出ている。

カテゴリー : 一般 高分子

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2015.01/20 中国での出来事

昨日中国出張から帰国したが、ぺヤング焼きそばの騒動からマクドナルドの騒動までネットで古い記事を読みびっくりした。中国のネット環境では一部閲覧できないサイトがあり、ぺヤング倒産騒ぎのニュースはその中国で閲覧できないサイトに掲載されていた。このサイトの記事の信憑性は疑われるが問題は議論の中身だ。

 

ゴキブリ騒動がきっかけだったので、あたかもツイッターに写真を揚げた人が悪いような書き方をしている。

 

しかしこれは間違った評価だ。あの事件は、最初に情報を隠そうとした、リスク管理ができていない会社が問題だと思う。研究目的を話し有償で材料供給をお願いしても、リスク管理を建前として中小企業のささやかな研究を警戒して材料を出さない臆病な大企業も存在するご時世である。リスク管理は今や他人を困らせてもお構いなしのレベルまで来ている。

 

さて、今回の中国出張中にもゴキブリ騒動があった。騒動と言うほどではないかもしれない。かわいいウェイトレスと朝の新鮮な空気で味わうコーヒーが、その出来事で台無しになったから当方にとっては迷惑な事件だ。

 

出張中、朝食を食べようとホテルのレストランにいったところ、通路でゴキブリがひっくり返っていた。レストランには当方が一番乗りのようで顔なじみになったウェイトレスが「ニイハオ」と声をかけてくれた。

 

いつものように微笑み返しをせず、足元を指さしたらにっこりとかわいい笑顔で近づいてきた。そして素手でゴキブリのひげをつかみ、そのままゴミ箱へ捨ててしまった。彼は感じやすい大切な部分をつかまれてもピクリともしなかったので完全に死んでいたのだろう。このシーンでは彼女の勇気を褒めるべきかもしれない。

 

だが、その直後何もなかったかのように、また、にっこり微笑み「コフィオアティー」と聞いてきたので、条件反射で思わず「コフィ」と応えてしまった。いつものようにテーブルに案内してくれて、彼のひげをつまんだその手で、伏せてあった目の前のカップをひっくり返し、持ち上げながらコーヒーを入れてくれた。

 

カップをひっくり返す時にその親指と人差し指はコーヒーカップの唇が当たるベストボジションにしっかりと触れていた。

 

衝撃的な作業以外はいつもと変わらない笑顔と優しい動作であったが、当方は、なぜか全身が凍りついたままになり食欲が進まなかった。ゴキブリ入りのインスタント焼きそばを開封した人の恐怖感を理解できる。

 

カテゴリー : 一般

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2015.01/05 混練プロセス(1)

ゴム会社で3ケ月間防振ゴムの開発を担当した。新入社員のテーマとして一年間担当する予定のテーマだったが、サービス残業を行い3ケ月間で処方を仕上げた。指導社員が極めて熱意のある優秀な技術者で毎日最低2時間は混練技術の指導を現場でしてくださった。

 

物理が専門の技術者で一年間に得られるであろう重要なデータをすべてシミュレーションで示し、その内容を1週間かけて講義してくださった。研究の進め方について大学と企業の違いを知り、カルチャーショックのような衝撃を受け、駄馬の先走り状態になった。

 

この頃を思い出してみると技術者として最も充実していた。高純度SiCの仕事もそれなりに充実していたが、それは事業家としての充実感であり、技術者としては満たされない毎日だった。吸収した知識をすぐに実戦に生かす技術者としての醍醐味は防振ゴム開発の仕事ほどではなかった。

 

STAP細胞の騒動では未熟な研究者が指導者に恵まれなかった発言をしていたが、技術の伝承において優れた指導者は必須である。科学の知識は書物から学ぶことができるが、技術は書物だけで学ぶのは難しい。混練プロセスのような科学で解明が遅れている分野ではなおさらである。

 

指導社員はゴム会社であまり大切に処遇されていなかったが、実務者としての力量と技術の伝承者としての力量はずば抜けていた人である。部下の立場で評価すれば100点であったが、その上司の立場から見た時に高い評価を受けていなかった、と思われる。

 

サラリーマン人生を振り返ると、この指導社員より優秀な技術者には出会っていない。この指導社員の実務スタイルが、3ケ月の業務を終えた時に当方の目標になっていた。

 

