セルロースが高分子であるがゆえに観察される性質について、結晶性高分子と非晶性高分子の視点で概説する。
ここで、非晶性高分子とは、結晶化しない高分子を意味する。そのような高分子は、成形加工などのプロセスでも結晶化することはない。ゆえに密度や弾性率は結晶化した高分子よりも低く、一般に力学物性が劣るとされる。しかし無機ガラスと同様、光学的均一性が高くなるため、結晶特有の性質を利用しない光学特性が要求される分野には、不可欠な高分子である。
セルロースは、光合成により反応が進行し、高分子量化したものであり、そのつながった構造を一次構造と呼ぶ。この一次構造が不規則であると非晶性高分子となる。一次構造を不規則にする方法には、対称性の低い低分子を不規則に並べるか、高分子の規則性のある部分に他の低分子を反応させ、規則性を崩す方法がある。
後者は、規則性が高い天然高分子を非晶性高分子に変える手段として有効で、合成セルロースの一部は非晶性である。余談だが、光学用高分子として供給されている石油由来の合成高分子のほとんどは、ここで述べる非晶性高分子ではなく、カタログに非晶性高分子と書かれていても加工条件を工夫すれば結晶化できる。
加工条件を制御して結晶性高分子を非晶化して用いた場合には、加工後の温度条件や力学的要因などで結晶化する場合があり、品質問題が起きる原因となっている。たとえば無機ガラスで観察され、その機構も明らかになっている失透現象の原因の一つは、部分的に生成した微結晶で引き起こされる。
注意深い耐久試験で発見できる現象であるが、非晶性高分子であればそのような問題を心配する必要が無い。セルロースの場合、C6H10O5単位に三個の水酸基が含まれるので、無秩序にこの水酸基を変性すれば規則性が無くなり、完全な非晶性高分子を製造可能である。このような非晶性高分子は、光学分野では現在でも研究開発の対象として重要である。
非晶性高分子に対して、一次構造に規則性がある結晶性高分子は、結晶化した時に結晶化部分と非晶部分ができる。一般に結晶化部分が多くなるにつれ弾性率が上がる。天然のセルロース類を化学修飾しなければ、規則性が失われず結晶化するので、セルロースは高い弾性率を有する。天然のセルロース類は、この力学物性ゆえに古くから活用されてきた。
木の皮をそのまま使用した時代から繊維状の形態で使用した時代になるまでどの程度の月日が必要だったか不明であるが、セルロース系高分子の活用形態としては結晶性高分子としての形態が歴史的に最も長い。パルプはその代表であり、紙の腰の強さは結晶化したセルロースに由来する。スピーカーのコーン紙は、硬くて材料自身は共振しないことが求められ、金属からセラミックス材料まで検討されているが、名器と呼ばれるスピーカーの多くは、硬さとしてセルロースの性質を利用し、振動時のエネルギー吸収を繊維の絡み合い構造で達成している紙を振動板に採用している。
水に溶けるように変性したヒドロキシセルロースは液晶としての性質を示す。http://itf.que.jp/lc/lca.htmlにはヒドロキシセルロースを用いた簡単なアクセサリーの作り方が紹介されている。セルロース誘導体の液晶については現在も研究されており、将来高機能樹脂としての応用例が出てくるものと思われる。次章では、現在のセルロースの応用製品について簡単に紹介する。
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セルロース(繊維素)は、(C6H10O5)nという化学式で表される多糖類の一種であって、棉、木材、その他植物体を構成する細胞膜の主成分として、高分子量体のまま地球上に豊富に存在している。
空気中の炭酸ガスと水分から、太陽エネルギーを活用する光合成という光化学プロセシングにより自然界で大量に合成されている。ゆえに資源は無尽蔵といってよい。一年生草本などの植物のセルロース含量は、10-25%、木材では40-50%、亜麻、黄麻、大麻などでは60-85%であり、これらは重要なセルロース源として活用可能である。
セルロースという呼び名は、1840年頃木材から繊維状の物質が初めて単離されたときに、その物質につけられた呼び名で、今日では化学用語として定着している。
理論的には、あらゆる植物からセルロースを単離、抽出できるが、実用上は経済的要因に左右され、工業的に製造されるセルロース誘導体用のセルロース源としては、棉リンタおよび木材パルプの二つが主体となっている。そして紙、繊維、フィルム、プラスチック、塗料、接着剤、火薬などのセルロース化学工業用原料として活用されてきた。
