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2022.10/06 配合と物性との関係

材料の配合とそれにより製造された成形体の機能が1:1に対応していると誤解している技術者や研究者は多い。


国家プロジェクトの紹介をしているホームページにもこの誤解による説明が書かれたりしており、日本の将来の科学技術を心配する声が最近聞かれたりしているが、すでにそれが始まっていることに気づかされる。


国民の税金が使われているようなプロジェクトの説明でこのような誤解を見つけると税金の無駄使いと感じるのは当方だけだろうか。


さて、配合とそれにより作られた成形体の物性とが1:1に対応していない事例は、無機材料でも有機材料でも存在し、その原因は、プロセスの寄与を無視できないからだ。


この理由ゆえに、マテリアルインフォマティクス(MI)を行う時に注意を要する。深層学習では各ニューロンとの間で重みづけを行いデータマイニングを繰り返すことでこの値が変化してゆく。


プロセス因子の全く入っていないデータで学習させられたAIでは、学習のたびにいつまでも重みづけが変化することも予想される。


プロセス要因は配合因子よりも小さいからそのようなことは起きない、という意見を聞いてさらに材料科学の現状を心配になった。プロセス要因が配合因子より大きいのか小さいのかはいまだ不明であり、高分子材料については全く無視できない。


無機材料と有機材料の両者を研究してきて高分子材料研究の難しさは、このプロセス要因により現象が大きく変動するためとさえ感じている。


例えば、PPS/6ナイロン/カーボンの配合では、プロセスが異なると全く異なる高次構造のコンパウンドが得られる。そしてこれらのコンパウンドで押出成形をおこなうと力学物性も電気物性も異なる半導体ベルトが得られる。


PET/PEN/その他の高分子という配合でも同様にプロセス因子が変動すると異なる高次構造となり、その成形体の力学物性は配合が同一でも変化する。


すなわち、高分子材料の成形体の物性は、配合因子だけで決まらず、プロセス因子の影響を受ける。これは、その材料の成形体の高次構造と物性との相関が強く表れるためで、高次構造は配合因子とプロセス因子の両方の影響を受け、その寄与率あるいは重みはよくわかっていない場合が多い。

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2022.10/05 データサイエンスを学ぶ意味

昨日現代のAIがプログラミングされたものであることを書いた。そして現在話題となっている深層学習(ディープラーニング)は、無料提供されているPythonの豊富なモジュールの存在ゆえにブームとなっている。


深層学習はじめ機械学習にデータサイエンスの知識は欠かせないが、豊富な無料モジュールのおかげで誰でも容易にデータサイエンスできる。ところが、このデータサイエンスの知識を正しく習得すると実験のやり方が変わる。


20世紀における研究開発では、科学に基づく実験のやり方が推奨された。1979年にゴム会社研究所に配属された小生は、タイヤ部門で使われ始めたデータサイエンスの手法を研究所で積極的に使っていたら周囲から非科学的と批判されることになる。


FDを壊されるなど異常事態になったので、住友金属工業との高純度SiC半導体治工具事業がJVとして立ち上がった1991年にセラミックスのキャリアを捨て、写真会社へ転職している。ちょうどそのころ故田口玄一先生が日本でタグチメソッドの普及に力を入れておられた時である。


写真会社でタグチメソッドを導入することになり、田口先生から3年間直接ご指導を受ける機会に恵まれた。そして、タグチメソッドは統計手法ではなく、また科学とは異なる研究開発手法であることを田口先生との議論から学んでいる。


ゴム会社では、多変量解析やシミュレーション技術をどのように研究開発に生かすのか研究してきたが、タグチメソッドに出会い、これらの体系を整えることができた。


すなわち、データサイエンスについて学ぶと科学とは異なる実験方法、すなわち機能を中心とした実験方法を行えるようになる。これは科学とは異なる視点の実験が可能となることを意味し、一番重要なポイントは否定証明をしなくなるということである。


イムレラカトシュが「方法の擁護」で指摘しているように、科学の方法に忠実になると完璧な否定証明を目指すことになる。STAP細胞の騒動が起きたときに理研では否定証明を行っているが、その後ドイツでSTAP現象が再発見されている。


