先日7年間使用していたPCが壊れた。当時最速の状態で、データの安全性も高めるために冗長性も確保し、HDはミラーリングで組んでいた。そのミラーリングで組んでいたHDの片方が壊れたのだ。修理のため壊れたHDを交換しようとしたが、7年前のマザーボードのため規格が古く、マザーボードに適合するHDが販売されていない。
仕方がないので秋葉原にでかけ中古を物色した。思いおこせば秋葉原を徘徊するのは7年前にi7の4コアが出た、ということで大枚はたいて安全性と速度を兼ね添えたPCを組み立てて以来である。路上でメイドがオッサンに呼びかけている風景は7年前よりも下火になっていたが、店舗が様変わりしていた。新しくなったラジオ会館も顔見知りの店員がいる店はいくつか無くなっていた。
アニメやわけのわからない店が多く、中古専門店も大半が淘汰されていた。わけの分からない店は昔もあったが、それは訳の分からないものを売っている楽しい店だったが、今の秋葉原のわけのわからない店は、のぞくのも躊躇する。きょろきょろしていたら、”おじさんどうぞ”とメイドに呼びかけられキャンディーを渡された。
挙動がメイドの店のお客と勘違いされたのか、と思うと恥ずかしくなった。結局今は経営者も代わったツクモ電気で物色していたら、新しいマシンはこんなに早いですよ、とデモを見せてくれた。いくら早くても空は飛べないだろう、と言ったら、店員はきょとんとしていた。
規格に適合するHDが見つかり足早に帰り取り付けたが、PCからビープ音が発生した。マザーボードの説明書を読むとその鳴り方は、ビデオ関係だった。グラフィックボードが壊れたのかと思い、ハードをはずし、チップ内蔵に切り替えた。それでもビープ音がなる。HDを修理をするつもりが、マザーボードまで壊してしまった。注意はしていたが、おそらく静電気の仕業だろう。
結局新しいマシンを一台組み立てることになったが、問題は500GB近くあるデータである。どうするか。年末の中国出張から帰国し、溜まっていた仕事をかたずけようと思ったらPCのHDが壊れとんでもないことになった。顧客情報もあるのでファイルサーバーを使わず、自分のマシンにデータをすべて貯めていた。ファイルサーバーでバックアップを取りながら管理する意味をよく理解できた。さてどうするか。
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セラミックスの成型方法はいろいろ用途に応じて使い分けられている。その泥漿を練り上げるにも今日では連続式混練機が一部で使用されている。30年ほど前にその話を初めて聞いた時には驚いた。その泥漿を練り上げる専用の混練機も存在する。
主に剪断混練が使用されていると思われるが、スクリューの摩耗が心配である。知人の技術者に聞いたところ、専用の材料が使用されているとのこと。昔は摩耗が激しかったが最近は良い材料も開発されたとも言っていた。
中間転写ベルトの開発を行っているときに、セラミックス材料の混錬で使用されている、と言われたKCKと呼ばれる、いわゆる石臼型混練機を使用する機会があった。PPSとカーボンを混練するためにそれを用いたのだが、一般の二軸混練機に比較して混練効率は悪いと感じた。
剪断混錬は効率が良いはずだが、機械の消費電力の割に生産性が悪い。同一電力に換算して比較した時に時間当たりの混練される量が6割ぐらいだった。PPSにカーボンの咬みこみが悪いからだ、と装置を貸してくれた会社の技術者は言っていたが、不思議に感じた。
面白いのは混練して得られたカーボンの分散状態で、二軸混練機のそれと異なっていた。1台購入し材料開発に使用したが、得られた混練物の性能は二軸混練機が60点とすると70点前後で100点に到達できなかった。
ただカーボンの分散状態は特徴的でもう少しその特徴が完璧に発揮されればゴールを達成できたが中途半端な状態であった。今改めて思い出してみるとセラミックス材料の分散でもこの「中途半端さは問題になるはずだがそのような情報はWEBに落ちていない。セラミックス協会誌を読んでいても出てこない。
もしセラミックス業界でKCKを使用されている方で何か疑問を持たれたらご相談していただきたい。どこまで期待に応えられるか不明だが、問題解決のヒント程度は出せるかもしれない。
