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2015.12/13 ヒューマンプロセスによる問題解決法

イムレラカトシュは、その著書「方法の擁護」で完璧な科学的証明法は否定証明である、と述べている。わかりやすく言えば、新現象に潜む機能を技術として活用するときに、科学的方法に忠実になれば、「それはできない」という結論を導き出してしまう、ということだ。
 
優等生に開発をやらせるとモノはできないから注意せよ、とゴム会社でよく言われていた。実際に電気粘性流体の開発では、その耐久問題の解決法では否定証明が行われた。そして当方は、その「できない」と結論された方法で問題解決に成功した。
 
科学と非科学の対決構図となってしまったわけだが、20年以上前のことであり、研究所ブームの名残で科学第一主義の人が中核を占めていた時代だ。
 
科学と非科学は対決していても仕方が無いことで、科学誕生以前の問題解決法がすべて非科学的に行われていたことを理解できれば、科学と非科学を共存させて問題解決に当たる柔軟さこそ今の時代求められていることに気がつく。
 
非科学的方法で問題解決できるのか、という人はマッハ力学史を読んでいただきたい。古典力学は、非科学的方法で発展してきたのである。ニュートンは非科学的方法で万有引力を発見している。
 
最近では、山中博士が非科学的方法を使用してヤマナカファクターを発見したと述べておられる。また、ヒューマンプロセスによらなければ、一生かかっても見つけられなかった、とNHKの番組で語られていた。
 
ノーベル賞級の研究でさえ、躊躇なくヒューマンプロセスを用いているのである。日々の技術開発でヒューマンプロセスを用いて問題解決を行っても悪いはずがない。このような考え方と科学と非科学を組み合わせた効率的な問題解決法にご興味のある方は、是非弊社にご相談していただきたい。ビジネスにおける問題は、解決されてこそ価値がある。問題プロセスにおいて科学的方法だけに高い価値があるのではない。
 

 
 

カテゴリー : 一般

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2015.12/12 高分子の未溶融体

高分子には、室温で固体のものから液体のものまで存在する。室温で固体であっても、加熱すると溶融体に変化する高分子は、樹脂あるいは熱可塑性ゴムと呼ばれている。加熱しても溶融体にならず熱分解し、さらに高温度で熱処理すると炭化した残渣を大量に生ずる高分子も存在する。
 
高温度で溶融体を生ずる高分子や室温で液体の高分子についてその状態は、科学的に解明されているように思っている人が多いが、解明されているのは特殊な場合だけであり、大半は未解明と言っても良い状態である。その昔フローリーにより体系化された高分子科学は、高分子を溶媒に溶解した状態、それも2%未満の希薄溶液の状態で研究された成果である。
 
教科書に書かれた高分子の性質の大半はこの科学に基づいているため、実務で遭遇する高分子の姿はしばしば教科書とは異なる。ところが教科書と異なる非科学的現象に遭遇した時に無理やり教科書の記述で理解しようとする人が多いのにはびっくりした。
  
科学の時代なので、教科書に記述された事柄で理解を進めても不都合はないが、教科書の記述とは異なっている、あるいは教科書に書かれたパラダイムと異なっているという認識は持ってほしい。すなわち、科学的に論じても間違いが無い部分と科学的に不明な部分とを認識しながら現象を眺める習慣は、高分子材料を扱う時に重要である。
 
この習慣を忘れると、例えば、樹脂を融点(Tm)以上で加熱した時に流動性を示すようになるが、この融体が高分子一本一本ばらばらの状態で流動している、という誤解を生じる。この誤解を持ったまま現象を眺めていると、現場で絶対に解決できない問題を生み出すことになる(注)

 
大半の樹脂は、Tm以上で加熱し混合しても高分子一本一本ばらばらで均一な状態にならない。これは粘弾性測定の実験を注意深く行うとそのように納得できるデータが得られる。すなわち、融体に含まれる高分子の一部が未溶融で存在する、と仮定しなければ説明のつかない現象を見出すことができる。そしてこれが科学だけでは理解できない現象を引きおこす。

  
(注)そもそも実務で遭遇する現象の大半が非平衡状態であることを忘れているのが問題

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2015.12/11 射出成形体のボツ

射出成型では金型に樹脂が押し付けられるのでボツは発生しない、と思っていたら、昨年面白い体験をした。中国のローカル企業を指導して、高い難燃性を有するPC/ABSの独自処方を開発した時だ。
 
