小池都知事を応援した「7人の侍」こと7人の区議に対する処分が昨日延期に決まったという。自民党二階氏の和解策をけった彼らに対して都議連がどのような判断を下すのか注目されていた。その結果として「延期」とは情けない。「延期」したままうやむやにするのだろうか。
当方は、現在の都政の状況において自民党都議連はこの処分問題を有権者への謝罪の機会に活用するのも一つの政治的手法と考えている。少なくとも豊洲移転の問題に関しては、与党自民党の失政が明らかであり、さらに豊洲移転問題で汚職事件にでも発展したなら、特定の汚職犯である自民党員の問題ではなく自民党全体の問題となる。
ここで処分問題そのものについて都議連の過ちであり、過去も含め謝罪し小池氏と協力して問題解決にあたる、というのは有権者に対し好印象を与える。ちなみに現在の段階で7人の侍は、明確な答えを出していないのである。都議連が処分を打ち出し、それが明確になっていないので都議連側にこの結論を出す責任がある。
都議連の謝罪により誰の面子がつぶれるのか。今の状態では面子がつぶれるのではなく逆に好印象を有権者に与える可能性もある。すでに自民党党本部は、現実的な動きをしている。
ところで、組織と個人の関係において組織は成果を出すための道具に過ぎない。その道具がおかしな動作をした場合に、個人は組織を改革するのか組織をすてるのか、という決断を迫られる。あるいは、個人の立場ではそのように判断すべきである。一方組織の機能に責任ある立場では、おかしな動作を修正するようにマネジメントしなければならない。
すでに自民党本部は小池氏に不問いの結論を出し、都議連幹部も総辞職させるなどしたのだが、それでもおかしな動作をして厳しい処分を都議連は出してしまったのである。それに対して7人の侍は、組織と個人の関係において正しい行動をとっているのだ。このまま長引けば都議連がさらに傷を深めるのは明らかで、早期収拾が頭の良い決断である。それには謝罪しかない。今の段階であれば有権者は理解を示す。
もし結論を長引かせたり、うやむやにした場合にはどうなるのか。さらに組織は傷を深め、大きな問題を引き起こす可能性がある。当方はゴム会社を転職後起きたゴム会社の事件にびっくりし、組織と個人の関わりにおける判断の難しさを痛感した。このまま進むと7人の侍は、本当に離党し、都議選で対抗勢力となって自民党は都議会で議席を多く失うことになる。
このような問題についても問題解決を誤ると複雑化する。11月15日に問題解決のセミナー( https://www.rdsc.co.jp/seminar/161116 )を予定しているが、5年前に開催した研究開発必勝法という問題解決セミナーにマネジメントの要素を加え、アイデアを出すためのノウハウもお話しするので都議連の方にも参考になるのではないかと思っている。ただし内容は技術開発が中心である。弊社へ申し込んでいただければ割引価格で受講可能です。
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「「ヴーーーッ」-。日も傾きかけたメイン球場で、声にならない悲鳴が次々と上がった。若手6人で行われた全体練習後の特打。ロングティーに取り組んでいた斐紹が、脚を押さえ苦悶(くもん)の表情でグラウンドに倒れ込んだ。その直前には牧原が同じようにもん絶。釜元、黒瀬も同様にスイング中に足をつり、黒土の上でのたうち回った。」
怪しい小説の一節ではない。某スポーツ紙の記事からの転用である。記事の書き出しは「地獄の秋がスタート! 来季の王座奪回へ向け、ホークスの宮崎秋季キャンプが「悲鳴」とともに始まった。工藤公康監督(53)の予告通りに、初日からハードな走り込みを実施。中でも選手が悲鳴を上げたのは100メートル走10本×4セットのインターバル走だ。」とある。日本シリーズが終わり、プロ野球では早くも来季の話題で持ちきりである。
このような壮絶な記事の内容だが過重労働やパワハラ、モラハラはてはセクハラなどの問題を言い出す選手はいない。また、労働基準監督署も放置している。記事を読む限り、少なくともパワハラは誰の目から見ても明らかである。しかしこれが問題にならないのは、選手達の相互の信頼と来季への夢があるからだ。
監督の厳しい指導でもそこに信頼があれば、愛のムチとなる。ゴム会社で高純度SiCの事業化を担当していたときに、第三者が見たときに世間言うところの過重労働やパワハラが明らかに存在し、最後はFDを壊される業務妨害である。また、担当前の企画段階では、それを解答にした昇進試験で0点をつけて落とされている。
