当たり前のことだが企業における研究開発は、ビジネスの一環である。このような当たり前の事を社会人成り立ての技術者で理解していない人は多い。科学教育が浸透し、頭の中が科学という唯一の哲学で支配されているのではないかと疑いたくなるが、面白いのは体育会系と呼ばれている社会人がいることだ。彼らは科学教育がこれだけ浸透していても問題解決において我流のヒューマンプロセスで問題を解こうとする。
ゴム会社の新入社員研修で面白かったのは、いわゆる事務系と技術系の混成部隊でグループ活動を行ったことだ。ゴム会社の場合には、技術系にもいわゆる体育会系がいたが、彼らの問題解決プロセスは直感的である。深く考えないでとにかく思いついたことをやってみる、というヒューマンプロセスである。この方法でも体系化されたヒューマンプロセスとして行われれば、立派な問題解決法である。ただし科学的とは言えないが―――。
小学校から大学まで科学教育を学んでいるのに体育会系の思考ができると言うことはある意味驚くべきことで、人間の可能性を感じた。これは入社試験を通過してきた仲間だから素直に驚き感激したことだ。当方は科学という哲学一色で完全に洗脳された状態だったから、体育会系の人類は新鮮だった。
ゴム会社の設計部門で技術実習を行ったときにも驚いた。技術部隊が体育会系の「ノリ」で研修テーマを用意していてくれたのだ。当時世界には13社タイヤ会社があり、その各社の代表的なタイヤを解剖して技術要素を取り出しタイヤ軽量化のヒントを導き出す、というテーマだった。リバースエンジニアリングというとかっこいいが、実際の業務はタイヤのカットサンプルを作成し、断面形状からタイヤの構造を解析し、構造要素と思われる部分の面積をはかる、という単純作業である。
面積を測ってその後は、というと誰も考えていない。新QC7つ道具を使って整理してみよう、ということになった。一覧表を作成してみたり、系統図で整理してみたりした。しかし、そこから何も見えてこない。テーマは暗礁に乗り上げた。新QC7つ道具には多変量解析という道具があり、これをやってみようと当方は提案した。当方も体育会系のノリに染まり使っていなかった道具を提案しただけだったが――。
「そうだ、まだこれがあった!」とすぐに皆の同意が得られた。しかし誰一人多変量解析を理解していなかった。新QC7つ道具の中で使っていなかった方法がそれだけだったので意見が一致しただけである。指導社員が社内のコンピューター部門に相談し、IBM3033の統計パッケージの説明書を用意してくれた。ただし説明は英文である。皆で手分けして説明書を読んだ。
若いということは一つの才能である。知識の無い技術領域の英文のマニュアルを前にして一瞬皆引いたが、皆で手分けして読めば一人20ページだ、という意見が飛び出した瞬間に簡単に理解できる気になってしまう。しかし、翌日が大変だった。
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研究開発は大変楽しい仕事だと思っている。その楽しさが習慣となり、そこへのめりこむと中毒になる可能性がある。時がたつのも忘れ、実験を行う。仮説に適合した結果が出て真理を見いだすと至福の喜びとなる。
一方技術開発は苦しい。お客様の要求を満たす機能実現とその許容差設計のために同じような実験を繰り返さなければいけない。まったく同じ実験を何度も繰り返すこともある。それを効率化するためのタグチメソッドという手法もあるが、すべての実験計画が完了するまで結果が見えてこないもどかしさがある。
苦労した結果、お客様から感謝され、売り上げ増になった時にほっとする。そしてそれがささやかな喜びになる。このささやかな喜びが、貢献に結び付くと大きな満足感につながる。
こうした成功体験を積むと技術開発の苦しさを喜びにつながる過程として楽しめるようになる。新たな真理を追究する研究開発では途中のプロセスで遭遇する過去に明らかになった真実を体験する喜びがあるが、とにかく機能を実現しなければならない技術開発では失敗という苦労がつきまとう。
失敗しなくても機能の再現性の乏しさのためそれを改善しなければいけない、繰り返しの苦労がある。技術開発では苦労、苦労の連続で、マゾでもない限り、成功体験がないと続けられない。