最近はミドリムシからも多糖類が抽出され注目されているが、こちらはパラミロンと呼ばれる物質である。多糖類の工業材料としてセルロースは多方面で使用されてきたので天然高分子で大変な合成プロセスであっても価格はポリ乳酸よりも安価である。
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合成セルロース系高分子は、他の合成高分子と異なり、モノマーの重合や縮合などによって得られるのではなく、天然の高分子であるセルロースを化学的にエステル化またはエーテル化することによって得られる種々のセルロース誘導体を主原料とし、これに可塑剤その他の添加剤を配合して製造される。セルロース自体は溶融せず、熱可塑性ではない。
しかしサランラップはじめ石油モノマーから合成されたフィルムの普及であまり見かけなくなったセロハンや、これも他の合成繊維の台頭で市場占有率が縮小したレーヨンなどのように、苛性ソーダと二硫化炭素でセルロースを処理後、酸性溶液中に押出して得られる再生セルロースは、他の熱可塑性高分子に似た性質も備えている。
かつてセルロースの化学を語るときには、セロハンやレーヨンを中心にまとめれば、それで興味深い読み物になった。また、石油系ラップフィルムと異なりセロハンには透湿性があり、石油系ラップフィルムで包むと湿気で食感の変化するお菓子や惣菜をおいしく包むことができ、そのフィルム物性について読者の興味を引く内容にまとめることができた。40年ほど前には、セルロースの化学は別名繊維素系樹脂として重要な合成高分子の一つであり、高校の化学の教科書にもそのような紹介がされていた。
時代が変わり、環境ビジネスが取りざたされる昨今、天然高分子としてのセルロースにも注目が集まっている。しかし環境適合性の劣るプロセスで製造されるセロハンやレーヨンは、もはや研究対象ではなく、高度な機能性高分子としてのセルロース、あるいは環境に優しいプロセシングで製造されるセルロースおよびその応用製品の開発が期待されている。
(日本化学会から依頼され「科学と教育」へ4年前投稿した論文を本日から連続で掲載します。)
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コアシェルラテックスを開発していた担当者とこの点を議論したが、不可能という回答であった。目の前に従来技術による理想的に混合されたマンガを書いて議論していたのだが、コロイド科学の知識を活用して見事な否定証明を展開した。
コアシェルラテックスと従来技術の比較を検討してくれたメンバーAをよび同様の議論をしてみた。すると、シリカゾルをミセルにしてラテックスを重合すれば良い、というアイデアが生まれた。すばらしいアイデアである。ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術というのは当時誰も研究していない新規コンセプトであった。
この新規コンセプトについてラテックス重合を担当しているメンバーに話したが、やはり軽く否定証明でつぶされた。あまり軽妙に否定証明を展開してくれるので、コアシェルラテックス合成実験の全データをメンバーAに検討させたところ失敗した実験データの中から、ゾルをミセルにしたラテックス重合を実現できるヒントを見つけてくれた。
すなわちゾルをミセルにしたラテックス重合は、コアシェルラテックス検討過程の失敗条件から生まれた。さっそくメンバーAにラテックス重合技術を勉強させて、最適化検討を行ったところ、3週間ほどで、シリカゾルをミセルに用いたラテックスが完成した。驚くべきことに、このラテックス溶液にゼラチン水溶液を添加してもシリカゾルの凝集は生じなかった。
こうして従来技術の改良に成功し、できあがったゼラチンの性能についてコアシェルラテックスを用いた場合と比較したところ、2割ほど性能が優れていた。
ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術が完成したので高分子学会賞に応募したら、審査会でそんなもの誰でも知っている、と言われ落選した。1996年のことである。その後ラングミュアという科学雑誌にイギリスの研究者によるゾルをミセルに用いたオイル分散の研究報告が載っていたが、そこには実験の成功は世界初と書かれていた。
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コアシェルラテックスはゼラチンの靱性改良技術として究極の方法と考えられた。少なくとも従来のシリカとラテックスを併用する方法で、それをナノレベルで一体化しているのだから究極と呼んでも良いだろう。