それでも推進したのは、研究所を建て先行投資をしてくださった経営陣の期待に応えるためだった。またU本部長は厳しかったが信頼できる方だった。I本部長に代わってからおかしくなった。そして事件が起き転職することになるのだが、昨今の話題である過重労働やパワハラは、職場の人間関係や相互の信頼で多くは解決できるのではないかと思われる。プロ野球の厳しい練習風景の記事を読み、相互の信頼と将来の夢の共有化が日本の職場で無くなってきたのではないか(注)と心配している。
「考え抜いた末、日本ハムに入りましたが、この4年間を振り返ると、これ以上ない環境の中でプレーさせていただいたと感謝しています。あのときの選択は間違っていなかったと。自分が成長していく上で、どういうところに身を置くかって、すごく大事なことなんだということが分かりました。」
これもスポーツ記事からの抜粋だが、当方は、いろいろなことがあったにもかかわらず、ゴム会社と写真会社両者で勤務できたことは、ドラッカーの著書を理解し実践するために大変役だったと思っている。両社で、当方がいなければ絶対に実現出来なかった、と言っていただける成果を出すことができ幸せである。当方でなければ解決できないご相談をお待ちしています。
(注)相互の信頼があると思って部下に厳しい言葉を言ってはならない。パワハラ、セクハラなどのハラスメントは相手がそのように取ったときにアウトである。そのため昨今の職場では紳士の言葉遣いの上司が増加中である。それでもハラスメント事件が起きているのである。本質として信頼関係が成立していない職場が増えているからである。
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カオス混合プラントが無事立ち上がり、複写機のいくつかの新製品も順調に上市され、2010年に早期退職しようと思っていたら、環境対応樹脂を開発してほしい、と言われた。
人事に2010年退職した場合と2011年に退職した場合、そして定年までいた場合と退職金等の計算をしていただいたら、どこで退職しても変わらないという。早期退職のシステムがそのようにできているからだそうだ。
そこで2011年3月11日(金)を最終日として、環境対応樹脂の開発に1年間取り組むことにした。ポリ乳酸は高いので、PETボトルのリサイクル樹脂を使ったらどうか、という提案があり、面白いと思った。提案している人は、PETという樹脂が射出成形に向いていないので、押出成形やブロー成形に使われていることを知らない。
さらにPETという樹脂は溶融粘度が低いので難燃化しにくい。すなわち複写機の外装材ではUL94-5VBという高度な難燃化レベルを達成しなければいけないので、PET含有率50%以上の樹脂ではその材料設計がかなり難しくなる。おまけにコストダウンも目標になっているので、高価な難燃剤を用いることができない。
コストの制約から1年後の開発目標として不可能なレベルだと言ったら、内装材だけでもPETボトルのリサイクル材が使えないか、と言われた。
内装材ならばUL94-V2レベルとなり、溶融型の難燃化手法が使えるので、問題は精密成型可能な樹脂設計をどのように行うのか、という問題だけである。これは、溶融時のレオロジーを調整すればよいので簡単な問題であるが、溶融型の難燃化手法と二律背反になる懸念がある。二言三言言いたかったが、とにかくできたならどこにでも使ってもらえるのか、と一言質問したら、力学物性さえ満たせば使う、と当たり前の回答が返ってきた。
こんなやり取りでスタートしたが、細かなミスにも関わらず組織がうまく機能していたので、退職前に無事樹脂は完成し、新製品に採用された。会社最後の出勤日は、最終講演とパーティーが用意されたが、東日本大震災のためすべて吹っ飛んだ。ゴム会社の退職時の送別会も退職してからの開催だったが、写真会社も結局退職してから有志だけの会が行われた。
ゴム会社と写真会社では勤続年数が異なるが、ゴム会社の方が長く勤めていたような錯覚があるのは、高純度SiCの仕事で勤務時間が長かったからかもしれない。ゴム会社と全く異なる風土の写真会社は、およそ2倍の年月勤務したが短いような印象がある。
退職後の印象も大きく異なる。写真会社を退職後、部下が環境対応樹脂の仕事が社長賞を受賞したことを知らせてきた。そしてその記念品を贈ってくれた。ありあわせの段ボール箱につめて無造作に送られてきた記念品だったが、涙が出るほど感動した。
