AIの応用が進んでいる。その結果AIに対する誤解について笑えない状況になってきた。まず、AIで重要なポイントは、それが科学のロジックを用いたプログラムにより動作している、という点だ。
さらに、そのロジックを支えるデータは人間が表現したものだ、という事実である。だから科学の延長線上でAIの技術開発が行われ続けるならば、人間のような制御できない曖昧性や矛盾した判断、また時として周囲が理解できない感情をAIが持つことは難しいにちがいない。
恋愛という現象を冷静に考えていただけば理解できるように、ベイズ統計でも予測つかないような行動をとるのが人間である。
このことから、新材料の開発された歴史を鑑みると、AIに材料設計をやらせて自由自在に新材料を創り出そうと目論んでも、期待通りの成果を見込めない分野は多いと思われる。
この一文をすんなり受け入れた人は、それはそれでAIに対して誤解を持っている。まだ、AIは人間のように自由にいろいろな材料を学習して材料設計できるレベルに無く、それが研究課題になっている。
ただし、結晶構造でその機能が決まるセラミックスであれば、AIの活用による材料設計はある程度まで有効となり一部成果が出ている。もっとも熟練技術者ならばAIを用いなくても同様の結果をシミュレーションで出せる。
ただし無機材料でもガラスになるとその機能性と組成及び材料の構造が非晶質であるためAIによる材料設計が期待通りに行かず技術者頼みとなる分野が残る。
同様の理由で、今のまま科学の形式知を重視してMIの研究を続けるならば、高分子材料についてAIを活用できる分野は限定的になる。
高分子材料は無機ガラスよりも難解な多成分系であり、さらに多分散系非晶質体である。また、その物性ばらつきの原因となる自由体積の存在もAIによる材料設計を困難にする原因となっている。
MIが騒がれるようになって10年経ったが、高分子材料で驚くような成果は出ていない。20世紀に開発されたOCTAは、それが高分子の形式知集大成として見たときに価値を発揮しているが、それで新材料を自由自在に創生することは、今のところ難しい。
例えばPPS/6PA/カーボンの配合系で半導体の動的部品を設計しようとしたときに、OCTAでは不可能と言う結果しか出せないし、この結果は科学的に正しい。いわゆる否定証明として成果を出せるだけである。
この配合系で成果を出したいならば、現代の科学では説明できないPPSと6PAの相溶現象を用いる必要がある。このようなアイデアはOCTAでシミュレーションしても出てこない。仮にAIにOCTAを実装してもAIは、この配合で動的部品を製造できません、と答えるだけだろう。
ただし、人間の柔軟な発想があればこれが可能となり、実際に15年前に柔軟な頭脳で発明された中間転写ベルトは品質問題も起こさず安定な生産が続いている。
材料設計において、その基本機能の選択が技術者に依存する限り、まだ、当分の間、人間の頭脳をAIは完全に超えることはできない。せいぜい特定の人物の猿真似程度のAIを創り出すのが関の山だろう。
今新しい高分子材料探索のためのMIを成功させたいなら、AIを使おうとしない方が良い。人間の頭とシミュレーション技術、データサイエンスの活用により、新材料創造を目指すべきだ。
人間の頭の問題は、怠惰な習慣に慣れると急激に劣化することである。この点はAIが勝る。一方常に危機に晒され続けると機能不全になる場合も出てくる。これもAIは強みになるかもしれない。
こうした人間の弱点を補えるところはAIの優れたところだが、科学で解決できない分野の問題については、まだ当分の間人間の頭脳の方が頼りになる。
ただし、そのために鍛える必要があり、弊社では幾つか研究開発必勝法プログラムを用意している。
カテゴリー : 一般
pagetop
昔の黒人の歌うブルースは音程が独特であり、ミソシの音が半音下がったように聴こえる。カラオケでこれをやると、「へたくそ」と言われるが、ブルースメンが歌えばそれはブルースというカテゴリーの音楽となる。
今音楽はバッハの発明による旋律が標準だが、日本の民謡も含め本来民族特有の旋律があったと言われている。ゆえに中村トウヨウ氏監修による古いレコードを聴いてもドレミファソラシドというメジャースケールから外れたメロディーが幾つか飛び出してくる。
50年前に来日したブルースメンにより演奏された音楽はブルースロックであり、Cマイナーペンタトニックの演奏だったが、興味深いのは、ジャズもブルースを起源としながら西洋音楽のチャーチモードの中でブルースが演奏されていることだ。
