ホウ酸エステルとリン酸エステルを組み合わせた難燃化システムは、軟質ポリウレタン発泡体の効果的な難燃剤だった。また、中間体である、ボロンホスフェート誘導体も単離することに成功した。燃焼面にきれいなガラス相の薄膜を形成するのだ。ゆえにドリッピングも防いだ。
このヒントは始末書を書かされた開発成果ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームから得られた。すなわち通常のリン酸エステルを高分子に添加すると、燃焼時にリン酸エステルは熱分解してオルソリン酸を生成する。このオルソリン酸は250℃前後で揮発するので、燃焼時には燃焼している系外へ放出される。
これが空気を遮断して高分子の炭化を促進すると説明した教科書もあるが、この説明にはやや無理がある。なぜなら三酸化アンチモンとハロゲン系難燃剤の組み合わせほど難燃性が高くないからだ。このシステムで生成するハロゲン化アンチモンは強力な難燃剤である。
リン系の難燃剤は主に燃焼系内で機能して炭化促進に機能している、と考えた方が実際の現象とあってくる。またこのように考えると、オルソリン酸を系内に固定化するアイデアが出てくる。ホウ酸エステルとリン酸エステルの組み合わせシステムはこのような発想から生み出された。
ホスファゼンは高温度で重合するので気相に放出されない。これは燃焼後の残渣を調べるとPNOが検出されるのと、組成分析から得られる80%以上のPが残っている事実とで証明できる。
リン系難燃剤を効果的に利用するには、燃焼時に生成するオルソリン酸をうまく系内に固定化して効果的に難燃化できる方法を考えれば良い。詳しくは弊社へ質問してください。またリケジョが活躍する www.miragiken.com でも未来の高分子難燃化技術として扱う予定です。
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UL94規格ではドリップの有無で評価が大きく変わる。例えばV0試験では、ドリップがあった場合にいくら燃焼時間が短くとも硝化綿が燃焼するとV2となってしまう。この規格は実火災を念頭においた規格であり、科学的な見地から開発されたLOI評価法と相関が無い。
環境対応の必要性からノンハロゲン化技術に関心が集まり、リン系難燃剤の開発が進められ、耐熱性の高い新たなリン酸エステル系難燃剤もこの十年にいくつか開発された。リン系難燃剤では、その難燃化機構からリン原子の濃度とLOIとは相関する傾向にある。ポリウレタンや、PS、PC、ABS等でそのような実験結果が得られている。
しかし、LOIが24を越えたあたりから、リン原子の量が増えてもLOIが増加しなくなる場合がある。LOIが18前後の樹脂の場合では、21未満と21以上では相関係数が変化する。すなわちLOIが21は変曲点であり、それ以上では傾きが小さくなる傾向がある。
その結果、UL試験のV0以上を狙おうとした場合に難燃剤を20部近くも添加しなければいけなくなる場合が出てくる。コストも物性も考えなければこのような材料設計でも良いが、コストや物性のバランスを取ろうとすると難燃剤の添加量はせめて15%未満にしたい。
そうすると難燃助剤(と書いて良いのか知らないが)の添加という発想が出てくる。有名なところでは、ドリップ防止を狙ったフッソ樹脂の添加や、イントメッセント系の設計でメラミン樹脂との組み合わせを考えたりする。また、PC系ではシリコーンをグラフトしたPC樹脂を用いるアイデアも特許出願されている。
こうした考え方がいろいろ研究されてきて、特許出願が2000年頃から増えてきた。当方は、1980年にポリウレタン発泡体をホスファゼン変性して、10部未満で高い難燃性の発泡樹脂を開発し特許では無く始末書を書いている。そして始末書の汚名挽回策として燃焼時にガラスを生成するコンセプトで、硼酸エステルとリン酸エステルの組み合わせシステムを開発した。世間より20年早い発想でノンハロゲン難燃システムを完成した。
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高分子の難燃化には難燃剤が用いられている。難燃剤の添加で高分子材料の物性は低下する。特に靱性の低下が著しいので注意を要する。また難燃剤が可塑剤として働く場合があるので、弾性率の低下を心配しなくてはいけない。弾性率が低下すれば、引張強度や曲強度に影響が出る。
物性への影響を小さくして高い難燃レベルを達成する方法は、三酸化アンチモンと臭素系あるいは塩素系難燃剤を併用する方法である。経験的には、物性への影響を小さくしたいときにこの方法で最も高い難燃化レベルを実現できる。