横軸にPCの含有率をとり、縦軸に衝撃強度や引張強度の値をとった軸でグラフを書いたところ、公知の変化を示すグラフが得られた。引張強度が10%程度グラフ全体で低めになっている点以外は、異常のないデータに見えた。
 
ただ、全サンプルが10%前後低め、というのが少し気になったので、引張試験片の破断面観察を行ったところ、PCの未溶融物質で形成されたドメインがすべてにおいて観察された。大きなものでは0.5mmほどの大きさのドメインを見つけた。
 
たまたま上海近郊で知人が樹脂の混練事業をやっていたので、そこの二軸混練機を借りて混練してみたら、某ローカル企業と同一処方の配合で引張強度が20%ほど向上した。破断面観察を行っても異常は見つからなかったので、こちらがまともなデータなのだろうと考えた。
 
さて問題は某ローカル企業の二軸混練機である。L/Dは42程度で外観に異常はない。フィルターもオートチェンジャーがついている立派な装置である。表示温度が高めに出ているのか、と疑ったりしたが、熱電対に異常はなかった。
 
一通りの点検をして、スクリューとシリンダーの隙間が怪しいのではないか、と疑った。樹脂を流さないでスクリューを回転したところ、異音はしないが優しい音色である。おそらくこの二軸混練機ではポリマーアロイの混錬は不可能だ、と総経理に伝えたら、何とかならないかと言ってきた。
 
新しい二軸混練機を買うことを勧めたら、修理してくれと言う。さすがにそれは当方には無理だ、と答えたら、翌日その混練機メーカーの技術者を連れてきて、一緒にやってくれと言う。どうも通訳からうまく総経理へ話が伝わっていなかったようだ。
 
仕方がないので、スクリューセグメントをメーカー推奨の状態から変更し、さらにカオス混合装置を取り付けるように提案した。
 
2ケ月後にできあがったカオス混合装置をセットし、混練したところ、驚くべきことに引張強度が20%程度上がったのだ。そして破面観察を行っても未溶融物は見つからなかった。昨年高分子学会から招待されて講演したが、カオス混合装置がものすごい発明であることをもう少し宣伝すべきだった。

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2015.12/10 フィルムのボツ対策

高分子成形体で発生するボツ対策はノウハウであり、この欄で書きにくい内容である。公知事項の範囲で書こうとすると読み手からは靴の裏から足のかゆいところを書くような状態になる。また、思いつくまま書いているので、読み手には余計に分かりにくい内容になっていると思う。もし疑問に感じたらいつでも問い合わせていただきたい。
 
フィルム成形をしていてボツを見つけると、まずボツの分析を行う、というのが一般的なアクション。その時の分析手段は、電子顕微鏡や光学顕微鏡が一般的だろう。まず、目で観察する、というのは、小学校で習う科学の姿勢である。
 
ボツを目視で観察し、原因が分かることもある。すなわち、異物が原因でボツが発生しているときには、何らかの手段でその部分を観察すると容易に原因を特定できるので、対策に結び付けることが可能である。
 
まず大きな異物であれば、フィルターワークで対策できる。その異物がコンパウンド外から入ったものであれば、クリーンルームの作業に切り替えたり、作業着対策や作業者の訓練で解決できる。コンパウンドに添加されたフィラーが原因であれば、分散を改良したり、フィラーを変更したりして対策を進める。
 
とにかく、見える化で原因を特定できる時には、その原因を除去すればボツを減らすことが可能となる。しかし、それでもボツを0にはできないのが一般的で、フィルム製造の実技では毎度問題になる定番の品質欠点である。すなわち、見える化を行っても正体不明のボツがあり、その対策がわからないのでボツを0にできないのだ。
 
この正体不明のボツは、高分子の未溶融体であり、科学では理解できない現象である。もしできるという人がいれば教えて頂きたい。少し技術的センスのある人ならば、正体不明のボツを集めて、熱分析を行うだろう。DSCや粘弾性測定を行うと正体不明のボツの姿が見えてくる。GPC測定も情報を与えてくれる。
 
正体不明のボツの姿がおぼろげながら見えてくると、その対策を考えることになるが、これが大変なのである。ここでも少し書きにくい。コンパウンドの混錬の話になるのだが、ここにたどり着いた人は弊社にご相談ください。良い方法がある。(明日もボツ)
 
 
 

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2015.12/09 PPS中間転写ベルトのボツ

高分子の未溶融物の問題は難しい。例えばPPS中間転写ベルトは、PPSにカーボンを分散して製造するので、押出成形でボツが発生した時に、カーボンに含まれる異物でボツが発生しているのか、未溶融物でボツが発生しているのか原因を特定しにくい。
 
