40年近く前にJIS化されたLOIは、酸素と窒素の混合気体の雰囲気の中に細長い板状のサンプルを立て、その上端に着火して燃焼状態を観察する試験法である。
この試験法では、継続して燃焼するために必要となる最低限の酸素濃度を指数化して、材料の難燃性を評価する。
測定手順から理にかなった燃焼試験法に思われるが、実火災において、この尺度で求められた難燃性の評価が不適切な場合もある。
例えば、空気の酸素濃度は約21%なので、LOIが21以下となるように寝具を材料設計していたならば、寝タバコの火が寝具に着火して火災につながる危険性がある。
しかし、LOIが21以下でも燃焼が広がらない安全な材料を設計する方法がある。それは熱で簡単に溶融し自己消火する材料設計手法である。このように設計された材料では、寝たばこ程度で着火しても、溶融時の吸熱効果で火が消える。この難燃化手法は溶融型難燃化システムあるいは溶融ドリップ型難燃化システムと呼ばれている。
この考え方で、PETボトルのリサイクル材(以下R-PET)を80wt%含有し、射出成形可能な難燃性ポリマーアロイを高価な難燃剤を用いないで開発した。
この樹脂の配合において20wt%に相当する組成は、射出成型が難しいPET樹脂を容易に射出成形できるようにするための成分や、靱性向上のため添加され混練プロセスで動的架橋されたゴム成分、弾性率を向上できる成分、溶融型で難燃性機能を付与する成分などである。
すなわち、このポリマーアロイは強相関ソフトマテリアルの概念で設計されており、それ専用の手法で開発された材料である。
この材料は、R-PETが80wt%含まれるポリマーアロイなのでLOIは18程度となるが、UL94-V2試験ではドリップ効果により自己消火性となり合格する。
LOIによる難燃性評価では空気中で燃焼し続けると判定された材料でも、自己消火性と判定される試験法に疑問を持たれるかもしれない。これは、それぞれの試験法においてサンプルへ着火する方法が異なる点に原因がある。
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計算機化学の有効性が言われてから40年近くになるが、実際の現場でシミュレーションを用いた処方設計の事例は多くない。
40年近く前、粘弾性論に基づく数値解析により防振ゴムを設計した経験がある。また、パーコレーションをシミュレートできるプログラムを開発して、フィルムの帯電防止層やカラー複写機用中間転写ベルトを開発した経験もあるが、プログラム開発時間を含めなければ、大変効率の良い方法である。
パーコレーションについては、1960年代に数学の世界でその理論がほぼ完成し、1990年代に材料開発へ応用されるようになった。真球の導電体を絶縁体に分散したときに、クラスターを生成しやすい条件と、クラスターが生成しにくい条件とを比較したシミュレーションを行うと、体積分率で0.3から0.6の領域で導電性がばらつき、それが確率に支配されていることを理解できる。
詳細は省略するが、酸化スズゾルをポリマーバインダーに分散したときに生じるパーコレーションの様子をこのプログラムで計算し、20vol%未満でもパーコレーション転移が生じることがわかり、酸化スズの添加量が18vol%という低い値で帯電防止層を設計し実用化している。
電顕写真で帯電防止層の断面写真を観察すると、ポリマーアロイバインダーにネットワークを形成して酸化スズゾルが分散している様子を観察することができる。
この技術は50年以上前に発明され、その後シミュレーションを行わず検討していたときには、帯電防止層に使えない材料という結論が出されていた技術だった。
再度開発を行う時に、シミュレーションで現象を見直し、新たにバインダーやプロセシングを改良して開発に成功した。
ところで、高分子のシミュレーターとしてOCTAが有名であるが、こちらは2040年頃になれば処方設計にも使えるようになると一部で言われている。しかし、高分子物理がまだ発展途上なので、現在のところOCTAも開発途上という位置づけになる。ただし、無料ソフトウェアーが配布され、それを利用できる環境は整っている。
OCTAの普及とともにバネとダッシュポットのモデルを使用する旧来の粘弾性論は、高分子分野では形式知の遺物になると思われる。