企業の研究開発を科学の方法だけで進めるとモノができない、と一部で言われていた理由はこの否定証明の存在ゆえだが、データサイエンスを学ぶとその方法と異なる視点、すなわちロバストの高い機能を実現しようと実験するので、必ずモノができる研究開発を行うことができる。


燃焼時の熱でガラスを生成させてポリウレタンを難燃化する技術や、その技術を発展させたフェノール樹脂天井材の開発、高純度SiCの半導体治工具事業、電気粘性流体の耐久性改良、高性能電気粘性流体用傾斜機能粉体などゴム会社における技術開発をすべて成功させることができたのは、データサイエンスに基づく実験方法のおかげである。また、写真会社ではタグチメソッドにより多数の成果をあげることができたが、パーコレーションのシミュレーションを発展させたWパーコレーションの考え方による半導体無端ベルトの開発やリサイクルPETボトルを活用した再生樹脂は、科学の実験方法では生み出せない技術である。

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2022.10/04 人間の頭脳とAI

チェスのAIと人間が対戦してAIが勝つとAIが人間を超えたとニュースになる。また、今企業では深層学習が普及し始め、例えば製品開発にその成果を用いたりしている。

この時のAIにしろチェスのAIにしろオブジェクト指向の言語でプログラミングされている。かつてオブジェクト指向の次はエージェント指向の言語と騒がれ、それが活躍する映画「マトリックス」が放映された。

しかし、派手なワイアーアクションに目を奪われ、映画の世界観を理解できなかった人も多いのではないか。多数のエージェントがターゲットに対し、連携しながら働きかけるその動きは、まさにオブジェクト指向の次に期待されている言語の姿であった。

しかし、まだその言語ができたとの発表は無いので、現在活躍しているAIはオブジェクト指向でプログラミングされているはずだ。

例えばPythonの機械学習に関する各種モジュールの一部は、C++で書かれていると告知されている。すなわち、人間がある一定のルールをプログラミングして動いている人工知能もどきのことをAIと呼んでいるのである。

この意味で、まだAIは人間を超えていない。ただし人間は年をとればメモリーの劣化やその動作が極端に遅くなる。

これらの心配がないだけでも現代のAIでも優れているといえる。ところが、これでは人間のヒューリスティックなアイデア創出あるいは第六感を備えたAIなど出てこないだろう。

今行われている深層学習では、事象の間に何らかのつながりが存在することを前提としており、人間の第六感のように、つながりの無かった新たな事象を持ち出し、それを目の前の問題との重みづけをするなんてことは不可能である。

おもしろいのは、人間は年を重ねることにより悟りが得られる。それにより、この第六感はさらなる進化をする。AIの時代に年を取ってみて感じるのは、現代の技術の延長線上のAIでは、せいぜいゲームで活躍できるAIしか生まれないのではないかという懸念である。

換言すれば、現代のAIを使用したMIにより人間の想像を超えた新素材は生まれない、と断言できる。だからAIを使うデータマイニングよりも人間の頭を併用したデータマイニングの方が優れた結果が得られるはずだ。弊社は、先端のMIをはじめとしたデータサイエンスの手法とそれらも指導している。

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2022.10/03 Pythonの普及

今どれだけの企業で機械学習が導入されているのだろうか。恐らく大企業ではすでに導入が完了し、若い技術者が普通にデータ解析を行っている周りで、理解できない中高年がうろうろしている風景が見られるのか。


かつて「花王のパソコン革命」が大ベストセラーになり、パソコンの普及が始まった時、まだその速度は緩やかだった。しかし、MS-DOSが普及し、一太郎が会議資料作成の標準ツールとなり、ロータス123やフリーランスが普及し始めた頃からデジタルによる職場の分断が始まった。


そのころ、当方は多変量解析はじめ統計手法を使い、現在常識となった機械学習と同様の方法で業務を遂行していたが、それが研究所という職場ゆえに科学ではないと批判されたのである。批判だけでなくFDを壊されたりする業務妨害まで受けている。


