すでに指摘したように教科書に書かれているフローリー・ハギンズ理論(FH理論)は、二次元平面の中に二種類の高分子を仮想的に混合状態にして押し込んだときの自由エネルギー変化を議論している。そして、このモデルではそれぞれの高分子のモノマー構造が重要な意味を持っている。換言すればモノマー構造だけで判断しているに過ぎない。
だからSMALLの方法というSP値の計算結果とχパラメーターはうまく相関する。実際の高分子を混合したときには、このモノマー構造以外に鎖状の高分子が取る立体構造にも自由エネルギー変化は影響を受けるはずである。
このような仮説で、側鎖基にバルキーな基を持ったポリオレフィン樹脂にポリスチレン系TPEを相溶させる実験を行った。どのようなポリステレン系TPEでも相容するわけではない。ちょうどポリオレフィンの錠に対してカギの関係になるような立体構造のTPEだけが相溶し、透明な状態になる。
10年以上前にD社お願いし、様々なポリスチレン系TPEを合成してもらい、この錠と鍵の関係を探す実験を行ったら、うまく16番目に合成されたTPEで透明なポリマーアロイを合成することができた。この実験結果は、モノマー構造だけでなく高分子の立体構造も高分子の相溶に効果があることを示している。
余談だがこのポリマーアロイでフィルムを製造すると偏光フィルムとなり、クロスニコルの位置にすると暗くなる。ベンゼン環が複屈折を持つためだが、この詳細の特許出願は成されていない。当時の開発目標とは異なる性質で特許出願ができなかったためである。もしご興味のあるかたは問い合わせて頂きたい。
この実験に成功すると、二種類の高分子が混合された状態で圧縮を受けるとどうなるかが興味を持たれる。メカニカルな力で強引に高分子を接触させるぐらいの状態にして、緩和時間以内に両者の高分子のTg以下に冷却すれば相溶した状態を保持できるはずである。
このような仮説で実験したのが先日書いたPPSと6ナイロンの相溶化である。これは運良く開発ステージが製品化直前で、PPS/6ナイロン/カーボンの処方を変更してはいけない、という状態でテーマを引き継いだので大手を振って実験ができた。ポリオレフィンとポリスチレン系TPEの時のようにこそこそ実験を行う必要が無かった。
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昨晩日本は中国に完敗で、石垣選手が1ゲーム取っただけであった。この3日間毎晩卓球選手権を楽しみに観ていたが、昨晩はややつまらなかった。選手の目の色が石垣選手以外オランダ戦や香港戦の場合と少し違っていたからだ。
特に香港戦における平野選手の逆転劇では鳥肌がたったが、昨晩の平野選手にはそのようなシーンは無く、あっけなく終わった。中国が強すぎたのか?確かにすべて3-0で勝ち上がってきた中国は強いかもしれないが、オランダ戦や香港戦における日本選手の戦いぶりを観ると勝負に臨む意識や姿勢も大きく影響しているように思う。
中国戦で石垣選手が唯一1ゲーム取ったときにその様に確信した。世界ランキングが30位以上も異なる相手に対して1ゲーム取るのは大変なはずだ。実力以上の力が働かなければ勝てないだろう。たとえそれが相手の苦手意識だったとしても実力以外の要素である。勝負に勝つためには能力以外の要素を引き寄せる力も必要だと思っている。そのために誠実かつ真摯な日々の努力が必要なのだ。
32年間の研究開発経験でも能力を超える現象を何度も見てきたので、その努力の重要性を信じている。例えば半導体用高純度SiCの合成に初めて成功したときには原因不明の電気炉の暴走という事件があった。但し、その暴走のおかげで最適なプロセス条件がたった一回の実験で見つかり、ゴム会社から2億4千万円の先行投資を受けることができた。
PPSと6ナイロンを相溶させるプロセシング技術を開発した時においても、運良く押出機の能力で必要な剪断速度が得られる実験環境が目前にあり、試作機を新たに立ち上げなくとも押出機を含むシステムをそのまま試作機として活用できた。また、ポリオレフィンにポリスチレン系TPEを相溶させる実験では、それを担当していた派遣社員のモラールが下がり始めた16番目(注)のTPE合成条件で初めて相溶し透明になるポリマーが見つかった。
さらに驚いたのは、昨日の地震である。実は6月6日に高分子学会主催ポリマーフロンティア21が開催され、その招待講演者に選ばれているが、そのために必要な資料が紛失していて、予稿集を書くときに苦労した。退職者の立場で公開されている実験データは重要である。講演までに探さなければいけないが、と悩んでいたら、震度5弱の地震のおかげで資料棚に積み上げてあった資料の一部が崩れ落ち、なんと崩れた資料の一番上に探していた大切な資料が現れたのだ。これにはびっくりした。
