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2013.05/17 成功する技術開発(22)

弊社の研究開発必勝法プログラムは、お客様のご希望を取り入れ、プログラムを組み立てて研修を行います。研修の対象も担当者から管理職まで幅広くご利用頂けます。

 

弊社の研修で向上するスキルは問題解決力ですが、要求される問題解決力は、階層ごとに異なりますので、研修も階層ごとに異なるプログラムを使用します。本来は、管理職以下全員の受講が好ましいですが、管理職だけ、あるいは実務担当者だけ、というご希望にも対応いたします。

 

弊社の研修は単なる問題解決法の研修ではありません。実務で遭遇する問題は、単なる受験参考書の問題を解く様な感覚では本当の解決ができないからです。また、問題を解くことができてもそれが実行されなければ、実務の問題を解決できたことになりません。

 

また、科学の問題解決は、科学的知識の動員で解決できますが、技術の問題は、科学的知識を動員しても解決できない場合があります。この点を理解されていない方が多いですが、弊社の問題解決法では技術の問題の解決も可能とします。

 

科学の問題解決では、科学的知識や情報が世間に存在しない場合は、科学的に成立しない、として解が得られ問題解決されますが、技術の問題では、目標とする機能を実現する方法について探索しなければなりません。実はこの技術を探索する方法について学校教育では教えていません。現場で技術とともに伝承されている無形の方法です。弊社ではそれを「見える化」しております。

 

技術の問題解決法としてオブジェクト指向に類似しているTRIZやUSITが注目されていますが、弊社の問題解決法のエンジン部分はオブジェクト指向では無くエージェント指向に分類されます。TRIZやUSITのような難解な手続きの問題解決法ではありません。科学的な問題解決法として知られているTRIZやUSITの導入でつまづいた経験のあるお客様は是非弊社へお声をかけてください。

 

カテゴリー : 一般

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2013.05/16 成功する技術開発(21)

カーボンロッドとSiC単結晶を組み合わせ、それをカーボンが分散したフェノール樹脂でいぐるみ、1000℃で炭化処理後石英ガラスにArガスとともに封入した状態でゴニオヘッドに取り付けた。レーザーでSiC単結晶を加熱しながら四軸回折計で計測を行ったところ、SiCが分解を始める2000℃まで線膨張の様子を観察できた。その結果は、以前この蘭でも紹介したが6HSiCに異方性があることを示すデータが得られた。

 

このデータが得られたとき、無機材質研究所へ留学してからすでに6ケ月経過していた。本社人事部から電話を受け取り、その内容からI先生が1週間の猶予をくださり、高純度SiCが生まれた状況もすでに紹介した。

 

高純度SiCの技術が生まれ、ゴム会社がその技術に2億4千万円の先行投資を行って、半導体事業が住友金属工業とJVとして立ち上がるまで8年という月日が過ぎるのだが、その背景にある経営陣の努力は重要であった。

 

すなわち、研究部門では支持されていなかった企画を、経営陣が育て上げたのである。研究部門では、ファイセラミックスフィーバーの中で、消極的な企画提案しか無かった。積極的に半導体事業を立ち上げるという夢のような提案は、主任研究員レベルでブロックされていた状況だった。8年間のデスバレーを歩いていたときも、さらには転職せざるを得ない事件まで起きたのも、研究開発現場ではいわゆる抵抗勢力の意見の方が強かった。しかし、資金面も含め経営陣の暖かい支援が企画立案時からあったのである。

 

CIを導入し、社名からタイヤを取り除き、「メカトロニクス」と「電池」、「ファインセラミックス」の3分野を明確に示しエレクトロニクスへの進出を全社方針に掲げ、研究所に埋もれようとしていたSiC半導体事業を経営陣は引っ張り上げたのである。

 