しかし、最近環境への影響からこの系を用いることができなくなってきた。各種規制から制限を受けていないハロゲン系難燃剤も存在するが、実火災の安全性という観点からはハロゲン系難燃剤は1%未満の添加に抑えるべきである。
ノンハロゲン系難燃剤として三酸化アンチモンに匹敵する有効な難燃剤の探索が進められた。しかし、未だ見つかっていない。リン系難燃剤は炭化促進型として知られ、イントメッセント系の難燃剤もこの系であるが、炭化型で満足な難燃性を得ようとすると高分子材料に10%以上添加しなければいけない。多いときには20%も必要になる。
LOIを21以上にするだけならば5%程度の添加で実現できる場合も存在する。しかし、UL94-V0レベルまで達成しようとすると一般的に10%以上の添加が必要になる。面白いのはリン系難燃剤の種類で高分子材料との相性が存在することである。
難燃剤メーカーから代表的難燃剤について技術資料が公開されており自分が難燃化したい高分子材料の難燃剤選択に便利である。しかし、こうした技術資料だけで開発がうまく進めばありがたいがたいていの場合に技術資料の再現ができず悩むことになる。
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一部の高分子について燃焼挙動の科学的解析が進み、難燃剤の機能について明らかになっている。しかし大半の高分子材料と難燃剤については未解明である。明らかになっている高分子材料についても実火災でその様に熱分解している、という証明はできていない。
高分子の難燃化というテーマは科学的に研究を進めにくい分野である。燃焼は酸化が激しくなった現象として説明されるが、同時に高分子の熱分解も起きている。溶融も生じる。ゆえに実火災に有効な科学的な高分子難燃化手法という万能手法は存在しない。実火災に対しては、各種難燃化規格に通過するように難燃化「技術」で対応することになる。
高分子の難燃化手法には技術的に二つの戦略が存在する。1.溶融型と2.炭化型である。1は、高分子材料に着火したとたんに溶融を促進し、火を消す、という手法である。2は、燃焼面に耐熱性の高い炭化層を形成し火を消す方法である。
常温のLOIで見たときに、1の戦略では、21以下でも自己消火性を示す材料を設計可能だが、2では必ずLOIを21以上になるように設計しなければいけない。2についてはイントメッセント系の難燃剤が有効と言われている。
UL規格で見たときに、溶融物の存在が許されるときには、1の戦略もとれるが、許されないときには、2の戦略だけになる。すなわち、この戦略は規格と達成したいレベルで選択することになる。UL94-5Vレベルの高分子材料の設計を目指す場合には、効率的に炭化層を形成する材料設計が重要になる。
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どのような高分子でも、高温度の空気中で燃える。これを科学的に示すには温度を変えて極限酸素指数(LOI)を測定すれば良い。ちなみに空気をLOIで示すと21である。すなわちLOIとは酸素濃度を指数化したパラメーターで、空気には21%の酸素が含まれているからLOIは21となる。
LOIが21以上の高分子材料は空気中では燃焼を続けることができないので自己消火性、すなわち自然と火が消える。21以下の材料では、空気中で着火した場合に燃え続ける。このLOIを各温度雰囲気で測定すると、室温で21以上の材料であっても、ある温度以上で21以下になる点が存在する。
すなわち高分子材料は皆500℃以上にも達する実火災で必ず燃えることがこの実験で分かってくる。これが分かってくると、高分子材料の不燃化などという技術テーマを企画したりしない。せいぜい難燃化である。材料に火がついても空気中で燃えにくければ、あるいは自己消火性を示せば、少なくとも火源とはならない。多くの電化製品や事務機、電子機器はこのような観点で設計されている。
高分子材料の難燃化に関する研究は1960年代から1980年代にかけて活発に行われた。しかし科学的な研究の結論は未だに出ていない。技術的な見通しは、技術者によりそれぞれのノウハウとしてまとまっている。科学と技術を厳密に意識しなければいけない分野の一つとして、この高分子の難燃化という分野がある。
科学的な研究が最も進んだ1980年前後には様々な評価技術が登場している。LOIもこの頃登場した。UL試験も同様の時期である。コーンカロリメーターが実験装置として販売されたのは1980年代末である。
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年をとると鈍感になると聞いた。確かに肘掛けで腕が触れあう位置に若いタレントがいても冷静でいられたのは年齢のなせる技であろう。美女数人に囲まれても動揺しない年齢である。しかし、実験結果には未だに感動する。