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高分子の難燃性を評価する技術は、いろいろ開発されてきた。それらをすべてここで解説をしない。大切なことは、それら評価技術の細かい知識を習得するよりも、市場で要求される難燃化規格についてその知識を深める努力をした方が実務上役立つ。
ゆえにそれぞれの業務に必要な評価法を調べていただくこととして、ここではそれを活用するときのポイントを説明したい。
火災で高分子が燃える、という現象は、火源により高分子が熱せられて温度が上昇し、添加物や高分子の分解物がガス化、そしてその酸化が激しくなり、燃焼に至る。
この時酸素不足となれば、酸化が終結し火が消える。高分子の構造に二重結合を形成しやすい要因や脱水素を促進する触媒機能を示す添加剤やラジカル補足剤が存在すれば高分子は炭化する。
ここで生成する炭化物はチャーと呼ばれ、燃焼している面で発泡したチャーが形成されると、それが断熱層になり燃焼が停止する。
この燃焼の各段階すべてを一度に評価できる技術は、最初に述べたように大変難しくなる。ゆえに世の中に存在する難燃化規格では、燃焼現象の一部のプロセスを評価していることになる。
この燃焼という現象をすべてモデル化して記述できれば、実火災のシミュレ-ションが可能となり、一部それが成功しているが、材料設計にそれを活かすことができるかどうかは、別の問題がある。
カテゴリー : 高分子
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3日前に、高分子材料の難燃化と評価法についてその概略を述べたが、高分子材料の用途とその設計方針が最初に必要である。高分子材料の用途が決まると、その分野における難燃性規格が材料開発時に使用する品質評価法の一つとして決まる。設計方針とは後述するコンセプトのことであるが、難燃性規格を合格するためのコンセプトも許される。
規格を通過するためだけのコンセプトで材料開発する、というと科学的でもなくいかがわしささえ感じる読者もいるかもしれないが、難燃化規格が用途と実火災を考慮して開発されているはずなので、技術的には賢明な方法となる。
今となっては笑い話となるが、30年以上前にJIS難燃2級という建築材料向けの欠陥評価法があり、この評価法に合格するためにもちのように膨らみ変形する材料が開発された。サンプルを試験装置に取り付け試験を開始すると、炎から逃げるように高分子発泡体が膨れ、その結果、煙も出なければ燃焼による発熱も無く試験が終わる。
このような材料が市場に出た結果、耐火建築でも簡単に燃えるという事件が発生し、規格の見直しが叫ばれ、簡易耐火試験が建築基準として採用されるにいたった。筆者が技術者としてスタートした頃であり、当時の通産省建築研究所の先生方と規格の見直しのお手伝いをしたが、これは高分子の難燃化「技術」の重要性を学ぶ機会となった。
当時の上司は、材料が炎から逃げるように設計しているので、溶融型と同様の難燃材料の設計方法の一つ、と自慢していたが、溶融型では、溶融するときの吸熱効果で火を消す機能を発揮しているのである。
材料に足が生えていて逃げ出すのならともかく、燃焼試験装置の炎を避けるように変形するだけでは難燃建築材料ととして不適格であると同時に、そのような材料を合格とする評価試験法にも建築基準としての欠陥があった。
また、技術では、自然現象から生活に必要な「機能」を取り出し、それをロバスト高く再現できることが求められる。餅のようにふくれ、特定の炎だけを避ける機能では、材料に火がついたときの問題を解決できないので、建築用難燃材料の機能として不十分である。
カテゴリー : 連載 高分子
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小保方氏が21日付で退職を願い出たという。それに対して理研は懲戒処分を検討しているという。小保方氏の退職を残念に思うと同時に理研の対応については、違和感を覚える。
当方が半導体用高純度SiCの発明を無機材質研究所で成功した時に、その研究に対してゴム会社の社長は2億4千万円の先行投資を決断してくださった。その後8年間研究開発を行ったときの組織の対応と大きく異なるのである。