知識労働者ならば真実に対する関心が高く、研究開発を楽しむことができる。苦労の連続となる技術開発と異なり、真実にたどり着くまでの過程も楽しむことができる。研究開発は楽しさを阻害しないマネジメントが重要になるが、技術開発では苦しさを和らげるマネジメントが重要である。
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故田口先生は、技術開発だけやるように、とおっしゃっていた。機能のロバスト確保の研究は不要で、タグチメソッドでそれが実現できる、と指導されていた。しかし、差別化するための新しい機能を生み出す方法については、技術者の責任といわれ、その方法まで言及されなかった。
タグチメソッドの導入で、技術者の責任は大変大きなものとなった。しかしその責任を背負わされた技術者は、その大きさを理解しているのだろうか。20世紀の科学の進歩は著しく、多くの企業で新たな研究開発をしなくても技術開発だけで新商品を生み出すことができる状態になっている。また、情報過多で新たな研究開発テーマが見えにくくもなっている。
中国でローカル企業を指導し、新たな樹脂開発を技術開発だけで進めていると、研究開発の重要性を痛感する。科学論文を調べてみても特許を調べてみても未だ公知になっていない事象が多く存在するのだ。
そのような事象に潜む真実は新たな技術を生み出す可能性を秘めているが、中国のローカル企業には研究開発をするための実験設備が準備されていない。研究開発と技術開発の違いが判らないのは一部の日本企業と同じだが、タグチメソッドでL18の実験計画を実施しようとしたら、その実験をさらに半分にできないか、と言われ目がテンになるような日常である。
研究開発の必要性など説明できる状態ではないが、それでもとりあえず新商品はできてしまう。タグチメソッドのすごいところだが、新しい機能を実現できた背景に潜む真理を知りたくなるのは、知識労働者の基本的な欲求である。
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技術は生産現場で生きている、という人がいる。また、無駄な技術は消え去る、とまで言いきる人もいる。しかし、特公昭35-6616に書かれた写真会社にとって重要な技術が痕跡も無く消えていた状況をこれらの言葉では説明できない。
酸化スズゾルを用いた帯電防止層はその後熱現像感材などデジタル分野で活用される写真フィルムで重要な技術として使われたが、当方がリストラされた状況から察して高い評価を社内で受けていないのだろう。
また印刷学会で学会賞を受けた製品にもこの技術が採用され、その受賞理由にも高度な帯電防止技術で色ずれの置きにくい技術と書かれていたのに帯電防止層の開発部門の担当者は誰一人そこに名前が無かった。
さらに印刷学会の学会賞の受賞も知らされていなかった。たまたま学会賞受賞式が行われた日の講演会で帯電防止の発表をしてくれ、と他部門の方から言われたのでのこのこと会場に出かけて受賞の状況を知った。
重要な技術が伝承されてゆくかどうかは、技術を大切にする風土があるかどうかということだろう。ある日学会の委員会でライバル会社の方から日本化学工業協会で技術特別賞が新設されるからそこへ酸化スズゾルの技術を出してみてはどうか、と言われた。
社内に戻り、技術担当役員に相談したところ推薦されることになり、無事第一回の技術特別賞を受賞することができた。ライバル会社の方は公開された特許や印刷学会賞をご存じで、酸化スズゾルの技術を高く評価してくださっていた。それを知らせてくださったことに感謝すると同時にライバル会社の方だったので感動も大きかった。
類似技術が存在するときに、技術の価値評価は難しいのかもしれない。科学であれば最初に真理を見つけただけで高い評価が得られる。しかし技術は機能が正しく発揮されなければならないので完成までに時間がかかる。その機能が世界で初めてならば科学同様に技術は簡単に評価されるが世界で初めてでは無いときにその評価は難しくなる。