研究所内で高純度SiCの事業に対しては否定的であった。8年間周囲から大小の妨害も受けたが、JVとして立ち上がるまで、資金面も含め経営陣から精神的な支えとなるような有形無形の支援を受けた。FDへのいたずらが起きたときに考えたのは、その支援にどのように応えるのか、であった。他社とのJVが立ち上がり、半導体冶工具の開発方向も決まり特許出願も済ませた。おそらく周囲は事業としての成功が見えたのだろうと思った。いろいろな想いが去来し、仕事に未練があっても自分が会社を辞めることが最良の道であると判断した。その結果、事業は30年経った今も続いている。

 

この高純度SiCの事業で最も重要な役割をしたのは経営陣の新規事業を育てようとする意志である。その強い意志は、当時担当者の立場で充分に理解できた。NHKで放映された「日本の先端技術」という録画番組を何度も社内で放映したこともその一例である。宮崎緑のファンになった人もいたようだが、ファインセラミックスフィーバーを伝える意図があったことは明確である。しかし、研究部門は大きく動かなかった。高純度SiCの企画も主任研究員の段階で止まっていた。しかし、その企画は50周年記念論文への応募という形で、経営陣に届けられた。

 

大企業で経営陣と事業部門の意見が分かれた場合、企業統治が機能していない会社では、社長方針どおりに事業部門が動かない場合がある。日本ではそのような会社が多いのではないだろうか。企業統治をどのように機能させるかはこの20年様々な書籍が出版されてきたように経営の重要な課題の一つだろう。サラリーマンという生き方、ワークライフバランスなどの考え方も定着し、企業経営に「経営環境の厳しさ」を持ち込みにくい状況である。しかし、イノベーションというものは本来多大なエネルギーが必要で厳しさが必ずつきまとう。楽しくイノベーションできる方法があれば、それは究極のマネジメントかもしれない。厳しさを和らげる一つの提案が、弊社の「研究開発必勝法プログラム」である。本プログラムの導入により、例えば研究開発部門の長時間労働リスクを取り除くことが可能となる。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2013.05/15 成功する技術開発(20)

ゴールの姿は、カーボンロッドとSiC単結晶とをカーボンで固定している状態です。このゴールイメージができますと、どのようにゴールを達成するのか、という問題を考えることになります。結論は、フェノール樹脂にカーボン粉を分散した流動性のある物質でカーボンロッドとSiC単結晶をいぐるみ、不活性雰囲気下1000℃で熱処理を行えば良いのです。この結論に至る問題解決方法も含め、弊社ではアイデアを出す方法や技術開発を成功させる方法など研究開発業務を改善できるノウハウを指導しています。すなわち弊社の問題解決法は、30年以上現場で実践されてきた手法です。

 

最近「逆から考えると仕事はうまくゆく」という実務書が発売されましたが、この本はただ結論から考えると問題解決は易しい、と述べているだけです。この指摘は、古くから数研出版の大学入試用問題集に書かれていた、「文章題は結論からお迎え」と何ら変わりません。すなわち結論から問題を考える有効性はすでに皆さんご存じのはずです。しかし、それでも研究開発がうまく行かない場合があります。弊社では、この「結論からお迎え」という考え方を有効に使用する方法と、そこから得られた解の一つをどのように展開して研究開発の成功に結びつけるのかを指導いたします。

 

弊社の問題解決法を会得しますと、研究開発のスピードが格段に早くなります。その理由は、技術で研究開発を推進するからです。科学的研究については、技術開発が終了してから必要に応じて行えば良い、という考えです。科学的研究を否定していません。むしろ科学的研究による技術開発のスピード低下をどのように改善するのか、という点を追究しています。

 

長時間労働の禁止やワークライフバランスが叫ばれていますが、まずスピードをあげる手法を身につけてこれらの施策を講じなければ、単なる業務量の削減運動になってしまいます。これでは業績低下を招きます。弊社では、ワークライフバランスを普及させるために、特に効率向上が難しい研究開発部門のスピード改善に注目しました。弊社の手法を身につけ皆が能力アップできれば、わざわざワークライフバランスなど導入せずとも研究者や技術者は自分の生活の質の向上を考えます。