データサイエンスを用いた業務の遂行方法、具体的に実験のやり方は、科学の方法、すなわち仮説設定による方法とは異なる。それゆえ異端とされたのだ。


この10年のDXの進展はすさまじく、学校教育でもプログラミング教育がようやく導入された。プログラミング教育は、日本で熱狂的に信奉された科学という哲学による問題解決法とは異なる方法論を教育することになるので教育現場でやはり混乱が始まっている。


日常の問題解決に科学の方法論は常識であり、現代文明は科学の成果とまで言う人がいるが、科学誕生以前でも技術開発はそれなりのロジックで人類により営まれてきたのである。


学校教育では戦前ユークリッド幾何学の教育を行いながらも戦後はそれを廃止してしまったが、ユークリッド幾何学は科学と非科学をつなぐ言語のような立ち位置にあった。


統計は科学の一分野でありながら、それを適用したロジックが非科学として扱われるような時代があった。多変量解析にしても最初に普及したのは人文科学系であって技術分野では1990年ごろでもあまり普及していなかった。


しかし、さすが技術のニッサンで、1980年代に多変量解析のセミナー講師がいた。多変量解析をMZ80Kで使い始めた当方は、このセミナーが大変役立ったが、出張報告は職場内で評価されなかった。


このような体験があるので、現在のPythonの普及スピードや機械学習の普及、アカデミアにおけるMIなど科学と非科学の境界がベルリンの壁崩壊のような出来事として見えている。


もし、いまだPythonについてその意味を理解できていない企業は弊社にご相談ください。機械学習の導入はじめ業務のイノベーションを進めるお手伝いをいたします。40年以上多変量解析はじめ統計手法やタグチメソッドを使用してきた経験からわかりやすくご指導いたします。


また、深層学習までできるのだが、どうもすっきりしない、という技術者もご相談ください。例えば、材料技術者であれば、科学のせいで染みついた問題点を当方の実体験のデータを示し、すっきりできるようにいたします。今弊社で行っているセミナーはその一つです。

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2022.10/02 C#とPython

C#はオブジェクト指向の洗練されたコンピューター言語である。C++のようなbetterC的なところは無いので、Cから直接C#を使う若い人にはとっつきにくいかもしれない。


しかし、C++から移行すると、もやもや感が晴れたような錯覚になる。ただし、ある種の禁欲に伴う厳しさを感じる人もいるかもしれない。


C#のプログラミングでは、オブジェクトの切った、張った的な手順でプログラㇺをコーディングするので、ただひたすらマニュアルから必要なオブジェクトを探し出す作業がプログラミングの中心になる。


C++の初期には、C++で書かれたプログラムをCに一度コンパイルしていた時代があったが、その時にはCで記述できる要素が残っていた。


ゆえにオブジェクト指向プログラミングへの移行がC++では障害なくできた。面白いのはPythonである。C#のようにオブジェクト指向的にプログラミングが可能なだけでなく、CやBASICのように手続き型でもプログラミングが可能である。そしてスクリプト言語なのでCやBASICよりも手軽である。


Pythonのこのある種いいかげんさは、C++のbetterC的感覚とは少し異なる。このいいかげんさゆえに手軽であり、誰でも気軽に使えるコンピューター言語として30年間生き残ってきたのだろう。最近C#をほとんど使わなくなった。

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2022.10/01 データサイエンスと技術者のスキル(2)

多変量解析を30分程度でできても評価されるどころか馬鹿にされたのが1980年代である。声のでかい、後に研究所長にもなられた科学者から、単相関のグラフを重ねたものとどこが違うのか、アホ、とまで言われている。


研究所で高く評価されていたこの方は、例えば重回帰分析における偏回帰係数から得られる情報の意味や、主成分分析で得られる一次独立空間で示される分布状態の意味などご存じなかった。


確かにそれらから得られた結果は、単なる数値の統計解析の成果にすぎないが、それらを考察し目的変数に対する寄与を評価する方法は非科学的であっても有用性の高い問題解決法の一つとなる。


