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2013.03/16 電気粘性流体を活用した画像形成

室温で低粘度の液体であるが、高電圧をかけると固体になる物質を電気粘性流体(ERF)といい、その変化をER効果と呼ぶ。ER効果は1mmあたり1kVの電圧をかけると顕著に表れる。ERFとそれに印加される電圧の間には相関がある。電圧上昇につれ粘度上昇が起きるため、高粘度化したときに固体のような弾性率を示す。

 

ERFは、1980年代に活発に研究され絶縁油と特殊な微粒子との組み合わせで実用になることがわかった。実際に某社の試作車のアクティブサスや防振ゴムとして応用研究が実施されたが、デバイスが単純な構造であるにもかかわらず性能は機械式のデバイスよりも高かった。しかし、コストの問題をクリアできず実用化が見送られた。

 

ER効果を画像形成に利用しようというアイデアは、エプソンから当時多数特許出願されている。単なるアイデア特許であり、中には研究者から見ればインチキな特許も存在した。出願から20年以上たっているので、インチキ特許でも怖くは無い。ER効果を画像形成に利用するアイデアは、ER効果を発生させるに必要な電圧を考えると実用性が無いようにみえる。

 

しかし、画像形成を行うドットの大きさが1/1000mmから1/100mmであることに気がつけば、数VでER効果を出すことが可能で、面白いデバイスができるはずだ。しかし、エプソンからER効果を利用したプリンターは発売されていない。恐らくコストがあわないのであろう。インクジェットのインクよりもコストが高くなる可能性がある。

 

ERFのインクを使用したプリンターの長所は、インクジェットで問題となるノズルづまりを皆無にできる可能性がある点。またインクジェットのようにメディアの受像層の設計で画質が大きく左右される問題も克服できる可能性もある。商用印刷には有効かもしれない。

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.03/15 びっくりした光景

静電気で悩まされる冬も終わり、春めいてきた。静電気で思い出されるのは、フィルムの帯電防止技術を担当したときに見た光景である。

 

印刷感材でクレームが発生した、と言うことで、営業担当に連れられて印刷工場に出向いた。印刷工場の見学は初めてで仕事でなければ楽しめたのだが、クレームの原因がどこにあるのか考えなければならないので、必死でした。とにかく、アースがとられているかどうかといった、工程内の帯電防止のイロハを実践した。

 

報告を受けていたクレーム内容は帯電防止されたフィルムが稀に機械に引っかかり、工程が停止するという内容だった。現場で説明を受けている時には問題なくフィルムが流れている。と、その時である。一枚のフィルムが、搬送途中で金属のガイドにくっついた。説明によれば、機械に引っかかる現象とはこのことで、静電気でフィルムが金属のガイドにくっついている、とのこと。

 

お客様の話では、4時間に1回くらい発生する故障なので、今回早めに見ることができたのは幸運だという。しかし、である。導電性の高い金属に静電気で帯電防止されたフィルムがくっつく現象が起きることを発見してびっくりした。他社のフィルムでは発生していなかった現象と説明され、営業からは必ず解決するようにプレッシャーをかけられ、不思議な現象を楽しんでいる余裕は無かった。

 

営業からクレームの内容が帯電現象として事前に説明を受けていたので準備してきたサンプルを工程に流したところ、ある集団のフィルムが現象をうまく再現する。実際は金属に帯電したフィルムがくっつくところを見てびっくりしていたのだが、お客様の手前、はったりを噛まし、原因を理解できたので今後は改善したフィルムを納入します、と約束した。

 

原因はフィルムが特定のインピーダンスであると金属にくっつきやすくなるのだが、くっつく相手は導電体である。教科書に金属でも帯電する、と説明されているのだが感覚的に現象を理解できない。結局特定のインピーダンスの領域にならないよう帯電防止層の処方を変更してクレームを迅速に解決できたのだが、未だに発生した現象を科学的に説明できていないだけでなく、気持ちが悪い思い出として残っている。営業担当には、当時「金属でも帯電すると言われていたのは本当でしたね」と言われても、言っていた本人は未だに気持ちが悪い。