 

<明日へ続く>

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2013.05/14 成功する技術開発(19)

1983年4月から無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)へ留学した。担当したテーマはSiC単結晶の線膨張率直接測定。X線四軸回折計のゴニオメーターに取り付けられた6Hや2HのSiC単結晶をレーザーで2000℃まで加熱し、結晶格子の座標系から線膨張率の異方性を直接観察する研究であった。市販されている接着剤の耐熱性が1000℃前後が限界なので、2000℃まで実験することができず、その接着剤を開発しなければならない。

 

科学で考えると大変難しい仕事である。しかし、このような問題は技術で考えると易しくなる。あるべき姿は、SiC単結晶がゴニオメーターに2000℃まで安定に固定されている状態を作り出せば良いのである。ゴニオメーターは金属でできた精密部品である。しかし、カーボンロッドの先に取り付けられた単結晶をレーザーで直接加熱しているので、40℃以上に上がっていない。残る問題はカーボンロッドとSiC単結晶の接合部分である。2H単結晶は1400℃で転移するのでカーボンとの拡散接合という手段が使えない。

 

世の中に存在する接着技術で2000℃までSiC単結晶とカーボンロッドを安定に固定することは不可能であるとすぐにわかった。技術的視点からは、安定に固定する機能をどのように実現するのか、という問題となり接着以外の固定方法を考えることになる。

 

2000℃まで安定な材料はカーボンがある。カーボンでSiC単結晶を包み、それを石英製の透明ガラスに不活性ガスとともに封入すれば技術として完成する。石英製の透明ガラスは、予め豆電球の構造に作っておき、その中にカーボンロッドとSiC単結晶、不活性ガスを封じ込めば良いのでガラス細工で何とかなる。有機合成実験ではガラス細工は必須の技能であったので、成功に至る手順は頭の中に具体的に描かれた。

 

残る問題は、どのようにSiC単結晶をカーボンで包みカーボンロッドに固定するのか、ということである。

 

<明日へ続く>

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2013.05/13 成功する技術開発(18)

無機材質研究所I先生との電話の中で、留学生受け入れ定員がすでにオーバーしていること、またセラミックスを事業としている会社の留学生を優先していることなどを知らされ、現状で専門外の研究者の留学は難しい、と断られた。しかし、2週間後のご講演予定を知らされた。電話でI先生の優しい人柄を感じられたので、2週間後のご講演後の面会に備え、猛勉強をした。また50周年記念論文の内容を高純度SiCの事業に絞りこんだ論文に仕上げた。

 

I先生の講演終了後1時間弱の面談で、専門外の研究者が今無機材質研究所へきても指導できないので留学生は単なるお手伝いとなってしまう現状を説明された。しかし、勉強は独学で進めることと、用意していた高純度SiCのビジョンを熱くプレゼンテーションした。この熱意が伝わり、後日会社の上司と無機材質研究所へ訪問することになった。

 

セラミックスフィーバーの始まる前から、無機材質研究所はファインセラミックス分野で世界の先端を走っていた。取締役と直属上司の3人でI先生を訪ねたところ、無機材質研究所長をご紹介された。研究所長は、以前勤務されていた大阪工業技術試験所時代にブリヂストンタイヤ㈱創業者石橋正二郎氏と親交のあった話をしてくださるとともに、「SiCという材料ならば㈱ブリヂストンが研究するにふさわしい。」、と会社の幹部を前に力強いアドバイスをしてくださった。

 

さらに、SiCという材料はエンジニアリングセラミックスとして注目を集めているが、高純度化できれば半導体分野でも有望な材料となること、そしてその耐熱性ゆえにパワートランジスターの材料として期待されており、将来電気自動車用の電装部品事業に進出できる、と夢のようなお話を語ってくれた。専門外の若者が書いた論文よりも迫力があり、会社の幹部とセラミックスの夢を共有することができた。