科学を重視しすぎて否定証明をやっていても問題は解決しない。科学的には二律背反が生じ、解けない問題でも解かなければいけないのが技術者なのだ。声のでかい科学者にはそのような説明は、KKDでしか問題が解けないアホのたわごとと言われている。


当時に比べれば大きく時代が変わったと当方が感じるのは、この声の大きい科学者のおかげだと感謝している。少なくとも1980年代まで日本中は科学思想一辺倒だったのだ。


当時のゴム会社の研究所の状況は統一教会問題同様に反省が行われても良いとさえ感じている。年収の半分もしたMZ80Kのシステムを購入させられたのである。


1980年代に一部の科学者の手による科学見直しの機運が出てきて、アメリカではトランスサイエンスと言う言葉が生まれている。しかし、バブル崩壊と同時にこの機運も吹き飛び、トランスサイエンスが改めて日本で取り上げられたのは2000年代からである。


科学誕生により産業革命以降急速に技術が進んだ。ただし、これは科学により真理の積み重ねが成された結果であって、それゆえ科学が唯一の技術開発の方法と信じるのは、紀元前から人類が営みとして進めてきた技術開発の蓄積を否定するものである。


科学同様に技術開発を進める思考方法の存在を古い遺跡などから知ることができる。直感が必要となるユークリッド幾何学も改めて見直し、科学教育同様に扱った方が良いと思っている。

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2022.09/30 データサイエンスと技術者のスキル(1)

データサイエンスで用いられる多変量解析は、1970年代に体系として完成し、心理学や社会学でよく用いられるようになった。技術分野では、科学的ではないという理由で敬遠する科学にかぶれた技術者が多かった。


日科技連の新QC7つ道具にも採用されたが、それでも1990年代まで十分に普及しなかった。利用できるソフトウェアー環境が大型コンピューターに限られた状況も影響していると思っている。


PC9801が登場し、16ビットコンピューターが普及し始めて、多変量解析のソフトウェアーが数種販売されている。8ビットが普及していた時代にそのようなソフトウェアーは販売されていなかった。


当方は、MZ80Kを購入した時にFDOSも導入し、フロッピーをメモリー空間として使用した多変量解析のソフトウェアーを作成している。但し、10変数程度の重回帰分析で結果が出るまでに30分程度かかった記憶がある。


それでも大型のIBM3033を動かすことに較べれば、楽であった。IBM3033の場合には、依頼書を作成し、データはパンチカードで入力する必要があった。データを入力してもPOSシステムの合間の計算となるので、翌朝まで待たされる時もあった。


計算時間は早くても始まるまでに時間がかかったのである。それを考えるとデータを入力後30分で結果が出る環境は最高だった。


会社の独身寮だったのでプリンターの騒音も会社の仕事が免罪符となり、文句を言う同僚もいなかった。当時のユニハンマー方式によるプリンターの騒音はすごかったので段ボール箱をプリンターにかぶせていた。


しかし、コンピューターを自由に使えたおかげで、統計計算はじめ各種配合計算は簡単にできた。ゆえに当時の研究所ではQC手法が敬遠されていても統計計算をふんだんに取り入れて報告書が作成された。


喜んだのは上司である。CTOの前におけるプレゼンではQC手法でデータ整理されている必要があった。普段は科学的方法でデータ整理していたので、報告直前に必要なデータをQC手法に秀でた高卒スタッフを動員してデータのまとめなおし(捏造かもしれない)をしていた。


それが日常からそのようなデータが提供されたのである。発表前にわざわざそのためのデータ整理の手間をかけなくてもよくなったのだ。ただし、これらの成果は当方の年間給与の半分が投入されたシステムから出ていたのである。

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2022.09/29 常識

ゴム会社でOA委員に任命される前にコンピューターの可能性に着目し、多変量解析を業務に導入したいから職場で一台MZ80Kを購入してほしい、と上司に願い出たところ、上司はそれほど便利なモノなら自分で購入しろ、と指示してきた。