科学で現象が解明されていない場合に技術で問題解決することになるのだが、PPS中間転写ベルトのボツ問題は、技術による問題解決でうまくいき、実践知を多く身に着けることができた。また、コールドスラッジについても一般に言われている話が必ずしも正しくないことも学んだ。
 
開発がうまくいっていない状況で引き継いだ業務だったので、押出金型の見直しも行う経験ができた。Tダイをそのまま丸くしたコートハンガーダイやスパイラルダイ、スパイダーダイなどいろいろなダイをためし、ダイによりボツ発生に差異があることも発見した。
 
ここでは書きにくいので興味のある方は問い合わせていただきたいが、このような世界は実践知と暗黙知の世界であり、技術者により見解がわかれる対策もある。しかし、ボツを減少させるソリューションの一つとしてコンパウンド段階の対策は、有効だと思っている。
 
過去にこの欄で紹介したが、カオス混合によるコンパウンドは、未溶融物により発生するボツを減少できる。すなわち、コンパウンド段階で十分に練を進めて可能な限り分子状態でバラバラにできれば、押出成形で未溶融物の発生を減少できる。
 
カオス混合以外の混練方法では、二軸混練機2機種、石臼式混練機、バンバリーなどを検討したが、ボツ発生を抑えることはできなかった。この経験からカオス混合は高分子の未溶融物を少なくできる混練方法との実践知を得た。(明日もボツ)
  

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2015.12/08 フィルムのボツ

高分子の未溶融体で品質問題となった時にわかりにくいのが、押出成形により製造されるフイルムで発生するボツである。ボツについては、原料に含まれる異物で発生しやすいので、フィルターワークや工程のクリーン度をあげたりして対策する場合があるが、これで問題解決できれば幸運である。
 
高分子の未溶融体でボツが発生しているときにその正体を見つけることは不可能である。すなわち、正体不明のボツを見つけてはじめて高分子の未溶融体の存在を考えることになる。高分子の未溶融体は、フィルターワークでも除去できない場合が多いので消去法で答を見出すことになる。
 
光学用フィルムでは、延伸工程でボツが消失し、輝点異物となる場合がある。ある日PETフィルムの輝点異物を集めて分析したところ、結晶化したPETが他の部分よりも多く含まれていた。このような結果ではない場合も存在したので、断定的な結論を避けるが、高分子の未溶融体は結晶部分がまずその原因として考えられる。
 
写真会社で経験したTダイによるPETフィルム成形では、ボツの問題で悩むことは無かったが、しばしば遭遇する輝点異物には迷惑した。後工程の下引き処理で発生するエラーとの区別が難しいために、時々対策を誤ったりした。詳細をここでは書きにくいが、ボツが100%発生しないフィルムは存在しない、ということとボツの発生個所には局在化している場合とランダムな場合が存在する点は注意したい。全体のシステムでボツの発生の仕方が変わる(ただしここでは輝点異物がすべてボツ由来と仮定している)。
 
PPSは20年ほど前からそのフィルムが登場しているが、ボツの発生により量産体制に入るまでその対策に苦労した樹脂と聞いている。フィルムの中央のボツが少ないところを商品として供給していたようだ。PPSフィルムの成形は経験が無いが、PPSベルトについては10年前に業務を引き継いだ経験がある。抵抗の安定化とボツ問題の解消が最後に残ったミッションと言われ、やや尻込みした。
 
前任者が言うには、某フィルムメーカーがPPSフィルムの量産をできるようになったのは、写真会社でベルト成形の研究を進めたおかげだそうだ。当方が単身赴任する前に、前任者は大変低い歩留まりのPPSベルトをある方法で商品化していた。フィルムはマグロのトロのように部位を選んで切り取ることができるが、ベルトは、円柱状で成形しそのまま使用するので、それができない、だから技術的に大変難しい。
 
それを実用化できたのだから、と自慢し、歩留まりを上げるのが当方の仕事と言っていた。当方はその傲慢な物言いに憤りを感じたが、PPSメーカーが聞いたならもっとカチンときたかもしれない。しかしベルトはフィルムのように押し出された中央部分だけを使うということはできないので、一理ある。(明日に続く)

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2015.12/07 管理職の仕事(5)

外部のコンパウンドメーカーに樹脂技術を依存する開発組織をコンパウンドから技術開発を進める組織に変革した。しかし組織が、環境負荷の低減で社会に貢献するという使命は変わらない。そこで、電子写真の内装材や外装材に用いられる環境対応樹脂の開発も開始した。
 