当方も30歳という若い年齢で事業のことなど十分に理解していない技術者だった。高分子の前駆体を用いたSiCの合成法については故矢島先生のポリジメチルシランの技術があったが、高分子が高価なため普及していなかった。
ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の均一で透明になるポリマーアロイは、低価格な前駆体で未熟な技術者でもその事業の可能性について夢を描くことができた。しかしコストダウンに成功してもマーケットが無ければ事業は成立しないのである。
マーケットが無いのにビッグマウスで先行投資を受けた、と陰口を言われた。ただ、この時の先行投資において社長は10年後の夢を買う、とはっきり言われたのである。10年後のマーケットを信じ、当方も覚悟の提案であった。
先行投資をうけて1年後、マーケットが無いと言うことで20名ほどのプロジェクトは解散となり、3名となった。最後に1名となり、起死回生のためS社とのジョイントベンチャーへと突き進んだのだが、一人で担当していたときは、苦しかった。
ただ、会社の幹部の方が実験室へまれに状況を視察に来られたので、何とか期待に応えようと事業化の努力を続けることができた。一方で研究所の一部の方から嫌がらせを受けていた事実があるが、それは醜いアヒルの子の物語と思い我慢していた。
だから、小保方氏も針のむしろ状態であることを十分に理解できるが、理研の組織としての冷徹さには呆れた。またそれは野依理事長のご判断とは思えないのである。STAP細胞は小保方氏の提案には違いないが、それに対して組織としてゴーサインを出しているのである。降格処分だけで十分ではないか。
ゴム会社における8年間の開発期間において、転職する最後まで経営幹部の方は優しかった。アドバイスに従い、一部の時間を使って高純度SiC以外の研究テーマのお手伝いをしていたので、給料は減ることもなく標準の昇給額で毎年順調に上がっていた。
高純度SiCのテーマはS社とのJVがきっかけとなり、現在まで継続される事業として成功したが、先行投資から事業の芽が出始めるまで、6年かかっているのである。もし最初の一年で当方が処分されていたならば、ゴム会社の半導体事業は生まれていなかった。
STAP細胞も完璧な否定証明ができていない状況なので、小保方氏にチャンスを与えるくらいの度量の広さを理研は示して欲しかった。すでに降格処分が為されたのでそれ以上の処分には反対である。もしどうしても処分したいのなら、完璧な否定証明を完成させるべきだ。それが科学に対して本当の厳しい姿勢である。イムレラカトシュが言っているように科学では、存在するという肯定証明は難しいが、論理的に完璧な否定証明はできるはずである。それができないのは、小保方氏だけでなく理研の研究者のスキルが未熟であることを示している。
カテゴリー : 一般
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昨日理研からSTAP細胞は存在しないというコメントが報道された。19日の今日報告会が開かれるそうだが、小保方氏は体調悪く欠席するという。
理研の報告では、小保方氏も再現できなかったことになっている。再現できなかったことが、そのまま存在しない、という結論になっている不自然さに違和感を持った。
彼女は幻を見ていたのか。バカンティー教授は彼女の実験結果の再現を見ているといっていたがそれは嘘だったのか。
彼女は今回の理研の結論に果たして満足しているのだろうか。今回の結果を彼女が認めているとしたら、この結末は、必ず再現してください、と言って他界した笹井氏があまりにも哀れである。
もしその存在を今でも信じているのならば、小保方氏は今回の理研の発表に関わらず、アンダーグラウンドでも構わないので、生涯をかけてSTAP細胞の実現に努力すべきである。
理研から存在しないと結論づけられた研究に対してその対立仮説を努力しても無意味、という意見があると思うが、本件は熱力学の永久機関と異なる状況だと感じている。それは彼女が存在すると結論付けたことに対して明確な否定論理が公開されていないからである。
また、植物の細胞でSTAP現象が現れ、なぜ動物の細胞でそれが観察されないのか、科学的に完璧な証明が今でも為されていないという。ただ、実験を行い、それが確認できないから、100%できない、という結論は、科学的方法論から間違いである。
