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2014.01/05 お餅と高分子の難燃化

お餅は多糖類の高分子が水を抱きかかえた構造をしている。お餅をつくときの手垢も、ということは考えたくない。あるいは、町内の行事で行う餅つきでは砂埃も入る。こんな事を考えながらお餅を食べていたらせっかくのお餅の味が台無しである。

 

しかしお餅を焼きながら考えて頂きたいことがある。お餅を焦がさずに焼く方法である。難しいことではない。焼き上がるまで丁寧に何度も餅を裏返し、お餅が膨らむまで注意して焼き上げれば良いだけである。

 

子供の頃、お雑煮に入れる餅を焼く担当であった。餅を焼かずにそのまま入れたお雑煮ではどうしてもおつゆの粘度が上がる。お雑煮でおつゆの粘度を上げないコツはお餅を焼いてから入れる手順をとることだが、焦げ目のついたお餅ではお焦げの味がお雑煮に移りおいしくなくなる。ゆえに焦げ目をつけないで焼く技が必要になるのだがこれが難しい。

 

昔は火鉢があったので炭火で餅を焼くことができ、お焦げを作らずに焼く技は容易であった。しかし、ガスの火力は強いので頻繁にひっくり返す必要がある。火鉢の中とガス台では餅の焼きあがるプロセスが異なるのだ。

 

餅は少しでも焦げ目がつくとその色が濃くなるスピードが早くなる。ゆえに最初の焦げ目が現れたらそれ以上焼かない方が良い。全くお焦げを作らないで焼くようにするには、この最初のお焦げに十分に気を配り、現れないようにすることである。

 

炭火で焼いた方が容易なのは、浸透性の高い遠赤外線が出ているためだが、ガスの火でも注意すれば焦げ目なしで焼くことはできる。とにかく焦げ目をつけないで餅に火を通し、それをお雑煮に入れると汁の粘度が上がらないおいしいお雑煮を作ることができる。

 

ところでなぜ焦げ目がつくと色が濃くなるのが早くなるのか。それは脱水反応から炭化反応に移行するためである。炭化反応はラジカル反応が中心になって進行するので早いのである。この餅を焼いているときに観察される現象は、高分子の難燃化に生かすことができる。

 

高分子の燃焼は酸化反応が急激に進行する現象である。急激に進行するので餅を焼いているときのような炭化反応が生じにくい。このことに気がつくと燃えにくい高分子と燃えやすい高分子の違いが炭化反応の起きやすさにありそうだ、と気がつく。これが高分子の難燃化技術開発では重要である。

 

正月にこのようなことを話していたら、電子レンジを使えば焦げ目無く餅を簡単に焼けると妻に教えられた。「ガスの技」の蘊蓄は無用であった。お雑煮は雑念を持たず食べるのが一番おいしい。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2014.01/04 混練プロセス

混練は剪断流動と伸張流動で進行する。餅つきでも剪断流動と伸張流動が発生している。最初の段階は杵で餅米をつぶしながら粘りけを出す剪断流動だが、粘り気がでるとつき始める。この餅つきプロセスでは、一人の返し手が餅を折り曲げながらつき手がついてゆく。

 

杵が振り下ろされ餅に圧力が加わった瞬間は剪断流動と伸張流動が働く。その後返し手で餅を折りたたみ、そこへまた杵が振り下ろされる。あたかも偏芯二重円筒で発生するカオス混合のようなプロセスで餅つきは混練を行っている。餅つきで重要な点は剪断流動と伸張流動が高圧で同時に発生している点である。

 

混練が進む過程は何か色素を餅に添加すると確認することができる。例えば、ひな祭りに飾る紅餅の場合、食紅が拡散してゆく様子は不思議な光景である。数度つくだけで全体が赤くなる。子供の頃、年に3回餅つきをやっていた。2月と4月、12月である。2月の餅つきは混練に興味を持つきっかけとなる行事だった。また、餅つきの行事が無くなり、まずい餅の秘密を米屋の友人が見せてくれたのは好奇心を育てるのに十分な役割をした。