酸化スズゾルの帯電防止層はパーコレーション転移を制御し18%という転移に必要な理論量で機能を安定に実現している。その結果、微粒子が分散しているにも関わらず膜の強度も高く設計できた。その材料設計のためにインピーダンス法でパーコレーション転移を評価する世界で初めての技術も開発している。酸化スズゾルを用いた帯電防止層の技術は幾つかの要素技術を組み合わせ、昭和35年に特許で公開されてから誰も実現できなかった技術を製品化した温故知新の成果である。
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ヤミ研でパーコレーションという現象を研究し始めたのだが、この状態では昭和35年当時と同様の状況になる、と憂慮し、センター長に相談して担当者を決めた。大学へ留学したい、と言っていた社員が先行して選ばれしばらくしてバトミントンに夢中になっていた体育会系の社員を加えた。
前者はリストラ時にその後技術サービス部門へ異動し育成できなかったが、後者は職場に残すことができ、無事工学博士まで育てることができた。二人とも最初周囲の評価は高くない社員だったが、潜在能力は高かった。それは仕事ぶりを見ればわかった。周囲には不満分子と誤解されたのかもしれないが、常に問題意識を持っていた。
実績のある社員ならばその実績から能力の推定ができるが、新入社員など社内で実績が無いこのような場合にどうしても低く評価される。会社では潜在能力を評価しないからだ。当方はバトミントンが上手で大学院まで修了していたので能力があると評価しても良い、と思った。またゴム会社でテニスの上手な社員は仕事もできる、と聞いていたからだ。
パーコレーション転移のインピーダンスによる評価技術は彼の最初の成果になった。この評価技術の価値を確認するために福井大学客員教授として当方が招聘されたときにパーコレーション転移におけるインピーダンス変化を数値計算でシミュレーションするテーマを採用した。
大学で検証された評価技術は、フィルムの製造プロセスの品質問題解決にも役だった。それまで直流法だけで評価されていた現象を交流法で見直すことにより新たな事実も分かってきた。
21世紀になり、当方が2回目のリストラを受けるまで、このころ開発された技術は活用され続けた。2回目のリストラで窓際になった後、カメラ会社との統合があり、カメラ会社の研究所がある豊橋へ当方は単身赴任した。そこへこの評価技術を持ち込んだ。
高分子中に微粒子を分散したときに観察されるパーコレーションを評価する技術は材料設計に不可欠である。豊橋では複写機に用いる中間転写ベルトという半導体ベルトの開発を担当したがその材料評価にこの技術は活かされるとともに、コンパウンドの品質管理にも使用された。
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1980年代の材料科学の分野でパーコレーション転移はポピュラーな現象ではなかった。混合則という現象を記述する理論が存在し、これで材料の電気抵抗や力学物性の変化が議論されていた。今から50年以上前に微粒子の分散で観察されるクラスターについて数学界ではパーコレーション転移が議論されていたのだがその考え方が材料分野まで普及していなかったのだ。
その結果特許にもパーコレーション転移という現象が記載されていなかった。これは科学と技術を分けて認識していない学術の責任と思った。パーコレーション転移は機能を設計するために重要である。しかし現象を述べるためには混合則で十分である。この結果パーコレーション転移という数学界における学術の成果が技術を考える上で重要であっても現象を記述する理論が既に存在した材料科学分野で普及しなかったためと思われる。(但し材料で観察される現象を学術で議論する場合にもパーコレーション転移は使えるし、本当はこの理論が混合則よりも好ましいと感じている)
たまたま当方は学生時代に数学関係の書籍が好きでパーコレーション転移について学んでいた。また、戦後のヤミ市で父が購入したというコーヒーの古いパーコレーターが当時も我が家で使用されていたので、パーコレーションという現象の語源として結びつき、トリビアの泉のようなムダ知識と思っていたが、15年後その知識が役だった。
知識に無駄な知識は無い。ただそれを活かす知恵が働かないだけだ。知恵を働かせるためには動機が必要だ。チャンスが訪れるまでどんなムダ知識でも頭に貯めておく事が重要である。いつか知識は役立つ。無駄な知識が頭に貯まって活かされないのは知恵とチャンスが無いからだ。