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テルマエロマエ2を観た。前回同様にばかばかしいお話しで無条件に面白かった。現代の温泉からアイデアを拝借し古代ローマの風呂を発明する、という方法は技術における発明の一つのやり方である。毎回平たい顔の部族として日本人が紹介されるが、古代ローマ人を演じているのも日本人の俳優である。同じ日本人でもその顔は立体的に大きく異なるのである。
フローリー・ハギンズ理論では、立体的に大きく異なる2種の高分子を、二次元平面の格子の中に押し込んでその自由エネルギー変化を論じている。高分子が平たい形態をとって挙動しているならば、この二次元平面における考察でうまく説明できる。しかし、高分子はその長さ方向にも様々な形をとり、これをコンフォメーションと呼ぶが、そのエントロピー変化はこの理論において無視されている。
テルマエロマエでは、時空を越えた古代と現代の往来の表現をオペラの歌声とともに高速の流れとして表している。今回はその流れの表現として水洗便所まで飛び出した。そして太った関取が時空の流れの中で変形せず、詰まってしまう。詰まってしまったのに次のシーンではうまくワープしているのである。ばかばかしい。
2種類の混合された高分子の融体を細いスリットに高速で通したらどうなるか。恐らく大きな剪断応力が発生し、分子は長く引き延ばされる。1mm前後の厚みで幅2cmのスリットへPPSと6ナイロンを混合し押し込んだら相溶し透明な樹脂が流れ出してきた。GPCで分子量分布を測定しても特に低分子が増えたというわけではないので、大きな剪断応力がかかっても分子の断裂は起きていない。
本来非相溶系の組み合わせがとんでもない領域にワープしたのである。そのままPPSのTg以下へ急冷すれば6ナイロンが相溶した材料ができる。その材料で作られたフィルムはPPS単独の場合に比較し、もの凄く靱性が向上していた。
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ポリマーアロイを設計する際によりどころとなるのは、高分子の相溶を扱うフローリー・ハギンズ理論(FH理論)であるが、この理論のモデルは極めて単純で実際のブレンドされた高分子を議論するには不十分である。
この理論ではχパラメーターが定義されているが、高分子の立体的な構造の寄与、すなわちスター型とリニア型の差異を議論することができない。また、低分子の混合から導かれるSP値と相関するがこれも高分子の分子量のことを考えると気持ち悪い。
実務では、低分子溶媒に高分子を溶解しSP値を求めているので、χパラメーターで議論するよりはSP値で議論していることになる。またFH理論は単純な格子理論から導かれたものであり、高分子のモノマー単位(構成単位)をそれぞれの格子に隙間無く当てはめて考えているので、そのモデルで扱える高分子は限られる。
実務で用いている方法に近い研究から高分子のSP値を求める計算方法(Smallの方法)が導かれている。官能基の引力定数表をもとにモノマー構造からSP値を計算するのだが、経験的には60%前後の精度で当てはまるように思われる。
かつてラテックスの分子設計ではSmallの方法を用いていたが、40%前後ははずれたために手直しが必要だった。具体的にはPETとゼラチンとの接着層の設計で使用していた。PETのSP値に合うようにラテックスを設計するが、実際に接着力を計測すると、40%前後はほとんど接着しなかった。そのためラテックスのモノマー構成を見直し、再度合成するのだが2-3回の試行でうまく接着できるラテックスが見つかった。
これをOCTAのSUSHIを使って検証してみても同じような確率である。SUSHIにしても相溶の判定はSP値を用いているからだが、面白いのは界面幅というパラメーターだ。このパラメーターは、おおよその相溶性のズレを予測する時に使えそうである。
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ヨドバシカメラを10日でやめた新入社員の話がインターネットで話題になっている。何のことかと調べてみたら、ヨドバシカメラの採用チームの担当者が10日でやめた新入社員を説得した体験についてブログに書いていた。それも前編と後編にわけて書いているのだから、何かアピールしたかったのだろう。
このブログについて前編後編とも読んでみたが、読み手により判断が分かれる内容である。間抜けなブログと判断する人もいるかもしれない。あるいは採用担当に同情する人もいるかもしれない。だからインターネットでも議論しやすく意見がいろいろ出ているのだろう。ブログにはこのような書き方や内容が受けるのかもしれないが、ヨドバシカメラという企業に対する印象を左右しかねない内容である。
「入社10日目でアルバイトと変わらないつまらない仕事だからやめる」、と正直に言っている新入社員を説得しているのである。ブログを読んでいると、説得している採用担当もその点を認めているように思われる。つまらない仕事しか無い会社なのだろう。