このブルースとロック、ジャズという音楽を五線譜上で眺めていると面白いことに気づく。ロックはブルースをそのまま西洋音楽の旋律に乗せたのに対して、ジャズでは西洋音楽の旋律の中でブルースを理解しようとした努力が見えてくる。
ここで西洋音楽を科学に、ブルースを目の前の現象として置き換えていただくと、科学と技術の視点を説明しているような雰囲気になる。
すなわち、科学で現象を眺めるときに、科学の体系の中でそれを展開しそれを理解しようとし実験を行う。ただし、ジャズならば音の高低を#なり♭で調整できるが、科学ではそれができない点に注目していただきたい。
ところが、科学で完璧に説明できなくて否定証明になっても、技術者は、ロックギタリストがペンタ一発でアドリブを弾くように、現象から機能を素直に取り出しモノと仕上げることができる。
熟練技術者はさらに多くのテクニックで現象から新しいアイデアを見つけ出す。問題解決のためのアイデア創出法のセミナーを8月に予定しています。トランスサイエンスが常識になった今の時代に科学だけで問題解決しようというのは時代遅れである。
カテゴリー : 一般
pagetop
ここで取り上げるのは、柳ケ瀬ブルースとか雨のブルースではない。黒人の歌うブルースである。50年ほど前に日本でブルースのブームがあり、アメリカから多くのブルースメンが来日した。
いわゆるフォークソングブームの流れの中で中村とうよう氏らが中心になって作り出したブームだ。各地でコンサートが開かれ、レコードも発売された。
ブルースの起源とも呼べる音源を集めた5枚組レコードを持っているが、何とも言えない音楽が飛び出す。レコード針のスクラッチノイズが音源に入っており、高級オーディオで再生してもこのスクラッチノイズは再生される。
そして多くの旋律は、Cマイナーペンタトニックスケールである。これがビートルズはじめ多くのロックミュージシャンに影響を与え、ロックはペンタトニックスケール一発覚えればできる、と言われるようになった所以である。
このあたりは、ポピュラーな知識かもしれないが、これを西洋音楽のチャーチモードで見ると、Cドリアンスケールや、Cミクソリディアンスケールが見えてくる。
ジョー・パスのブルースは、チャーチモードのスケールで演奏されているので、スケールがブルースでありながら黒人のブルースとは少し趣が異なりモダンなイメージがある。
黒人のブルースが主に歌のメロディーに独特の色合いがあったので、日本の演歌でブルース旋律でないものにブルースと言う言葉があてられたが、柳ケ瀬ブルースの旋律はド演歌旋律である。
カテゴリー : 一般
pagetop
すでにニュースで報じられているが、15人以上の選手関係者が現地で陽性になり、小池選手はじめ多くの出場選手が予選すら参加できない状況になっている。
ここで不思議に思うのは、特別な監視体制で何故このような状況になったのか、という問題である。東京オリンピックを無事開催できて世界陸上は失敗した、という相反する状況には、必ず原因があるはずだ。
不特定多数の感染者ではなく、管理された選手団でクラスターが発生した原因について見つけやすいはずである。犯人探しが目的ではなく、感染対策のヒントを得ることが重要だ。
何故なら、感染ルートと感染日時を特定できる可能性があり、それにより感染力が強いとされるオミクロン株の科学的な感染スピードを明らかにできる。
世界陸上の選手団派遣について税金も使われているので、感染して競技に出場できなかった選手は、せめてこのような場合に情報をすべて公開し貢献すべきである。
ニュースで感染者の急激な増加グラフを見せられて感染力が強い、と言われても、具体的にどれくらい強いのか、納得できないので、ただ逃げ回ることしかできないもどかしさがある。
科学立国日本と言われて久しいが、未だに非科学的データの扱いでごまかしているのが日本の現状である。そろそろ科学偏重の考え方を見直すべきである。技術的視点というものが存在する。
カテゴリー : 一般
pagetop
新たに廉価版の問題解決セミナーを開催することにした。問題解決のツール類や事例を省略し、ドラッカーの考え方を中心にして構成している。
概念的な内容なのでテキストが無くても理解しやすくしている。ただし、テキストにはサービスとしてシステム思考による問題解決手順を付録につけた。
今、このセミナーの聴講を前提としたアイデア創出法などを加えた問題解決法のセミナー資料を開発中である。このコロナ禍でギターの練習をしてみて気がついたことも加えている。