転職した会社で面接時に金属酸化物粒子を用いた帯電防止層が重要だと聞いたときにすぐにパーコレーション転移がひらめいた。使う機会があるかもしれないと思い、知恵を働かせるためにパーコレーション転移のシミュレーションソフトをすぐに作成し始めた。パーコレーション転移という機能を検証するためには現象に影響を及ぼす外乱をコントロールしなければいけないのでコンピューター計算が便利だと思った。
このパーコレーション転移のソフトを使い、特公昭35-6616の現象や実験室で収集されるデータを次々と検証した。そして2nm前後である酸化スズゾルの一次粒子の体積固有抵抗が導電性領域の値であることを確信した。またパーコレーションという現象を精度良く検出するために薄膜をインピーダンスで評価できないか研究をはじめた。これらは当時学術論文には存在しなかった研究である。しかし技術開発にはパーコレーション転移を精度良く検出するために重要な研究なので担当外ではあったがヤミ研として進めた。
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特公昭35-6616(以下特公昭35)を軸に特許戦略を立案し、実験計画を立てた。タイミング良くパーコレーション転移のシミュレーションソフトウェアーも完成した。産学連携で進めた研究結果では、特公昭35の実施例に記載された酸化スズゾルの体積固有抵抗は、20年近く前ライバル会社から出願された特許に書かれていたような絶縁体に近い物性ではなく、10の3乗Ωcmという導電体レベルの導電性で電子伝導性の材料だった。
それでは、なぜライバル会社や転職した写真会社でこの材料の導電性が悪いとされたのか?学術論文では高純度酸化スズの導電性は絶縁体と結論されていた。しかしこれは「結晶性」高純度酸化スズの場合である。
非晶性酸化スズの場合はどうか。学術論文が発表されていない。そもそもまともな研究論文は見当たらず特許程度に記載された情報だけである。産学連携で進めた実験結果が学術としては世界で初めての実験結果であった。この実験結果は日本化学会で発表されたが、非晶性材料における導電機構が問題にされた。
学術では導電機構が重要であるが、技術では電子伝導性で10の3乗Ωcmという導電体レベルの材料である、という結果、すなわち機能の存在を示す結果が重要である。幸いなことに世間は学術と技術の違いを認識していない、ということも分かってきた。
産学連携で見つかった導電体の機能がどうして特許や転職した写真会社では否定されているのか。それはパーコレーション転移という現象が存在するためだ。公開された技術情報や転職した会社の実験結果では、塗布膜の電気物性を評価している。バインダーに酸化スズゾルを分散し塗布するとパーコレーション転移が生じる。
また添加率を上げてゆくとひび割れしやすくなる。クラックは異方性が大きいので電気抵抗を高める方向に機能し、これもパーコレーション転移を生じる。すなわち導電性粒子のパーコレーション転移とバインダーの微小クラックが原因で導電性が低くなっていたのに酸化スズゾルに導電性機能が無いと結論していたのだ。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
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特公昭35-6616の技術は本物だった。しかし特許の権利は切れていた。ただ、この特許のおかげで、ライバル各社が網の目のように出願していた領域に公知領域の穴を開けることができる、と考えた。
知財部とプロジェクトを結成し、シミュレーション結果を基に特許出願戦略を作成した。とりあえず実験は産学連携テーマだけ進め、特許出願を中心に業務を進めた。
センター長付が主要業務だったので忙しかった。しかし、特許の明細書を書き上げるのは、ゴム会社で高純度SiCの特許出願を行ったときにI次長から指導を受けていたので苦労しなかった。弁理士が仕上げをできる程度に書けば良いので、実施例以外は気楽であった。