もっともデズニーランドのような誰もが行きたくなる楽しい会社であれば、給料を払うのではなく、社員から入社料を頂かなくてはならない。一般に会社の仕事には快楽的な楽しさの要素は少ないかほとんど無いはずだ。そのうえで「働いて幸せ」という採用担当の価値観を説いて聞かせ、辞めた後の人生の幸せを願っている、という内容である。
この採用担当はどこまで真剣に新入社員の立場まで考え説得しているのか疑問である。新入社員はただ公務員になりたかったが訳あってヨドバシカメラに入ってみたものの勤務している時間がもったいないから辞める、公務員試験の勉強を集中して行いたい、と言っているのである。
当方が新入社員時代に「この会社にはメーカーとしての技術は無い」と言って6ケ月の新入社員訓練を受けて配属の日に退職願を提出した同期がいる。ゴム会社としては大損である。たまたま研修中に交流する機会があり、その個性も含め退職理由も理解できたが、今や某一流企業の社長である。かたや、「技術が無いから僕はがんばる」といってゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げ、頑張ったにもかかわらず気がついたら写真会社を早期退職していた、というサラリーマン人生もある。貢献と自己実現を十分に実践してきたが、「働いて幸せ」と考えたことは無い。「働く場所がある幸せ」は感じていたが。
写真会社で退職願いを出しても「もう少し後でやめれば、優遇制度の退職金上乗せ額が増えるかもしれない」と言ってくれた人もいて、「確かに業績が良くないからそうなるかもしれないが、追い出されて辞めるよりは」、と答えるのが精一杯である。新入社員で会社を辞めるときと、サラリーマンの晩年で会社を辞めるときでは、その動機は全く異なる。サラリーマンの晩年は「働く場所」が年齢とともに無くなるのである。無くなってから辞めるのか、無くなる前に辞めるのか、辞めてからの苦労を考えなければ、幸せ感を持って辞めた方が精神衛生上好ましい。
ヨドバシカメラの新入社員は、説得されなくても公務員という夢を持って会社を去った。若くして会社を去るのはその会社に魅力が無いか何か問題があるときである。おそらく社会に歓迎される話は新入社員の早期退職ではなく、60過ぎたら仕事を自由に選べる会社の話題だろう。弊社はその様な会社を目指して頑張っている。
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高分子のプロセシングに慣れた1980年代には、セラミックスフィーバーの嵐が吹き荒れ、セラミックスの高純度化が話題になっていた。高温度で安定なファインセラミックスを合成後高純度化するには再結晶化以外に手法が無くプロセスコストが問題となっていた。
例えば、半導体用SiCであればアチソン法でインゴットを大量に生産できるが、その純度が低いため昇華再結晶プロセスが必要となり、プロセスコストが嵩み当時1kgあたり10万円以上の価格で取引されていた。ジメチルポリシランを用いる高純度化プロセスも提案されていたが、前駆体となる高分子の価格が高いという問題があった。
カーボン源としてフェノール樹脂(当時350円/kg)、Si源としてポリエチルシリケート(当時750円/kg)を用いることができれば、低コストで高純度SiCの前駆体高分子を合成可能となる。しかし、χが大きなこの二種の高分子を均一に混ぜて高温度まで均一なポリマーアロイを合成することは困難に思われていた。
ここでワンショット法の知識が役立ち、酸触媒を用いて安定な前駆体を合成することに成功した。この方法で合成された前駆体がどのくらい均一であったかは、前駆体を炭化した電子顕微鏡の写真と反応速度論の解析結果から推定された。
すなわち前駆体高分子から得られた炭化物はSiO2とCが分子オーダーで均一になっており、その炭化物を用いてSiC化の反応を行うと均一素反応の取り扱いが可能であった。この方法で合成されたSiCは半導体分野の製品に用いるには十分な純度であり、現在でもピュアベータという商品名で事業が継続されている。
高純度SiCの反応機構は、均一素反応の取り扱いで解析できたので分子レベルの均一性を達成していると推定され、これはχが大きな高分子の組み合わせを「反応させて」均一にする手法の効果である。このようにリアクティブブレンドは、ラテックスで二種類の高分子を混合するよりも高いレベルで高分子を均一にできる。
構造の異なる高分子を二種以上混合するプロセスが必要となるケースは多い。そのとき用いられる考え方は、フローリー・ハギンズ理論である。この理論によれば樹脂補強ゴムの相分離や、それがプロセスの影響を受けロバストの低い条件が存在するのも理解できる。また、χの大きな高分子を組み合わせて均一に混合された材料を設計したい場合には、ラテックスで混合する手法よりもリアクティブブレンドが有効であるが分子構造に制約が多い。