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オーディオ用カセットテープが流行しているという。今から10年以上前に、大量にあった音楽用カセットテープの音をすべてCD-ROMに落とした。CD-ROMは一応オーディオ用を用いたのだが、10年以上経過したCD-ROMの中には、色素が劣化して読み取れないものが見つかり、2年ほど前に慌ててHDへすべて録音しなおした。
10枚ほどのCD-ROMが読み取り不良になっていた。カセットテープはすでに廃棄した後なので10枚分の音源を失ったことになる。ただMP3に圧縮してバックアップも作っていたので、大半の音源を救うことができた。学生時代に購入したレコードは、未だに懐かしく良い音で聞けるのだが、デジタルの脆弱さに驚いている。
カセットテープはCD-ROM化した時にすべて廃棄したのだが、たまたま1本廃棄し忘れたカセットテープが出てきた。10年以上使っていなかったオーディオデッキを動かしてみたところ、動作しない。モーターの回転する音がかすかに聞こえるのでプーリーに使われているゴムがダメになった可能性が高い。
オーディオデッキを分解してみたところ、予想はあたり、劣化しプーリーに張り付いていたゴムを見つけた。3本使われていたので、サイズを計り秋葉原まで出かけた。500円程度で無事オーディオデッキが復活した。
音楽を聴きながら、今カセットテープが流行する理由がわかった。中音領域から低音領域のぬくもりがデジタルでは再現されないのだ。おそらくデジタル信号として再現はされているのだろうが、中低音領域の微妙なニュアンスがデジタルでは聞き取れない。
アナログからデジタルに変わった時に、そのSN比の高さに驚かされ、一気にアナログメディアをデジタル化したが、逆にデジタルからアナログに回帰してみるとその時に気がつかなかった中低音の再現性にアナログの良さを見つけた。
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11月15日に問題解決法の講演会( https://www.rdsc.co.jp/seminar/161116 )が企画されている。そこでネットで話題になっているピコ太郎にふれるかどうか悩んでいる。このピコ太郎の笑いは、ひらめきというモノを説明するのに良い題材なのだ。
ただ、ピコ太郎を見てすぐに吹き出す人と吹き出さない人がいるので迷っている。当方は後者であるが、吹き出さなかった理由は、たまたま問題解決法のプレ資料を作っているときに見て感動したからだ。カンのいい人には、事前にオチがわかる芸であるが、そのオチを真剣にリズミカルにやっているところが凄い。さらにあまりにリズミカルなので、事前にオチが分からなかった人は、最後のオチで意味が分かり吹き出すことになる(注)。
この芸では、オチが事前にわかった人と、オチが全く分からない人は終わっても吹き出すには至らないが、オチが事前に分かった人は、この芸に感心することになる点が凄いところである。ゆえに、TVでも多くのお笑い芸人がこの芸を賞賛している。
ピコ太郎をご存じ無い方は、YOU TUBEをご覧になっていただきたいが、これで吹き出せるかどうか、また吹き出せずばかばかしい、と感じるかどうかは、その人がアイデアマンかどうかの分かれ道になるのでは、とも思っている。ここでばかばかしい、と感じる人で事前にオチが分かってばかばかしいと感じた人はアイデアが閃きやすい人であるが、最後まで聞いてもオチの理解ができなかった人は、少し訓練する必要がある。また、その訓練方法もある。
まさにこのピコ太郎はアイデアのひらめきがどのようなモノであるかを教えてくれるすばらしい芸であるが、この芸人が昔「マネーの虎」という番組に出ていたことを知っているマニアックな人は少ないと思う。
(注)このオチを英語で理解できるので国際的にヒットしているのである。だから英語が分からない人には少しきつい芸かもしれない。ただ、今時の若い人は、「I have a pen」程度の英語は理解できるので日本人でも受けることになる。
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車内で化粧をする女性はマナー違反か、という議論が盛んである。きっかけは某電車のつり広告だが、その人の公衆の面前の行動がマナー違反かどうかは、その社会のメンバーが公衆道徳をどのように考えているかどうかに左右されると思う。