 

しかし、餅つき以外にも不思議な現象は身の回りにたくさんあった。いつのまにか餅つきで体験した新鮮な好奇心を忘れていたが、ゴムのロール混練で悪戦苦闘していたときに突然思い出した。それは指導社員がカオス混合を教えてくれたときである。指導社員は少し個性的な物理屋であったが、プロセシングの勘所をよく知っていた。

 

混練をモデル化するときの問題は実際の現象が極めて複雑なのにそれを単純化することだ、と不思議なことを言われたが、単純なロール混練でもそのモデル化は困難だろう、と説明を受け、早い話が混練プロセスをモデル化して解くことは難しい、と言っているだけと理解できた。ロール混練を観察すると剪断流動と伸張流動に分けてモデル化することができないことに気がつく。

 

ゴム種と混練条件でその現象が変化しているからだ。さらに混練が進行するとその比率も変化してゆく。ゴム技術を学んだ後、ポリウレタンの難燃化技術開発を経験したが、この技術ではRIMを始め低粘度の液体を混合し、反応させる「技」の難しさを知った。その後高純度SiCを発明し、セラミックス材料を扱うようになったが、粉体混合の科学が一番分かりやすかった。混練という混合プロセスは極めて難易度の高い技術で未だに科学的に解明されていない。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2014.01/03 お餅

子供の頃年末になると大掃除を終えた翌週に餅つきを毎年行う習慣だったのが、小学6年の時に家を改築してから土間が無くなったのでその習慣が消えた。長年使われた石臼は庭で金魚鉢となった。餅つきを年末やらなくなったので米屋から餅を買うことになった。米屋の餅だからおいしいと期待したが家でついた餅よりもまずかった。

 

米屋には同級生の息子がいたので、餅がまずいとクレームをつけたら、機械で作っているので味が落ちる、我慢しろ、と正直に答えてきた。さらに餅には古米を使わず良心的に新米で作っているから、味は製造方法の違いだ、と言っていた。

 

実際に当時の名古屋市内の米屋で購入できる餅はどこも練り餅で、臼でついた餅ではなかった。近所の和菓子屋がわざわざ臼でついた餅を倍の値段で販売していた。臼でついた餅と練った餅でどうして味が違うのか不思議だった。

 

中学に進級したとき同級生が餅米を持ってきたらその餅米で餅を作ってくれる、というので味の違いを確認するために親に頼んで毎年親戚から送ってくる餅米を持って行き餅に加工してもらった。確かに練り餅はまずく、餅の味の違いは製造法の違いであることを確認できた。

 

当時の餅製造機はバンバリーのような装置でバッチ式であった。練り上がってできた餅は臼でついた餅と同じように見えるが、つきあがった餅を伸ばしてみると伸びが半分ほどしかない。臼でついた餅はよく伸びて、食べているときに困るぐらいであった。しかし練った餅は一応餅ではあるがあまり伸びない。また歯ごたえも微妙に違う。製造法の違いがレオロジーに現れたわけだが、子供の頃大変不思議な現象に思った。

 

今では同一型番の二軸混練機でも機械が異なると条件を揃えても混練物のレオロジーまで揃えることができず悩んでいる話を聞いたりしているので、臼でついた餅と練った餅で味が異なることなど当たり前に思うようになった。たまに商店街の行事で餅つきがあると正真正銘の臼でついた餅を味わう機会があるが、その味に感動しなくなったのは少し寂しい。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2014.01/02 新年の定番

お正月のテレビ番組はつまらない番組が多いが、お正月の定番として未来について語る番組がどこかにある。また元旦に配達される新聞にも未来の展望という記事が必ずある。この数年は高齢化社会のやや暗い未来に関する話題ばかりだったが、NHKの番組では2020年の社会を取り上げ少し明るい議論をしていた。

 