 

 

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.03/12 難燃剤のブリードアウト

樹脂を難燃化するために難燃剤を添加する。難燃剤が無機フィラーであれば脆性の低下が、液状であれば可塑剤として働くために弾性率の低下が問題になる。樹脂を難燃化する時に力学物性の低下は避けられない問題である。力学物性のバランスをとるためにポリマーアロイという手段がある。

 

しかし、液状もしくはTgが低い難燃剤で力学物性の低下よりも問題が大きいのはブリードアウトという現象である。ブリードアウトという現象は身近な製品で誰でも経験しているはずです。例えば皮状のケミカルバッグやケミカルシューズ、電化製品例えばPCのマウスに使用されているゴム状の部分。長年使用していてべたべたしてきたことはありませんか。

 

これは、樹脂を柔らかくするために添加していた可塑剤が外に滲み出てきた現象です。構造が異なる分子を混ぜると相分離という現象が生じます。例えば水にヘキサンという有機液体を分散し激しく撹拌し静置しますと2層に分離します。これが相分離という現象で、構造が異なる分子どおしを混合しますと必ず生じる現象です。

 

樹脂に何か有機物を分散しても構造が異なれば相分離し、表面に浮き出てきます。これがブリードアウトという現象で樹脂製品の外観品質を悪化させます。ブリードアウトという現象は、物質の拡散で生じており、温度が高くなると早く発生するようになります。その時間スケールは物質の組み合わせで様々で有り、製品寿命の間に発生しないように材料設計することは可能で、樹脂製品の多くはそのように設計されています。

 

難燃剤のブリードアウトで見落としがちなのは、表面で難燃剤の濃度が高くなり、金属が接触していた場合には錆を引き起こしたり、電気製品であれば絶縁性を低下させたりする原因になる故障です。ゆえに難燃性樹脂の促進試験では、市場環境あるいは市場における使用方法を想定した促進試験が重要になってきます。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2013.03/11 半導体領域の材料設計

1万Ωcmから10が10個前後並んだ領域までの体積固有抵抗を持つ材料を半導体という。下限を1000とか10万Ωcmとしている教科書もある。上限も12個程度10が並んだ領域まで半導体領域とする教科書もある。半導体とは、適当に電気を流してくれる材料なので、その物性も適当に扱われているように見える。

 

しかし、実用化するときには、厳密なスペックの中に物性をおさめなければならない。これが難しい。例えば、導電体であるカーボンや金属粉を絶縁体である高分子に分散して抵抗を調整しようとすると偏差が4桁以上ばらつく場合も出てくる。

 

パーコレーション転移が起きるためである。たまたま実験室で安定にできても安心できない。確実にパーコレーション転移を制御できる材料設計を行わない限り、自然現象に任せていてはロバストの高い商品はできない。

 

絶縁体に導体を分散して半導体領域の材料を設計する場合以外に、金属酸化物半導体もその抵抗は大きくばらつく。難黒鉛化カーボンもロットにより2桁程度抵抗偏差が生じる。半導体領域の材料は、うまく設計しない限り2桁以上は抵抗がばらつく、という常識を持っていた方が良い。たまたま測定値が安定な材料が得られたときに、その原因や理由が明らかになっていなければ安心してはいけない。

 

コニカへ転職して間もないときに帯電防止材料の新規アイデアを相談してきた人がおり、アイデアを話したところ、その後なしのつぶて。たまたま相談者と廊下で出会ったときに、進捗を聞いたところ、「うまく進捗しているからほっといてくれ」という意味に近いことを言われたので、ばらつきの制御だけは注意するようにアドバイスしたが、その1年後帯電防止層の品質問題が起きて、仕事が自分のところへ回ってきた。量産が始まったところで導電性が2桁程度ばらつき、問題だ、とのこと。帯電防止層の処方を見たら、ただ材料を2種類混ぜているだけで材料設計されていない処方であった。技術を甘くみてはいけない。