 

<明日へ続く>

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2013.05/12 成功する技術開発(17)

通産省(今の経済産業省)のムーンライト計画が引き金となりセラミックフィーバーが起きた1980年頃の話である。入社した会社が50周年を迎えた。CIを導入し、社名からタイヤが無くなり、「ファインセラミックス」と「電池」、「メカトロニクス」を新事業の3本の柱に育てる全社方針が発表されるとともに、50周年を記念した各種の行事が企画された。

 

その中の一つに会社の未来の夢を描く「50周年記念論文の募集」があった。経済学部の大学教授が選者でその企画は進められた。NHKテレビの特集「日本の先端技術」という番組の録画が、社内のテレビで何度も放映された。番組ではセラミックスフィーバーを取りあげていた。専門外であったが、会社の意図を汲み、セラミックスフィーバーを取り入れた論文を書くことにした。

 

ゴム会社のコア技術である高分子材料技術でセラミックスを合成する話を中心にして、材料科学分野で進歩が遅れていたセラミックス材料の研究開発が進み、新材料が技術を牽引するという内容でまとめ応募した。タイヤ会社で半導体事業を展開する夢のような話である、とその論文を自己評価した。しかし、極めてリアリティのある話でフローリーハギンズの理論との整合性を考えなければ研究論文として読むことができる内容であった。

 

同期の天才肌の友人がその論文を読み笑った。今回の記念論文募集の主旨は現実的な話では無く、もっと夢を膨らませた話を求めているのだろう、と。〆切は1日過ぎていたが、友人は事務局に電話をかけ、明日でも受け付けてもらえるのか尋ねた。驚いたことに8名の応募しか無く、事務局は職制を通じ改めて再募集をかけているとのこと。友人と二人で従業員の関心の低さに驚いた。

 

さて、同期の友人は1日で書き上げた論文を応募したのだが、なんとそれが主席となったのだ。内容は、牛の旨みと豚の繁殖力を生かしたトンギューなる生物をバイオ技術で生み出す話や、奇想天外なマリンスポーツの話がちりばめられていた。いずれも30年経った現在でも実現されていないユニークさでは抜群の内容であった。入選した論文はそれぞれの夢にあふれていた。高分子からパーフェクトセラミックスを合成し、その技術で事業を展開するという夢のような話と思っていたが、専門外の人が読むとすぐに実現しそうに思われる内容なので佳作にも入らなかった。

 

しかし、海外留学のチャンスが生まれた。人事部長に呼び出され、論文に書かれたことを実現したらどうだ、ということになった。うれしい話ではあったが、今更あれは難しい夢の話とも言いにくかった。世間ではセラミックスフィーバーの嵐がますます激しくなっていた。学生時代は有機合成以外勉強してこなかったので、大学時代の無機系がご専門の恩師に相談したら、海外に行くよりも国内の研究機関の方が技術が進んでいる、と教えられた。論文を調べてみてもセラミックスの研究は、当時日本が最も進んでいた。

 

恩師から無機材質研究所M先生のご紹介を受け、落選した50周年記念論文を持ってM先生をご訪問したら、I先生をご紹介してくださった。M先生は無機高分子からガラスを合成する研究を進めていた先生でしたが、論文に書かれた内容から高純度SiCを合成したら面白い、と言うことになり、SiCを研究していたグループのリーダーであるI先生をご紹介くださった。しかし、その日I先生は不在で改めて出直すことになった。人事部長に海外留学を国内留学に変更する了解を得た。

 

電話でI先生に面会のアポを求めたところ、セラミックスフィーバーの影響で無機材質研究所は日本企業の留学生で満杯である実情を知らされた。セラミックスフィーバーが始まってから研究所の規程が作られ各研究グループ3名という定員ができ、現在どこのグループも定員いっぱいであると言われた。

 