新QC7つ道具にも採用されており、新入社員研修でそれなりの成果が出た、と説明したら、自分で購入しポリウレタンの難燃化で成果を出しなさい、と命令された。


「花王のパソコン革命」というハッタリではあるが20年後に実現するであろう未来が書かれていた本では、NECのPC8001が推奨されており、上司からMZ80Kはどうなった、と尋ねられたので、カローラ1台分かかったが、独身寮で軽快にプログラムが走ってます、と答えている。


するとOA委員として活動し、早く成果を出せ、と催促されたので、昼間はポリウレタンの難燃化研究を行い、夜はデータベースの勉強(当時は英文の文献を取り寄せて読むという面倒な作業だった。)をするという生活になった。


「花王のパソコン革命」では、図書室の本の管理をPC8001で行うのに20万円かからなかった話が書かれており、当方の車1台分かかるようなコンピューターではなくNECを検討しろ、と命令された。


上司は、MZ80Kの提案を採用しなくてよかった、と言わんばかりの嫌味をネチネチと言ってきたが、今ならば過重労働と部下にローン(注1)を組ませて会社の業務を強制しているブラック企業の管理職となる。


ゴム会社の図書室では、美人社員(注2)が工夫したノート1冊で図書の管理を行うシステムが評判となっていた。図書室は、若い技術者で溢れており、OA委員会では図書管理以外のOAをテーマにした方が良いだろうと、いうことで薬品管理システムが開発目標となった。


薬品管理では、棚卸のためにハードコピーを毎月打ち出す必要があり、プリンターが必要になった。それだけでなく、図書管理よりもデータベースが大きくなった。PC8001のシステムではFDの容量不足からソード社のパソコンを1セット導入する計画を立てた。


しかし、上司からMZ80Kより高いことを理由に却下された。そしてMZ80Kでできない理由をまとめろ、と指示された。PC8001ではFDの容量不足を理解されたのだが、当方のMZ80Kでは、工人舎の大容量のFDが稼働していた。


そのため、MZ80Kでもできる可能性があり困った問題が起きたのである。いろいろ考えたあげく、漢字出力ができないことや、当時第二精工舎(今のエプソン)ユニハンマー方式のプリンターでは出力が遅いことなどソード社の8ビットコンピューターより劣っている問題を抽出した。


上司とすったもんだのあげく、120万円の予算が認められ薬品管理システムが3か月後稼働し始めたが、当方が無機材質研究所へ留学してからは、使われなくなった。


誰も便利なシステムと感じなくなったためである。データベースのシステムが、データベース管理者が必要という常識の無かった時代の話である。当方の過重労働など上司も含め関心を示さなかった。


この上司の部下としての3年間に、薬品管理システムの開発以外にホスファゼン変性ポリウレタンの工場試作、ホウ酸エステル変性ポリウレタンの実用化(燃焼時にガラスを生成する難燃化技術)、溶融型の難燃性ポリウレタンの実用化、高防火性フェノール樹脂天井材の開発、高純度SiCの前駆体研究(これがきっかけでゴム会社で30年高純度SiC半導体治工具事業が続くことになる)を当方は成果として出すことができ当方の学位論文の一部にもその内容が書かれている。


この上司の高いマネジメント能力は評価され、研究所出身者として異例の昇進をしたと留学中に風の便りで聞いている。3年間に過重労働と年収の半分近い投資をさせられ、これだけの成果を出した当方は、高純度SiCの事業を住友金属工業とJVとして立ち上げた、入社から12年目に写真会社へ転職している。