特許を書きながら疑問がわいてきた。従来技術の事例を書くためにライバル会社の10年分の特許を参考に熟読してみても特公昭35-6616が出てこないのだ。そして20年前の特許には記載されていた非晶と結晶の言葉が消えていることも奇妙に思った。
一社について時系列的に公開特許の内容を整理してみたところ、過去には特公昭35-6616が引用されていたが途中から全く引用されていないこと、そして酸化スズについて過去では結晶と非晶の比較が発明の論点だったが途中から論点が一般の金属酸化物で電子伝導性という内容に権利範囲が広げられていることが分かってきた。ただし、いずれの特許も公告時には権利範囲が結晶性酸化スズとなっていた。
特許の成立過程を整理してゆくとライバル各社の知財戦略が見えてくる。アメリカの会社は非結晶の五酸化バナジウムを守る戦略を、国内大手はアンチモンドープ酸化スズ結晶を軸に結晶性酸化スズ全てを権利範囲にするような戦略である。
この二社の特許出願経緯を整理するとうまく技術の伝承が行われている様子がうかがわれる。さらに国内大手にはこの分野の専任のライターがいるようで、いつも発明者に登場する名前があった。転職した会社ではこの分野を諦めているようにも感じられた。
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特公昭35-6616特許について社内の技術者に意見を求めたところ、実施例を実験しても再現しないヘボ技術という評価ばかりであった。また、大した技術ではないから1件出願してそのままになっていたのだろう、という意見もあった。
転職して半年後学卒新入社員の中に大学院へ留学したいという希望を持っていた新入社員がいた。しかし、会社にはその様な制度が無かった。会社の近くの大学に相談し、特公昭35-6616に記載された酸化スズゾルの導電性を計測する研究をテーマにして業務の一環として通学させることにした。
この産学連携は比較的短期に成果が出た。通学して最初に行った実験で酸化スズゾルが電子伝導性であることや、合成条件で2桁程度導電性が変化する事などわかった。ここまで分かれば十分である。
あとはアンダーグラウンドで準備していたパーコレーション転移のシミュレーションプログラムで計算して薄膜を形成したときの導電性をシミュレーションした。アスペクト比の影響なども調べた。
シミュレーションの結果から効率良くパーコレーション転移を起こせば膜の力学物性に影響を与えず帯電防止膜ができることを理解できた。
さっそく実験をやってみたところ、驚くべきことにインチキ特許と言われた特公昭35-6616が再現性の高い技術で、再現性を高める因子を匠にノウハウとして隠していたことが分かった。すなわちこの特許の発明者は何らかの理由でこの特許を一件しか書くことができなかったのだろうと想像した。
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窓際になるまで特許の整理やパーコレーション転移のシミュレーションプログラムの作成などソフト業務をアンダーグラウンド業務として行っていた。パーコレーション転移の研究の経緯については後日書くが、特許の整理を行ってみて転職したセンターが全くの新設ではなく、過去に何度もそのような部署が作られていたことが見えてきた。
そして特公昭35-6614という一生忘れないであろう特許を見つけた。それは一件だけ小西六工業という写真会社の前身の会社からぽつんと出願されていた。
絶縁体の酸化スズがInやSbを添加すると導電性が出ることが発見され、ITO膜が研究され始めたころである。まったく独自の発想で高純度の酸化スズゾルを合成し、その塗布膜が湿度に依存しない電子伝導性を有することを発見し発明を完成していた。
この発明の後10年以上酸化スズに関連した特許はこの会社から出願されていないが、他社からはITOや五酸化バナジウムを用いた帯電防止層の研究成果を特許出願する傾向になっていた。
すなわち転職した会社では、世界で初めての透明金属酸化物を用いた帯電防止技術の特許出願を行いながらも10年近く放置されていたのである。その間他社は周辺技術の特許出願を行ってきたために転職したときに圧倒的な差がついているような状況になっていた。
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