今更あの論文の内容は実現できない話です、とか国内留学先は満杯です、などと言えない。少なくとも実現できない話の部分だけでも何とかしようと文献調査をつぶさに行ったが、ファインセラミックスブームであるにも関わらず、無機高分子と有機高分子を均一に混合して高純度セラミックスを合成するという科学的に非常識なコンセプトの論文は皆無であった。自分で実現する以外に道は無かったが、アイデアはあった。上司に提出しボツになっていた企画に記載していたアイデアである。しかし、仕事の手順を間違え、少し困った流れになっていた。

 

<明日へ続く>

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2013.05/11 ミドリムシプラスチックの反響

ミドリムシプラスチックの反響は、予想外に少なかった。高分子同友会の講演で講師が「藻からオイルを抽出する技術に比較して注目度が足りない」と嘆いていたが、本当だった。バイオエネルギーは100円/lの壁が問題になっているのだが、ミドリムシプラスチックは、光学用樹脂を目標にすれば500円/kgでも充分に採算ラインになる。技術者ならば、そのラインは既に楽に越えていることを読み取らなければならない。

 

実は30年以上前、半導体用高純度SiCの企画を立てたときに上司から、指導とは言えない軽蔑に近い批判を受けた。しかし、その企画は紆余曲折の後、30年事業として続く仕事になった。上司は研究肌の人でコストがどのような展開をするのか読むことができなかった。しかし最もショックを受けたことは、実験室で購入していたポリエチルシリケートが、タンクローリーで購入すると1/10の価格になることと、実際に見積もり書を取った後の煩わしさだった。

 

業者からはいつから事業を始めるのか問い合わせが頻繁に来るようになった。また新聞社からも問い合わせの電話が来るようになった。上司からは見積書を取ったことをひどく叱られた。当方は企画書で上司から指摘された量産時の価格を調べるようにと指示をもらったので、そのまま材料メーカーに問い合わせただけだった。

 

入社して2年、まだ駆け出しの技術者に量産時の価格を調べよ、と調査方法も言わずに指示を出す上司とそれをまともに受けて見積書を取った部下とを見比べたときに、今ではため息が出るが、原材料価格が1/10になるのを見ても、企画を否定した判断はどうかと思う。最初から認められない企画であれば、そのように部下の指導をすべき役目が管理職なのである。

 

ミドリムシプラスチックは、まだ研究が始まったばかりであるが、射出成形体を実際に見て光学用樹脂としてパーフェクトポリマーと呼べるのではないか、と感じた。バイオポリマーなので分子量分布も揃っている。そして非晶性でTgも高い。少なくとも光学用ポリオレフィン樹脂よりも優れている実際のデータが揃えば世間の見方もかわるだろう。しかし、その時注目しても遅い。注目されていないが良いシーズを拾い上げ事業化に努力するのも技術者の大切な役目である。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2013.05/10 ミドリムシプラスチックは光学用樹脂の本命!か。

昨日高分子同友会の講演会で産総研芝上先生のミドリムシプラスチックの研究成果を拝聴させて頂きま した。講演の中では詳しい説明が無かったのですが、プラスチックの物性と実際の射出成形体を見せて 頂いて驚きました。光学用樹脂の本命になるポテンシャルを秘めていたのです。コストの議論が出まし たが、現在市販されている光学用樹脂の値段を出席者の皆さんご存じないためでしょうか、射出成形体 を見て感動したのは私だけだったようです。

 