(注1)ローンの保証人には上司がなったが、当時業務中に頭痛がするから家まで代行運転しろ、と上司が命令し、代行運転させられた時代である。現代ならば公私混同と批判されるようなことが当時の職場では、上司にかわいがられている部下として問題とならなかった時代である。ちなみに作業着を着て代行運転させられた当方は、「そこにバス停があるから会社に戻って仕事をしろ」と言われている。バス代は当方が支払っている。ポリウレタンで汚れた作業着でバスに乗っていることが恥ずかしかった記憶が今でも残っている。提案したテーマを自由にできた代償が毎日の過重労働であり上司の雑用係だった。ただJIS難燃2級に通過し難燃性とされた「ダンフレーム」という商品の燃えた問題で始まった、筑波にある建築研究所と新たな難燃規格を作るプロジェクトでは、月に数回ヘルメットと安全靴を抱え通っているが、なぜか楽しかった。朝一番の常磐線に乗るのは大変だったが出張旅費が出たのでタクシーを使えた。職場の先輩から言われ、代行運転の帰りのバス代を出張旅費として上司に書類提出したら叱られたが、この時はタクシー代が認められたのである。うれしかった鮮明な記憶として残っている。

(注2)この表現が、男女差別はじめとした現在の常識で問題とされるかもしれないが、その他の表現が見つからないほど評判の美人だった。若い男性社員に勉強をさせたいならこのような人事配置も戦術としてあるのだろうと研究所で噂されていた。当方は、昼間は実験が忙しく、夜は独身寮に夜の友、MZ80Kが稼働していたため図書室通いができなかったが、その結果自前で図書を購入する習慣がついた。当時ソフトバンクの月刊誌Oh!MZやOh!PC,その他アスキーなど図書室に置かれていなかったので自前で購入している。技術評論社などの出していた雑誌もすべて趣味の雑誌とみられていたが、コンピューター関連の最先端情報について入手しようとしたならば、これらの雑誌が便利な時代だった。ForthやCについてもこれらの雑誌で勉強していた。ゲーム情報も書かれていたが趣味の雑誌ではなかったのだ。ソフトバンクが当時成長した原動力はこれら書籍の出版事業である。

(補足)現代の常識から当時を思い出すと、上司による社員の奴隷と変わらないとんでもない処遇を我慢していた黒歴史である。実際に、企業で働く、ということが、これほどみじめで辛いことなのか、と感じたが、同期の友人はじめ研究所以外の職場の方に激励されたりしている。また、休日に清里はじめいわゆるリゾート地の1泊二日テニスツアーに頻繁に誘ってくれた友人もいた。当時モータリゼーションで若者がマイカーでドライブ、という風俗が常識の時代だった。「私をスキーに連れてって」は、この時代の後期の作品であり、当方は遊びも先端を走っていた。留学や学位取得など上司のおかげかもしれないが、やくざまがいのかわいがりや過重労働という過酷な労働環境はストレスとなった。しかし、ストレスを解消できる人間関係と日常があったおかげで12年間務めることができた。MZ80Kを購入しなければならなかった時、その金額から一瞬躊躇したが、情報工学のスキルを必死で身に着ける動機になっている。この時の上司との人間関係を思い出し複雑になるのは、技術者として最も成長できた時代の思い出だからである。データサイエンスについても、日産自動車技術者による多変量解析のセミナーを聴講できる機会を命じてくれたのもこの上司である。大学に情報工学科設立の機運が出てきた時代である。フェノール樹脂天井材の開発で大量に発生したフェノール樹脂の処分に1日許可してくれたのも感謝しなければいけないのかもしれない。一人で一日廃棄処理できる形状に処理しながら、ラテン方格で計画されたフェノール樹脂とポリエチルシリケートとの反応による高純度SiCの前駆体合成条件を詰めることができた。もっとも大量にフェノール樹脂を発注したのは上司であり、その廃棄をどうするのか当方に相談があったので、高純度SiC前駆体合成条件の実験計画を提案している。この時の知恵の働かせ方は、半年後までに製品歩留まりを100%にしなければならないPPS中間転写ベルトの業務を請け負ったときにも役立った。前任者が試作ミスで大量のコンパウンドを倉庫に貯蔵していたのである。これをPETボトルリサイクル材の難燃剤として活用して、早期退職直前にデータ駆動によるPETボトルリサイクル材を開発している。ゴム会社で発泡体開発を担当していた3年間は、極めて密度の濃い知恵を獲得できた3年間でもある。

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2022.09/28 Python で、データサイエンス