ただし、これはデザインだけを業務として、生産は外部で行うスタイルの仕事として企画された。生産量が中間転写ベルトのコンパウンドよりも桁違いに多くなるからである。コンパウンド技術ができたからといって、コンパウンド生産まで常に自社で行う必要ない。すなわち仕事というものは、果たすべき役割によりその内容が決定されるものだ。
 
環境対応樹脂が電子写真機に採用されれば、それで環境負荷の低減が可能で、社会に貢献したことになる。コンパウンドのラインができた、すなわち生産技術ができたからといって、それに縛られる必要は無いのである(注)。使命を達成することこそ重要なのである。
 
当時環境対応樹脂と言えばポリ乳酸が代表格でその商品は市場に出ていたが、コストは通常の樹脂の2倍であった。新製品開発の目標に常にCDは存在し、市場でも価格低減は歓迎されていた。このような状況でポリ乳酸など使えないのである。バイオプラは環境対応樹脂の一つであるが、リサイクルも環境対応技術として重要な手段である。
 
市場では、PETボトルのリサイクルPET樹脂が低価格で販売され始めていた。しかし、PETは射出成形が難しく、押出成形やブロー成形で用いられる樹脂である。リサイクルPETが安価といってもそのままでは採用できないので、射出成型できるようにする新たなPETの変性技術が必要となった。まだそのような技術はアカデミアでも研究されていなかった。
 

しかし、知識の活用の仕方の知識がマネジメントであり、成功したてのカオス混合技術を外部のコンパウンドメーカーで活用することにした。半年後無事開発された材料は製品に搭載され、これを最後の仕事に2011年3月11日に退職した。
 
(注)コア技術の重要性がよく言われるが、それは強みであって、ミッション遂行にコア技術をどのように使うのかは戦略となる。コア技術のソフトウェア―部分だけ活用するという戦術となっても良いのである。さらにコア技術にとらわれず新たな技術開発となっても良いのである。

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2015.12/06 管理職の仕事(4)

組織を定義し直すと、仕事のやり方も変わる。但し貢献のゴールが変わるわけではない。中間転写ベルトの開発では、外部のコンパウンダーから樹脂を購入する仕事のやり方を変え、自らコンパウンドの開発を行うことにした。しかし、このようなイノベーションは、時として周囲の反発を招く。管理職の置かれた立場により、マネジメントは自ずと制限を受ける。
 
それを調整するのも管理職の役割である。反発を招くから、やめる、というのでは、マネジメントにならない。知識の活用の仕方が大切で、反発が起きないような手順で仕事を組み立てるのがマネジメントである。それでも妥協しなければならないところが出てくる。仮に妥協してもゴールを実現しなければ周囲に目指した目標が理解されなくなる。
 
細かい話になるが、中間転写ベルトのゴール実現のためには、パーコレーション転移の制御という知識をどのように周囲に理解させ、共感を得るのかが最低限重要であった。
 
すなわちこの知識に対する共感が得られれば、コンパウンドから内製するという生産技術開発の戦術に対する理解が得られるからである。理由は、一流のコンパウンドメーカーができなかったコンパウンドを量産できる技術というのは、最先端のカオス混合技術しか無いからで、これを外部のコンパウンドメーカーが採用しないと言っていたからである。メーカーの管理職は、時にアカデミアの先端よりも先を考えなければいけない状況にさらされる。すなわち科学に頼っていてはゴールを実現できないこともある。
 
日本の管理職はこのような場合に大変な脆弱さをみせる。科学技術立国日本というかけ声の中で生きてきたからである。時には瞬間芸的に解決策を出さなければいけない状況は多い。メーカーの開発管理職は、技術というものを正しく理解していなければ勤まらない、と言われるのはこの理由からである。弊社では、技術を中心にした問題解決法を提供している。ヒューマンプロセスをご理解していない管理職でご興味のある方はご相談ください。
 
故ドラッカーが言っているマネジメントの役割を果たすためには、問題解決力が不可欠であり、管理職の仕事の大半は、何らかの問題解決のはずなのでそれを日々磨くことは重要である。残念ながらドラッカーは問題解決の重要性を指摘しているが、実務の具体的方法を著作に明らかにしていない。中間転写ベルトの量産化はカオス混合の実用化により成果となったが、この技術についてもご興味のある方は弊社へお問い合わせください。
 
 
 
 
 

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2015.12/05 管理職の仕事(3)