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タグチメソッドが日本で普及してきた。この手法で多数の制御因子を解析するときには、制御因子をラテン方格に割りつけ、基本機能のSN比でこれを評価する。うまく実験計画を組めば、二律背反に陥る心配は無いので便利な手法である。
タグチメソッドと似ているが、統計手法である実験計画法でも同一の実験環境で多数の処方因子を評価できる。しかし、これは単相関の実験を効率的に行う方法であり、単相関で解析する時と同様に二律背反に陥ることがある。
さらに実験計画法では、タグチメソッドのように再現性の良い実験結果が得られない場合もある。実験計画法もタグチメソッドもラテン方格を用いるので同じものだと誤解している人が多いが、これらはまったくその実験思想が異なっている。
多数の処方因子を評価解析する手法として多変量解析も用いられる。ただし注意しなければいけないのは、重回帰分析を行うときには各変数の一次独立性を吟味しなければいけない点である。
各変数の間に従属関係があると、重回帰分析で相関係数の高い式が得られても使えない。このような場合には、段階式重回帰分析や各変数を一度主成分分析で一次独立に変換してから重回帰分析する手法が使われる。
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この3年間、弊社が中国で活動してきました成果を踏まえ、5月までに3件ほど混練技術に関する講演会を開催致しました。
いずれも異なるセミナー会社の主催で行われましたが、リクエストがございましたので下記予定で7月と8月も開催します。一部内容は重複致しますが、過去の講演と同様に新規内容を盛り込み企画しています。また、弊社で現在展開しております二軸混練装置の販売につきましても状況をご報告させていただきます。
7月の講演会では、樹脂用の新添加剤のご紹介をさせていただきます。また、カオス混合技術につきましても過去の講演会同様に解説致します。
8月の講演会におきましては、シランカップリング剤の添加では問題解決できなかった熱電導樹脂を事例に、フィラーの分散制御技術の盲点を独自の視点で解説致します。
お申し込みは、弊社インフォメーションルームへお問い合わせください。詳細のご案内を電子メールにてさせていただきます。弊社で申し込まれましたお客様につきましては特典がございますので是非お問い合わせください。
1.樹脂・ゴムの配合・混練技術の基礎とそのノウハウおよびトラブル対策
(1)日時 7月7日 10時30分-17時30分まで
(2)場所:【東京】日本テクノセンター研修室
(3)参加費:48,600円
*日本製と同等品質の安価な二軸混練機の紹介も致します。その他カオス混合装置の紹介や新たな難燃化技術につきましてもご説明致します。
2.機能性高分子におけるフィラーの分散制御技術と処方設計
(1)日時 8月25日 13時-16時30分まで
(2)場所:高橋ビルヂング(東宝土地(株)) 会議室 (東京都千代田区神田神保町3-2)
(3)参加費:43,200円
*新たに開発した樹脂の新添加剤及びその応用製品につきましてもご紹介させていただきます。
以上
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ゴムや樹脂の新しい配合を開発するとき、主成分となるポリマーを100部とし、この値を基準にして、必要な各種添加剤の部数を計算する。
そして、各種添加剤の部数を数点変量して処方された材料の成形体について諸物性を評価して表にまとめ、目的とする品質を実現出来る配合を探索する。
同時に、添加剤を横軸にし測定された物性を縦軸にしたグラフで配合部数の変化に対する物性変化を読み取り、最適な配合量を探ったりする。
ポリマーそのものの分子設計を行う場合には、基準配合を用いて、様々な条件で合成されたポリマーをその基準配合で処方し、成形体を作成して物性評価を行う。
これらの場合に、単相関の解析で材料設計を進める手法はよく行われるが、この方法で困るのは、二律背反の物性が観察されたときである。
二律背反とは、配合因子がお互いに交絡しており、ある物性を改善しようとその物性を制御できる因子を最適化した時に他の物性が悪くなってしまう現象である。因子をすり合わせて、適当な物性で品質を満たせるように解決できればよいが、大半は失敗する。