ミドリムシプラスチックはまだ市販されていません。しかし、光学用樹脂として液晶用フィルムに使用 されているTACと同様のプロセスで樹脂を製造でき、さらに精製しなくとも良い点はTACよりも優れてい ます。すなわちセルロースの精製で問題になるアルデヒド類が出ないので、量産すればTACよりも安価に なる可能性を秘めています。講演の中ではこれからの樹脂として紹介されていましたが、ミドリムシの量 産に目処がつけば、TACの合成プロセスを使って理想的な光学用樹脂を製造できます。既存のアペルやゼオ ネックスと同じレベルの価格で。 (ミドリムシは汚水と光を与えれば容易に増える!小学生の時、近くの畑の肥だめのプランクトンを顕微 鏡で見たら大半がミドリムシだった。今時糞で培養はさすがに難しいでしょうが、ブタや牛の屎尿処理と 火力発電のCO2利用と組み合わせれば環境技術になる!)。

 

ちなみにTgが高い非晶質樹脂もできており、光学用ポリオレフィン樹脂のカタログに記載されているTgと 同等以上の耐熱性です。光学用ポリオレフィン樹脂では、あまり知られていませんが80-90℃前後に 隠れているTgが存在し、見かけの耐熱性がこのTgで制限を受けます。

 

しかし一次構造から推定してもミドリムシプラスチックにはそのような隠れたTgは存在しないので、光学 用ポリオレフィン樹脂よりも実際の耐熱性が高くなります。さらに、光学用ポリオエフィン樹脂は結晶化 する可能性が存在しますが、ミドリムシプラスチックはアセチル化を工夫すれば(実際には工夫しなくて もできていたが)完全非晶質プラスチックも容易にできます。

 

汎用樹脂でミドリムシプラスチックを捉えたならば、ポリエチレンやポリスチレンとの比較になりますが、 光学用樹脂として捉えた場合には、光学用ポリオレフィン樹脂が比較対象になります。ご興味のある方は 弊社へお問い合わせください。

 

(本日は予定を変更して講演会の報告とさせて頂きました)

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2013.05/09 成功する技術開発(16)

成功する技術開発について、フローリーハギンズ理論を基に体験しことを思いつくまま書いている。多くの指南書に書かれていない事柄で本日まで指摘したことを少しまとめてみる。

 

1.技術開発の企画は、会社のあるべき姿を目標に真摯に企画されたテーマであるべきだ。

 

2.技術開発のテーマは、商品化段階に到達したならば、必ず成功させなければならない。

 

3.技術開発のマネジメントは重要であるが、現場担当者の高いモラールは失敗の淵にあるテーマさえも成功に導く。

 

4.科学で完璧に証明できるのは、否定証明だけで、科学的と言われている考え方の中には怪しい理論も存在する。

 

5.技術開発のシナリオは、複数のアイデアで構成すべき。好ましいのは、成功すると期待される道筋を否定する道筋までも考えられたシナリオである。

 

6.科学的に否定される手段以外は、可能性があると考える。技術の可能性は科学よりも広がりアイデアは自由である。

 

7.科学では真か偽か二者択一の選択になるが、技術では実現することが易しいのか難しいのか、あるいはコストがどれだけ許されるのかという選択になる。

 

8.科学では真実が重要であるが、技術では機能発現が重要となる。

 

9.機能発現の手段は、コストを無視すれば、その分野の科学的成果を越える数だけ存在する。

 

10.技術開発の途中で科学の真理が一瞬垣間見えるときがある。その方向に成功のヒントがある。

 

11.技術開発に失敗しても事故に遭わない限り命を落とす可能性は無い。明るく大胆に挑戦すべきだ。

 

12.技術開発の成功に不思議な成功は無い。

 

13.技術の成功要因には無形の力が存在する。技術の伝承の難しさの一つであり、成功体験を共有することで伝承できる。

 

14.知恵のある技術者は知恵を出し、知恵の無い技術者は汗を出し、努力を続ければ必ず成功する、と信じて開発を行えば必ず何か得られる。何も得られないのは努力が足りなかっただけだ。

 

15.努力とは自分の意志で楽しく続ける点で、根性と異なる。根性だけで技術開発は成功しない。

 

16.ロードマップよりも各担当者の技術シナリオが重要である。管理者は技術シナリオが各アクションについて成功した場合と失敗した場合のそれぞれの対策がどのようにとられているかチェックすることにより成功への道筋をマネジメントできる。