 

実は材料物性において、導電性はその偏差の大小が材料および設計方法により大きく異なる。力学物性よりも測定値の偏差は小さいと思っているととんでもない失敗をする。導体である銅でも純度が管理されなければ1桁程度ばらつく。半導体領域になるとそのばらつきが目立つようになるだけと考えると気楽だが、商品の中には1桁以内に偏差を抑えることが要求される場合もあるので高度な技術が必要になってくる。

 

この材料設計では、複合材料で半導体を製造する場合と単一組成で半導体を製造する場合とでは戦略が異なる。ただし、プロセスの負荷が小さくなるように設計する方針で考える、あるいは、プロセスの負荷が大きくなる場合には既存のプロセスに改良を加え生産の安定化設計を行うなど、共通する部分もある。大切なことは、半導体領域の材料設計が、絶縁体や導電体よりも安定した物性を造り込むことが難しい点を認識することである。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2013.03/07 有機物で電池の正極を創る(2)

エネルギー問題への関心やボーイング787の事故もあり、Liイオン二次電池に対する関心が高いのでしょうか。昨日の報告に対して反響が結構ありましてびっくりしています。本日続編でもう少し詳細情報を書きますが、一部有料情報につきましてはお問い合わせください。

 

まず、講師の先生は、京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻教授吉田潤一先生です。開催場所は、高分子学会高分子同友会会議室。ここで月に何回か勉強会が開催されています。詳しくは高分子学会へお問い合わせください。

 

講演のタイトルは、「高性能リチウムイオン電池のためのピレンテトラオン構造をもつ有機ポリマー正極材料の開発」で、講演内容のポイントは

(1)Liイオン二次電池の正極物質に最適な分子構造を理論計算により設計。

(2)設計した分子を導入したポリマーを合成し、Liイオン移動型の二次電池を開発。

(3)高蓄電エネルギー密度、高い充放電サイクル特性、高速充放電を実現。

 

1980年代にブリヂストンでポリアニリン正極を用いたLiイオン二次電池が実用化され、日本化学会化学技術賞を受賞いたしました。この業績は、正真正銘の世界初の高分子Liイオン二次電池の実用化であるとともに白河先生のノーベル賞の具現化でもあります。

 

しかし、吉田先生のご研究は、このポリアニリン正極よりも遙かに性能が良く、新たな可能性を示す成果をあげられており、すばらしいご研究と思いましたので昨日取り上げました。また、この成果の公開を許可されたP社にも敬意を表したいと思っています。

 

企業研究の場合にそれが新しいコンセプトであればあるほどなかなか外部発表までさせて頂けません。例えば、フローリーハギンズ理論から絶対に相溶しないと思われる有機高分子と無機高分子を新しいコンセプトで均一に相溶することに成功したポリマー前駆体を用いた高純度SiCの技術についてなかなか発表できませんでした。ポリアニリンのLiイオン二次電池の発明よりも早く実現していたのですが、日本化学会化学技術賞の受賞はポリアニリン二次電池の受賞から20年以上過ぎていました。

 

そのような経験もあり、昨日の研究報告を許可されたP社の技術に対する自信に敬意を表したいと思っています。

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.03/06 有機物で電池の正極を創る

昨日高分子同友会勉強会で久しぶりにアカデミアの典型的な研究報告を拝聴させて頂きました。有機物で電池の正極を合成する、というP社との長期にわたる産学連携で行われた京都大学吉田先生の研究報告です。

 

研究のコンセプトから始まり、コンセプトに基づく分子設計を行って分子構造と物性との関係のシミュレーション、そして実験でその結果を確認し、コンセプトの正しさを証明する、という内容でした。

 

科学とは真理を追究することと昔から言われています。そして研究とは何か新しいことを見つける活動だ、と40年前教えられました。昨日の講演はまさにこの両者を兼ね添えた典型的な科学的研究成果でした。

 