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発明の方法には、科学的成果を科学的に展開し発明に至る方法以外に、蓄積された経験を基に、要求される機能を実現する方法を探り、逆向きの推論を活用して技術を構築する方法もある(www.miragiken.com)。
PPSと6ナイロン、カーボンの処方をコンパウディングしてできる構造は、PPSと6ナイロンが非相溶系なので、バンバリーを使用したときにできる特許の図(特2010-195957)に示したような、PPSに島として分散している6ナイロン相にカーボンが分散した高次構造、あるいは二軸混練機を使用したときにできるPPS相にカーボンと6ナイロンの島相がばらばらに分散した高次構造となる。
カーボンのクラスターの状態で抵抗が大きく変動するパーコレーション転移をうまく制御するためには、カーボンを島相に閉じ込めた前者の構造が好ましいが、この構造では6ナイロン相の弾性率が上がり、材料全体の靱性を劣化させてしまう問題がある。後者では材料の靱性について柔らかい6ナイロンが分散した効果でPPS単一組成のマトリックスよりも改善されるが、カーボンのクラター制御が難しく、押出成形した時にベルトの面内抵抗分布が大きくばらつく。
すなわち、抵抗制御の観点からは前者が好ましく、ベルトの力学物性の観点からは後者が好ましい高次構造である。これらの実験結果から最も望ましいと期待される構造は、非科学的ではあるが、6ナイロンがPPSに相溶しカーボンが弱い凝集力で島相となっている高次構造である。この考えに至ると、6ナイロンをPPSに相溶させるプロセシングを実現する技術が必須となることが見えてくる。
非相溶系であるPPSと6ナイロンを相溶させるプロセシングは、フローリーハギンズ理論を信じる限りリアクティブブレンドだけとなる。この点については後日述べるが、もし二軸混練機のような連続式混練機で実現できたならば、マトリックスのTg以下の温度で相溶状態のまま急冷すれば、複写機の使用環境でその相溶状態が保持された材料になることは、高純度SiCの前駆体高分子を合成した経験から容易に思いつく。
このプロセシングは、二軸混練機からストランドを急冷して引き取れるようにすば実現できるので一般に行われている方法で容易である。残るのは、二軸混練機あるいは類似の連続式混練機で相溶状態を創りこめるかどうかという問題である。
この問題解決に向けて、二軸混練機以外に剪断力の大きいKCKと呼ばれる石臼式混練機で複数回混練したり、二軸混練機とKCKを組み合わせたりしてPPSと6ナイロンが相容するかどうか実験したが相溶しなかった。そこで、ゴム会社時代からの経験を総動員してカオス混合装置を試行錯誤で工夫し考案した。非科学的で怪しいかもしれないが、STAP細胞と異なり、現在も生産で使われているのでこれは本物の技術である。但しそこで起きている現象は現代の科学のレベルでは非科学的現象として扱われる。
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技術の発明には、科学的成果を前向きの推論で使い科学的方法で行う方法と、蓄積された経験(K)を基に要求されている機能を心眼で見つめ逆向きの推論により、創り上げる方法がある。後者については心眼の代わりに勘(K)と度胸(D)をあげて、KKDによる開発として知られているが、単なるヤマカンではなく経験を積み重ねると生まれる心眼を使うところがミソである。
機能から逆向きの推論を進める方法については、花冠大学のホームページ(www.miragiken.com)で紹介中だが、この方法は学校で教えない。企業で伝承されている方法で、ゴム会社で習った。写真会社はもっぱら科学的方法を信奉している企業で、KKDを馬鹿にしている。
ゴム会社ではKKDは大切な一つの方法として認知されているが、実際に行われているのは心眼を用いた方法である。大切なのは商品に要求される機能から逆向きの推論を行い技術を生み出してゆく活動である。この方法を謙遜してKKDと言っている。単なるヤマカンは、ゴム会社でも馬鹿にされる。
経験は大切である。人類は経験を普遍的な知識として伝承するために「科学」という哲学を創り出したのかもしれない。「科学」から生まれた知識を正しく伝承するためには、その知識が「普遍的な真理」として保証されていなければならない。ゆえに捏造が許されないのだ。科学の伝承は性善説が前提となり、そこに邪悪な考えが忍び込むと捏造が起きる。