すなわち、車内で化粧をする女性はマナー違反かどうか、という議論は、男の立小便がマナー違反かどうか、という議論と等価である、と思っている。大半の男性の意識は進化したので、男の特権であった立小便の議論などばかばかしくてやらない。また、今は軽犯罪法に引っ掛かる扱いなので等価であるというのは乱暴かもしれないが、女性の電車内化粧と同様に、立小便が日常の習慣として見られた時代もあったのだ。そしてそのマナーについての議論がなされた歴史がある。
以前国民栄誉賞の受賞を断った野球人がいらっしゃった。その理由が”受賞すればその辺で立小便ができなくなるから”だという。最初は冗談かと思っていたら、実際にインタビューでそのように答えていたので感心した。すなわち、この方は立小便を法律違反だと解っていても男の本能として立小便をしたい、それで賞をけがすといけないので辞退されたのだ。いつまでも態度を明確にしないボブディランよりも潔い。
子供の頃、街の道路の脇には側溝があり、常時生活排水がむき出しの状態で流れていた。だから、その側溝で立小便をする人が多数いた。男性の大人や子供だけでなく、たまに老女がお尻をつきだしていた光景も目にした。日常皆が習慣でやっている光景は、進化した人類にはマナー違反と映っても無くならない。
当方は、それをマナー違反だと進歩的な親から躾けられた。だからそれを日常の習慣とする男性が多数いたとしても、当方は絶対に公衆の面前で立小便をしないと物心ついた時から固い決意をして生きてきた。しかし、街から側溝が消えても中学校にあがるくらいまで立小便の光景は無くならなかった。今でも強烈な記憶として残っているのが、高校生の時に、朝早く散歩途中の老女がお尻をつきだして立小便をしていた光景に遭遇してしまったことである。少なくとも50年くらい前は、立小便と言う現代の人類から見たらマナー違反と呼ばれる習慣が残っていた。
中国に行くと、今でも立小便をする大人や子供をみることができる。また中国人旅行者が子供に立小便させている光景を秋葉原で見かけたこともある。驚いたことに、お巡りさんは見て見ぬふりをしていた。中国ではどのような議論がなされているのかしらないが、立小便と言う習慣を良いと思っている人がいるようだ。
電車内の化粧もこれと同じである。もっとも電車内の化粧は高度経済成長末期の頃から、すなわち今から25年ほど前から増えてきたように思う。昔学生時代にボーイフレンドに隠れながら申し訳なさそうに化粧をしているOLを目撃したのが電車内化粧の目撃初体験である。ところが今や堂々と化粧をしている。香りの公害など気にせず、また他人の洋服を汚しても謝らない傍若無人ぶりである。
電車内の化粧は女性の社会進出とともに顕在化してきた習慣で、古くから伝統的に存在した立小便とは比較できない、と言われるかもしれないが、当方の目には老女の尻を突き出した立小便と同じ光景に見えてしまう。
マナー違反かどうかという議論の前に、電車の中で化粧をされている方は、男性諸氏に立小便と同様の視線を受けているということを意識していただきたい。少なくとも当方は女性の電車内の化粧をみると、老女の尻を突き出した光景とが重なり不快である。これは、偏見だと非難されても、そのように親に躾けられたのでどうしようもないトラウマのようなものである。楽屋裏を見る、見ないという次元の意味ではなく、それをみると立小便と同じように見えて不快な人がいる、ということを意識してもらいたい。
高校生の時に出会った老女は、あたかもゴキブリと遭遇したときのように凍り付いて身動き取れない当方に「おはよう」といってきた。それが習慣の人には、たとえ悪いマナーであっても、他人に大きな迷惑をかけているわけではないと、その人の中で正当化されているのだろう。
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燃焼時の熱でボロンホスフェートを合成し、基材の高分子を難燃化するアイデアは、当時として画期的であった。しかし、貯蔵安定性にすぐれたホウ酸エステルの分子設計が問題となった。すなわち、簡単な構造のジオールとホウ酸から合成されるホウ酸エステルでは耐水性が無いので、工場で使用できない。
しかし、この問題はたまたま実験室にジエタノールアミンがあったので、簡単に解決できた。もっともポリウレタンの研究開発を行う部門だったので、ジオール類は一通りそろっていた、という好条件が幸いした。運が良かったのだ。