転職した会社では重要テーマと位置づけられ後追い技術が検討されていた。後追い技術では特許回避が必須となる。当然技術に無理が生じる。写真性能へ副作用が現れたり、工程で問題を起こしたりと様々な弊害が現れる。
何故同じ技術を追究しなければいけないのか担当者に尋ねた。担当者は他に技術が無いからだ、と答えてきた。また、コアシェルラテックスは自分たちも追求していた技術だという。頭が熱くなっている状態で他のアイデアを考えさせても無駄である。
3名ほど高分子物性に興味を持っている連中を集めて、従来技術とコアシェルラテックス技術の違いをまとめさせた。するとゼラチンを硬くする、という目的のためには、従来技術のほうがコアシェルラテックスよりも優れていることが分かった。換言すればコアシェルラテックスは、水で膨潤したときのゼラチンの硬度低下を和らげる程度であるが従来技術は、水で膨潤したゼラチンにある程度の硬さを持たせる効果があった。
コアシェルラテックスは究極の技術では無かったのである。シリカのまわりをラテックスで覆った副作用があったのだ。
一方従来技術では、シリカとゼラチンが直接接触しているので、ゼラチンを硬くする目的では、コアシェルラテックスよりも効率が高く、同一シリカの量で比較するとゼラチンの弾性率を高くできる。問題は、シリカとゼラチンを混合、あるいはシリカとラテックスを混合するときにシリカのゼータ電位が変化し、一部凝集する現象である。すなわちこの混合時に発生する凝集の問題を解決すれば従来技術でも超迅速に対応出来るゼラチンを作ることができる。(続く)
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バブル崩壊直前に写真会社へ転職したころ、写真業界では脆いゼラチンを強靱化する検討がされていた。写真フィルムを現像処理すると、ゼラチンが水を吸って膨潤したときに割れやすくなり、その処理速度を速くすることができなかった。現像処理速度を速くするためには写真フィルムの感光層に使用されているゼラチンを強靱にする必要があった。
ゼラチンは水に膨潤すると柔らかくスリキズがつきやすくなる。それを硬くするためにシリカと呼ばれる無機微粒子が添加されていた。しかし、無機微粒子が添加されたゼラチンが乾燥したときにひび割れやすくなるので、それを防止するためにラテックスと呼ばれる柔らかい微粒子が添加されていた。
すなわち硬くするためにシリカを添加し、その結果さらに脆くなったゼラチンの物性を改良するためにラテックスを添加していた。ややモグラたたき的技術のようだが、このシリカとラテックスを併用する方法は10年以上の実績があり、感光層のバインダー技術として重要であった。
しかし、現像処理速度が速くなるにつれて、その技術では対応出来なくなり、ライバルの写真会社から、シリカをコアにしてそのまわりをラテックスで覆ったコアシェルラテックスという技術が登場し、超迅速処理技術として注目された。
コアシェルラテックスはシリカとラテックスが一体化されているので、ゼラチン水溶液に分散してもシリカの凝集が発生せず安定なコロイドを生成する。そのためプロセス上のメリットも大きかった。
このコアシェルラテックス技術はナノテクとしても注目され、高分子学会でも取り上げられた。単なるシリカの表面処理では無く、シリカの微小な表面上でラテックス重合を制御するという極めて高度なナノテクであった。またできあがったコアシェルラテックスは有機無機複合ラテックスでもある。(続く)
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科学は体系化されているのでその伝承は容易である。また人類の科学の成果は小学校から高校までかけて学ぶことになる。そして大学に進学すればそれぞれ専門の科学を学び、また新たな科学を生み出す研究に携わる。
しかし、技術についてその体系を学ぶ機会はメーカーに就職しない限り一般に無い。職能訓練の学校でも技術を学べるが、それは基礎的な技術であり、新たな商品を創り出す技術まで学べない。
「現場現物主義」という言葉があるが、ゴム会社に入るまでこの言葉を聞く機会は無かった。ゴム会社では科学よりもこの原理が優先された。まさにこれこそ技術の世界である。技術では、機能が実現されなければ間違っているのである。科学では、論理的に正しければ機能が実現されなくても正しいとされる。
また、科学では否定証明を得意とするので機能が実現されていない状態を「だからできないのだ」と証明してみせることは朝飯前である。技術では科学的に正しいのか間違いなのか関係なく、再現よく機能を実現できて初めて正しい技術となる。