故ドラッカーは、マネジメントには4つの役割があると言っていた。すなわち、
1.組織の目的、特有の使命を果たすために存在する。
2.仕事を通じて働く人たちを活かす。
3.組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題解決に貢献する役割が存在する。
4.すでに知られているものを管理すると同時に、起業家とならなければならない。
 
そして時間という複雑な要素も役割といえなくても、重要な次元として扱うべきと指摘している。さらに明確なことは、未来は現在と異なり、断絶された未来へ向かうために現在の基礎を大切にしなければいけないと言っている。成果をあげること、人を活かすこと、そして社会に及ぼす影響を処理するとともに社会に貢献しなければならない。ところが日本の多くの管理職は、マネジメントの役割の4項目のさらに一部、管理することに終始していないか。
 
OA化が進み、目標管理の人事管理手法も普及した今日の管理業務は、一昔前のそれと比較して半分以下になっているはずである。また、管理業務については担当者に任せている場合が多いので、本来の社会への貢献を目標とする3つの役割に集中できるはずである。しかしこれがうまくできていない。
 
企業の目的は顧客の創造にある、とは彼の著書「マネジメント」に書かれていることだが、この目的達成のため十分な役割を管理職は果たさなければいけないが、管理業務一辺倒の仕事のやり方に陥りやすい。退職前の5年間単身赴任して担当した中間転写ベルト開発について、溶媒キャスト成膜という環境負荷の大きいプロセスから、熱可塑性樹脂を用いた押出成形プロセスへ切り替えるのが目的であり、この成果は、環境負荷の低減とCDという貢献を生み出す。
 
但し、この貢献には新たなイノベーションが必要で、さらにそのイノベーションを前任者から引き継いだ時には、限られた時間の中で行う必要があった。外部のコンパウンダーから樹脂を購入し、5年以上も開発を続けて、技術の完成にほど遠い状態だったので、仕事そのもの、あるいは組織の役割そのものも見直さなければならなかった。組織があって仕事があり、そのゴールが決まるという考え方は間違いであり、マネジメントでは、あくまでも特有の使命に着目する必要がある。
 
単身赴任した時に、押出成形技術開発グループリーダーという役割だったが、この組織を大きく見直し、機能性樹脂技術開発グループと新たに定義し直す必要があった。これも管理職の仕事である。組織を新たに定義し直すと仕事のやり方も変わる。
ただし、この時は周囲から支持されず、また左遷と言う微妙な立場でもあったので、ゴール達成だけに照準を合わせた。ゴールを達成できたが、少し心残りではあった。
 
 
 

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2015.12/04 管理職の仕事(2)

研究開発部門の管理職は、1組織1名おれば十分だろう。組織単位をどのように考えるのかは、経営者の仕事である。ところがこれを中間管理職にやらせるから、あるいは、たたき台の作成を任せるから、管理職が多くなる結果を招く。
 
豊川へ単身赴任し、前任者からPPS中間転写ベルトの開発業務を引き継いだ。マネージャーが2名いて、そのマネージャーにグループリーダーである当方の仕事を分担したら何も業務が無くなった。おまけに前任者が院政状態のマネジメントを行っていたので、高い給与の割には、業務は0以下と大変良い環境だった。
 
単身赴任の5年間、故ドラッカーが定義づけたマネジメント、すなわち成果を出すために知識の適用の仕方を考える知識を実行できるチャンスとなった。院政状態のマネージャーと組織に本来不要なマネージャーのおかげで、教科書通りのマネジメントを遂行するとともに自ら実験できるチャンスができた。
 
当時の組織の成果とは、1年後の本体量産試作に間に合わせてPPS中間転写ベルトの量産体制を整えることだった。引き継いだときは、外部のコンパウンダーからできそこないのPPSコンパウンドを購入し、押出成形で無理矢理数本生産できている歩留まりの悪い状態だった。
 
前任者の成果として、歩留まりが極めて低いままでPPS中間転写ベルトを無理矢理安価なプリンターに実用化(注)した実績があったので、担当した業務を周囲に納期通りできません、といえない状態だった。すなわち、存在するはずのない技術の最終完成形を作るのが必達のゴールになっていたのである。
 
このような状態では、技術ができていない状態と考え、1年後の本体量産試作に間に合わせるために、どのような知識をどこから調達し、どのようなタイミングで展開してゆくのか、戦略と戦術を白紙状態から創り上げるという仕事を一人で担当できるチャンスとなり、弊社が販売している研究開発必勝法を実戦で試せるチャンスでもあった。
 
 
(注)なぜ実用化できていたかは、ここで詳細を書けない事情がある。

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