2020年には高齢化率が29.1%となり、この社会を支えるためには一人当たりの負担が今よりも年間17万円増え、消費税を12%に上げないと維持できないという。2020年と言えばあと6年後である。サラリーマン初めての単身赴任が2005年でそれからあっという間に8年が過ぎた。PPSと6ナイロンを相溶させた中間転写ベルトが世の中に出てから現在までの時の流れは早かった。

 

今年は消費税8%に上がるが、やがてそれが12%に。何も改善されなければ恐らく消費税は上がり続けるであろう。しかし、世の中にはすでに高齢化社会に対応する動きが出てきているという。例えば高齢者を積極的に労働力として採用してゆく動きと、高齢者を有望な消費者と見立てその消費活動をターゲットにした商品開発、それから高齢者の一戸建ての自宅を買い上げ、高齢者には便利な都会のマンションに住んでもらい、一戸建てを若い人に分譲し街の若返りを促進する持続的な社会作りなどである。

 

これらの動きの中で、高齢者を労働力として採用してゆく動きについては知識労働者が増えている現状で難しい側面がある。すなわち現在の労働者が高い目標に向かって自己実現努力をしなければ高齢者になっても働ける職場が限られる、ということである。知識労働の職場は年々新しい知識が要求される変化が起きている。知識労働者は自己実現努力を怠ればすぐに知識社会の動きから置き去りにされる。

 

現在の知識社会において肉体労働の比率が高い職人という職種が改めて見直されるかもしれない。職人は熟練すればするほど価値が出てくる職業である。科学的知識で武装した職人は技術者である。高学歴の職人が科学的知識を身につける努力をするのか「技」を磨く努力をするのか選択を迫られている時代である。中途半端では生きてゆけない。

 

カテゴリー : 一般

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2014.01/01 新年の抱負

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 

さて、新しい年を迎えますと今年一年をどう過ごすのか概略のアクションプランを考え、それを抱負にまとめ上げる。弊社は設立時に電子出版「電脳書店」を始めたが、集客が悪く1年ほどで閉鎖し、新たな事業企画の練り直しを行ってきました。本年はその新たな事業企画として再度電子出版をスタートさせますが、従来の世間同様の電子出版ではなく、そもそも本とは何であったのか考え直した事業ですので開店をご期待ください。

 

電脳書店では「中国語5文型」のような音の出る語学書や「高分子のツボ」のようなセミナー形式の書籍など他社と毛色の異なる電子書籍を販売していたのですが、お客が集まらず売り上げを伸ばすことができませんでした。ただ、訪問者に対し購入者比率は高かったので電子出版事業に再チャレンジすることに致しました。

 

そもそも本の役割とは知識・情報の提供と思想や知恵の醸成にあります。この機能があれば紙媒体である必要がなく電子出版というあらたな事業が生まれました。しかし現在一般に販売されている電子書籍は紙媒体の本をそのまま電子化したものが大半です。一方電子出版事業が出現する前から読書人口の減少から書店の倒産が始まり、現在の書店の数は最盛期の半分になったとも言われています。

 

少子化の影響とか言われていますが、そもそも本を購入して読む必要性を感じる人たちが減少したことが大きいと思っています。その原因は、インターネットの普及で本を購入する目的の一つであった知識・情報の吸収がパソコンを使いできるようになったからです。いまやインターネットを利用して得られる単なる知識・情報のビッグデータから世の中の情勢や思想まで取り出すことができる時代になりました。すなわちインターネットそのものが本の役割を担うようになってきたのです。

 

この可能性に早く気がつくべきだった、と反省しまして電脳書店を急遽閉鎖し、新たな時代の「本」という商品を考え直しました。新たな電子書籍を世の中に提供する、これが弊社の今年の抱負です。間もなく開店します。

 

 

カテゴリー : 一般 宣伝 電子出版

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2013.12/31 スマートグリッドの世界

2011年3月11日の福島原発の事故以来日本のエネルギーに関する議論が活発に行われている。福島原発の事故処理費用はじめ公にされてこなかった原発の隠れたコストを考慮すると日本で原発は極めてコストの高い発電方法と言わざるをえない。脱原発の小泉発言が問題になっているが、この髙コストの問題を明確に議論すれば、日本で原発を行う大義が無くなる。