たった3ケ月間混練プロセスを担当しただけであるが、優れた指導者のおかげで得意な技術分野の一つになった。35年前短期間に獲得した知識と技術で9年前中間転写ベルト用コンパウンド工場をやはり短期間に立ち上げることができた。

カテゴリー : 一般 高分子

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2015.01/04 FMステレオチューナーが壊れた

今やネット配信で音楽を聴く時代である。またオーディオという言葉も死語となりつつある。しかし、我が家では昔ながらのオーディオ機器で音楽を楽しんでいる。アンプやCDは単身赴任中に同僚から紹介されたROTEL製品に買い替えたが、チューナーは、40年前購入した製品である。

 

そのチューナーが突然壊れた。AMは受信できるので、FM受信機が壊れたようだ。各部にさびが少し出ている。古い装置なので集積化が進んでおらず、眺めていても楽しい。恐らくコンデンサーが壊れたのだろう。液漏れを起こしている。まだ漏れたばかりのようなので光の変化で輝く。

 

ディスクリート構成のアナログ回路は専門家に頼めば修理が可能かもしれないが、40年前ではさすがに修理して使う意欲もわかない。ところが驚いた。メーカーのサイトを覗いてもFMチューナーという単品商品が無いのだ。

 

今時FMチューナーなど売れないのだろう。ようやく一つ商品を見つけたが安い!40年前は10万円以上したデジタルシンセサイザーチューナーと同等のスペックの商品が3万円で購入できる!

 

物価上昇を考えても電化製品の性能と価格の関係は異常である。改めて技術の進歩のすさまじさを身に染みた。

 

ところでFMチューナーで何を聞いていたのかというと、土曜日夕方放送されているラジオマンジャックである。土曜日の夕食当番を務めながら、聞き流していた番組だが面白かった。FMチューナーが壊れたのをきっかけに我が家もネットオーディオへ移行しようと思う。

カテゴリー : 一般

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2015.01/03 技術の伝承とヒューマンプロセス

技術の伝承の重要性は、社会人になってから幾度となく聞かされた。しかし、その重要性が叫ばれながらもなかなかうまくゆかないようだ。写真会社で出願された特公昭35-6616特許(注)を掘り起し、パーコレーション転移の制御技術とその評価技術を20数年前開発した。

 

日本化学工業協会から賞を頂いたこの技術は、技術の伝承がまったくできていなかった典型的な例だ。コンピューターによるシミュレーションと帯電現象の科学的解明に努力し古い特許を見直したところ、重要な技術を発見できた。

 

科学の問題解決プロセスは真理を追究しそれを明らかにするのがゴールであるが、技術の問題解決プロセスは自然現象を活用できるように、それをいかにうまく機能させるか、がゴールになる。すべての自然現象が科学で解明されているわけではないので、技術ではしばしばその機能実現方法がブラックボックスになってしまう場合がある。

 

これを科学の力でリヴェールする技術開発をリバースエンジニアリングというが、企業の技術開発で採用されているその過程で科学の力不足をしばしば感じてきた。その分野の有識者に尋ねても不明だったので明らかに科学の力不足である。

 

科学で解明できない技術では巧みなヒューマンプロセスの成果によるものが多い。ノーベール賞を受賞したiPS細胞を作りだすヤマナカファクターは、テレビ放映されるまでその発見方法がブラックボックス化されていた。

 

テレビで放映されたその方法は、科学の常識から外れた24個の遺伝子を細胞に取り込ませようとした大胆な実験とあみだくじと同様の消去法によるヒューマンプロセスだった。

 

科学は知の体系であり、誰でも利用できる公開された権威ある情報も豊富だ。しかし技術については特許と製品、リタイアした技術者からその情報を得る以外に合法的な方法は無い。中には職人により生み出された技術もあり、このような属人的要素が強い技術ではその開発した本人が技術そのものとなる。

 

科学で実現された技術では厳密なロジックで真理に到達でき自然現象の活用方法をリベールできるが、ヒューマンプロセスによる技術では先端の科学的成果を集めてもうまくゆかない。そこで技術の伝承が重要になってくる。

 