 

明日からは異なる事例で成功する技術開発について経験談を書いてみる。

 

<明日へ続く>

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2013.05/08 成功する技術開発(15)

福島原発の事例を考えてみる。津波は想定できなかったので天災である、とする見方は正しいだろうか。海辺に建設された原発で津波の被害ゼロはありえない。万が一のことまで考えて安全対策をとるのが原発建設で重要なはずである。津波が起こりうることまで考え、防波堤を築いたならば、その”防波堤の効果が無かった時の対策”まで考えなければならない。その対策が講じられて初めて万全な津波対策になるのではないか。

 

津波を想定していたから防波堤を作ったはずである。津波の高さはあらゆる地震を想定して決められなければならない。科学的な発生確率ではなく、想定される地震の規模の上限が大切である。これまで世界で発生した地震の最大規模でどれだけの津波になるのか分からないが、そのような時に発生した津波に備えておれば今回の事故は起きなかった。

 

一度事故が発生すれば取り返しのつかないことになるのが原発事故の特徴である。化学工場の爆発とは異なる、ということを考えて対策をとらなければならなかったはずだ。原発では事故発生確率0が目標と言われている。さらに福島原発では津波対策だけでなく、その後事故を大きくしたお粗末な問題が存在する。例えば、全電源喪失という事態となり、電源車を集めたところコネクターが合わず緊急事態に対応出来なかったとか、内部を観察するセンサー装置のコードが外れていたとか、信じられない凡ミスが報道されている。

 

外部電源を取り入れる準備ができていながら、コネクターが合わず機能しなかった、という問題で責任が問われないのは不思議である。津波の事故に限らず、全電源喪失という事象を考えたからこそ外部電源取り入れの準備をしていたのである。しかし、そのコネクターが合わなかった問題は、人為的ミスなので必ず責任が問われなければいけない。事故を大きくした原因は全電源喪失にあるとした見方がある。その視点に立てば電源車のコネクター問題は大きな問題のはずである。

 

福島原発の事故で誰も責任をとらないとしたならば、国民は政治不信となるであろう。少なくとも被害に遭われた方々は納得しない。防波堤の高さだけでなく、被害を大きくした人為的ミスも幾つか報道された。一方でこれだけの大事故を一人の責任者で責任が負えるのか、という意見も出てきている。

 

もしも、を考えてみても福島原発の問題は解決しないが、もしも電源車のコネクター問題が無かったならば大きな事故にならなかった、という仮説をあえて考えてみる。すると現場の技術者のモラールの問題が見えてくる。もし現場の技術者のモラールが高かったならば外部電源のコネクターの重要性をよく考え、あらゆるコネクターと互換性をとれる設備を提案していただろう。現在までかかった費用を考えるならば、あらゆるコネクターを用意する費用は大した金額ではない。過去の実績ではそのための費用は1万円以下であった。

 

かつて高純度SiCのパイロットプラントを建設したときに、高電圧電源のコネクターが複数存在するだけでなく呼び方も複雑であることが建設途中でわかった。すでに設備を発注した後で、あわてて仕様の再確認を装置メーカーへお願いした。それでも万が一に備え、高電圧のコンセントに適合するあらゆるコネクターを一組準備した。現場の担当者の発案である。そしてその準備は無駄にならなかった。再確認まで行っていたので装置メーカーがお客のために準備していてもよいケースであるが、某メーカーの納入された装置についてお客の準備したコネクターが役立ったのである。それは最も大きな設備であったので、お客の立場を主張し当日コネクター準備をお願いしていたら工期が1日延びた可能性があった。想定されることにすべて備えるのは成功する技術開発で大切なことである。科学的に発生確率が低いから準備をしない、というのは技術開発では許されない。準備不要が許されるのは、科学的に発生確率が0の場合だけである。

 

<明日へ続く>

 

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