すなわち、暗黙知へどのようにアクセスするのか、そのコツをまとめている。おそらくこのような試みは初めてではないだろうか。
自分で試してみても面白いほど新しいアイデアが出てくる。年をとると老化してアイデアが出にくくなる、と言われているが、加齢でアイデアが出にくくなるのは、面倒くさいからだろうと思う。
若いころには何の努力もなく取り出せた暗黙知だが、加齢によりアクセスしにくくなっている。それを無理やりアクセスするには手間暇かける必要がある。
カテゴリー : 一般
pagetop
例えばヘキサフェノキシホスファゼンのような疎水性物質を水に分散したい場合にどうしたらよいか。昔からこのような場合にはオイル分散技術が使用されてきた。
オイル分散技術とは疎水性物質をオイルに溶解し、その状態でコロイドとする技術である。必要に応じてオイルをオートクレーブ中で取り除くのだが、100%取り除くことはできない。
ゆえに環境問題について厳しくなった時代に、このオイル分散技術では、残った微量のオイルの処理が問題となる。疎水性の高分子もこの方法でコロイドを製造することができるので便利な技術であるが、今の時代に合ったオイルを用いない技術が求められている。
分子の一部に親水基を持っていると、低分子でも高分子でも何とかO/W型コロイドにできるが、全く親水基を持たない物質の場合には、これまで技術手段は無かったが、5年前皮革の難燃化技術開発でホスファゼンの水分散コロイドが必要になり技術開発した。
この技術を用いると、水系コーティング液の開発も可能となる。また、皮革の難燃化技術開発で気がついたのだが、疎水性繊維の内部に物質輸送する技術の開発も可能となる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
毎週土曜16時30分頃、刑事コロンボが再放送されている。可能な限り見るようにしているが、今週と来週は大相撲名古屋場所と重なっている。
ただ昨日は何度でも見たい再放送だったので、大相撲をあきらめて刑事コロンボを楽しんだ。刑事コロンボは通常の推理番組と異なり、最初に事件と犯人を視聴者に見せてから物語が展開される倒叙探偵小説の形式である。
犯人逮捕の刑事番組でありながら、犯人も事件内容も視聴者がすでに知っており、視聴者は主人公のコロンボがどのように犯人逮捕に至るのか、あるいは犯人とどのように駆け引きを行い事件を解決するのかを楽しむ番組である。
ゆえに再放送であっても、ストーリーを記憶していても、主人公の演技をもう一度見たいという興味がわく。妻はどこがそんなに面白いのか、とあきれるが、問題解決におけるコロンボの演技が何度見ても面白いのである。
ピーターフォークはコロンボを演じている役者だが、犯人逮捕に至るまで、コロンボは犯人の前で犯人を知らないという演技をしている。このピーターフォークの演技が秀逸である。
昨日のドラマでは、ヒューリスティックな解を容易に推理で得られるような事件であり、ピーターフォークはコロンボをすでに犯人を知っている刑事として犯人の前で演じていた。
この演技の面白さは、再放送でも色あせていない。ピーターフォークはコロンボというキャラクターを充分に研究しつくし、あたかも刑事コロンボその人が、犯人を知っていると犯人の前でうまく演じていた。
カテゴリー : 未分類
pagetop
13兆円という巨額の賠償金額の支払い命令が東電の旧経営陣4人に対して出された。この金額の妥当性含めて様々な意見が出ている。
すでにこの欄で述べているように、多額の投資をしなくても、防波堤を越えた津波に備えて既存の設備配置の見直しが行われておれば大事故にならなかった、とのコメントが2011年にニュースになっていた。
また、一人当たり3兆円規模の賠償金額は東電の社長であれば妥当の金額であることもWEBニュースで報じられており、今回の判例が一部で騒がれているような異常な内容ではない。
今回の判例で考えなければいけないのは、社長職が常に大きなリスクを抱えた役職である、ということだ。これをよく考える必要がある。
組織で仕事を行っていると、組織全体で負うべき巨大なリスクが見えなくなる場合がある。東電の事故でも、設備担当者が巨大津波のリスクに気がついておれば、予備電源を屋上に設置するアイデアが浮かんだはずである。
少し考えれば1階に設置する場合と屋上に置いた場合のメリットデメリット比較で屋上設置となったはずだ。経営者は担当者のこのような気づきを促すような経営を心掛けなければいけない。