研究開発必勝法プログラムで必ず成功する技術開発法を提案しているが、必ず成功すると思っていても、期待したとおりの結果になると感動する。おそらくこのままではノーベル賞級の大発見をしたらその場で脳卒中を起こすかもしれない。
このような感動は、経験された方ならご理解頂けると思うが本当に気持ちが良い。おそらく薬物による興奮の上をいく最上の喜びだと思う。この成功体験は、次のチャレンジへの原動力となる。
これは技術指導していても同様である。中国では弊社の必勝法に基づく技術開発を指導している。オリジナルを目指す技術開発を指導し、すでに特許も出願している。
新技術の構築を指導している限り技術持ち出しの問題は無い。公開された文献から新技術を開発する習慣を定着させたい。研究開発必勝法プログラムは日本でビジネスにならなかったが中国でビジネスになりつつある。
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世間は盆休みであるが、今日からまた中国である。会社を始めてから休日が無くなった。もっともサラリーマン時代でも休日でもなんやかやと勉強していたので仕事をやっていたようなものだが、それでもそれは自分の時間である。
社長業のつらさは四六時中会社のことを考えなければいけない事だろう。イラク空爆時にアメリカ大統領がゴルフをやっているとの報道があったが、オフの時間を取ることは大切なことである。精神的にゆとりが無くなってくると、オフの感覚もなくなってくる。
幸い当方はまだ精神的な余裕があり、出張時の移動時間は大切なオフ時間である。7月29日9時50分発ANA-NH919便では、面白い出来事があった。左隣に元AKB48現JKT48のタレント近野莉菜嬢が座ったのである。前には若いマネージャーが座っていた。
搭乗時間ぎりぎりに入ってきた彼女はすっぴんに近い薄化粧であった。後日娘に話したらそのような化粧が若い人にはやっている、とのこと。顔のイメージはタレントに見えなかったが、衣装はそれなりの姿であった。
当方も短パンTシャツとそれなりの姿であり、二人並べば親子で、海ならぬ上海へ遊びに行く姿に周囲から見られたのかもしれない。姿形は紳士にほど遠くオタクオヤジの姿だったが、サインを求めたりせず、一応気がつかないふりをして静かに紳士的に振る舞い飛行機を降りた。
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この一週間書店に並ぶ週刊紙には理研副センター長の自殺の記事が掲載されていた。しかし、内容はこれまでの寄せ集めの記事ばかりで、中には死者に失礼な記事もあり執筆者の人格を疑いたくなる。
彼の自殺は大きな事件であるが、週刊誌ネタとして騒いではいけない事件である。彼の立場と行動を考えたときに、あまりに悲しい事件である。彼の周囲の人は彼のおかげで利益を得たにも関わらず、誰も彼の苦しみを救おうとしなかった。むしろ彼を自殺に追いやる方向へ動いていた。
高純度SiCの事業をゴム会社で立ち上げた時に組織という実体が人間そのものの現れであることを知った。すなわち健全な組織は、健全な精神を持った人間の集団で運営された結果である。
入社時のゴム会社は創業者の精神が生きている健全な組織だったが、巨額の企業買収でしだいに不健全になり、新聞沙汰になったできごとが起きるまでに至った。すでにそのキズは癒え、3年前講演者として招待されたときには昔の健全な会社になっていた。創業者の伝説を大切にする会社は、仮に一時的に風土が病んでも自己再生する力がある。
たまたま風土が不健全になっていたときにFDをいたずらされた。犯人が分かっていたので課内会議で他人のFDにいたずらするのはやめましょう、と提案した。会議終了後、犯人から呼び出され、謝罪があるのかと思ったら説教であった。机をばんばんと叩きながら尋常では無かった。
その後は思わぬ方向へ推移したので、組織と個人のジレンマに陥り、自ら企画し学位までまとめ、事業として立ち上げた仕事をすべて捨てる決断をした。組織に発生したジレンマでは、個人の力で解決できない状態の時、個人は逃げ場を失う。もし組織がその個人を本当に心配しているならば、組織が問題解決に当たらない限り、最悪の場合に個人は死以外に逃げ道が無くなる。
転職を表明してから、組織は少し動き始めたが事態の改善には至らなかった。しかし当方の始めた事業は30年近く継続されており、喜ばしい限りだが、類似の問題が世の中で起きる度に思い出すトラウマになっている。