(注)絶縁体である酸化第二錫を写真フィルムの帯電防止層として活用した技術。酸化第二錫にインジウムをドープすると高い導電性を持つようになる。これは透明導電膜ITOとして有名で、この特許が出願された頃から研究が始まっている。特許では酸化第二錫ゾルとして塗布液を作成しているが、これはナノオーダーの超微粒子が金魚のウンコのようにつながった繊維状の物質が分散したコロイド溶液で、この溶液に高分子を分散してPETフィルムに塗布すると光学的に無色透明な薄膜になる。しかしパーコレーション転移が起きにくく40vol%以上添加しても導電性が出ないのでインチキ特許とみられていた。ゴム会社から写真会社に転職した時にライバル特許を過去にさかのぼり整理しこの特許を見つけたが、ライバル会社の最初の特許ではこの特許を否定し結晶性酸化スズが良いというひどい特許が出願されていた。実は1980年代のセラミックスフィーバーで結晶性酸化スズは絶縁体であることが証明され、その酸素欠陥が増えてきて非晶質になると半導体になる科学的実験結果が報告されている。インジウムをドープすると正孔が増えるので導電性になる。特公昭35-6616の実施例に書かれた酸化スズゾルを科学的に分析すると、わずかに構造水を含んだ非晶質酸化スズが生成しており、1000Ω程度の導電性物質であることが都立大との産学連携研究でわかった。この程度の導電性があれば、パーコレーション転移シミュレーションで10の8乗Ω程度の薄膜を製造できることが示され、分散しやすいために転移が起きにくいゾルをいかに転移させるかと言う問題になる。転移を制御する因子を探すためにわずかなクラスター生成を評価できる評価技術が必要と考え福井大学客員教授時代に青木幸一教授と開発し、その評価技術を用いてコンビナトリアルケミストリーの手法で18vol%程度で転移を生じる条件を見出した。

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2015.01/02 KKD

昨日高純度SiCの合成に初めて成功した時の不思議な体験を書いた。STAP細胞はその再現が困難であったが、このSiCの合成はロバストの高い技術として完成し、現在もゴム会社で事業として継続されている。

 

無機高分子と有機高分子の均一混合について、高分子科学をご存じの方はSTAP細胞と同様の違和感を感じられるかもしれない。さらに、それから合成された炭化物前駆体の特殊な熱処理プロファイルが見つかったプロセスが神がかり的だったことは、実験に成功した本人もびっくりしているくらい科学から逸脱している。

 

iPS細胞の誕生もこの高純度SiCの成功に近いところがある。しかし両者共通しているのは、勘や運だけで成功しているのではなく、その実験に至る過程には綿密な戦略があり戦術遂行過程で遭遇した現象を大胆に受け入れている点である。

 

ゴム会社に入社した時先輩社員から、この会社は科学的なプロセスを踏まず勘(K)と経験(K)と度胸(D)で開発が進められる、と自嘲気味に教えられた。

 

ところで、科学が成立する前の時代に行われていた技術開発では、科学が存在しなかったので経験(K)の積み重ねが重要であったと「マッハ力学史」に書かれている。

 

だから経験を重視した技術開発は人間本来の営みだから自嘲気味になる必要は無い。経験が積み重ねられたある日にひらめきがあり実行したらうまくいった、この経験の積み重ねが科学成立以前の技術開発の方法、と同書に説明されているので、勘と度胸もマッハに認められた技術開発を成功させる重要な因子である。

 

ただ大切なことは、マッハ力学史に書かれた順番は、経験が先にあり経験の積み重ねられた結果ひらめき(勘)が生まれ、思い切って実行(度胸)して新技術を生み出しているという流れだ。

 

経験が次の世代に伝承されれば、経験の組み合わせを見直す動きも出てくるだろう。すなわち戦略を立ててKKDを実行した人物もいたはずである。ガリレオガリレイなどはその代表者かもしれないが、マッハ力学史にはここまで書かれていない。

 

勘が先行するKKDはいただけないが、経験を重視し、科学的に立案された戦略に基づくKKDの技術開発は、新しい科学のシーズを見つけるためのヒューマンプロセスである。

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2015.01/01 神様

まだ喪が明けないので我が家の正月は初詣も無し。しかし新年を迎えたことで神様だけでもお迎えしたいと思ってみたが、最近はその神様、七福神も見かけない。

 