ホウ酸とジエタノールアミンとの反応は簡単だった。両者を混合し、100℃で1時間程度攪拌するだけで合成された。水が副生するが、軟質ポリウレタンフォームでは発泡剤として水を使用するので脱水する必要は無かった。
面白いのは、脱水しなくてもホウ酸エステルの構造で安定に存在している現象だった。マススペクトルで、6ケ月経過後のホウ酸エステルを評価しても合成直後と変わらなかった。また、ポリウレタンの反応にもジエタノールアミンの効果を考慮すれば、影響がないと結論できた。
ホウ酸エステルとリン酸エステルを併用して軟質ポリウレタンに添加したところ、期待通りの高い難燃効果が得られ、燃焼後の残渣には材料設計通りボロンホスフェートが残っていた。
指導社員の指示で、市販の主だったリン酸エステルとの組み合わせについて実験を行った。50配合程度評価したので、その燃焼結果を多変量解析した。その結果、統計学的にもホウ素とリンとの交互効果が確認された。リン酸エステルについて主成分分析を行い、化合物の分類をしてはいたが、残渣分析の結果からは、リン酸エステルの構造の影響はほとんど無かった。
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始末書を書くことになったホスファゼン変性軟質ポリウレタンの開発により、炭化促進型難燃化システム(インツメッセント系の難燃化システム)の設計法を見出した。その設計法が汎用的な考え方かどうか確認するために、ホウ酸エステルとリン酸エステルとの併用系の難燃化システムを研究開発した。
そもそもリン系の難燃剤では、燃焼時の熱と酸素でオルソリン酸が生成し、240℃以上で揮発する。リン酸のユニットが脱水と炭化反応の触媒作用を発揮しているのだが、燃焼時には炭化反応に寄与するやいなや揮発している。
リン酸エステル系難燃剤を添加し、難燃化した軟質ポリウレタンフォームの燃焼試験を行うとそのことを確認できる。すなわち、燃焼時のガスの中にはリン酸成分が観察されるし、燃焼後の炭化物について分析するとほとんどリンのユニットが残っていない。
ところがホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの燃焼試験をして驚いた。まず煤の発生がほとんどなく(注)、ガス分析を行ってもリン成分が燃焼ガスに観察されない(注)。燃焼後の炭化物を分析するとホスファゼン分解物が添加量に相当する量で残っていた。
そこで燃焼時にリンを含む単位を揮発しないように固定化するアイデアを考案した。すなわちホウ酸エステルと反応させてボロンホスフェートの形態にすることを提案した。始末書に書かれたこのコンセプトは主任研究員に大うけした。始末書としては0点だったかもしれないが、とりあえずこのアイデアでご機嫌を取ることができた。
(注1)煤は不完全燃焼で発生する。しかし、煤として飛散するまえにチャー(燃焼面にできる炭化物のことをこのように呼ぶ)に変化させる機能がホスファゼンには(リンのユニットには)触媒作用として存在する。ホスファゼンでは、その耐熱性のある骨格で触媒作用を示すリンのユニットが揮発しない。一般的なリン酸エステルでは、熱分解してオルソリン酸に変化する。エクソリットのような金属イオンが存在したリン酸エステルでは、ホスファゼン同様にリンのユニットが揮発しにくい。
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ホスファゼンのポリマーには、P=Nを線状につないだポリマーと、環状のまま重合させたタイプとがある。ホスファゼン変性軟質ポリウレタンでは、ホスファゼン環(ジアミノ体)とイソシアネート系化合物を反応させて、有機無機ハイブリッドポリマーを合成している。
このハイブリッドポリマーに含まれるホスファゼンブロックは、難燃機能以外にポリマーの可塑化機能も有している。ポリエーテル系軟質ポリウレタンでは、ポリエーテル部分がエラストマーの機能を発揮するので、ホスファゼンブロックの可塑化効果は大きく表れない。
既存商品のスペックと同等の軟質ポリウレタンを開発する必要から、ホスファゼンブロックをポリエーテルセグメントに入らないように分子設計した。その結果、Tgも含め諸物性は未変性品とほとんど変わらない軟質ポリウレタンを合成できた。
社会に出て初めて学生時代に学んだ知識を仕事に適用したのだが、力学物性のコントロールには、この仕事を担当する前の3ケ月間に学んだ知識が活用された。ホスファゼンについては、大学院を修了し、就職までの二週間の春休み期間中に大学院で在籍した講座の先生に許しを得て、少し研究していた。