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格安航空会社スカイマーク社(SKY社)で賞味期限切れ商品を販売したという。カップラーメンとコンソメスープの賞味期限切れ商品なので大事には至らないだろうが、ここのところJAPANブランドの商品品質の問題記事が多い。
35年前にゴム会社に入社して一番感動したことは、社是「最高の品質で社会に貢献」とその社是を実行するための徹底した教育である。それでも小さな品質問題は起きる。
入社して間もない頃、スノータイヤのゴム部材に金具の破片が入ったかもしれない、という品質問題が発生した。品質問題のタイヤのシリアル番号は、ある範囲で分かっており、北海道へ出荷されたことまで追跡できていた。すぐに問題を起こした班の作業メンバー全員が北海道へ飛び、梱包されたタイヤを開梱し、お客様へ商品が渡る前に全品回収したという。
当時スパイクタイヤがスノータイヤとして使われており、スパイクの本数が現場で一本不足していたのでこの騒ぎが起きた。不足していたスパイク一本が本当にゴムの中に入ったかどうか不明である。それでもその不足した問題が関係していたタイヤをすべて回収廃棄したのである。
製造現場では、INPUTとOUTPUTが厳密に管理され、異常があれば徹底して対応し、品質の維持に努める。これがJAPANブランドの高い品質を支えてきた。最近その伝統が揺らぎつつあるが、品質問題を起こしているのは、限られた会社だけのようにも見える。
品質問題が起きてもそれを隠さず公開しているだけでもまともである、という論評が聞かれたりするが、かつてはお客様の手前で問題発生を阻止するという姿勢が基本だったはずだ。三菱自動車のリコール隠しの問題あたりから、このような論評が出てきたように思うが、品質問題について日本全体でタガが緩んできているように感じている。
格安航空会社のビジネスモデルは機内食などのサービスを削りコストダウンするとともに、機内販売を充実させて利益を上げるビジネスモデルだった。しかし、その機内販売される品物の品質も低グレードという評価が定着したならば、利益を上げようとしているビジネスモデルが崩れてしまう。
すなわち、商品の品質確保は利益を確保するために重要な活動の一つであり、そこに問題があったなら、経営者は他の活動も一緒に点検した方が良い。おそらく飛行機の点検品質にも問題が見つかるはずである。品質問題というのはそのような性質の問題である。
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知財が重要になった今日において、新事業企画を行うときに肉体労働の部分を省くことはできない。知財の調査という作業は方法を習得すれば、一人のリーダーの元で行える肉体労働の業務である。一人のリーダーの元に開発部門で貢献できなくなった人材をプールし、新事業企画部隊を編成する。
但しこのリーダーには企画立案から製品化まで成功体験のある管理職を任命する。決して企画経験のない管理職に担当させてはならない。該当者がいなければ弊社にご相談ください。企画立案方法から担当者のマネージメントのコツまで指南いたします。
会社に自ら貢献できなくなった人材だけで編成することに不安を感じるかもしれない。確かにそのような人材は自己責任の感覚も薄れているので、企画業務を担当したことに不満を持ったりモチベーションが下がったりする。しかし肉体労働部門に異動しただけでも訴訟を起こされる時代である。面接により業務内容の説明を行えばおそらく企画業務担当を納得するだろう。
あるいは企画専門の部門を設立した際に、会社に貢献できない人材に自己責任の意識が残っておれば、自ら志願してくるかもしれない。自ら志願してきた人材にはサブリーダーを任せても良い。とにかく職人化して開発現場で仕事のなくなった人材の処遇が問題になったら企画を担当させれば会社に貢献できる道ができる。
ドラッカーの遺作に「ネクストソサエティ」があり、そこには誰も見たことのない時代が始まる、という名言がある。弊社では30年後までの未来のシナリオを作成し、そのシナリオをもとにリケジョが活躍するサイト www.miragiken.com を運営している。過去の半導体用高純度SiCの企画をした経験から、30年後までならばおおよその予測が可能と思い、二次電池から始まり現在バイオリファイナリーについて物語を展開している。
ドラッカーが表現したように誰も見たことのないシナリオに展開される予定になっており、数年かけて物語を完成させるスケジュールで運営していますのでご覧ください。ここから企画のヒントを見つけて頂ければと思っています。
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