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麻生氏の「90過ぎて、老後が心配と、お前いつまで生きるつもりだ」という発言が問題になっているそうだ。老人の蓄財をいさめたのが真意らしいが、父親の寿命だった100歳まで生きようと考えている身には、少し考えさせられた。
この発言が問題だと言う意味ではない。100歳までと言う目標を90歳までに変更する必要があるのかもしれない、という心配である。これまで会う人に事業を始めた行動について聞かれると、100歳まで生きるつもりで、と答えてきたが、不愉快に思っている人もいるのかもしれないと考えさせられた。
寿命を意識するようになってから日本人の平均寿命は10歳以上伸びた。金さん銀さんの双子がTV番組で取り上げられたときは、100歳がまだ珍しい時代だったが、今はその辺に100歳の人を見かけるぐらい一般的になった。
それで100歳まで生きるつもりで、と思うようになったのだが、まだ90歳までという感覚の方が良いかもしれない、と麻生氏の発言から感じた。
サラリーマンの定年については会社で決まっているので、自分でその目標を決定できるのは早期退職ぐらいである。父親の定年と同じ55歳と目標設定してみても、テーマの都合で当方は2年長く会社に勤めることになった。その結果東日本大震災の日が最後の出勤日となる不幸に見舞われた。
この時には55歳で辞めておけばと一瞬思ったが、1年間すごした事務所で帰宅難民として徹夜して、まだ会社に貢献できたので定年まで勤めていた方が良かったかもしれない、と思うようになった。
人間の寿命ではこうはいかないだろう。人生最後のお迎えが来たなら、後悔などしておれないないからだ。この意味で、麻生氏の発言は、まっとうな発言なのである。90過ぎて自分の老後を心配しているようではいけないのである。
残った人生の心配など忘れ楽しく生きなければいけない。それこそ寿命もお金も使い果たすぐらいに本当に死ぬ気で一生懸命生きないといけないのである。もし90以上の老人が蓄財をやめ、消費に一生懸命になったら日本経済は活性化するかもしれない、その意味で麻生氏は発言したのである。
「「老後が心配」といつまで思うのか」は、なかなかいい問いである。90過ぎたら本当に死ぬ気で一生懸命生きる必要がある、麻生氏の言葉はそのように聞こえた。80までは生きるつもりで働き、90までは最後の準備を行い、90過ぎたら死ぬ気で一生懸命生きる、それが長寿となった人生の幸せな姿の一つかもしれない。
亡父は当方がゴム会社から転職したころ、80歳から、もう来年はダメかもしれない、と言いつつ100歳まで生きた。今から思えば、高純度SiCの事業を住友金属工業とのJVという形で立ち上げ成功したにもかかわらず、当方のFDへいたずらされた事件に対して、被害者でありながら「転職」という、当方の決断に満足していたのかもしれない。ドラッカーが愛読書だった亡父の口癖は「誠実と真摯」だった。
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技術が科学を追い越したときに困るのは、周囲へ技術を説明する方法である。できあがった技術があるならば、まだ易しいが、これから科学では否定される技術を開発します、と言ったなら誰も相手にしない。
ゴム会社で提案した高純度SiCの技術(日本化学会技術賞受賞)もそうだったが、左遷され単身赴任した時に担当した中間転写ベルトの仕事は、科学の方法では失敗することが予見できた技術である。当時所属していたテクノロジーセンターでは一部の技術を担当していたが、誰も成功すると思っていなかった。それでもそれを担当してこい、と単身赴任することになったのである。
退職を間近に控えたサラリーマンとしてこれほど悲しい役割は無い、と思ったが、写真会社の14年間に酸化スズゾルの帯電防止層の開発(日本化学工業協会技術特別賞受賞)や変異原性のある材料を排除した接着技術、ゾルをミセルに用いたラテックス合成技術(写真学会ゼラチン賞受賞)、インピーダンスを用いた帯電評価技術、PENの巻き癖解消技術、色ずれしないプルーフの重要な技術(商品開発担当者が印刷学会賞を受賞)など数々の成果を出した意地があった。
悲しい役割と捉えるのではなく、転職者として多くの成果を出した当方ならばできるだろうと期待されての仕事として、前向きに捉え仕事に臨んだ。また、その時世の中には左遷という人事は無い、と言う人もいた。しかし給与が下がれば左遷だろうとその人に質問したら、今は皆給与が下がっている、という回答。前向きに仕事を捉えつつも、サラリーマンとしてこのような無駄な議論も当時している。