 

それでは低コストの発電方法は、となると現在のところ安価な天然ガスを用いた火力発電ということになる。これは従来技術の延長で集中発電方式を考慮したときの結論である。もし分散発電という考え方になってくると、現在のガス供給ラインを用いた各家庭における燃料電池発電が最有力と一部で言われている。

 

今のところ燃料電池の価格も高くこれを各家庭の負担で設置しなければいけないので普及していないが、各家庭で発電された電気の余剰電力を買い取るシステムが結びつけば一気に普及すると思われる。ただこれには法整備の問題があるのでまだ時間がかかるが、分散発電によりインターネットのようにエネルギーのネットワーク化が進んだ社会をスマートグリッド社会という。この小規模分散ネットワーク型システムでは新たなビジネスが誕生する可能性があり、今注目を浴びている。

 

この詳細は来年議論したいが、スマートグリッド社会では燃料電池以外に太陽電池や各家庭で蓄電するための安価な蓄電池など電池技術が不可欠で、「安価な電池」は今目に見えている重要なコンセプトである。レドックスフロー電池は最も安価な電池と言われているが結構場所をとる。鉛蓄電池がその次に位置している。

 

鉛蓄電池は自動車用として長年の間に改良されてリサイクルシステムもできあがっており、分散型発電における安価な期待される電池だが、現在のLi二次電池の技術を応用したNa二次電池の技術が東京理科大から3年前発表された。スマートグリッドの世界では安心安全安価な三安電池が不可欠である。

 

弊社ではスマートグリッド実現に向けすでに調査を開始しており、独自の蓄電池シナリオをすでに技術情報協会の書籍に発表しました。来年も弊社は元気な日本のために頑張りますのでご支援よろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2013.12/30 未来のコンピュータ

光コンピューターというコンセプトがある。学術書も販売されているので夢物語では無くその分野の研究も行われているのだろう。光ならば7色少なくとも3色使用できるので、電気信号の現在のコンピューターよりも多くの情報を扱えるだけでなくスピードも早くなる。

 

現在の汎用CPUはシリコーンを基板にして何層も積み重ねて製造されている。ガリウムヒソを基板とする速度の速いCPUも開発されている。またSiCを基板としたCPUも登場した。特にSiC製のCPUは耐熱性や熱伝導性の観点で注目されている。CPUではないが、SiC製パワートランジスターは高級ステレオアンプにも使用されているので20年後までには汎用CPUとしてSiCウェハーを用いたコンピューターが登場するであろう。

 

電気信号のCPU材料についてはかなりのシナリオを描ける状態で、それゆえすでにCPUの速度限界も議論され始めている。しかし光コンピューターの材料シナリオは見えていない。また光コンピューターにおいてメモリーをどのように設計するのか、という見通しも十分に得られていない。光コンピューターで演算を行うためにはメモリー機能が不可欠で長時間どのように光を閉じ込めるのか議論されている。

 

未来のコンピューターについて話題を拾ってみると20年後に実用化されているコンピューター技術のおおよその姿は見えてくる。すなわちSiCウェハーの大型化に成功すればSiで問題となる発熱温度の上限が高くなり、今よりも高速駆動可能なコンピューターが登場する。SiCウェハーの大型化技術はほぼ見えてきており20年後の技術として実現可能性が高い夢である。

 

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2013.12/29 未来の材料設計

機能性低分子材料のコンピューターによる材料設計は、40年前コーリーらが逆合成のコンセプトで分子の合成ロジックを完成し、コンピューター上で効率的な合成ルートを評価したことに始まる。そして現代ではパーソナルコンピューターでその機能をシミュレーション可能なレベルまで到達している。

 

また、無機材料も固体物理の進歩によりコンピューターでその機能をシミュレーション可能なレベルに到達している。しかし、高分子については10年ほど前に元東大教授土井先生らのOCTAが完成したが、現在シミュレーターのテスト段階という状況である。