自然現象は複雑怪奇です。そのため優れた科学的研究はそれだけでは完結せず、真理を明らかにするとともに常にまた新しい課題を生み出します。研究者がそれに気がつく、あるいは気がついていなくてもそれが存在すれば優れた科学的研究成果だと思います。そのため後者の場合には時として科学的研究がその時代に評価されず、後世になってその研究で提示された課題に気づいた研究者により再評価が行われたりします。吉田先生の研究報告にも新しい課題の提示がありました。

 

産学連携が叫ばれ、アカデミアでは、その純粋性を維持するのが難しくなってきています。しかし昨日の講演に接しますと、アカデミアが健全に活動できる産学連携とは研究者の力量であると気づかされます。すなわち吉田先生のみならずP社の研究者も優れていなければこの研究の継続は難しかったと思います。すぐに実用化できない成果でも我慢してアカデミアを応援できる力量がP社の研究者にあったからこそ、長期間継続することができたと思います。両者に高い力量があり、研究の成果を共有し信頼できなければ、科学的研究が完成するまで我慢できません。提示された新しい課題に関連した特許が出ていないことを祈るのみです。この新しい課題にご興味のある方は弊社へお問い合わせください。

 

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.03/05 古河電気工業がPCOCCの生産を中止

古河電気工業が高純度無酸素銅(PCOCC)の生産を中止するとの報道が今朝の産経新聞に載っていました。PCOCCとは、オーディオ用に普及してきた高純度の銅線であるが、携帯用音楽プレーヤーの普及で据え置き型の高級オーディオの市場が1/10になったため、売り上げが激減したとのこと。

 

PCOCCと音質との関係を議論するのは難しい。自宅のアンプからスピーカーへの配線はPCOCCの銅線であるが、実際にPCOCCと一般の銅線で音が変化したことは確かである。20年前家を新築したときに、スピーカー配線を壁に埋め込むために、銅線を3種用意し聞き比べ、当時最も高級な銅線を導入しました。

 

7年前この話をしたらオーディオマニアの同僚から、スピーカーの配線よりもアンプの性能が音への影響が大きい、と教えられたので、価格は安いが高級オーディオ並の音質という評判のローテルのアンプを購入した。このアンプは、価格が安いだけに外観は悪い。しかし、確かに音質は高級オーディオ並にボーカルも人間の声そのものである。またギターやバイオリン、ピアノも生音に近い。ローテルのアンプよりも高いアンプを使用していたが、オーディオのアンプは価格では決められない世界のようです。ちなみにローテル製品は日本のメーカーですが秋葉原でなければ入手できない製品です。ヨーロッパでは普及品として売られているようですが日本では売れないために逆輸入の形で細々と販売されています。

 

このアンプを導入してから銅線の比較をしてみたが、あまり音の変化を感じなかった。何が影響しているのか不明だが、PCOCCについてはアンプの性能を上げれば目立たなくなる、との結論に至りました。この結論が科学的に正しいかどうか不明ですが、PCOCCの影響が小さくなる状況があることは確かなようです。当方の耳の性能も20年経っていますから劣化しています。普遍的な事実とするのは無理でもPCOCCのブームの時のような効果を感じることができなかったことは事実です。

 

オーディオのような感性の影響を受ける商品の開発は難しいと思います。バブルがはじけ、原音に忠実な、あるいは録音された音を忠実に再現された状態で楽しむ、という行為に価値を感じる人々が少なくなったのは今日のニュースから理解できました。

 

 

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.03/04 デジタルデータの危うさ

10年ほど前に、100枚近くあったレコードをすべてCDにした。最近そのCDの音がおかしい。心配になって、フィルムのネガをスキャンしたファイルを見てみた。画像を読み取ることができないCD-ROMがあった。また、JPEG規格ができる前にリコーのデジタルカメラで撮影した画像をHDに移動し、開こうとしたらファイルを開けることができない。ソフトウェアーがダメなのか、データがダメなのか不明であるが、開けることのできないファイルがHDに残った。

 