再現実験ができなかったから、存在しないと結論づけているようにしか聞こえてこない。この結論の導き方が危ういのは、「存在することを示す実験」が成功した瞬間にまた結論がひっくり返る可能性があることだ。
科学で完璧に証明を展開できるのは否定証明だけ、と言ったのは哲学者イムレラカトシュだが、その完璧にできるはずの否定証明が、未だ完璧にできていないのである。
もし今回の発表が科学的に完璧な結論である、としたならば理研も大した人材が揃っていない。彼女の一つの実験を否定できただけの段階だからだ。
イムレラカトシュの「科学的方法論」という分厚く読めば必ず眠くなる哲学書を読んで頂きたい。最後まで読めば、現代の科学的方法と呼ばれた実験とそれにより導き出された結論の大半がいかに不完全であるか理解できるはずである。
科学が生まれる前の人類は技術で未来を切り開いてきた。それが科学という哲学が生まれて以来、それが水戸黄門の印籠がごとく扱いで人類はひれ伏し、技術開発を加速できた。しかし、それは20世紀までである。
iPS細胞のノーベル賞の成果がヒューマンプロセスによる技術で生まれたように、21世紀は再度技術的方法論を用いなければ新たなイノベーションを引き起こせないような状況である。
STAP細胞が本当に存在しない、という命題は科学的な真理として不完全と思われるので小保方氏よ頑張れ。完璧な否定証明が成されるまで、一生をかけて頑張る価値のあるテーマだと思う。再現良くできることを示せばそれであなたは人生の勝利者である。
これはノーベル賞とは異なる目標へのチャレンジだ。現代の科学の閉塞感を打ち破るために貴女に期待した多くの人たちへ誠実で真摯な科学者として応えるためのチャレンジである。まだあなたは理研の職員の身分が保障されてそれができる環境にある。ガンバレ!
ゴム会社で畑違いの高純度SiCの半導体事業が成功し現在も続いているように、心ない一部の人から嫌がらせや中傷を受けてもそれに耐え誠実で真摯に努力すれば必ず成功する。
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高分子材料の難燃化と評価法についてその概略を昨日まで述べたが、高分子材料の用途とその設計方針が最初に必要である。
高分子材料の用途が決まると、その分野における難燃性規格が材料開発時に使用する品質評価法の一つとして決まる。設計方針とは後述するコンセプトのことであるが、難燃性規格を合格するためのコンセプトも許される。
規格を通過するためだけのコンセプトで材料開発する、というと科学的でもなくいかがわしささえ感じる人もいるかもしれないが、難燃化規格が用途と実火災を考慮して開発されているはずなので、技術的には賢明な方法となる。
今となっては笑い話となるが、30年以上前にJIS難燃2級という建築材料向けの欠陥評価法があり、この評価法に合格するためにもちのように膨らみ変形する材料が開発された。
サンプルを試験装置に取り付け試験を開始すると、炎から逃げるように高分子発泡体が膨れ、その結果、煙も出なければ燃焼による発熱も無く試験が終わる。
このような材料が市場に出た結果、耐火建築でも簡単に燃えるという事件が発生し、規格の見直しが叫ばれ、簡易耐火試験が建築基準として採用されるにいたった。
当方が技術者としてスタートした頃であり、当時の通産省建築研究所の先生方と規格の見直しのお手伝いをしたが、これは高分子の難燃化「技術」の重要性を学ぶ機会となった。
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UL94-V2試験では、サンプルを垂直に保持する点でLOIと同じだが、着火は下から行う。ゆえに溶融物は下に落ちて火が消える。
ただし、高温で溶融しやすい材料がすべてこのような結果になるわけではない。UL94-V2試験に合格するように「巧みに」材料設計された場合だけである。
高温で溶融しやすい材料でもUL94-V2試験に不合格となる材料は存在し、このLOIが仮に20.5であったとしても、UL試験を行うと廃PETボトルを80%含む樹脂よりも燃えやすい材料との判定になる。
UL試験は、アメリカの民間会社の評価試験法だが、材料の用途における実火災との対応についてよく考えられた試験法として、多くの分野で規格として採用されている。