 

テスト段階であるが、例えばSUSHIのように現実系に適用できるシミュレーターもできている。ポリマーアロイの材料設計についてはSUSHIと経験知を併用するとコンピューター上である程度の実験が可能となる。OCTAが機能性低分子材料の設計のように使われるまでまだまだ時間がかかりそうであるが、原因は高分子物理の遅れにある。

 

高分子物理については、元東大教授西先生らのグループが地道に行っている分子1本のレオロジーの研究が重要である。レオロジーについては40年前の状況と現在では大きく変わったにもかかわらず、その変化が産業界に十分認知されていないように思う。

 

昔はあるスケールの大きさで高分子を眺め、計測されたレオロジーデータから高分子物性を議論していたのが、現在は分子一本から観測されるレオロジーデータを考察し高分子物性を議論しようとしている。この実験は気の遠くなるような実験で一つのデータを見る限り遊んでいるようにしか見えない問題がある。

 

しかし、このデータが必要な実務の現場が多数あるはずで、産業界はもっとこの研究に注目し、現場の情報を提供すべきであろう。実務の現場で得られたデータとこの研究が結びついたときに分子1本からメソフェーズ領域、そして目視可能なマクロ領域まで高分子物性の理解が連続的に進む。その結果高分子の材料設計がモノマーから自由に可能となる。

 

このコンセプトをある程度コンピューター上で実現しようとしたのがOCTAのように思われる。ここで「思われる」としたのは門外漢としてOCTAを眺めてきたからである。しかし退職後OCTAを勉強してみると高分子物理の向かうべき方向が示されていると考えるようになった。すなわちコンピューターのプログラムがあたかも高分子物理の哲学のようでもある。細部のプログラムを理解できていないのでオペレーションからの推定になるが、土井先生がOCTAで目指されたのは高分子材料設計における設計図の概念かもしれない。

 

(注)OCTAは名古屋で生まれたので名古屋の市のマーク「丸八」(布団屋ではない)から由来している。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2013.12/28 未来の車

昔タイヤがそのまま自動車になった乗り物が登場する手塚治虫のマンガがあった。タイトルは忘れたが斬新な発想である。今年のモータ-ショーにはその様な車は出ていなかったが、それでも未来感覚の車の提案が幾つかあった。

 

今から20年後の自動車はどのようになっているだろうか。自動運転の車が注目を集めているが、おそらく実用化されていると思われる。しかし、これはまだ車のカテゴリーの自動車だ。

 

今から30年ほど前のモーターショ-にいすゞ自動車のセラミックアスカが実際に路上を走ったコンセプトカーとして展示されていたが、コストと信頼性を克服できず夢に終わった。しかし、トヨタブースの目立たないところに展示されていたエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車は実用化された。もっとも当時のハイブリッド車は、ガスタービンとの組み合わせで、ガスタービンのエネルギー効率を上げる目的のため電気モーターとのハイブリッド設計になった。

 

当時のムーンライト計画では断熱セラミックスガスタービンが開発目標になっていた。ガスタービンエンジンはレシプロエンジンと異なり、高回転域の運転を得意とするエンジンである。そのかわり回転数を大きく変化させて使用するには不向きのエンジンだ。それでもセラミックスフィーバーの10年前の少年漫画には夢の車のエンジンとしてガスタービン車が描かれ、あの有名なバットマンの愛用車もガスタービンエンジンだった。

 

20年後の車を夢見るときに従来の延長線上で想像を膨らませても陳腐な予想しかできないだろう。思い切った発想でパラダイムシフトしたアイデアを生み出す必要がある。例えば日本は4人に一人が老人という社会になるので、老人に優しい車というコンセプトは未来に不可欠だと思う。痴呆症の老人が一人で乗っても安全な車、という難しい問題を考えれば良いアイデアが出てくるかもしれない。

 