新入社員の最初のテーマで難しい樹脂補強ゴムの開発を担当して良かった、と思っている。技術とは何か、という問題を体で考えることができたからである。メンターから渡されたのは、一つのゴムサンプルとその配合表及び物性表である。そしてこのサンプルゴムと同一のゴムができるまで新しい実験に進んではいけない、と言われた。
最初は2-3回の練習で何とかなるだろうと思っていたら、物性表と同一のデータが得られるまでに、周囲の諸先輩の御指導がありながら1週間かかったのである。頭で考える限り大した作業ではない。またメンターが手順を教えてくださったときにも大した「技」があるようにも見えなかった。しかし、配合物の計量から加硫工程、サンプルのエージングまでのプロセスには様々なノウハウがあり、一つでも手を抜くとメンターから渡されたサンプルゴムと同一のゴムができなかったのである。
幾つかのノウハウは反応速度論の観点から科学的な説明を与えることも可能であった。しかし大半はなぜその作業を行わなければならないのか今も不明である。しかし、その作業が行われなければ同一のゴムができなかったのである。
メンターは周囲から新入社員のいじめにならないか、とからかわれていたそうだが、技術の伝承という視点では、良い方法だった、と思っている。少なくとも科学で考えても分からない世界が存在することを、そしてその中で技術開発を進めなければならないことを学ぶには大変良いテーマだった。一週間大変だったが。
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京大山中先生のiPS細胞によるノーベル賞に続き、若い理系女子小保方博士による「STAP細胞」の発見と現場力による生科学の大発見がこの2年間続いた。後者については研究者の稚拙なミスから週刊紙で騒がれているが、事実は変わらないだろう。
かつて高純度SiCの前駆体を有機無機ハイブリッドで合成する手法を生み出し、この材料の概念自体が新規な時代に日本化学会年会で発表したらこてんぱんに叩かれた。その2年後有機無機ハイブリッドの研究報告が日本化学会で活発に議論されるようになるのだが、この世界初の発表のことなど忘れ去られた。
さらにその前駆体の反応速度論の論文は、研究の発案者で実施者でもあり論文の著者なのに内容を相談した先生が筆頭となり発表された。30年前の出来事だが、科学が技術を牽引していた時代の話である。しかし昨今科学的成果に新技術を生み出すネタが少なくなってきた。さらに科学までも技術のように現場力で生み出される時代になった。
科学と技術は全く異なる概念で、科学は真理を追究することが目的の哲学であるが、技術は機能を実現する方法である。すなわち技術とは人間の本来の営みであり、これを車の両輪で表現する人がいるが、ラジアルタイヤと木製の車輪をつけた台車を動かしていることに気がついている人はどれだけいるのか。
技術では、機能が正しく発現しているのか、あるいは何か不具合が発生しないか見るために「現場力」が極めて重要である。そして何か問題が発生したならば、とりあえず機能を正常化するために対応をとることが大切である。この現場対応には科学的である必要は無い。それこそ機械を金槌で叩いて機能を正常化しても良いのである。大切なことは対策が機能正常化に有効な対策であることだ。だから金槌で叩くのは最後の手段でも行わない場合が多い。
現場力では常に逆から物事を考えることが要求される。なぜなら、現場では目の前の機能不全に対して直接有効な手段をとらなければいけないからである。科学的に正しいからといって、機能不全を解消できない対策を打ったところで問題解決したことにはならない。あくまでも機能を回復できたときに技術的に正しい答になる。
それが例え科学的に正しくなくても技術的に正しければ、科学が間違っているのかあるいはそのような対策を生み出す仮説しか立てられなかった科学の欠陥が原因である。STAP細胞は若いマウスの細胞をスポイトで分離している作業から見つかった。すなわちスポイトにいれた若い細胞には初期化可能な幹細胞が含まれていないのにスポイトからそれが出てくることに疑問を持ったからである。
小保方さんの現場力がそれを見落とさなかった。科学の欠陥として発見したのである。そして科学のしきたりで今騒がれているのである。いくら科学者が騒いでみても「現場力」が新しい科学を生み出している事実は変わらない。