燃焼時にチャーと呼ばれる炭化層を積極的に生成する炭化促進型難燃化手法で材料を設計しようとする場合に、LOIは他の難燃性試験法よりも実験室で重宝する。
例えば、UL94-V0以上という高い難燃性を実現する材料を設計したい時に、溶融型で高分子の難燃化設計はできない。そのためLOIで21以上となる配合を探索しなければならない。
この段階で難燃化という機能について、材料設計コンセプトからチェックしなければいけない高分子の高次構造因子があれば適宜汎用の分析評価を行う。
燃焼では高分子の熱特性が重要になるので、熱重量分析(TGA)や熱機械分析(TMA)、熱走査時差熱分析(DSC)が主に用いられる。難燃剤の分散状態を知りたければ電子顕微鏡もその手段の一つとして加える。難燃剤の計量を簡便に行う方法として赤外分光法(IR)がある。
ノウハウになるが、先に説明した廃PETボトルを80%含む樹脂では、粘弾性評価装置も難燃性の設計に使用している。
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30年以上前にJIS化されたLOIは、酸素と窒素の混合気体の雰囲気の中に長い板状のサンプルを立て、その上方から着火して燃焼状態を観察し、継続して燃焼するのに必要な最低限の酸素濃度で高分子の燃えにくさを数値化する試験法である。
測定法の定義から一見理にかなった燃焼試験に思えるが、経済性の視点で高分子の用途を眺めた時に、実火災においてこの尺度で決められた序列が適切ではない場合もある。
例えば、空気の酸素濃度は21%程度なのでLOIが22以上となるように難燃剤を添加して寝具が材料設計されていたならば、寝タバコの火が寝具に着火した時に空気中で燃焼を継続することができず、自然に火が消えて燃焼は広がらない。
しかし、LOIが21以下でも燃焼が広がらない材料がある。それは熱で簡単に溶融し消火するように設計された材料である。
このような材料では、たばこの火の程度であれば、溶融時の吸熱効果で火が消える。
この考え方で、高価な難燃剤を用いずPETボトルの廃材を80wt%含有する射出成形可能な難燃性樹脂を四年前に開発した。この樹脂の20wt%の他の組成は、射出成型が難しいPETを易射出成形性にするための成分と靱性を改良する成分、溶融型で難燃性を向上する成分とからなる。
すなわちこれは強相関ソフトマテリアルの概念で設計されコンビナトリアルケミストリーの手法で開発された材料である。
この材料は難燃材を添加していないPETが主成分の樹脂なのでLOIは19以下であるが、UL94-V2試験を行うと自己消火性を示し合格する。
LOIが19前後、すなわち空気中で燃焼し続けると評価された材料でも自己消火性を示すことについて不思議に思われるかもしれない。これは、サンプルを垂直に立て上から着火するというLOIの試験方法にも少し原因がある。
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燃焼とは急激な酸化反応で進む現象なので、どのような火災の状況でも絶対に燃えない有機高分子は存在しない。
ゆえに火災時の燃焼対策としてとられる高分子の高機能化について、高分子の不燃化とは言わず、難燃化という表現が用いられている。
燃える物質と燃えない物質という境界が明確な材料群ならば、その評価技術を一義的に決めることができそうだが、「難燃性」とか「燃えにくさ」という曖昧な尺度に対して、唯一の客観的評価技術を開発することは、直感的に難しい作業になると想像できる。
もしそれをイメージできないならば、具体的な火災を思い浮かべればよい。
火事の現場検証では最も黒焦げになっているところが注目される。そこは酸素不足で高温度に曝された可能性が高く、そのような現象が起きるのは火元と考えられるからだ。
本当に火元だったかどうかは、その他の状況証拠との組み合わせで決められるそうだが、火災の現場を観察すると、高分子の燃え方が一様ではないことに気がつく。
このような状態を実験室で再現しなければならない評価法とは、高分子材料そのものの燃えにくさの数値化以外に様々な因子の絡みあいを盛り込まなければならず複雑になるであろう。
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