またこれも従来の延長の発想では出てこないと思われるが、省エネから創エネの車というコンセプトも重要だ。すなわちエネルギーを生み出す車である。東京から名古屋まで車を走らせたら、帰りに必要なエネルギーが生み出されるような車という発想が重要になってくるのではないか。

 

単なる燃費を二倍にするのではなく、減速エネルギーの回生システム以外に風力発電や太陽電池も含め走っている間に発電されたエネルギーを蓄電するのである。エネルギー保存則から否定されるから100%は無理にしても使用したエネルギーに対し70%以上を目標にすることは可能なはずだ。

 

自動運転が可能になっているならば、車の中で事務が可能となる移動オフィス車も登場するだろう。そもそも居眠り運転の罰則規定も無くなるかもしれない。20年後の社会では生産性を今よりも上げなければならないから、車の中で事務をやるよりも安眠できる車が良いかもしれない。

 

今年もあとわずかになったが、今年一年を振り返ってみると未来への夢を語るきっかけとなるアイテムがたくさん登場した年である。アジアの動きも最悪の日韓関係に見られるように、真剣に明るい未来シナリオアジア版を考えなければいけない状況になった。

 

また、東京オリンピック招致運動はおもてなしで盛り上がったがとんでもない事件でつまづき次回のオリンピックに都知事がゲストで出席できない事態である。このように一寸先は闇だが来年は明るい未来を考えられる電子出版の新形態をスタートする。ご期待ください。

 

 

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2013.12/26 パーコレーション転移制御技術

パーコレーション転移について材料科学の分野では未解明な部分が数多く残っている。数学的には確率過程で説明されるが、材料科学ではここへ材料固有の問題が加わる。すなわち高分子をバインダーに用いて導電性粒子をその中に分散し、半導体フィルムを製造しようとすると、溶融時の高分子の挙動が科学的に解明されていない場合には技術でこの問題を解くことになる。しかもKKDを働かせて科学的取り組みを行いながらモノを創り上げてゆく。


パーコレーション転移を材料設計で自由自在に使いこなすにはコツがある。詳細はコンサルティングで個別に請け負うことになるが、未経験で知識が無い場合にはカーボンと高分子1組成の単純な2元系のシステムでも隘路にはまる。


その結果、添加剤を加えて制御しようと試みる。パーコレーションに限らず材料のシステムは成分が増えれば増えるほど複雑になる。そもそも高分子という材料は多成分系である。そこへ全く構造の異なる物質を添加すれば見かけ上改善されても隠れた問題のために商品化で苦労することもある。


実際に問題解決を依頼されたケースでは、高分子AにカーボンXを添加して検討していたが抵抗が安定しないので高分子Bも加えて制御しようとした。2割ほど偏差が小さくなったが仕様に入らない。そこでXよりも微粒子のカーボンYを添加して凝集させようと試みたところ偏差が2元系よりも大きくなった。偏差が小さくなるときもあるので1年間タグチメソッドで最適化を試みたがロバストを上げることができなかった、という内容である。


故田口先生が聞かれたら、それはシステムが悪くタグチメソッドの責任ではない、と明快におっしゃるに違いない。パーコレーション転移の制御にはあたかも機械系のシステムのごとく最初にある程度の設計が必要である。カーボンの選択もその一つであるが、そのコツを書いた教科書や文献が無い。論文では現象の解説はあるが、解決方法を書いていない。


パーコレーション転移の問題は電気抵抗に限らない。実はフィラーを高分子に添加して力学物性を改善しようとするときにも現れる。しかしフィラーによる力学物性の改善は、せいぜい10倍程度なので電気抵抗のように100倍の偏差など生じない。それで問題になっていないだけである。


パーコレーション転移の科学は単純化されたモデルでうまく説明できるが、全ての材料システムに当てはめた科学理論、すなわち問題が発生したときに必ずこうすれば解決する、という理論はまだ無い。奥深い内容を含んだ技術の問題である。しかし、技術としてこうすれば良い、という経験則は存在する。ご興味のある方はご相談ください。


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カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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