ただ、無駄な議論のおかげで腹が据わり、早期退職を決意して少し博打をする気持ちも生まれた。当方が日頃考えてきた方法を100%そのプロセスで使い、マネジメントしてみようと考えた。しかし、この企みは、新しく部下となったまじめなマネージャーにより一瞬につぶされた。仕方が無いので、それまでやってきたように科学の方法を表面にだし、当方一人で技術の方法による開発を進めることにした。
そのため、中間転写ベルトの製品搭載決定まで半年という短期間で効率的に行うために、弊社の販売している研究開発必勝法を用いた。この研究開発必勝法の基本的考え方について、未来技術研究所(http://miragiken.com)活動報告「科学と技術」に紹介している。
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この3年間、弊社が中国で活動してきました成果を踏まえ、5月までに3件ほど混練技術に関する講演会を開催致しました。
いずれも異なるセミナー会社の主催で行われましたが、リクエストがございましたので下記予定で7月と8月も開催します。一部内容は重複致しますが、過去の講演と同様に新規内容を盛り込み企画しています。また、弊社で現在展開しております二軸混練装置の販売につきましても状況をご報告させていただきます。
7月の講演会では、樹脂用の新添加剤のご紹介をさせていただきます。また、カオス混合技術につきましても過去の講演会同様に解説致します。
8月の講演会におきましては、シランカップリング剤の添加では問題解決できなかった熱電導樹脂を事例に、フィラーの分散制御技術の盲点を独自の視点で解説致します。
お申し込みは、弊社インフォメーションルームへお問い合わせください。詳細のご案内を電子メールにてさせていただきます。弊社で申し込まれましたお客様につきましては特典がございますので是非お問い合わせください。
1.樹脂・ゴムの配合・混練技術の基礎とそのノウハウおよびトラブル対策
(1)日時 7月7日 10時30分-17時30分まで
(2)場所:【東京】日本テクノセンター研修室
(3)参加費:48,600円
*新たに開発しました難燃化技術につきましてもご説明いたします。
2.機能性高分子におけるフィラーの分散制御技術と処方設計
(1)日時 8月25日 13時-16時30分まで
(2)場所:高橋ビルヂング(東宝土地(株)) 会議室 (東京都千代田区神田神保町3-2)
(3)参加費:43,200円
*新たに開発しましたLED用熱伝導樹脂につきましてもご説明いたします。また、新規難燃化手法に用いる材料の紹介もさせていただきます。
以上
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昨日桝添氏の辞職が決まった。いつ辞職するのか連日ワイドショーで報じられていたが、猪瀬氏の裏事情に関するコメントもあり、ご自分で辞職のタイミングを決められない状況もあったようだ。
豪華な海外出張はじめ桝添氏の道義的責任に端を発した問題はようやく決着した。桝添氏の場合には、8割以上の都民が早く辞めて欲しい、と思っていたのだから早く辞職すべきだったと思う。
それが、「一流都市の知事が二流のホテルに泊まって恥ずかしくありませんか」というとんでもない開き直りで、周囲の事情よりも本人が辞職する必要無しと考えていたところが見られる。まったく不誠実な人である。
ドラッカーは誠実で真摯な人をリーダーに選ぶべきと述べている。当たり前の話であるが、これを社会で実践することは結構難しい。誠実真摯に生きることは苦労を当たり前として受け入れる勇気が必要で、そのような人を見極める目は、選ぶ側にもある程度誠実で真摯な生き方を理解できる生活態度が求められる。
そもそも63年の今までの人生で誠実で真摯と思われる人物に出会った経験は数えるほどしかない。プチ誠実真摯な人は多いが、その中には口先で装っている似非誠実真摯な人もいた。
桝添氏もその著書を読む限りは誠実真摯な人柄に見えるが、実際の行動に現れた人柄は似非誠実真摯であるだけでなく、一連のドタバタからは傲慢な専制君主的な人柄が伺われた。だから日に日に都民から辞職を求める声が高くなり、80%以上にも達したのだ。