子供の頃、お正月に七福神の装束をまとった人たちが各家を周り、2-3分舞をして出てゆくという光景が見られた。そのうち七福神が5人になり、大学に入った時には一人になっていた。

 

東京に来てからは一度も見かけていない。実家は西本願寺の檀家だったが当方は特にどこかの宗派に属しているわけでもないのでこの七福神が好きだった。神様と言えばイエスキリストではなく七福神をまず思い浮かべる。

 

高純度SiCの初めての合成実験は無機材質研究所に納入された新品の電気炉で行われたが、電気炉の加熱開始から神様に実験がうまくゆくように祈っていた。頭に浮かんだのは大黒様である。突然プログラムコントローラーで制御されていた電気炉が暴走し、ぐんぐんと温度が上がり始めた。

 

1600℃で30分保持するプログラムが組まれていたのに、1800℃まで急速に温度が上がったのでびっくりして非常停止ボタンを押した。今度は温度が下がり始めたので、どうしようか、と慌てて担当のT先生に電話した。

 

せっかくの実験だからスイッチを入れて待っててください、と言われたのでスイッチを入れたら、なぜかプログラムコントローラーの制御は非常停止でスイッチが切れておらず、ヒーターの制御をはじめて程よい温度カーブを描きながら電気炉の温度を制御し始めた。

 

T先生がこられて状況を見てどこが異常なのか尋ねられた。アナログデータの記録が残されていたのでお見せしたら、確かに暴走していた、と納得してくださった。

 

ところが翌日電気炉の中をあけてびっくりした。ま黄色のSiCが合成されていたのだ。その後いろいろ実験で調べてみても、この時の温度条件が理想条件であるという結果が得られたが、電気炉の暴走原因を明らかにすることができなかった。

 

神様を信じるかどうかは科学の時代にナンセンスな議論かもしれないが、高純度SiCの特殊な加熱条件は、神様がいなければ見つからなかった、と思っている。新入社員の時の役員からのアドバイスと、この時の体験もあり、科学と、人間本来の営みの一つである技術開発の関係について考えるようになった。

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2014.12/31 学ぶ(3)

歌手の森進一氏が紅白出場50回定年説を提案し、歌手仲間の間で物議を醸しだしている。AKBなどのグループではピンで活躍するようになると卒業と称してグループから外れる。

 

後者は何となく理解できるが、紅白歌合戦は主催者であるNHKが不要と判断すれば出られない行事であり、必要と言われても歌手から断る自由のある行事である。このような行事に年齢や出場回数制限をつける意味があるのかどうかである。

 

確かに森進一氏の声では、ラジオで聞いている人に、その健康を心配させる可能性があり、それを気遣って引退したいというのは理解できる。しかしファン心理と言うのはそれでもその歌声を聴きたいのである。ファンが聴きたいのに歌手から定年を言い出すのはいかがなものか。

 

そもそも企業で定年を設けているのは、年功序列賃金のためである。弊社は定年のない会社を目指し給与制度もそのようにしている。紅白歌合戦のギャラが年功序列になっているとは思えないので定年制とする意図が見えない。若い人に機会を譲りたい、といっても芸人のそれを決めるのはファンと神様である。

 

生物学的に見て一律に定年を決める無意味さは、定年の延長の議論でも出ているのではないか。制度を維持するためにしかたなく定年というものを設けているはずである。紅白歌合戦では、定年が必要になる事件がまだ起きていない。細川たかし氏が倒れるまで歌いたいと言っていたが、本当に歌っている最中に舞台で倒れるようなことになったら、その時定年を議論する必要があるかもしれないが。

 

学ぶことも同様で学ぶために定年が無いことは衆知のことである。父は入浴中に亡くなったが、その直前まで読書をしていた。当方が若い時に学びについて議論をしかけたことがあるが、生きていくのに学びが必要と言う価値観の前には無意味であった。

 

人間が他の動物と異なるのはこの学びの姿勢と思っていたら、カラスがクルミの殻を割るのに学習していたことを知り、学びは生物の生きてゆくための自然な行為であることを知った。鳥の歌声に定年が無いように歌手にも定年など不要である。学び歌い生命を楽しんで来年も生きてゆこう!花冠大学(http://www.miragiken.com)もよろしく!良いお年をお迎えください。

 

 

 

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