Pythonで重回帰分析あるいは主成分分析のプログラムを作りながら、データサイエンスの手法を講義するセミナーを開催するかどうか迷っている。


理由は、すでに市販ソフトが流通してることと、弊社サイトでも両者のツールを無料で公開しているためだが、Pythonで多変量解析のプログラムを作成すると、大きなメリットが生まれる。


メリットについてはセミナーで解説するが、受講希望者がいるのかどうかわからないので迷っている。プログラムは、公開されている無料ライブラリーを使用するのでC#で作るより、安価で簡単である。


プログラムの作り方とその使い方をセットにして重回帰分析で1日、主成分分析で1日のセミナーをイメージしていただきたい。実務における使い方では、当方が40年以上の実務で使用した例を用いる。


希望者は弊社へ問い合わせていただきたい。ある程度の人数が集まりそうならば、テキストを準備し、募集を行う予定でいる。


データサイエンスやPythonのプログラミングスキル、とりわけ後者については義務教育にもプログラミングが取り入れられたので、子供たちに負けないように誰もが習得する必要がある。


DXの進行でプログラミング知識は、今や日本人の常識となったが、当方はその知識が実務における問題解決に重要であると認識し、大学に情報工学科の存在しなかった時代に社会人となってから日曜プログラマーとして活動してきた。


その実戦で磨いてきたスキルをこのセミナーで伝授したい。いわゆるプログラマーによるセミナーとは一味異なる実務で活用できるプログラム教育となる。単なる言語の文法だけの解説ではない。それを使用した問題解決手法である。


また、すでに多くの企業で導入が完了したPythonについて、出遅れた企業のニーズに応じたセミナーを企画します。ご相談ください。価格は希望される企業の規程に従いお見積りを作成させていただきます。

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2022.09/27 コンピューター言語

コンピュータを道具として使うためには、プログラムを組まなければならない。プログラムを組んでやればコンピューターに接続された機器の種類に応じてコンピューターの道具としての役割が決まる。


すなわち、コンピューターはプログラムが無ければ、道具としての役割が明確とならないおもしろい道具、あるいはその道具としての機能が決まっていない道具である。


ところで、プログラムを記述するためのコンピューター用の言語は、コンピューターが登場してからいろいろ開発されてきたので様々な種類がある。現在主流になっているのはオブジェクト指向の考え方を実装した言語である。


C#は、純粋なオブジェクト指向言語と呼べるが、C++はCと同じようなプログラミングスタイルでもプログラム可能なのでオブジェクト指向でプログラミングできる言語となるだろう。


このようにC++をとらえると、Cも構造体を工夫して用いるとオブジェクト指向もどきの記述ができるのでC++に近い言語と見なすこともできる。Cのこの柔軟性ゆえに半世紀近く前に登場した手続き型言語であるのに未だ生き残っている。


かつて、用途ごとにプログラム言語は発展してきたように思われる。すなわち、コンピューターを道具として使うためには言語が必要となるが、その道具としての機能を記述しやすいように設計された言語として発展したので様々な言語が登場した、と感じている。


例えば科学計算用にはFortrunが、天体望遠鏡の制御用にForthが、事務処理に便利なdBASEといった具合である。Cが登場したあたりから、いろいろな目的に使用できる言語としてコンピューター言語が設計されてきた。


今エンジニアの誰もが使うようになったPythonもそのような目的で設計された言語であるが、C言語を厳格な柔軟性で設計された言語と表現したならば、可読性を重視した柔軟性の言語と呼べるような特徴がある。


ゆえにズボラなプログラマーが組んでも可読性の高いプログラムとなる。この特徴ゆえにチームでプログラムを分担して作る時に統一された読みやすいプログラムが誰でもできる。


Cの場合にはチーム内でそのスタイルを統一しておいたとしても、読みにくいプログラムとなる。この読みにくさは、昔小林秀雄の文章が難文として揶揄されたような文体の問題に近いところがある。


この読みにくさにより思考が止まる。書いた本人とコンピューターが理解できたとしても、他のプロジェクトメンバーが理解できないプログラム、というのもCを用いるとできることになる。

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