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昨日まで中国のローカル企業を指導しつつ新しい環境対応材料の試作を行ってきた。そこで目が点になる現象に遭遇し、表題の違いを改めて認識した。日本の混練装置を使用している場合には遭遇できない現象と思われるが、それに近い現象を見ても意外と気がつかないのではないか。
現象は難燃剤を少し多めに樹脂へ混練していたときに発生した。混練を開始して10分ぐらいしたら難燃剤が投入口の方へ流れてきた。ストランドに火をつけると消火するので練り込まれなかった一部の難燃剤が逆流してきたのだろう。初めての現象である。
試作に用いているのは中国製の二軸混練機であるが、この装置は、ただ樹脂を混ぜる機能しか無いように思われる(注)。すなわち低粘度の液体と高粘度の液体の組み合わせを混合するのは難しく、練り込みが行われなければこの2種の液体を均一にすることはできない。
「混ぜる」と「練る」とは機能が異なるのだ。難しい理論はともかく、感覚として身につけておかないと高分子の混練実験をうまく進めることができない。ただし混ぜられた材料とよく練り込まれた材料がどのように異なるのか問い合わせて頂きたい。
SP値が大きく異なる組み合わせでは、混ぜることすら難しくなる。例えばフェノール樹脂とポリエチルシリケートを無溶媒で混ぜるには、SP値が大きな組み合わせの混合になるため技術を要する。そのノウハウを公開していないのでアルコール溶媒を用いてこの組み合わせの混合を行う研究者は多いが、それでは実用性がない。しかし、技術は無くても溶媒があれば簡単に混ぜることができる。
混ぜにくい系を混合する時に溶剤をうまく選択することで問題解決できるのは知られている。その時の溶媒の選択にもSP値が用いられる。樹脂と難燃剤の混練でも溶媒の機能に相当する材料を添加すれば、今回の現象の問題を解決できる、というアイデアが浮かぶ。
ただし今回はSP値を合わせた難燃剤を選択しているので一部は樹脂に取り込まれたのであろう。もしSP値のずれた難燃剤を使用していたのなら、もっとひどい状況になっていたのかもしれない。
混合も難しいが練りはもっと難しい。しかし、混合を簡単に考えている人が多いのでなかなか混練技術の難易度がうまく伝わらないが、現在多くのポリマーアロイの開発に成功しているのは、混練装置の技術開発が進んでいるからである。ポリマーアロイのさらなる進化のためにはプロセシング開発は重要である。
(注)スクリューセグメントは練りを重視したセグメントにしているが、装置のある問題のためこのような現象が発生した、と推定している。
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おからハンバーグは、挽肉(牛肉100%)の量をおからの4倍程度使用すれば、通常のハンバーグとよく似た色で仕上がる。一般に販売されている豚と牛の合い挽きを使用した場合にはこの比率でも白っぽくなる。食品の色は味にも影響する。見た目がおいしさのために重要である。
挽肉の量をおからと同程度で肉のような色合いを出すには赤だしミソを使用すると良い。ハンバーグのレシピに味噌を入れた例を見たことはないが、このアイデアはおからハンバーグの開発過程で得られた面白い成果である。おからハンバーグ以外の肉料理に応用してもおいしくなる。味噌味が強くなると少々ハンバーグらしさがなくなるが、そこそこの味噌味は肉の味を引き立てる。
このアイデアの一番のミソはおからも赤だしも大豆から作られている、という点である。ご存じのように赤だし味噌は、岡崎市の特産品で大豆100%で作られている。おからとの相性は良い。ハンバーグの着色剤としても少量で黒っぽくなり使いやすい。
壊れやすさと色の問題は解決がついたが、ジューシー感は少し苦労している。ジューシー感をごまかすためにチーズ入りハンバーグというレシピも開発したが、やや邪道である。正真正銘のおからハンバーグと名乗れるようチーズが無くてもジューシーな雰囲気を出す手段をいろいろ工夫したが、残念がら現在のところ豚の背脂を使用するのが最もよく、その次は牛脂である。
一応これらを挽肉に混ぜて使用するとジューシー感を出せるが、動物性脂肪が多くなるので健康食品と詠いにくい。豆乳を試したりしてみたが今ひとつ。現在のところおからを炒るときに植物性油を使用する方法以外に良いアイデアが無いが、一応おからハンバーグとしておいしいレシピが完成した。もちろんおからハンバーグを作るときに用いる混練方法はカオス混合である。
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