山中先生まで頭を下げている写真が新聞に載っていた。立派な姿である。一方STAP細胞の騒動では、この一連の謝罪をもとに鬼の首を取ったように自己の捏造を正当化しようとする人がいる。科学の世界では、まず真実の前に謝罪が必要だ。学位論文のデータを転載したのは、明らかに言い訳のできない悪意だ。いくら整理整頓が悪くても自分がまとめた学位論文のデータぐらい記憶している。
STAP細胞については、iPS細胞で山中先生がやられたように、まず技術として生みだし科学として完成させる方法が有効だと思う。科学的方法一本槍では、時間がかかる。当方ならばSTAP細胞の技術を技術として創り出せる自信がある。
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将棋の世界で異変が起きているという。プロ棋士がコンピュータ相手に将棋で負け続けているそうだ。その様な状況で、将棋がコンピュータにより完全に解明されたらどうするのか、と羽生プロに尋ねたら「その時は桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えれば良い」と答えたそうだ。
終盤力が勝負の分かれ目といわれていた将棋は、やがて中盤力の研究が中心になり、現在は序盤が勝負になっているという。将棋の世界は弊社が運営する未来技術研究部のホームページ(www.miragiken.com)で紹介したような逆向きの推論のように解明が進んでいる。押出成形も結論に当たるフィルム材料に着目したならば、押出機や金型だけでなくコンパウンドまで研究を遡る必要がある。
フィルム成形では、溶融しやすいPETやPP、PEなどのフィルム成形は、押出機で何とかなった。しかし、PPSなどのエンプラのフィルム成形やカーボンを分散した半導体フィルムの成形など次第にその成形技術が難しくなってくると、将棋と同じように序盤、すなわち分子設計やコンパウンディングが重要となってくる。
しかし、昔書かれた押出成形の教科書にはコンパウンディングとフィルム成形の関係については書かれていない。押出機で話が始まっている。しかし、押出機だけではフィルムで発生するトラブルを解決できないケースがある。押出機の工夫だけでは解決できず、混練機から金型まで一連のシステムとして捉えなければ、良好の品質のフィルムを成形できないケースが出てきた。
しかし押出成形技術の解明はまだ完璧にされていない。射出成形は金型で樹脂の表面は制御される。ところが押出成形では、金型のリップを樹脂が出た後も樹脂の表面は冷却されながら変化している。表面だけでなくフィルムの中心部も変化しているが温度測定可能な表面に比較し、中心部の変化は複雑で解明が難しい。
カーボンを分散した樹脂でフィルムを押出成形すると、表面と中心部で体積固有抵抗が異なることから冷却過程の高次構造変化が複雑になることを予想できる。コンピューターでシミュレーションをおこなうとすれば、パーコレーションの概念をどのようにプログラミングするのかが問題となる。押出成形は簡単に見えるが将棋の世界よりも難しく、いまだノウハウが要求される分野である。
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押出機については樹脂を押し出す機能だけを考えた方がシステムを組みやすい。すなわちコンパウンディングは混練機で行い、押出機では、それを均一に再溶融して押し出す機能だけ考える。混練機の練りが浅いから、という理由で押出機に混練の機能を持たせる考え方とは異なる。
もし押出機に混練の機能を持たせたいのなら、単軸押出機を二軸押出機に交換し、徹底して混練を行うようにするが、単軸押出機で二軸混練機のコンパウンディングで不足した練りを補うことを考えない方が良い。単軸押出機を使用する場合には、樹脂温度の均一化に配慮することが大切で、高分子にさらに練りを加えるプロセスを考えない。
前工程で混練が完了していることが重要である。もし押出成形の段階でコンパウンドの練りが浅いという問題が発生したならば、混練工程でその問題を解決する。理由は単軸押出機で仮に問題解決できたとしてもロバストの低いシステムになる可能性があるからだ。
高分子の中にはフィルム成形で混練工程が不要と思われている材料も存在する。あるいはフィルムに機能性や高い品質を望まない場合には押出機に樹脂を投入する前に混練する必要はないかもしれない。その様な場合に押出機の中で混練もやってしまおう、という考え方は当然出てくる。この場合には押出機の中で混練が完結していることを確認しなければいけない。中途半端な混練状態で押出機のシステムを立ち上げた時にはフィルム品質はばらつく。
例えばカーボンを高分子に分散し、10の9乗レベルの半導体フィルムを製造するときに、十分に混練されていない場合には抵抗のばらつきが発生する。混練工程で十分に混練し、安定した抵抗となる状態のコンパウンドを用いたほうが良い。
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