猪瀬氏は政治家の進退の難しさを語り桝添氏を擁護したが、それでも都民の怒りは収まらなかった。辞職の決意に至るまでの言動を見る限り、本当に不誠実な人物だと誰もが感じたからだろう。スイートホテルの問題を指摘されたところで真摯に反省し、辞職しておれば少しは同情の声もあったかもしれない。しかし、第一声が開き直りともとれる傲慢な言い訳だった。
ゴム会社で高純度SiCの事業を住友金属工業とのJVとして立ち上げたときに、FDを壊される嫌がらせをうけた。もしあのとき犯人が素直に非を認めてくれたなら当方が辞めるまでに至らなかったが、問題を公にした当方は誠実について真摯に考え、一途に貢献のみを考え6年間の死の谷を我慢した思い出を大切にするため転職を決意した。
転職後はバブルがはじけて、転職先の部署がリストラされ、やがて窓際単身赴任と散々な人生だった。ただ、真摯に自己実現の努力を重ねゴム会社におけるセラミックスのキャリアをしのぐ高分子技術者として成長できたのではと思い、現在の業務に励んでいる。7月と8月には下記セミナーを行います。
1.樹脂・ゴムの配合・混練技術の基礎とそのノウハウおよびトラブル対策
(1)日時 7月7日 10時30分-17時30分まで
(2)場所:【東京】日本テクノセンター研修室
(3)参加費:48,600円
2.機能性高分子におけるフィラーの分散制御技術と処方設計
(1)日時 8月25日 13時-16時30分まで
(2)場所:高橋ビルヂング(東宝土地(株)) 会議室 (東京都千代田区神田神保町3-2)
(3)参加費:43,200円
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1979年にゴム会社に就職したが、当時の高分子科学は今ほどの進歩は無かった。この40年間に高分子科学にはものすごい進歩があり、東工大中浜先生がリーダーとなり進められた「高分子精密制御プロジェクト」は、その中間点の進歩を産業界に導入するための役割として大きな成果をあげた。
また、そのプロジェクトよりも2年前に文科省のプロジェクトとして名古屋大学(当時)土井先生によりOCTA開発プロジェクトがスタートしている。このOCTAとは、高分子の本格的シミュレーターである。
アカデミアにおける進歩は、大学の授業の中身を見ても理解できる。当方が大学で学んだ高分子科学といえば重合が中心の科学である。すなわち合成化学の延長線上にある科学である。今は高分子物性論が必ず2単位どこの大学にも存在する。
当方も恥ずかしながらその特論として、2つの大学で特別講義を行っている。福井大学では、セラミックスから高分子材料まで含めた講義を客員教授として2単位分させていただいた経験がある。
セラミックスから高分子材料まで扱ったのは、1980年代に日本中を熱狂的にしたセラミックスフィーバーを経験し、ゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げた経験があったからだ。セラミックスと有機高分子では水と油のように全く異なった分野に見えるかもしれないが、その材料開発の方法論の視点では同じである。そこを伝えるために講義の内容は当方の開発体験を中心に構成した。
仮に科学の視点で見ても当方にはセラミックスも高分子材料も同じに見えるが、それぞれの専門家の先生方は全く異なる分野だという。材料科学として捉えてしまえば、金属だろうがセラミックスだろうが皆同じ土俵で議論できるはずだ。
粘弾性論はそのような視点で生まれた学問ではないだろうか。そして、高分子材料に適用してみて材料科学として幾つかの限界が指摘されている。今粘弾性は、高分子1本の粘弾性測定からはじまり、それを積み上げる形で研究が進められている。OCTAもそのような思想で考え出されたシミュレータで桁違いの大きさまでズーミングできる。
面白いのは未だに旧来の粘弾性論で高分子の論文を書いておられるアカデミアの先生がおられることだ。1979年にであった当方の指導社員はアカデミアに属していないがすでに粘弾性論が10年後には高分子材料で使われなくなる、と予言していた。当時は科学が技術を先導していた時代だったが、指導社員の言葉は技術が科学を先導し始める兆候と当方は捉えた。
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