ところで、環境問題について各企業においてそれぞれの対策をとらなければ突然死につながるリスクとなる時代になった。これに気がついている社長はどれだけいるのだろうか。
また、各担当者は所属する組織の役割だけでこの問題を考えるようなミスを犯していないだろうか。環境問題は、従来の組織の役割にとらわれていると見えないリスクが存在する。社長だけに責任を押し付けるべき問題ではないのだ。
問題そのものに対する感度が鈍っていては、十分な仕事ができない時代である。そもそも知識労働者の仕事とはその知識を用いて問題を発見し解決してゆくのが仕事である。このような視点で急遽格安サービスセミナーを準備しているので問い合わせていただきたい。
カテゴリー : 一般
pagetop
機能性セラミックスを設計する技法と機能性高分子を設計する技法は異なる。機能性セラミックスでは科学的に美しい体系ができているが、機能性高分子では、科学的というよりも技術的方法論となる。
また、理論的な設計値を実現し品質管理を行う場合でも機能性セラミックスの方が容易である。高分子材料では、およそセラミックスの設計値のばらつきの10倍以上ばらつく場合が多い。
もちろん機能性高分子でも、機能性セラミックスと同様にばらつきの小さい材料設計が可能な場合があるが、それは少数派である。
具体的に導電性という性質を取り上げた場合に、機能性セラミックスでは、酸化物系セラミックスから選択し材料設計を行う。透明導電性と限定すると酸化スズ系か酸化チタン、酸化バナジウム、酸化亜鉛と絞られてくる。
そして、導電性の設計方法も異原子のドーピングにより、酸素欠陥を生み出すという方法が知られている。電子伝導性高分子については、白川博士のノーベル賞受賞で知られるように画期的な発見として知られている。
一次構造の設計において高分子のパイ軌道を活用する場合には、分子軌道法も活用でき科学的議論を展開しやすいが、高分子に導電性を付与する方法にはカーボンのような導電性フィラーを練りこむ方法が古くから知られており、この方法はかつて混合則で議論されていたように経験的となる。
また、半導体高分子を材料設計する場合に、一次構造で材料設計するよりもカーボンの添加について混合則で材料設計した方が経済的である。
ただし、導電性物質を高分子に練りこみ半導体を設計するときに、導電性のばらつきを半導体セラミックス並みに品質管理するためには、材料設計に少し工夫が必要になる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
ドラッカーは問題解決において、正しい問題を見出すことができれば、80%以上問題が解けたと同じである、と著書で述べていた。
何か問題が発生した時に、目の前に見えている問題が現状において正しい問題であるとは限らない。また、私心にとらわれて目の前の現象そのものを歪曲し間違った問題を設定したりすることも起きる。
例えば18歳の女性に飲酒させたなどと週刊誌に報じられた吉川衆院議員についてドラッカーの名言を当てはめてみると分かり易い。
WEBで報じられているニュースによると、女性は20歳以上であり吉川議員は騙された被害者で週刊誌を名誉棄損で訴える、と述べているようだ。
この例では、ここで正しい問題を説明する必要は無いと思われるが、国会議員あるいは何らかの公職で今後も活動したいならば、女性が20歳以上であっても速やかに辞職することが必要だった。
週刊誌で報じられた内容は、写真まで掲載されており、写真がすでに国会議員として問題のある写真だったのだ。このようなことにすぐに気がつかないような人物が国民の税金が対価として支払われる職場で働くことに国民は嫌悪感を示しているのだ。
ニュースを読む限り吉川議員は、正しい問題へまだたどり着けていない。このような場合に、親しい人物が正しい問題を教えるべきである。
一方で、このような場合に正しい問題を教えてもらえるような友人なり親族なりがいるような人生を送りたい。弁護士がいつも正しい問題を教えてくれるとは限らないのだ。
科学がいつも技術開発の成功を約束してくれないように、法律の視点がいつも日常生活の「正しい」という感覚に適合するとは限らないのだ。
名誉棄損で訴えて仮に勝利できたとしても吉川議員は次の選挙で国会議員に選ばれないと思う。しかし、この訴訟が仮に吉川議員により起こされた時に裁判官はどのような判断を下すのだろうか。
いきなり暑くなって仕事の効率が落ちたと嘆いた1週間だったが、くだらないことと思いつつ吉川議員のニュースを読んだ時間の無駄が、仕事の効率を下げている問題の一つと気がついた。
カテゴリー : 一般
pagetop