フィルムのネガはスキャン後も捨てないでとっておいたので見ることができます。しかし、デジタルデータでは、媒体の劣化やフォーマットの変化で読み取れなくなる。改めてアナログデータ保存の優秀さに感心しました。

 

デジタルからアナログに変わり、SN比が良くなったことに感心しましたが、同じ音源をCDとレコードで聞き比べて見るとレコードの方が、音の厚みがある。高級なオーディオ装置では、CDとレコードの音の違いが明確になります。レコードはノイズも多いですが、音の広がりや何とも言えない肉厚(?)感があります。

 

最近DVDでレコードの音をサンプリングして保存する作業を始めました。明らかにCDよりも音が良いです。レコードに近い音の肉厚感があり、フィービースノーのブルースなどレコードと同じくらい艶っぽく聞こえます。これがCDになるとあっさりとした音になります。おそらく人間の耳がデジタルサンプリングの差を聞き分けているのでしょう。

 

CDプレーヤーは、20ビットオーバーサンプリングで一般のCDプレーヤーよりも音質が良いですが、DVDはさらに良くなります。レコード盤はもっと良い。

 

画像について昔の写真と最近のプリントと比較すると、音と同じように、昔の写真は色が濃厚な感じがします。デジタルプリントになっていた銀塩プリントでも発色のイメージはアナログ的です。IJで打ち出したプリントは、くっきりあっさりとした画像。

 

デジタルカメラになってその画像を見慣れてきましたが、改めて昔の銀塩プリントを見ると、何とも言えない味がある。音も画像もこってり感のあるアナログへの回帰が起きるような気がしています。

 

 

カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.02/21 ボーイング787の蓄電池事故

ボーイング787の蓄電池の事故は、配線ミスとの報道発表がありました。この発表の意味をどれだけの方がご理解されたでしょうか。

 

すでに報道されたように、蓄電池システムの蓄電池はGSユアサが請け負い、電池のマネジメントシステムはフランスのタレス社が担当しております。すなわち本来一つのシステムとして考えるべき装置を2社に化学が強くないボーイング社は発注しているのです。ここに今回の事故原因の根本があると思います。

 

例えば自動車というシステムは、多数のメーカーの部品でできております。自動車メーカーはその多数の部品の管理を行うノウハウが財産となっており、参入障壁ができあがっています。例えば、トヨタのリコール台数が多いことが問題にされた記事を読みましたが、これは素人の発言で、リコールを公開できるのはその部品管理システムがうまく機能しているからです。むしろリコールが批判されるほど正直に運営しているメーカーの管理技術がすばらしい、と考えるべきでしょう。

 

過去に三菱自動車がリコール隠しで問題になりましたが、その後もリコールが少ないことに不安を感じているのは私だけでしょうか。自動車のようにリコールができる商品は、新技術をテストするときに早めに商品として出して市場でバグ出しをした方が開発を速く進めることができます(本当にそのようにやっているかどうかは知りませんが)。以前ブリヂストンのタイヤは多くの安全テストをクリアしなければ商品とならない話を出しましたが、これはブリヂストンという企業の考え方です。リコールという手段が使えるならばリコールを使って、という考え方も技術開発の考え方としてあります(石橋を叩いても渡らないぐらいの考え方で開発された商品をユーザーとして歓迎しますが、リコールできちんと対応して頂けるならば我慢)。また、隠す、という手段もあったわけです(こちらは法律に触れますのでやってはいけない行為です)。

 

しかし、飛行機の場合リコール前提に新技術を投入されたら大変です。飛行機にはFMEAが充分行われた部品を搭載すべきでしょう。新技術を搭載するときでもすでに実戦に投入された技術を採用すべきです。Liイオン二次電池大容量蓄電池システムはまだ実戦投入された実績はないので、以前ここで飛行機に搭載するのは時期尚早と述べました。

 

日本では新規開発の飛行機の導入を過去に行わなかったが、今回の787は世界に先駆け行ったので初期不良が目立ちます、という報道を聴きましたときに、怖くなったのは私だけでしょうか。飛行機は自動車と異なる安全基準と思っていましたが運行後の部品事故を容認する発言があるのは、おかしいと思っています。