今時の学生は、社会人前に卒業旅行というのが定番のようだが、ドラッカーが愛読書だった当方は、社会に出る前に少しでも知識を詰め込んでおこうと努力していた。春休みの二週間では、一日24時間しかないのでいくら頑張ってもホスファゼンの精製と各種ジアミノ体の合成程度しかできなかったが、ショートコミュニケーションにまとめられる程度の実験データが得られた(注)。
ホスファゼン誘導体について当時の状況を一言で書くと、ファイアーストーン社でエラストマーの実用化が発表され、新素材として注目を浴びつつある時代だった。当方がゴム会社に就職したのもこの情報の影響を少し受けた。
ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの開発では、春休みに合成したホスファゼンが使われた。教授から記念品としていただいたのだが、35年ほど前にはこのあたりの管理はゆるかった。始末書を書きながら反省していた記憶がある。しかし、小保方氏の「あの日」を読み今でも管理がゆるい研究組織が存在していることに驚いた。
(注)ゴム会社に就職して10月までは新入社員研修だった。この期間に、報文を二報ほどまとめ大学の先生に提出している。ホスファゼンを頂いたお礼である。ホスファゼンの原料は安価だが、ホスファゼンは日本で市販されたばかりで高価だった。ご指導してくださった先生は少しユニークで、バケツで大量に合成する方法を教えてくださった。数百円程度の原料で、数キログラム合成できたので購入するよりも安価だった。ファイアーストーンで研究しているなら同じような**ストーンという名前の会社も研究するだろうと、餞別がわりにその先生が精製物をガラスに封管してプレゼントしてくださった。これがホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームに活かされた。40年ほど前の思い出である。卒業旅行も楽しいかもしれないが、夢をみながらの研究も楽しい。
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始末書を提出した後に調査をして慌てた。市販のホウ酸エステルを使う、と書いたが、ホウ酸エステルが市販されていなかったのだ。リン酸エステルは難燃剤や可塑剤として多数の種類が市販されていた。
調査もしないで適当に浮かんだアイデアで始末書を書いたために、いざ企画書をまとめ始めて困った。市販されていないホウ酸エステルをどのように調達するのか、悩んだ。
指導社員は気楽だった。どのようなことがおきてもいつも美しさを保ち悠然と構えているような人だったので、気楽に見えたのかもしれない。当方が書いたのだから何とかしなさい、と言うだけだった。調査を進めたところさらに困った情報が出てきた。ホウ酸とジオールとのエステル類は加水分解しやすく貯蔵安定性が全くないのだ。
実際に合成してみたところ、脱水しなければすぐにホウ酸が析出する。さあ大変だ、と慌てて走り回り実験室を見渡したところ、ジエタノールアミンを見つけた。このジエタノールアミンでホウ酸をエステル化したところ、不思議なことに安定な化合物ができた。セレンディピティーとはこのようなことを言うのかもしれない。
独身寮に帰り、分子模型を組み立てたところ、ジエタノールアミンのNがうまくホウ素原子に配位するモデルを組み立てることができた。翌日図書室に行き、文献検索を行ったところ、過去文献にホウ酸とジエタノールアミンの情報が出ていた。しかし、難燃剤としてではなく防錆剤としての応用で、その情報から安定な化合物であることを確認できた。
始末書を提出して1週間後、リベンジできそうな新規炭化促進型難燃化システムの企画書が出来上がった。指導社員は、あとは本当にガラスができるかどうかだけね、と言われたが、ホウ酸エステルとリン酸エステルとの反応でボロンホスフェートができることを知っていたので、それには自信があると応え、翌日からサービス残業の生活が始まった。
真摯に成果を考えたときに、その成果に集中すると、人間関係は、組織の道具としての一部品となる。人間関係が良いと、組織への働きかけは容易だが、仮に悪くても組織が何とか機能しておれば成果は出せる。人間関係に依存しない組織と成果に集中することが大切である。成果と無関係の属性に目を奪われているとひどい目に合う。
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