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2013.02/18 未来技術

3.11で世の中は大きく変わりました。とりわけ原子力エネルギーに対する考え方は、180度の変化です。国民のだれもが未完成の技術で商用運転を行っていた実態を知ってしまいました。福島原発の事故は、天災で始まっていますが、事故の状況について報じられた内容を見る限り、商用運転してはいけない技術でした。

 

現在販売されている家電製品のマニュアルを見ていただけばわかりますが、注意書きには起こりえないことまで想定された注意が書かれています。しかし、原発の事故対策は発生確率で低い場合には対策を行わない、という考え方で設計されていたのです。また事故後の対応においても、電源車との接続において、コネクターが合わず電源供給できなかった、とか、ベントにフィルターがついていなかった、とか、およそ商用運転されている商品として怪しい状況が報じられています。さらに、いまだに使用後の燃料棒の処分方法が決まっていない、というありさまです。家電のように家電リサイクル法で商品そのもののリサイクルが義務づけられている時代に、原料の処分法すら決まっていないのです。原発を商品として見た場合に、再稼働を議論するときには、実験運転を行うという前提で議論する必要があります。

 

原発がこのような調子ですから、未来技術としてエネルギー関連技術が花形産業を生み出す、と考えました。すでに太陽光発電や風力発電が立ち上がっていますが、ごみ発電技術は経済的に可能性が無いのでしょうか。かつて名古屋市長がゴミの分別回収で政府に苦言を呈したことがありました。細かい分別回収をしてきたのにそれが無駄になったからで、さっそく名古屋で有識者が集められてゴミのリサイクルではどの方法が良いのか議論されました。その結果サーマルリサイクルが最も良い、との結論でした。熱エネルギーとして取り出せるならば発電は容易です。

 

ごみ以外の燃料では、ジャトロワや藻、チップなどのバイオエネルギーの経済的生産技術が立ち上がる可能性が見えています。藻の場合には、ガスタービンを工夫して藻をそのまま燃焼できる技術を開発すれば最も経済的に発電ができます。光合成で藻を育てるのは琵琶湖のような湖を使うことができます。藻の繁殖力と藻の回収速度をバランスさせればよいわけです。藻と水の分離では、熱エネルギーを使うのではなくフィルターワークで十分です。

 

集中発電の方法以外に分散発電技術も出てきました。エネファームなどの燃料電池で、ガスの供給ラインを使って発電するシステムです。電気代が高騰していますから、経済的に十分釣り合うようになってきました。また、スマートグリッドへの移行も可能です。太陽光発電や風力発電、水力発電、地熱発電など様々な発電技術に可能性が出てきました。このような分散発電では蓄電池が重要になってきます。また高電圧を制御する必要から、パワートランジスタのニーズが高まります。

 

電気自動車のような移動体に電気を供給するシステムの開発も重要です。わざわざコネクターをつないで電気供給する方法では利便性が悪いです。また高速充電システムも必要になってきます。電気の供給であれば無人化も可能で、ちょっとしたスペースがあれば電気を供給できるような、それこそ駐車場のどこでも駐車中に電気供給できるようなインフラにすれば一気に電気自動車が普及するように思います。新しい電気電子デバイス以外に膜技術も重要です。従来の熱エネルギーを用いた分離方法から膜分離へ移行する可能性があります。膜分離技術は省エネ技術です。

 

家庭内の創エネ技術も太陽光発電以外に登場する可能性があります。家庭内には発熱製品や振動製品がたくさんあります。そのような発熱媒体や振動媒体から電気を回収するシステムです。コストが問題になりますが、材料技術が進歩すればぺロブスカイト系の材料で経済的な熱電変換素子ができるように思います。

 

こうしたエネルギー関連の未来技術はまだまだたくさんあり、具体的なアイデアもあります。これらを公開する企画を考えていますが、事前に情報を入手したい方はご連絡ください。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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